ウインドリバー、NASA の火星探査機キュリオシティを支援 火星に生命は存在したのか? ロボット探査機で答えを探る 組織プロファイル NASAジェット推進研究所 (JPL) 2012 年 8 月 6 日、火星探査機キュリオシティが火星のゲール・クレーターに着陸し、NASA は 宇宙探査における偉業を達成しました。キュリオシティは、宇宙探検史上でも最先端の技術を 駆使した自律ロボット型宇宙探査機であり地質調査機です。火星に生命の維持に適した環境 がこれまであったかどうかを調査するとともに、今後の人類のミッションにおける住居可能 性を評価するという、画期的なミッションを抱えています。 業界 • 宇宙探査 ソリューション • Wind River VxWorks • Wind River Workbench • Wind River Professional Services 効果 • 宇宙探検史上、 最先端の技術を搭 載した自律ロボット型宇宙探査機 の開発およびテスト • かねてよりの課題であった火星着陸 を含む、 ミッションの成功に必要な 複雑でリスクの高い操作を制御 • トレーニングの必要性を軽減し、 過去 のミッションで使 用した既 存 の コードライブラリの再利用により開 発期間を短縮 • テストシステムの複雑性を軽減して、 ウインドリバーのリアルタイム OS(RTOS)VxWorks は、この歴史的なミッションにおいて中 心的な役割を果たしています。2011 年 11 月 26 日にロケットが地球を発った瞬間からミッ ションの終了まで、VxWorks は、宇宙探査機の制御システムの核となるオペレーティングシス テムを提供します。太陽系のロボット探査をリードする米国の NASA のジェット推進研究所 (JPL)は、ミッションクリティカルな OS の中枢として、20 年以上にわたり VxWorks を使用し てきました。キュリオシティプロジェクトにかかった総費用は約 25 億ドル、作業期間は 8 年間 に及びます。莫大な費用と労力が費やされたプロジェクトのため、失敗のない、耐障害性を持 つ RTOS が要件の中心でした。 キュリオシティのサイズは、自動車のミニクーパー程と他の探査機にくらべて非常に大きく、 これまでの火星探査機であるスピリットやオポチュニティの 10 倍もの科学機器を搭載してい ます。耐久性に優れ、これまでの探査機より広い範囲を探査するキュリオシティは、予定され ている 2 年の活動期間中に 19Km 以上を探査する予定です。 課題 火星に到達するまでの長い道のりは、宇宙の厳しい環境のなかを進むため、キュリオシティの ナビチームは、探査機を無事に目的地に到達させるために数多くの課題をクリアする必要が ありました。無事着陸を果たした現在、キュリオシティは様々な科学パッケージを起動させ て、周囲のサンプルや写真を収集・処理し、データを地球に送り返す必要があります。 今までで最も素晴らしい業績は、半径約 20Km 以内という、これまでのどのミッションよりも テストと適格性の認証のコストを 厳密で複雑な着陸に成功したことです。着陸手順は、EDL(突入、降下、着陸)と呼ばれ、打ち上 削減 げと並んで、様々な操作が最も集中的に行われるプロセスです。 キュリオシティは過去最大のサイズで、最多の機能を搭載した火星探査機であるため、無事に ウインドリバーのVxWorksは、 アビオニクスの 管理から、衛星テレメトリを使用した科学デー タの収集および実験結果を地球のJPLに送 り返すことまで、 キュリオシティの機能すべて の実行を制御するソフトウェアプラットフォー ムです。 ̶ ウインドリバー テクニカルスタッフ・シニア メンバー マイク・デリマン 着地させるためには新しい着陸方式が必要でした。 「恐怖の 7 分間」と呼ばれる EDL では、その スピードを時速 20,900Km 以上から時速 0km へと減速しなければなりません。厳密な角度で 正確に大気圏に突入し、超高温に耐え、パラシュートを開いた後に切り離し、ロケットエンジ ンに点火して降下スピードを落とし、4 本のケーブルを下して、車輪を所定の位置に固定し、 着陸時にケーブルを切り離す必要があります。 ウインドリバーのテクニカルスタッフのシニアメンバーであるマイク・デリマンは次のよう に述べています。 「ウインドリバーの VxWorks は、EDL の際の恐怖の 7 分間の制御をサポート し、この偉業を可能にしました。着陸過程において VxWorks が果たす役割は、私たちが毎日そ れと知らずに使っている各種の自動制御装置において VxWorks が果たしている役割と似てい ます」 Customer Success INNOVATORS START HERE. NASA’S MARS ROVER CURIOSITY POWERED BY WIND RIVER EDL 以前に行ったもうひとつの重要な課題が、探査機が正しい位 ラットフォームです。この探査機を人間に例えて言えば、核となる 置に着陸できるよう厳密な調整を行う軌跡補正操作でした。この オペレーティングシステムである VxWorks は脳にあたり、アビオ 時も、VxWorks が制御しました。 ニクスは体、科学パッケージは目、耳、鼻、味蕾にあたります」 マイク・デリマンは次のように述べています。 「VxWorks は、探査機 成果 からの電波をキャッチし現在の位置と航跡の特定を助けるための これまでの最も重要な成果は、世界最先端の技術を搭載した自律ロ 遠距離宇宙通信網(DSN:Deep Space Network)の巨大アンテナを ボット型宇宙探査機キュリオシティの打ち上げおよび着陸の成功 制御しました。着陸に先立ち、エンジニアはこのデータを使用して です。VxWorks は探査機の操作の頭脳として、それぞれの課題に挑 探査機が目標地点に着陸できるよう、コースを調整しました」 これらは、キュリオシティのミッション成功のために行わなけれ ばならない数多くのクリティカルな操作のごく一例にすぎませ んできました。 ウインドリバー製品を使い慣れている NASA JPL では、トレーニン グの必要性が縮小され、十分にテストされている既存のコードライ ん。最大の課題のひとつは、キュリオシティのように莫大なコス ブラリを再利用することが可能なため、開発サイクルが短縮されま トと時間をかけた宇宙探査機を火星に着陸させるという作業に、 した。VxWorks が、変わらぬプログラミングインタフェースと、 失敗は許されないということです。 POSIX などの規格との互換性を提供することで、JPL が OS 統合レ イヤの拡張や維持する必要性が軽減されました。これにより、テスト ソリューション システムの複雑度が下がることで、時間の短縮につながりました。 8 年前、NASA JPL はキュリオシティへの取り組みを開始しました。 20 以上にわたる JPL のミッションにおける VxWorks の成功の実 ハードウェアおよびソフトウェアにCOTS(commercial off-the-shelf: 績から、この次世代プロジェクトでも VxWorks が採用されました。 複数の汎用パッケージの組み合わせ)ソリューションを使用する エ ン ジ ニ ア リ ン グ チ ー ム は、開 発 と デ バ ッ グ に Wind River 以前は、それぞれのロボットミッションにおいて、カスタムプロ Workbench を使用しました。 グラミングツールを使って作成したカスタムハードウェアが必要 でした。そのため、過去のミッションで使用したものを再利用で JPLは、VxWorksの統合を加速し、クリティカルな領域でのVxWorks きる部分が少なく、新しいミッションに「経験」を活かすことも難 の使用を最適化するため、プロジェクトの初期段階で Wind River しかったのです。 Professional Services を導入しました。今や、キュリオシティは研究 室を飛び出して火星に降り立ち、VxWorks は BAE Systems 社の放 射線耐久型 RAD750 プロセッサ上で実行され、クリティカルな役割 まとめと今後の計画 ウインドリバーは 20 年以上にわたり、信頼性の高いテクノロジ を果たし続けています。VxWorks は、航跡補正、降下および地表面 を、マーズ・エクスプロレーション・ローバープログラムや、宇宙 での運用制御、データ収集、火星・地球間の通信中継など、複雑で 探査機スターダストプロジェクトなどの NASA JPL のミッション ミッションクリティカルな作業をこなしています。 に提供してきました。ウインドリバーのテクノロジは、無数の宇 宙探査用製品に採用されてきました。 キュリオシティの主要な機能は、ふたつのカテゴリに分けること ができます。ひとつは、アビオニクス機能であり、ロケットや車輪 マイク・デリマンは次のように述べました。 「キュリオシティの着 を動かすモーターなど、探査機の飛行とコースを維持するのに必 陸成功は、素晴らしい偉業でした。これは、火星やその他の惑星あ 要なあらゆることです。もうひとつは、分光計、ドリル、カメラな るいは月へ高い精度で探査機等を着陸させることができることを どのツールを使用して、周囲のサンプルや写真を収集して処理を 意味します。いつの日か、火星に物資を供給できるかもしれませ 行うための科学パッケージです。 ん。ウインドリバーは、太陽系探査における 20 年以上にわたる マイク・デリマンは次のように述べています。 「ウインドリバーの 方に常にインスピレーションを与えてくれる、優秀で熱意あるエ VxWorks は、アビオニクスの管理から、衛星テレメトリを使用した ンジニアリングチームとともに働けることを、非常に嬉しく思い 科学データの収集および実験結果を地球の JPL に送り返すことま で、キュリオシティの機能すべての実行を制御するソフトウェアプ NASA JPL の偉業を誇りに思います。世界や宇宙についての考え ます。NASA が夢のようなミッションを実現するお手伝いを続け ていくことを楽しみにしています」 ウインドリバーは組み込みソフトウェアとモバイルソフトウェアのリーディングカンパニーです。 企業がデバイスソフトウェアを、より早く高品質かつ低コスト、かつ高信頼性で開発、運用、管理することを可能にします。 ウインドリバー株式会社 ■販売代理店 東京本社 〒 150- 0012 東京都渋谷区広尾 1-1-39 恵比寿プライムスクェアタワー TEL.03-5778-6001(代表) 大阪営業所 〒 532-0011 大阪市淀川区西中島 7-5- 25 新大阪ドイビル TEL.06-6100-5760(代表) www.windriver.co.jp © 2012 Wind River Systems, Inc. Wind River、およびVxWorks は、Wind River Systems, Inc. の 登録商標です。記載されているその他の商標は、各所有者に帰属します。 詳細:www.windriver.com/company/terms/trademark.html Rev.06/2011 120821WRKK
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