学習院コンピュータシステム支援組織 平成25 年度活動報告書

2013
平成25年度版
学習院コンピュータシステム支援組織 平成 25 年度活動報告書
教職員の ICT 機器活用に関する支援業務の活動報告
学習院コンピュータシステム支援組織 助教 大野 志郎
学習院コンピュータシステム支援組織 助教 山口 健二
学習院コンピュータシステム支援組織 助教 高橋 徹
1
活動背景と支援組織の役割
総務省の通信利用動向調査によると,平成 25 年度末の時点で PC の世帯普及率は 81.7%,
イ ン タ ー ネ ッ ト の 人 口 普 及 率 は 82.8 % で あ り , 情 報 通 信 技 術 (Information and
Communication Technology:ICT)は教育・研究の場においてもなくてはならないものにな
っている.ICT を活用するための端末や通信方法も多様化しており,スマートフォンやタ
ブレット型端末などのスマートデバイス,無線 LAN 接続サービスやモバイル通信などをあ
らゆる場所で使用するための環境が整備されつつある.ICT の進歩は多くの人に利得をも
たらしたが,その反面で今までになかった新たなリスクも生み出している.たとえば,
不正アクセスやコンピュータウイルスによる情報流出や情報消失である.また,ICT 機器
の普及による情報技術力の格差も新たなリスクであるといえる.社会生活において,ICT
スキルを有することが前提となることにより,これまでと同様の作業をしていても,最
新の機器を使いこなせないことによる相対的な業務効率の低下が生じてしまう.これら
は教育や研究の場においても同様であり,ICT スキルを高めることで適切に機器やシステ
ムを用いることが必要である.
教職員が上記のような時代の変化に対応できるよう,学習院コンピュータシステム支援
組織(以下,支援組織とする)は計算機センターの内部組織として,学習院の教職員の
ICT スキル向上を目標とし,教育・研究および業務を実施する際の情報機器活用方法や操
作方法の相談,トラブル対応などを行っている.学習院全体のシステム管理を行っている
計算機センター内において,支援組織は教職員一人ひとりを対象とした ICT 機器を用いる
際の FD 活動(教育向上活動)を行っており,その主な活動は下記のとおりである.
・教職員の ICT スキル向上のための支援活動
・マルチメディア教室の機器管理と,教育関連業務に対する支援活動
・ICT 機器を用いた研究・職務に対する支援活動
これらの活動は,院内の教職員が情報機器を有効に活用し,円滑に研究や業務等を行
うことができるようになることを目的としている.計算機センターが 設置しているマ
ルチメディア教室は平成 25 年度時点で 137 教室だが,これらの教室で授業を行う教員に
対する機器の操作説明, 授業で使用する教材の作成や授業方法に関する助言などを行っ
ている.さらに,マルチメディア機器が毎日問題なく使用できるよう日々保守および修
理を行っている.長期休業期間には全マルチメディア教室の機器を対象としたフルメン
–1–
テンナンスも実施している.
他大学ではこのようなマルチメディア機器に関する操作説明や相談,保守などをすべ
て業者に委託している場合もあるが,これらを内部組織で行うことで次のようなメリッ
トが得られる.
・大学ならではの特殊なソフトウェアやシステムに対応しやすい.また他の教職員から
の助言も得やすい.
・教室に導入されているマルチメディア機器は導入年度によって仕様が大きく異なって
おり全体を把握するのが難しいが,院内に特化した組織であるため対応が容易である.
・授業中の突発的なトラブルに対して数分で教室に出向いて応急措置するなど,授業時
間を少しでも長く確保するために迅速な対応を行うことができる.
・学内の関連部署との情報共有や伝達が内部組織であることにより円滑に行うことがで
きる.
また,事務職員ではなく教員が組織を管理することには下記のようなメリットがある.
・研究全体を見据えた解決方法の提案や,研究者によく使われている最新のソフトウェ
ア,機器,ウェブサービスなどの提案を行うことができる.
・授業を実施する立場において,マルチメディア機器の使用方法の案内,授業形態の提
案,計算機センターに対する設備やシステム導入の提案を行うことができる.
・他の教員と同様の立場で忌憚のない意見を集め,業務に取り入れることができる.
支援組織が教職員に対する ICT 関連の FD 活動を行うことで,学習院全体(幼稚園,初
等科,中高等科,女子中高等 科,大学,女子大学,法人組織など)の,コンピュータや
マルチメディア機器による教育・研究活動および職務の質を高め,学生への教育効果向
上に貢献することができる(図 1).
図 1.支援組織の業務内容と効果
–2–
2
平成 25 年度の活動概要
2.1
依頼対応の概要
平成 25 年度は新たな学習院教育研究用コンピュータシステム(GCS12)への更新後,
2 年目の年だった.システム更新では,リース PC およびリースプリンタ,スキャナ等の
入れ換え,Windows Vista Enterprise から Windows 7 Enterprise へのバージョンアップ,
Microsoft Office 2007 から Microsoft Office 2010 へのバージョンアップ,学内無線
LAN の新規導入などの変化があった.今年度は新システム稼働 2 年目ということもあり,
OS の変更や Office のバージョンアップに関する依頼は大きく減少している.ただし,
Word や Excel,PowerPoint など,ソフトウェアの使用方法に関する依頼が依然として多か
った.
ネットワーク関連では,年度初めに新たに 802.1x 認証に基づく無線 LAN アクセスポイ
ント「gu12x」が導入された.これまでの Web 認証に基づく無線 LAN アクセスポイント
「gu12」も使用可能だが,認証の方式が異なるため,接続方法に関する依頼やうまく接
続できないという依頼が多かった.また,学内での無線 LAN の利用が一般的になりつつあ
ることから,教室でも無線 LAN を使用したいという声が多く寄せられた.
研究室や共同研究室,事務室に対する業務としては,主に計算機センターのリース PC
およびそれらに付随するソフトウェアや関連機器の操作説明,トラブル対応などを行っ
た.また,教職員が個人で購入した機器に関する相談に対しても,教育や研究目的で使
用しているものであれば随時対応を行った.依頼の内容については,例年通りソフトウ
ェアに関する依頼,ハードウェアに関する依頼の順に多いが,今年度は特に無線 LAN の
接続不良に関するトラブル,接続方法に関する問い合わせなどの増加が顕著だった.ま
た,Dropbox や OneDrive,Google Drive といったクラウドコンピューティングやオンラ
インストレージに関する依頼も増加した.
マルチメディア教室に関連する活動は第 3 章にて報告する.
2.2
依頼件数と受付場所
本年度の支援件数は 3095 件であり,平成 24 年度の 3300 件と比較して大きな変化は
見られなかった(図 2).依頼の約半数は目白キャンパス計算機センター内支援組織に寄
せられており,研究・職務に関する依頼が 47%を占めている.また,目白キャンパスの
マルチメディア教室を担当するマルチメディア LAB が 39%,戸山キャンパスの研究・職
務に関する依頼を受ける教育ソフト開発室が 8%,戸山キャンパスのマルチメディア教
室を担当するサポートセンター内支援組織デスクが 6%,四谷の初等科が 1%という割
合だった(図 3).
–3–
図 2.年度別支援件数(目白・戸山・四谷の合計)
図 3.平成 25 年度依頼受付場所割合
–4–
2.3
組織内の人員配置
支援組織では,目白キャンパス計算機センター3 階にある支援組織に 3~4 人を,西 1
号館 2 階のマルチメディア LAB にマルチメディア教室関連支援業務のため 3~4 人のスタ
ッフを配置している.また,戸山キャンパス 4 号館の教育ソフト開発室に 1~2 人を,2
号館のサポートセンターにマルチメディア教室関連支援業務のため 1 人のスタッフを配
置している.四谷キャンパスには週に 1 回(基本的に毎週水曜日の午後),会議室に 1~
2 人のスタッフを配置している(図 4).
図 4.支援組織人員配置の一例
人員を各地に分散して配置することによる対応の遅延や質の低下を防ぐため, 支援組
織では情報の即時共有システムを構築し,活用している.各勤務地で待機する支援組織ス
タッフは,独自のデータベース,共有ドライブ,グループウェアなどを用いて情報をリ
アルタイムで共有し,一つの案件に対して全スタッフの知見や過去の対応例を参照する
ことができる.特にデータベースには過去 15 年間に学習院内で生じた 4 万 5 千件以上の
依頼対応報告が蓄積されており,ほとんどのトラブルに対応することができる.
–5–
3
マルチメディア教育関連業務
3.1
マルチメディア教育関連支援業務概要
マルチメディア教育関連の支援業務に関しては,目白キャンパスでは西 1 号館 2 階の
マルチメディア LAB を拠点として依頼対応を行った.マルチメディア LAB では,マルチメ
ディア教室の機器のメンテナンスや相談対応,教材作成や教材のダビング,メディア変
換,授業時のトラブルに対する緊急対応などを行った.目白キャンパスにおけるマルチ
メディア教育支援件数の推移は図 5 の通りである.
図 5.マルチメディア教室支援件数推移
今年度は新システムの 2 年目ということもあり,依頼件数は昨年度に比べて 161 件減
少した.また全体的な傾向として,マルチメディア教室数の増加に伴い機器障害の割合
は増加傾向にある.中でも 10 年以上使用され続けている機器は部品の生産や保管が終了
していることにより業者による修理が不可能になっているものも少なくない.支援組織
ではこれらの機器に対するメンテナンスや応急措置,代替品の検討と設置などを行って
いる.また戸山キャンパスでは,女子大 2 号館のマルチメディア教室棟 1 階のサポート
センターにおいて,マルチメディア教育(授業)に関連する支援要請を受け付けている.
今年度に行われた大きな機器の変更点としては,西 5 号館,南 1 号館,北 1 号館の一部
のマルチメディア教室で,マルチメディア操作卓とプロジェクタの新システムへの入れ
替え・新設が行われた.これらの教室はデジタル映像に対応しており,HDMI 入力端子を
備えている.またこのうち一部の教室(北 1-301-306・308・406-408,南 1-103-104・
203-207・301・303-305)には,従来の操作卓ではなく,簡易的に映像や音声の入力端子
のみを備えた壁面パネルが設置された(図 6).
–6–
図 6.北1・南1の新設壁面パネル(左)と西 5 の新操作卓のコントロールパネル部分(右)
3.2
マルチメディア機器の操作に関する支援業務
教職員が授業でマルチメディア機器を使用する際に必要な,機器の操作説明や相談
対応,マニュアル作成などを行った.また機材に障害が発生した際には授業時間を圧迫
しないよう,できる限り迅速に対応を行った.マルチメディア機器の操作説明に関して
は,例年通り PC に関する質問が多かった.例えば持込 PC とマルチメディア機器操作卓
との接続方法およびインターネットへの接続方法,PowerPoint によるプレゼンテーシ
ョンやマルチメディアファイルの再生などである.
また支援組織では毎年,マルチメディア機器の操作方法の講習会を実施している.今
年度も年度初め(4 月 2 日,4 日)に,マルチメディア教室を使用する教員,教員をサポー
トする副手,ならびに職員を対象として,マルチメディア機器の使用方法に関する講習会
を実施した.最初に参加者全員に全体説明を行い,その後いくつかのグループに分かれ,
各教職員が使用する教室で実際に操作を体験してもらうという内容だった.また,個別
の機器操作説明を希望する教職員に対しては,上記講習会の日程以外にも適宜個別に説
明を行った.
3.3
マルチメディア教育実施率調査
平成 25 年 6 月 13 日(木)から 6 月 26 日(水)にかけて,マルチメディア操作卓の使
用率チェックを行った.総授業数は授業の有無を目視で確認し,操作卓使用数は操作卓
の鍵が使用された授業数をカウントしている.結果,CALL 教室(外国語教育システムを
備えたマルチメディア教室)の操作卓使用率が 84%と最も高く,次いで大教室の操作卓
使用率が 67%と高かった.また,中教室は 60%,小教室は 50%という使用率だった(表
1).CALL 教室は生徒席にも PC が配置されており,教員 PC から生徒 PC への画面投影や
ファイルのやり取り等を行うことができる.基本的には PC を用いた授業を行う教員のみ
が使用する教室であるため,マルチメディア操作卓の使用率が高いのは当然である.100
–7–
人を超える大教室については教室が広いため,大型のスクリーンを用いる必要性が高
い.多くの生徒を対象とする授業において特に操作卓の需要が高まることが示唆される
結果となった.
表 1 マルチメディア操作卓の使用率
大教室(100 人以上)
教室数
中教室(50 人~99 人)
17
教室数
総授業数
517
総授業数
407
操作卓使用数
348
操作卓使用数
243
操作卓使用率
67.3%
操作卓使用率
59.7%
小教室(50 人未満)
教室数
総授業数
3.4
19
CALL 教室
78
教室数
1901
6
総授業数
182
操作卓使用数
958
操作卓使用数
153
操作卓使用率
50.3%
操作卓使用率
84.1%
マルチメディア機器及び教材に関するアンケートの実施
支援組織では,支援組織が設立された平成 11 年度から毎年アンケート調査を行ってい
る.主な調査内容は各種マルチメディア機器の使用状況,授業教材の作成状況,教員か
らの要望などであり,支援業務や設備の改善を図ることを目的としている.今年度も大
学及び女子大学の教員を対象にアンケート調査を実施した.アンケート結果については
第 4 章にて報告する.
3.5
マルチメディア機器の点検・管理
支援組織では,マルチメディア教育をトラブルなく実施できるよう,マルチメディア
機器の保守をはじめとする様々な対応を行っている.今年度は以下の機器点検・管理を
実施した.
・マルチメディア機器を収めた操作卓の施錠確認
・マルチメディア機器の臨時点検修理
・マルチメディア機器の一斉定期点検及び清掃(平成 25 年 8~9 月,平成 26 年 3 月)
・業者によるプロジェクタ・マルチメディア機器フルメンテナンス(西 5-301,南 7-101,
女子大:平成 26 年 3 月)
–8–
4
マルチメディア機器使用に関するアンケート調査
支援組織では毎年,学習院大学または学習院女子大で授業を持つ教員に対するアンケー
ト調査を実施している.アンケートの結果は,学習院におけるマルチメディア教育や研究
の他,今後導入するマルチメディア教室の設計や改修へのフィードバック,支援組織の
業務改善のための参考資料として活用している.アンケートの実施概要は以下のとおりで
ある.
期間: 平成 25 年 12 月 10 日~平成 26 年 1 月 31 日
対象: 学習院大学または学習院女子大学にて授業を行う教員(非常勤講師を含む)
手段: 質問紙を各部署の事務室や講師控室にて配布,回収.回答者名は無記名
(別紙のコメント欄は任意記名).
主な調査項目:
マルチメディア教室および各マルチメディア機器の使用状況
教材作成の際の ICT 機器使用状況
無線 LAN の使用状況
ICT リテラシーに関する質問
フェイスシート
回収数:有効回答数 197 票(配布数 1234 票)
4.1
教員のマルチメディア操作卓使用状況と意向
今後のマルチメディア操作卓の利用意欲について,「マルチメディア教室でプロジェク
タを用いた授業を行いたいか」という質問に対して 82%の教員が「思う」と回答した
(N=177).
既に使用している教員に対しては,使用した教室ごとに,直近 1 か月間のマルチメディ
ア操作卓使用回数について質問した.「3 回以上」を 3.5 回,「1-2 回以上」を 1.5 回,
「0 回」を 0 回と数値変換し,全使用教室の合計を算出している.平均は 4.1 回(N=157,
最少値 1.5,最大値 10.5)だった.また最頻値は 3.5 回で全体の 53%となっており,マル
チメディア教室を使用する教員はおおむね毎週マルチメディア機器を使用しているという
結果だった.
マルチメディア操作卓満足度については,平均 3.0 ポイント(N=145)であり,「やや
満足」の水準だった.教室ごとの満足度は図 7 の通りである.
–9–
4.0
西1大
西2中
南1大
南1中
女子大
中央中
中央CALL
西2大
中央大
女子大CALL
西1小
西2小
南7大
西5大
北中
3.8
3.7
3.6
3.6
3.6
3.4
3.3
3.3
3.3
3.3
3.2
3.0
3.0
2.6
女
子
北 西5 南7 西2 西1
大
中 大 大 小 小
CAL
L
満足度平均 2.6 3.0 3.0 3.2 3.3 3.3
回答数
5
11
2
24 38
7
中
中
中 女
西2 央
南1 南1 西2 西1
央
央 子
大 CAL
中 大 中 大
大
中 大
L
3.3 3.3 3.4 3.6 3.6 3.6 3.7 3.8 4.0
6
21 14 16 15
5
3
14
2
図 7.教室ごとのマルチメディア操作卓満足度
※回答数が 2 以上の教室のみ抜粋,良い 4 点,やや良い=3 点,やや悪い=2 点,悪い=1)
また,週当たりのマルチメディア機器の使用回数は図 8 の通りだった.授業で用いる
ことができる PC は次の 3 種類である.
・備付 PC:教室に備付られている PC.計算機センター発行のアカウントが必要.
・貸出 PC:講師控室にあるノート PC.計算機センター発行のアカウントが必要なもの
と不要なものが用意されている.
・持込 PC:教員個人の PC.インターネットに接続するためには計算機センター発行の
アカウントが必要.
個人・学科所有 PC は持込 PC ということになるが,これら PC の使用回数を合計すると
2.1 回と最も高く,次いで BD/DVD/CD デッキの使用回数が 1.1 回と高い.一方で,カセッ
トデッキやビデオデッキの使用は非常に稀である.電子白板についてはそもそも大きな
教室でのみ必要な機器であることから使用回数は低く算出されている.
映像機器についてはビデオから DVD に完全に移行した感があるが,いまだにビデオの人
気も根強い.ただしビデオデッキは各メーカーが生産終了の方向に動いていることもあり,
学習院で今後改修されるマルチメディア教室ではビデオデッキ(VHS デッキ)は常備し
ない予定である.カセットデッキについても事情は同様だが,語学などで頻繁に停止・再
– 10 –
生の作業を行う場合などに操作ミスをしてトラックのはじめに戻るという心配がない点,
前回の授業の終わりの状態から再生しやすいという点を好んでで愛用している教員も多い.
個人・学科所有PC
講師控室貸出PC
備付PC
電子白板
書画カメラ
カセットデッキ
BD/DVD/CDデッキ
ビデオデッキ
0.4
0.3
1.4
0.1
0.5
0.1
1.1
0.2
図 8. 週当たりのマルチメディア機器の使用回数(単位:回数,N=197,0 回を含む)
4.2
新設された教室の使用状況
今年度はじめに西 5 号館,南 1 号館,北 1 号館の一部のマルチメディア教室で,新たな
マルチメディア設備への入れ替え,あるいは新たなマルチメディア操作卓の設置が行わ
れた.新設の教室はデジタル映像に対応しており,HDMI 入力端子を備えている.これら
の教室を今年度に使用し,HDMI ケーブルを用いた映像・音声出力を行ったかという質問
に対し,20%が行った,80%が行わなかったと回答した(N=60).タブレットや薄型の
ノート PC など,VGA(アナログ RGB)出力端子は備えず,HDMI 出力端子のみを備える端末が
主流になりつつあるため,今後さらに HDMI 端子の需要が高まるものと思われる.
またこれらの教室のうち,一部の教室(北 1-301-306・308・406-408,南 1-103-104・
203-207・301・303-305)には,従来の操作卓ではなく,簡易的に映像や音声の入力端子
のみを備えた壁面パネルが設置された.今年度中に壁面パネルに接続した機器について
質問した結果が図 9 であり,PC をはじめまんべんなくマルチメディア機器の使用が行わ
れていることが分かる.
スマートフォン
タブレット端末(iPod touchなど小型端末も含む)
1
2
9
個人・学科所有PC(タブレット端末を除く)
5
講師控室貸出PC
書画カメラ
カセットデッキ
BD/DVD/CDデッキ
ビデオデッキ
3
2
3
2
ない
図 9. 壁面パネルへの接続機器(単位:人数,MA,N=47)
– 11 –
31
これらの教室は簡易的なマルチメディア教室であるため,マルチメディア機器を使用
する予定のない教員にも割り当てられている.簡易的であることから故障が少なく,設
置スペースもごく僅かであり邪魔にならないというメリットがあるため,マルチメディ
ア機器を時々しか使用しないという教員にも使いやすい教室になっているものと思われ
る.
4.3
教材に関するマルチメディア機器の使用状況
マルチメディア機器を使用して教員が学生に見せている教材については図 10 の通りだ
った.教員自身によるプレゼンテーション資料と DVD などの既成のコンテンツが多数を占
めた.また,その他として,学生が作成した資料,特定のソフトのデモンストレーショ
ン,ウェブサイトなどが挙げられた.
自分で作成や編集を行ったプレゼン
テーション資料
113
既成のプレゼンテーション資料
20
自分で作成や編集を行った動画・画
像・音声コンテンツ
40
95
既成の動画・画像・音声コンテンツ
その他
4
図 10. マルチメディア機器で学生に見せている教材(単位:人数,N=154)
教材の作成のために使用した PC の OS については 図 11 の通りである.学内のリース PC
の OS でもある Windows7 が最多であり,次いで WindowsXP の使用が多かった.WindowsXP
のサポート期間は平成 26 年 4 月で終了し,セキュリティ面でのリスクが高まることから,
上位のバージョンの OS への切り替えが求められている.
15
教材作成にPCを使用しない
あてはまるものはない
0
Linux
1
Android
1
7
iOS
32
Mac OS X
36
Windows XP
17
Windows Vista
103
Windows 7
13
Windows 8
0
20
40
60
80
100
120
図 11.教材作成のために用いる PC の OS (単位:人数,MA,N=166)
– 12 –
教材作成の際の今後のマルチメディア LAB の使用目的についての回答が図 12 である.
各種ダビングの目的がもっとも多いが,動画の編集といった高度な教材作成を予定して
いる教員も多く見受けられる.
VHSのダビング
DVDのダビング
BDのダビング
CDのダビング
カセットテープのダビング
画像や文書のスキャン
データのコピー
TV番組の録画
画像の編集
音声の編集
動画の編集
31
49
10
23
15
34
12
17
18
14
23
図 12.今後のマルチメディア LAB の使用目的(単位:人数,MA,N=99)
今年度中に使用した授業支援システムについては G-Port がもっとも多く,次いで S ド
ライブだった(図 13).これらについては,授業支援システムのもっとも基本的な機能で
ある,資料の配布と回収機能を使用しているものと考えられる.また比較的少数ながら,
Moodle や Web Class といった e-learing システムの使用もあり,今後の活用が期待され
る.これらの e-learning システムは教員自身がまず操作を学ぶ必要があるため,敬遠さ
れがちなのが現状だが,より機能を厳選し簡易化したインタフェースを用意することが
できれば利用促進に効果的であると思われる.
G-Portの授業支援機能
43
授業用メーリングリスト
9
ホームページ(Mドライブ)
12
Sドライブ
16
CaLabo
e-Watcher
13
1
Web Class
3
Moodle
その他
4
2
図 13. 今年度中に使用した授業支援システム(単位:人数,MA, N=66, 使用ありのみ)
4.4
学内無線 LAN の使用状況
昨年度から大学内目白キャンパスに学内無線 LAN が導入された.学内無線 LAN はリース
PC,持込 PC やタブレット端末,スマートフォンなど多くの機器で使用することができる.
– 13 –
ただし,使用するためには計算機センターのアカウントを取得している必要がある.ま
た,無線 LAN の使用が可能な場所は基本的に学内の研究室と共用スペースであり,教室
では使用できない.
目白キャンパスで無線 LAN(gu12・gu12x)が使用できることの認知率について,昨年
度は 53%であったが,今年度は 55%(N=166)であり,同水準だった.また,目白キャン
パスでの無線 LAN 使用経験について,昨年度は 23%が経験ありと回答したが,今年度は
36%(N=161)に増加している.
今年度に目白キャンパスで無線 LAN を使用した場所については研究室がもっとも多く,
次いで講師控室,教室,ホールなどだった(図 14).教室や屋外については本来学内無線
LAN を使用することはできない場所となるが,廊下や別の階から漏れた電波によって接続
できてしまうこともあるため回答に含まれている.また,その他の場所として,院生閲
覧室,会議室が挙げられた.
講師控室
図書館
ホールなど共用施設
研究室
廊下
教室
屋外
その他の場所
25
5
9
41
6
12
3
4
図 14. 目白キャンパスの無線 LAN の使用場所(単位:人数,MA, N=66)
学内無線 LAN の利用目的については,研究室での利用が主であるため研究目的がもっと
も多く,次いで教育目的となっていた(図 15).教室で無線 LAN の使用が可能になれば,
教育目的での利用も増えるものと思われる.また,その他の目的として会議が挙げられ
ており,職務での利用も想定される.
教育
36
研究
その他の目的
47
3
図 15. 目白キャンパスの無線 LAN の使用目的(単位:人数,MA,N=56)
目白キャンパスにおける無線 LAN の来年度以降の使用予定については,46%(N=165)
が予定ありと回答した.教室での無線 LAN 使用について,学生が無線 LAN を使用できる場
合に授業を聞かなくなると思うかという質問に対し,「思う」「少し思う」と答えた教
員は 60%であり,「思わない」「あまり思わない」は 40%だった(N=155).また,学生の
出欠確認に学内の無線 LAN を使用したいと答えた教員は 18%(N=165)だった.
– 14 –
4.5
ICT リテラシー
ICT リテラシーに関連する質問として,マルチメディア操作卓の使用マナーとスキル,
インターネットや PC の操作スキル,ICT 機器の利用意欲について調査を行った.マルチ
メディア操作卓の使用マナーとスキルについて,「マルチメディア操作卓を使用した後
は、必ずすべての扉の鍵が閉まっていることを確認している」については 95%があては
まると回答した.「マルチメディア機器の動作不良の際、操作卓の電源を一度切って起
動し直すなどの対処を行うことができる」については 82%があてはまると回答した.
「マルチメディア操作卓は故障しやすい共用設備なので、ボタン操作やケーブル接続な
どの際、特に丁寧に取り扱っている」については 93%があてはまると回答した(図 16).
マルチメディア操作卓の使用マナーとスキルについては高い水準であると言える.
マルチメディア操作卓を使用した後は、必ずすべての
扉の鍵が閉まっていることを確認している (N=162)
マルチメディア機器の動作不良の際、操作卓の電源を
一度切って起動し直すなどの対処を行うことができる
(N=153)
95 %
82%
マルチメディア操作卓は故障しやすい共用設備なの
で、ボタン操作やケーブル接続などの際、特に丁寧に
取り扱っている(N=163)
93 %
図 16. マルチメディア操作卓の使用マナー
※「ややあてはまる」は「あてはまる」に,「ややあてはまらない」は「あてはまらない」に変換
インターネットや PC の操作スキルについて,「インターネットを使って、知りたい情
報を検索することができる」については 95%があてはまると回答した.「PC に接続する
主要なケーブル類をある程度見分けることができる」については 75%があてはまると回
答した.「PC を使用して、プレゼンテーション資料を作成することができる」について
は 87%があてはまると回答した.このように日常的に必要となる操作などについては多
くの教員が問題なく行うことができると考えている一方で,「PC がうまく動作しない場
合にも、基本的に人に頼らずに解決することができる」についてあてはまると回答した
教員は 66%,「PC やプリンタをインターネットにつなぐために、無線 LAN の設定をする
ことができる」と回答した教員は 59%であり,トラブルへの対処や必要となる機会の少
ない操作や設定については不安を抱えている教員も多い(図 17 上).
– 15 –
インターネットを使って、知りたい情報を検索
することができる(N=184)
95%
PCに接続する主要なケーブル類をある程度見分
けることができる(N=182)
75%
PCを使用して、プレゼンテーション資料を作成
することができる(N=182)
87%
PCがうまく動作しない場合にも、基本的に人に
頼らずに解決することができる(N=184)
66%
PCやプリンタをインターネットにつなぐため
に、無線LANの設定をすることができる(N=182)
59%
単純な文字列を使用しないなど、パスワードの強
度に配慮している(N=181)
82%
内密にすべき情報をUSBメモリやメールなどを用
いて移動させる際、パスワードをかけるなど情報
流出に配慮している(N=182)
58%
授業で他者の制作した文章やコンテンツを使用す
る際、著作権についての配慮をしている(N=181)
90%
使用する情報機器のマニュアルには目を通すよう
にしている(N=182)
SNSやブログなど、ウェブサイトに学生や教職員
についての不満や愚痴を投稿することがある(非
公開の投稿も含みます)(N=182)
69%
2%
図 17. インターネットや PC の操作スキル
※「ややあてはまる」は「あてはまる」に,「ややあてはまらない」は「あてはまらない」に変換
セキュリティへの配慮については,「単純な文字列を使用しないなど、パスワードの強
度に配慮している」は 82%があてはまると回答したが,「内密にすべき情報を USB メモ
リやメールなどを用いて移動させる際、パスワードをかけるなど情報流出に配慮してい
る」は 52%と低く,いっそうの意識向上が求められる.また,「授業で他者の制作した
文章やコンテンツを使用する際、著作権の配慮についての配慮をしている」は 82%だっ
た(図 17 下).
教育現場での著作物の取扱いについて,支援組織では教員が著作権に十分配慮しつつ
著作物を最大限利用できるよう助言を行っている.また,各部署へ配布しているマニュ
アル「Blue Screen 第 6 版」においても著作物の教育目的利用上の注意点などを掲載して
いる他,マルチメディア LAB で教職員がダビング作業を行う際には,必ず著作権につい
ての確認をしておくよう注意喚起を行っている.
– 16 –
4.6
ICT 機器の利用意欲
ICT 機器の利用意欲について,「思わぬエラーが起こっては困るので、授業で情報機器
をできるだけ使いたくない」については 17%が,「操作スキルに不安があるため、授業
で情報機器をできるだけ使いたくない」については 18%があてはまると回答した.一方
で,「授業の効果を上げるために、最新の情報機器の使用方法を習得したいと思う」に
ついては 72%があてはまると回答した(図 18).新しい機器を利用したいと考える一方で,
操作スキルやトラブルのリスクに対する不安を抱えている教員が多いことが分かる.支
援組織では今後ともこれらの不安やリスクを取り除くための努力を続けていく必要があ
るだろう.
思わぬエラーが起こっては困るので、授業で情報機
器をできるだけ使いたくない(N=181)
17%
操作スキルに不安があるため、授業で情報機器をで
きるだけ使いたくない(N=181)
18%
授業の効果を上げるために、最新の情報機器の使用
方法を習得したいと思う(N=182)
72%
図 18. ICT 機器の利用意欲
※「ややあてはまる」は「あてはまる」に,「ややあてはまらない」は「あてはまらない」に変換
4.7
支援組織の利用状況
別紙の任意記名アンケートにて,支援組織の利用状況と満足度について質問を行った.
教員がサポートを受けた際の方法として,対面での利用がもっとも多かった(図 19).こ
れは,支援組織の方針としてできるだけ現地で状況を確認し,問題点を正確に把握して
教職員への適切なアドバイスやトラブルへの対応を行うことを心がけていることによる.
平成 25 年度中の支援組織のサポート体制への満足度については図 20 の通りであり,
95%が「満足」あるいは「やや満足」と回答した.
間接的に受けた(代理人など)
3
対面で受けた
66
電話で受けた
メールで受けた
29
17
図 19. 教員が支援組織でサポートを受けた際の方法(単位:人数,MA,度数,N=79)
– 17 –
不満,
1.2%
やや不満, 3.8%
やや満足, 17.5%
満足,
77.5%
図 20. 支援組織のサポート体制への満足度
※サポートを受けた回答者のみ.「わからない(37 票)」を除いた.
4.8
回答者の属性
このアンケートの回答者属性は図 21 の通りだった.
性別(N=186):男性 55%
年齢(N=183):
女性 45%
学習院での教育歴 (N=182)
30歳未満 1%
20年以上
1年
9%
未満
16%
10年以上
30歳以上40
歳未満
21%
60歳以上
18%
50歳以上
60歳未満
31%
20年未満
27%
3年以上
10年未満
34%
40歳以上
50歳未満
29%
分野(N=178):文系 89%
理系 11%
勤務形態(N=169):常勤 37%
全教育歴 (N=166)
非常勤 63%
担当科目の開講区分(人数,MA,N=184):
法学部
経済学部
文学部
理学部
基礎教養
外国語
スポーツ・健康科学
情報
教職
学芸員
大学院科目
女子大 日文
女子大 国コミュ
女子大 英コミュ
女子大 共通科目
1年以上
3年未満
14%
1年未満
2%
23
28
48
15
7
20年以上
36%
43
1
1
1年以上
3年未満
8%
3年以上
10年未満
23%
10年以上
20年未満
31%
6
1
13
5
9
3
17
図 21.アンケート回答者の属性
– 18 –
5
総括
平成 25 年度は,学内無線 LAN の普及期にあたっており,研究室で無線 LAN の利用を
行おうとする教員からの問い合わせが特に多く寄せられた.また,西 2 号館など設置か
ら 10 年を超えたマルチメディア操作卓,書画カメラ,電子白板,プロジェクタの故障
が相次いで生じた.一方で,HDMI 機器などデジタル入力や Blu-ray の使用は増加してお
り,薄型のノート PC やタブレット,Blu-ray レコーダの普及が教育の場にも及んでいる
状況が見られた.
教職員の ICT スキル向上のための活動について,教職員が学内のシステムを使用する上
でトラブルや疑問が発生した際に,すぐに研究室や教室にスタッフが出向き,時間が許
す場合には必ず教員に対して解決のために必要な操作方法や考え方についてアドバイス
を行っている.今年度も可能な限り迅速に,丁寧に対応を行うことを心掛け,支援組織
に対する高い満足度を維持することができた.
依頼内容について,研究室においては LAN ケーブル抜けや HUB などの機器の電源ケーブ
ル抜けによるトラブルやマニュアル未閲覧による設定不明,Office ソフトの操作が分か
らない,ディスク容量やプロファイル領域がいっぱいになったといった依頼が多く,教
室ではアカウントの入力間違いや PC のフリーズ,操作卓の一時的な不具合(多くは操作
卓の再起動で直るもの)に関する依頼が例年多く報告されるが,今年度も同様の傾向だ
った.依頼者自身では解決できない問題も稀に生じるが,多くは ICT スキルの向上によっ
て解決できるものである.このことから,単純にその場のトラブルを解決するのではな
く,原因や操作を理解していただくことで教職員の ICT スキルの向上に繋げるという活
動が重要であることが分かる.
また,近年教育の場で重要性を増している e-Learning や Active Learning を教員が取
り入れる際にも,支援組織の活動が重要なものとなっていくだろう.支援組織では,ビ
デオ教材など,より情報量の多い方法を用いてマニュアル作成を行うと共に,教職員が
いつでも参照できるように公開し,そしてそれらの存在を多くの教職員に日常的に知っ
ていただき,活用していただけるようにするための取り組みを開始している.
長い期間で見たときに,ICT スキルの向上による教職員自身や学生へのメリットの大
きさは計り知れない.これからも支援組織が日々蓄積しているデータベースや知見を活
かし,さらに新しい技術やシステムを取り入れながら,教職員の ICT スキルの向上を支
援していくことが重要である.
– 19 –
付録
マルチメディア機器使用に関する
アンケート調査
(日本語版質問用紙)
– 20 –
– 21 –
– 22 –
– 23 –
– 24 –
– 25 –