別紙甲

別紙甲
平成13年2月9日
厚生労働省 労働基準局長
申請者:三菱電機株式会社
稲沢製作所
所長 岡部 季生
エレベーター構造規格 第43条に基づく適用除外申請
基収第605号のエレベーター構造規格第43条に基づく適用除外の申請について、一部変更及び追加
があるため、その内容につき適用除外の申請を致しますので、ご認可のほど宜しくお願い申し上げます。
記
1.申請理由
基収第605号において、建物高さを有効に活用するために、駆動装置(巻上機)と制御盤を昇降路
内に設置することにより、機械室と昇降路とを一体化した構造のいわゆる三菱省スペース型エレベータ
ーとしてエレベーター構造規格第43条に基づく適用除外の申請をしております。
そのエレベーターに関し、一部変更及び追加 を実施したので、その旨申請致します。
変更内容は、
平成5年8月2日労働省告示第91号エレベーター構造規格の第16条第1項第4号
「頂
部隙間」「ピット深さ」、第19条「昇降路塔等のはしご」、第21条第1項第5号「救出口」、第2
9条第1項「連結方法」に関して、基収第605号のエレベーター構造規格第43条に基づく適用除外
の申請から変更するため、変更及び追加事項に対する適用除外を申請致します。なお、申請資料に関し
ては、
基収第605号にて確認いただきました申請資料に追加改定を行った形式にて作成しております。
2.事業所名
設 計:三菱電機株式会社 稲沢製作所
愛知県稲沢市菱町1番地
製 造:三菱電機株式会社 稲沢製作所
愛知県稲沢市菱町1番地
以上
1.1項のエレベーター構造規格抵触事項チェックに基づき、抵触事項に関する本エレベーターに関し
ての見解について以下に説明いたします。
(※ 1.1 項のエレベーター構造規格抵触事項チェック:略)
(1)第16条 第 1 項 第 3 号(同一階の出入口数)
本号においてかご出入口数及び同一階での昇降路出入口数を2箇所以上設けないことと規定されてお
りますが、本エレベーターは、
①マンション等での有効な動線の確保。
②福祉対策として車いす利用上の利便性向上。
を考慮し、二方向出入口とする場合があります。二方向出入口とする場合においては、かごを通路とし
て用いないように、以下に示す固有の対策を実施しております。
〈二方向の出入口を有するエレベーター固有の対策〉
①一つの階において、二ヶ所の戸が同時に開かないように電気的なインターロックを設ける。
②かご内において、乗客が予想しなかった方向の戸が開くことが無いように、音(音声を含む)及び
表示灯の点滅又は点灯でどちらの側の戸が開くかを乗客に知らせる。
③かごの戸又はかごの戸付近に、戸閉め時に乗客を検知して戸閉めを抑制するようにセーフティーシ
ューを設けると共に、音(音声を含む)で戸が閉まることを乗客に知らせる。
以上より 安全が確保されております。
(2)第16条 第1項 第4号(頂部すき間)(ピット深さ)
本号において頂部すき間及びピット深さは例えば、頂部隙間は定格速度 45/min のとき、1.2m、60
m/min のとき 1.4mと規定されております。また、ピット深さは定格速度 45/min のとき、1.2m、60
m/min のとき 1.5mと規定されております。
本エレベーターは、
従来のロープ式エレベーターにおける建物上部のペントハウスを無くした上で、
北側斜線・日影規制の制約をより少なくするため、頂部すき間を必要最小限に設定しています。
また、巻上機、制御盤のピットからの保守を可能にするため、ピット深さを必要最小限に設定して
います。
安全装置の行過ぎ制限スイッチとしては、
最上階と最下階に強制減速スイッチ、
リミットスイッチ、
ファイナルリミットスイッチを設けております。
つり合いおもりのランバイは 240mm程度を基準としており、つり合いおもりの下部に調整用スペ
ーサーを取付け、点検回数の設定等適切な維持管理を行い、ランバイ調整を実施することにしており
ます。
かご上において保守点検作業等を行う場合、ます、電源遮断スイッチにてかご上での自動運転を停
止させています。かご上には油圧式エレーベーターと同様の転落防止のために安全帯を取付ける黄色
に塗色した補助手摺、または、折り畳み式の手摺(手摺高さはかご天井から 750mm以上)を設けて
います。また、かご上作業者の安全を確保するために頂部安全距離確保スイッチにより、かご上投影
面上で人が乗り得る場所とかご上投影面内にある昇降路機器下端との距離を 1.2m以上確保していま
す。
また、更に保守点検時の安全対策として、かごが突き上げた状態でも、かご上投影面上で人が乗り
得る場所(ガイドシュー、ロープ付属品は除く)とかご投影面内にある昇降路頂部機器下端との距離
は 1.0m以上を確保するため、オモリ側緩衡器に緩衡器補助台を設置し、機械的に安全距離を確保し
ています。
ピット内において保守点検作業等を行う場合、まず、最下階側部に乗場から手が届く位置にかごの
昇降を停止させるピットスイッチを設けています。また、ピット深さが 1.2m以上の場合、ピット内
へのアクセス手段としてピット昇降用はしごを設けています。
ピット内で手動運転する場合を考慮し、ピット内での作業スペースとかご下機器(ガイドシュー・
非常止め・エプロン・制御ケーブルは除く)下端との距離を 1.2m以上確保し、かつ、この距離以下
のかごの下降を自動的に停止する下部安全距離確保スイッチを設けています。
また、更に保守点検時の安全対策として、かごが突き下げた状態でも、0.5m×0.6m×1.0mの直方
体の待避スペース(制御ケーブルは除く)を確保できるよう、かご側緩衝器に緩衝器補助台を設置し、
機械的な対策を設けています。(待避スペースについては欧州エレベーター規格 EN81-1 を参考にし
ております。)
エレベーター構造規格に規定されているピット深さよりピット深さを浅くする場合は、上記対策を
実施することを条件として対応しています。
表1.1に本エレベーターにおけるオーバーヘッド寸法、及びおもりランバイ最小時の頂部すき間
と機器・昇降路天井間の隙間の一例、表1.2にかごとつり合いおもりランバイの標準設定例、表1.
3に標準ピット深さの一例を示します。
表1.1 各部の隙間(一例)
[mm]
項
度 [m/min]
速
目
オーバーヘッド(OH)
45
60
90
105
3150
3200
3400
3500
2700
かご床からの最上部機器までの高さ(HK)
2350∼2515
かご天井高さ(HC)
2350∼2515
おもりランバイ(RC)
240
240
240
240
緩衝器ストローク(BS)
92
142
173
219
ジャンプ代(JS)
29
50
76
104
頂部すき間(OH−HC)
635
685
885
985
89
68
171
197
機器と天井の隙間
(OH)−(HK)−(RC)−(BS)−(JS)>25mm
表1.2 かご・おもりランバイ標準設定値(一例)
かご側 [mm]
昇降行程(TR)
[m]
一方向出入口
二方向出入口
おもり側 [mm]
45,60,90,105m/min
150:かごドア回りのメン
TR≦20
240
テナンスが乗場から実施で
20<TR≦30
30<TR≦40
きる場合
150
700:かごドア回りのメン
260
テナンスが乗場からできな
40<TR≦60
310
い場合
[mm]
表1.3 ピット深さ(一例)
項
目
速
度 [m/min]
45
60
90
105
エレベーター構造規格に規定されているピットの深さ(PD)
1200
1500
1800
2100
代表ピット深さ(PD)
1250
1250
1350
1350
以上より、安全が確保されております。
なお、平成12年 6 月 1 日施行された建築基準法の建設省告示 1423 号においては、本号に関する内容
は許容されております。
(3)第19号(昇降路塔等のはしご)
構造1として、各昇降路機器との干渉を回避させるために、ピット昇降用はしご(図 2.5参照)
を昇降路壁側面に設置しています。安全対策として、はしご上部に把手を設けることでピット内へ安
全に昇降できる構造としております。
また、構造2として、通常時はピット部に折り畳んだ状態で、点検時には簡単に組み立てすること
ができるピット昇降用はしご(図2.6参照)としております。
以上より、ピットへの昇降時の安全性が確保されています。
(※ 図 2.5、2.6:略)
(4)第21条 第1項 第5号(救出口)
本号において、搬器(かご)に救出口を設けることが規定されております。
本エレベーターでは、
①救出口から昇降路に乗客を誘導し救出するよりも、
かごを動かしてかご出入口から救出する方が、
より安全である。
②昇降路の全体高さを押さえることによって空間を有効に活用する。
という観点から、かごの形状等により天井等に救出口を設けない場合もあります。救出口を設けない
場合の故障・停電等非常の際のかご内乗客の救出について、かごの停止位置により乗場からの救出が
安全かつ容易に行えない場合においては、以下の方法をもって行なえるようにしております。
〈救出口が無い場合等の救出方法〉
①故障・停電等異常時のかご内乗客の救出方法
方法1としては、故障・停電等でかごの昇降が不能となった場合、ピット内設置の巻上機のブレ
ーキに取付けられ、最下階乗場位置(昇降路内)まで引き出されているブレーキ開放ケーブルを引
くことによりブレーキを開放し、かごとつり合いおもりの重量の不均衡を利用してかごを最寄り階
に移動させ、乗場の戸を開け乗客を救出します。ブレーキ開放動作は、乗場の扉を転落しない程度
治具で開放し、かご又はガバナロープを見ながら過速しないように断続的に行います。停止位置は
ガバナロープに付けたマーク等により確認します。
かごとつり合いおもりの重量が均衡している場合には、かご上におもり等を載せ、かごが移動で
きる状態にします。
方法2としては、故障・停電等でかごの昇降が不能となった場合、昇降路内に設置されたバッテ
リーの電力により、昇降路外部からブレーキ開放操作装置で電気的にブレーキを開放し、かごとつ
り合いおもりの重量の不均衡を利用してかごを最寄階に移動させ、乗場の戸を開け乗客を救出しま
す。ブレーキ開放動作については、上記と同様に、乗場の扉を転落しない程度治具で開放し、かご
又はガバナロープを見ながら過速しないように断続的に行います。停止位置はガバナロープに付け
たマーク等により確認します。
かごとつり合いおもりの重量が均衡している場合には、かご上におもり等を載せ、かごが移動で
きる状態にします。
なお、平成12年 6 月 1 日施行された建築基準法の建設省告示 1413 号においては、本号 に関
する内容は許容されております。
②非常止め作動時のかご内乗客の救出方法
方法1としては、非常止めが作動した場合の乗客を救出する場合、作業員がピット内に入り調速
機・非常止めスイッチ回路を短絡し、低速運転でかごを上方最寄り階まで移動させて、乗場の戸を
開け乗客を安全に救出することを基本としています。また、巻上機が動かない場合は、かご上又は
ピット内において、チェーンブロック等を用いてかごを最寄り階に引き上げ、乗場の戸を開け乗客
を救出します。
方法2としては、非常止めが作動した場合の乗客を救出する場合、作業員が最下階乗場で、乗場
操作盤に操作ボタンを接続します。操作ボタンにて調速機・非常止めスイッチ回路を短絡し、低速
運転でかごを上方最寄り階まで移動させて、乗場の戸を開け乗客を安全に救出することを基本とし
ています。また、巻上機が動かない場合については、上記と同様に、かご又はピット内において、
チェーンブロック等を用いてかごを最寄り階に引き上げ、乗場の戸を開け乗客を救出します。
以上より、安全が確保されております。
(5)第29条 第1項(巻上用ワイヤロープの連結方法)
本号において、巻上用ワイヤロープの連結方法が規定されております。
本エレベーターでは、
①工場作業による連結部分の品質向上
②据付現場での火気使用の削減による現場安全性の向上
③主索を複数本設置の場合の連結部分スペース拡大抑制
の観点から、規定された従来のバビッド詰め索端金具に加えて、すえ込み式索端金具(図1.1参照)
及びくさび式連結金具(図1.2参照)を使用することがあります。
すえ込み式索端金具は、シャックル本体の強度(表1.3参照)、締結シャックルの強度、耐疲労
性(表1.4参照)ともに問題なく、またすえ込み式の締結効率は、使用ロープの実破断荷重に対し
てバビッド詰めソケットの90%以上に確保されています。
すえ込み式索端金具の強度試験の詳細は、
後述の「3.すえ込み式索端金具強度試験」を参照ください。
(※3.すえ込み式索端金具強度試験:略)
表1.3 強度計算結果(φ10 ロープ用、分割型)
ロープ規格破断荷重
使用最大荷重※1
最小断面積
応力度
(kN)
(kN)
(mm2)
(N/mm2)
8×S(19)
48.1
4.81
251
19.2
26.5
8×Fi(19)
48.1
4.81
251
19.2
26.5
8×P・S(19)
52.9
5.29
251
21.1
24.1
8×P・Fi(19)
52.9
5.29
251
21.1
24.1
6×W・S(26)
52.9
5.99
251
23.9
21.3
ロープ構成
安全率
※1 使用安全率はロープ規格破断荷重に対して10以上
表1.4 疲労試験結果
締結方法
すえ込み式
バビット
試験結果
ロープ径
繰返し数
(mm)
(回)
ロープ抜け
ロープ断線
ソケット部の割れ
φ10
10
なし
なし
なし
φ12
10
なし
なし
なし
φ14
7
10
なし
なし
なし
φ10
107
なし
なし
なし
φ12
10
なし
なし
なし
φ14
10
なし
なし
なし
7
7
7
7
以上より、安全が確保されております。
なお、このすえ込み式索端金具に関して、「すえ込み式索端金具を用いたエレベーター用ワイヤロ
ープの端部圧縮止め工法」として平成9年11月5日付建設省愛住指発第 134 号で建設大臣の認定を
取得しております。
図1.1 すえ込み式索端金具外形
くさび式索端金具は、シャックル本体の強度(表1.5参照)、締結シャックルの強度ともに問題なく、
また、くさび式の締結効率は使用ロープの実破断荷重に対してバビット詰めソケットと同等以上に確保さ
れています。くさび式索端金具の強度試験の詳細は、後述の「4.くさび式索端金具強度試験」を参照く
ださい。
(※4.くさび式索端金具の強度試験:略)
表1.5 強度計算結果(φ10ロープ用、M16ネジ)
ロープ規格破断
ロープ構成
荷重
使用最大荷重※1
最小断面積※2
応力度
安全率
(N/mm2)
S35C
(kN)
(kN)
(mm2)
8×S(19)
48.1
4.81
150
32.1
14.0
8×P・S(19)
52.9
5.29
150
35.3
12.7
※1 使用安全率はロープ規格破断荷重に対して10以上
※
2 最小断面積部はロッドネジ部(谷径)
図1.2くさび式索端金具外形
(6)制御盤、巻上機の保守作業について
構造1として、ピット内に設置された巻上機は、ピット底面より保守点検作業を実施します。ま
た、制御盤については、通常時最下階上部に設置されておりますが、制御盤には昇降装置が具備さ
れているため、保守点検作業の際は制御盤を昇降させることにより、ピット底部付近まで移動させ
ピット底面より保守点検作業を実施します。
構造2として、最下階上部に設置された巻上機及び制御盤等の保守点検作業を行う場合、保守員
が安全に作業を行うため、巾×奥行×高さ=800mm×400mm×900mmの可搬式作業台を設けて
います。作業時の安全対策としては、把手及び安全帯が固定可能な金具を設けております。この可
搬式作業台は通常時ピット底面に折り畳んだ状態で、点検時に簡単に組み立てすることができる構
造としております。
構造3として、ピット深さが深くなった場合は、上記可搬式作業台の高さ上の制約から、保守点
検作業機器へのアクセスが困難となります。そのため、保守点検作業が可能なピット面から 2m以
下の高さ位置に、作業上、安全に十分な天板の面積、巾 400mm以上、奥行 600mm以上を有する
折り畳み可能な手摺付の固定式作業台を設けています。
作業時の安全対策としては、
構造 2 と同様、
把手及び安全帯が固定可能な金具を設けております。固定式作業台へは、ピット昇降用はしご等を
使用し、安全に昇降可能な構造としております。