モジュール 13 M13 インターネットの基礎知識 岡山県情報教育センター 1 インターネットの歴史 アメリカで 1960 年代の終わり頃に、離れた場所にあるコンピュータを利用するための 技術として、ファイルやプログラムを共有する方法などの研究が始められました。また、 研究者相互のコミュニケーションのための電子メールも重要なテーマとなっていました。 その当時のコンピュータは、非常に高価で台数も少なく、操作方法やプログラムもコン ピュータのそれぞれの機種で独自のものになっていました。そのような環境で、高価な コンピュータを有効に使い、能率を向上させることは、どの分野の研究者にとって重要 な課題でした。こうした研究の中から A R P A N E T (アルパネット)というネットワーク が誕生したのです。このネットワークの研究資金は、アメリカの国防総省の基礎研究部 門である DARPA(ダーパ)が負担していたので、インターネットは ARPANET という 軍事研究用のネットワークとしてスタートしたともいえます。しかし、DARPA 自身は研 究機関をもたずに、他の多くの基礎研究機関に資金を提供していたので、 ARPANET で 軍事用の研究が行われていたわけではありません。70 年代に入って、ARPANET などの 研究の結果、コンピュータによる通信の国際規格が定められ、80 年代になると軍事係の 部門は MILNET(ミルネット:アメリカ軍用ネットワーク)に分離しました。さらに、 NSF(全米科学財団)が資金提供を始めて、多くの大学にネットワークが普及すること になり、80 年代の終わりころには、ネットワークはカナダやヨーロッパ、オーストラリ アなどに広がり、世界的な規模のネットワークが形成されました。なお、 ARPANET 自 体は 90 年に解散することになり、その後は、 NSF や NASA のネットワークに移行しま した。 通信白書によると、平成 10 年度における日本の 15 歳か ら 69 歳までのインターネット利用者は、約 1,700 万人とい うことです。また、世帯普及率は 11%を超えたそうです。 下の表を見てもお分かりのとおり、世帯普及率が 10%を 超えるまでの時間はインターネットは 5 年と急速に広まっ たことが分かりますね。 情報通信メディアの世帯普及率10%までの期間 情報通信メディアの世帯普及率10%までの期間 76 76 電話 電話 24 無線呼出し 24 無線呼出し 19 ファクシミリ 19 ファクシミリ 15 携帯・自動車電話 15 携帯・自動車電話 13 パソコン 13 パソコン 5 インターネット 5 インターネット 0 20 0 20 40 40 年 年 1 60 60 80 80 2 インターネットのしくみ (1) 1 台 だ け で 独 立 し て い る コ ン ピ ュ ー タ 1台で独立して使用しているコンピュータ は、ワープロや表計算など、その1台で閉じた 世界でしか仕事ができません。このようなコン ピュータを ス タ ン ド ア ロ ンのコンピュータと 呼びます。 データやメッセージを 直接交換できない。 (2) 2 台 の コ ン ピ ュ ー タ を つ な ぐ 通信ポートを使って2台のコンピュータを接続して、ファイルのコピーなどが可能にな ります。1対1の接続で、応用範囲は限られています。 メッセージや データの交換 3台目、4台目は つなげない。 (3) 複 数 の コ ン ピ ュ ー タ を つ な ぐ コンピュータにネットワーク・インターフェ ース・カード(NIC)を装着し、ネットワーク機 能を導入すると、複数のコンピュータをつなぐ ことができます。例えば、会社や研究所にネッ トワークを導入するとすべての社員や所員に メッセージを送ったり、データを交換したり、 プリンタを共有できます。これをL A N(Local Area Network)と呼びます。 メッセージやデータの交換 プリンタの共有 2 ファイルの共有 (4) ネ ッ ト ワ ー ク ど う し を つ な ぐ O社本社とO社の支社のLANどうしをさらにつなぐのが、 W A N ( Wide Area Network)の基本的な考え方です。 O社( 本社) P研究所 本社・支社間での 情報交換が可能になる O社( 支社) (5) ネ ッ ト ワ ー ク を 世 界 規 模 で つ な ぐ インターネットは、WAN を世界規模 に広げたような特別な関係のある組織ど うしではなく、不特定多数のネットワー クどうしを接続したものです。 O社( 支社) P社 Q大学 インターネット O社( 本社) R官庁 S研究所 プロトコル O社、P社、Q大学、R官庁、S研究所などで、それぞれネットワークの規格が 異なると、うまく情報交換ができないので、規格(プロトコル)を統一する必要が あります。インターネットで使用されている基本的なプロトコルは TCP/IP と呼ばれ ます。たとえば、日本人とアメリカ人が会話をする場合に、日本人は日本語を、ア メリカ人は英語を話していたのでは会話は成立しません。どちらかの国の言語に合 わせる必要があるのと同じです。 3 (6) 誰 で も 入 れ る (5)のままでは、組織に属して いない一般の人は、このネット ワークに参加できません。そこ で、インターネット・サービス・プ ロバイダと呼ばれる接続業者が、 一般に対するインターネット の世界の入り口の役目をする ようになりました。個人ユーザ ーは、プロバイダに接続し、プ ロバイダがインターネットに 接続するという仕組みをとっ ています。 プロバイダ インターネット 個 人 インターネットには、全体を管理している団体はいませんが、それでは混沌とした世界に なってしまうので、いくつかの団体がそれぞれの分野で活動しています。もっとも重要なの は N I C(ネットワーク情報センター)で主にネットワークのアドレスの管理を行っています。 「アドレス」とは、文字どおりネットワークの住所のことで、世界中のネットワークを識別 できるように、「ネットワーク名」とその「住所」で管理しています。新しくつくられたネッ トワークは、NIC に登録して、アドレスを発行してもらいます。NIC はそれぞれの国ごとに あって日本の NIC は、JPNIC と呼ばれています。その他、ボランティア組織の ISOC(イン ターネット協会)がインターネット全体の円滑な運営を支えています。その中には、新しい 技術や基準を討論して決定するための期間(IAB)、国際規格の検討をする機関(IETF)と いたものがあります。また、セキュリティー問題を専門に研究する団体(CERT)のように、 ISOC とは別に活動している団体もあります。そして、それぞれの企業や大学などのネット ワークは、自分のネットワークを管理しています。つまり、インターネットは「自主独立」 で成り立っている世界で、それぞれが責任を分担しているのです。インターネット全体に関 する問題は、ISOC などで検討されますが、個々のネットワークに関しては個々のネットワ ークが責任をもつ必要があります。政府など、中央で管理してくれる団体はありません。も ちろん、個人ユーザは、あまりこうした問題を意識する必要はなく、他の人の迷惑になるよ うな使い方に注意すればよいのです。インターネットでは、可能性があるからといって何で も勝手なことができるわけではありませんが、新しい発想や提案はむしろ歓迎されています。 インターネット・サービス・プロバイダ インターネット・サービス・プロバイダは、「ISP」と略されたり、単に「プロバ イダ」と呼ばれることが多い。プロバイダは元来、企業などをインターネットに接 続できるようにするためのもので、個人の接続を手掛けるようになったのは比較的 最近のことです。 4 (7) 個 人 向 け の サ ー ビ ス の 開 始 個人ユーザが参入すると、研究目的だけではなく、趣味のグループができたり、物品販 売など個人ユーザ向けのサービスを提供する企業が接続するようになりました。インター ネットは元来研究目的のものでしたが、次第に娯楽や生活情報や営利の媒体としての性格 を強めるようになりました。 インターネット ・趣味のあつまり ・物品の販売 ・企業の宣伝 ・データベース など 個人 プロバイダ 個人 プロバイダ 個人 個人 プロバイダ 個人 個人 3 インターネットのサービス インターネットの主なサービスには、電 子 メ ー ル、 ネ ッ ト ニ ュ ー ス、 情 報 提 供 サ ー ビ ス ( W W W )、フ ァ イ ル 転 送( F T P ) 、リ モ ー ト 接 続(telnet) などがあります。 (1) 電 子 メ ー ル 電子メールとは、普通の手紙のやり取りと同じことをネットワークでつながったコンピ ュータで行うことで、Eメールとも呼ばれます。郵便と違い送るとほとんどすぐに相手側 のサーバに届き、受信者は都合の良いときにメッセージを読むことができるなど電話のよ うに時間を拘束されない情報手段でもあります。またメッセージはコンピュータで扱うデ ィジタルデータなので、加工や再利用か簡単にできます。インターネットの機能の中では 情報提供サービス(WWW)と同じく利用頻度が高いサービスです。 (2) ネ ッ ト ニ ュ ー ス パソコン通信の電子会議のように共通の話題(趣味、娯楽やコンピュータ情報など)ご とに分類されたニュースグループで、書き込まれた(投稿された)メッセージを読んだり、 それに対する意見を書き込んだりできるサービス。 (3) リ モ ー ト 接 続 (t e l n e t ) UNIX の標準機能の一つで、ネットワークを通じてサーバに接続し、離れたコンピュー タからサーバを直接操作できるサービス。通常はユーザIDとパスワードが必要になりま す。 (4) フ ァ イ ル 転 送 (F T P :File Transfer Protocol) telnet 同様 UNIX の標準機能の一つで、FTP サーバに接続しファイルを転送するサービ ス。この機能を利用して、フリーソフトウェアをダウンロードしたり、個人がホームペー ジを開く場合、Web ページデータをプロバイダのサーバに転送したりします。 5 (5) 情 報 提 供 サ ー ビ ス (W W W :World Wide Web ) インターネットでは文字情報だけでなく、画像、動画、音声による情報提供が行われて います。いわゆる Web ページの閲覧です。インターネットでこのようなマルチメディアに よる情報を公開できるシステムを持つのが WWW サーバです。WWW とは World Wide Web(Web:クモの巣)の略で、世界中のサーバがクモの巣状につながっていることを意 味しています。 4 インターネットへの接続 インターネットに接続するためには、接続サービスをビジネスとしているインターネッ トサービスプロバイダ「ISP」(以下、プロバイダ)と呼ばれる事業者を利用するのが一般 的です。接続形態には次にあげる 3 つの方法があります。 (1) 専用線 I P 接続 プロバイダと利用者を専用線で接続する形態で、インターネットのすべてのサービスを 利用することができます。基本的には常時接続しておくため、いろいろなサービスのサー バとして利用する際の接続に適しています。たとえば、WWW サーバとして利用すること もできるので、専用のホームページを持つこともできます。ただし、利用料金が高額なの で個人の利用には適しているといえません。ネットワーク環境をもっている企業や組織向 けの接続形態であるといえます。 (2) ダ イ ヤ ル ア ッ プ I P 接続 プロバイダと利用者を公衆回線(またはISDN回線)で接続する形態で、回線が接続 している間だけインターネットのサービスを利用できます。サーバとしての利用は普通で きませんが、その他のサービスはすべて利用することができます。利用料金が安価であり、 常時接続しておく必要もないので、個人向けの接続形態であるといえます。また、最近で は NTT が提供する「フレッツ ISDN」というサービスが開始されましたが、これはダイ アルアップ IP 接続の常時接続版で、月額 5,000 円から 6,000 円程度の固定料金で利用で きるサービスです。 (3) CATV CATV 事業者が提供するインターネット常時接続型サービス。CATV 加入者は、CATV 網にケーブル・モデムをつなぐことによってインターネットを利用できます。イーサネッ トと同じ 10Mbps の高速通信が可能なものもある。多チャンネル放送で使っていない帯域 を有効利用するため、公衆網を利用するより割安になる場合が多いようです。 (4) ADSL (asymmetric digital subscriber line ) 電話のメタル・ケーブル(銅線)で 10M ビット/秒に迫る伝送速度を実現するをいいま す。この ADSL は上りと下りの通信速度が非対称なのが特徴です。今春より NTT がフレ ッツ ADSL という常時接続のサービスを岡山でも開始しています。 先生方の家庭のインターネット接続状況はいかがでしょう か。これから接続を検討しようとしている先生方も多いので は・・・。ちなみに当センターのインターネット接続環境です が、10Mbps というとても太い回線で常時接続をしています。 4 部屋 90 台のパソコンで同時にインターネットの研修が可 能なんですよ。 6 ■ Microsoft、Windows、Windows NT、Microsoft Office、Microsoft Outlook、Internet Explorer、 MSN は、Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標です。 平成13年1月29日 初版発行 発行 岡山県情報教育センター 〒703-8288 岡山市赤坂本町3番15号 電話 (086)272-1405(総務課) 272-4608(研修課) 交通機関 市内電車 岡山駅前(東山行)乗車 東山(終点)下車,南へ徒歩7分 市内バス 岡山駅前(東山行)乗車 東高前下車,西へ徒歩2分 禁無断転載 ©2001 岡山県情報教育センター 7
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