神戸大学大学院 経営学研究科現代経営学専攻

神戸大学大学院
経営学研究科現代経営学専攻
-2008年度認証評価結果報告-
May, 2009
THE ALLIANCE ON BUSINESS EDUCATION AND
SCHOLARSHIP FOR TOMORROW, a 21st century organization
Tokyo, JAPAN
はじめに
NPO 法人 THE ALLIANCE ON BUSINESS EDUCATION AND SCHOLARSHIP FOR TOMORROW、
a 21st century organization (ABEST21)は、2005 年 7 月 1 日、マネジメント教育の質の維持向
上に向けたネットワークの構築のために、国内外の 16 大学のビジネススクールの学部長等の
英知の参加得て、ABEST21 会則の制定及び役員の選出を行い、ABEST21 を創設した。
ABEST21 は、1994 年の「グローバル・クラスルーム(Global Classroom)国際会議」の創
設に遡る。1994 年 10 月 28 日、国内外の 7 大学のビジネススクールの参加を得て、先端的情
報通信技術を駆使しての位置、場所、空間を超越したビジネススクール国際合同授業の実現
を検討し、
「グローバル・クラスルーム(Global Classroom)国際会議」を設立した。それは、
オンライン・リアルタイム・テレビ会議システムによる国境を越えた教育の実現に向けた仮
想教室の整備であった。
その後、グローバル・クラスルーム国際会議は、2002 年 6 月 28 日、ビジネススクールの
教育の質の維持向上をより一層推進していくために、
「グローバル・ナレッジ・ネットワーク
(Global Knowledge Network)機構」に改組した。グローバル・ナレッジ・ネットワーク機
構は、2005 年 7 月 1 日、下記のミッションを制定し ABEST21 創設の準備をした。
「われわれは、21 世紀の国際協力のために、われわれが開発しうる多くの領域があると信
じている。われわれは、会員校間の互恵の協力関係を促進することによって、グローバルな
基準でビジネススクールの教育を向上させていくことに努めていく。われわれはこの使命を
達成していくために、下記の目標を設定する。
・カリキュラム及び教材に関する情報の共有
・共同研究プロジェクト、合同講座、国際シンポジウム及びグローバル・クラスルーム活動
の推進
・会員校の教育研究活動の助言とグローバルビジネス教育を向上させる持続的努力の促進
・認証評価によるビジネス教育の向上」
ABEST21 は、2006 年 7 月 2 日、ABEST21 総会及び理事会において、21 世紀の国際社会の
より豊かな未来を切り拓いていくために、世界経済の持続的発展を支えていく高い倫理観と
グローバルな視野を身につけた企業家精神に富む人材育成を目途としたビジネススクールの
教育の質維持向上を目指す「ABEST21 認証評価基準」を制定した。そして、ビジネススクー
ルの教育の質保証を実践していくために、2006 年 6 月 1 日に NPO 法人の資格を取得し、更
に 2007 年 10 月 12 日に文部科学大臣よりわが国の経営分野専門職大学院認証評価機関とし
て認証を受けた。
ABEST21 は、認証評価を通じてビジネススクールのマネジメント教育の質維持向上に資す
る評価に努め、わが国のビジネススクール全体の活性化とグローバル化に寄与していく。
2009 年 3 月 24 日
THE ALLIANCE ON BUSINESS EDUCATION AND SCHOLARSHIP
FOR TOMORROW、a 21st century organization
理事長 伊 藤 文 雄
2
Ⅰ 認証評価の概要
1.2008 年度認証評価受審専門職大学院
ABEST21 は、2008(平成 20)年度認証評価として、下記4大学の経営専門職大学院の認
証評価をした。
1)青山学院大学大学院国際マネジメント研究科国際マネジメント専攻
2)一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営・金融専攻
3)神戸大学大学院経営学研究科現代経営学専攻
4)筑波大学大学院ビジネス科学研究科国際経営プロフェッショナル専攻
2.評価の基本方針
ABEST21 は、企業等組織の経営管理、技術経営、経営情報システム、ファイナンス等の経
営活動に携わる高度の専門職業能力を有する人材養成を目的として設置されたビジネススク
ール(経営専門職大学院)の認証評価を行った。
ABEST21 は、認証評価に際して、ビジネススクールの主体的な努力による教育の質の維持
向上を奨励し、意欲的な「自己点検評価」を推進し、個性豊かな特徴ある教育の実現に向け
て支援していく。それ故に、ABEST21 は、自己点検評価による PDCA サイクルの稼動を促進
させ、教育の質改善を促していく。ABEST21 は、信頼性のある評価を実現していくために、
評価の客観性に努め、
「ピュアーレビュー(Peer Review)
」の評価を実施した。また、ABEST21
は、21 世紀のグローバル化時代の人材育成の重要性から、国際的に通用する人材育成の「国
際的視点」からの評価と当該ビジネススクールの教育の「個性」を伸長する視点からの評価
を行った。
3.PDCA サイクルによる評価
ABEST21 は、認証評価の基本的目的が教育の質保証にあるために、PDCA サイクルの稼動
による質改善の実現を図る評価を行った。そのために、受審校に下記の分析を要請した。
1)ABEST21「経営分野専門職大学院認証評価基準」と専門職大学院の「現況」とのギャッ
プ分析(自己点検と自己評価の分析)
2)自己評価による改善課題の分析
3)課題解決の戦略計画の分析
4)改善計画を実行する行動計画の分析
従って、2008 年度認証評価においては、SWOT 分析によりビジネススクールのミッション
を実現していく戦略計画の立案が必要であることを求めていく評価をした。
4.認証評価プロセス
評価は、下記の三段階を経て行った。
1)第一段階は、認証評価の「受審申請」の審査を行った。ABEST21 は経営専門職大学院の
教育プログラムを認証評価の対象としているので、提出された申請書及び提出資料に基
づいて受審資格の審査をした。
2)第二段階は、受審校が ABEST21 認証評価基準に従ってギャップ分析をした「認証評価計
画」の審査を行った。
「認証評価計画」は、専門職大学院設置基準の最低の基準が充足さ
れていることを、認証評価受審に向けての体制が整備されていることを、そして認証評
3
価の審査の対象となる「自己点検評価報告」の作成が可能であることを、それぞれ確認
した。「認証評価計画」は、
「専門審査委員会」および「認証評価委員会」によって下記
の評価がなされた。
合 格(P)
:
「認証評価計画は、評価基準の基本視点を中心とした自己点検評価の分析が
適切に行われ、認証評価を受ける体制が整備されている計画である。
」
不合格(F)
:
「認証評価計画は、認証評価基準による「自己点検評価」の分析が十分では
なく、認証評価を受けるためには自己点検評価の分析の見直しが必要であ
る。
」
3)第三段階は、
「認証評価計画」に基づいて、「基本視点」及び「細目視点」でギャップ分
析された「自己点検評価報告」の審査がなされた。「自己点検評価報告」は専門審査委
員会及び認証評価委員会の審査によって、自己点検評価の分析、改善課題の分析、課題
解決の分析、改善実行計画の分析が的確になされ、教育の質維持向上が保証され得るも
のであることの評価をした。「自己点検評価報告」の審査結果に基づいて、下記の「認
証評価結果」が示された。
評価 A:
「教育研究の方策は、評価基準がほとんど又は全てが満たされ、教育研究の質維
持向上が十分に期待でき、非常に優れている。」
評価 B:
「教育研究の方策は、評価基準が大体において満たされ、教育研究の質維持向上
が期待でき、優れている。」
評価 C:
「教育研究の方策は、評価基準がある程度満たされてはいるが、教育研究の質維
持向上に改善の余地がある。」
4)上記のプロセスに従い、2008 年度認証評価においては、2009 年 1 月 31 日に専門審査委員会
が開催され、専門審査小委員会の「自己点検評価報告」に対する審査報告を審議し、
「認証評
価審査結果(案)
」を作成し、認証評価委員会に答申した。ABEST21 は、最初の認証評価の
審査であるので、認証評価の相互理解を深めるために、2009 年 2 月 5 日、各受審校に「認証
評価審査結果(案)
」の内示をした。内示の内容は、自己点検評価分析の評価、改善課題分析
の評価、戦略計画策定の評価、行動計画策定の評価そして「認証評価審査結果(案)」であっ
た。各受審校との意見申立調整を行った後に、認証評価委員会委員の「認証評価結果(案)」
に対する意見聴取を行い、2009 年 3 月 24 日の理事会及び 2009 年 3 月 25 日の認証評価委員
会及び理事会において、4大学のビジネススクールに対する認証評価を行った。
5.認証評価基準
ABEST21 評価基準は、
「基本視点(Common Standards)」と「細目視点(Segment Standards)
」
から構成される。
「基本視点」は、アジア地域のビジネススクールに適用できるグローバル・
スタンダードな基準として通用する 18 の評価項目から成る。「細目視点」は、アジアのセグ
メント・スタンダードとして、わが国の経営分野専門職大学院の認証評価に適用する基準と
して「専門職大学院設置基準」に準拠した 81 の評価項目からなる。ABEST21 は、ABEST21
の「基本視点」と「細目視点」で認証評価を行った。
評価項目は、教育研究活動の内容に従い評価項目を五つの評価対象分野、1)
「教育研究上
の目的」、2)
「教育課程等」
、3)
「学生」
、4)
「教員組織」そして5)
「管理運営と施設設備」
に分け、18 の評価基準を制定した。そして各基準を「基本視点」として教育研究活動状況を
より詳細に分析していくために、81 の「細目視点」を制定した。その関連は下表の通りであ
る。
4
「基本視点」と「細目視点」との関連
分野
基本視点
第1章
基準 1:教育研究上の目的
「教育研究上の目的」
基準 2:教育研究上の目的達成の重要な要素
基準 3:教育研究上の目的の継続的な見直し
基準 4:財務戦略
第2章
基準 5:学習目標
「教育課程等」
基準 6:教育課程
基準 7:教育水準
第3章
基準 8:求める学生像
「学生」
基準 9:アドミッション・ポリシーと入学者選抜
基準 10:学生に対する経済的及び職業支援
基準 11:教育の質保証のための取組
基準 12:学生の学業奨励
第4章
基準 13:教員組織
「教員組織」
基準 14:教員の資格
基準 15:教員に対する教育研究支援
基準 16:教員の任務
第5章
基準 17:管理運営
「管理運営と施設設備」
基準 18:施設・設備
細目視点数
5
3
4
3
3
7
8
3
4
4
8
3
4
6
5
3
3
5
2008 年度認証評価基準
基準 1「教育研究上の目的」
・基本視点「認証評価を申請する専門職大学院(以下「申請大学院」という。)は、教育研究の活
動の意思決定の指針となる教育研究上の目的を明確に定めていなければならない。教育研究上
の目的は、現代の経済・社会・文化のグローバル化、高科学技術化、情報化及び環境保護の時
代的要請に応えた人材養成の教育研究上のミッション(mission)である。従って、申請大学院は、
教育研究上の目的を、ステークホルダー、例えば、教員、職員、在籍学生、修了生及び企業等
組織等の意見を聴取するプロセスによって明確に定め、定期的な検証及び改正を行い、学則等
に周知公表していなければならない。
」
・細目視点1「申請大学院は、教育研究上の目的をステークホルダーの意見を聴取して定めてい
くプロセスを明確にしているか。
」
・細目視点2「教育研究上の目的は、“高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び
卓越した能力を培う”という学校教育法第 99 条第 2 項の規定から外れるものではないか。」
・細目視点3「教育研究上の目的は、国際的に活躍できる高度専門職業人養成に配慮したものと
なっているか。
」
・細目視点4「申請大学院は、教育研究上の目的を定めていくプロセスを定期的に検証できる仕
組みとなっているか。
」
・細目視点5「教育研究上の目的は、申請大学院が発行する印刷物等、例えば、学則、入学案内、
授業要覧及び履修要綱等に、また、ホームページに掲載されているか。」
基準2「教育研究上の目的達成の重要な要素」
・基本視点「申請大学院の教育研究上の目的は、経営分野の高度専門職業人養成に重要な要素を
含む内容のもので、申請大学院の属する組織である大学の教育研究上の目的に適合していなけ
れ ばならない。
」
・細目視点1「教育研究上の目的は、経営分野の組織のマネジメントに重要な高度の専門知識・
5
技能及び基礎的素養を修得する内容ものとなっているか。」
・細目視点2「教育研究上の目的は、学生のキャリア形成に寄与する内容のものとなっているか。」
・細目視点3「教育研究上の目的は、教員の研究活動等に貢献する内容のものとなっているか。」
基準3「教育研究上の目的の継続的な検証」
・基本視点「申請大学院の教育研究上の目的を定期的に検証していくプロセスを定め、教育研究
環境の変化に対応して教育研究上の目的を見直していかなければならない。」
・細目視点1「申請大学院は、教育研究上の目的を継続的に検証していくプロセスを確立してい
るか。
」
・細目視点2「申請大学院は、教育研究上の目的を継続的に検証していくために必要な基礎資料
及びデータ類の情報収集及び管理の体制を整備しているか。」
・細目視点3「申請大学院は、教育研究上の目的を継続的に検証していく組織的な取組をしてい
るか。
」
・細目視点4「申請大学院は、教育研究上の目的を継続的に検証していくために、ステークホル
ダーの意見を聴取する機会を設けているか。」
基準4「財務戦略」
・基本視点「申請大学院は、教育研究上の目的達成のために、必要な予算を確保する短期的及び
長期的な財務戦略を有していなければならない。」
・細目視点1「申請大学院は、教育研究上の目的達成に必要な財政的基礎を有しているか。
」
・細目視点2「申請大学院は、教育研究上の目的達成に必要な資金獲得の財務戦略を立てている
か。
」
・細目視点3「申請大学院は、教育研究上の目的達成に必要な予算措置をしているか。
」
基準5「学習目標」
・基本視点「申請大学院は、教育課程を体系的に編成し、イノベーションと知見、グローバル事
業及び科学技術の普及等といった要素を含む明確な学習目標を定めていなければならない。
」
・細目視点1「申請大学院は、シラバスにおいて学習目標を明確に定め、学生に周知公表してい
るか。
」
・細目視点2「申請大学院は、学生の授業科目の履修に対して、履修指導指針を定め、履修相談
に応じる配慮をしているか。
」
・細目視点3「申請大学院は、学生の学習目標の達成のために、学生、教員及び職員の間のコミ
ュニケーションに十分な配慮をし、学習相談及び学習助言の円滑化を図る方策をとっている
か。
」
基準6「教育課程」
・基本視点「申請大学院は、教育研究上の目的達成のために、教育課程の体系的な編成をしてい
なければならない。申請大学院は、教育課程を編成するプロセスを有し、絶えず検証していか
なければならない。
」
・細目視点1「申請大学院は、理論的教育と実務的教育の架橋に留意して、教育研究上の目的及
び授与する学位に照らして、教育課程の体系的な編成をしているか。」
・細目視点2「申請大学院は、教育研究上の目的に照らして、経営分野の高度専門職業人養成に
必要な専門的知識・技能の修得、高度の職業能力の修得、職業倫理観の涵養及び国際的視野の
拡大を目指した教育課程の編成に志向しているか。
」
・細目視点3「申請大学院は、教育研究上の目的に照らして、経営分野の高度の専門職業能力の
修得に不可欠なコア科目の配置に配慮しているか。コア科目として、例えば、
「企業経営の経済
学」
、
「組織行動」
、
「統計分析」及び「企業倫理とコンプライアンス」等の科目を、また、コア
科目の教育に基づく基本科目として、例えば、
「マネジメント」、
「マーケティング」、
「アカウン
6
ティング」
、
「ファイナンス」及び「経営情報システム」等の科目を配置しているか。また、情
報分野においても、コア科目として、例えば、
「情報システム」の科目を、また、基本科目とし
て「インターネットビジネス」
、
「インターネットガバナンス」、
「IT ソリューション」、「ウエッ
ブ戦略」や「情報セキュリティ」等の科目を配置しているか。」
・細目視点4「申請大学院は、教育課程の体系的な編成に際して、経営分野の教育研究の動向あ
るいは実務の傾向に配慮したものとしているか。」
・細目視点5「申請大学院は、教育課程の編成において、例えば、他研究科の授業科目の履修、
他大学との卖位互換、インターンシップによる卖位認定等の措置を講じているか。
」
・細目視点6「申請大学院は、教育課程の編成において、事例研究、現地調査、双方向又は多方
向に行われる討論又は質疑応答その他の適切な授業の方法を導入しているか。」
・細目視点7「申請大学院は、多様なメディアを高度に利用して通信教育の授業を行う場合には、
授業の実施方法の整備に努め、教育効果の向上に努めているか。
」
基準7「教育水準」
・基本視点「申請大学院は、教育課程において学生の学習目標を明確に定め、学習目標の達成を
保証する学習環境及び学習指導体制を整備していなければならない。」
・細目視点1「申請大学院は、教育課程において学生の学習目標を明確に定め、教育内容の水準
を定めているか。
」
・細目視点2「申請大学院は、学習目標の達成に必要な学習環境を整備しているか。」
・細目視点3「申請大学院は、学生の履修科目の成績評価の基準及び教育課程修了の判定基準を
学則等に明確にし、学生に周知公表しているか。」
・細目視点4「申請大学院は、成績評価、卖位認定及び課程修了判定を公正に実施し、客観性と
厳格性を維持する措置を講じているか。
」
・細目視点5「申請大学院は、科目履修登録の学生数を、授業の方法、施設設備及びその他の教
育上の諸条件を考慮して、授業の教育効果が十分に得られる適正数としているか。
」
・細目視点6「申請大学院は、学生の多様性を踏まえて、学生に対する履修指導、学習相談及び
助言等を適切に行っているか。また、通信教育を行う場合には、そのための学習支援及び教育
相談を適切に行っているか。
」
・細目視点7「申請大学院は、授業開講科目の授業目的、授業概要、授業計画、授業方法、使用
教材、オフィスアワー及び授業評価基準等を明記したシラバスを作成、公開し、教育効果の向
上に結びつく活用をしているか。
」
・細目視点8「申請大学院は、学生の科目履修、授業出欠、卖位取得及び学業成績の状況等につ
いての情報を教員間で共有し必要な対策を講じているか。」
基準8「求める学生像」
・基本視点「申請大学院は、申請大学院の教育課程の教育を受けるに望ましい志願者層に対して、
入学者選抜を受ける公正な機会を提供していなければならない。
」
・細目視点1「申請大学院は、入学志願者に対して申請大学院の求める学生像を明確に示してい
るか。
」
・細目視点2「申請大学院は、入学者選抜において申請大学院の求める学生像の学生を実際に入
学させているか。
」
・細目視点3「申請大学院は、経営分野のグローバル化に対応して多様な知識または経験を有す
る者の入学に努めているか。
」
基準9「アドミッション・ポリシーと入学者選抜」
・基本視点「申請大学院は、アドミッション・ポリシー(入学者受入方針)を明確に定め、周知公
表していなければならない。また、申請大学院は、アドミッション・ポリシーに従って、入学
7
者選抜において入学者の適性及び能力等を客観的かつに厳格に評価していなければならない。」
・細目視点1「申請大学院のアドミッション・ポリシーは、申請大学院の教育研究上の目的を達
成する内容のもとなっているか。
」
・細目視点2「申請大学院は、アドミッション・ポリシーにおいて申請大学院の教育の理念、教
育研究上の目的、設置の趣旨、求める学生像、入学者選抜の方法及び教育研究の活動状況等を
明確に定め、印刷物等に明確に記載し、入学志願者に周知公表しているか。」
・細目視点3「申請大学院は、入学者選抜において、申請大学院の教育を受けるに必要な入学者
の適性及び能力等を客観的に厳格に評価し、入学者選抜を公正に実施しているか。
」
・細目視点4「申請大学院は、入学者選抜において、実入学者数が入学定員を大幅に超える、又
は大幅に下回る状況になっていないか。また、その場合には、これを改善するための取組を行
うなど入学定員と実入学者数との関係の適正化を図っているか。
」
基準 10「学生に対する経済的及び職業支援」
・基本視点「申請大学院は、学生が教育課程の授業の履修に専念できるよう、学生支援体制を整
備していなければならない。
」
・細目視点1「申請大学院は、経済的支援を受ける学生のために、多様な措置を講じているか。」
・細目視点2「申請大学院は、学生の志望や能力に応じた進路の選択やキャリアの形成が適切に
できるよう必要な情報の収集・管理・提示や相談を行う体制を整備しているか。」
・細目視点3「申請大学院は、学生が在学期間中の学業継続に専念できるよう、学生に経済的支
援及び修学や学生生活に関する相談・助言などを行なう支援体制を整備しているか。」
・細目視点4「申請大学院は、特別な支援を必要とする留学生及び障害のある学生等に対して学
習支援及び生活支援等を適切に行っているか。
」
基準 11「教育研究の質保証のための取組」
・基本視点「申請大学院は、経営分野において国際的に通用する高度の専門職業能力を修得した
学生を社会に輩出していくために、教育研究の質の維持向上を図る取組をしていなければなら
ない。
」
・細目視点1「申請大学院は、履修科目の卖位修得、教育課程の修了及びその他資格取得の状況
等から、学生の授業評価の結果から、修了後の進路の状況等から、また、ステークホルダーの
意見聴取の結果から、申請大学院の教育研究上の目的達成を検証しているか。」
・細目視点2「申請大学院は、自己点検・評価の結果を広く社会に公開しているか。」
・細目視点3「申請大学院は、自己点検・評価の結果をフィードバックし、教育研究の質の維持
向上及び改善を図る組織的な取組をしているか。」
・細目視点4「申請大学院は、自己点検・評価の結果に基づくファカルティ・ディベロップメン
トを組織的に実施しているか。申請大学院は、ファカルティ・ディベロップメントにおいてお
おむね 5 年以上の実務経験を有し、かつ、高度の実務の能力を有するもの(以下「実務家教員」
という。
)の教育上の指導能力の向上及び学術教員の実務の理解の向上に、それぞれ努めている
か。
」
・細目視点5「申請大学院は、ファカルティ・ディベロップメントを教育の質の維持向上及び改
善に結びつけた措置を講じているか。
」
・細目視点6「申請大学院は、履修科目の履修登録上限を設定し、卖位修得の実質化への取組み
をしているか。
」
・細目視点7「申請大学院は、学生の科目履修の効果を高める科目配置の時間割設定を行ってい
るか。
」
・細目視点8「申請大学院は、標準修業年限を短縮している場合には、教育研究上の目的に照ら
して、十分な教育成果が得られる教育方法及び授業時間割設定の配慮をしているか。」
8
基準 12「学生の学業奨励」
・基本視点「申請大学院は、教育研究上の目的達成のために必要な学生の学業奨励の取組をして
いなければならない。
」
・細目視点1「申請大学院は、優秀な学業成績を上げた学生を報奨する制度を整備しているか。」
・細目視点2「申請大学院は、学業継続の困難な学生に経済的支援や学習支援等の相談を行う体
制を整備しているか。
」
・細目視点3「申請大学院は、学生の学業奨励の一環として、例えば、入学時や新学期の開始前、
また、教育課程の変更時にオリエンテーションを実施する機会を設けているか。」
基準 13「教員組織」
・基本視点「申請大学院は、教育研究上の目的達成のために必要な教員組織を整備していなけれ
ばならない。
」
・細目視点1「申請大学院は、専門職大学院設置基準に求められる教育上必要な専任の教員を任
用しているか。
」
・細目視点2「申請大学院は、教育課程の教育研究上の目的達成に必要と認められる授業科目に
必要かつ十分な専任の教授又は准教授を任用しているか。」
・細目視点3「申請大学院は、開講する授業科目について高度の教育上の指導能力があると認め
られる下記の各号に該当する専任の教員を、専攻ごとに「文部科学大臣が別に定める数」
(平成
15 年文部科学省告示第 53 号第1条。以下同じ。
)を置いているか。
1)専攻分野について、教育上又は研究上の業績を有する者
2)専攻分野について、高度の技術・技能を有する者
3)専攻分野について、特に優れた知識及び経験を有する者」
・細目視点4「申請大学院は、専任教員の数のおおむね 3 割以上を実務家教員として置いている
か。
」
基準 14「教員の資格」
・基本視点「申請大学院は、教育研究上の目的達成のために必要な教育上の指導能力を有する教
員を確保していなければならない。
」
・細目視点1「申請大学院は、教育研究上の目的達成のために必要な教育上の指導能力を有する
教員を確保しているか。
」
・細目視点2「申請大学院は、専任教員の最近 5 年間の教育研究業績等により、教育研究上の目
的達成のために必要な教育上の指導能力を有する教員を定期的に評価しているか。
」
・細目視点3「申請大学院は、専任教員の最近 5 年間の教育研究業績の資料を開示しているか。」
・細目視点4「申請大学院は、教員の教育研究上の目的達成のために必要な教育上の指導能力を
有する教員の任用及び昇任に関する規則及び基準を定めているか。」
・細目視点5「実務家教員は、実務家教員の実務経験に適した授業科目の担当がなされているか。」
・細目視点6「申請大学院は、実務家教員の実務経験について定期的な評価をしているか。
」
基準 15「教員に対する教育研究支援」
・基本視点「申請大学院は、教員の教育研究活動の推進のために必要な教育研究環境の整備をし
ていなければならない。
」
・細目視点1「申請大学院は、教員の教育研究活動の推進に必要な教育研究環境を整備するプロ
セスを定めているか。
」
・細目視点2「申請大学院は、教員の教育研究活動の推進と教員の授業担当時間数との関係につ
いて、適切な範囲内に止めるように配慮しているか。」
・細目視点3「申請大学院は、教員の教育研究活動の推進に必要な資金調達の措置を講じている
か。
」
9
・細目視点4「申請大学院は、教員の教育研究活動の推進に必要な事務職員及び技術職員等の支
援体制を整備しているか。
」
・細目視点5「申請大学院は、教員の教育研究活動の推進に必要な教育課程の活性化を図る適切
な措置を講じているか。
」
基準 16「教員の任務」
・基本視点「申請大学院は、教育研究上の目的達成のためにステークホルダーとの意思疎通の関
係を維持し、教員に学術研究の推進を求め、教育研究上の目的達成を図る授業の実現を求めて
いかなければならない。
」
・細目視点1「教員は、自己点検・評価及び学生の授業評価の結果に基づいて、授業の内容、使
用教材及び授業方法等の改善を継続的に行っているか」について、学生による授業評価が実施
されているが、組織としての活用方法を議論する必要があると自己評価している。
・細目視点2「教員は、学生の学習到達目標の達成のために絶えず新しい専門的知識や技能の教
授に努めているか。
」
・細目視点3「教員は、学生の学習到達目標の達成のためにオフィスアワーの設定及び電子媒体
等を通じて学生との対話を積極的に図り、学生の学習指導に努めているか。」
基準 17「管理運営」
・基本視点「申請大学院は、教育研究上の目的達成のために、教員の教育研究の活動を適切に支
援していく管理運営の体制を整備していなければならない。」
・細目視点1「申請大学院は、教育研究上の目的達成のために必要な申請大学院の管理運営に関
する事項を審議する教授会及び委員会等を設置し、審議事項を尊重し、教育研究環境を改善し
ていく体制を講じているか。
」
・細目視点2「申請大学院は、申請大学院の設置形態及び規模に応じた管理運営の事務体制を組
織しているか。
」
・細目視点3「申請大学院は、申請大学院の教育研究上の目的達成のために、教員の教育研究活
動を支援する任務を果たす規模と機能を持った管理運営の組織を設けているか。」
基準 18「施設支援」
・基本視点「申請大学院は、申請大学院の教育研究上の目的達成のために、教育研究の施設及び
設備等を整備していなければならない。
」
・細目視点1「申請大学院は、申請大学院の授業の効果を高める教室、演習室及び実習室等の施
設及び設備等を質的にも量的にも整備しているか。
」
・細目視点2「申請大学院は、各専任教員に対して個室の研究室を用意しているか。」
・細目視点3「申請大学院は、図書、学術雑誌及び視聴覚資料その他の教育研究上必要な資料を
系統的に収集しているか。
」
・細目視点4「申請大学院は、申請大学院の教育研究組織及び教育課程に応じた施設及び設備を
整備し有効に活用しているか。
」
・細目視点5「申請大学院は、学生の自主的な学習に対する学習環境を十分に整備し、学生の利
用に供しているか。
」
6.評価実施体制
ABEST21 は、認証評価の審査のために、
「認証評価委員会(Accreditation Committee)」と
「専門審査委員会(Pre-Accreditation Committee)
」を設置した。
1)認証評価委員会
認証評価委員会は、認証評価委員会規則第 4 条に従い、2 年任期で経営分野の専門家
及び実務家 15 名以上 20 名以内の委員で構成された。認証評価委員会は受審校の認証評
10
価申請を専門審査委員会に付議し、審査結果の答申を審議することを主目的とした。
2)専門審査委員会
専門審査委員会は、専門審査委員会規則第 4 条に従い、経営分野の専門家及び実務家 40
名以上 45 名以内の委員で構成された。専門審査委員会は、認証評価委員会より付議され
た諮問事項の実質的な審査を行うことを主な目的とし、受審校の「受審資格」と「認証
評価計画」の書面審査、そして「自己点検評価報告」の書面審査と現地調査を行った。
受審校の「自己点検評価報告」の審査は、専門審査委員会の下にピュアー・レビュー・
チーム(Peer Review Team)を組織して行った。
3)ピュアー・レビュー・チーム(PRT)
ピュアー・レビュー・チームは、受審校の「認証評価計画」と「自己点検評価報告」の
実質的な審査を行うために 3 名の委員から構成された。2008 年度認証評価の審査におい
ては、この 3 名の委員に加えて 2 名の国外の外国人委員が参加した。その結果、ピュア
ー・レビュー・チームは、skype を使用して国際的に行われ、また、現地調査にも参加
され英語による現地調査が行われた。
7.受審校の意見申立
専門審査委員会は、認証評価審査結果(案)を受審校に内示し、申立意見の調整を図るた
めに「申立意見調整委員会」を設置して、意見の調整を図った。専門審査委員会の「認証評
価審査結果(案)」の受審校への内示に対して、2 週間の意見申立の期間を設定した。
8.認証評価の審査
ABEST21 は、2008 年度受審校に対して、2009 年 1 月 31 日に専門審査委員会においてピ
ュアー・レビュー・チームの「自己点検評価報告」を承認し、「認証評価審査結果(案)」を
作成し、認証評価委員会に答申した。ABEST21 は、2009 年 2 月 5 日、各受審校に「認証評
価審査結果(案)
」の内示をし、同時に意見申立があった場合の対処として「申立意見調整委
員会」を設置した。意見申立の受審校との調整を経て、2009 年 3 月 24 日~25 日、ABEST21
理事会と認証評価委員会を開催し、認証評価結果を決定した。
なお、ABEST21 は、改善計画の履行状況の報告を認証校に求め、毎学事年度末に「年次計
画履行報告書」の提出を求め、教育の質改善の成果を確認していくこととした。
9.審査委員会
ABEST21 は、2008 年度認証評価の審査に対して、下記の委員会(委員任期:2007 年 4 月
1 日~2009 年 3 月 31 日)を設置して行った。
1)認証評価委員会委員(Accreditation Committee members)
委員長
Robert S. SULLIVAN(Dean, Rady School of Management, University of California at San Diego)
副委員長
竹内 弘高 (一橋大学大学院国際企業戦略研究科長)
青木
有信
利晴 (株式会社 NTT データ相談役)
睦弘 (株式会社東芝顧問)
Ilker BAYBARS(Deputy Dean, Carnegie Mellon Tepper School of Business, Carnegie Mellon
University、USA)
Yuji IJIRI(Professor, Carnegie Mellon Tepper School of Business, Carnegie Mellon University)
11
Susie Nobue BROWN(Associate Dean, Red McCombs School of Business, University of Texas at
Austin, USA)
古川 享 (慶応義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構教授)
羽矢 惇 (新日鉄エンジニアリング株式会社代表取締役社長)
Tae-Sik AHN(Dean, Graduate School of Business Administration, Seoul National University)
Xiongwen LU(Dean, School of Management, Fudan University, CHINA)
小枝
村上
永井
至 (日産自動車株式会社名誉会長)
輝康 (株式会社野村総合研究所シニアフェロー)
裕久 (筑波大学大学院ビジネス科学研究科国際経営プロフェッショナル専攻専攻長)
岡村
尾原
斎藤
正 (日本商工会議所会頭)
蓉子 (IFI ビジネススクール学長, (財)ファション産業人材育成機構)
孝一 (单山大学経営学部・大学院ビジネス研究科教授)
杉山 武彦 (一橋大学長)
冨浦 梓 (独立行政法人科学技術振興機構、社会技術開発センター、研究開発成果実装支援
プログラム、プログラムオフィサー)
内永 ゆか子(ベルリッツ・インターナショナル・インク会長兹 CEO 兹社長)
Oleg VIKHANSKIY ( Dean, Graduate School of Business Administration, Moscow State
University)
2)専門審査委員会委員(Pre-Accreditation Committee members)
委員長
鈴木 久敏 (筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授)
副委員長
堀内 正博 (青山学院大学大学院総合文化政策学部教授)
淺田 孝幸 (大阪大学大学院経済学研究科教授
Chester C. BORUCKI (Professor, Temple University in Japan)
Siriwut BURANAPIN (Associate Dean, Faculty of Business Administration, Chiang Mai
University, Thailand)
Ming Yu CHENG (Director, Research Management Center, Multimedia University,
Malaysia)
願興寺 晧之 (单山大学大学院ビジネス研究科教授)
Anna GRYAZNOVA (Graduate School of Business Administration, Moscow State University,
Russia)
Zhonghe HAN (Adjunct Professor, School of Management, Fudan University, China)
八田 進二 (青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授)
平木多賀人 (関西学院大学大学院経営戦略研究科教授)
広瀬
徹 (单山大学大学院ビジネス研究科教授)
保々 雅世 (日本オラクル株式会社常務執行役員)
井田 昌之 (青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授)
石田
寛 (関西学院大学大学院経営戦略研究科准教授)
砂川 伸幸 (神戸大学大学院経営学研究科教授)
Ali KHATIBI (Dean, Faculty of Business Management & Professional Studies, Management
& Science University, Malaysia)
熊平 美香 (株式会社エイテッククマヒラ代表取締役)
12
LI Kai (Dean, School of Business Administration, Northeastern University, China)
Changchong LU (Dean, School of Business Administration, Dongbei University of Finance
& Economics, China)
Qinhai MA (Associate Dean, School of Business Administration, Northeastern
University, China)
前田
昇 (青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授)
R.T. MURPHY (筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授)
森本 博行 (首都大学東京大学院社会科学研究科経営学専攻長)
勉 (青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授)
宗敬 (青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授)
俊哉 (立教大学経営学部国際経営学科教授)
中野
中里
尾崎
重田 晴生 (青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授)
Themin SUWARDY (Associate Dean, School of Accountancy, Singapore Management
University, Singapore)
舘
昭 (桜美林大学大学院国際学研究科教授)
高橋 文郎 (青山学院大学大学院国際マネジメント研究科長)
高森
寛 (LEC 会計大学院教授)
舘岡 康雄 (静岡大学大学院工学研究科教授)
椿
広計 (筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授)
上野 信行 (廣島県立大学経営情報学部長、教授)
内平 直志 (株式会社東芝研究開発センター次長)
若林 靖永 (京都大学大学院経営管理研究部教授)
山田
秀 (筑波大学大学院ビジネス科学研究科長)
湯本 祐司 (单山大学大学院ビジネス研究科教授)
Zhiwen YIN (Associate Dean, Faculty of Management, Fudan University, China)
Alexander ZOBOV (Professor, Graduate School of Business Administration, Moscow State
University, Russia)
3)2008 年度認証評価 Mentors 及び Peer Review Teams (PRT)
青山学院大学大学院国際マネジメント研究科国際マネジメント専攻
メンター委員会
委員長 鈴木 久敏 (筑波大学)
委 員 広瀬
徹 (单山大学)
委 員 舘
昭 (桜美林大学)
PRT 委員会
委員長 湯本
委 員 舘岡
委
委
委
員
員
員
祐司
康雄
(单山大学)
(静岡大学)
内平 直志 (株式会社東芝)
Ali KHATIBI (Management & Science University, Malaysia)
Qinhai MA (Northeastern University, China)
13
一橋大学大学院国際企業経営戦略研究科経営・金融専攻
メンター委員会
委員長 堀内 正博 (青山学院大学)
委 員 椿
広計 (筑波大学)
委 員 森本 博行 (首都大学東京)
PRT 委員会
委員長 平木多賀人 (関西学院大学)
委 員 砂川 伸幸 (神戸大学)
委 員 R.T. MURPHY (筑波大学)
委 員 Zhiwen YIN (Fudan University, China)
委 員 Ming Yu CHENG (Multimedia University, Malaysia)
神戸大学大学院経営学研究科現代経営学専攻
メンター委員会
委員長 伊藤 文雄 (学校法人青山学院)
委 員 尾崎 俊哉 (立教大学)
委 員 山田
秀 (筑波大学)
PRT 委員会
委員長 森本 博行 (首都大学東京)
委
委
委
委
員
員
員
員
椿
広計 (筑波大学)
前田
昇 (青山学院大学)
Anna GRYAZNOVA (Moscow State University, Russia)
Zhonghe HAN (Fudan University, China)
筑波大学大学院ビジネス科学研究科国際プロフェッショナル専攻
メンター委員会
委員長 湯本 祐司 (单山大学)
委 員 前田
昇 (青山学院大学)
委 員 内平 直志 (株式会社東芝)
PRT 委員会
委員長 尾崎
委 員 井田
俊哉
昌之
(立教大学)
(青山学院大学)
委
委
員
員
熊平 美香 (株式会社エイテッククマヒラ)
LI Kai (Northeastern University, China)
委
員
Chester C. BORUCKI
(Temple University in Japan)
4)2008 年度認証評価意見申立調整委員会
委員長
委 員
湯本 祐司
平木多賀人
(单山大学)
(関西学院大学)
委
委
森本
尾崎
(首都大学東京)
(立教大学)
員
員
博行
俊哉
14
Ⅱ「受審申請」の審査
1.受審教育プログラム
神戸大学大学院経営学研究科は、1902 年に創始された旧制神戸高等商業学校をそのルーツ
とし、
「マネジメント・システム専攻」
、
「会計システム専攻」、
「市場科学専攻」、
「現代経営学
専攻」から構成されている。今回、認証評価を受審する専門職大学院は、そのなかの「現代
経営学専攻(以下「神戸大学ビジネススクール」という。)」である。神戸大学ビジネススク
ールは、1989 年、大学院設置基準第 14 条特例を適用した昼夜開講制の「日本企業経営専攻」
(修士課程)として設置された。その後、1999 年、大学院重点化を契機に「現代経営学専攻」
に改組し、2002 年に「専門大学院」に改編し、2003 年に「専門職大学院」に移行した。学
生入学定員は 69 名、収容定員は 138 名、2007 年度在籍学生数は 158 名、2008 年度入学者数
は 72 名で在籍学生数は 145 名であり、適正な学生規模となっている。教員数も専門職大学院
設置基準で求められる必要教員数 11 名を上回る 21 名の専任教員数が就任している。
神戸大学ビジネススクールの教育プログラムの特徴は、
「神戸方式」と呼ばれ、日本型 MBA
教育の確立をめざして、第 1 に体系的な経営学全般の講義、第 2 に「プロジェクト方式」に
よるグループ研究、第 3 に現代経営学演習による専門職学位論文(修士論文)作成の 3 要素
を体系化した「研究に基礎を置く教育(Research-based Education)」を実践している点にあ
る。特に、
「プロジェクト方式」は、現実に企業が抱える経営問題について、フィールドで収
集されたデータに基づいて議論し、経営学の理論的・実証的研究を行うことを目的としてお
り、
「ケースプロジェクト研究」
、
「テーマプロジェクト研究」からなる。これは、本専門職大
学院における MBA 教育プログラムの根幹をなすものであり、学生が職場で直面している問題
を持ち寄り、類似した問題に直面している学生と共同して調査・分析を実施し、問題解決策を
探索していく理論的・実証的研究を行うことを目的としている。
神戸方式と呼ばれる教育プログラムは、体系的な経営学全般の知識の修得とは別に、企業
の中核人材が持つべき事業観や人間観、洞察力と行動力について、グループ研究を通じて自
発的な学習を促し、最終的に学生個人が専門職学位論文を執筆できるように編成されている
点が日本型 MBA 教育とする所以であり、米国における典型的な MBA 教育プログラムとは趣
旨の異なる独自性が評価される。
本プログラムで授与する学位は、経営学修士(専門職)
(Master
of Business Administration)である。本専門職大学院は、その前身の「日本企業経営専攻」か
らこれまでに 742 名の有為な人材を産業社会に輩出している。
2.提出書類
1)様式‐1:
(申請書)
2)様式‐2:
(分野別認証評価申請大学院の所属する大学の概要)
3)様式‐3:
(分野別認証評価申請大学院の概要)
4)申請専門職大学院の文部科学省に提出した設置認可申請書コピー
3.受理審査結果
神戸大学ビジネススクールは、下記の所定書類を添えて THE ALLIANCE ON BUSINESS
EDUCATION AND SCHLARSHIP FOR TOMORROW, a 21st century organization(ABEST21)に分野
別(経営)認証評価受審申請をした。ABEST21 は所定の手続に従い 2007 年 10 月 16 日開催
の認証評価委員会において、専門審査委員会の審査結果に基づき、認証評価受審申請の受理
を承認した。
15
Ⅲ
認証評価の審査
1.提出書類
1)「認証評価計画」
2)「自己点検評価報告」
3)カリキュラム
4)教員組織
5)教員教育研究業績
6)教育研究施設設備
7)KOBE UNIVERSITY
8))Graduate School
9)Business Administration
10)経営グローバル COE の使命
11)神戸大学大学院経営学研究科現代経営学専攻社会人 MBA プログラム専門職大学院入学案内
12)平成 19 年度前期専門職大学院(社会人 MBA コース)時間割表
平成 19 年度後期専門職大学院(社会人 MBA コース)時間割表
平成 20 年度前期専門職大学院(社会人 MBA コース)時間割表
平成 20 年度後期専門職大学院(社会人 MBA コース)時間割表
13)講義要項 2007
講義要綱 2008
14)Research Institute of Advanced Management 入会のご案内
15)「逸品」ものつくり経営塾(第Ⅱ期)参加企業募集についての案内(2 種類)
16)「テーマプロジェクト」中間発表会資料
2.「認証評価計画」の審査
1)自己点検評価分析の評価
(1)「教育研究上の目的」
神戸大学ビジネススクールは、「教育研究上の目的」として「・・・日本の経営方式やビジネ
スの慣行の合理性及び限界について正確な知識を持ち、それを土台にして、国際的に活躍で
きるビジネス・エリートを育成する・・・」を神戸大学大学院経営学研究科規則に明示している。
この「教育研究上の目的」の内容は、学生募集要項、学生便覧、ウエッブページ及びイーメ
ールジャーナルの Eureka 等にも掲載され、ステークホルダーに周知公表されている。「教育
研究上の目的」の定期的な検証も 2-3 年の周期で、ステークホルダーの意見を聴取して行わ
れている。特に、修了生の同窓会組織である MBA Café 及び修了生教員 MBA フェローから積
極的に意見聴取するシステムを構築している。しかし、「教育研究上の目的」を実現してい
くための資金調達のあり方については制度的な問題に直面している。経営学研究科の中で独
立専攻として専門職大学院の教育上の個性を伸長していくためには、適切な予算措置が不可
欠であるとの指摘は問題を的確に分析している。特に、神戸大学は国立大学法人であり、国
立大学法人固有の会計制度のために財務戦略の立案に関して制度的な制約があるため、十分
な予算措置がとれないことを指摘している。しかし、一方では“21 世紀 COE プログラム
(348,830 千円)”などの外部資金の獲得は積極的に行われており、教育研究活動のレベルの
16
高さを示している。
(2)「教育課程等」
神戸大学ビジネススクールは、「教育研究上の目的」に基づく学習目標を明確に設定し、
神戸大学大学院経営学研究科の学生便覧とウエッブページを通して、周知公表している。各
授業科目のシラバスにおいても、当該授業のテーマと目標、授業計画、成績評価基準などの
要点を明記し、学生への周知公表を図っている。
神戸大学ビジネススクールの MBA 教育プログラムは、
「講義科目」と「プロジェクト方式」
とから編成され、講義科目は「領域関連科目」と「その他科目」とに分類されている。
「領域
関連科目」は「ビジネス・ポリシー領域関連科目」
、
「マネジメント・組織領域関連科目」、
「イ
ノベーション・マネジメント領域関連科目」、「新規事業システム領域関連科目」から構成さ
れ、マネジメント全般についての基礎的知識と経営学の特定分野についての専門知識を提供
している。
「その他の科目」は、
「リサーチメソッド応用研究」、
「ミクロ経済学応用研究」、
「財
務会計応用研究」
、
「ファイナンス応用研究」、「国際経営応用研究」、「社会連携講座科目」そ
して「グローバルリンク科目」を配置し、経営学の特定分野の専門知識を提供している。
「プロジェクト方式」は、1年次前期の「プロジェクト実習」(必修)、1年次後期の「プ
ロジェクト研究」
(必修)
、そして2年次の「現代経営学演習」
(必修)によって実施され、プ
ロジェクトの完成による専門職学位論文の作成を目指している。
講義科目とプロジェクト方式の組合せによる教育課程は、土曜日集中開講を中心とした授
業体系を組んでいるために、科目配置が限られている。国際社会に通用する高度専門職業人
養成には学生の文化力の向上は不可欠であり、また「教育研究上の目的」の人材育成のため
には経営に対する倫理の教育もマイナーな問題とは考えられない。しかし、
「教育課程等」の
分析は、大筋において的確に行われ、課題の把握もなされていると考えられる。
神戸大学ビジネススクールは、授業科目の履修機会の拡大に向けて、平日夜間授業のより
通学に便宜な場所でのキャンパス外授業の実施をし、さらにそれを改善課題として認識して
いることは妥当である。神戸大学ビジネススクールの開講授業科目の充実及び「プロジェク
ト方式」の精緻化への取組みは神戸大学ビジネススクールの教育研究上の個性を伸長に資す
る適切なものである。しかし、高度専門職業人養成のためには、専門知識力強化のための教
育だけでなく、国際的に通用する文化力を身につけていくことも必要であり、その検討が望
まれる。
(3)「学生」
神戸大学ビジネススクールは、
「アドミッションポリシー」を明文化し公式化はしていない
が、神戸大学ビジネススクールで学ぶに相応しい学生像についての概要がウエッブページ及
び募集要項等に掲載されている。入学選抜は、二段階審査で行われている。第一次選考は「書
類審査」及び「学力審査」
(科目試験・小論文)により出願者の知識基盤を審査し、第二次選
考は第一次選考合格者に対して「面接審査」を実施し、現代経営に対する問題意識と問題解
決意欲等を審査し、体系的な入学選考が行われている。
学生の経済的支援については、学生が有職者であるという特性から現行の奨学金制度を適
用しにくい問題の指摘をしているが、現実的には有職者学生の経済的支援の問題は無視する
ことはできないと考える。
「学生による授業評価」は定期的に実施されており、5 点評価で平均 4.17 という比較的高
い評価を学生から得ていることが示されている。そして、その評価は個別授業の改善に向け
たデータとして有効利用されている。しかし、その分析結果が本専門職大学院の教育の質改
17
善に向けた制度的な改善に連動しているかは明確ではない。外部評価については、学外の有
識者から構成される「アドバイザリーボード」を設置し、その評価をウエッブページに公表
している。ファカルティ・ディベロップメントについて、神戸大学ビジネススクールは FD を
組織的に行っており、各教員が教育方法の改善や教育水準の維持向上についての認識を共有
化している。神戸ビジネススクールの「教育課程等」の分析は、総合的に適切に行われてお
り、主要な課題の把握もできていると判断する。
神戸大学ビジネススクールは教育特徴とする「プロジェクト方式」の精緻化を主要な課題
として捉え、その使命を担う学生を確保するための「アドミッションポリシー」の明確化、
授業評価データの制度的な活用方法及び神戸方式に特化した FD 活動の展開について、それぞ
れ重要な課題として捉えていることは適切である。
(4)「教員組織」
神戸大学ビジネススクールは、専門職大学院設置基準に基づく教育上必要な専任教員を確
保している。神戸大学ビジネススクールの学生収容定員は 138 名(入学定員 69 名)であるの
で、専門職大学院設置基準が定める必要な専任教員数 11 名を超える 21 名の専任教員数を擁
している。その内訳は学術教員(Academically Qualified faculty members)11 名と実務家教
員(Practically Qualified faculty members)10 名(48%)であり、実務家教員 30%以上の基
準をもクリアしている。専任教員 21 名の博士学位取得者数は 13 名で 62%であり、教育研究
の指導力の高さを示している。
神戸大学ビジネススクールの目指す「プロジェクト方式」の精緻化は、実務家教員の資質
の問題に関連してくる。それは実務家教員の資格条件についての根本的な見直しが必要とな
るからである。申請専門職大学院はより高度の学術的な指導力をも持ち合わせた実務家教員
の育成が「プロジェクト方式」の精緻化に不可欠なためであるからである。
「プロジェクト方
式」の精緻化は実践と理論の架橋に優れた研究業績を有する教員組織の編成が必要であり、
専門職大学院設置基準で規定されている実務家教員の資格要件及び構成比率の要件の見直し
を提言していかなければならない問題となるからである。また、2013 年以降における専門職
大学院での授業・演習と博士課程の研究指導を共に担当することの許容の問題についても対
応策を検討していることも重要なことである。
(5)「管理運営と施設設備」
神戸大学ビジネススクールは、専門職大学院運営委員会の審議を経て本研究科教授会で最
終決定する管理運営の意思決定プロセスを設定している。専門職大学院の中長期的な課題及
び規則等の変更を必要とする事案等の場合には、MBA タスクフォース委員会で審議し、研究
科教授会で決定するプロセスをとっている。
神戸大学ビジネススクールの管理運営の事務組織は、神戸大学ビジネススクールである現
代経営学専攻の所属する経営学研究科の事務組織に包括され、事務長のもとに教務係、総務
係及び会計係が配置された事務体制を敷いている。研究助成室は事務・各種支援を行う形で
管理運営されている。
神戸大学ビジネススクールは、経営学研究科の教育研究諸施設設備を共用し、六甲台キャ
ンパスの本館、三木記念館、第3学舎、アカデミア館、大阪府立図書館内の大阪教育センタ
ー及び神戸ハーバーランドの産業振興センタービル内の教室を使用し、六甲台キャンパスの
社会科学系図書館、大学院生用の自習室、統計パッケージ及び財務データベースの利用が可
能な端末が配備されている PC ラボ等の諸施設設備を整備している。
神戸大学ビジネススクールは、
「教育研究上の目的」の遂行のために、事務体制の整備及び
18
事務職員の業務能率の向上が不可欠であることの指摘は適切である。特に、国の方針に基づ
く総人件費改革は教育研究支援職員の削減を求めてきており、事務職員サポート体制に大き
な影響を及ぼしてきている。この問題は深刻であり全学的な解決が望まれる。また、教育研
究諸施設設備のより一層の整備と老朽化した施設設備の改修が緊要な課題となっている。こ
れも申請専門職大学院の管理運営能力を超えた問題として、全学的な観点からの解決が望ま
れる。
2)「認証評価計画」の評価
神戸大学ビジネススクールの「認証評価計画」の作成に向けた分析は、適切に行われており、
主要な改善課題を的確に把握している。課題解決は神戸大学ビジネススクールの教育の質をより
一層高めていくことを保証するものである。しかし、
「教育課程等」の分析において、専門知識力、
文化力そして国際コミュケーション力の三次元のベクトルを目指した改革が望まれるところであ
る。
認証評価委員会は、神戸大学ビジネススクールの「認証評価計画は評価基準の・基本視点を中
心とした自己点検評価の分析が適切に行われ、認証評価を受ける体制が整備されている計画であ
る」と合格の判定をし、
「自己点検評価報告(Self-Evaluation Report)」の作成を承認した。
3.「自己点検評価報告」の審査
1)自己点検評価分析の評価
基準1「教育研究上の目的」
・基本視点について、神戸大学ビジネススクールの「教育研究上の目的」は、所属する神戸
大学大学院経営学研究科の研究科規則第1章 2 条の 2 第 3 項に明記されており、
「学生便覧」
や入学案内をはじめとする各種印刷媒体や電子媒体によりステークホルダーに公表されて
いる。また、大企業のトップ等の有識者をメンバーとするアドバイザリー・ボード、修了
生の MBA フェロー、在学生による MBA 懇談会等、ステークホルダーからの意見を聴取す
るプロセスを設定し、定期的な検証を行っている。
・細目視点1について、ステークホルダーからの定期的な意見聴取のプロセスは明確であり、
経営学研究科専門職大学院運営委員会において、継続的に在学生や修了生のみならず、多
岐にわたるステークホルダーの意見を取り入れ、教育研究上の目的、研究プログラムや教
育カリキュラム等の見直しを行っている。教育研究上の目的の改訂プロセスとしては、専
門職大学院運営員会によって発議され、専門職大学院長(経営学研究科長が併任)が設置
する MBA タスクフォース委員会によって原案が作成され、専門職大学院運営委員会におい
て審議される。この過程における意見聴取制度として、産業界の有識者によるアドバイザ
リー・ボード、修了生の MBA フェロー制度、在学生による MBA 懇談会を設置しており、
ステークホルダーの意見を聴取し、反映する制度が構築されている。作成された原案は、
研究科教授会において最終決定される。
・細目視点2について、専門職大学院規定及び学校教育法第 99 条第 2 項は、「学術の理論及
び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した
能力を培うこと」を目的とする大学院と規定されているが、神戸大学ビジネススクールは、
「企業の中核人材が持つべき事業観や人間観、洞察力と行動力について、グループ活動を
通じて自発的な学習や研究を促し、最終的に学生個人が専門職学位論文(修士論文)を作
成できるように教育プログラムが編成されており、専門職大学院設立の目的に適合してい
19
る、と判断する。
・細目視点3について、神戸大学ビジネススクールは「2 年留学制度」と英国のクラウンフ
ィールド大学との間で「短期集中相互研修プログラム」を設けている。2 年留学制度につ
いては、神戸ビジネススクールの学生が企業等組織に勤務する社会人のために過去の事例
は尐なく、また短期集中相互研修プログラムについては、期間が 1 週間と短期間であり、
受け入れ先大学の対応等に問題があった。受け入れ大学とプログラム時期や内容の変更に
ついての改善策を合意し、2009 年度より改善される予定である。本専門職大学院では、留
学生の受け入れなど、国際的な人材育成についても考慮されるべきである。
・細目視点4について、専門職大学院運営委員会において、学生による授業評価、アドバイ
ザリー・ボード、MBA フェローによる定期的な外部評価が行われ、教育研究上の目的、研
究プログラムや教育カリキュラム等の見直しが継続的に行われている。
・細目視点5について、
「教育研究上の目的」は「学生便覧」、入学案内をはじめとする各種
印刷媒体や電子媒体等に詳細に周知公表されている。
基準2「教育研究上の目的達成の重要な要素」
・基本視点について、神戸大学ビジネススクールの目指す「日本のビジネス社会の中核とな
る人材育成」の教育目的は、神戸大学教育憲章に大学の教育目的として制定されている「人
間性の教育」、
「創造性の教育」
、
「国際性の教育」および「専門性の教育」を具現化する目
的であり、本大学の教育目的との整合性は得られている、と理解できる。
・細目視点1について、体系的な経営学全般の講義、
「プロジェクト方式」によるグループ研
究、専門職学位論文(修士論文)作成の三要素を繋ぐ教育が実践されている。プロジェク
ト方式は現実の経営問題をフィールドで収集されたデータに基づいて議論し、経営学の理
論的・実証的研究を行うことを目的としており、評価できる内容のものである。
・細目視点2について、修了生アンケート調査において、プロジェクト方式が修了後の実社
会において社会人学生が問題意識を持ち、その解決について思考・実践し、さらなるキャ
リア形成に寄与するプラグラムとなっていることが検証されている。
・細目視点3について、神戸大学ビジネススクールの教育プログラムの特徴であるプロジェ
クト研究と専門職学位論文は、
「研究に基礎を置く教育」であり、社会人学生が実務から持
ち込む経営課題は、専任教員の鮮度の高い問題意識を助長し、教員の研究活動に多大な影
響を与えている。
基準3「教育研究上の目的の継続的な検証」
・基本視点について、三つのプロセス、①専門職大学院運営委員会、②MBA タスクフォース
委員会、そして③アドバイザリー・ボード、MBA フェロー、MBA 懇談会により神戸ビジネ
ススクールの「教育研究上の目的」を継続的に定期的に検証するプロセスが設定されてい
る。
・細目視点1について、専門職大学院運営委員会において、継続的に在学生や修了生のみな
らず、多岐にわたるステークホルダーの意見を取り入れ、教育研究上の目的、研究プログ
ラムや教育カリキュラム等の見直しが行われており、その内容は「神戸大学大学院自己評
価・外部評価報告書」において詳細に公表されている。また教育研究上の目的の改訂にお
いては、専門職大学院運営委員会によって発議され、MBA タスクフォース委員会によって
原案が作成され、専門職大学院運営委員会において審議される。この過程における意見聴
取制度として、学生による授業評価、産業界の有識者によるアドバイザリー・ボード、修
了生の MBA フェロー、在学生による MBA 懇談会を設置しており、
「教育研究上の目的」を
20
継続的に検証し、その意見を反映する仕組みが構築されている。
・細目視点2について、神戸ビジネススクールを含めて全学的に国立大学法人として職員の
減員や効率化が求められており、現在の情報収集と管理の体制を維持することに困難性が
ある。教育研究上の目的の継続的な検証について、情報収集をコーディネイトする専門的
人材の配置とその予算措置が必要である。
・細目視点3について、
「教育研究上の目的」の改訂は、専門職大学院運営委員会で発議され、
MBA タスクフォース委員会によって原案が作成され、専門職大学院運営委員会において審
議され、研究科教授会で最終的に決定される。定期的な意見聴取制度・組織として、産業
界の有識者によるアドバイザリー・ボード、MBA 懇談会を設置しており、
「教育研究上の目
的」を継続的に検証し、その意見を反映する取組がなされている。
・細目視点4について、ステークホルダーの意見聴取の仕組みとして、産業界の有識者によ
るアドバイザリー・ボード、修了生の MBA フェロー、在学生の MBA 懇談会が設置され、
定期的に意見聴取が行われている。
基準 4「財務戦略」
・基本視点について、神戸大学ビジネススクールの所属する大学は国立大学法人であり、文
部科学省から大学に配分される運営交付金が学内の各部局に予算配分される制度であり、
新機軸の事業の展開には限界がある。従って、外部資金の獲得について戦略的に組織的な
対応が必要とされる。
・細目視点1について、神戸大学ビジネススクールが国立大学法人に所属する組織であるた
めに、財源を文部科学省から毎事業年度に交付される運営費交付金等および外部資金に依
存している。運営交付金は、人件費等の費用を除した上で経営学研究科に配分されており、
経営学研究科から本専門職大学院への再配分は行われていないので、独自の財務基盤を制
度的に持つことは困難である。
・細目視点2について、競争的外部資金の獲得は文部科学省の「専門職大学院形成支援プロ
グラム(2004-2005)」および「専門職大学院教育推進プログラム(2006-2007)」の採
択を受けており、さらに科研費や民間からの資金を受けている。
・細目視点3について、神戸大学ビジネススクールが研究科の一専攻であるために、独立し
た予算措置を行うことは困難であるが、研究科の有する限られた財源の枞組みの中で、短
期的にも長期的にも計画的な資金の獲得を実践しており、本専門職大学院の運用を加速し
ようとする方針は合理的であると理解できる。
基準 5「学習目標」
・基本視点について、
「日本のビジネス社会の中核となる人材育成」のなかでそれを実現して
いくための学生の学習目的を掲げている。その学習目的は学生便覧やシラバスなどにも記
載されている。
・細目視点1について、
「日本のビジネス社会の中核となる人材の育成」を学習目標として、
その要件として具体的に経営学の知識に基づいて、長期的でグローバルな観点からの新規
の多様な問題を把握でき、創造的な解決策を提示し、適切な判断を下すことのできること
を挙げて、学生便覧や講義要綱に、さらにはホームページに周知公表されている。
・細目視点2について、学生便覧でのガイドラインによる履修指導と MBA 教務委員、授業科
目担当教員による履修指導の併用した体制が整備されている。
・細目視点3について、MBA 教務委員や現代経営学演習担当教員が学生とのミーティングを
定期的に開催し、学習上の諸問題についての相談を受けるなどの意見交換を行っている。
21
基準 6「教育課程」
・基本視点について、体系的な経営学全般の知識の修得とは別に、企業の中核人材が持つべ
き事業観や人間観、洞察力と行動力について、
「プロジェクト方式」によるグループ研究を
通じて自発的な学習を促し、最終的に学生個人が専門職学位論文を作成できるように編成
されている。教育プログラムは専門職大学院運営委員会において教育課程の定期的な検証
を行っている。
・細目視点1について、当該大学院の教育プログラムは所属する神戸大学経営学研究科の「マ
ネジメント・システム専攻」
、
「会計専攻」、「市場科学専攻」さらに博士後期課程の教育課
程と連携しているために体系的な経営学全般の知識を修得しうる機会が設定されている。
また当該大学院の教育プログラムは企業の中核人材が持つべき事業観や人間観、洞察力と
行動力について、
「プロジェクト方式」によるグループ研究を通じて自発的な学習を促し、
理論的教育と実務的教育を架橋した「研究に基礎を置く教育(Research-based Education)
」
に基づく専門職学位論文を作成していくという教育課程を体系的に編成している。
・細目視点2について、神戸大学ビジネススクールの教育プログラムの内容および特徴は「神
戸方式」と呼ばれ、日本型 MBA 教育の確立を目指して、第 1 に体系的な経営学全般の授業
科目、第 2 に「プロジェクト方式」によるグループ学習、第 3 に現代経営学演習による専
門職学位論文(修士論文)の提出の三要素に基づく「研究に基礎を置く教育(Research-based
Education)
」を実践している点にある。プロジェクト方式は現実の経営問題をフィールド
で収集されたデータに基づいて議論し、経営学の理論的・実証的研究を行うことを目的と
しており、ケースプロジェクト研究、テーマプロジェクト研究からなっている。神戸方式
からなる教育プログラムは、体系的な経営学全般の知識の修得とは別に、企業の中核人材
が持つべき事業観や人間観、洞察力と行動力について、グループ活動を通じて自発的な学
習や研究を促し、最終的に学生個人が専門職学位論文を執筆できるようにプログラムが編
成されている。
・細目視点3について、本教育プログラムは、コア科目として必修科目を指定していないが、
体系的な経営学全般の講義のほかに、本教育プログラムの基本となるグループ研究として
ケースプロジェクト研究およびテーマプロジェクト研究を配置している。
・細目視点4について、プロジェクト研究によって、現実に企業の抱えた多様な経営問題を
フィールドで収集されたデータに基づいて議論し、洞察力を養い、専門職学位論文の執筆
に繋げる体系化した教育プログラムを採用している。
・細目視点5について、他研究科および経営学研究科内の他専攻および博士課程の授業科目
の履修が可能であり、2卖位まで修了卖位として算入できるシステムを設定している。
・細目視点6について、「神戸方式」と呼ばれる教育プログラムは、米国における典型的な
MBA 教育プログラムとは異なり、体系的な経営学全般の知識の修得とは別に、企業の中核
人材が持つべき事業観や人間観、洞察力と行動力について、
「プロジェクト方式」による事
例研究、現地調査、報告・討論で構成されたグループ研究を通じて自発的な学習を促し、
最終的に学生個人が専門職学位論文を執筆できるように編成されており、評価できる。
・細目視点7について、授業は、社会人が履修し易いように金曜日夜間に JR 大阪駅周辺のサ
テライト教室で行い、土曜日に終日集中的に神戸大学六甲台キャンパスで行っており、特
別な通信教育ないし遠隔地教育を実施していない。
基準 7「教育水準」
・基本視点について、
「日本のビジネス社会の中核となる人材の育成」の学習目標達成の要件
22
として経営学の知識に基づいて、長期的でグローバルな観点からの新規の多様な問題を把
握でき、創造的な解決策を提示し、適切な判断を下すことのできることを具体的に提示し、
学習目標を達成するために、専門職大学院運営委員会及び MBA タスクフォース委員会が学
習環境の整備及び学習指導体制について検討し、改善を図っている。
・細目視点1について、教育プログラムを通じて養成する人材像とそのために必要な各授業
科目における学習目標を学生便覧と講義要綱、さらに詳細なシラバスで明確に定め、学生
に周知公表し、さらに卖位修得の実質化をはかることで教育水準を保持している。
・細目視点2について、学習目標の達成を保証するために、金曜日夜間に社会人学生が通学
し易い JR 大阪駅(梅田駅)周辺にサテライト教室を設けている。また自主研究や自習を支
援するために、自習室や PC 教室を完備している。社会科学系図書館は、土曜日、日曜日に
も開館し、利用できる体制をとっている
・細目視点3について、講義要綱で授業内容及び成績評価方法と基準が記載されており、講
義要綱とは別に授業開講科目ごとに授業目的、授業概要、授業計画、授業方法等を厳密に
記述した詳細なシラバスが作成され周知公表されている。
・細目視点4について、最終的な卖位認定及び課程の修了判定は研究科教授会で行われる。
その際、他の教員から異議申し立ての機会が与えられ、修了判定の公正性、客観性、厳格
性が担保されている。
・細目視点5について、学生便覧のガイドラインやオリエンテーション等によって履修指導
が行われ、科目履修登録学生数の適正化等が図られている。
・細目視点6について、学生便覧のガイドラインによる履修指導と MBA 教務委員及び授業科
目担当教員による履修指導とを併用した体制が採用されている。
・細目視点7について、講義要綱とは別に、授業開講科目ごとに授業目的、授業概要、授業
計画、授業方法、成績評価方法等を厳密に記述した詳細なシラバスが作成され周知公表さ
れており、担当教員は詳細なシラバスに基づいて授業を行っている。
・細目視点8について、学務関係の各種情報が研究科教授会に報告され、神戸ビジネススク
ールの教員組織を構成する専任教員、兹担教員を含めて教員間で情報の共有が図られてい
る。
基準8「求める学生像」
・基本視点について、入学案内などの各種印刷媒体、さらにホームページ等の電子媒体にお
いて「社会人 MBA プログラムが求める理想的な学生は、経営のために必要な広い知識基盤
を有し、実社会で既に活躍している、経験に基づく経営に対する明確な問題意識を持つ社
会人で、経営に関する理論を学習し、理論と実践を架橋する強い意欲と能力を有する人で
ある」と明確に「求める学生像」が描かれている。
・細目視点1について、
「求める学生像」を、本専門職大学院の入学案内やホームページ(「MBA
を目指すみなさんへ」
)等で、
「経営のために必要な知識基盤を有し、実社会で既に活躍し
ている、経験に基づく経営に対する明確な問題意識を持つ社会人」としており、また外部
に公表している「自己評価・外部評価報告書(2004-2006)」では、対象とする学生を具
体的に「学部卒業後 10 年程度が経過したミドルクラスのビジネスマン」と周知公表してい
る。
・細目視点2について、多数の入学志願者があり、
「経営のために必要な知識基盤を有し、実
社会で既に活躍している、経験に基づく経営に対する明確な問題意識を持つ社会人」が入
学者として選抜されている。本専門職大学院で実施した「学生インタビュー」に出席した
23
学生においても同様な学生像の印象であった。
・細目視点3について、入学志願者は在職者であることを要件としているが、文系理系を問
わず、事務職、技術職、コンサルタント、大学研究者など多岐にわたる分野の学生が入学
し、入学後も継続して勤務している。
基準 9「入学者選抜」
・基本視点について、入試選抜を行う限りにおいて公正な入試選抜を行うためにアドミッシ
ョン・ポリシーを明文化する必要がある。
・細目視点1について、
「アドミッション・ポリシー」との名称での文章の掲示は特別に行っ
ていない。しかし、入学案内、ホームページ(「MBA を目指すみなさんへ」)等で、
「経営の
ために必要な知識基盤を有し、実社会で既に活躍している、経験に基づく経営に対する明
確な問題意識を持つ社会人」が対象とする学生である旨表記されている。
・細目視点2について、
「アドミッション・ポリシー」として明文化されたものはないが、入
学案内、ホームページ等、入学者選抜の基本方針が明確に掲示されており実質的な周知公
表を図っていると判断できる。今後、アドミッション・ポリシーを改善項目として明文化
していくことが確認されている。
・細目視点3について、アドミッション・ポリシーは明文化されていないが、入学者選抜の
選考方法は、第一次選考で筆記試験(英語、時事問題小論文)と書類審査(研究計画書ほ
か)、第二次選考で研究計画書を中心とした口述試験である。書類審査は提出された志願者
の研究計画書を 4 名の教員で評価し、客観性と公平性の維持に努めている。入学者選抜の
合否を総合的に判断する項目として、研究課題における問題意識、研究の背景となる経験、
資源、研究成果の活用などの 6 項目を明確化していることは評価できる。
・細目視点4について、毎年入学定員をはるかに超える多数の入学志願者がおり、入学定員
が確保されている。入学者選抜の選考方法は、第一次選考で筆記試験(英語、時事問題小
論文)と書類審査(研究計画書ほか)
、第二次選考で研究計画書を中心とした口述試験であ
る。書類審査での研究計画書評価では一通の研究計画書を 4 名の教員で評価し、客観性と
公平性を期している。入学者選抜の合否を総合的に判断する項目として、研究課題におけ
る問題意識、研究の背景となる経験、資源、研究成果の活用などの 6 項目を明確化してい
ることは評価できる。
入学者選抜実施状況
2005 年度
2006 年度
2007 年度
2008 年度
入学定員
54
69
69
69
出願者数
185
187
129
197
合格者数
70
86
73
73
入学者数
69
85
71
72
(出所:「自己点検評価報告」
、p.33)
基準 10「学生に対する経済的及び職業支援」
・基本視点について、学生が企業等組織で働く社会人であるから経済的支援は必要ないとし
ているが、昨今の金融危機等を考えるとその必要性は高いものがある。また、その他の学
生支援に対しては教員が個別的に対応しているとしているが、組織的な対応が不可欠であ
る。
・細目視点1について、在籍する学生の対象層が勤務を有する社会人学生のために、独自の
経済的支援制度や就職等の職業支援制度を有しない。ただし経済的支援が必要な場合には、
24
一般学生と同様な制度を活用できる。
・細目視点2について、有職者を入学の要件としているために、特に進路指導は行っていな
いが、博士後期課程への進学等について現代経営学演習担当教員が相談に応じている。
・細目視点3について、学生からの相談に対してはメールや掲示板等で助言する体制にして
いる。
・細目視点4について、留学生の受け入れは行っていない。
基準 11「教育研究の質保証のための取組」
・基本視点について、組織的な学生による授業評価、アドバイザリー・ボードによる第三者
評価、修了生の MBA フェロー、在学生の MBA 懇談会制度、教育研究の質向上を審議する
MBA タスクフォース委員会の設置およびファカルティ・ディベロップメント(FD)を推進
する FD ミーティングにより教育研究の質維持向上に努めている。
・細目視点1について、学生の卖位取得は当然のこととして、学生による授業評価アンケー
トで学習目標の達成度を評価している。
・細目視点2について、自己点検評価の結果は研究科の「自己評価・外部評価報告書」に記
載されホームページに公表されている。
・細目視点3について、授業評価アンケートが実施されており、2007 年度に実施した授業評
価アンケート結果(2007 年度 MBA プログラム授業評価の集計結果)では、
「全体的に判断
して良い授業だった」という質問項目に対する 5 点評価で平均 4.17 であり、比較的高い数
値を示しており、評価できる。
・細目視点4について、FD ミーティングや自発的な相互授業参観、教授法意見交換を通じて、
教員の能力向上が図られている。
・細目視点5について、実務家専任教員の存在は専門職大学院の特色の一つであるが、FD と
して、教育経験の尐ない実務家教員が担当する授業については、学術教員をメンターとし
て配置する制度を設けている点について評価できる。
・細目視点6について、履修登録の上限を年間 30 卖位と定めて、卖位修得の実質化が図れて
いる。
・細目視点7について、学生の科目履修を高める授業時間割を配置した授業時間表が作成さ
れている。
・細目視点8について、2008 年度より土曜日履修のみの卖位取得方法で社会人学生が1年半
で修了できる制度を導入している。
基準 12「学生の学業奨励」
・基本視点について、神戸方式に基づく専門職学位論文(修士論文)作成を求めていること
から「神戸大学 MBA 論文賞」を創設し、学業奨励に努めている。
・細目視点1について、神戸大学ビジネススクールだけを対象とするのではないが、神戸大
学では学業奨励を目的として、広く日本のビジネススクールの学生を対象とした「神戸大
学 MBA 論文賞」を日本経済新聞社の後援を得て 2005 年度より創設している。
・細目視点2について、学生が企業等組織に勤務する社会人学生であるために特別の経済的
支援制度や就職等の職業支援制度を設けていない。ただし経済的支援が必要な場合には、
一般学生と同様な制度を活用できる。
・細目視点3について、学業奨励の場として入学時や新学期時のオリエンテーションを実施
している。オリエンテーションでは、教員だけでなく、修了生(MBA フェロー)や在学生
を交えて学習の進め方等の指導・奨励を行っている。
25
基準 13「教員組織」
・基本視点について、入学定員 69 名(収容定員 138 名)に対応する専門職大学院設置基準で
求められる最低必要専任教員数 11 名であり、それを超える 21 名の専任教員を任用してい
る。
教員組織の現状
必要教員充足率
実務家教員比率
博士学位所有率
専任教員比率
191%
91%
62%
必要教員充足率=実在専任教員数 / 必要専任教員数
47%
専任教員担当比率
60%
実務家教員比率=実務家専任教員数 / 必要専任教員数
博士学位取得率=博士学位取得者数 / 実在専任教員数
専任教員比率=専任教員数 / 教員数
専任教員担当比率=年間専任教員担当卖位数 / 年間教員担当卖位数
(出所:「自己点検評価報告」
、p.43)
・細目視点1について、専門職大学院設置基準で規定する専門職大学院の学生定員に応じた
必要教員数 11 名に対して専任教員数は 21 名であり、そのうち 5 年以上の実務経験を有す
る実務家専任教員は 10 名である。専門職大学院設置基準に対して高い必要専任教員充足率
であり評価できる。文部科学省の定めた専門職大学院設置基準を十分に満たしている。ま
た、兹担教員 24 名においても、9 名の実務家教員が含まれており、評価できる。
専門職大学院設置基準第 4 条の必要教員数
収容定員数
138
2007 年 5 月現在
必要専任教員数
11
実在専任教員数
21
過不足数
+10
(出所:「自己点検評価報告」
、p.42)
・細目視点2について、神戸方式の教育プログラムを実施するために、神戸ビジネススクー
ル専任教員のほかに研究科他専攻の専任教員 24 名を兹担教員として任用している。
教員の最終学歴
種別
博士学位の教員数
修士学位の教員数
その他
合計
教授
11
1
2
14
准教授
2
3
1
6
助教
0
0
0
0
講師
0
0
1
1
助手
0
0
0
0
計
13
4
4
21
(出所:「自己点検評価報告」
、p.42)
・細目視点3について、高度の教育上の指導能力を有する専任教員の確保について、専門職
大学院の専任教員 21 名のうち、13 名が博士号を有している。また兹担教員 24 名のうち、
15 名が博士号を有している。専攻分野と教員の授業科目の適合性を考慮して、専任教員だ
けでなく、多くの兹担教員を配している。
・細目視点4について、5 年以上の実務経験を有する実務家専任教員は 10 名であり、その割
合は 3 割以上の水準にある。
教員組織の構成
種別
学術教員(AQ)
実務家教員(PQ)
26
計
専任教員(P)
11
10
21
兹担・兹任教員*
15
9
24
26
19
45
計
* 専任教員(P):Participating faculty members
* 兹担・兹任教員(支援教員)(S):Supporting faculty members
* 学術教員(AQ):Academically Qualified faculty members
* 実務家教員(PQ):Professionally Qualified faculty members
(出所:「自己点検評価報告」
、p.42)
基準 14「教員の資格」
・基本視点について、21 名の専任教員の内訳は学術教員 11 名と 5 年以上の実務経験を有す
る実務家教員 10 名が任用されている。専任教員の博士学位取得教員は 13 名、修士学位取
得教員は 4 名、その他 4 名となっている。最近過去 5 年間の教育研究業績における研究論
文は学術教員の平均約 15 本及び実務家教員の平均約 8 本であり、かなりの高水準を維持し
ている、と評価できる。
教員組織の最終学歴
種別
博士学位の教員数
修士学位の教員数
その他
合計
教授
11
1
2
14
准教授
2
3
1
6
助教
0
0
0
0
講師
0
0
1
1
助手
0
0
0
0
小計
13
4
4
21
支援教員
15
7
2
24
合計
28
11
6
45
(出所:「自己点検評価報告」
、p.42)
・細目視点1について、専任教員 21 名のうち 13 名が博士号を有している。神戸方式の教育
プログラムを実施するために、専攻分野と教員の授業科目の適合性を考慮して、本専門職
大学院専任教員の他に研究科他専攻の専任教員 24 名を兹担教員として任用しているが、兹
担教員のうち 15 名が博士号を有している。
・細目視点2について、講義科目及び演習科目の担当教員についての適合性を授業評価アン
ケート等により専門職大学運営委員会が評価している。
・細目視点3について、専任教員及び兹担教員の教育研究業績は、神戸大学情報データベー
スを介して開示されている。
・細目視点4について、専任教員の選考内規、教員の任用・昇任の資格要件・手続きが定め
られているが、内規に準拠した明文化された規則や基準はないので制定が望まれる。
・細目視点5について、教育経験の尐ない実務家教員の担当する授業は必ずしも多くないが、
実務家教員に対して学術教員をメンターとして配置し、授業マネジメント等について助言
しながら実務経験に応じた授業科目の担当がなされている。
・細目視点6について、実務家教員の定期的な評価、講義科目及び演習科目の担当の適合性
について、専門大学院運営委員会が評価を行っている。
基準 15「教員に対する教育研究支援」
・基本視点について、専任教員の個人研究室、現代経営学研究所及び現代経営学研究学会に
27
おいて教育研究環境の整備が行われ、専門職大学院運営委員会において専任教員の MBA 授
業科目担当負荷についての調整がなされ、教員の基本研究費及び専門職大学院教育推進プ
ログラムの外部資金により教育研究活動の維持が図られている。また、事務支援体制も 19
名の職員と 4 名の研究助成室職員の支援を受けている。
・細目視点1について、教育研究環境の整備は専門職大学院運営委員会で発議され、研究科
執行部の議論を経て研究科教授会で決定される。
・細目視点2について、専任教員の授業科目の負荷は平均 3.0(卖位)であるが、授業負担の
ない実務家専任教員もみられる。
・細目視点3について、研究科として、大型科学研究費補助金(基盤 A)申請書作成業務は
研究助成室で補助を行うほか、TA(ティーチング・アシスタント)、RA(リサーチ・アシ
スタント)を配置し、必要に応じて専門職大学院の専任教員の教育研究を支援する体制を
整備している。
・細目視点4について、神戸ビジネススクールも含めた研究科で、支援体制として教務、総
務、会計の事務職員 19 名、研究助成室に助手・職員 4 名を配置している。
・細目視点5について、専任教員の教育研究環境や支援、授業負担管理、資金調達等、比較
的整備されている。
基準 16「教員の任務」
・基本視点について、多様な授業方式の導入により、特にプロジェクト方式による授業にお
いて、学生と学生及び学生と MBA フェローとの間のコミュニケーションが図られ、ステー
クホルダーとの意思疎通が図られている。しかし、学生による授業評価結果では、教員と
学生間のコミュニケーションが不充分であり、双方向のコミュニケーションが強化されれ
ば、より一層の授業の成果が得られるものと期待される。
・細目視点1について、授業科目アンケート結果、FD ミーティング、自発的な相互授業参観
そして教授法意見会等を参考にして授業方法等の継続的改善が行われている。
・細目視点2について、金曜日夜間又は土曜日に株式会社ボストンコンサルティング・グル
ープや株式会社野村総合研究所などの外部機関による先端的な専門的知識の修得を目的と
し た授業科目を開講している。
・細目視点3について、土曜日が終日授業なのでオフィスアワーの設定に制約があるが、社
会人学生に対してメール等による学習相談・研究指導等を行っている。
基準 17 「管理運営」
・基本視点について、専門職大学院運営委員会において本専攻の固有の問題が審議され、第
三者評価としてアドバイザリー・ボードが設置され、執行業務を支える事務組織と研究支
援をしていく研究助成室が設置されている。
・細目視点1について、経営学研究科教授会が専門職大学院の現代経営学専攻の管理運営事
項を審議し、実質的に研究科全体で支える体制となっている。研究科教授会のもとに専門
職大学院運営委員会および MBA タスクフォース委員会が設置されている。また外部評価と
して本専門職大学院の運営について助言を行うアドバイザリー・ボード及び MBA フェロー
会議が設置されている。
・細目視点2について、経営学研究科が専門職大学院の管理運営の事務組織を包括した支援
体制として教務、総務、会計の事務職員 19 名、研究助成室を整備し、助手・職員 4 名が配
置されている。
・細目視点3について、管理運営のための会議体および運営組織が整備されている。
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基準 18 「施設支援」
・基本視点について、授業が主に行われる六甲台キャンパスには教育研究の施設設備が整備
されている。本専攻の教育研究に供用される事務室、教室、演習室、小会議室、経営資料
センターおよび研究助成室等は本館に配置されているが、施設はリフォームされているも
のの老朽化している。また、対話討議型のレイアウト設備を備えた教室等が不足しており、
教室の充実が望まれるところである。
・細目視点1について、授業は設備の整った神戸大学六甲台キャンパスのほか、社会人学生
にとって利便性の高い JR 大阪駅(梅田駅)周辺の「ブリーゼプラザ」内のサテライト教室
などの整備が図られている。
・細目視点2について、専任教員は個室の研究室が適切に配置されている。
・細目視点3について、日本有数の蔵書数を誇る社会科学系図書館を土曜日、日曜日に利用
できるように開館されている。
・細目視点4について、授業は土曜日に神戸大学六甲台キャンパスで開講されるほか、社会
人学生にとって利便性の高い JR 大阪駅(梅田駅)周辺のサテライト教室で金曜日夜間に開
講されている。
・細目視点5について、社会人学生の授業時間外の学習を支援する体制として、自習室、PC
教室が完備し、また土曜日、日曜日の社会科学系図書館の利用を可能にしている。
2)改善課題の評価
(1)「教育研究上の目的」
神戸大学ビジネススクールの「教育研究上の目的」は、神戸大学大学院経営学研究科規則
において明確に制定され、ステークホルダーの意見を聴取して定期的な検証はなされている。
この定期的な検証を継続していくためのに必要な支援組織として、習熟した事務職員を有す
る事務組織の確立及び「教育研究上の目的」を検証するプロセスの精緻化が必要であると自
己点検評価し、今後の改善課題として認識していることは適切な分析である。
(2)「教育課程等」
教育プログラムの特徴である「プロジェクト方式」は、学生と MBA フェローとの産学連携
が本専門職大学院の教育研究上の目的を実現していく必須の要素となっている。
「プロジェク
ト方式」のグループ学習のより一層の精緻化を図るには、MBA フェローと指導教員のより一
層の連携確保が不可欠であるという分析は適切である。それは「神戸方式」のもう一つの重
要な要素である専門職学位論文(修士論文)作成との関係において、演習指導教員の厳密な
研究指導と「プロジェクト方式」によるグループ学習との関係維持が不可避であるからであ
る。また、IT 関連科目、医療経営、サービスビジネスなど産業に特化した科目や高いレベル
のカレントトッピクスの授業科目の時間割編成に改善の余地があるという分析は適切である。
(3)「学生」
神戸大学ビジネススクールは、入学定員数を大きく上回る出願者数に対して、書類審査、
学力審査および面接審査で入学者選抜を適正に行い、暗黙に理解されている入学者選抜方針
に従って審査の客観性、厳密性および公平性を維持してきている。しかし、本専門職大学院
の「教育研究上の目的」の実現を担う学生をより的確に確保していくためにはアドミッショ
ン・ポリシーの明文化が不可欠であり、アドミッション・ポリシーを明文化していくことを
改善課題との分析は適切である。
(4)「教員組織」
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神戸大学ビジネススクールは、必要な教員数および必要な教育上の指導能力のある教員を
確保している。実務家教員について、卖に実務経験年数にこだわった実務家教員の定義では
専門職大学院の教育が機能していかないという主張は理解できる。専門職大学院の教育で重
要なことは、より実践的な教授が求められる授業科目の教育において、豊富な実務経験とそ
れを解明しえる学術理論を身につけた教員が必要であるということである。実務経験年数だ
けで捉えられている現在の実務家教員の定義には問題があるという提起は容認されるべきで
ある。また、神戸方式では専門職学位論文(修士論文)作成を求めており、その研究指導教
員の質確保として専任教員の博士課程の研究指導兹担を行ってきた。文部科学省はこの措置
を 2013 年までの経過措置として認めているが、2013 年以後のことについてはこれから審議
する問題として未定としてきている。専門職大学院における社会人教育の役割の重要性を考
慮するならば、この研究指導兹担問題の課題分析は適切である。
(5)「管理運営と施設設備」
「管理運営と施設設備」の分析において、施設と設備の老朽化を改善すべき課題として捉
えていることは適切である。特に、専門職大学院の教育においては対話型の討議を促進する
ようなレイアウト設備の教室が不可欠であり、その必要性を課題とされていることは適切な
分析である。
3)戦略計画の評価
外部環境の分析において、わが国の MBA 学位の評価が産業社会で低いことを「脅威」でも
あり、またそれだけに MBA 学位の評価を高めていく「機会」として分析していることは適切
である。MBA 教育をわが国の産業社会に浸透させていくためには、より質の高い学生を輩出
していくことが急務であり、そのために神戸ビジネススクールは、
「プロジェクト方式」と「研
究に基礎を置く教育」を特徴とする神戸方式の教育プログラムを開発してきた。
この観点から改善課題を解決していくべき戦略として、神戸方式の教育プログラムの成果
についての情報発信を強化し、神戸方式のより一層の精緻化を図ることを最優先重要課題と
していく戦略計画の策定は適切である。さらに専門職大学院専任教員の研究指導能力をより
一層高めていくと共に、博士課程研究指導兹担の継続的な承認を関係省庁、審議会および認
証評価機関等に働きかけていくことは適切である。
4)行動計画の評価
神戸ビジネススクールは、評価基準による自己点検評価の分析において提示された改善課
題および戦略計画に対して、その行動計画として 2010 年度までに専門職大学院専任教員の博
士課程における研究指導兹担を永続的な措置となるように関係機関に働きかけていくなどの
具体的な方策を検討していることは適切である。具体的な検討項目は、以下の通りである。
(1)「教育研究上の目的」
教育研究上の目的を組織的に継続的に検証していくシステム構築のために、必要な職員支
援体制を整備していく人員配置や予算措置について解決すべき課題が多いので更に検討を続
けて行く。
(2)「教育課程等」
大幅改訂のカリキュラムが 2008 年度から実施されており、2009-2010 年にその完成をめ
ざす。
(3)学生
アドミッション・ポリシー問題を 2008 年度中に改善策を作成するとされている。また、FD
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問題についても神戸方式に特化した FD を 2008 年度と 2009 年度を試行期間として 2010 年
度内に FD の完成をめざす。
(4)「教員組織」
実務家教員問題と研究指導兹担問題について関係機関への問題提起を行うが、これらの問
題は専門職大学院設置基準および文部行政に係る問題なので、具体的な行動計画の立案は困
難と考える。
(5)「管理運営と施設設備」
施設設備の老朽化を解決していくことは大学全体のキャンパス整備に係る問題なので、本
専門職大学院としては問題提起にとどまり具体的な行動計画の策定は困難と考える。一方、
事務職員・支援職員の確保の問題も財務戦略と係わる問題であり、中長期的なスパンで捉え
ていかなければならない問題とする。
行動計画の策定においては、カリキュラム改正がすでに 2008 年度から実施されている。実
務家教員比率問題および研究指導兹担問題は本専門職大学院独自で解決できる問題ではない
ので、中長期的なスパンで関係機関と協調して問題解決をはかる行動計画である、と理解す
る。以上の点から、本専門職大学院の改善課題の解決のための行動計画の策定は適切なもの
である、と評価する。
5)「自己点検評価報告」の評価
以上の評価に基づき、
「自己点検評価報告」における分析は ABEST21 認証評価基準の・基
本視点および・細目視点をほとんど満たし、改善すべき課題を明白に把握し、解決に向けた
SWOT 分析を的確に行い行動計画も策定している。敢えて改善すべき課題を指摘するならば、
第 1 にアドミッション・ポリシーの問題、第 2 に国際的な人材育成への対応、そして第 3 に
実務家教員の活用についてである。
第 1 については、1989 年に本専門職大学院の前身となる専攻が設置して以来の伝統によっ
て、広く認識されており、明文化されていないという不備な点が残るが、アドミッション・
ポリシーを明文化することは改善課題として確認されていることは評価できる。第 2 につい
ては、国際的な相互研修プラグラムが設置されている点を評価し、2009 年度のプログラムに
おいて改善が行われることになっている。第 3 の教育経験のない実務家教員の活用について
は、学術教員をメンターとして FD がはかられており、2008 年度以降、実務家教員の活用が
はかられている。
以上の理由で不充分な点は、認証評価基準に対する評価を変えるほど未充足というほどの
ものではなく、本専門職大学院の教育プログラムは、PDCA サイクルにそって実践されており、
教育研究の質維持向上が十分に期待できる、と判断できる。
Ⅳ
認証評価審査の結果
NPO 法人 ABEST21 は、認証評価の審査結果に基づき、神戸大学大学院経営学研究科現代経
営学専攻(神戸大学ビジネススクール)は、ABEST21 が定める経営分野専門職大学院認証評
価基準に適合し、
「教育研究の方策は、評価基準のほとんどが満たされ、教育研究の質維持向
上が十分に保証された非常に優れている」教育プログラムと認定する。
なお、この認定の期間は 2014 年 3 月 31 日までとし、2014 年までに再度同法人の評価を受
31
けることを求める。
ABEST21 は、ビジネススクールの教育の個性の伸長に資する評価をする・基本視点として、
「体系的な教育課程の編成」において優れた取組を評価していく。神戸大学ビジネススクー
ルの「研究に基礎を置く教育(Research-based Education)」はこれに該当する特筆すべき優
れた教育プログラムとして評価できる。
「研究に基礎を置く教育(Research-based Education)」は、
「神戸方式」と呼ばれる教育で
日本型 MBA 教育の確立を目指して開発された教育プログラムである。この教育プログラムは
三つの構成素から組み立てられ、第 1 の経営学全般の講義、第 2 の「プロジェクト方式」に
よるグループ研究、そして第 3 の現代経営学演習による専門職学位論文(修士論文)作成を
体系的に繋ぎ、理論的教育と実務的教育を架橋したプログラムとして実践されている。
「プロ
ジェクト方式」は、現実に企業が抱える経営問題を学生が持ち寄り、類似した問題に直面し
ている学生と共同して、フィールド調査を行い、収集されたデータや情報に基づいて議論し、
経営学の理論的・実証的研究を行うグループ学習である。
「プロジェクト方式」は、神戸大学
ビジネススクール MBA 教育プログラムの根幹をなし、問題とその解決策を探索していく理論
的・実証的研究を行う教育プログラムである。
一方、グローバル化時代の国際的に通用する高度専門職業人育成のために、神戸大学ビジ
ネススクールの教育プログラムにはより一層の教育の質改善が求められる。その主な評価分
野別課題として、
「教育研究上の目的」の分野では定期的な検証の継続に必要な支援組織の整
備が必要である。
「学生」の分野では、アドミッション・ポリシーの明文化が課題である。
「教
員組織」の分野では、研究指導教員の質確保として専任教員の博士課程研究指導の兹務の問
題がある。特に、文部科学省が 2013 年までの経過措置として認めている研究指導兹務問題が
2013 年以後の未定に対して、
「プロジェクト方式」にとってはこの研究指導兹担問題は重要
な課題である。
Ⅴ
要望事項
1)MBA 教育と博士課程研究指導の兹担問題
ABEST21 の 2008 年度認証評価に際して、複数の専門職大学院より MBA 教育と博士課程研
究指導の兹担問題について、関係機関に対する要望が提示された。その内容は次の通りであ
る。
専門職大学院の認証評価において、専門職大学院設置基準が認証評価の一つの根拠となっ
ている。次回の 2013 年の認証評価までに、専門職大学院設置基準の附則で 2013 年までの経
過措置として認められている、専任教員の研究指導兹担についての規定を経営学分野の専門
職大学院に対しては、永続的な規定とすることを要望する。この経過措置の期限が切れれば、
専門職大学院で現在行っている、MBA 教育と博士課程の研究指導の兹担ができなくなり、教
育研究システムの機能不全の恐れが出てくる。以下に、この要望の根拠を述べることにする。
現状の専門職大学院設置基準は、法科大学院と MBA スクールに同一の基準を適用している
が、教育の質を保証するためには、研究の位置付けという点において、異なったものになる
べきだと考える。法科大学院においては、法律とその解釈は、時とともにあまり変化する性
質のものではない。また、社会に有益な法曹を育成するということで、カリキュラムの内容
も確立されたものが期待される。しかしながら、経営環境は、変化が常で、それに伴い、経
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営を考える時のフレームワークも変遷していく。もちろん、経営の根幹にかかるところは普
遍だが、教員が経営学を教える時に、経営学の古典から最新の理論までを俯瞰して、体系的
に把握していないと、社会に有益な経営人材を育成することはできない。従って、経営分野
の教員は、常に、最先端の研究に従事していなければならない。例えば、米国のビジネスス
クールの認証機関である、AACSB International においても、有資格である学術教員と実務家
教員の合計は全教員の 90%以上でなければならない、並びに有資格である学術教員は全教員
の 50%以上でなければならないという最低基準を定めている。一方、実務家教員の最低比率
は定めていない。このように、米国の基準は、ビジネススクールの教育では教員の研究能力
が根幹となることを意識したものとなっている。
専門職大学院での講義・演習と博士課程の研究指導をともに担当することは、
「研究に基礎
を置く教育」と「プロジェクト方式」を強調する教育研究システムにおいては、とりわけ重
要である。研究が教育内容を生み出し、教育が研究課題を与えるというサイクルの維持が教
育システムのエッセンスである。この特徴があるがゆえに、専門職大学院が学生、修了生、
企業から高い評価を得ている。本研究科の教員のほとんどが、専門分野での研究のリーダー
であり、その高い研究水準に支えられた MBA 教育が実現されていく。
専門職大学院設置基準と専門職大学院の教育システムとの不整合性は、専門職大学院設置
基準の経過措置が切れる 2013 年には、深刻な問題となる。特に、専門職大学院での講義・演
習と博士課程の研究指導をともに担当することが許容されない(専門職大学院設置基準附則
2 項の経過措置の終了)ことになれば、専門職大学院が必須と考えている教育システムを実
行する教員組織の維持ができなくなる。2013 年度は、次回の専門職大学院の認証評価の年度
に当たるので、2010 年度までには、専門職大学院設置基準附則 2 項の研究指導兹担に関する
現在の経過措置が経営学分野において、永続的な措置になるように、関係機関に要望する。
2)要望事項の妥当性
この要望事項は、第一に専門職大学院における実務家専任教員比率の撤廃についてである。
第二に専門職大学院専任教員の博士後期課程での研究指導の制度的・永続的な容認について
である。
前者について、その専門職大学院では、教育経験の尐ない実務家専任教員の割合が多くな
ると体系的な教育をむしろ阻害するとの理由である。実際、専門職大学院では、実務家専任
教員が授業科目を担当することについての学生に対するインタビューでは、実務家教員の教
育価値や意義について確認できなかった。専門職大学院における実務家専任教員比率につい
て再検討すべきとの要望は合理的であり、今後実務家専任教員の専門職大学院における意義
や活用について、その本質に立ち返って議論が行われることが望まれる。
後者について、専門職大学院専任教員といえども研究指導が教育の根幹にあり、また社会
人が専門職学位課程の延長として博士後期課程に進むケースも多く、継続的な研究指導が必
要となる。2013 年(平成 25 年)までの経過措置を永続的な制度とする要望は容認できる。
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