こちらから - 磁気共鳴懇話会

2012.5.22
不
可
第147回 京都磁気共鳴懇話会
転
載
『MRIの安全性』
大阪市立大学医学部附属病院
山﨑 勝
お願い
研究会で紹介したMRI検査に関する安全性の講演内容は
不
可
確実な安全を保障するものではありません.
また,講演で紹介した各種インプラント類は,材質,形状な
どが異なる場合があります.したがって,MRIにおける安全
載
性に関する運用は,必ず自施設で調査,確認してから行って
転
いただくようお願いたします.
本日の内容
前篇
MRI装置の安全管理に関する実態調査
不
可
主磁場(静磁場)による高磁場環境
載
後篇
転
高周波電波環境(Radio Frequency:RFパルス)
傾斜磁場による(超)高速変動磁場環境
冷媒に関する危険性
不
可
転
載
MRI装置の安全管理に関する実態調査
日本放射線技術学会秋季学術大会神戸大会における
平成22年度学術調査研究班報告.
大阪大学医学部附属病院 土’井 司先生のご厚意による
方 法
不
可
会員が所属する診療施設からMR装置を保有が
予測される2500施設にMRIの安全性に関する
内容のアンケートを発送した.
転
載
アンケートの項目
1.施設規模
2.マグネットへの吸引
3.発熱・神経刺激
4.緊急ブザーの取り扱い
5.騒音
6.クエンチ
7.金属チェック
8.禁忌器具の持込み
アンケート結果
不
可
回収アンケート数:1353通(回収率:54%)
有効回答数:1319通
転
載
入院施設なし:29施設
1~100床:102施設
101~300床:570施設
301~500床:392施設
501床以上:226施設
大型磁性体の吸引経験
静磁場
3
Yes
No
23
79
n=102
22%
39%
182
載
101~300床
388
n=570
32%
転
515施設
n=29
10%
~100床
61%
26
不
可
n=1349 施設
入院なし
301~500床
180
212
n=392
46%
501床~
122
0
54%
104 n=226
200
400
600
施設
大型磁性体の吸引物質
不
可
n=737 件/1349
載
その他
22%
パワーアンクル 5%
転
静磁場
点滴スタンド
32%
228cases
掃除機
酸素ボンベ
6%
車椅子
20%
7%
147cases
ストレッチャ
8%
吸引事故の当事者
静磁場
n=737 件
載
MR担当以外の医師
転
7%
不
可
MR担当以外の介助者
1% 清掃業者や工事関係者
MR担当医師
3% 9%
MR担当以外の技師
6%
36%
15%
MR担当看護師
MR担当技師
23%
170cases
MR担当以外の看護師
スタッフが吸引させた当人の所持品
静磁場
延施設数 n=1349
ボールペン
833
ヘアピン
不
可
458
クリップ
435
はさみ
載
362
名札
172
鍵
転
134
ライター
113
携帯電話
52
その他
152
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
施設
患者が吸引させた軽微な付帯品
静磁場
延施設数 n=2270
ヘアピン
鍵
ライター
バレッタ
使い捨てカイロ
クリップ
かつら
コルセット
ハンドバック
その他
817
不
可
408
334
174
載
155
転
146
71
55
2
108
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
施設
患者に火傷を負わせた経験
RF
n=154 施設/1349
1 施設
154 施設
転
88%
載
12%
不
可
クリニック
101~300床
501床<
68施設
34施設
301~500床
51施設
n=154
火傷の原因と発生部位
RF
n=149 件/1349
大腿部の内側
39
ケーブルと皮膚接触
38
心電図モニタ
人体とボアの接触
不
可
15
12
身体ループ
10
刺青
6
ハローベスト
載
5
チューブ・ケーブル類
転
4
金属(指輪など)と皮膚
4
人工関節
3
湿布
2
化粧品
2
その他
9
0
10
20
30
40
50 件
医療用器具による痛みの訴え
RF
n=101 件
ハローベスト
44
インプラント
人工関節
7
歯科用インプラント
6
創外固定具
載
5
MR耐用ハローベスト
胸骨ワイヤ
5
転
磁石式入歯
不
可
19
4
3
入歯
2
その他
6
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45 件
神経刺激による検査中止例
dB/dt
n=76 件
四肢・末梢のしびれ
12
手術後の体内金属
脊椎への神経刺激
8
刺青
7
アイメイク
載
4
眼球への神経刺激
骨折部
3
3
転
頭部への神経刺激
不
可
10
2
歯科治療後
2
肘
2
その他
23
0
5
10
15
20
25 件
騒音対策と緊急ブザーについて
患者管理
n=1894 件
耳栓
n=1319 件
不
可
821
必要な時だけ持たせる
ヘッドホン
800
持たせない
転
243
9%
載
なし
その他
200
400
600
74%
常に待たせる
30
0
17%
800
1000
施設
患者管理
n=453 件
心臓ペースメーカ
脳動脈クリップ
不
可
280
79
ステント
7
人工心臓弁
7
転
埋込み型除細動器
載
28
人工内耳
6
神経刺激装置
4
その他
42
0
50
100
150
200
250
300 件
クエンチの発生頻度
窒息
n=183 件
不
可
n=1319 施設
撮影中
158施設
載
転
No
88%
Yes
12%
26
157
撮影中以外
クエンチの発生
クエンチ直後はヘリウムは検査室に充満し陽圧になるが,
すぐに強制排気が作動し陰圧になる.最近ではヘリウムが
検査室に流れ込まないようになっている装置もある
不
可
転
載
静磁場に関する安全管理
静磁場:人体への影響
物理的効果
不
可
磁性体に及ぼす機械的な力
不注意に持ち込まれた強磁性体への影響
(文房具,掃除機,工具,酸素ボンベなど),
転
載
医療器具への影響
体内インプラント,その他医療器具
生物学的効果
現行の3.0T以下の診断用MRIで重要な問題となる報告はない.
一方で,「安全」と証明した報告もない.
静磁場に関する安全管理
体外金属に関する安全管理
入室者の所持品
不
可
はさみ,ペン,文房具,電子機器など
マグネット室外の金属製品
載
金属ボンベ,ストレッチャー,脚立,大型工具,
清掃用具など
転
体内金属に関する安全管理
体内(外)医療器具,金属インプラントなど
(心臓ペースメーカ,脳動脈クリップ,人工関節,
ステント類)
転
載
不
可
大型金属の吸着例
車椅子
脚立
酸素ボンベ
米国での酸素ボンベ吸引死亡事故
2001年7月31日
New York Westchester Medical Center
不
可
脳腫瘍の摘出術後の6歳の男児を麻酔を与えてMR検査を行った.
載
このとき室内に何らかの理由で持ち込まれた酸素ボンベがあり,
検査中にMR装置に吸引され,装置内にいた男児の頭部を直撃した.
転
事故発生後24時間以内に保健省に報告
男児は脳挫傷および脳内出血で2日後に死亡.
この事故が起こる前に,米国で酸素ボンベのMRI室への
持込みが過去15年間で13万8千件で5例あったと報告されている.
事故状況
麻酔科医
廊下
被害者男児
放射線技師
操作卓
転
載
不
可
MR装置
看護師
酸素ボンベ
コンピュタ室
酸素配管
1.スキャン室に酸素配管が未配備
2.MRI検査室近くに酸素ボンベを配置している
3.医師,看護師等の医療スタッフ対する安全教育が不足
4.MRI検査室全体を監視すべき技師が一人もいなくなった.
ストレッチャー吸着の例
転
載
不
可
検査終了後,患者を待機室にて,ストレッチャーに移動すべく,
担当技師は着脱式患者テーブルへと患者を引き出していた.
その間,スキャン室の扉は開放状態にあり,担当技師はガント
リ側に向いていた.そのとき,看護師がマグネット室に一般の
ストレッチャーを運び入れていた.ストレッチャーの車輪音
に気付いた担当技師が振り返った時には既にストレッチャーが
ガントリに向かって自走し,マグネットに吸着してしまった.
転
載
不
可
事故状況
幸いなことに,怪我人はなく,MR 装置の損傷も軽微
であり,超伝導マグネットの消磁もせずにストレッチャー
を4~5人の男性で引き離すことができた.
転
載
不
可
磁性体ワゴンの吸着映像
転
載
不
可
金属ボンベ吸着映像
静磁場の強度とその範囲
転
ボア開口部
載
アクティブシールドマグネット
不
可
Active shield magnetはボア開口部付近で急激な磁
場勾配が働くより強い牽引力
従来型のマグネット
H
磁場の大きさとインプラントの素材における吸引の検証
転
載
不
可
Ti合金製人工股関節
1.5T
3T
磁場の大きさとインプラントの素材における吸引の検証
転
載
不
可
ステンレス製人工股関節(SUS304か?)
1.5T
3T
磁場の大きさとインプラントの素材における吸引の検証
転
載
不
可
Co合金製(Cr, Mo, W)人工股関節
1.5T
3T
金属吸引(未遂)事故の原因
MRスタッフ以外の病院関係者の磁場に対する知識不足
(医師,看護師,清掃者など)
載
不
可
磁場強度の認識不足
低磁場装置と高磁場装置の吸引力の認識不足
(他院,以前はベッド,点滴スタンド,車椅子も入れていた)
転
MRスタッフがスキャン室扉を開けて,一瞬目を離したとき.
(酸素吸入の準備,MR専用ベッド,車椅子に乗り換え時)
どんな状況でも磁性体金属を持ち込ませなくするには?
MR室及びMR前室には磁性体を絶対置かない
・MR室及びMR前室の備品を全て非磁性にする.
不
可
載
非磁性酸素流量計
非磁性吸引器
転
非磁性救急カート
お勧めしません
非磁性点滴台
非磁性車椅子
非磁性ストレッチャー
非磁性酸素ボンべ
むやみに扉を開放しない
周囲の安全確認ができない限り扉を開放しない
転
載
不
可
MRIスタッフ
無人開放は超NG
開放した扉に
背中を向けない
不
可
専用ストレッチャーでマグネット室から退室するまで
B
C
D
転
載
A
A:周囲を監視でき,安全確保ができるまで遮蔽扉を開けないこと
B:退室直前まで扉は開けない .
C:MRIスタッフは,周囲が見渡せる位置に立つ.
D:退室後,直ちに施錠する!
金属吸引事故安全対策案
転
載
不
可
安全教育レベルに応じた区域別
入室許可制度の導入(案)
Reference:ACR Guidance Document for Safe MR Practices:2007
American Journal of Roentogenology:188, June 2007
教育レベルに対応したMRI検査室の構築
病院廊下
Zone1
Zone1
患者更衣室
不
可
待機室
転
入室制限
載
Zone 2
Zone 2
MRI受付
不
可
転
載
体内金属に関する安全管理
体内金属(インプラント)の安全管理
不
可
体内金属(医療機器)の多くは検査時に取り外すことは,
不可能な場合が多く,安全確保が体外金属より難しい.
MRI検査で問題となる事例
載
1.体内埋め込み装置の電気的誤動作・故障
転
2.磁性体金属の牽引・脱落
3.(非)磁性金属のRF発熱
万が一問題が発生すれば軽傷から
死亡事故につながる可能性がある.
体内に留置される代表的な医療器具,装置
脳動脈クリップ,塞栓コイル
圧可変式バルブシャント
神経刺激装置
頭頚部
歯科用インプラント
人工内耳,磁性義眼
不
可
整形外科
腹部外科,脈管系
転
載
人工関節,髄内釘
プレート,創外固定具
コイル,カテーテル
人工血管,静脈フィルター
ステント,クリップ,クランプ
胸部外科,循環器
植込み型除細動器(ICD)
ペースメーカ,人工弁
ステント,胸骨ワイヤ
クリップ,クランプ類
婦人科
避妊リング
その他
補聴器,化粧類,コンタクトレンズ,
刺青,衣類の装飾品など,事故など
で他体内に残存している金属
材質,安全性未確認
脳動脈瘤クリップ
転
載
心臓ペースペーカ
不
可
代表的な原則禁忌のインプラント類
神経刺激装置
磁性アタッチメント義眼
不
可
代表的な原則禁忌のインプラント類
補聴器
金属支持体付き絆創膏
転
載
人工内耳
スワンガンツカテーテル
カラーコンタクト
不
可
手元に置いておきたい資料
載
技術学会誌 Vol 59 , No12 2003
無料PDFダウンロード可
転
MRI Safety
MRI 安全性
の考え方
MRI Safety
インターネットで最新情報が分かる 技術学会誌 Vol 64 , No12 2008
http//www.mrisafety.com/
無料PDFダウンロード可
海外(米国)の報告では
F.G. Shellockのsafetyホームページ上で紹介されている.
2000以上種のインプラントと器具について,リスクを
以下のように分類し紹介している.
転
載
不
可
Safe
(安全)
Unsafe1
(危険:吸引,振動,移動等)
Unsafe2
(危険:誘導電流,RF加熱等)
Conditional 1(弱磁性の人工心臓弁,輪状形成術リング等,条件付)
Conditional 2(弱磁性のコイル,フィルター,ステント等,条件付)
Conditional 3(RF加熱の報告ある金属製貼り薬等,条件付)
Conditional 4(ハローベスト頚椎固定具磁性体,条件付)
Conditional 5 (製造メーカーの確認,条件付)
Conditional 6 (ASTM製造番号確認,条件付)
Conditional 7 (ガントリー及びRF照射外の使用,条件付)
心臓ペースメーカ,ICDへの影響
不
可
Shellockの安全性試験では20種のペースメーカ,ICDで安全と報告
されたものは無い.しかし,米国では条件付きで,MRIが可能な
ペースメーカが認可されている.(日本は,未認可)
(5Gラインは,ペースメーカへの影響を考慮して決定されている.
載
Cardiac Pacemakers
Conditional 5
and ICDs
20
2
100.0%
10.0%
Unsafe1
Unsafe2
13
65.0%
5
25.0%
転
磁場による影響が誤動作の原因となるものは13種,
誘導電流や発熱の危険性があるものが5種であった.
現在,心臓ペースメーカ,ICDは絶対禁忌
*日本でも 薬事承認が取れたので,日本で販売される日もそう遠くない.
転
載
不
可
ペースメーカへの影響
脳動脈瘤クリップへの影響
Safe
160
89.9%
Unsafe1
18
10.1%
Unsafe2
0
0.0%
載
Aneurysm Clips
178
100.0%
不
可
Shellockらの報告では178種類の動脈瘤クリップの
安全性試験を行っている.
0.15Tまで対応確認
1.39Tまで対応確認
1.5Tまで対応確認
1.89Tまで対応確認
3.0Tまで対応確認
転
Aneurysm Clips (Safe List)
1
1
85
5
68
安全とは言われているが,3.0T
まで確認できているのは68種類
クリップの種類は要確認
転
載
不
可
強磁性体脳動脈瘤クリップでの死亡例
クリップが磁場で吸引され
クモ膜下出血が発生
神経刺激装置(深部脳刺激装置)への影響
脳の一部が機能不全を起こしている患者の脳に適切な
電気的または磁気的刺激を継続的に送りこむことによって,
症状の改善を図る治療法.(心臓ペースメーカと同様の機能)
不
可
問題となる影響
リードスイッチの破損
転
載
ICのプログラム破壊
電磁界干渉による誤動作
本体やリード線の発熱
神経刺激装置は絶対禁忌
圧可変式バルブシャントへの影響
転
載
不
可
水頭症治療において磁気を用いてバルブの調節を
行い,脳脊髄液の流量を調節するシャントのこと.
圧可変式バルブ
バルブ:ステンレス製
圧可変式バルブシャントへの影響
不
可
可変バルブが,磁性体にもかかわらず
MRI対応であることが多い.
(ただし,対応磁場については要確認)
転
載
MRI検査後は,バルブの位置が変わっていないか
検査直後に頭部X線検査が必要.
調整前
調整後
載
マグネット式義眼
不
可
マグネット式義眼,眼窩内異物への影響
転
磁場で,磁石が眼窩内で
移動し,周囲を損傷させる
可能性がある.
眼窩内異物
金属片が眼球内で移動すれば,
眼球を損傷,視力低下,失明
させる可能性がある.
マグネット式義眼,眼窩内異物はMRI禁忌
人工内耳への影響
転
載
不
可
磁石
体内部
受信系
装着例
体外部
送信系
人工内耳への影響
不
可
基本的にMRI禁忌であることが多い.
MRI対応品も販売されているが条件がある.
・1.5Tまでは,体内磁石が動かないようにベルト
転
載
で固定すれば検査可能.
・3T以上は,検査前に磁石を取り出せば,
検査可能.(人工内耳メーカ,コクレア社より)
検査前に,対応品であるか調査が必要であり,前処置も必要.
検査部位が,磁石付近であれば,磁石の除去が必要
になるのでは?
人工股関節
転
載
不
可
(非)磁性金属(整形外科領域)への影響
ハロベスト
腕用髄内釘 脊椎固定ロッド
インプラントの素材は,ステンレス,Ti合金,Co_Cr
合金(エルジロイ),Ti_Ni合金(ナイチノール)である.
(非)磁性金属整形外科領域への影響
不
可
ほとんどのインプラントにおいて条件付きで,検
査可能であるが材質の確認,適用磁場強度など
を確認することが大事である.
(MR Safetyでは,調査したインプラントの大半が条件付きで
検査が可能としている)
転
載
Conditional 1(弱磁性の人工心臓弁,輪状形成術リング等,条件付)
Conditional 5 (製造メーカーの確認,条件付)
Conditional 6 (ASTM製造番号確認,条件付)
磁場の吸引に問題が無くても,発熱の危険性
はある.(材質に無関係)
Filters, Coils, Stents, Grafts への影響
444
100%
Unsafe Safe
1
1
Conditional
2
210
9
0.23% 47%
2%
Conditional
8
128
78
14
29%
18%
3%
137 *左記の表は条件付きで検査可能も含む.
302
5
444
転
1.5Tまで対応確認
3.0Tまで対応確認
4.7Tまで対応確認
合計
Conditional
6
載
Coil,Stent,Filter etc
Conditional
5
不
可
Filters,
Coils,
Stents
Conditional 2(弱磁性のコイル,フィルター,ステント等,条件付)
Conditional 5 (製造メーカーの確認,条件付)
Conditional 6 (ASTM製造番号確認,条件付)
不
可
Filters, Coils, Stents類への影響
載
下大静脈フィルター
各種ステント
転
MRI検査には下記の確認が必要
塞栓用コイル
器具の添付文書を参考にする.
設置後,組織に固着する6~8週まで
待つ必要がある.
Risk&Benefitを考慮してMRIを決定.
MR装置の磁場強度も考慮に入れる.
不
可
歯科インプラントへの影響
Brace wire-band
転
載
Keeper
Keeper
Magnet
Magnet Implant
Castable alloy(Crown)
Magnet Implantに関しては,強力な
磁場に暴露されると自身の磁力が
変化する可能性がある.
外せないインプランに関しては,熱傷,
不快感を引き起こす可能性がある.
導電性ワイヤ入りカテーテルなどへの影響
導電性ワイヤ
転
載
不
可
Swan-Ganz熱希釈カテーテル
カテーテルの一部が過熱して溶ける可能性あり!!
(カテの一部が過電流により溶けた報告がある.)
導電性ワイヤは抜去の必要がある.
ワイヤ入りカテーテルなどは絶対禁忌
心臓人工弁(機械式)への影響
Safe
208
119
100 %
57%
Conditional
1
1.5Tまで確認
8.0Tまで確認
29
19
20
14%
9%
10%
人工弁には,機械式と生体式の2種ある.
問題となるのは,機械式の方である.
載
3.0Tまで確認
Conditional
6
転
2.35Tまで確認
Conditional
5
不
可
Heart Valve
Conditional 1(弱磁性の人工心臓弁,輪状形成術リング等,条件付)
Conditional 5 (製造メーカーの確認,条件付)
Conditional 6 (ASTM製造番号確認,条件付)
機械式弁の構造
名称
1
ハウジング
(弁座)
原材料名
パイロライトカーボン ※1
コバルト,クローム合金
3 弁葉
パイロライトカーボン(12%
炭化ほう素添加)※2
4 縫合輪
ポリエスレル(ダクロン)
機械式弁
生体弁
転
載
不
可
2 強化リング
金属弁を有する 機械弁は弱磁性の
製品もあるが,弁にかかる磁化トルク
が心拍動にかかる力に比べて小さい.
ただし,超高磁場(3T以上)のMRI装置
の場合添付文書や本書などを参考に
して適応の確認が必要.
体内に医療器具装置,金属が入っている
場合の検査対応方法
YES
MRI絶対禁忌
不
可
NO
安全性不明
転
OK
載
製品名,材質
などの確認
安全性確認
検査中止
確認作業
添付文書やShellockのReport
【RISK or Benefit】
検査施行
検査施行
または中止
条件付きインプラントへの対応
被検者にインプラントの危険性(安全性)について
説明する.(検査担当医と相談した上で)
不
可
被検者に検査中に何か違和感を感じたら無理せず,すぐ
に呼び出すように説明する.検査中に,何度か声をかける.
安全性に関する参考書,資料などを検査室に置いておく.
転
載
前の検査では大丈夫だった.他院で大丈夫でしたは
ほとんどあてにならない.(客観的事実が大事)
MRIで問題となる事例をすべてクリアしている金属
インプラントは,ほとんどない.
(静磁場,RF照射,傾斜磁場から受ける影響:
牽引,逸脱,発熱,故障,誤作動など常に念頭におく.)
不
可
転
載
RFパルス(高周波電波)の安全管理
MRIの安全規格
RFパルスに関する安全ガイドライン
JIS Z4951による安全規格
載
不
可
全身,身体部分,頭部および局所について,その部分に
吸収される1kgあたりの高周波電力」と定義されており,
10秒間および6分間の平均SARによって制限を行なっ
ている.
転
比吸収率(Specific Absorption Rate:SAR)
生体に対する高周波電磁場の熱的影響は,吸収された
高周波電力に比例するため,生体が単位時間に吸収す
る電力を単位質量あたりの電力量(W/kg)として定義さ
れる.これを比吸収率(熱吸収比)という.
Specific Absorption Rate (SAR)について
RFは電磁波なので“2つの顔”を持つ.
載
不
可
MRでは画像を得る目的でRFを利用(磁気的成分).
しかし,大部分は, 渦電流のジュール熱(電気的成分)
として生体に吸収される.
転
電気伝導性が均一な球体モデルのSAR
SAR∝σ* r2 *Bo2 *α2 *D
σ:電気伝導度,r:球の半径,Bo:静磁場強度
α:Flip Angle,D:Duty cycle
操作モードごとのSAR上限値
*SAR(W / Kg)
平均化時間
6分間の平均値
身体部分
SAR
全身
照射を受け
る身体部分
通常
2
2~10
第一次水準管理
4
第二次水準管理
>4
載
転
身体領域
操作モード
頭部SAR
不
可
全身SAR
4~10
a)
b)
>(4~10) b)
頭部
局所SAR
頭部 体幹部 四肢
3.2
10
10
20
3.2
10
10
20
>3.2
>10 >10 >20
a)
身体一部SAR = 10[W/kg] ―(8[W/kg] ×照射質量/体重)
b)
身体一部SAR = 10[W/kg] ―(8[W/kg] ×照射質量/体重)
ただし,室温24℃以下,相対湿度60%以下であること
ただし,撮像時間中任意の10秒間における出力が,規定値の3倍を超えてはならない.
高周波磁場による温度上昇の上限値
深部温度の上昇
不
可
操作モード
患者局所部位の限界値
頭部
胴体
四肢
通常操作
転
第一次水準管理操作
載
0.5℃
第二次水準管理操作
1℃
>1℃
38℃
39℃
40℃
38℃
39℃
40℃
>38℃
>39℃ >40℃
MRI検査における発熱,火傷の報告
RFパルスに関する安全規格
SAR値の制限(RF出力の制限)
不
可
全身および局所の体温上昇の制限
載
本来ならば,大きな発熱や火傷は発生しないはず.
転
しかし,検査中における火傷の報告は後を絶たない.
なぜ安全規格内で検査しているにもかかわらず
火傷が発生するのだろうか.
RFパルスの影響
人体の(局所)温度上昇の原因
不
可
高SARの撮像における発熱の影響
載
金属性導電体による影響
転
人体で形成される電気回路による影響
送信コイルによる発熱(人体とガントリ内壁との接触)
高SARにおける撮像の影響
検査中,検査終了後に被検者から下記の内容を
訴えられたことはありませんか?
不
可
「熱かった」,「暖かかった」,「熱くて汗をかいた」
高SARで撮像すると火傷の恐れはないのか?
載
診療用MRI装置の規制値内の検査においては,
転
「熱い」と感じることはあり得るが火傷が生じたり,
人体に障害を及ぼす可能性は極めて低い.
ただし,体温調節に異常がある被検者,発熱性,発汗障害
を持つ被検者には,体温の上昇に注意しなければならない.
金属導電体による影響
心電図ケーブル,RFコイルケーブル,など電気伝導
ケーブル類は撮像中に直接皮膚に触れて,電気回路
不
可
が形成されると火傷が生じる可能性が高い.
金属インプラントや装具類(ハロベスト,イリザロフなど),
載
刺青,衣類の刺繍などは,RF照射によりそれ自体が
転
発熱する可能性がある.
SARが規制値範囲内でも火傷や痛みの原因になる
転
載
不
可
金属導電体の一例
金属導線による発熱のシステム
ケーブルと人体が触れていて,ループが
形成されていると電気回路が形成され
かなり危険である.
(条件によっては共振回路になる)
不
可
RF
転
載
皮膚接触面が抵抗を持つ
誘導電流による温度上昇
発熱が生じる
ケーブル
RF
形成されたループ
火傷が起きる箇所
金属インプラントが発熱した例
不
可
【事例紹介】
63才男性
既往歴
1996年 左人工股関節置換術施行
1997年 右人工股関節置換術施行
転
載
右下垂足を認め腰椎MRI検査を行う.
検査途中で激痛のため検査中止.
痛みの部位は左大腿部中央で痛み
は5分程度は持続
使用インプラント
左股関節 セントララインシステム(ステムはコバルト・クロム合金)
右股関節 トリロジー(全てチタン合金)
広島市総合リハビリテーションセンター 村中 博幸先生からのご厚意による
人体で形成されるループの影響
転
載
不
可
人体ループによる発熱のメカニズム
人体は導電体であり,磁場内では交流回路の一部である.
ループに RFが照射されると誘導起電力・電流が生じる.
ループ内で電気抵抗が高い接触点で熱が発生する.
事例:両下肢内側で形成されたループ
載
不
可
V
転
両ふくらはぎ内側に起きた熱傷
両大腿部内側に起きた熱傷
症例1) Knopp MV, et al :Unusual burns of lower extremities
caused by a closed Conducting Loop in a patient at MR imaging. Radiology.
1996;200:572-575
症例2) 奥田 智子・他: 日磁医誌,24(2), 88-91, (2004)
送信コイルによる発熱メカニズム
• 送信用コイル:Body coil(Birdcage coil)
– 中心軸がゼロ電位となる交流電界を発生
OV
載
電界
転
Virtual
Ground
不
可
– 中心軸から離れるほど電界の振幅が大きくなる.
ボア付近の熱傷が多発
電界
事例3:上肢のループとガントリ内壁の接触
13才男性・身長163cm・体重43Kg
:転落による股関節損傷のため股関節の精査
不
可
目的
載
被検者の状態:半袖のワンピースの検査着を着用,腕組
をしてガントリ内壁に上腕を接触.
転
(他院のMRI検査で火傷を負う)
症例3) 山﨑 勝・他: MRI検査におけるRF照射における
温度上昇の検討.ループファントムjを用いた局所温度
上昇の測定.日放技学誌,61(8), 1125-1132, (2005)
事例 :ガントリ内壁と上肢のループと点接触
載
不
可
図中の赤枠内は,
火傷の箇所を示す.
転
開始約10分後,熱感を訴える.検査は続行.
約30分後,我慢できずブザーで訴え,一時中断.
検査終了後(45分ぐらい),指頭大の水泡が生じる.
不
可
転
載
MR検査において被検者を火傷から守るには
ケーブルでループを作らない.
ケーブルを直接皮膚に接触させない.
転
載
コイルケーブルがループを形成
コイルケーブルが皮膚に接触
不
可
電気伝導ケーブルなどの取り扱いを理解する
ECGケーブルがループを形成
コイルケーブルが皮膚に接触
ECGケーブルが互いに交差させない
コイルケーブルを皮膚に接触させない
不
可
被検者自身でループを形成しない
転
載
上肢を体幹部やガントリ内壁と直接接触させない工夫をする
両下肢を密着させない工夫をする
8
MRI検査専用検査着の着用(案)
転
載
不
可
半袖ワンピースの検査着では,人体ルー
プの形成や各種電気伝導ケーブル類の
接触を防ぐための措置が毎回大変であ
る.図に示したような長袖長ズボンに,火
傷が起こり易い箇所に,パッドなどを付け
た検査着があれば,火傷の発生率を下
げることが可能と考えられる.
不
可
転
載
高速変動磁場(傾斜磁場)の安全管理
高速変動磁場(傾斜磁場)の影響
変動傾斜磁場
(超)高速に傾斜磁場が変動することにより
不
可
温度上昇,神経刺激,騒音が発生する.
磁場の時間変化率(dB/dt)
転
神経刺激
載
単位を[T/sec]で表した磁束密度の変化率
心細動:すぐに生命を脅かす状態となるため最も重要な課題
末梢神経刺激(PNS):絶えられない痛み 筋弛緩に伴う不快感
どちらも閾値が存在し,それを超えると発生
dB/dtによる末梢神経刺激(PNS)
傾斜磁場は磁場中心から離れたところで強くなるので,末梢
不
可
神経が刺激される場所は,撮影領域から離れた部位となる.
撮影領域
転
載
B
下腿部
胸部,心臓,首など
dB/dtによる神経刺激(理論的刺激モデル)
不
可
矩形波電気刺激によるヒトの心臓及び末梢神経刺激の
閾値 ETHは,理論的刺激モデルから
ETH=Emin / [1-exp(-ts/τc)]
載
で与えられる.
ここで,Emin=6.2 V/mは提唱値.tsはパルスの有効刺激時間
また τcは,末梢神経で 0.12~0.8 ms , 心臓で 1~8 msとされる.
転
仮に,ts=1ms,τc(末梢神経)=0.5ms,τc(心臓)=3msとした場合,
ETH(末梢神経)= 7.2 V/m
ETH(心臓)
= 21.8 V/m となり,
約3倍心臓のほうが閾値が高くなる.
心臓刺激は末梢神経刺激に比べ非常に大きな電界強度が必要
騒音の原因
傾斜磁場のスイッチングによって傾斜磁場コイルの
変形・振動がおこることで騒音が発生する.
載
不
可
この現象は,静磁場強度が高く,傾斜磁場強度が大きく,
スイッチングが高速であるほど顕著に現れ音が大きくな
る.
転
大きなところでは,飛行場の音や,地下鉄の音に相当.
騒音対策が,各社MRI装置開発における重要ポイント.
騒音のレベルについて
音圧レベル [dB]
音圧の大きさを,基準値
との比の常用対数に
載
よって表現した量である.
不
可

転

国際的に容認されている音圧レベルの上限値は140dBである.(z4951:2004)
MR検査における騒音防止効果について
耳栓
32dB減

イヤーマフ
25dB減
載
不
可

転
57dB減
不
可
転
載
冷媒に関する危険性
Quenching現象について(超伝導装置のみ)
Quenchingとは
何らかの原因で超伝導が消失し,発生した熱
不
可
により液体Heが爆発的に気化する現象.
載
Heについて
転
超低温:-270℃(液体時)
使用量:約2000ℓ
気化時:液体の約700倍以上の体積に膨張
空気よりかなり軽い He:0.138
空気=1.0
例えば0℃1気圧の水1[cm3]が気化すると, 体積は1240倍に膨張し1.24[L]になる.
Quenchingが起きたときの対処
酸欠や凍傷の恐れがあり
現象:白煙が発生,大きな唸りのような音がする
不
可
酸素濃度計の警報が鳴る(酸欠時)
(Heは空気より軽ため,高い位置から酸素濃度が低下する)
載
周囲に氷結が生じる.(超低温-269℃)
転
クエンチ時の救出作業
直ちに検査中断
低い位置を保つようにして救出作業を行う
スタッフと患者さん,近くの人も含めて退避
メーカの許可があるまで検査室周囲に近づかない
■酸欠の怖さ(酸素濃度と人間の反応)
21%…通常,空気中の酸素濃度
不
可
18%…安全の限界=連続換気が必要
16%…呼吸・脈拍の増加,頭痛,吐き気
載
12%…めまい,吐き気, 筋力低下=墜落につながる
転
10%…顔面蒼白,意識不明,嘔吐=気管閉塞で窒息死
8%…失神昏倒,7~8分以内 に死亡
6%…瞬時に昏倒,呼吸停止,けいれん=6分で死亡
液体ヘリウムに対する安全性
転
載
不
可
ヘリウムガス自体は無害ですが(低温時を除けば),無色,無臭なため,気づかない内に
酸素濃度を低下させて,窒息状態を招く恐れがあります(窒素ガスも同様です).
ヘリウム,窒素等の冷媒(れいばい)を扱う時は,換気を行い,酸素濃度を監視している
O2モニターに注意を払って下さい. O2モニターが作動した場合はすぐに退室して下さい
アメリカで発生したGE社員の酸欠死事故
(窒素ガス漏れによる)の記事の一部です
液体ヘリウムに対する安全性
冷媒注入作業中量は火気厳禁!!
不
可
蒸発して減ってしまたヘリウムを補充する,Refill(リフィル)と呼ばれる作業があります
この作業中に,Magnetの排気管から液体が落ちてきますが,これは水ではありません
冷えて液化した空気であり,液体酸素を1/4含んでいます.
転
載
液体酸素は非常に反応性が高い(ものを燃やしやすい)物質です.このため,Refillを
行なっている時は,いかなる火気,油気も厳禁です
MR装置は他の機器と比べると,駆動部が少なく
x線も使用しない為,なんとなく安全そうなイメージが
有りますが,実際には様々な危険が存在します
装置のインスタレーションや点検を行なう時には,
常に危険を意識するようにして下さい
まとめ
MRI検査に関する安全性について,基本的な
事項を述べた.
不
可
吸引事故,火傷,神経刺激,禁忌の器具の持込み,
クエンチが予想以上に発生していた.
載
発生頻度は病床数が多くなるほど高くなった.
転
・関わるスタッフ数の増加
・時間外使用時の管理体制
・高磁場装置の導入
・運用に関わるスタッフへの教育不足
誰もが事故をおこさないために
不
可
装置を扱う初任者の方は,
操作方法や撮像方法を学ぶ前に,
まず安全管理から始めましょう.
転
載
既に経験をお持ちの方は
今回の講演を参考に自施設の検査環境
を再確認してはいかがでしょうか.
本講演が,MRIユーザにとって,お役に立つこと
ができれば幸いである.
謝辞
転
載
不
可
本講演において貴重な資料をご提供していただいた,
広島市総合リハビリテーションセンター ,村中 博幸先生,
大阪大学医学部附属病院 土’井 司先生に深謝いたし
ます.
載
転
不
可