報告書4.0 MB - 製造科学技術センター

日機連 19 環境安全-6
平成19年度
グローバル製品の資源循環における
低環境負荷・易資源循環製品設計技術
に関する調査研究 報告書
平成20年3月
社団法人
財団法人
日本機械工業連合会
製造科学技術センター
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
http://ringring-keirin.jp/
序
近 年 、技 術 の 発 展 と 社 会 と の 共 存 に 対 す る 課 題 が ク ロ ー ズ ア ッ プ さ れ 、機 械
工 業 に お い て も 環 境 問 題 、安 全 問 題 が 注 目 を 浴 び る よ う に な っ て き て お り ま す 。
環 境 問 題 で は 、京 都 議 定 書 の 第 一 約 束 期 間 が 開 始 し 、排 出 権 取 引 や C D M な ど
の 柔 軟 性 措 置 に 関 連 し た 新 ビ ジ ネ ス の 動 き も 本 格 化 し 、政 府 や 産 業 界 は 温 室 効
果ガスの削減目標の達成に向けた取り組みを強化しているところです。また、
欧 州 化 学 物 質 規 制 を は じ め と す る 環 境 規 制 も 一 部 が 発 効 し 、そ の 対 応 策 が 新 た
な課題であるとともに、新たなビジネスチャンスとも考えられます。
一 方 、安 全 問 題 も 、機 械 類 の 安 全 性 に 関 す る 国 際 規 格 の 制 定 も 踏 ま え て 、平
成 1 9 年 に は 厚 生 労 働 省 の「 機 械 の 包 括 的 な 安 全 基 準 に 関 す る 指 針 」の 改 正 に
伴 い 、リ ス ク ア セ ス メ ン ト 及 び そ の 結 果 に 基 づ く 措 置 の 実 施 が 事 業 者 の 努 力 義
務 と し て 規 定 さ れ る な ど 、機 械 工 業 に と っ て き わ め て 重 要 な 課 題 と な っ て お り
ます。
海 外 で は 欧 米 諸 国 を 中 心 に 環 境・安 全 に 配 慮 し た 機 械 を 求 め る 気 運 の 高 ま り
か ら 、そ れ に 伴 う 基 準 、法 整 備 も 進 み つ つ あ り 、グ ロ ー バ ル な 事 業 展 開 を 進 め
て い る 我 が 国 機 械 工 業 に と っ て 、こ の 動 き に 遅 れ る こ と は 死 活 問 題 で あ り 早 急
な対処が求められております。
こ う し た 内 外 の 情 勢 に 対 応 す る た め 、当 会 で は 環 境 問 題 や 機 械 安 全 に 係 わ る
事 業 を 発 展 さ せ て 、環 境・社 会 と の 共 存 を 重 視 す る 機 械 工 業 の あ り 方 を 追 求 す
る た め 、早 期 か ら こ の 課 題 に 取 組 み 調 査 研 究 を 行 っ て 参 り ま し た 。平 成 1 9 年
度 に は 、海 外 環 境 動 向 に 関 す る 情 報 の 収 集 と 分 析 、そ れ ぞ れ の 機 械 の 環 境 ・ 安
全対策の策定など具体的課題を掲げて活動を進めてきました。
こ う し た 背 景 に 鑑 み 、当 会 で は 機 械 工 業 の 環 境・安 全 対 策 の テ ー マ の 一 つ と
して財団法人
製 造 科 学 技 術 セ ン タ ー に「 グ ロ ー バ ル 製 品 の 資 源 循 環 に お け る
低 環 境 負 荷・易 資 源 循 環 製 品 設 計 技 術 に 関 す る 調 査 研 究 」を 調 査 委 託 い た し ま
し た 。本 報 告 書 は 、こ の 研 究 成 果 で あ り 、関 係 各 位 の ご 参 考 に 寄 与 す れ ば 幸 甚
です。
平成20年3月
社団法人
会
日本機械工業連合会
長
金
井
務
はじめ に
日本 の人口 減 少 、高 齢 化の 急速な 進 展 によ る労働 力の逼 迫 、 技術 力 を担 う人材 の 質
の 低 下 に よ る 技 術 革 新 の 弱 体 化、 過 激 な グ ロ ー バ ル 競 争 に さ ら され る 産 業 構 造 を 支 え
る 基 底 層 ( 中 小 企 業 ) の 空 洞 化、 急 速 に 発 展 す る イ ン ド 、 中 国 等開 発 途 上 国 に よ る 追
い 上 げ に よ る マ ー ケ ッ ト シ ェ アの 低 落 の 長 期 的 見 通 し に 加 え 、 地球 規 模 の 環 境 危 機 に
直 面 し て い る こ と は 、 大 方 の 見方 と 言 っ て 宜 し い か と 思 い ま す 。特 に 、 地 球 規 模 の 環
境 危 機 は 、 そ の 蓋 然 性 が 高 ま って お り ま す 。 一 方 見 方 を 変 え ま すと 、 国 際 間 で 共 有 す
る 危 機 は 、 我 が 国 に と っ て 逆 にチ ャ ン ス で も あ り ま す 。 い ち は やく 高 度 環 境 付 加 価 値
を 持 っ た 産 業 シ ス テ ム を 構 築 する こ と に よ っ て 、 国 際 的 競 争 力 を回 復 す る 機 会 で も あ
ります。
本 調 査 研 究 は 、 わが 国 の 国 際 収 支 基 盤 のひ と つで も あ る グ ロ ーバ ル 家 電 製 品 を 取 り
上 げ 、 持 続 可 能 な 資 源 利 用 を 実現 す る た め の 技 術 で あ る 「 易 資 源循 環 製 品 設 計 と リ サ
イ ク ル と を 整 合 さ せ た 設 計 ・ リサ イ ク ル 技 術 、 お よ び グ ロ ー バ ルな 資 源 循 環 を 可 能 に
す る 循 環 チ ェ ー ン の 構 築 技 術 」を 開 発 す る た め に 避 け ら れ な い 問題 、 す な わ ち 「 世 界
各 地 域 で 、 リ サ イ ク ル や 易 資 源循 環 製 品 設 計 に 対 す る 基 本 的 考 え方 及 び 体 制 が 大 き く
異なる」問 題を分 析し明らか にす ること を直近の目 標と してい ます 。そのた め、日 本 、
欧州、中 国 、米 国の リ サイク ルの現状を調査 し、各地 域 の特徴 をモ デルとして まとめ 、
こ れ ら の リ サ イ ク ル 方 法 の 違 いが 資 源 回 収 効 率 、 環 境 負 荷 の 面 から ど の よ う に 異 な る
の か を 見 る た め 、 家 電 製 品 1 4種 1 3 6 台 を 用 い た リ サ イ ク ル 実験 を 行 う こ と に よ っ
て、課 題を 明確に した次第です。
今後 は、今 回 整 理し た リサ イクル モ デ ルの 中 でど のモデ ル が優れ て いる と言え る の
か 、 あ る い は ど の よ う に し て 最適 な リ サ イ ク ル プ ロ セ ス を 設 計 する の か と い っ た 点 を
検 討 し て い く 必 要 が あ り ま す 。こ の た め に は 、 リ サ イ ク ル プ ロ セス の よ り 詳 細 な 評 価
が 必 要 と 考 え ら れ ま す 。 す な わち 、 単 に 分 解 ・ 分 別 さ れ た 材 料 の 量 的 な 評 価 だ け で な
く 、 そ れ ら の 質 、 価 値 な ど の 面か ら 、 リ サ イ ク ル の 本 来 の 目 的 であ る 資 源 ・ 環 境 問 題
の 軽 減 と い う 面 か ら の 評 価 を 体系 的 に 行 え る よ う に し て い か な けれ ば い け な い と 思 い
ます。
本 報 告 書 は 、 こ の調 査 研 究 成 果 で あ り 、関 係 各 位 の ご 参 考 に 寄与 す れ ば 幸 甚 で あ り
ます。
平成2 0年 3月
財団法 人
理事長
製造科学技 術セン ター
庄
山
悦
彦
事業運営組織
本事業は、次の委員会を設けて実施した。
平 成 19年 度 グ ロ ー バ ル 製 品 の 低 環 境 負 荷 ・ 易 資 源 循 環 設 計 技 術 検 討 委 員 会
委員長
高田
祥三
早稲田大学 創造理工学部 経営システム工学科 教授
委
員
上野
潔
国際連合大学 プログラムアドバイザー
委
員
梅田
靖
大阪大学 大学院 工学研究科 機械工学専攻 教授
委
員
熊澤
孝明
(株 )日 立 製 作 所 生 産 技 術 研 究 所
生産システム第一研究部 研究員
委
員
馬場
研二
東京エコリサイクル(株) 代表取締役社長
委
員
平尾
雅彦
東京大学 大学院
工学系研究科 化学システム工学専攻 教授
委
員
弘重
雄三
(株 )日 立 製 作 所 生 産 技 術 研 究 所
生 産 シ ス テ ム 第 一 研 究 部 第 4研 究 室 室 長
委
員
藤崎
克己
三菱電機(株)
リビング・デジタルメディア技術部 技術担当部長
委
員
松野
泰也
東京大学 大学院
工学系研究科 マテリアル工学専攻 准教授
※委員変更
2007年 10月 12日 ま で
(株)日立製作所
並河
治
2007年 10月 15日 か ら
(株)日立製作所
熊澤
孝明
( 敬 称 略 ・ 50音 順 )
事務局
瀬 戸 屋 英 雄 ( 財 ) 製 造 科 学 技 術 センター IMSセンター 所 長
事務局
鈴木
一 規 ( 財 ) 製 造 科 学 技 術 センター IMSセンター 研 究 開 発 部 部 長
事務局
八木
淳 一 ( 財 )製 造 科 学 技 術 セ ン タ ー I M S セ ン タ ー 研 究 開 発 部 部 長 代 理
事務局
高橋
慎 治 ( 財 ) 製 造 科 学 技 術 センター 生 産 環 境 室 主 席 研 究 員
目
第1章
次
調査内容 ..................................................................................................... 1
1.1
調査 の目的 .................................................................................................... 1
1.2
調査 の内容 .................................................................................................... 2
1.3
調査 体制 ....................................................................................................... 3
1.4
委員 会開催 状況 ............................................................................................. 4
第2章
2.1
E-Scrap の技 術の現状と 問題点 .................................................................. 5
電気 機器資 源循環(リ サイ クル) の現 状 ....................................................... 5
2.1.1
日本 におけ る家 電品等の資 源循環(リサイクル) の現状 ......................... 5
2.1.2
欧州 におけ る家 電品等の資 源循環(リサイクル) の現状 ....................... 16
2.1.3
中国 におけ る家 電品等の資 源循環(リサイクル) の現状 ....................... 46
2.1.4
米国 におけ る家 電品等の資 源循環(リサイクル) の現状 ....................... 72
2.2
FPD の資源循環 (リサ イクル)技 術の 現状・ 問題 点と基 礎検 討 .................. 97
2.2.1
LCD のリサ イ クルに つい て .................................................................. 97
2.2.2
PDP の リサ イ クルに ついて .................................................................102
2.2.3
各地 域のリ サイクルにおけ る FPD の 扱い ............................................103
2.2.4
FPD リサイ ク ルに関 する現状の まと め ................................................104
第3章
E-Scrap の分 解・破砕実 験 ......................................................................105
3.1
目的 ...........................................................................................................105
3.2
実験 におけ る前提 条件 ...............................................................................105
3.3
分解 ・破砕 実験の内容 ...............................................................................108
3.4
総合 評価の 方法 .......................................................................................... 111
3.5
実験 結果 .................................................................................................... 113
3.6
取得 データ の評価と今 後の 課題 ..................................................................122
3.7
まと め........................................................................................................123
第4章
グローバル製 品の資 源循環・リ サイ クルモ デル .......................................126
4.1
背景 、社会 動向 ..........................................................................................126
4.2
国内 におけ る資源循環・リ サイク ルフ ロー .................................................127
4.3
海外 におけ る資源循環 ・リ サイク ルフ ロー .................................................131
4.4
国際 資源循 環における 資源 循環社 会像 .......................................................138
第5章
グローバル製 品の低 環境負荷・ 易資 源循環 設計のため の技 術課題 ............139
5.1
課題 (1):循環システムの設計に 関する課題 .............................................139
5.2
課題 (2):製品設計に関す る課題 ..............................................................140
5.3
課題 (3):具体的なリサイ クル技 術に関する課題 ......................................142
5.4
まと め........................................................................................................142
第6章
総括 ........................................................................................................144
第1章
1.1
調査内容
調査 の目的
環境 問 題と 資 源 有 効 利 用 の 観 点 か ら、 持 続性 の あ る 産 業 社 会 の 仕 組 み と し て 循 環 型
社会の構 築 が必 要とさ れ、我が 国 にお いては、循 環型 社 会基 本法の もと で、 3R(リ デ
ュ ー ス 、 リ ユ ー ス 、 リ サ イ ク ル) の 普 及 が 進 め ら れ て い る 。 ま た、 世 界 各 国 で も 新 し
い環境規制(欧州 の WEEE、RoHS、EuP 等 )の導 入が進みつつあ り、こ れらの動 き
に 対 応 し た 産 業 界 の 施 策 の 重 要性 が 急 激 に 増 し つ つ あ る 。 し か し、 環 境 規 制 は 市 場 規
模 の 大 き な 輸 出 製 品 が 相 手 国 の環 境 法 規 制 に 抵 触 す る 場 合 な ど 、製 品 輸 出 に 大 き く 影
響 す る こ と も 懸 念 さ れ て い る 。事 実 、 電 子 機 器 製 品 の 製 造 企 業 がオ ラ ン ダ の 有 害 物 質
規制に 抵触 して莫 大な 損害を蒙っ た例な どがある。
また 、 地球 規 模 の 循 環 型 社 会 対 応 技術 の 開発 は 、 こ れ ら 内 外 の 環 境 規 制 対 応 と し て
だ け で な く 、 産 業 競 争 力 の 強 化の 視 点 か ら も実 現 さ れ な け れ ば なら な い 。 す な わ ち 、
循 環 型 社 会 の 実 現 に よ る 資 源 の有 効 活 用 は 、 企 業 活 動 に お け る 資源 の 調 達 保 全 の 観 点
でも非 常に 有効で ある と考えられ る。
ここ で 、循 環 型 社 会 に 対 応 す る 技 術は 、 全く 新 規 に 構 築 す る の で は なく 、 従 来 か ら
行 っ て い る 使 用 済 み 製 品 処 理 の方 式 を 基 礎 に こ れ を 低 コ ス ト 、 低環 境 負 荷 の も の に 改
良 し て 実 現 す る こ と が 効 率 的 ・効 果 的 で あ る 。 し か し な が ら 、 現状 の 再 資 源 化 は 個 々
の 業 者 の 経 験 と ビ ジ ネ ス 方 針 とに 頼 っ た 処 理 方 法 で 実 現 さ れ て おり 、 高 機 能 な 新 製 品
に 対 し て は 適 正 な 再 資 源 化 処 理技 術 が 無 い 、 再 資 源 化 し や す く 製品 を 設 計 す る 技 術 も
無 い な ど の 理 由 に よ り 、 地 球 規模 の 再 資 源 化 は 質 の 良 い 適 正 な 処 理 を 実 現 で き て い る
とはい えな い。
この よ うに 、 低 環 境 負 荷 ・ 易 資 源 循環 製 品・ 循 環 的 サ プ ラ イ チ ェ ー ン の 設 計 ・ 計 画
技 術 は 、 世 界 的 に 拡 大 し つ つ ある 使 用 済 製 品 の 再 資 源 化 を 義 務 化す る 規 制 制 度 へ の 対
応 は も と よ り 、 適 切 な 再 資 源 化の 実 現 に よ る 希 少 資 源 の 保 全 の 観点 か ら も 、 グ ロ ー バ
ル 製 品 の 競 争 力 に 大 き く 影 響 を及 ぼ す 。 望 ま し い 地 球 規 模 の リ サ イ ク ル を 実 現 す る た
めには 、次 のよう な幅 広い循環型 社会対 応技術の開発を 推進す ることが重要で ある。
(1)多国 間に跨 る垂直分業 を適 正化す る計 画技術
(2)リサ イクル 容易な製品 の開 発を支 援す る設計 技術
(3)使用 済製品 の処理段階 での 環境影 響の 定量評 価技 術
(4)資源 循環化 対応のトー タル サプラ イチ ェーン管理 、情報処理 技術
-1-
本調 査 では 、 今 後 グ ロ ー バ ル 市 場 で成 長 が見 込 ま れ る 情 報 家 電 や デ ジ タ ル 家 電 、 そ
の基幹部品(例え ばフ ラット パネ ルディ スプ レイ)等の 戦略的 に重 要な製品に つい て 、
こ の よ う な 循 環 型 社 会 対 応 技 術の 開 発 を 円 滑 か つ 適 切 に 推 進 す る た め の 基 礎 作 業 と し
て 、 製 品 の 販 売 先 と な る 海 外 を含 め た 再 資 源 化 方 法 や 技 術 の 実 態、 販 売 先 の 処 理 に 適
し た 製 品 設 計 を 支 援 す る 技 術 、必 要 と な る 再 資 源 化 処 理 技 術 の 調査 ・ 分 析 を 行 な い 、
その技 術開 発の推 進計 画として取りまと めることを目的 とする 。
1.2
調査 の内容
本事業 の目 的達成 のた め、
「あ るべき資 源循 環社会の将 来像」、
「そ れに基 づく開 発 す
べき技 術」の仮説 を立てながら、日本、欧州 、アジ ア( 中国)、米 国につ いて、次の よ
う な 調 査 ・ 分 析 を 実 施 し 、 現 状把 握 、 問 題 点 抽 出 、 さ ら に は 仮 説の 検 証 、 詳 細 化 を 行
ない、 技術 開発ニ ーズ を明確化す る。
(1)各地 域(日 本、海外) にお ける現 状の 再資源 化方 法や技術
・ 使用済 み製 品の再資源 化方法 やその現状、問 題点、 ニーズ
(2)各地 域にお いて、今後 必要 となる再資 源化技 術の 調査
・ 法規 制 動向 を 踏ま え た 再 資 源化 技 術 の将 来 の 方 向 性と 、 それ を 実現 す る
ために 必要 な方法と技 術
・ 再資源 化技 術を開発す る上で の課 題
(3)上記 に基づ き、易再資 源化 設計を 支援 する技 術の 調査
・ 製品設 計を 支援する技 術の現 状と 、望 ま し い 設 計 支 援 方 法 に対 す る ニ ー ズ
(4)易再 資源化 設計支援の 実現に不可欠な システ ムの 調査
・ 各地 域 の再 資 源化 事 情 に 合 わせ た 適 切な 製 品 設 計 を支 援 する た めに 必 要
となる 企画 ・設計を支 援する システム、技術 のあり 方
・ 上記技 術の 開発課題
調査・分析 に際し ては 、現状 の再 資源化にお ける、
(1)使用 済み製 品の価値が 未反 映
(2)再資 源化難 易度がコス トに 未反映
(3)製造 業者に よる再生部 材の 確保の 視点 での運 用が 未実施
(4)再資 源化業 者による非 付加 価値部 位の 不法投 棄
といっ た課 題を踏 まえ 、
「あるべ き資源 循環社会の将来 像」につ い て、以下 の ような 仮
-2-
説をふまえ て推進 する 。
( 1) 利 材 的 価 値 の 集 合 物 の “ 再 資 源 化 ・ 再 生 作 業 ” を 業 者 に 委 託 す る と い う ス
タンス に基 づく処 理
(2)個別 製品の 有価 物価値 、作 業コス トを 反映し たコ スト負担方 式
(3)原価 管理・ コス ト削減 を意 識した 有価 物の回 収・ 再生コスト の負担
( 4) 再 資 源 化 業 者 は サ プ ラ イ チ ェ ー ン 最 上 流 で も あ り 、 部 材 の 調 達 保 全 の 点 で
も活用
(5)勘と 経験で はな く、情 報に 基づく効率 的な再 資源 化作業
これ ら の調 査 結 果 に 基 づ き 、 市 場 毎の 使 用済 製 品 価 値の 差 違 、 再 資 源 化 難 易 度 、 希
少 価 値 を 持 つ 再 生 原 材 料 等 に 配慮 し 、 そ の 将 来 展 望 像 を も 検 証 しつ つ 、 循 環 型 社 会 対
応 設 計 の 支 援 技 術 、 処 理 技 術 の現 状 と 課 題 、 あ る べ き 姿 な ど を 検討 し て 、 循 環 型 社 会
対応技 術の 開発計 画を 立案する。
1.3
調査 体制
(財 ) 製造 科 学 技 術 セ ン タ ー 内 に 、本 事 業の 運 営 と 事 業 計 画 作 成 、 調査 研 究 遂 行 、
事 業 の 取 り ま と め 等 を 実 施 す るた め に 「 グ ロ ー バ ル 製 品 の 低 環 境負 荷 ・ 易 資 源 循 環 設
計検討 委員 会」を 設け 、当初の目 的を達 成すべくこれを 推進し た。
社団法人
委
財団法人
日 本 機 械 工 業 連 合会
託
製造 科 学 技 術 セ ン タ ー
再委託
東 京 エ コ リ サ イ ク ル株 式 会 社
グ ロ ー バル 製 品 の 低 環 境 負 荷 ・ 易 資 源 循 環 設 計 検 討 委 員 会
委員長:
高田祥三
早稲田大学
創造理工学部
-3-
経営システム工学科
教授
1.4
委員 会開催 状況
本調査 を実 施するため 、以下 の通 り、委員会 を開催 した。
第1回
平成 19 年 8 月 8 日
「日・欧・亜のリ サイ クルに 関す る取り組み の相違 」や「リ サイ クル社会の将 来
像(仮 説)」について 議論し た。
第2回
平成 19 年 9 月 18 日
「 リ サ イ ク ル 社 会 の 将 来 像 ( 仮 説 )」 の 議 論 、 ま た 国 内 調 査 、 海 外 調 査 、 実 験 内
容を計 画し た。
第3回
平成 19 年 11 月 20 日
国内調 査、 海外調 査の 報告、また実験内 容の詳細を確認 した。
第4回
平成 20 年 1 月 9 日
実験結 果の 報告、 また 報告書作成 の分担 とスケジュール を確認 した。
第5回
平成 20 年 3 月 4 日
報告書 原稿 の内容を確 認した。
-4-
第2章
2.1
2.1.1
E-Scrap ※ の技 術の現 状と 問題点
電気 機器資 源循環(リサイ クル) の現状
日本における家 電品等 の資源循環(リ サイク ル)の現状
(1)家電 リサイ クル法と資 源回 収
日本 で は埋 立 地 不 足 解 消 や 資 源 有 効利 用 の大 き な 流 れ の 中 で 、 個 別 リサ イ ク ル 法 や
資 源 有 効 利 用 促 進 法 の 下 、 製 造メ ー カ が 過 去 に 自 ら 製 造 し た 家 電、 自 動 車 、 パ ソ コ ン
等のリ サイ クルを実施 している。 パソコ ンを除くコピー 機等の OA 機器の リサ イ ク ル
に お い て は 、 法 的 な リ サ イ ク ル義 務 が 無 く て も 、 大 手 メ ー カ 自 らが 製 造 、 販 売 し た 使
用 済 み 機 器 を 回 収し て 全 国 的 な リ サ イ ク ル ネ ッ ト ワー ク を 構 築 し て い る ケー ス が あ る 。
家電リ サイ クル法 は 、エアコ ン 、テレビ 、冷 蔵庫(後 に冷凍庫が追 加)、洗 濯機の特
定家電 4 品目を対象と して 2001 年 4 月に施行された。
図 2.1.1-1 に全国 の再商品化 施設 を示す 。各 施設で は処理品目毎に 適した 個別の 処 理
ラ イ ン で リ サ イ ク ル を 行 な う こと に よ り 、 同 様 の 素 材 構 成 の 機 器か ら 金 属 、 ガ ラ ス 、
プラス チッ クとい った 有用資源を 効率良 く回収している 。
※)
E-Scrap(Electronic Scrap): 使用済 み電気製品
-5-
図 2.1.1-1
日本の家 電リサ イク ルプラント 配置
(財団 法人 家電製 品協 会平成 18 年度家 電リサイクル年 次 報告 書を引用)
また 、 家電 リ サ イ ク ル で は 、 メ ー カが 直 接リ サ イ ク ル プ ラ ン ト に 投 資 し た り 、 メ ー
カ の 技 術 者 が リ サ イ ク ル プ ラ ント に 出 向 し た り す る ケ ー ス が あ り、 リ サ イ ク ル の 技 術
開 発 に 生 産 者 が 直 接 的 に 関 与 して い る ケ ー ス が 少 な く な い 。 こ れ に よ り 、 生 産 者 と 廃
棄 物 処 理 事 業 者 が 独 立 し て い た過 去 と は 異 な り 、 生 産 者 と リ サ イク ル 事 業 が 連 携 し た
新 し い 仕 組 み が 構 築 さ れ 、 使 用済 み 家 電 品 か ら の 高 度 な 選 別 技 術の 開 発 や 新 し い 回 収
素材の 用途 開拓が行わ れている。
-6-
廃家電の
解体分離情
報のフィード
バック
家電品の供給
家電品購入
販売店
廃家電の
・引取義務
・引渡義務
自己循環素材
・プラスチック
・フロン(R22)
・洗濯機塩水等
リサイクルプラントへ
の出資、社員出向
生産者
消費者
・処理料金支払義務
・廃家電の適正な引渡し
(廃家電引渡し)
自治体
廃家電の
・運搬
生産者責任
廃家電の
・引取義務
・再商品化義務
指定引取場所
リサイクルプラント
素材業者
最終処分
(鉄、銅、アルミ、;プラスチック等) (焼却、埋立)
図 2.1.1-2
家電リサ イクル における生産者 とリサ イクルプラント の連携
この よ うな 状 況 の も と 、 家 電 リ サ イク ル は法 律 施 行 後 順 調 に 推 移 し 、 回 収 量 や 再 商
品化率 (リ サイク ルプ ラントの 1 台 あ た り 有 価 回収 素 材 重 量 を 製 品 重 量で 除 し た 値 )
は年々 増加 傾向に ある 。図 2.1.1-3 に再商品 化処理台数、図 2.1.1-4 に再商品 化率の 推
移を示す。
2001年度
2002年度
2003年度
2004年度
2005年度
2006年度
4,500
再商品化処理台数[千台]
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
エアコン
図 2.1.1-3
テレビ
冷蔵庫
洗濯機
再商 品化処理台数の 推移
(財団 法人 家電製 品協 会 HP 掲 載データから 作成)
-7-
2001年度
2002年度
2003年度
2004年度
2005年度
2006年度
100%
再商品化率[%]
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
エアコン
テレビ
図 2.1.1-4
冷蔵庫
洗濯機
再商 品化率の推 移
(財団 法人 家電製 品協 会 HP 掲 載データから 作成)
図 2.1.1-5 に 2006 年 度の家 電 4 品目の 再商 品化素材構 成を示 す。 2006 年度の実績
から家 電 4 品目で年間 約 345 千トンの素材が 再商品 化されている。 各品目 から共 通 的
に 回 収 さ れ る 素 材 は 、 鉄 、 銅 、ア ル ミ 、 非 鉄 混 合 金 属 、 そ の 他 有 価 物 で あ り 、 そ の 他
有 価 物の ほ と ん どは プ ラ ス チ ッ ク で あ る。 テ レビ に つ い て は 、 ブ ラ ウ ン 管ガ ラ スが 6
割近く を占 めてい るこ とがわかる 。
冷蔵庫の再商品化素材構成
エアコンの再商品化素材構成
その他有価物
8.3%
鉄
35.9%
その他有価物
20.2%
非鉄・鉄混合物
18.1%
非鉄・鉄混合物
アルミ
3.0%
45.2%
銅
7.5%
アルミ
0.2%
テレビの再商品化素材構成
その他有価物
23.8%
鉄
12.8%
鉄
59.9%
銅
1.5%
洗濯機の再商品化素材構成
銅
4.9%
アルミ
0.1%
その他有価物
25.9%
非鉄・鉄混合物
1.0%
非鉄・鉄混合物
18.7%
ブ ラ ウン 管ガラ ス
57.5%
アルミ
0.7%
図 2.1.1-5
銅
1.4%
再商 品化素材構 成
(財団法人 家電製 品協会 HP デー タから試算 )
-8-
鉄
53.2%
図 2.1.1-4 におい てテレビの 再商 品化率が近 年減少 傾向 に あるが、これは ブラウ ン 管
メ ー カ が 海 外 移 転 し た こ と に 伴い 、 処 理 の 実 態 は 変 わ っ て い な い が 、 一 部 が 再 商 品 化
重量と して カウン トで きなくなっ たため であ る。
一方 、 最近 は 素 材 価 格 高 騰 が 継 続 して お り、 素 材 価 格 の 低 か っ た 数 年 前 よ り も コ ス
ト を か け て 純 度 の 高 い 素 材 を 回収 す る こ と が で き る よ う に な り 、リ サ イ ク ル の 用 途 も
従 来 に 比 べ て ハ イ グ レ ー ド な もの に 移 行 し て い る 。 家 電 リ サ イ クル で は 、 メ ー カ 自 身
が 過 去 に 製 造 し て い た 製 品 を 処理 し て い る こ と か ら 、 解 体 し た プラ ス チ ッ ク 材 料 等 に
識別表 示等 がなく ても 、どの部位 にどの 材料を使用 して いたか をある程度 把握 できる 。
ま た 、 素 材 の 購 買 ル ー ト を 自 身で 持 っ て い る こ と か ら 各 製 品 の 生産 工 場 へ の リ サ イ ク
ル材の 提供 も容易 であ る。こ のため、図 2.1.1-2 に示す ように 、家 電リサイク ルにお い
て は 、 使 用 済 み 家 電 製 品 か ら 取り 出 し た プ ラ ス チ ッ ク を 新 し い 家電 製 品 の プ ラ ス チ ッ
ク 材 料 に 適 用 す る 「 自 己 循 環 リサ イ ク ル 」 が 始 ま っ て い る 。 使 用 済 み 洗 濯 機 か ら 回 収
した水 槽 の PP( ポリ プ ロピレ ン)を洗濯 機や冷蔵庫の部 品に適 用したり、使用済み エ
ア コ ン の 室 内 機 フ ァ ン を 新 製 品の エ ア コ ン 室 内 機 フ ァ ン に 適 用 した り す る 等 の 取 り 組
みが行 われ ている 。さ らに、最近 は複合 したプラスチッ クを機 械的に選別して 、PP 等
の 単 一 素 材 を 回 収 す る 事 例 も 出て き て い る 。 こ の 自 己 循 環 リ サ イク ル は 海 外 で は 見 ら
れ な い 事 例 で あ り 、 メ ー カ 自 身が 直 接 使 用 済 み 製 品 を 回 収 し て 品目 別 に リ サ イ ク ル 処
理している ことに よる 成果である 。
その他 の素 材について は、図 2.1.1-6 に示す ように、鉄 は自動 車鋼板や建築用 形鋼 、
銅 は 銅 製 錬 で 銅 素 材 、 ア ル ミ は鋳 物 等 に 再 生 利 用 さ れ て い る 。 基板 は 主 と し て 銅 が 回
収される他 、金、 銀、 白金、パラ ジウム等の貴金属も同 時に回 収されている。
エアコン
テレビ
冷蔵庫
洗濯機
鉄
自動車用薄板
電炉
建築用形鋼
銅
銅精錬炉
電線
ナゲット
アルミ
鋳造炉
エンジン用鋳物
基板
銅・鉛精錬炉
貴金属他
ブラウン管
プラスチック
図 2.1.1-6
転炉
銅管・電線他
CRT
プラスチックメーカ
プラスチック
家 電 4 品目から 回収 した素 材の 再生ル ート
-9-
本委 員 会で は 、 家 電 等 か ら 回 収 さ れた 基 板や 電 気 電 子 機 器 か ら 回 収 さ れ る 複 数 の 非
鉄 金 属 の 処 理 に 注目 し 、従 来 か ら 非 鉄 金属 リ サイ ク ル を 行 っ て い る 日 鉱 グル ー プの 2
つの工 場を 対象と して 調査を行っ た。以 下、調査内容を 報告す る。
(2)日鉱 敦賀リ サイ クル株 式会 社のリ サイ クル処 理
①会社概要
日鉱敦 賀リ サイク ル( 株)は 図 2.1.1-7 に示 すよう に日 鉱金属(株)傘下 のリサイ ク
ル会社の 1 つである。1957 年に前身の 三日 市製錬(株 )が設立さ れ、当時は 亜鉛鉱 石
から硫 酸を 製造し てい た。1994 年に 産 業 廃 棄 物 処理 業 お よ び特 別 管 理 廃棄 物 処 分 業 の
許可取 得し 、1995 年 11 月に日 鉱敦賀リサ イクル (株 )とし て産 業廃棄物処 理を 始 め
て い る 。 ま た 、 産 業 廃 棄 物 と は別 に 貴 金 属 ス ク ラ ッ プ の リ サ イ クル 処 理 も 実 施 し て い
る。資本金 は 50 百万 円、敷地 面 積は 23 万 m 2 で、1 交替 4 名の操業形態 をと ってい る。
主な事 業内 容は廃 電子 機器( PC、携帯電 話等 )の解体選 別、貴 金属 スクラ ップ の リ
サイク ル、 廃酸、 廃ア ルカリ、廃 油、汚 泥等の産業廃棄 物処理 である。
新日鉱ホールディングズ㈱
日鉱金属㈱
日鉱環境㈱
(茨城)
日鉱敦賀
リサイクル㈱
(福井)
日鉱三日市
リサイクル㈱
(富山)
苫小牧
ケミカル㈱
(北海道)
日鉱製錬㈱
佐賀関製錬所
図 2.1.1-7
日鉱 グル ープの 環境 リサイクル 事業組 織図
②処理概要
a)廃電子 機器の 処理
手解体 を行 ってい る使 用済み 機器 は、パソコ ン、携 帯電話、ファッ クス、コピー 機 、
プリン ター 、その 他 OA 機 器 等 で あ る。 日 鉱 敦賀 リ サ イ ク ル ( 株 ) の 廃電 子 機 器 の 処
- 10 -
理フローを 図 2.1.1-8 に示す。
携帯電 話、PC につい ては、金属含有量の高 いもの と分別できるプ ラスチ ックを 手 解
体 し て 選 別 し て い る。 廃 電 子 機器 を 手 解 体 し た 後 は 、 日 鉱 敦 賀 リ サ イ ク ル 工 場 内 で 回
収 し た 素 材 の う ち 、 鉄 、 ア ル ミ、 ス テ ン レ ス 等 の 金 属 ス ク ラ ッ プ、 ガ ラ ス く ず 、 廃 プ
ラ ス チ ッ ク を 外 部 素 材 メ ー カ 等に 販 売 し て 再 生 し て い る 。 バ ッ テリ ー に つ い て は 、 焼
却 処 理 後 に 破 砕 選 別 し 、 ニ ッ ケル 滓 、 コ バ ル ト 滓 を 外 部 素 材 メ ー カ 等 に 販 売 し 、 銅 滓
等 を 日 鉱 製 錬 ( 株 )佐 賀 関 製 錬所 で 金 属 回 収 し て い る 。 銅 滓 と 同様 に 銅 ス ク ラ ッ プ 、
貴 金 属 ス ク ラ ッ プに つ い て は 焼却 前 処 理 後 に 粉 砕 し て 、 日 鉱 製 錬( 株 ) 佐 賀 関 製 錬 所
で金属回収 してい る。
佐賀関 製錬 所で回 収さ れる主 な金 属は、金、 銀、パ ラジウム、銅で ある。
プラ ス チッ ク に つ い て は 、 分 別 で きる も のを 回 収 し 、 そ れ 以 外 は 焼 却前 処 理 後 で あ
る 。 携 帯 電 話 は 大 手 通 信 会 社 との 取 り 決 め で バ ッ テ リ ー と本 体 を 事 前 に 分 別 し て か ら
入荷し てい る。
b)貴金属 リサイ クル処理
日鉱敦 賀リ サイク ルの 貴金属 リサ イクル処理 フロー を 図 2.1.1-9 に 示す。貴金属ス ク
ラップ は、定置燃 焼炉で焼却前処 理後に 粉砕して 貴 金属 滓とし て回 収し、日鉱製錬( 株 )
佐賀関 製錬 所に出 荷す る。
- 11 -
日鉱製錬㈱佐賀関製錬所
図 2.1.1-8
日鉱敦賀 リサイ クル(株)にお ける廃 電子機器の処理 フロー
(日鉱 敦賀 リサイク ル HP から 抜粋)
図 2.1.1-9
日鉱 敦賀 リサイ クル (株) にお ける貴金属 リサイ クル処理フロー
(日鉱 敦賀 リサイク ル HP から 抜粋)
- 12 -
c)産 業廃 棄物処 理の 概要
図 2.1.1-10 に日鉱 敦賀 リサイ クル の産業廃棄 物処理 フロ ーを示す。図 2.1.1-10 に 示
す 焼 却 炉 は 、 過 去 に 使 用 し て いた 焙 焼 炉 を 改 造 し て 産 業 廃 棄 物 焼却 炉 と し た も の で あ
る。
図 2.1.1-10
日鉱敦賀 リサイ クルの産業廃棄 物処理 フロー
(日鉱 敦賀 リサイク ル HP から 抜粋)
d)油化設 備
上記 リ サイ ク ル 処 理 や 産 業 廃 棄 物 処理 と は別 に プ ラ ス チ ッ ク が 多 く 含ま れ て い る 貴
金 属 ス ク ラ ッ プ を 主 な 対 象 と した 油 化 設 備 が あ る 。 貴 金 属 ス ク ラッ プ を 無 酸 素 状 態 で
加 熱 し 、 プ ラ ス チ ッ ク 部 分 を 気化 さ せ 、 冷 却 さ せ る こ と に よ り 油と し て 回 収 す る 処 理
設 備 で あ る 。 回 収 油 は 自 社 の 産業 廃 棄 物 焼 却 炉 の 助 燃 油 と し て 使用 し て い る 。 こ の 処
理により、 マテリ アル リサイクル率は向 上する。
(3) 日鉱製 錬(株 )佐賀関製 錬所 の非鉄 金属 回収プ ロセ ス調査
①会社概要
大正 5 年( 1916 年)に銅製 錬業を開始した 。原 料で あ る銅鉱 石は、チ リ・インドネ
シアな どか ら輸入 して いる。採掘 した粗 鉱(銅品 位 0.5~1.0%) は、現地で 銅品 位 約
- 13 -
30%に濃縮 されて 輸出 される 。
日鉱 製 錬( 株 ) の 銅 製 錬 事 業 は 、 佐賀 関 製錬 所と 日 立 精 銅 工 場 で 行 っ て い る 。 電 気
銅生産 は、 佐賀関 で 23 万トン、日立 で 22 万トンであ る。佐 賀関 製錬所では 国内 初 と
な る 「 湿 式 法 に よ る 貴 金 属 回 収設 備 」 を 導 入 し て い る 。 湿 式 法 は、 従 来 の 乾 式 法 に 比
べて、 貴金 属の回 収期 間が短い、 品質が 高いことがメリ ットと なっている。
最近 は 、国 際 非 鉄 メ ジ ャ ー に よ る 銅市 場 の寡 占 化 が 進 み 、 ま た 、 電 気 銅 は 中 国 ・ イ
ンドへ の輸 出量が増加 している。
②製錬処理 概要
日鉱 敦 賀リ サ イ ク ル( 株 ) 等 か ら 入荷 し た貴 金 属 サ イ は 、 銅 精 鉱 と 混合 さ れ て 自 溶
炉で溶 解、 または 、転 炉で溶解さ れて、 貴金属は粗銅( アノー ド)に濃縮され る。
電解 精 製工 程 で は 、 銅 は 硫 酸 溶 液 に溶 解 する が、 金 、 銀 、 白 金 な ど は 硫 酸 溶 液 に 溶
解 し な い こ と を 利 用 し て 、 殿 物と し て 分 離 回 収 さ れ る 。 こ の 殿 物か ら 、 金 、 銀 、 白 金
を 別 工 程 で 回 収 す る 。 鉛 は 、 粗鉛 と し て 三 井 金 属 鉱 業 ( 株 ) に 外販 し 、 回 収 さ れ て い
る。
③リサイク ル処理
基本 的 には 、 銅 製 錬 工 程 を 利 用 し て、 リ サイ ク ル原 料 を 処 理 し て い る 。 リ サ イ ク ル
原料を 適正 に価格 評価 するために 、受入 ロット毎に 原料 中の有 価成 分を評 価し ている 。
また、 直接 、銅製 錬炉 で処理でき ない原 料は、焼却など の前処 理を行なってい る。
有価 成 分の 評 価 で は 、 ロ ッ ト 中 に 有価 成 分が 均 一 に 分 布 し て い な い こと が 多 く 、 サ
ンプリ ング 誤差を 可能 なかぎり少 なくす ることが重要で ある。佐賀 関製錬所で は、JIS
を ベ ー ス に 独 自 の 工 夫 を 加 え たサ ン プ リ ン グ に よ り 、 リ サ イ ク ル原 料 の 評 価 を 行 な っ
ている。
(4)まとめ
家電リ サイ クルで 再商 品化さ れている 345 千 トンの 内訳は、鉄 143 千トン/年 、銅
12 千トン /年、アル ミ 3 千トン/年 、金 属混合 物 65 千トン/年 、ガ ラス 52 千トン/
年 、そ の他 有 価 物 ( 主 と して プ ラ ス チ ッ ク類 ) 70 千 ト ン/ 年 であ る (2006 年 度 実 績 )。
鉄、 銅 、ア ル ミ 等 の 金 属 は 安 定 し た需 要 があ り、 既 存 の 大 規 模 イ ン フ ラ に よ り 量 的
安 定 性 を 維 持 し な が ら 再 生 さ れて い る 。 家 電 品 等 の 電 気 電 子 機 器か ら は 、 単 一 素 材 だ
け で な く 、 基 板 や 信 号 線 等 の よう な 複 合 部 品 が 発 生 す る が 、 必 要な 前 処 理 を 行 う こ と
- 14 -
により 非鉄 金属素 材は 確実に回収 されて いることを今回 の調査 により確認でき た。
一方 で テレ ビ の ブ ラ ウ ン 管 ガ ラ ス につ い ては 、 前 述 の 通 り 需 給 バ ラ ン ス が 崩 れ 、 ブ
ラ ウ ン 管 ガ ラ ス と し て の 再 生 用途 が 減 少 し て き て い る 。 業 界 等 でブ ラ ウ ン 管 ガ ラ ス 以
外 へ の 代 替 用 途 へ の 転 用 も 検 討さ れ て い る が 、 ど の 用 途 も 需 要 規模 が 小 さ く 余 剰 が 生
じるた め、代替用 途は 未だに決ま ってい ない 。PC モ ニ タ等他 の機 器にもブラ ウン 管 ガ
ラ ス が 使 わ れ て い る こ と を 考 慮す る と 、 新 し い 代 替 用 途 の 開 拓 は今 後 の リ サ イ ク ル に
おける 大き な課題であ る。
プラ ス チッ ク に つ い て は 、 一 部 メ ーカ に よる 自 己 循 環 リ サ イ ク ル が 行 わ れ て い る も
の の 、 回 収 し た プ ラ ス チ ッ ク 全体 か ら 見 れ ば 少 量 で あ り 、 基 本 的に ダ ウ ン グ レ ー ド ユ
ー ス に よ る マ テ リ ア ル リ サ イ クル や サ ー マ ル リ サ イ ク ル が 行 わ れ て い る 。 ブ ラ ウ ン 管
ガ ラ ス と は 違 っ て 需 要 は 大 き いた め 、 今 後 の 高 度 選 別 技 術 開 発 や環 境 適 合 設 計 の 推 進
による マテ リアル リサ イクル規模 の拡大 が望まれる。
参考文 献
1)財団法人 クリーンジ ャパン セン ターHP:http://www.cjc.or.jp/
2)財団法人 家電製品協 会 HP:http://www.aeha.or.jp/
3)社団法人 プラスチッ ク処理 促進 協会 HP:http://www.pwmi.jp/
4)廃棄物処 理学 会 HP:http://www.jswme.gr.jp/recycle/
5)日鉱敦賀 リサイクル株式会 社 HP:http://www.nikko-tsuruga.co.jp/
6)日鉱環境 株式会社 HP:http://www.nikko-kankyo.co.jp/
7)社団法人 電子情報技 術産業 協 会 HP:http://www.jeita.or.jp/
- 15 -
2.1.2
欧州における家 電品等 の資源循環(リ サイク ル)の現状
EU は 2003 年 に 廃 電 気 電 子 機 器 の リ サ イ ク ル 規 制 ( WEEE 指 令 、 Directive
2002/96/EC of the European Parliament and of the Council of 27 January 2003 on
waste electrical and electronic equipment)を発効 した。これを受 けて EU 諸国 は各
国法の 整備を進め 、2005 年より 新たな 法規 制に基づく リサイ クル を開始して いる。
このよ うに EU は現 在、あ るべきリサイク ル社会 の実現に向けて 国と企 業が一 体 と
な っ て リ サ イ ク ル シ ス テ ム の 構築 を 進 め て い る と こ ろ で あ り 、 将来 の リ サ イ ク ル 像 を
検討す る上 で日本 が参 考にすべき 点は多 い。そこで 本調 査では 欧州 のリサ イク ル業者 、
政府機 関、研究機 関を訪問し 、将来の環 境適 合設計(特 にリサ イクル性設 計)や IT を
活用し た処 理支援 技術 の検討に必 要な 、WEEE 指令 の 実 施 状 況 お よ びリサ イ ク ル 処 理
技術の 調査 を行っ た。
(1)調査 期間お よび調査先
第 1 回:2007 年 11 月 11~17 日
11/12(月)SIMS Recycling Solutions(Eindhoven, Netherlands)(① )
11/13(火)欧州 委員 会(Brussels, Belgium)(② )
11/15(木)Solenthaler Recycling(Gossau, Switzerland)(③ )
11/16(金)REMONDIS Electrorecycling( Łódź , Poland)(④)
第 2 回:2008 年 1 月 15~20 日
1/16(水)、17(木) 7th International Electronics Recycling Congress
会場:Salzburg Congress(Salzburg,Austria)(⑤)
1/18(金)
Fraunhofer IZM(Berlin,Germany)( ⑥)
ベルリ ン工 科大学 (Berlin,Germany)(⑦)
(2)調査 方法
調査 は 訪問 先 に お け る ヒ ア リ ン グ や工 場 見学 の 結 果 を は じ め と し て 、当 日 入 手 し た
資料お よび 訪問先 業者 などのホー ムペー ジの情報を用い た。
- 16 -
ポーランド
オランダ
6,7
4
1
ドイツ
2
ベルギー
5
3
オーストリア
スイス
図 2.1.2-1
調 査 ル ート
(本地 図 は http://www.freemap.jp/europe/euro_kouiki_1.html を利用)
(3)リサ イクル 業者 調査
リサ イ クル 業 者 の 調 査 先 は 、 欧 州 にお け る代 表 的 な 業 者 の 中 か ら 廃 電気 電 子 機 器 の
リ サ イ ク ル に 必 要 な 工 程 を 網 羅す る よ う に 選 定 し た 。 特 に 廃 電 気電 子 機 器 の 特 徴 が 顕
著な破 砕・選別工 程に ついては 、欧州域 内の 地域差も考 慮して複数の業者を選 定し た 。
破砕 ・ 選別 業 者に は 世 界 的 規 模 で リサ イ クル 事 業 を 展 開 して い る SIMS、 先進 技 術
の活用に積 極的 な Solenthaler、ポ ーラン ドに 部品解体の 専用施 設をもつ REMONDIS
を選定した 。また精錬 業者に は欧州で最大規 模の銅 精錬施設を持 つ Umicore を選定し
た。
①SIMS Recycling Solutions(Eindhoven, Netherlands)
<会社概要 >
SIMS は オ ース ト ラリ ア に本 社 を 持 つ 世 界最 大 規模 の リ サ イ ク ル 業 者で あ り、 現 在
- 17 -
EU や北米 など世 界各 地に 140 ヶ所以上の拠 点を持 つ( 図 2.1.2-2)。SIMS は 主に電 気
電 子 機 器 や 自 動 車 を 対 象 と し て破 砕 ・ 選 別 処 理 を 行 っ て お り 、 出荷 量 は グ ル ー プ 全 体
で年間約 9 百万ト ンとなって いる( 2006 年度)。 欧州には 約 40 ヶ所の 拠点があるが 、
環 境 規 制 や 製 品 交 代 が 盛 ん な 地域 を 背 景 に 同 社 の リ サ イ ク ル 技 術を 先 導 す る 役 割 を 担
ってい る。
電気 電 子機 器 に 関 し て は 破 砕 ・ 選 別処 理 によ る 有 用 資 源 回 収 の 他 、 製品 や 部 品 の リ
ユース も行 ってい る。欧州に は電 気電子 機器 の処理プラ ントが 約 10 ヶ所あり 、年 間 の
処理量 は 約 32 万トン( 2006 年度)と なっ ている。内 訳は以 下の通りである 。
・
白物家 電: 110,000 ト ン(冷蔵庫:75 万台 )
・
その他
: 210,000 トン(デ スクトッ プ PC:13 百万 台、CRT:4 百万台 )
今回は電気電子機器の処理プラントの中でも先端的な設備がある、オランダ
(Eindhoven)のプ ラ ントを 訪問した。同プラントは敷 地面積 が 約 55,000m 2 、作業人
員が約 170 人とい う大規模なプラ ントで ある。
Illinois
2 Operation
Ontario
1 Operation
British
Columbia
5 Operations
California
16 operations
Arizona
1 Operation
New York/
New Jersey/
Connecticut
7 operations
EU
40 operations
Asia
5 Representative
offices
Virginia
7 operations
Arkansas /
Tennessee
2 Operations
NZ
10 operations
Australia
52 operations
図 2.1.2-2 SIMS の 拠点分 布
(同社 より提供された 資料よ り抜粋)
<回収・リ サイク ルス キーム>
オラ ン ダで は 地 方 自 治 体 が 廃 電 気 電子 機 器の 回 収 義 務 を 負 っ て お り 、消 費 者 か ら 回
収した廃 電 気電子 機器を国内に 65 ヶ所ある回収拠点に 収集し ている。製造業 者は 回 収
- 18 -
拠 点 か ら 自 ら の 製 品 を 引 き 取 りリ サ イ ク ル す る 義 務 を 負 っ て い るが 、 主 に 共 同 の リ サ
イ ク ル ス キ ー ム を 活 用 す る こ とに よ り 対 応 し て い る 。 オ ラ ン ダ にお け る 代 表 的 な リ サ
イクル スキ ームは 以下 の 3 団体である。
・NVMP
: テレビや冷蔵庫、小型の家電製品を中心に扱う。登録会社は約
1350 社。
・ICT Milieu: 情報通 信機 器を扱 う。 登録会社は 約 230 社。
・RTA
: 計測機 器を扱う。
オラン ダ国 内において 、テレ ビや 小型家電製 品の回 収量の約半数、 ICT 機器の 回 収
量 の ほ ぼ 全 量 が こ れ ら ス キ ー ム を 通 じ て 回 収 さ れ て い る 。 SIMS は NVMP と ICT
Milieu に登 録 し て 市 場 の廃電 子 電 気 機 器 を 回 収して い る 他 、 オ フ ィ ス 機器 を 独 自 の 流
通経路 によ り回収 して いる。
<入荷>
SIMS は リ サイ ク ルス キ ーム を 通 じ て 市 場の 廃 電気 電 子 機 器 を 入 荷 して い る他 、 製
造業者 との 個別契 約や 独自の回収 経路を 通じて 、以下の 製品を 入荷している。
・
製造業 者に おける 製品 の製造過程で生じ る廃材やプロト タイプ 品
・
新製品 への 切替え で発 生する余剰 在庫品
入荷 し た製 品 の 量 は 、 製 品 の 搬 出 入時 に トラ ッ ク の 重 量 を 計 測す る こ と に よ り 把 握
し て お り 、 入 荷 製 品 の 代 金 も 基本 的 に は 計 測 し た 重 量 に 基 づ い て決 め て い る 。 し か し
プ リ ン ト 基 板 な ど は 含 有 す る 基金 属 の量 に よ っ て 価 値 が 大 き く 変 化 す る た め 、 リ サ イ
ク ル 処 理 後 に 含 有 物 の 検 査 を 行い 、 そ の 結 果 に 基 づ い て 価 格 を 決 め て い る 。 こ の た め
入 荷 製 品 は 回 収 拠 点 か ら リ サ イク ル 処 理 が 終 わ る ま で 顧 客 ご と に管 理 さ れ て お り 、 問
題が発 生し た場合 に原 因追跡する ことも 可能となってい る。
また 入 荷製 品の 保 管 は 、 使 用 済 み 製品 に 関し て は 製 品 の 種 別 ご と に 木箱 に 分 け て 保
管 さ れ て い た 。 製 造 業 者 で 発 生す る 余 剰 在 庫 品 は 、 販 売 用 の 梱 包 箱 に 入 っ た ま ま 入 荷
し保管され ていた 。
- 19 -
<処理方法 >
図 2.1.2-3 は廃電 気電子機器 に関 する処 理の 全体の 流れ を示してい る。前 述のよう に 、
SIMS は 使 用 済 み 製 品 の他 に 製造 業 者 で 発 生 す る 余 剰 在 庫品 な どの リ サ イ ク ル も 行 っ
ている 。余 剰在庫 品などは開 梱作 業を行 った あと各 種の 診断テ スト 等を行 い、製品( ま
た は 部 品 ) と し て リ ユ ー ス 可 能か 判 定 す る 。 リ ユ ー ス 可 能 と 判 断し た 製 品 ( ま た は 部
品)は サー ビス部 品等 として出荷 してい る。
一方 リ ユー ス さ れ な か っ た 製 品 ( また は 部品 ) は 、 使 用 済 み 製 品 と 同様 の リ サ イ ク
ル処理が行 われる 。リサイクル処 理はま ず有害物を 含む 部品な どを 製品か ら取 り外し 、
そ の 後 プ ラ ス チ ッ ク や 金 属 、 ガラ ス な ど の 材 料 に 選 別 す る と い う手 順 で 行 わ れ る 。 回
収 物 の う ち 金 属 有 価 物 は 精 錬 業者 な ど に 販 売 さ れ 、 有 害 物 質 を 含む 部 品 は 専 用 の 処 理
施設に 送ら れる。
詳細 な リサ イ ク ル 処 理 は 製 品 の 種 類に よ って 異 な る が 、 今 回 は 一 般 的な 電 気 電 子 機
器と CRT、トナー カー トリッ ジの 処理現場の 一部を 見学した 。以 下 では見 学内容 と 同
社より提供 された資料 に基づいて 、同社 における各製品 の処理 方法を説明する 。
Inbound Surplus Eqt
Warranty Swap Outs
Asset Recovery Ops
Parts for service
Identified as WEEE
Reusable units
Dismantling
(Hazardous) waste
Inbound WEEE
Materials Recovery
Plastics
Metals
図 2.1.2-3
Glass
全体処理 フロー
(同社 より提供された 資料よ り抜粋)
○電気電子 機器一 般の 処理
パー ソ ナル コ ン ピ ュ ー タ や プ リ ン ター な どの 情 報 通 信 機 器 を 含 む 、 電気 電 子 機 器 の
一般的 な処 理につ いて 述べる。図 2.1.2-4 に 示すように 、こ れらの 機器はまず 有害物 質
を 含 む 部 品 な ど を 手 作 業 に よ り解 体 あ る い は 切 断 し た 後 、 機 械 によ る 破 砕 と 材 料 の 選
別処理 を行 ってい る。 以下 、各処 理の内 容について説明 する。
- 20 -
Dismantling
(Hazardous) Waste
Cutting
(Hazardous) Waste
Manual Sorting
Plastic Parts
Shredding
Copper Granulate
Magnetic Separation
Ferrous Metal
Eddy Current
Non-ferrous Fraction
Refining Processes
Plastics
Weighing
Other processes
and outlets
Copper Concentrate +
precious metals
図 2.1.2-4
Sampling
Analysis
電気 電子 機器の処理 フロー
(同社 より提供された 資料よ り抜粋)
・
解体
処理ラ イン を見学した ところ 、電 源ケー ブルやバッ テリ ーなど WEEE 指令 で選 択 的
処 理 が 義 務 付 け ら れ て い る 部 品の 他 、 モ ニ タ の 筺 体 な ど 大 型 の プラ ス チ ッ ク パ ー ツ や
モ ー タ ー な ど の 一 部 の 部 品 が 選別 さ れ て 保 管 さ れ て い た 。 こ こ で 規 制 対 象 の 部 品 以 外
は い ず れ も 有 価 で 販 売 で き る 部品 で あ り 、 解 体 す る か 否 か は 解 体 費 用 と の バ ラ ン ス で
決 め ら れ て い る 。 例 え ば モ ー ター は 品 位 に よ っ て 解 体 す る か 否 かを 決 め て お り 、 ト ー
ス タ や ア イ ロ ン な ど の 小 型 家 電は 手 作 業 に よ る 解 体 は ほ と ん ど 行わ ず 直 接 破 砕 機 に 投
入している 。この よう に SIMS は後 工 程 で あ る 破砕 ・ 選 別 処 理 と の 組 合せ を 考 慮 し 、
手作業 によ る解体 は最 小限にとど めてい る。
なお 入 荷し た 製 品 が 解 体 対 象の 部 品を 含 んで い る か 否 か は 、 製 品 の 外観 で 判 断 し て
いる。 この ため必 要な 場合は製造 業者か ら製品の情報を 提供し てもらっている 。
・
破砕
部品 を 取り 外 し た 後 に 残 っ た 製 品 は 、 成 分を 均 質 化 す る た め 小 片 に 破砕 す る 。 破 砕
処 理 は 機 械 を 用 い て 一 括 処 理 する た め 、 製 品 は 一 定 量 蓄 積 さ れ るま で 倉 庫 に 保 管 さ れ
る。
また 有 価資 源 を 効 率 よ く回 収 す る ため に は 、 含 有 物 質 の 種 類 に 応 じ た処 理 を 行 う 必
- 21 -
要 が あ る 。 こ の た め 製 品 は グ レー ド ご と に 管 理 さ れ て い る 。 例 えば パ ー ソ ナ ル コ ン ピ
ュ ー タ や コ ネ ク タ ー 類 な ど は 貴金 属 を 多 く 含 む た め ハ イ グ レ ー ド品 と し て 、 キ ー ボ ー
ドやプ リン ターな どは ローグレー ド品と して管理されて いる。 紙類は廃棄物と なる。
この よ うに 分 類 さ れ た 製 品 は 一 定 量ま で 蓄積 さ れ る と 重 機 を 用 い て 破 砕 機 に 運 ば れ 、
20mm~100mm 角程 度の破砕屑 となる 。破 砕後に 鉄の大きな塊や 、解 体対 象 部品が 残
る 場 合 が あ る が 、 こ れ ら は 破 砕屑 の 中 か ら 手 作 業 で 回 収 さ れ る 。ま た そ の 他 の 破 砕 屑
は、ベ ルト コンベ アで 磁選機に搬 送され る。
・
選別
磁選 機 は 、 磁 力 で 鉄 を 吸 着 す る こ とに よ り鉄 分 を回 収 す る 装 置 で あ る 。 こ の 装 置 に
より破 砕屑 中の鉄 分が その他の成 分から 選別される。
鉄を 回 収し た 後 の 破 砕 屑 は 、 次 に ベル ト コン ベ ア に よ っ て 渦 電 流 選 別機 に 搬 送 さ れ
る 。 渦 電 流 選 別 機 は 、 金 属 が 磁場 を 通 過 す る 際 に 生 じ る 電 流 ( 渦 電 流 ) の 強 さ が 材 料
に よ っ て 異 な る こ と を 利 用 し 、材 料 を 分 離 す る 装 置 で あ る 。 こ の装 置 に よ り 破 砕 屑 中
の 非 鉄 金 属 ( ア ル ミ 、 銅 、 真 鍮、 な ど) が 、 プ ラ ス チ ッ ク な ど の非 金 属 や ケ ー ブ ル 、
プリン ト基 板など 金属 含有率の低 い成分 から選別される 。
渦電 流 選別 機 を 通 過 し た 破 砕 屑 は ベル ト コン ベ ア で 比 重 選 別 機 に 搬 送さ れ 、 非 金 属
成 分 が 回 収 さ れ る 。 比 重 選 別 機は 比 重の 違 い を 利 用 し て 材 料 を 選 別 す る 装 置 で あ り 、
同 社 で は プ ラ ス チ ッ ク 片 を プ リン ト 基 板 や ケ ー ブ ル 類 な ど と 分 離す る の に 使 用 し て い
る。ま たプ ラスチ ックはさらに ABS、PVC、PP/PE の 3 種類に 分別さ れている。
以上 の 処理 を行う こ と で 、 SIMS は 廃 電 気電 子 機器 か ら 鉄 、 ア ル ミ 、銅 の 破砕 屑 の
他、プ ラス チック 屑を 回収してい る。 図 2.1.2-6 は銅の 破砕屑 の例 を示す。
・
そ の他
Eindhoven のプラント には処 理能 力の異なる 破砕機 が 2 台あり 、プ リント 基板 の よ
うなハ イグ レード 製品 は 1 回、そ の他の ロー グレー ド製 品は 2 回以 上の破 砕・ 選 別 処
理を繰 り返 すこと によ り、回収物 の純度 を上げている。
- 22 -
図 2.1.2-5
図 2.1.2-6
処理設備の全体 像
銅の 破砕屑
(同社 より提供された 資料よ り抜粋)
○CRT(Cathode Ray Tube)の処 理
CRT は 、今後 FPD(Flat Panel Display) へ の 市 場 の移 行 によ り 、 廃棄 物 が大 量 に
発生す るこ とが懸 念さ れている製 品であ る。SIMS は約 4 万トン( 3 百万台)の CRT
を処理可能 として いる。
SIMS は Eindhovern のプラントでは CRT の解体 を行 っており、今回そ の作業場を
見学し た。 CRT の解 体は、まず 筺体を 解体 して中から 電子部 品 や CRT を 取り外 す 。
解 体 は 基 本 的 に 天 井 か ら 吊 り 下げ ら れ た 電 動 ド リ ル で 行 わ れ る が、 解 体 が 困 難 な 場 合
はハンマー などで破壊 している。
次に取 り外 した CRT から電 子ビ ームを取り 外す。 電子ビームは CRT の端 部に取 り
付けられて いるが 、ハ ンマーで CRT ご と破 壊する こと で取り外し ていた 。
この 作 業場 で は 以 上 に 示 す 解 体 作 業の み を行 っ て お り 、 解 体 し た 部 品は そ れ ぞ れ 別
の工程に運 ばれる 。CRT 部分は 、図 2.1.2-7 に示すよ うに鉛 の含 有部と非含 有部 と に
分離し て破 砕し、 それ ぞれ個別に 出荷し ている。
なお 解 体は 全 て の 作 業 を 1 人 で 行 うセ ル 方式 で 行 わ れ て い る 、 見 学 当時 の 作 業 人 員
は数名であ った。
- 23 -
Monitor Body & Electronics
to WEEE Line
Hand dismantling
Cathode Ray Tubes
Crushing & Metal Removal
Metals
Sieving
(Hazardous) Waste and
Fines
Grinding
Magnet and metal detector
Metal Recycling
Glass Separation
Unleaded Glass
Leaded Glass
Homogenising
Homogenising
Bulk, big bag & silo storage
Bulk, big bag & silo storage
図 2.1.2-7
Sampling & analysis
CRT の処 理フロ ー
(同社 より提供された 資料よ り抜粋)
○トナーカ ートリ ッジの処理
プリ ン ター や コ ピ ー 機 な ど に 使 わ れる ト ナー カ ー ト リ ッ ジ は 、 製 造 業者 と の 個 別 契
約に基 づい て入荷 して いる。Eindhoven の プ ラ ント に は ト ナ ー カ ー ト リッ ジ 専 用 の 処
理装置 があ り、オ ラン ダ国内の全 量を処 理可能である。
この 処 理装 置 の 特 徴 は カ ー ト リ ッ ジか ら トナ ー を 回 収 す る た め 、 密 閉さ れ た 環 境 で
カ ー ト リ ッ ジ を 破 壊 す る と こ ろに あ る 。 現 在 こ の 装 置 は 、 本 プ ラ ン ト の 他 は 世 界 に 数
台しかない とのこ とで あった。回 収した トナーは熱利用 される 。
なお ト ナー を 回 収 し た 後 の 処 理 は 電気 電 子部 品 と 同 様 で あ り 、 磁 選 機や 渦 電 流 選 別
機などを用 いて鉄 やア ルミなどの 金属成 分とプラスチッ ク成分 を回収している 。
○その他
SIMS はエ アコンや冷 蔵庫の 処理 をイギリス で行っ ている。SIMS ではフ ロンガ スと
冷凍機 油を 製品か ら抜 き取って 、 その他 の処理は他の業 者に委 託している。
また 余 剰在 庫 品 は 製 品 梱 包 の 状 態 で入 荷 して い る。 こ の た め 使 用 済 み 製 品 と 比 較 し
て開梱作業 の分が 余計 に工数がか かるよ うに思われた。
- 24 -
・
出 荷先
SIMS にお ける電気電 子機器 のリ サイクルに よる回 収物は、以下の 通りで ある。
破砕屑:
銅、ア ルミ 、鉄、 プラ スチック、 ガラス 、など
銅の破 砕屑 は金や 銀な どの貴金属 を含ん でいるため、最も重要な 回 収
物の 1 つとなっている 。銀の含有 率は製 品によって異な るが、ハ イ グ
レード 品で 約 150ppm 程度である 。
部品:
ケーブ ル、 モータ ー、 バッテリー 、など
また各 々の 回収物 の出 荷先を 以下に示す。
・
銅の回 収物 は、ベ ルギ ー、カナダ 、ドイ ツの精錬業者に 出荷し ている。
・
アルミ の破 砕屑は 、ベルギー、カ ナダ、ドイ ツの製 錬業 者に出荷し てい る 。
・
鉄は現地の精錬業者に出荷している。価格が安いため長距離の運搬は採算
が取れ ない 。
・
ミック スプ ラスチ ックの一部は SIMS グル ープの プラ スチックリ サイ ク ル
プラントで材料リサイクルを行っているが、まだ実験的なレベルで処理量
はわず かで ある。
・
CRT ガ ラス はイン ドに出荷し てい る。
②Solenthaler Recycling(Gossau, Switzerland)
<会社概要 >
Solenthaler はスイ スの Gossau にある 破砕選別業者で ある。 設立は 1953 年で、現
在約 30 人 の従業 員を擁している 。同社 は新 しいリサイ クル技 術の開発に積極 的で、ベ
ルリン 工科 大学(Technical University of Berlin)などと連携した研 究を行 ってい る 。
同 社 の 主 な 顧 客 は 、 製 造 業 者 や飲 食 産 業 、 地 方 自 治 体 や 一 般 消 費者 な ど 、 と な っ て い
る。
<回収・リ サイク ルス キーム>
スイ ス は 欧 州 連 合 ( EU)に 属 し て い ない が 、WEEE 指令 に 対 応 し て独 自 に 廃 電 気
電 子 機 器 の リ サ イ ク ル 規 制 ( VREG) や 廃 棄 物 の 輸 送 規 制 ( VeVA) を 制 定 し て い る 。
リサ イ クル 料 金 の 支 払 い は 前 払 い 方式 と なっ て お り 、 製 品 の 使 用 者 は新 製 品 の 購 入
時 に リ サ イ ク ル 料 金 を 支 払 う 必要 が あ る 。 使 用 済 み 製 品 は 小 売 店な ど に よ り 無 料 で 引
- 25 -
き取っ ても らうこ とが できる。
製造 業 者に よ る リ サ イ ク ル の 運 用 はリ サ イク ル ス キ ー ムを 通 じ て 行 わ れ て い る 。 代
表的な スキ ームと して 、SENS と SWICO がある。SENS は 小売業者 と家 電メー カ に
よ り 設 立 さ れ た 非 営 利 団 体 で 、冷 蔵 庫 や 大 小 家 電 製 品 の 回 収 お よ び リ サ イ ク ル を 担 っ
て いる 。 SENS が管 理 する リ サ イ ク ル 業者 は 、EMPA( 素材 品 質 検 査 研 究 所 )が 定 期
的にリサイクル率などの監査を行っており、法規制への適合を管理している。一方
SWICO は情報通信機 器メー カや輸入業 者な どによ り設立され た組 織であ り、事務 用 機
器と情 報・通信機 器の 回収を担っ ている 。Solenthelar はこれらのリ サイク ルスキ ー ム
を通じ て、 製品を 入荷 している。
<入荷物>
Solenthelar は、 解体 業者に よっ て有害 物や 有価物が解 体され た後の製品を入 荷し 、
破 砕 ・ 選 別 処 理 を 行 っ て い る 。ス イ ス で は 解 体 業 者 の 一 部 は 社 会 福 祉 事 業 と し て 運 営
されて おり 、低コ スト で実施が可 能にな っている。
Solenthelar の主 な入 荷物は 以下の通り であ る。また入 荷物の 写真を図 2.1.2-8~ 図
2.1.2-13 に 示す。
家庭か らの 粗大ゴ ミ、ガラス機器 、食 品パ ッ ケージ からのアルミ 、ブリキ缶 、家
電製品 、コ ンピュ ータ 、消費者向 け電気 電子機器、など
図 2.1.2-8
図 2.1.2-9
- 26 -
図 2.1.2-10
図 2.1.2-11
図 2.1.2-12
図 2.1.2-13
<処理方法 >
Solenthaler の処理プ ロセスを、図 2.1.2-14~2.1.2-16 を用い て説 明する 。倉庫に蓄
積された製 品は図 2.1.2-14 に示す重機を用い て圧縮・裁断されたあ と 、ベ ルトコ ン ベ
ア により 粗 破砕 機に運 ば れる( 図 2.1.2-15)。ベ ル トコ ン ベア 上の スクラ ップ か らは 、
プ リ ン ト 基 板 な ど の 有 価 物 や 粗破 砕 機 に 不 向 き な 重 量 物 、 お よ び要 適 正 部 品 な ど が 手
作業で 選別 されて いる (図 2.1.2-16)。
- 27 -
図 2.1.2-14
図 2.1.2-15
図 2.1.2-16
スク ラ ップ は そ の 後 、 粗 破 砕 機 に 運ば れ る。 粗 破 砕 機 は 製 品 に 適 度 な圧 力 を か け る
こ と で 、 部 品 を 破 壊 せ ず に 分 解す る 装 置 で あ る 。 こ の 装 置 は 部 品を 破 壊 し な い た め 、
有 価 物 が 部 品 の 形 で 回 収 で き る、 有 害 物 が 飛 び 散 ら な い な ど 、 手作 業 に よ る解 体 と 同
じ 効 果 が 得 ら れ る 。 こ の よ う にし て 解 体 さ れ た 製 品 は 、 さ ら に 以下 の 処 理に よ り 材 料
の選別が行 われる 。
1)
風力選 別機 によりダストを分離
2)
磁力選 別機(図 2.1.2-17)により 鉄(Fe) 成 分を回 収(図 2.1.2-18)
3)
渦電流 選別 機によ り、 アルミ( Al)成分 を選 別(純 度 95%)
- 28 -
図 2.1.2-17
図 2.1.2-18
<手作業に よる解 体に ついて >
Solenthaler 社 は 2~3 年前まで 手作業 によ る解体 を行 っていたが 、現在 は
・
処理コストを低減するため機械を用いた解体を行っている。手作業による
解体は パー ソナル コン ピュータな どの一 部の製品を除い て行っ ていない。
表 2.1.2-1 は( 株)東 京エコ リサイクルにお ける家 電 4 品目の解体 対象部 品
・
である 。表 2.1.2-1 を 用いて Solenthaler の 解体部 品を 日本と比較 してい た
だいた。その結果粗破砕機による解体も含めると、モーター以外はほぼ同
じとの こと であっ た。
表 2.1.2-1
(株 )東 京エコ リサイクル の解 体部品 (家 電 4 品目)
製品
解体部品数
主な解体部品
エアコン
15
冷媒フロン, 熱交換器, コンプレッサ, コンデンサ
モータ, 吸音材, 真鍮バルブ, 変圧器, 筺体, 他
TVs
13
CRT, プリント基板, コイル, 吸音材, 電子銃, 他
冷蔵庫
14
冷媒フロン,コンプレッサ,冷凍機油,ガラス,コンデンサ
断熱材,ドアパッキン,野菜室プラケース, 他
洗濯機
17
洗濯槽, モータ,バランサ, コンデンサ,キャビネット蓋
キャビネットベース, プリント基板, 他
(同社 ホームページよ り抜粋 )
<回収物お よび出 荷先 >
Solenthelar の主な回 収物は 以下 の通りであ る。
- 29 -
鉄、銅 、ア ルミ、 ステ ンレス、プ リント 基板、など
また回 収物 の利用先は以下の 通り である。
・
プリン ト基 板は高 価( 4~6EUR/kg)で取 引される 。
・
ミックスプラスチックは逆有償による焼却、あるいは建築資材として利用
してい る。
・
冷蔵庫のプラスチックは材料の識別が可能なため、材料リサイクルをして
いる。
③REMONDIS Electrorecycling(Łódź, Poland)
<会社概要 >
REMONDIS は 1934 年にド イツで設立した 環境専 門会社であ り、主要事 業は水 処 理
管理と リサ イクル であ る。日本や アジア には水処理プラ ントが ある。
リサイ クル 事業の 本社 はドイ ツ( Lünen)にある。活動拠点は現在 世界 14 ヶ国 以 上
にあり 、従 業員は 約 15000 人、グルー プ全体の売上高 は 23 億ユーロ( 2007 年度)で
ある。
リサ イ クル 事 業 に お い て 同 社 が 扱 って い る廃 棄 資 源 は 、 ス ク ラ ッ プ 金属 や 建 設 廃 材
の他、紙類 や廃食 材など多岐に渡 る。廃電気 電子機 器の扱い量は全 体の 10% に満 た な
いが、 Lünen を拠点として先進 的な廃 電気電子機 器の リサイ クル を進め てい る。
今回は訪問したのは、ポーランドにある廃電気電子機器の解体センターである。
REMONDIS は 1990 年代にポー ランドに進出した が、現在ポ ーラ ンドは同社 にと っ て
ドイツ に次 ぐ 2 番目に 大きな マーケットにな ってい る。解体センタ ーはワ ルシ ャ ワか
ら車で 2 時間ほど離れ た Łódź と いう町にあ る。
<回収・リ サイク ルス キーム>
ポーラ ンド におけ る WEEE 指令 の国内 法は 、2005 年に設立された。この 国内法 は 、
消 費 者 に 対 し て 使 用 済 み 電 気 電子 機 器を 回 収 拠 点 に 返 却 す る 義 務を 、 製 造 業 者 に 返 却
された 廃電 気電子 機器 の回収とリ サイク ルの義務を課し ている 。
製造 業 者は リ サ イ ク ル 業 者 と 直 接 契約 す るか 、 共 同 出 資 な ど に よ り 設 立 す る リ サ イ
ク ル ス キ ー ム を 通 し て リ サ イ クル 義 務 を 果 た し て い る 。 ポ ー ラ ンド に お け る リ サ イ ク
ルスキ ーム は地域 レベ ルの小規模 な組織 もあるが 、代表的な組織と しては Elektro Eko
がある。
- 30 -
Elektro Eko は家 電、消費者 向け のエレ クトロニク ス、 情報通 信機 器、照 明機 器 を
対 象 に し た リ サ イ ク ル ス キ ー ムで あ り 、 こ れ ら の 製 品 を 扱 う 製 造 業 者 に よ っ て 設 立 さ
れた。Elektro Eko は 、消 費者 から返 却さ れ た製品を 回収・ リサ イ クルする システ ム
を 組 織 す る と と も に 、 製 造 業 者と リ サ イ ク ル 業 者 間の リ サ イ ク ル 料 金 の 授 受 や 、 処 理
結 果 の レ ポ ー ト な ど リ サ イ ク ル処 理 に 関 す る 情 報 伝 達 を 支 援 す る役 割 を 担 う 。 製 造 業
者は Elektro Eko が 作 成した レポートに 基づ いて政 府への報告 を行 ってい る。
消費者 によ る廃電気電 子機器の返 却方法は 、 以下の 3 つである。
1)
新製品 の購 入時に 小売 店に返却す る
2)
廃電気 電子 機器の 回収 会社に依頼 する
3)
リサイ クル 会社に直接持ち込む
一般的 なの は回収会社に依頼 する方法で ある。REMONDIS は約 30 の回収会社と 連
携すること により 、ポ ーランド全 土から 廃電気電子機器 を回収 している。
なお リ サイ ク ル 料 金 の 支 払 い は 前 払い ( 新製 品 購 入 時 に 支 払 う ) と な っ て お り 、 廃
棄 時 に 料 金 は か か ら な い 。 し かし 廃 棄 物 の 回 収 シ ス テ ム が ま だ 一般 に 徹 底 さ れ て お ら
ず、不 法投 棄も多 いと のことであ った。
<入荷>
REMONDIS は 回収 会 社を 通 じ てポ ー ラン ド 国内 か ら廃 電 気 電子 機 器を 入 荷し て い
る 。 ま た 回 収 会 社 に 対 し て は 製品 の 代 金 と 輸 送 量 を 支 払 っ て い る。 製 品 の 代 金 は 入 荷
量 に応 じ て 決め て いる が 、製 品 の 数 が 多い こ と から 入 荷 量 は 台数 で はな く重量 ( kg)
で管理して いる。
国内法 が定 めてい る対 象製品 のカ テゴリは 10 種類であるが、回収 会社で は十分 に 分
類されない ことが ある ため、入荷 後に REMONDIS が分 類している。
図 2.1.2-19 は訪問 した解体セ ンタ ーの全 景である。 当日 は建物の内 外に入 荷物 が コ
ンテナ に入 れて並べら れていた。
<処理方法 >
解体セ ンタ ーの処 理ラ インは 、CRT、冷蔵庫、その他 、の 3 種類で構 成され てい る。
以下、 各ラ インの 処理 内容につい て見学 およびヒアリン グした 結果を述べる。
- 31 -
○CRT の処 理
CRT の 解体手順を 以下 に示す 。図 2.1.2-20 に 示すよ うに、全ての 処 理はベ ルト コン
ベアを 用い たライ ン作 業となって いる。
1) 手作業 による有害物、 有価物 の解体
・
筺体(プ ラ スチッ ク 、木)、CRT、プリン ト基板 、電源 ケーブルな どを解 体
・
CRT か ら電 子銃、 ヨー クを取り外 し
・
CRT の 防爆 バンドの取 り外し
2) レーザ 加工装置(図 2.1.2-21)に よる、ファ ンネル ガラ スとパ ネル ガラスの 分 離
・
レーザ 加工 装置 は CRT の サイズ を自動 判別 してガ ラス を切断可能
・
レーザ 加工 装置の 処理能力 は 60 台/時 間
3) CRT 内部のシャド ーマスク(鉄) を分離
4) パネル ガラスから蛍光 材を除 去
5) ファン ネルガラスとパ ネルガ ラスをそれ ぞれ 破砕( カレ ット化 )
・
ファン ネル ガラス とパ ネルガラス はいず れも有価で出荷 可能
○冷蔵庫の 処理
冷蔵庫 の解 体手順を以 下に示 す。
・
ドアや ガラ ス棚な どの 部品を取り 外し
・
冷凍機 油の回収。 図 2.1.2-22 に示す冷凍 機油の回収装置 は1回 で15 台 の
処理が可能
・
回収し た冷 凍機油を加 熱し 、オイ ル成分 とフロンガスを 分離
○その他の 処理
パソ コ ンや プ リ ン タ ー 、 小 型 の 家 電製 品 、掃 除 機 な ど は 同 じ ラ イ ン で部 品 を 解 体 し
て い る 。 解 体 対 象 部 品 や 処 理 手順 は 製 品 に よ っ て 異 な る が 、 概 ね以 下 の 手 順 は 共 通 で
ある。
・
ケーブ ルを 切断す る。
・
プラス チッ クやプ リン ト基板、モ ーター などを取り外す 。
・
モータ ーは 取り外した後 、専用処 理会社 に販売する(有 価)。
- 32 -
図 2.1.2-19
解体セン ター全 景
図 2.1.2-21
図 2.1.2-20
CRT 解体ラ インの全 景
図 2.1.2-22
ガラ ス切断装置
冷凍 機油の回収
(Remondis 社より提 供)
<その他>
その他 にヒ アリン グし た内容 を以 下に示す。
・
解体作業はコスト的な制約が強いため、欧州ではあまり盛んではない。し
かしポーランドは欧州の他の国に比べて人件費が低いため、解体センター
が成り 立っ ている 。
・
この解体センターでは現在は破砕機を持っていないため、解体した部品は
すべて 破砕 業者な どに 出荷してい る。ポ ーランドには REMONDIS 以 外 に
も大手のリサイクル業者があるが、それらの企業は解体だけでなく破砕処
理 も 行 っ て い る 。 REMONDIS も ド イ ツ で は 解 体 の み で は な く 破 砕 ・ 選 別
処理も 行っ ている 。
・
製造業 者が 支払う リサ イクル費用 は、全 て回収会社か ら REMONDIS に 支
払われてい る。2 次リサイク ル以 降の業 者へ の支払 いは REMONDIS が 行
ってい る。
- 33 -
・
東京エ コリ サイク ルに おける家 電 4 品目の解 体部品( Solenthaler の章、表
2.1.2-1 を参 照 )と 本 解 体 セ ン タ ー の 解 体 部 品 を 比較 し て も ら っ た と こ ろ 、
ほぼ同 じと ことで あっ た。
<結論>
1)本調 査を通じて 、欧州のリ サイ クル方 法には以下 の特 徴があるこ とがわ かっ た 。
・
部品の解体は材料の回収率向上よりも有害物質の適正処理の観点で行われ
ており 、解 体部品 数へ のこだわり は特に ない。
・
部品解体のコストを低減するため、機械を用いた解体・破砕と手作業によ
る選別を組み合わせる、安価な労働力を活用する、などの対応が取られて
いる。
・
材料の選別は磁力、渦電流、比重などの方法が用いられており、日本と同
様である。
・
CRT の リサ イクル 方法 は日本と大 きな違いは ない。
・
FPD もエ アコン と同 様に今 後需 要の拡大が 見込ま れる製品である が、 現 状
では水 銀( Hg) の処 理な ど に技 術的 な問題 があ り 、今 後の 課題と なっ て い
る。
2)本調査結 果から 将来のリサイク ル配慮 設計および IT による 処理支援技術と して 、
以下の ニー ズがあると考える 。
・
手作業による解体が有害物質の適正処理を目的に行われていることから,
有害物 質の 含有部 品に 着目した解 体性向 上を図ることが 必要で ある。
・
破砕・選別業者では製品構造の情報を、精錬業者は製品の素材情報を必要
としており、これらの情報を製造業者とリサイクル業者で共有できる仕組
みが必 要で ある。
・
顧客管 理の 観点か ら廃 棄物のトレ ーサビ リティ管理が必 要であ る。
(4)欧州 委員会 訪問
欧州委 員会 は欧州にお ける法 規制 の発案機関 であり 、現 在 WEEE 指令の 見直し に 向
けて現 状分 析に基 づく 対応策が検 討され ている。本調 査は WEEE 指令の最新 の検討 状
況を把 握す るとと もに 、今後の課 題の 1 つ と 思 われ る リ サ イ ク ル 配 慮 設計 と 個 別 生 産
- 34 -
者責任 の考 え方に つい て意見交換 を行っ た。
<WEEE 指 令の見 直し につい て>
EU は 2005 年に廃 電 気電子 機器のリサ イク ル法(WEEE 指令
1 ))が施 行したが 、
2008 年にこれま での 運用状 況を 踏まえ た見 直しを行う ことを 予定している 。この た め
見 直 し に 向 け た 調 査 研 究 が 各 研究 機 関に よ っ て 行 な わ れ 、 リ サ イク ル 実 施 上 の 問 題 点
や 対 策 の 方 向 性 な ど が 議 論 さ れて い る 。 こ れ ら の 議 論 は 日 本 に お け る リ サ イ ク ル の 将
来像を 考察 する上で参 考になる と 思われ るため、その状 況をヒ アリングした。
現在 WEEE 指令 の対 象製品は 、 以下に 示す 10 カテゴ リで指 定されている。
1)大型家 庭用電 気製品、2)小型家庭 用電 気製品 、3)IT およ び遠隔 通信 機器
4)民生用 機器、5)照明機 器、6)電動 工具、7)玩具、レ ジャ ー、ス ポーツ機 器
8)医療用 機器、9) 監視・制御機器 、10)自動販 売機
またこ れら のカテゴリ ごとに 、表 2.1.2-2 に 示す目 標値 が定められ ている 。
表 2.1.2-2
WEEE 指 令の対 象製品カテ ゴリ ( Annex ⅠA)
カ テ ゴリ
回収率
リサイクル率
1, 10
80%以 上
75%以上
3, 4
75%以 上
65%以上
2, 5, 6, 7, 9
70%以 上
50%以上
8
2008 年 末 ま で に設 定
対象 製 品の カ テゴ リ およ び 目 標値 に つい て 、国 連 大学 な ど によ る 調査 研 究
2) で は 以
下の見 解が 示され てお り 、現在こ れを参 考にした議論が 行われ ている。
・
大型家庭用電気製品は内在する価値が高く、自動的にリサイクルが促進さ
れると 予想 される 。こ のため カテゴリ 1 は WEEE 指令 のスコー プか ら外す 、
目標値 の設 定をな くす 、などの簡 略化を 検討する価値が ある。
・
エアコ ン、 冷蔵庫 はカ テゴリ 1 に属するが 、フロ ンガ スが使われ てい る た
め環境への影響が大きい。このため他の製品と同じ処理が行われることを
避けるべきである。またリサイクル率の達成よりフロンガスの適正回収を
- 35 -
優先す べき である 。
・
小型家庭用電気製品の回収率は国によって大きく異なっており、改善の余
地が大きい分野と思われる。単一プラスチックのリサイクルは環境影響に
貢献するが、ミックスプラスチックや小型製品のリサイクルは環境効率が
よくな い。
・
CRT は鉛 の処理 や不 法輸出の問 題があるた め、回 収率 を最大化す るこ と が
課題で ある。ま た FPD への 移行により 今後 は回収 量が 低下し てい くため 、
目標値 は動 的に変える必要がある 。LCD は水 銀(Hg)を含んで おり 、安 全
かつ効 率的 な回収が課 題である。
・
照明機 器は LCD と 同様にリサイク ルによ る水銀の放出を 避ける ことが 課 題
である 。市場が大きく 影響が 大きいため、高 い回収 率を 設定すべき であ る 。
<リサイク ル配慮 設計 について>
製造 業 者は リ サ イ ク ルの 促 進 を 目 的と し て 、 従 来 か ら リ サ イ ク ル 処 理に 適 し た 製 品
構造や 材料 を用い た製 品の設計を 進めて いる(リサ イクル配慮 設計 )。日本 の リサ イ ク
ル 業 者 は 高 い リ サ イ ク ル 率 を 達成 す る た め 、 特 性 の 異 な る 部 品 を極 力 解 体 し て 専 用 処
理 を 行 っ て い る 。 こ の た め 日 本に お け る リ サ イ ク ル 配 慮 設 計 は 、部 品 の 解 体に 必 要 な
工数を 低減 するこ とが重視されて いる。
一方 欧 州で は 日 本 と 異 な る 方 針 で リサ イ クル 処 理 が 行 わ れ て い る と 思わ れ る た め 、
リサイ クル 配慮設 計に 関してどの ような議論がされてい るかを 伺った。
その 結 果、 リ サ イ ク ル 配 慮 設 計 の 目的 は 製品 に よ っ て 異 な り 、 有 害 物の 適 正 処 理 や
リ サ イ ク ル コ ス ト の 低 減 な ど 様々 な 要 素 を 考 慮 し て 検 討 す る 必 要が あ る 、 と の こ と で
あった 。関 連するデー タとして 図 2.1.2-23 にリサイ クル費用の 内訳 を示 す
2) 。リ サ イ
ク ル 配 慮 設 計 が 貢 献 す る の は 、解 体 お よ び 破 砕 ・ 選 別 費 用 で あ る。 こ の 部 分 が 特 に 大
き いの は エ ア コ ンや冷 蔵 庫( C&F)で あ るが 、 これ は 冷 媒フ ロ ンの 処 理コ ス ト が 影 響
し て い る 。 ま た 大 型 家 電 ( LHHA) は 破 砕 ・ 選 別 費 用 よ り 輸 送 費 用 の 割 合 が 大 き い 。
このた めこ のカテ ゴリ の製品はリ サイク ル配慮設計の効 果が少 ないと思われる 。
- 36 -
冷蔵庫/エアコン
テレビ
照明
小型家電
大型家電
図 2.1.2-23
リサ イクル費用の内 訳
(WEEE 指令レビ ュー 資料
2) より)
<個別生産 者責任につ いて >
製造 業 者が リ サ イ ク ル 配 慮 設 計を 推進 す るた め に は 、 そ の 投 資 が 自 社に 還 元 さ れ る
シ ス テ ム が 必 要 で あ る 。 す な わち 製 造 業 者 が 自 社 製 品 の み に 責 任を 持 つ 、 個 別 生 産 者
責任( IPR: Individual Producer Responsibility)の 考え方に基づい たリサ イクル シ ス
テ ム を 構 築 す る こ と に よ り 、 リサ イ ク ル 配 慮 設 計 が 促 進 さ れ 、 結果 的 に リ サ イ ク ル 率
やコストの 改善に 繋が ることが期 待され る。
日本 の 家電 リ サ イ ク ル シ ス テ ム は 、使 用 済み 家 電 製 品 は 製 造 業 者 別 に管 理 さ れ て お
り 、 個 別 生 産 者 責 任 を 実 現 し やす い シ ス テ ム と い え る 。 一 方 欧 州で は 多 く の 製 造 業 者
が リ サ イ ク ル ス キ ー ム に 参 加 し、 共 同 で 使 用 済 み 製 品 の 回 収 と リサ イ ク ル を 行 っ て お
り、日 本よ り個別 生産 者責任を実 現し難 いシステムと思 われる 。
そこ で 欧州 に お け る 個 別 生 産 者 責 任は ど うの よ う な 方 法 で 実 現 し 得 るの か 、 意 見 を
伺 っ た 。 そ の 結 果 、 欧 州 で は 以下 の 理 由 で 製 造 業 者 別 の シ ス テ ムを 実 現 す る の は 困 難
である 、と のこと だっ た。
・
日本の 家電 リサイ クル法の対象品 目は 4 品目であ るが 、WEEE 指令は 10
カテゴ リ( 98 品目)あり 、 圧倒 的に数が多 い。ま たリ サイクル義 務を 負 う
- 37 -
製 造 業 者 は 中 小 企 業 が 多く 輸 入 業 者 も 含 む た め 、 そ の 数 も 日 本 よ り 多 い 。
こ の た め 廃 電 子 電 気 機 器の 回 収 拠 点 が 製 造 業 者 や 製 品 ご と に 使 用 済 み 製 品
を管理しよ うとす ると 、必要 なコストが 日本 に比べ ては るかに大き く なる 。
・
図 2.1.2-24 に示す ようにリ サイ クルス キー ムは国 ごと にあるため 数が多 い
(現状約 140)。製 造業者が 個別 に自社 製品管理を しよ うとすると 、国ご と
に実施しな ければ なら ないため、 管理工 数が膨大となる 。
図 2.1.2-24
EU 諸国 のリサ イク ルスキーム
(WEEE 指 令レビ ュー 資料
3 ) より )
参考文 献
1) Directive 2002/96/EC of the European Parliament and of the Council of 27
January 2003 on waste electrical and electronic equipment (WEEE)
2)国連大 学など 、2008 Review of Directive 2002/96 on WEEE( Final Report)
http://ec.europa.eu/environment/waste/weee/legis_en.htm
3)Workshop on the review of the WEEE directive, Brussels,15 March 2007
- 38 -
(5)学会 調査
国 際 電 子 機 器 リ サ イ ク ル 会 議 ( IERC : International Electronics Recycling
Congress)は 、廃電 気 電 子機 器 のリ サイ クル に焦点 を あて た国際 会 議 であ り 、今 年で
7 回目の開 催とな る(年 1 回)。参加者は欧 州を中 心として、米国 、アジアな ど世 界 各
地 の 工 業 会 お よ び 政 府 関 係 者 を中 心 に 構 成 さ れ て お り 、 処 理 技 術か ら 社 会シ ス テ ム ま
で 幅 広 く 議 論 さ れ る 。 そ こ で 今回 は リ サ イ ク ル の 世 界 的 な 動 向 を把 握 す る た め 、 本 会
議に出 席す ること にし た。
<調査内容 >
○Session 1: Keynote speakers from industry and government
1)Dr Leopold ZAHRER, Federal Ministry of Agriculture, Forestry, Environment
and Water Management, Austria
オース トリ アにお ける WEEE 指令 の適用 状況が示された 。オー スト リアの国 民 1
人あた りの回収量は 2007 年に 8.41kg であり、欧州基 準( 4.0kg)を越 えている。
また WEEE 指令 の今 後の課 題と して 、 製造 業者の定義 や RoHS 指 令との スコ ー プ
の調和 など があること が示さ れた 。
2) Timo MAKELA, European Commission, DG Environment, Belgium
WEEE 指令 の実施 状況 や指令 の見 直し状況が 示され た。WEEE 指令は現 在 EU26
カ国 で 告知 されて い る が、 全 ての 国で運 用 が進ん で いる わけで は なく、 例 えばリサ
イクル スキ ームの存在 が不明 の国 が 4 カ国ある。ま たこ のよう な状 況を踏 まえ 、リ
サイク ルの 効率向上お よびコ スト削減を目的 に、WEEE 指令の 対象製品 、処 理 内容 、
製造業 者責 任などの見 直しを 図っ ている。
3) Graham DAVY, Sims Group UK Limited, United Kingdom
EU や 米 国 、カ ナ ダ は 国 や 州ご と に規 制 が あ り 、 規制 別 の対 応 が 必 要 で ある と さ
れた。 リサ イクルの将 来的な 発展を考える と WEEE 指令の大き な変革 が必要 で あ
るとさ れた 。
4) Dr Herbert MROTZEK, BSH Bosch und Siemens Hausgerate GmbH, Germany
白物家 電の リサイ クルについて 、現状と 今後 の課題が示 された 。BSH では有 害 物
- 39 -
質の 排 除、 資源保 護 、修理 の 容易 化、再 生 可能材 料 の使 用、な ど の観点 で エコデザ
インを 進め てきた 。ま た CFC エ アコン の廃棄に備 え、 適切な リサ イクル 処理 シ ス
テム を 構築 するこ と が重要 と され た。具 体 的には リ サイ クル技 術 の向上 と 廃棄物の
流れを 適切 に管理する 仕組み が必 要であると された 。
○Session 2: How do electronics manufacturers close the recycling loop?
1) “Take back systems for electronics” Jean Cox-Kearns, Dell Inc., Ireland
Dell の環境 問題に 対する取組みが 紹介さ れた。Dell はリ サイク ルよりリユー ス を
重視 し てい る。製 品 設計で は 消費 エネル ギ ーや使 用 材料 の低減 を 考慮し て いる。デ
ータ セ キュ リティ の 問題か ら リサ イクル は コスト 追 求の みでは 問 題があ る 、などの
見解が 示さ れた。
2) “How to implement practically individual producer responsibility today?”
Andreas Bohnhoff, Sony Europe GmbH, Germany
SONY における日本と 欧州に おける個別 生産 者責任 ( IPR)の 考え方の違い が 述
べられ た。 日本では自 社製品 を回 収・リサイ クルす る形で IPR を実現してい るが 、
欧州 で はリ サイク ル処 理の 質 やコ ストの 改善 によ り 自社 固有 の価値 を創 出 して い る 。
例えば サプ ライチェー ンの監 査や トレーサビ リティの確保などを行 ってい る。
3) “Make haste, cut energy waste” Fanni Meszaros, CECED Magyarorszag
Egyesules, Hungary
ハンガ リーにおけ る 4kg/人ルー ル達成 のための取組み が紹介 された。ハン ガ リ
ーで は 使用 済み製 品 の返却 に より 新製品 の値 引き が 得ら れるキ ャ ンペー ン を行った
ところ 回収 量が増大し た。現 在 4kg/人 を達成可能 な見 込みで ある 。この 結果 か ら
市場 を 変え るには 消 費者に 金 銭的 メリッ ト が必要 で あり 、政府 か らの経 済 的支援も
必要で ある との考えが 示され た。
○Session 3: How do countries close the recycling loop?
1) “Experience in WEEE collection and treatment in Hungary” Jozsef Kelemen,
Ministry for Environment, Hungary, Ervin Tihanyi, Inter Metal Recycling,
Hungary
ハンガ リー におけ るリ サイクルの 実施状 況が 紹介された 。ハ ンガ リーではリ サ イ
- 40 -
クルの 課題の 1 つである消費者向 け製品 の回収を製 造業 者の責 任と し、さ らに 製 品
の買 い 替え 時に販 売 店で回 収 でき るよう に した。 ま たブ タペス ト 近郊の リ サイクル
業者(Inter Metal 社)の紹 介が あった 。同社は鉄 ・非 鉄金属 のリ サイク ル業 者 で
あるが 、1999 年から廃電子 電気 機器の リサ イクル も行 っている。
2) “EPEAT - A product life-cycle standard / Closing the design - End-of-life loop”
Wayne Rifer, Green Electronics Council, USA
米 国 の 環 境 ア セ ス メ ン ト ツ ー ル ( EPEAT ) と パ ソ コ ン の 環 境 評 価 基 準
(IEEE1680)が紹介 さ れた 。EPEAT はグ リーン調 達を 目的と して おり 、IEEE1680
に準拠 して 製品を 3 段階で評価す る。また IEEE1680 はリサイ クル 方法と して 破 砕
重視 の 処理 を指示 し ている が 、米 国のリ サ イクル 業 者の アンケ ー トで破 砕 を主要な
処理と した のは 11%で ある、と の 結果が 示さ れた。ま た同アン ケー トにおいて 、FPD
のリサ イク ルは現状で は手解 体を 中心に行っ ている 、との結果が示 された 。
○Session 4: Challenges of the systems & the recycling industry
1) “Challenges and opportunities in Asia” Venkatesha Murthy, Cimelia Resource
Recovery Pte Ltd., Singapore
中国、 イン ドをは じめ としたアジ アのリ サイクル問題が 提示さ れた。アジア に は
先進 国 から 未知数 の 廃電機 電 子機 器が持 ち 込まれ て いる が、リ サ イクル 法 整備の遅
れ、 充 実し たリサ イ クル施 設 の不 足 、小 規 模のリ サ イク ル業者 に おける モ ラルの低
下、 と いっ た問題 が 起こっ て いる ことが 指 摘され た 。ま た現状 の リサイ ク ル市場は
アジ ア の処 理能力 を はるか に越え ており 、 専用のリ サイ クル業 者 が必要 で あるとの
見解が 示さ れた。
2) “REACH, WEEE and the BATTERY DIRECTIVE. The position of the
Rechargeable Battery Industry” Dr Jean-Pol Wiaux, RECHARGE aisbl, Belgium
バッテ リー のリサ イク ル規制状況 につい て言 及された 。バッテ リーはバッテ リ ー
指令と WEEE 指令 の両方の対象になっ ており 、リ サイ クル費 用が 二重に 徴収 さ れ
な い よ う に 注 意 し な け れ ば な ら な い 。 ま た リ サ イ ク ル 業 者 の 80%が 製 造 業 者 か ら
WEEE 中 の バ ッ テ リ ー の 位 置 情 報 が 欲 し い と 考 え て い る と い う ア ン ケ ー ト 結 果 が
示さ れ た。 今後必 要 な施策 と して 、バッ テ リー分 離 の容 易化設 計 、バッ テ リー処理
プラン トと WEEE 解体 プラン トとの情報交換 やトレ ーサビリティな どが示 され た 。
- 41 -
3) “A complete service managing end-of-life products (WEEE) for manufacturers,
retailers and importers” Dr Anton Greiersen, CCR Logistics Systems AG,
Germany
ドイツ のリ サイク ル支 援会社(Vfw AG)の 紹介で ある。Vfw AG は製造 業者や リ
サイク ル業 者、リサ イクルスキー ム間の 情報伝達 を EU 全体で 管理してお り、WEEE
の回収 ・リ サイク ルの 運用支 援、 リサイクル 率管理 などを行ってい る。
○Session 5: How to prevent illegal export
1) “Waste shipment of E-waste: The EU and a wider perspective” Kurt Van der
Herten, European Commission, DG Environment, Belgium
廃電気 電子 機器の 輸出 に関して EU には WEEE 指令や 廃棄物 輸出法があるが 、
現状 で は相 当数が ア ジアや ア フリ カに輸 出さ れて い る。 アジア は 資源需 要 の高まり
が、アフリ カは安 価なリユー ス製 品の需 要が 増えて いる ことが背景 にある 。ま た EU
域内 に おい ても埋 立 価格の 高 騰な どから 廃 電気電 子 機器 が近隣 国 に持ち 込 まれ、大
気や 水 質汚 染など に 問題を 起 こし ている。 今 後は 規 制の 明確化 、 検査や 罰 則の強化
などが 必要 との見解が 示さ れ た。
2) “Illegal export of WEEE / next challenge of the WEEE” Nico Krukenberg,
REMONDIS Electrorecycling GmbH, Germany
EU の廃電 気電 子機器 がリ ユー ス 用と してア ジア やア フ リカ に流出 して いる が 、
実 際 に リ ユ ー ス可 能 な 製 品 は 数 %に 満 た な い 。 また 廃 電 気 電 子 機 器 の 流 出 は 、 回 収
率に も 影 響 を 及 ぼ し て お り 、 電 気 電子 機 器の 出 荷 量 は 15~20kg/ 人な の に廃 電 気
電子機 器の 回収量は 3~5kg/人 に過ぎ ず残りは流 出し ている 。流 出は使 用者とリ サ
イクル 業者 との間で発 生して おり 、さらなる 強制力 が必要との見解 が示さ れた。
○Session 6: New technologies & recycling equipment
1) “The mine above ground - Opportunities and challenges to recover scarce and
valuable metals from end-of-life electronic devices” Dr Christian Hageluken,
Umicore Precious Metals Refining, Germany, Dr Matthias Buchert, Oko-Institut
e.V., Germany
廃電気 電子 機器は 天然 鉱石を上回 る資源 含有 率があるが 、ア ジア などでは低 い 技
術で 処 理さ れてい る た めリ サ イク ル率が 低 く 、環 境 や人 体への 影 響も配 慮 されてい
- 42 -
ない 点 が問 題とさ れ た 。今 後 は高 い技術 を 用いた 効 率の よいリ サ イクル を 行わなけ
れば な らな いとの 考 えが示 さ れた 。また 現 状 のリ サ イク ル率は 材 料の重 量 で評価し
ており 、微 量元素 の価 値を無 視し ている点が 問題と された。
2) “MSS optical sorting technologies for automated sorting of electronic scrap Practical case studies from the USA” Felix A. Hottenstein, MSS, Inc., USA
光学選 別機 メーカ(MSS)の材料 選別機( e-Sort)が紹 介され た。 e-Sort は 近 赤
外線 ( プラ スチッ クの 識別 )、誘 導電 流 (鉄と非 鉄およ びス テ ンレスの 識別)、 色 の
3 つの方法に より 破砕屑の材 料を 識別す る。また識 別機 と空気ジェ ットと を連 動 さ
せるこ とに より、破砕 屑を識 別し た 3 つの材料に選 別で きる。
3) “Better together! Or, why joint processing of CFC and VOC fridges is essential
for the environment” Dr Viktor Haefeli, RUAG Components, Switzerland
EU で使用されている 冷蔵庫 は冷媒として CFC を使 うもの と HC を使う もの が混
在し て いる が、リ サ イクル で はこ れらを 個 別に回 収 する 必要が あ る。し か し冷蔵庫
上の表 示が 十分でない ため 、 回収 時に CFC と HC を区 別する こと が困難 にな っ て
いる、との 問題が 示さ れた。このため CFC を放出せず 回収す るには 、1 つのプラ ン
トで CFC と HC の両 方を処 理で きるよ うに する必要が ある 、との 見解が 示さ れ た 。
<結論>
・
WEEE 指令 が施行 され て 3 年あま りが立 つが 、リサイク ルの実 施状況 は 国
や製品によって異なるなど、様々な問題を抱えていることが明らかになっ
た。
・
本学会(IERC)は参 加者の立場 、発表テ ーマとも に幅 広く 、様 々 な視点 か
ら議論される。このため世界のリサイクルの動向を把握するには有益な学
会である。
(6)研究 機関調 査
Fraunhofer 研 究所はドイツの代 表的な 研究機関 の 1 つであり 、環 境政策 研究に お い
て は 政 府 機 関 か ら の 委 託 を 受 ける な ど 重 要 な 役 割 を 担 う と と も に、 ベ ル リ ン 工 科 大 学
などと 密接 に連携 しな がら基盤技 術の開 発に取り組むな ど幅広 い活躍を見せて いる。
- 43 -
今回は 環境 政策研究に 取り組 んでいる Fraunhofer の 信 頼性・微細 集積研 究所(IZM:
Institut Zuverlassigkeit und Mikrointegration)と、環境配慮設計 の研究を行って い
る ベ ル リ ン 工 科 大 学 の 工 作 機 械 ・ 工 場 運 営 研 究 所 ( IWF: Institut fur
Werkzeugmaschinen und Fabrikbetrieb)を 訪問し 、欧州における リサイ クルの 動 向
につい て情 報交換 を行 った。
①Fraunhofer IZM
Fraunhofer IZM では、リサイクル の現状 と課題について 議論し た 。以下に 要旨 を 示
す。
Q: 欧 州 の リ サ イ ク ル 処 理 は 手 作 業 に よ る 部 品 解 体 が 日 本 に 比 べ て 限 定 的 だ が 、
解体工数を 意識し たリサイク ル性 設計は 必要 か。
A: 解体はコス トが高 いため 、現状で は有害物を 含む部 品を 中心とした 解体 が 行
われている 。しか し今後の需 要が 拡大す る FPD はネジ の点数が多 く、 解 体
工数の配慮 が重要 になる可能 性が ある。
Q: 製造業者が 自社製 品の回収リ サイ クルを 個別に行う シス テム(個 別 生産 者 責
任)はリサ イクル の促進に有 効と 思われ るが 、実 施上ど のような問 題があ る
か。
A: ドイツでは 、廃電気 電 子機器 は回 収拠点 にお いて製 品種別ごとに用 意し た コ
ンテナを用 いて管 理している 。廃 電気電 子機 器を製 造業 者と製品種 別ご と に
管理するた めには 、膨大な数 のコ ンテナ が必要とな る。
Q: EU におけるリサイク ルの今 後の課題は何か 。
A: 最 大 の 課 題 は製 品 の回 収 率を 上 げ るこ と であ る 。リ サ イ ク ル 配 慮 設 計は 数 %
程度の改善 しか望 めないが 、回 収率は 数 10%の改善が見 込める ため、効 果 が
大きい。
②ベルリン 工科大 学( Technical University of Berlin)
ベル リ ン 工 科 大 学 の 工 作 機 械・ 工 場運 営 研 究 所 ( IWF) で 環 境 配 慮 設計 の 研 究 を行
ってい る研 究室を 訪問 し 、研究内 容をご 紹介いただいた 。IWF は Fraunhofer の 生 産
技術研 究所 (IPK)と 人材交 流な どを通 じて 、密接に連 携した 活動を行ってい る。
<研究概要 >
・
訪問先の研究室では、リサイクルよりリユースの方が再生に必要なエネル
- 44 -
ギーが小さいことに着目してリユースの促進に向けた取組みを行っている。
・
主な研究テーマはリユース設計であり、携帯電話や薄型テレビを対象にし
た部品の共通化設計、コスト視点でリユース対象部品を決定するシミュレ
ーショ ンツ ールの 開発などを行っ ている 。
・
部品の解体工数などリサイクル性評価を行うモデルは、リユース性評価機
能の一 部と して取 り込 まれている 。
・
同研究室がリユースを行っている他の理由として、ドイツではリユース製
品(または部品)の価格が安く、需要が高いとことが上げられる。例えば
車は中古車だけでなくリユース部品も一般消費者の需要が高い。またパー
ソナル コン ピュー タは 教育用など でリユ ース製品がよく 使われ る。
・
同 研 究 室 は 以 上 の よ う な環 境 研 究 の 他 に 、 ス ケ ジ ュ ー リ ン グ な ど の 生 産 管
理関連 のテ ーマに も取 り組んでい る。
<実験室見 学>
IWF は Fraunhofer IPK と共同の 実験室 を所 有して おり 、3 次元 モ ックア ップ や高
圧 プ レ ス な ど の 機 械 加 工 装 置 を中 心 と し て 充 実 し た 設 備 を 誇 っ て い る 。 ま た 実 験 室 に
は 機 械 加 工 の 専 門 部 署 が あ り 、簡 単 な 実 験 装 置 は 内 作 さ れ て い る。 リ サ イ ク ル 関 係 で
は、主 に解 体工数 の低 減を目的と した装 置が開発されて いた。 以下に例を示す 。
・
携帯電話、洗濯機、車のエンジンなどを対象に、製品からネジや筺体を自
動で取り外す装置の開発が行われている。装置は製品の種類によって異な
る。まだプロトタイプの段階であり、ネジ止め方向が複数あると解体でき
ないな どの 問題が ある 。
・
手作業 によ る解体 に工 数がかかる 理由の 1 つに、 ネジ 形状が一様でな い た
めにドライバーを持ち変えるという作業が発生する点がある。この問題を
解決す るた め、ネ ジの 頭に溝を刻むこと により 、あらゆ るネジ を 1 本 で 外
すこと がで きるド ライ バーが開発 されて いる。
<結論>
欧州 の リサ イ ク ル 業 者 は 日 本 に 比 べて 手 作業 に よ る 解 体 を 重 視 し な い 傾 向 が あ る 。
し か し そ の 一 方 で 大 学 の よ う な研 究 機 関 が 解 体 作 業 の 自 動 化 に 取り 組 ん で い る こ と は
興味深い。
- 45 -
2.1.3
中国における家 電品等 の資源循環(リ サイク ル)の現状
<中国調査 概要>
日
程: 2007 年 11 月 11 日( 日)~ 16 日(金)
訪 問地: 山東省臨沂 (12 日)、 上海市( 13 日~16 日 )
目
的: 中国におけ る再生 資源の利用 に関 する現 地調査およ び情 報収集
活動内容: 11 月 12 日
山東省 臨沂市の E-waste リサ イクル現場
・
廃金属 交易市場(華東 有色金 属城)
・
廃家電 リサイクル企業 (山東 豊緑資源再 生有 限公司 )
・
廃プラ スチック交易市 場(徳 利西塑料再 生)
・
廃テレ ビリサイクル業 者(名 称不明)
・
廃基板 リサイクル業者 (名称 不明)
11 月 13 日、16 日
World Recycling Forum, Shanghai ‘07/Technical Visits
11 月 14 日~15 日
World Recycling Forum, Shanghai ‘07/Conference & Exhibition
Nov. 13, 2007 / Technical Visits
14:00-18:00 Lenovo Group
14:00-17:30
Shanghai General Motors Company
14:00-18:00
Shanghai White Elephant
Swan Battery Co., Ltd.
Nov. 14, 2007 / Conference & Exhibition
09:00-12:30
Keynote Speakers & Panel Discussion
14:00-17:30
Electronics & Battery Recycling Session (I)
14:00-17:30
Car Recycling Session (I)
Nov. 15, 2007 / Conference & Exhibition
09:00-12:30
Electronics & Battery Recycling Session (II)
09:00-12:30
Car Recycling Session (II)
14:00-18:00
Electronics & Battery Recycling Session (III)
14:00-18:00
Session of How to import scrap and used parts to
China
Nov. 16, 2007 / Technical Visits
08:00-12:00
Evergreen Bio-plastics
Technology Co., Ltd.
08:00-12:00
Shanghai Eastern
China Vehicle
Dismantling Co., Ltd.
08:00-15:00
Taicang Port Secondary
Resources Importing &
Processing Zone
08:00-13:00
TES-AMM Corporation
(China) Ltd.
※網掛 け部は参加 した Tour ま たは Session
- 46 -
(1)調査 目的
本調 査 では 、 中 国 に お け る 使 用 済 み電 気 機器 の 資 源 循 環 方 法 や 技 術 の 実 態 お よ び 将
来に向 けた 動向を 調査 し、将来の あるべ きリサイク ル社 会像の 検討 に役立 てる と共に 、
必 要 と な る 技 術 ( 情 報 シ ス テ ムに よ る 支 援 や 処 理 技 術 ) を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と
する。
(2)調査 結果纏 め
今回 の 海外 動 向 調 査 は 以 下 の よ う な中 国 にお け るリ サ イ ク ル の 実 態 を 実 際 に 確 認 で
きるな ど、 非常に 有意 義なもので あった と考える。
① 中国の E-Scrap リサ イクルの 現場 におい ては 、従来 から 言われてい る低い 人
件費を活かした徹底手作業を行なうリサイクラが引き続き多く存在すること
に加え、欧米を中心とした先進国の資本が投入され、手作業と機械処理を組
み合わ せた次世代のリ サイク ラが共存し てい る状態 にあること。
② ①の前者のリサイクラにおいては、作業者の健康への配慮や汚水・排気処理
などの周辺環境への配慮が不十分な事例も散見されるのに対し、後者におい
ては、 作業環境・環境 配慮両 面で大きな 前進 が見ら れて いるこ と。
③ 中国本 土においても E-Scrap に対 するリ サイ クル法 が準 備されてお り、そ こ
で は リ サ イ ク ラ に 対 す る 認 定 が 導 入 さ れ る予 定 で あ る 。 こ の 状 況 に お い て 上
記②も踏まえ、いずれのタイプのリサイクラが主流となっていくか、動向を
注視す る必要がある。
④ 先進的リサイクラならびに参加した学会の展示エリアを見ても、欧米豪を中
心とした先進国のリサイクラが多く中国への進出を目指していることが読み
取れる。リサイクルも世界で淘汰が進む状況を踏まえると、日本だけが特殊
な法律制度が故に取り残されている印象を否めない。リサイクルの仕組みな
らびに ビジネスの両面 から注 意が必要と 考え る。
⑤ リサイクル性設計については手作業が多いことから本来必要性はありそうだ
が、その 人件費の低さ(数 百~ 1000RMB/月( ≒5000~15,000¥/月 )程度 )
から現段階ではニーズは高くないようである。また設計の情報を活用した処
理につ いても、作業現 場の IT 化 や各作 業者の 教育など の観点から、従来 の 方
式の処理では必要性は感じられない。これに対して、先進リサイクラにおい
ては機 器の導入などが 進んで おり、今後その 重要性 は増 すと思 われ る。
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なお 今 回、 上 海 お よ び 少 し 内 陸 に 入っ た 山東 省 臨 沂 市を 訪 問 し た 。 幸 い ほ ぼ 天 候 に
は 恵 ま れ た が 、 い ず れ の 地 域 でも 全 体 に 「 黄 色 掛 か っ た 空 」 で 「青 い 空 」 を 見 る こ と
が で き な か っ た よ う に 思 う 。 全体 に 雨 の 少 な い 土 地 柄 だ け の 理 由か も し れ な い が 、 リ
サ イ ク ル 現 場 で 地 面 に 座 っ て 作業 す る 多 く の 作 業 者 を 見 る に 併 せる と 、 作 業 者 の 環 境
などを 含め 、色々 配慮 すべき点が あるの ではないかと感 じた。
(3)山東 省臨沂 市 の E-waste リ サイク ル現場( 2007/11/12)
①山東省臨 沂市に つい て
臨沂市 は、山 東 省 の 東 南部に 位置 す る 省 内で 人口 、面 積 と も に 最 大 の 地 級 市( 人 口 :
約 1000 万 人、面積: 約 17,000 km 2 )であ る。
そのロケーションの特徴として、北京市と上海市のほぼ中間(共に直線距離で約
500km)に 位置する( 図 2.1.3-1)こと があ り、臨 沂市 を中心に半 径約 500km の 範 囲
に 4 億 5000 万人の人口があ る。そのた め中国北部(揚 子江よ り北の地域)で 最大の 再
生 資 源 の 集 積 地 と さ れ 、 様 々 な再 生 資 源 ( 家 電 、 産 業 機 器 な ど )が 中 国 全 土か ら 運 ば
れ て く る ( 陳 百 川氏 に よ れ ば 、 国 外 か ら の 回 収 は ない と の こ と で あ っ た )。 市 内 に は 、
廃 金 属 、 廃 プ ラ ス チ ッ ク 、 廃 家電 な ど の 再 生 資 源 を 処 理 す る 家 内 工 業 的 な 小 規 模 業 者
を集め た交 易市場 が複 数存在する 。
北京市
北京市
山東省
山東省
臨沂
臨沂
上海市
上海市
図 2.1.3-1
山東省臨 沂市の ロケーション
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②廃金属交 易市場 (華 東有色金属 城)
廃金属 の交 易市場 は「 華東有 色金 属城」と呼ばれる 一角 にあり(「 有色金 属」は 非 鉄
金属の 意味 )、敷 地面積は 約 50 万 m 2 、業 者の総 数は約 600 とさ れ、鉄 、銅、アル ミ を
中心に 合計 の処理 規模 は約 3000 トン/日で ある。そ れぞれの 業者は、モー タ ーの銅 線
の 分 離 や ス テ ー タ の 分 解 な ど 個々 の 作 業 に 特 化 し て お り 、 銅 を 中心 に 扱 う 業 者 や ス テ
ン レ ス を 中 心 に 扱 う 業 者 な ど があ る 。 ま た 、 臨 沂 の 市 内 に は 新 たな 廃 金 属 の 交 易 市 場
が建設中で あり、 予定 地の面積は 約 70 万 m 2 とされ る。
施設内 を見 学した業者 の 1 つでは 、廃ス テータの鉄 の外 枠から銅線 を分離 する 作 業
が行わ れて いた。まず前処理 とし て、廃ステ ータの 内部に火を点け て(野焼き )、外 枠
と 銅線 を 分 離 し や すい 状 態に す る ( 図 2.1.3-2)。こ の 際、 廃 プ ラス チ ック を 燃 料 と し
て 用 い て い る よ う に も 見 え た 。次 に 、 大 き な 金 槌 と 釘 の よ う な 工具 を 用 い て 、 人 手 に
よ って 外 枠 か ら 銅 線が 引 き抜 か れ る ( 図 2.1.3-3)。 分 離さ れ た 外枠 と 銅線 は 、 敷 地 内
に 山積 み に さ れ て いた ( 図 2.1.3-4)。 ま た、 こ の業 者 の 施 設 内には 、 家族 と 思 わ れ る
女 性 と 子 供 が 居 住 し て い た 。 陳百 川 氏 に よ れ ば 、 こ の 交 易 市 場 では 夜 間 に 再 生 資 源 が
盗 難 さ れ る こ と を 防 ぐ た め に 、処 理 施 設 内 に 居 住 す る こ と が 通 常で あ る と の こ と で あ
った。
交易 市 場の 外 に は 「 山 東 金 升 集 団 」と い う精 錬 業 者 の 工 場 が あ り 、 交 易 市 場 の 中 の
小 規 模 業 者 に よ っ て 分 離 さ れ た廃 金 属 は 、 こ う い っ た 業 者 に 持 ち込 ま れ る と の こ と で
あった。
図 2.1.3-2
臨沂 の廃金属交易市 場にお ける廃ステ ータ の前処 理( 野焼き )
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図 2.1.3-3
臨沂 の廃 金属交 易市 場にお ける 廃ステータ の銅線 分離処理
図 2.1.3-4 臨沂 の廃 金属交 易市 場において 分離さ れた
廃ステ ータの外枠(左 )と銅 線(右)
廃金 属 交易 市 場 の 中 で は 、 上 記 の 業者 の 他に も 、 バ ッ テ リ ー を 扱 う 業 者 や ス テ ン レ
スを扱 う業 者が確 認さ れた(図 2.1.3-5)。他 に、PVC 製と思 われ る銅線の被 覆のみ を
積載し てい るトラ ック が確認され たため 、再 生 PVC に も需要 があ ることが示 唆さ れ た。
ま た 、 交 易 市 場 の 一 角 で は 再 利用 不 可 能 な 屑 が 野 焼 き さ れ て い た が 、 そ の 脇 で 女 性 が
有価物 を拾 い集め る様 子が見られ た( 図 2.1.3-6)。
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図 2.1.3-5 臨沂 の廃金属交易市 場にお ける
ステンレス のベー ル(左)と バッ テリー (右)
図 2.1.3-6
臨沂 の廃金属交易市 場にお ける屑の野 焼き と有価 物を拾い集 める 女性
③廃家電リ サイク ル企 業(山東豊 緑資源 再生有限公司)
山東豊 緑資 源再生有限 公司は 、台 湾に 9 つの拠点を 持つ 廃家電 リサ イクル 企業 「 緑
電再生 E&E Recycling」のグ ループ企 業で ある。 同社 には台 湾松 下や台湾日 立が出 資
する合 弁会 社であ り、 今回中国本 土への 最初のリサイク ル拠点 として 2007 年 4 月 1
日 に 開 業 し た 拠 点 ( た だ し 、 中国 の 規 定 に よ り 別 法 人 ) で あ る 。同 社 総 経 理( 社 長 )
は、松 下グ ループ の現 地法人(台 湾松下 電器 )の製 造・生産技 術部 門に 20 年 間ほ ど 勤
務した後、
「緑電再 生 E&E Recycling」の 立ち上げ 時か ら携わ って いる。同 社 立ち上 げ
の段階で 、当時(1998 年)日本で行な われ ていた 家電 リサイ クル の実証実験 等の調 査
を 行 な い 、 そ の 一 部 技 術 を 採 用し て お り 、 今 回 訪 問 し た 山 東 豊 緑資 源 再 生 有 限 公 司 に
お い て も 日 本 と 似 た 考 え の 技 術が 少 な か ら ず 採 用 さ れ て い た 。 現状 で は 廃 テ レ ビ の 処
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理 設 備 を 持 ち 、 今 後 洗 濯 機 、 冷蔵 庫 、 エ ア コ ン の 処 理 設 備 を 追 加す る こ と で 、 中 長 期
的には年間 の処理 能力 としてテレ ビ 120 万台、洗 濯機 24 万台、冷 蔵庫 24 万 台、エ ア
コン 12 万台を目 標としている。 敷地面 積は約 10 万 m 2 であり( ただし一部 を国道 に
拠出)、現 状で完 成し ている約 5000m 2 の施 設の他 に、同規模 の施設がさ らに 3 棟建設
される 予定 とのこ とで あった( 図 2.1.3-7)。
図 2.1.3-7
山東 豊緑資源再生有 限公司 の敷地(左 )と 回収さ れた廃テレ ビ( 右)
廃テ レ ビの 処 理 に つ い て 、 受 け 入 れて い るも の の多 く は 白 黒 テ レ ビ で あ る 。 流 れ 作
業による解 体(図 2.1.3-8)の処 理規模は 1 日 8 時間当 たり 1200 台であり、 解体後 、
基板、ト ラ ンス、チ ュ ーナは そのままの状態 で売却 される。基板 の売却価格 は 7100~
8200 RMB/トン であり、 ⑤で述 べる業 者に売却さ れて いる。 CRT のパネ ルは埃 を 吸
引 した 上 で 、 大 き く破 砕 され た 状 態 ( カレ ッ ト) で 売 却 さ れ る( 図 2.1.3-9)。プ ラ ス
チック の筺 体は、 破砕 前に 3 種類(薄色の ABS、黒 色の ABS、PS)に選 別 され(図
2.1.3-9)、定格電 力 75kW の破 砕機で 3~4 cm 角に 破砕さ れた後、売 却さ れる( ABS
破砕品 の相 場は、 未洗 浄のもので 約 8300RMB/ト ンと のこと )。 プラスチッ ク破 砕 品
の 売 却 先 は 中 国 で 最 大 の 再 生 プラ ス チ ッ ク 市 場 が あ る 浙 江 省 寧 波で あ り 、 異 物 は 売 却
先 で 比 重 選 別 な ど に よ っ て 分 離さ れ る 。 ま た 、 売 却 先 が 国 内 に 限ら れ る こ と か ら 、 難
燃剤の 混入 が問題 とな ることはな いとさ れた。現在は廃 テレビ を、例え ば 17 イン チ で
あれば 1 台当た り 40~46RMB(1 RMB は約 15.5 円)を支払 って 回収してい る状況 で
あ り 、 経 営 状 態 は 厳 し く 、 中 国に お け る リ サ イ ク ル 法 制 度 の 整 備を 待 っ て い る 実 情 に
あると のコ メント を得 た。プロセ スを説 明する VTR( 北京語、日本 語、英 語)を用 意
するな ど、 広報活 動に 積極的であ る印象 を受けた。
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図 2.1.3-8
図 2.1.3-9
山東 豊緑 資源再生有 限公司 における廃テレ ビの解 体
山東豊緑 資源再 生有限公司にお いて解 体された
廃テレ ビのパネル(左 )と筐 体(右)
また 、 廃冷 蔵 庫の 解 体 工 程 で は 、( 3) ② で 述 べ た 交 易 市場 の 中の 業 者と 同 様 に 、 金
槌 の よ う な 工 具 を 用 い て 人 手 によ っ て 銅 線 を 引 き 抜 く 作 業 が 行 われ て い た 。 こ の 作 業
に 従事 し てい る の は正 規 に雇 用 され た 社 員で は なく 、 800~1000RMB/月 で 雇わ れ た
労働者 とい うこと であ った。
④廃プ ラス チック 交易 市場(徳利 西塑料 再生)
山東 省 臨沂 の 廃プ ラ ス チ ッ ク交 易 市 場(徳 利 西 塑 料再 生 )は 、 敷地 面 積 は約 40 万
m 2 、業者の 総数は 約 270 とされ 、小規模の業 者が破 砕や洗浄などを 分業し ている よ う
で あ っ た 。 廃 冷 蔵 庫 の プ ラ ス チッ ク 部 品 や 食 用 油 の ペ ッ ト ボ ト ルの 回 収 、 破 砕 品 の 天
日干し など が確認され た( 図 2.1.3-10)。
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なお図 2.1.3-10(右)の破 砕 品の 天日干 しに二人 の 作業 者がい るが 、白 色 のプ ラ ス
チック から 品質に 影響 の出る有色 の破片 を分別している ものと 思われる。
図 2.1.3-10 臨沂 の廃プラス チッ ク交易 市場 におけ る
廃冷蔵 庫の部品の 回収 (左)と破 砕品の 天日 干し(右)
施設 内 を見 学 し た 業 者 で は 破 砕 品 の洗 浄 を専 門 に 行 っ て お り 、 破 砕 品を 水 槽 に 浸 し
て 比 重 選 別 を 行 う 場 合 も あ る 。洗 浄 に 用 い ら れ て い る 機 器 は 洗 浄を 兼 ね た 湿 式 破 砕 の
ための 機器 であっ た(図 2.1.3-11)。洗浄 さ れた破 砕品は外部に売 却され 、改 めて破 砕
されて から 利用さ れる とのことで あった 。
図 2.1.3-11
臨沂 の廃プラス チッ ク交易 市場 におけ る破 砕品の洗浄
⑤廃テ レビ リサイ クル業者
山東省 臨沂 で訪問した 廃テレ ビ専 門のリサイ クル業 者は、敷地面積 は 1 万 m 2 程度、
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処理量 は 約 1500 台/日であ り、訪問時には 約 20 名が、廃 テレビ の解体や筐 体の破 砕
といっ た作 業に従 事し ていた。
解体 プ ロセ ス で は 、 手 作 業 で ブ ラ ウン 管 、基 板 、 ト ラ ン ス 、 筐 体 な ど を 選 別 し て い
た(図 2.1.3-12)。ト ランス は鉄と銅線 に分 離され、筐 体は破 砕機 への投入前 に PS と
ABS に選別 されていた 。
図 2.1.3-12
臨沂 の廃テレビリサ イクル 業者におけ る解 体( 左)と分離され た基 板( 右 )
筐体 の 破砕 ・ 選 別 プ ロ セ ス で は 、 重液 お よび 水 を 用 い た 比 重 分 離 に よ っ て 金 属 お よ
びオレフィ ン系樹 脂が 除去される ととも に、各プロセス での PS の ロスが 徹底 的 に 回
収されてい る反面 、廃水は未処理で放流 されていた( 図 2.1.3-13)。筐体の 破砕・選 別
プロセ ス(PS 筐体 の例 を示し たが 、ABS 筐体についても 同様と 思われる)を 図 2.1.3-14
に示し た。
図 2.1.3-13
臨沂の廃 テレビ リサ イクル業者 におけ る筐体の破砕・ 選別
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PS筐体
水
重液
ざる
ざる
水
湿式破砕
比重選別
脱水
比重選別
金属
スラリー
PS破砕品
スラリー
破砕の程度
が低いもの
ざる
ざる
選別
PE / PP
スラリー
選別
ざる
ざる
図 2.1.3-14
選別
金網
金網
廃水
臨沂 の廃 テレビリサ イクル 業者における筐 体の破 砕・選別プロセ ス
⑥廃基板リ サイク ル業 者
山東省 臨沂 で訪問した 廃基板 のリ サイクル業 者は、中国 北部( 揚子江より北の 地域 )
で 最大 規 模 (処理 量: 300 トン/ 月)の 業 者で、( 3) ③で 述べ た山 東 豊緑 資 源再 生 有
限公司 から も基板 を受 け入れてい る。従 業員 は 85 名と され、多く のプロセス を人 手 に
依存し た処 理が行われ ていた。
処理プ ロセ スは、 下記 のよう な手 順で行われ ている ものと推察され た。
( 1) ね じ 止 め 部 品 ( 例 : サ イ リ ス タ な ど の 大 型 ア ル ミ 放 熱 板 付 部 品 ) を 手 作 業
で外す。
( 2) ホ ッ ト プ レ ー ト で 半 田 を 溶 か し て 、 部 品 を 衝 撃 ま た は ナ イ フ の よ う な も の
で外す ( 図 2.1.3-15)。
※回収した 半田の 量で日当が支払 われる 。
(3)取り 外した 部品を手作 業に よる篩 で大 小に選 別す る( 図 2.1.3-16)。
(4)大型 部品( 特に電解コ ンデ ンサ) は手 作業で 選別 する。
( 5) 小 型 部 品 は 磁 石 で 分 離 す る 。 磁 石 に 付 か な い も の に は 電 解 コ ン デ ン サ が 多
く含ま れる(図 2.1.3-16)。
( 6) 磁 石 に つ い た も の を さ ら に篩 に か け 、 薄 い 部 品 ( フ ィ ル ム コ ン デ ン サ 等 )
を分離する(図 2.1.3-17)。
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図 2.1.3-15
臨沂 の廃 基板リ サイ クル業 者に おける半田 の溶融
図 2.1.3-16 臨沂の廃 基板リ サイクル業者に おける
篩によ る選別(左)と 磁石に よる選別(右)
図 2.1.3-17
臨沂の廃 基板リ サイ クル業者に おける 選別後の回収物 の例
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この よ うな 工 程 を 経 る こ と で 、 基 板上 の 部品 を か な り 細 か く 選 別 し て い る 。 本 業 者
で は 部 品 の 再 使 用 の た め の 出 荷は し て い な い と の こ と で 、 よ り 高値 で 出 荷 ( 精 錬 業 者
に出荷して いると 思わ れる)でき るよう に選別を実施し ている と思われる。
⑦臨沂市内 に見ら れる その他のリ サイク ラ
臨沂 市 内に は 、 上 述 し た よ う な リ サイ ク ラや リ サ イ ク ル 団 地 的 な 施 設 ・ 区 域 の 他 に
も、至 る所 に E-Scrap、タイ ヤな どのリ サイ クラが あっ た( 図 2.1.3-18)。
図 2.1.3-18
臨沂 市内 に見られる リサイ クラの例
ただ し 、い ず れ の リ サ イ ク ラ も そ の作 業 環境 や 管 理 方 法 は 適 切 に 行 な わ れ て い る と
は 言 え な い 状 況 で 、 例 え ば リ サイ ク ラ に 通 じ る 道 路 に ま で 解 体 した も の が 放 置 さ れ て
い る 、 近 く の 川 に は 冷 蔵 庫 の 断熱 ウ レ タ ン な ど が 大 量 に 散 ら ば って い る な ど 、 少 な か
らず問 題が あると感じ られた。
(4)World Recycling Forum, Shanghai ’07/Technical Visits
①Evergreen Bio-plastics Technology (Shanghai) Co., Ltd.:恒塑生物科技(上 海)有
限公司
同社は 2005 年に設立 され、トウ モロコ シ( コーンスタ ーチ) を原料として PLA 樹
脂(コ ンパ ウンド)お よび PLA 製のシート を製造 する企業である 。生産 規模は 2000
~3000 トン/年 とさ れた。
「GBP」 と 命 名 され た 同 社の 製 品 は 、 植物 由 来で あ るこ と か ら化 石 資源 の 枯渇 への
対策に なる こと、生分解性を持つ ことか ら埋立処分 をし た際の 環境 影響が 小さ いこと 、
焼 却 処 理を し て も 有 害 物 質 が 発生 し な い こ と が 特 長と さ れ て い る 。 ま た 、 原 料 へ の 特
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殊な成 分の 混合に より 、 PLA 樹 脂 の 耐 水 性 や 耐 熱性 が 改 善さ れ て製 品 への 適 用 可 能 性
が増す とと もに、 HDPE や PS と い っ た 石 油 由来の プ ラ ス チ ッ クと 同 じ機 器 ( 押 出 成
形機、フィ ルム成 形機 など)を用いるこ とが 可能となり 、新た に PLA 樹脂を 原料と し
て導入する企業にとっての初期投資が低く抑えられることも特長とされた。同社の
PLA 樹脂 と、これを原 料とし たフィルム製品 (レジ 袋)を示す (図 2.1.3-19)。
同社の 工場 の敷地は 約 50m 四方で あり、その中でコ ンパ ウンド を製 造する 溶融 押 出
機 1 台と、 フィル ムを製造す るイ ンフレ ーシ ョン成 形機 1 台が稼働 してい た。他 に 、
シート の製 造に用 いら れると思わ れる押 出成形機 2 台 が 置 か れ て い た。作 業 員 は 、 溶
融押出 機 に 2 人とインフレー ショ ン成形 機 に 2 人が配置されている 他に、 溶融押出 機
で造粒されたコンパウンドを手で混ぜ合わせて温度と水分率を均一にするために、2
人の作 業員 が配置され ていた。
図 2.1.3-19
恒塑 生物科技( 上海 )有限 公司の PLA 樹 脂(左 )と フィルム製 品( 右 )
②Shanghai White Elephant Swan Battery Co., Ltd. (SWSBC):上 海白象 天鶏電池有
限公司 (http://www.swsbc.com)
同社は約 70 年の歴史 を持ち 、中国国内だけ でなく海外市場にも進 出して いる電 池 製
造会社(図 2.1.3-20)。マンガ ン、アルカ リ等 の一次電池 、Ni-Cd、Ni-MH、Li-ion な
どの二 次電 池両者を手 掛ける。 単 3、単 4 などの規格 電池の 他、 各社のパソ コン 等 の
電気機 器製 品向け の OEM 出荷 も多く 、製 品の 60%は西 アフリ カ 、東アフ リカ、米 国、
カナダ 、日 本な ど 20 カ国以上に 輸出し ている。
当日は 単 3 タイプ の電池製造 ライ ンを見 学した。ラ イン の構成 する 個々の 機器 も 工
夫 は 見 ら れ る も の の 付 加 価 値 の高 い も の は 見 当 た ら な い 。 強 く 印象 に 残 っ た の は 安 全
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面 で の 配 慮 不 足 と 作 業 者 の 低 い付 加 価 値 だ っ た 。 例 え ば プ レ ス 機器 は ケ ー ス に 覆 わ れ
て い る が イ ン タ ー ロ ッ ク は な く、 装 置 に ア ク セ ス 可 能 な 状 態 で プレ ス 作 業 を 実 施 し て
おり、 また 1ロッ ト( 約 2.5 分)に 10 秒、 20 秒程度 だけの 作業 がある作業 者が複 数
の ライ ン に 居る状 況。 作 業者の 労 務費は 公称 : 1500~2000 RMB/ 月 との こ とだ が、
実際に はそ の半分 以下 ではないか という見解もあった。
図 2.1.3-20
上海白象 天鶏電 池有 限公司の製 造ライ ンと同社の環境 方針
③TES-AMM Corporation (China) Ltd.:(http://www.tes-amm.com/)
同社 は シン ガ ポ ー ル を 本 拠 に 、 欧 州、 米 国、 香 港 な ど に も 進 出 し て い る 処 理 業 者 の
上海の 最新 施設。
上海中 心部 から車 で 45 分程度の工業団地内 の一角 に位置し、現状 は中国 国内に 限 定
した BtoB の E-Scrap 製品を対象 にリサ イクルを実施 。Dell、HP などの外資 系企業 が
主たる委託 元。
責任者(Mr. Ramkripal Pandey, TES-AMM Singapore)は日 本ア ルミ、 大同 メ タ
ル 工 業 な ど の 日 系 企 業 と の 交 流が 深 く 親 日 家 の 印 象 。 シ ン ガ ポ ー ル の プ ラ ン ト で は 富
士通と リサ イクル 関連 の取引も始 めてお り、新聞報道も された との説明あり。
基本ポ リシ ーは「埋立 最小化」、キ ーワー ドは“Recycling Technology for Tomorrow”。
これを 実現 するた めに 人手による かなり 徹底した手解体 に加え 、
(見 学はで きな か っ た
が ) 回 路 基 板 か ら の 部 品 取 り 工程 、 さ ら に は 回 路 基 板 の ベ ー ス 板か ら の 静 電 分 離 な ど
を含め た機 械選別によ る銅回収 、電解、精錬 などの 化学的プロ セス を含め た貴金属(Au、
Ag、Pt、パ ラジウム等 )回収を組 合せ、鉄、 非鉄金 属、プラスチッ ク(パレ ットな ど
に加工)の 回収を 実現 。施設内に 分析室 (当日の担当者 は 2 名)を 持ち、受託 し た 廃
棄物に つい て適切 な工 程を決定し 、処理 を実施している とのこ と。
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これ ら のリ サ イ ク ル 工 程 に 加 え 、 排水 や 排気 処 理を 徹 底 す る な ど 、 低 い 人 件 費 を 活
用した徹底 手作業 によ る選別と装 置を用いた資源回収 、さらには規 制を越 えた CSR に
も 配 慮 し た シ ス テ ム 作 り が こ れか ら の 処 理 施 設 の あ り 方 を 示 し て お り 非 常 に 参 考 に な
る。
写真撮 影は 許可さ れな かった ので 、詳細は上 記 Web サイトを参照 のこと 。
(5)World Recycling Forum, Shanghai ‘07 / Conference & Exhibition
①Conference の 概要
Conference は今 年 で 2 回目(図 2.1.3-21)。 本 Conference を 主催する ICM(スイ
ス ) は 、 元 々 欧 州 で 廃 家 電 、 自動 車 、 バ ッ テ リ ー に 関 す る 学 会 を毎 年 開 催 し て い る 組
織で、 昨年 からア ジア での開催拠 点とし て上海で前述 の 3 テーマ を纏めた学 会を 開 催
し て い る 。 し た が っ て 中 国 で 開催 さ れ た 学 会 に も 関 わ ら ず 、 欧 州か ら の 参 加 者 も 多 い
ことが 一つ の特徴 と言 える。
図 2.1.3-21
World Recycling Forum Shanghai ‘07 の Conference 会場
参加者 (事 前登録 者) は約 200 名、内、 中国 :46 名、日本 11 名などア ジアか ら 約
70 名、ド イツ:19 名、オ ラン ダ:10 名など欧 州から約 70 名、米国:27 名など北 米
から約 30 名など が目立つ 。2 日間を通し て 38 件(Keynote Speakers は 除く )の プレ
ゼ ン テ ー シ ョ ン が あ っ た 。 発 表者 は 、 主 に 中 国 と 欧 米 の 政 府 機 関 ま た は リ サ イ ク ル に
従 事 す る 企 業 で あ り 、 他 に リ サイ ク ル 企 業 を 対 象 と し た ソ フ ト ウェ ア を 販 売 す る 企 業
による 発表 もあっ た。 発表者数を 、国別 および所属別に まとめ た(表 2.1.3-1)。
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表 2.1.3-1
World Recycling Forum Shanghai ‘07 にお ける国 別・ 所属別の発 表者数
政 府 機 関 /研 究 機 関
中国
11 月 14 日
Keynote
Speakers
Panel Discussion
Electronics &
Battery
Recycling (I)
Car Recycling (I)
11 月 15 日
Electronics &
Battery
Recycling (II)
Car Recycling (II)
Electronics &
Battery
Recycling (III)
How to import
scrap and used
parts to China
計
欧州
台湾
リサイクル企 業 /業 界 団 体
中国
欧州
北米
2
1
4
2
2
1
2
1
1
2
1
1
1
2
1
2
1
2
2
11
4
1
7
韓国
中国
欧州
北米
日本
1
1
1
1
1
1
1
日本
その他 企 業 :製 造 /情 報 /
商社
1
1
1
1
4
1
1
2
12
8
1
1
1
1
1
2
3
1
2
②Keynote Speakers
中国 ・ 国家 環 境 保 護 総 局の 李 新 民 氏 、 中 国・ 国 家 発 展 和 改 革 委 員 会 の馮 良 氏 、 世 界
最 大 の リ サ イ ク ラ で あ る Sims Recycling Solutions 社 ( 米 国 ) の Kumar
Radhakrishnan 氏( Steve Skurnac 氏に 代わる発表)、およ び有 色金属工業 再生資 源
公司( 中国 )の姜 松氏 から 、それ ぞれ 20 分程度のプレ ゼンテ ーションが あっ た。
○李新民( 中国・国家 環境保 護総局):Environmental Management and Recycling of
Solid Waste in China
李氏 の プレ ゼ ン テ ー シ ョ ン は 中 国 にお け る固 形 廃 棄 物 に 関 す る 法 規 制と そ の 実 施 、
および 固形 廃棄物 のリ サイクルと その方 法についてで、 その概 要は以下の通り 。
中国 に おけ る 固 形 廃 棄 物 に よ る 環 境汚 染 の防 止 と 管 理 に 関 す る 基 本 的 な 法 の メ カ ニ
ズ ム 、 お よ び 法 規 制 を 実 施 す るた め の 政 策 は 、 下 記 の よ う に 世 界 的 な 実 情 に 従 う よ う
に変わ って きてい る。
・
「減量化」「資源 化」「無害 化」の原則
・
拡大生 産者 責任( EPR)
・
固形廃 棄物 による 環境 汚染の防止 と管理 の情報公開
・
危険廃 棄物 に関す る許 可制度
- 62 -
・
EoL 製 品の管理
また 、 法規 制 の 執 行 も 厳 し く な っ てき て いる 。 例 え ば 、 広 東 省 と 広 西自 治 区 の 境 界
地域で の E-waste の不法な 焼 却処理に対し て 、NGO の告発 に応 える形 で、 2007 年 5
月に SEPA が規制 を執 行した 。
中国 に おい て 固 体 廃 棄 物 の リ サ イ クル に 関す る 環 境 保 護 の レ ベ ル は 、廃 棄 物 の 種 類
に よ っ て 様 々 で あ る 。 中 国 で 固体 廃 棄 物 の リ サ イ ク ル は 始 ま っ たば か り で 、 技 術 レ ベ
ル も 高 く な い が 、 そ の 可 能 性 は 高 い 。 紙 や プ ラ ス チ ッ ク 製 の 飲 料 用 ボ ト ル な ど MSW
に 含 ま れ る 再 生 可 能 資 源 の リ サイ ク ル に つ い て は 、 リ サ イ ク ル 率は 比 較 的 高 い が 、 環
境 保 護 の 観 点 か ら は レ ベ ル が 高く な い 。 リ サ イ ク ル に 従 事 す る 業者 や 企 業 の 環 境 マ ネ
ジメン トを 促進す るこ とが 、緊急 課題で ある 。
産業 廃 棄物 に つ い て は 、 有 価 で リ サイ ク ル率 が 高 い も の ( 石 炭 灰 、 鉄鋼 ス ラ グ 、 廃
油 、 廃 有 機 溶 剤 ) と 無 価 で リ サイ ク ル 率 が 低 い も の ( 赤 泥 、 リ ン石 膏 、 化 工 残 渣 ) が
あ る 。 後 者 に つ い て は リ サ イ クル 技 術 を 高 め る と と も に 、 そ の 不法 な 処 理 ・ 処 分 に 対
して有 害物 質の管 理を 強めること が緊急 課題である。
E-waste や 廃タイヤ、EoL 自 動車や EoL 船舶のリサイ クル率 はとても高いが 、統 制
さ れ て い な い 回 収シ ス テ ム の ため に 、 リ サ イ ク ル も 統 制 さ れ て いな い 。 ラ イ セ ン ス 制
も 含め て 、 体 系 的 な 回 収 シ ス テム を 作 る こ と が 課 題 で あ る 。 下 水 汚 泥 、 脱 硫 装 置 か ら
の石膏 、MSW の焼却灰 など、幅広い範囲の固 体廃棄 物をリサイクルするた めの高 度 な
技術も 必要である 。
固形 廃 棄物 に よ る 環 境 汚 染 の 防 止 と管 理 につ い て 継 続 的 に 規 制 を 強 める と と も に 、
廃 棄 物 の 減 量 に も 取 り 組 む 必 要が あ る 。 ま た 、 個 々 の リ サ イ ク ルに 対 す る 具 体 的 な 方
法 を 整 備 す る 必 要 も あ る 。 経 済・ 社 会 ・ 環 境 へ の 影 響 を 総 合 的 に考 慮 し て 、 リ サ イ ク
ル に 適 し た も の は リ サ イ ク ル する と と も に 、 不 適 な も の は 適 切 に処 理 ・ 処 分 す る と い
う方針であ る。
○Kumar Radhakrishnan(米国・ Sims Recycling Solutions 社)
Radhakrishnan 氏の プレゼ ンテーショ ンは 、Sims グループの事 業内容について で
あった 。同 社は世 界全 体で 148 のリサイク ル施設 を持ち 、3600 人を雇 用、年間 900
万トン以上 のリサ イク ルを手掛け ている 。
事業内 容の 一例と して 、下記 のよ うな New York 市 と の リ サ イ ク ルに関 す る 契 約 が
紹介さ れた 。
- 63 -
・
EoL 冷蔵 庫のリサ イ クル /タイ ヤのリサ イ クル /埋立 処分 場に お けるメタ
ンガス発電
・
WEEE のリサイ クル:電子 機器 /ブラウン管/プ ラス チック/ト ナー / 資
産管理
・
使用済( post-consumer)プ ラスチック
・
冷蔵庫 から のリサ イク ル品:鋼鉄 /非鉄 金属/プラスチ ック/ その他
・
トナーカートリッジからのリサイクル品:鉄/アルミ/プラスチック/ト
ナー粉 末
・
WEEE から のリサ イク ル品: 鉄/ 非鉄金属/ 磁石/ プラスチック/ ガラス
リサ イクル 企 業とし て重 視 するポ イ ントと して は 、リサ イ クル品 ( recyclate) の 価
格、リ サイ クルコ スト 、法規制、 原料選 択の 4 点を挙 げてい た。 また、中国 にお け る
ビ ジ ネ ス の 可 能 性 を 質 問 さ れ た際 に は 、 中 国 は 市 場 が 未 成 熟 で あ る こ と と 、 共 産 主 義
国家の ため 制約が 多い ことを理由 に消極 的 であった。
なお 、 セッ シ ョ ン 終 了 後 に 日 本 へ の進 出 の可 能 性 に つ い て 直 接 会 話 し た と こ ろ 、 日
本は規 制、取組み 共に「 Strange」であり 、参入の障 壁が 高いという 回答で あっ た。
「一
般廃棄 物 」と「産業 廃 棄物 」と いう考え方、「有 価で 売却すればリ サイク ル 」という 考
え方な どが 特に奇 妙と 考えられて いるよ うである。
○姜松(中 国・有 色金 属工業再生 資源公 司): Development and Prospective of China
Metal Recycling Industry
姜氏 の プレ ゼ ン テ ー シ ョ ン は 、 鉱 物の 採 掘や 非 鉄 金 属 の 再 生 に 関 わ る企 業 で あ る 有
色 金 属 工 業 再 生 資 源 公 司 の 事 業内 容 と 、 中 国 に お け る 金 属 リ サ イク ル の 現 状 の 説 明 で
あった 。
2006 年、 中国で は非鉄金属の総 生産量 が 約 1917 万トンに対して 、非鉄 金属リサ イ
クルの 総生 産量 は 453 万トン(国 内回 収 208 万トン 、輸 入 245 万トン)で あっ た。中
国は世 界一 の廃金 属の 輸入国でも あり、2006 年には 廃非鉄金 属 698 万トン と廃鉄 鋼
538 万トン を輸入した 。港ごとの 廃非鉄 金属の輸入 量で は 、広 州、寧波、杭州 、天津 、
上 海 が 多 く 、 輸 入 元 は 日 本 、 米国 、 オ ー ス ト ラ リ ア 、 ス ペ イ ン 、フ ィ リ ピ ンの 順 で あ
る。
金属リ サイ クルの 能力 は中国 全土 で 1045 万トン/年で あり、広東 省、浙江 省 、江 蘇
省 、 安 徽 省 、 江 西 省 な ど の 施 設が 大 き な 能 力 を 持 っ て い る 。 そ の他 に 、 環 境 保 護 の 観
- 64 -
点から、近 年、金 属リ サイクルの エネル ギー効率が改善 してい ることが述べら れた。
③Electronics & Battery Recycling Session (I)
このセ ッシ ョンで は 、Stena Technoworld AB 社( スウ ェ ーデン)の Phar Oscar 氏 、
Immark 社(アイ ルランド) の Gerard R. Killen 氏、 深圳 GEM 社(中国) の許開 華
氏 、 Levinson 環 境 法 事 務 所 ( イ ス ラ エ ル ) の Julia Lietzmann 氏 、 Techprotect
International 社 ( カナ ダ ) の Armin Kienle 氏、 お よ び 欧 州 電池 リ サイ ク ル 協 会の
Corinne Faure-Rochu 氏から、そ れぞ れ 30 分程度のプ レゼン テーション があ った。
○Phar Oscar( スウ ェーデン・Stena Technoworld AB 社)
:WEEE in Europe - History
and Future
Oscar 氏 は、スウ ェー デンの WEEE リサ イ クル企 業で ある Stena Technoworld AB
社の事 業内 容を、EU の WEEE 指令への対 応に焦 点を当ててプレ ゼンテ ーションし た 。
同社の WEEE の処 理 量は年 間 175,000 トン で、420 人 を雇用して いる 。
2002 年に EU 加盟国 によっ て、生産者責任 を柱と し た WEEE 指 令がで きた。そ の
目的は 、reuse と recycle を増 や すこと で、 埋立処分さ れる WEEE を減ら す ことに あ
る。同社で は、WEEE の回収 およびリサイク ルへの トータルソリュ ーショ ンを提 供 す
ること で、生産者 、販 売者、企業 、その他の 消費者 が WEEE 条例 を遵守する こと を 助
けてお り、 多くの 自治 体や企業と の協力 実績があるとさ れた 。
○Julia Lietzmann( イ スラエ ル・Levinson 環境法事 務所 )
:The New Waste Shipment
Regulation and its Relevancy to EEE Traders/Recyclers
Lietzmann 氏の所属 する Levinson 環境 法 事務所では 、環境に関 する法 制度を、 法
学 や 科 学( 農 学 、 化 学 工 学 な ど) の バ ッ ク グ ラ ウ ン ド を 持 っ た メン バ ー で 研 究 し て い
る 。 EU か ら の 有 害 廃 棄 物 が 途 上 国 で 埋 立 さ れ る と い う よ う な 事 例 を 避 け る た め に 、
EU はより 監視を 強化 した法 律を 作る必要が あると いう 主張のもと 、EU にお ける 廃 棄
物の越 境移 動に関 する 法律の枠組 みにつ いてプレゼンテ ーショ ンされた 。
廃棄物 越境 移動規制( WSR)でも 、「WEEE」の 定義、すなわち EEE がま だ製品か
廃棄物 かの 判断は 困難 である。こ の 6 月に EU が 、 ス ペ イ ン か ら ベ ト ナム 経 由 で 中 国
へ輸出され たケー ブルについて 、銅線も PVC 被覆も Green( 青信 号の )廃 棄 物に分 類
されて いる ものの 、それらが組み 合わさ れている場 合は Green 廃 棄 物でな いという 判
断を下 した 例があ った 。
- 65 -
EU の外で再利用 され る WEEE の輸出 手続は、輸出 先が OECD 加盟国 かどうか 、お
よび有 害廃 棄物か どう かによって 分類さ れる。再利用目的の OECD 加盟国 へ の輸 出 手
続は、Green 廃棄物と amber( 黄 信号の)廃棄物に 分け られ、amber 廃棄物 について
は、事 前の 通知と 同意 および経済 的な補 償が求められる 。EU から OECD 非加盟 国 へ
の輸出手続 は複雑 で、Green 廃 棄 物と Annex V 廃棄物( 場合に よっ ては禁 止さ れ 、場
合 に よ っ て は 許 可 さ れ る ) に 分け ら れ る 。 後 者 の 輸 出 が 禁 止 さ れ る の は 、 下 記 の よ う
な場合 であ る。
・
輸出先 の国 の法律 で有 害と分類さ れる。
・
輸出先 の国 で輸入 禁止 とされてい る。
・
環境的 に望 ましい 方法 で処理され ないと 当局が確信する 理由が ある。
Lietzmann 氏のプ レゼンテー ショ ンに対 して は、欧 州の リサイ クル企業の 関係 者 と
思われる人 物から 、中 国に E-Scrap の輸出 が可能かど うかの 結論を求める質 問が な さ
れた。こうした質問に 対して 、座長を務めて いた精 華大学(中国)の李金 恵教 授は「 中
国では E-Scrap の輸 入 は全面 的に禁止」との 見解を 示した。しかし 直後に 、中国 のリ
サイク ル企 業の関 係者 と思 われる 人物か らは 、EU が輸 出でき る E-Scrap は どう い っ
た も の か の 結 論 を 求 め る 質 問 がな さ れ 、 必 ず し も 李 教 授 の 見 解 が中 国 の 実 情 を 表 し て
いるわ けで はない こと が示唆され た。
Lietzmann 氏とは Hamburg での 学会で 知り合い、 以前 より交 流が あるが 、今 後と
も 日 本 の 法 規 制 の 最 新 情 報 を 発信 す る こ と で 、 欧 州 等 の 情 報 を 幅広 く 入 手 し て 行 き た
いと考 えて いる。
④Electronics & Battery Recycling Session (II)
このセ ッシ ョンで は、IBM Japan 社の Kazumi Nozawa 氏、富勤 環保( 中国)有 限
公司の 王波 氏、Kinsbursky Brothers 社 (米国) の Todd Coy 氏 、同済大 学 環境科 学
工学科( 中 国)の李 光 明教授 、AFE Valdi 社(フ ランス)の Roland Fraysse 氏、およ
び台湾・環 境保護 局の I-Wei Lian 氏か ら、 それぞ れ 30 分程度の プレゼンテ ーショ ン
があっ た。
○野澤一美 氏(日 本 IBM、Corporate Environmental Affairs、Program Manager of
IBM Asia Pacific Environmental Affairs ): Implementation of IBM Supplier
management for End of Life Products
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野澤 氏 が進 め る ア ジ ア 地 域 に お け るリ サ イク ラの 選 定 基 準 に つ い て の 説 明 が 非 常 に
印象的 であ った。 IBM ではグ ロ ー バ ル に 統 一 さ れた サ プ ラ イ ヤの 選 定 基準 が あ り 、 リ
サイク ラ も EoL サ プライヤと位置 付けら れ、連携に あたっては現場 での監 査と承 認 を
得 る こ と の 必 要 性 、 そ の 監 査 基準 な ど が 明 確 に 示 さ れ た 。 今 回 の調 査 に お い て 、 二 次
以 降 の リ サ イ ク ラ を 中 心 に 作 業環 境 等 に 少 な か ら ず 問 題 を 感 じ る部 分 も あ り 、 二 次 、
必 要 に 応 じ て 三 次以 降 も 現 地 調 査 す る と い う 日 本 IBM の 対 応 方 針 は 大き な イ ン パ ク
トがあった 。各国で少 なくと も 1、2 組は 二次、三 次以 降まで を含 めてきちん と管理 さ
れ た リ サ イ ク ラ は 存 在 し て お り、 そ れ が 見 つ か る ま で 各 国 を 訪 問し 続 け て い る 旨 の 具
体的な 説明 があっ た。
○李光明( 中国・同 済 大学 環境 科学工 学科)
:Systems for Management and Recovery
Technology of WEEE in China
李教授 から は、EEE および WEEE に関する世界 的な 状況、 基板を例に した WEEE
中の再 生可 能資源の含 有量 、WEEE に含 まれ る有害物質 、EU の WEEE 指令と RoHS
規 制 と い っ た 、 プ レ ゼ ン テ ー ショ ン の 前 提 と な る 知 見 が 説 明 さ れ た 上 で 、 中 国 に お け
る 環 境 影 響 を 考 慮 し な い 手 作 業に よ る 分 解 ・ 処 理 の 実 情 が 写 真 を用 い て 示 さ れ 、 ラ イ
フサイ クル を考慮 した EEE の 管理が必要 である とされた。続い て、テ レビ、冷蔵 庫 、
洗濯機、エアコンおよびパソコンについて、中国における 1 家庭当たりの保有量と
WEEE の発生量 の経年変化 (2010 年まで の予測 量を含む) が示 され 、WEEE の 増 加
に対処する ことの必要 性が強調 さ れた。
以上の 背景 を受け て、中国におけ る WEEE の管理 と再 利用技術(分解、アップグ レ
ード、精 製 )に つい ての現状と課 題が述 べられた 。WEEE を管理 する法規制 につい て
は、下 記の とおり であ る。
・
輸入禁止廃棄物のリスト:電池/エアコン/冷蔵庫/電子レンジ/電話/
テレビ /…
・
WEEE の環 境管理 に関 する SEPA の告知(2003 年 9 月)
・
廃家電および電子製品のリサイクルと処理についての管理規制の起草
(2004 年 9 月)
最後 の 管理 規 制 に つ い て は 、 資 源 のリ サ イク ル と 環 境 保 護を 目 標 と し て 、 拡 大 生 産
者 責 任 のシ ス テ ム を 実 行 す る とさ れ て お り 、 廃 棄 物 の 回 収 ネ ッ トワ ー ク と 情 報 管 理 シ
ステム も研 究・開 発さ れている 。
- 67 -
○I-Wei Lian 氏(台 湾・環境保 護局 、資源リ サ イクル 資金 管理責任者 )
:Recycling Glass
in Taiwan
Lian 氏からは、エネルギ ー の 98%を輸入 するな ど資源に乏しく 、資源 確保 、リサ イ
ク ル は 持 続 的 開 発 に 不 可 欠 と いう 台 湾 の 事 情 や 「 持 続 可 能 & 廃 棄 物 ゼ ロ 」 が 最 終 目 標
という 前提 に基づ く説 明がなされ た。
この目 標に 向けて、台 湾では 1997 年からリサイク ルプ ログラ ムを 設立、民間お よ び
自治体 によ る回収 シス テム 、補 助 金制度 などを構築する と共に 、EPR を前提 とした 基
金を立ち上げ、製造事業者からの資金を有効に活用したリサイクルを推進している
(Waste Disposal Act、http://www.epa.gov.tw/english/laws.wasteact.htm、この基金
を活用する リサイ クラ:約 600、処理プ ラン ト:約 130、この シス テムに より、 1700
万トンをリ サイク ル( 2005 年))。
終了 後 に個 別 に 各 メ ー カ の 負 担 額 の決 め 方を 質 問 し た と こ ろ 、 ト ー タ ル コ ス ト を 政
府機関 が出 して、合意を得た上で 、その 先の分け方は委 員会( メン バー:政府 、NGO、
製 造 事 業 者 な ど ) で 議 論 し て 決め る が 、 明 確 な 基 準 が あ る わ け で は な い 、 と の 回 答 だ
った。
⑤Session of How to import scrap and used parts to China
このセ ッシ ョンの前半 では 、 オラ ンダ・廃電 子電気 機器財団 の Williem Conneman
氏、MBA Polymer 社 (米国) の Chris Slijkhuis 氏、および中国・ 長江三 角循環 経 済
技術研 究院 の杜歓 政教 授から、そ れぞ れ 30 分程度のプ レゼン テーション があ った。
○Chris Slijkhuis(MBA Polymer 社):The Challenges of Importing Plastic Rich
Scrap as Raw Material into China
Slijkhuis 氏のプ レゼ ンテー ショ ンは 、下記 のよう な内容であった 。
1.
中国に おけ るプラ スチ ックスクラ ップの 輸出入について 利用可 能なデータ
2.
中国に おけ る輸出 入の 法的な枠組 み
3.
中国に おけ るプラ スチ ックリサイ クルの 現状
4.
中国に おけ る高技 術の プラスチッ クリサ イクル
5.
結論と コメ ント
1.について 、公式なプ ラスチ ック屑の輸入量 は 586 万ト ン(2006 年)だ が、実 際 に
は 1000 万 トン近いと 推計さ れている 。輸 入 の状況 を把握する のは 困難で ある 。中 国 に
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おける 新規 樹脂の 生産 量 1800 万トンに 対し てプラスチ ックの 消費量が 3800 万ト ン で
あるこ とも(2005 年)、プ ラスチック屑の実 際の輸 入量を推察 する 情報と なる。ま た 、
2015 年のプラスチッ ク消費 量 は 9000 万トンとも予測 され、 今後 もプラスチ ック屑 の
輸入量 の増 加は続 くも のと思われ る。輸入 元は香港が最 大であ るが( 29%:2006 年)、
当 然 、 中 継 地 に す ぎ な い 。 輸 入量 の 多 い 港 は 、 広 州 と 深 圳 で あ る。 樹 脂 の 種 類 に つ い
て、貿 易統 計で は PE が急増 し て い る が 、 以 前 は「 そ の 他 」 と 分 類 さ れて い た も の が
PE に分類 されたこと が原因 と考えられる。 EU からの WEEE の 混合プラス チック 屑
の組成を調べると 、HIPS が 27%、ABS が 24%で多い が(このス ライド は 、CD-ROM
の PPT 資 料には 含まれていない )、そ の他 の樹脂の種 類は多 様で あり 、ピン ポイ ン ト
で統計をと ること が困 難であるこ とを示 している 。
2.に つ い て 、 中 国 へ の 輸 出 入 に 関 わ る ラ イ セ ン ス と 書 類 と し て は 、 下 記 の も の が 必
要である。
・
SEPA に よる輸入業者 のライ センス
・
AQSIQ による輸入業 者およ び輸出業者 のラ イセン ス
・
CCIC によ る輸入 された物品の検 査
・
輸入さ れる プラス チッ ク屑に対す る関税 : 7.6%
・
増値税:中 国の税 関が 設定し たプ ラスチック 屑の価 値( 現在 は 450 USD/t)
の 17%
WEEE のプラス チッ ク屑の 輸出 に関す る EU 指令では、PCB な どの物 質の混入 が
50 mg/kg 以上の ものは輸出が認められ ていないが 、港 で全て のプ ラスチック屑に つ い
て 異 物 混 入 を 調 べ る こ と は 不 可 能 で サ ン プ ル 検 査 に よ る こ と が 実 情 で あ る か ら 、 50
mg/kg という数字は現 実的に 意味を持たない 。また、EU 指令で notification につい て
規 則 が 厳 し く な っ た が 、 記 入 する べ き書 類 を ト レ ー ダ ー に 渡 し た が 、 現 地 工 場 に 現 物
が届か ない といっ たト ラブルも起 きたこ とがあるなど、notification の概念 は中国で は
有効で はな いとさ れた 。
3.について 、中国でプ ラスチ ック 屑のリサイ クルに 従事する業者 は 4~6 万とされ る
が、そ の 90%以上は 小さな 家内 工業的 な業 者である。 プラス チッ クリサイク ルに 関 わ
る人は 、全 部で 約 1000 万人とも 言われ る 。中国で のリ サイク ル現 場の写 真が 示され 、
多 く の プ ロ セ ス ( 選 別 、 洗 浄 など ) が 人 手 に 依 存 し て い る こ と や、 ペ レ ッ ト 化 の 際 の
樹脂の 混合 が精密 では ないことが 述べら れた。また、通 常は 25 kg 入りの 袋に入 れ ら
れ、再 生樹 脂が市 場で 売られ てい る光景も示 された 。そ して、2006 年 1 月の 中国政 府
- 69 -
に よ る 「 プ ラ ス チ ッ ク リ サ イ クル お よ び 再 利 用 に 関 わ る 汚 染 管 理技 術 基 準 」 が 規 範 的
な リ サ イ ク ル 産 業 を 目 標 と し てい る こ と か ら 、 環 境 配 慮 型 で な い小 規 模 リ サ イ ク ル 業
者にとって は状況が厳 しく 、EU の規制と合わせて 、貿 易業者 にと っても小規 模リ サ イ
クル業 者に 原料を 供給 することは 困難に なっていくとの見通し が述べられた 。
4.について は、同社が 中国で設立 した合 弁会社(広州 GISE-MBA 塑 料新技 術有 限 公
司)の 紹介 であっ た。 ここでの内 容は、 Exhibition で同社の担当者 から得 た情報 と と
もに、 ⑦で 述べる 。
⑥Electronics & Battery Recycling Session (III)
このセ ッシ ョンの後半 では 、 Cedar Resource Management 社( アイル ランド) の
Brendan Keane 氏、佛山市 南海 邦普ニッケ ル・コ バルト技術有限 公司( 中国 )の李 長
東氏、Hamos 社(ドイ ツ)の Rainer Koehnlechner 博 士、お よ び CITRON 社(スイ
ス)の Ines Bub 氏か ら、そ れぞ れ 30 分程度のプレゼ ンテー ションがあった 。
⑦Exhibition の概要
Exhibition 会場では 、Albert Hoffmann 社( ドイツ )、Hamos 社( ドイツ )、Innov-X
Systems 社(米国 )な どのリ サイクル機器の 製造・販売 企業と 、MBA Polymer 社 の 中
国法人 であ る広 州 GISE-MBA 塑 料新技 術有 限公司、Stena Technoworld 社( スウェ ー
デン) など のリサ イク ル企業が展 示を行 っていた 。
中国 で 開催 さ れた 学 会 に も 関 わ ら ず、 ス ウェ ー デ ン : 2 件 ( 水 銀 回 収、 リ サイ ク ル
ソリュ ーシ ョン)、ド イツ:2 件(破砕機、一次処 理プラント )、スペイ ン:1 件(破 砕
機)、U.K.:1 件(リサ イクルソリ ューシ ョン;物流+処 理サー ビス)、U.S.A.:1 件( プ
ラ ス チ ッ ク リ サ イク ル )に 加 え 、 中 国 :2 件 ( 金 属選 別 、2 次 バ ッ テ リ リ サ イ ク ル )
と な っ て お り 、 大 半 が 欧 米 の リサ イ ク ル 設 備 業 者 、 リ サ イ ク ラ であ っ た こ と が 極 め て
印 象 的 で あ る 。 欧 米 の こ の 業 界が 中 国 ビ ジ ネ ス へ の 進 出 を 強 く 意識 し て い る こ と が 感
じ ら れ る 。 た だ し 、 中 国 か ら の発 表 を 含 め た 装 置 主 体 の リ サ イ クル 技 術 は 、 現 在 中 国
で 低 い 人 件 費 を 活 か し た 手 作 業中 心 の リ サ イ ク ル に 対 し て コ ス ト面 で ど の よ う に 優 位
に 立 っ て い く か に つ い て の 検 証は 不 十 分 で 、 実 際 に プ ラ ン ト ビ ジ ネ ス は 大 き く な っ て
いない 印象 が強い 。規 制の始ま る 2009 年以降のビ ジネス動向に注 視が必 要である。
今回 、 発表 を 含め 、 世 界 の リ サ イ クル 業 界は 、 世 界 最 大 とな っ た SIMS( 豪州 ) を
始 め 、 企 業 統 合 に よ り 寡 占 化 が進 ん で お り 、 世 界 ト ッ プ ク ラ ス の企 業 集 団 の み が 生 き
残 れ る 環 境 に な る 可 能 性 も あ る。 特 に リ サ イ ク ル ソ リ ュ ー シ ョ ンサ ー ビ ス は 、 欧 米 豪
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の SIMS 社、STENA 社、One51 plc 社など が業者 の囲 い込み(企 業買収によ るホー ル
ディン グス 化)を 進め 、世界 10 強とい った キーワード を使っ て寡 占時代の到 来を 予 言
し て い る 。 日 本 は 廃 掃 法の 特 殊 性な ど か ら 「 特異 な 存在 ( SIMS 社 副 社 長 と の 会 話 で
の表現)」となり つつあり 、世界 の流れに取 り残さ れないように 、最新状況を 掴みな が
ら世界の潮 流に併 せた 技術開発を推進す る必要性を強く 感じる 。
○Guangzhou GISE-MBA New Plastics Technology Co., Ltd.:広州 GISE-MBA 塑料
新技術 有限 公司
同社 で は、 香 港 経 由 で 輸 入 し た 廃 家電 由 来の 混 合 プ ラ ス チ ッ ク を 、 広州 工 場 ( 処 理
能力:4 万 トン/ 年) で ABS、PS、PP のコ ンパウ ンドに加工し 、 家電の 筐体な ど の
原料と して 販売し てい る( 図 2.1.3-22)。
図 2.1.3-22 広州 GISE-MBA 塑 料新技 術有限公司 の
混合プラス チック (左)とコ ンパ ウンド (右)
混合 プ ラス チ ッ ク の 多 く は 欧 州 か らの 輸 入で あ る が 、 一 部 は 日 本 の 家電 リ サ イ ク ル
工 場(A グル ー プ)か ら 輸入し てい る 。ゴム や 金属も 混入 し た破砕 品 として 輸入 さ れ
るが、自社 で処理 設備 を所有して いるこ とを 前提に、当 局から 輸入 の許可を得 てい る 。
処 理 プ ロ セ ス は 、 異 物 を 除 去 する 乾 ベ ー ス の プ ロ セ ス と 、 樹 脂 の種 類 ご と に 選 別 す る
湿 ベ ー ス の プ ロ セ ス 、 乾 燥 プ ロセ ス 、 さ ら に ペ レ ッ ト 化 、 コ ン パウ ン デ ィ ン グ の プ ロ
セスか らな る。
- 71 -
2.1.4
米国における家 電品等 の資源循環(リ サイク ル)の現状
(1)調査 結果全 体纏め
今回 の 海外 動 向 調 査 は 以 下 を 確 認 でき る など 、 非 常 に 有 意 義 な も の であ っ た と 考 え
る。
①米国リサ イクル処理 の特徴
使用済 み電 気機器 リサ イクル は、 以下 の 2 種類の方 法に 大別さ れる 。
(a)
破砕機等の機器を一切利用せず、手作業による解体・選別のみを実施し、
選別後 のユ ニット( 例:CRT、HDD ドライ ブ、回路 基 板)を適 切 な二次 処
理業者 に出 荷。
(b)
(a)に 加 え、 破 砕 ・機 械 選別 を 導入 し 、鉄 、 非 鉄金 属 (例 : アル ミ 、 銅 ) な
どに選 別も 行なっ た後 、二次処理 業者に 出荷。
②リサイク ル処理 後の回収材料の 再生状 況
(a)のいずれ の方法 においても、そ の出荷 先として米 国内 に留ま るも のは一 部で あ り、
鉄 、 非 鉄 金 属 、 回 路 基 板 は カ ナダ 、 ヨ ー ロ ッ パ の 精 錬 業 者 、 プ ラ ス チ ッ ク は 中 国 を 中
心 と し た ア ジ ア ( 一 部 の み 米 国内 リ サ イ ク ル ) に 出 荷 、 再 生 さ れ る 。 結 果 と し て 米 国
内再生 は極 わずか 。
③高い 「適 正処理」へ の意識
いず れ の業 者 に お い て も 「 環 境 影 響化 学 物質 の 除 去 」 へ の 意 識 は 非 常 に 高 く 、 有 価
部 位 に 優 先 し 、 部 位 の 解 体 ・ 適正 処 理 を 徹 底 し て い る 点 は 、 今 後 日 本 企 業 が 米 国 で の
リサイ クル を推進 する にあたり配 慮すべ き点と考える。
④環境配慮 設計は これ から、ただ し危機 感強い
環境 配 慮設 計 ( リ サ イ ク ル 性 設 計 )は 、 米国 内で は そ の 検 討 が ま さ に 始 め ら れ た 段
階 で 、 日 欧 に 遅 れ て い る と い う認 識 。 た だ し 、 時 代 を 反 映 し 、 一気 に 「 リ ユ ー ス 」 ま
で 含 め た 検 討 を 行 な う プ ロ ジ ェク ト が 発 足 し て い る 状 況 で あ る 。 ま た 設 計 情 報 を 用 い
た 処 理 に つ い て は 、 処 理 業 者 と製 造 事 業 所 と の 間 に 距 離 が あ り 、現 段 階 で は 一 部 で の
実施に 留ま る。
⑤法律面の 特徴
日本の「 一般廃棄物 」と「 産業廃 棄物」と い う排出 者による差異で はなく 、
(連邦法
上は) 有害 廃棄物 (Hazardous Waste)と 非有害 廃棄物(non Hazardous Waste) に
大 別 。 例 え ば 鉛 や 水 銀 を 含 有 する 廃 棄 物 が 前 者 に 分 類 さ れ 、 そ れ以 外 と は 異 な る 規 制
が掛け られ ている 。
- 72 -
E-Scrap リサイク ル に 関す る 規制 は、連 邦 法 には 存 在せ ず、カ リ フォル ニ ア州 、メ
イ ン 州 な ど 各 州 で 立 法 化 。 し かし 州 毎 に 責 任 分 担 な ど の 考 え 方 が異 な り 、 メ ー カ 側 と
しては 対応 が難し い状 況にある。
今後 規 制の 考 え 方 の 統 一 化 や 連 邦 法化 の 可能 性に つ い て は 、 必 要 性 を 訴 え る も の は
あった が、 現実に は難 しいという意見が 大勢。
(2)調査 の背景・目 的
本調査 に至 った背 景に ついて説明する。
拡大 生 産者 責 任 を キ ー ワ ー ド に 使 用済 み 製品 の リ サ イ ク ル に 関 す る 規 制 が グ ロ ー バ
ルに拡 大し ている 。日 本では 家電 リサイクル 法、欧州 の WEEE 指令、中国で は中国 版
WEEE と言 われて いる ものな どが あり、この 傾向は 今後さらに強ま ると思 われる。
この よ うな 社 会 動 向 に お い て 、 製 造事 業 者は 自 ら の 製 品 の リ サ イ ク ル を グ ロ ー バ ル
で 把 握 す る 必 要 が 出 て く る 。 日本 の 廃 電 気 機 器 リ サ イ ク ル は 家 電リ サ イ ク ル プ ラ ン ト
などを 調べ ること で実 情把握が可 能であ り 、また欧 州も WEEE 指令 対応で 多くの調 査
を 進 め 、 情 報 も 集 ま っ て い る と認 識 し て い る 。 さ ら に 中 国 な ど のア ジ ア 地 域 に つ い て
も、国 内リ サイク ルの 二次処理委 託先監 査などを通じて 多くの 情報が集まって いる。
これ に 対し て 米 国 は 、 使 用 済 み 製 品の リ サイ ク ルに 関 す る 連 邦 法 が 存 在 し な い こ と
もあり 、ビ ジネス 規模 に対して十 分な情 報が得られてい ないの が実情である。
そこで 今回 、米国のリ サイク ル関 連状況調査 を実施 することとした 。
した が って 、 本 調 査 の 目 的 は 、 グ ロー バ ルに 広 が る 製 造 事 業 者 に よ る 使 用 済 み 製 品
リ サ イ ク ル 責 任 に 対 応 し 、 よ り進 ん だ 循 環 型 社 会 を 実 現 す る た め、 製 品 の 輸 出 ・ 販 売
先となる海 外(今 回の 対象は米国 )にお いて、
・
使用済 み製 品に対 する リサイクル 方法や 技術、考え方の 実態
・
環境適 合設 計(特 にリ サイクル性 設計) 技術や、 IT を 活用した処 理支 援 技
術について 、その状況やニーズ
を調査・把 握し、 その 結果を踏ま えて、
・
開発が 必要 なリサ イク ル技術の明 確化
・
より進 んだ 循環型 社会 の実現を支 援する 技術の明確化
・
次世代 ビジ ネス対 象の 明確化
・
ライフ サイ クル管 理業 務への活用
を実現する ことに ある。
- 73 -
(3)調査 日程お よび訪問先 概要
表 2.1.4-1
日時
訪問先
調査日程 、訪問 先概要
立地
訪問先の概要
10/21(日)
成田発、米国着
10/22(月)
Amandi Service
(eco international)
①Vestal, NY
CRTリサイクルを得意とするE-Scrapリサイクル業
者のNY州リサイクル施設
10/23(火)
Waste Management
Recycle America
②Springfield,
MA
米国最大規模の廃棄物処理業者Waste
Management社のE-Scrapリサイクル部門の MA州
リサイクル施設
10/24(水)
E-Scrap 2007
③Atlanta, GA
米国最大規模のE-Scrap関係カンファレンス
併せてCA州E-Scrap担当者との面会も実施
NCER
④Davisville,
WV
West Virginia州も出資するリサイクル団地
その中の、リサイクルコンサルティング、E-Scrapリ
サイクル施設、プラスチック再生業者、プラスチック
リサイクル業者を訪問
10/25(木)
10/26(金)
・Envirocycle
・West Virginia University
・SDR Technology LCC
・Commercial Plastics Recycling
10/27(土)
西海岸に移動
10/28(日)
-
10/29(月) AM
SIMS Recycling Solutions
⑤Roseville,
CA
豪州に本社を置く世界最大規模のリサイクル業者
の米国拠点の一つ、元HP社のリサイクル拠点
Electronic Recyclers
⑥Fresno, CA
カリフォルニア州最大のE-Scrapリサイクル業者
Waste Management社のCA州提携業者でもある
PM
10/30(火)
米国発
10/31(水)
日本(成田)着
10/24~25 に開催 される米国 最大 規模の 廃電気電子 機器(以降 、E-Scrap)に関 す る
カンフ ァレ ンス「 E-Scrap2007」にあわせ、その前 後 11 日間で調査を実施し た。
本調 査 では リ サ イ ク ル 業 者 訪 問 、 カン フ ァレ ン ス 参 加 、 州 出 資 の リ サイ ク ル 団 地 の
訪問、 カリ フォル ニア 州 E-Scrap 担 当 者 面 会 な ど、 多 岐 に 渡 る 調 査 が 実施 で き た と 考
えてい る。
今回の 各調 査先の 特徴 は、世 界最 大規模のリ サイク ル業者である SIMS 社、米 国 最
大規模 の廃 棄物処 理業 者である Waste Management 社(全体のビジ ネス規 模 は SIMS
社の数 倍、ただし埋立 業部分 が大きいためリ サイク ル業の部分は SIMS 社より 小さい )、
カリフ ォル ニア州 最大 のリサイク ル業 者 Electronic Recyclers 社 、CRT を 得意と す る
リサイ クル業者 Amandi Service 社 な ど 、 米 国 らし い 大 規 模 業 者 を 一 通り 調 査 す る こ
とがで きた 。また、E-Scrap2007 への参加の 機会を 利用し、米国で 環境関 連の規 制 ・
行動が 最も 進んで いる とされるカ リフォ ルニア州 の E-Scrap 対応 責 任者と も直接 会 話
- 74 -
の機会を設 けるこ とが できたこと は大き な収穫であった 。
図 2.1.4-1 に本調 査の調査ル ートを示す 。
①
②
④
⑤
⑥
③
図 2.1.4-1
調査 ルー ト
(本地 図は http://www.freemap.jp/を利 用)
(4)各リ サイク ル業者調査 結果 詳細
本章で は、 各リサイク ル業者 訪問 、調査の結 果詳細 について説明す る。
①Amandi Service 社 (訪問 時、 eco International 社に 社名変 更)
<場所>
Amandi Services 米 東 部本社 (Vestal、NY)
<対応者>
Senior Vice President、Senior Vice President、Vice President マーケテ ィン グ&
セール ス担 当
- 75 -
<会社およ び処理 概要 >
・
米国内 でも 先駆けとし て 90 年代 初頭から行なって き た CRT のガラスリ サ イ
クル技 術を 最も得意と するリ サイクラ 。全 米 10 箇所の拠点を 有し 、全従業 員
300 人 、 年 間 売 上 20milUSD 程 度 。 た だ し フ ァ ミ リ ー 企 業 を 含 め る と
500millUSD(約 500 億円) のビ ジネス規模 を持つ 。
・
Vestal Office は人員: 70 人、内 53 人がライ ン作業に従事( 2 シフ ト 16 時間
稼動)。
・
TV、CRT モニタ、 DVD プレ イ ヤー、 サーバ、茶物家 電等 40 品 目を扱 う。
・
事業者 /消 費者系双方 から E-Scrap を受け 入れ、 製品再使用、部 品再使 用 、
解体・ リサ イクル、廃 棄資産 管理などを実施 。
・
処理受 入量 は概ね 1.2~1.5millbs/月(1.2millbs とすれ ば 600 トン /月に 相
当。20 日稼動と する と平均 30 トン/ 日に相当)。
・
大規模 な設 備は持たず 、ゴム 手袋+ゴーグル の T シ ャツ、ヘ ルメ ットな し の
作業者 がの んびりと手 解体し ているという印 象。
・
事業者 から の製品を多 く受け 入れ 、再 使用を 積極的 に取り入れ てい ること が 印
象的。
・
リサイ クル 材料は鉄を 除いて 国外処理となっ ており 、非鉄金属 はス ウェー デ ン、
プラス チッ クは中国を 中心と したアジアに出 荷、再 生を実施。
・
CRT ガラスの 出 荷先 につい ては、日 本 国内 と同様 に困って い る状 況。現 在 は
ブラジ ル、 インド、中 国、マ レーシア、シン ガポー ルなどに出荷 。
・
持参し た東 京エコリサ イクルの VTR に 対し ては、 強い 興味を 示し ていた。
<処理フロ ー概要 >
図 2.1.4-2 に処理 フローの概 要を 示す。
同社の 処理 フロー の特 徴は以 下の 通りである 。
・
人手に よる 解体中心で 、破砕 機は 利用してい ない。
・
装置と 言え るものは下 流リサ イク ラへ送る梱 包用と して、金属 、プ ラスチッ ク 、
基板な どの 簡単なプレ スを行 なう程度。
・
下流リ サイ クル仕向け先は下 記の通り。
-鉄材 スク ラップはお もに米 国、 カナダへ。
-非鉄 金属、基板( low grade)はスウ ェーデンの 精錬 会社へ 。
-プラ スチ ックは白色 のもの と黒 色のものを 分けて 梱包し、中 国、アジア へ 。
- 76 -
解体
金属
基板
分別
分別
プラ
CRT
梱包
分離
下流リサイク
ル業者へ
(主に中国)
精錬会社へ (ヨーロッパ)
図 2.1.4-2
ガラスメーカーへ
Amandi Service 社処理フロー概要
(同社 Web サイト情 報を加 工 )
<CRT 処理 フロー概要 >
図 2.1.4-3 に Amandi Service 社 が得意とす る CRT の 処理フ ロー概要を 示す 。なお 、
CRT の 処 理 エ リ ア の み は 写 真 撮 影 は 許 可 さ れ な か っ た が 、 訪 問 時 の 説 明 お よ び 同 社
Web サイ ト の情報 を併 せると以下 のよう になっていると 考える 。
・
ブラウン管ガラスの化学組成ごとに有鉛パネル、無鉛パネル、有鉛ファン
ネル、 モノ クロー ムの 4 種に分ける 。
・
有鉛/ 無鉛 は紫外 線を 当てるこ と でチェ ックする 。
・
コ ー テ ィ ン グ ( 蛍 光 体 と 思 わ れ る ) を 研 磨 で 除 去 ( ガ ラ ス ク リ ー ニ ン グ )。
・
カレッ ト化 したガ ラス は、米国内 別拠点を経由してアジ アに出 荷 。
・
アジア では 新し い CRT 製 造のた めの材 料と して利 用。
- 77 -
ガラス
鉄
サイズ
選別
非鉄
金属
鉛有無
選別
クリー
ニング
スクラップ
会社へ
精錬
会社へ
ガラス
製造へ
図 2.1.4-3
Amandi Service 社 CRT 処理フ ロー概 要
(同社 Web サイト情 報を加 工 )
②Waste Management Recycle America 社
<場所>
Waste Management Recycle America 社(Springfield、MA)
<対応 者>
Senior Account Manager、Plant Manager
<会社およ び処理 概要 >
・
Waste Management 社は売 上約:1 兆 6 千 億を誇 る米 国最大の廃 棄物処 理
会社。 グル ープ全 体で 従業員約 5 万人。
・
全米 48 州全土に展開 、埋立 地:約 290 箇所、ゴミ 発電 所:16 箇所を 保 有
し、全 米の ゴミ処 理の 約 40%を 占める。
- 78 -
・
Waste Management 社のロゴの入 ったゴ ミ箱は、今回の 訪米中 も全米 の 至
る所で 見る ことが でき た。
・
全 米 の 埋 立 地 に 「 回 収 用コ ン テ ナ 」 を 置 き 、 E-Scrap を 有 償 で 回 収 。 全 米
に 100 箇所 ある Recycle 工場に 持 ち込ん で処理を実施。 回収場 所には製 品
種別毎 の価 格が記 述さ れたボード がある 。
・
Waste Management Recycling America 社は、E-Scrap および紙 、空き 缶
などの リサ イクル 担当する部門で 、内 E-Scrap は全米 4 箇所のリ サイク ル
工場で 700 トン/ 月を処理。
・
視察し た施 設は 4 つの中では最小 規模の もので倉庫跡地 を利用 した約 3 千
㎡、従 業員は 8 名、処 理量:200 トン/ 月。
・
処理方 法に ついて は、 他の E-Scrap 処理施 設も同 様。
・
工場は 、手 解体中 心で 装置類がほ とんど ない。
<処理概要 >
Waste Management Recycling America 社 の E-Scrap の処理 概要は以下の通 り。
・
手解体 作業 を中心 とし て、いわゆ るセル 方式(解体台上 で 1 台を 一人 の 作
業者が最後まで解体)で、ハサミ、エアドライバー、ハンマ程度の一般的
な工具を用いた解体が行なわれている。取り外した部品は解体台近くの段
ボール箱( 1m×1m×1m程度)に 投げ入 れられる( ブラ ウン管は運 ばれる )。
ただし、 TV でも 10 種類以 上の 部品に解体。かな り徹 底した解 体 を行 っ て
いる。
・
サイズの大きな金属、プラスチックについて、唯一の機械といえるプレス
機で 50cm×50cm×1.5m 程度のサイズ にプ レスさ れ 、出荷さ れる(破 砕な
し)。
・
TV で平均 5 台/h・人と比較 的ゆ っくり した印象の 作業 。
・
軽装でゴーグルとヘルメットのみは訪問先全社に共通であり、日本のよう
な統一した 作業服 とは 異なる文化 。
・
回収物について、鉄は米国内だが、非鉄は欧州、プラスチックはアジアに
出荷す る構 図は他 のリ サイクル業 者と同 様。CRT はそ のまま米国 内二 次 処
理業者 に出 荷、最 終的には旭硝子 に流れ て いるという説 明あり 。
- 79 -
③NCER( National Center for Electronics Recycling)
○National Center for Electronics Recycling
<場所>
ウエス トバ ージニア( 以下、WV)州
<対応者>
WV 州機関:Executive Director
ウッド 郡開 発公社:President and CEO、Vice President
WV 州政府 開発局 :Project Manager
<NCER の 概要>
・
2005 年設立の NPO 研究機 関。
・
スタッフ 3 名で運営される小組織だが、米国各地で現在進められている
E-Scrap 関 連の 法 制化 や 試 行 プ ロ ジ ェ ク トに 関す る 官民 関 係 者 の コ ー デ ィ
ネーションやデータの収集分析と公開、リサイクルシステムにかかわる費
用負担 軽減 のため のプ ログラム開 発等の 活動を推進。
・
WV 州 政 府 の 支 援 プ ロ グ ラ ム の 基 で こ の地 に 開 設 し た 経 緯 が あ り 、 州 内 の
ローカ ル な E-Scrap リ サイクル産 業(主 にプラ系)の技 術開発 面を支援
・
E-Scrap 制 度に 関 して 、 偏 り の な い 分 析 評 価 を行 う こと を 主 旨 ( 同 様 の 機
関は米 国内 でも他 に無 い)とし、 中心 の Executive Director は、 米国電 子
工業会( EIA)の環 境 担当デ ィレクターから の転身 で、米国内でも っとも 各
州の E-Scrap リサ イクル法制度の 議論内 容を詳しく把握 し研究 してい る 人
物(E-Scrap2007 でのスピーチも好評だ った)。
図 2.1.4-4
National Center for Electronics Recycling の全景 とミーティン グ風景
- 80 -
<米国にお ける E-Scrap 関連規 制の概 要>
カリフ ォル ニア州 を始 めとし て、 ここ数年で 米国で は州ベースで E-Scrap のリ サ イ
ク ル 法 制 度 の 検 討 が 非 常 に 早 いス ピ ー ド で 進 ん で い る 。 カ リ フ ォル ニ ア 州 で は 消 費 者
が リ サ イ ク ル 料 金 を 負 担 す る 方式 だ が 、 他 の 州 で は 、 製 造 者 責 任を 基 本 と す る 多 様 な
方式と なる など、 各州 で内容が異 なり注 意が必要である 。
-
E-Scrap の リサイ クル法制定の流 れは、もと もと TV や PC を連邦 が規制 す
る埋立て禁 止物質 を含 み、
(州 に もよる が)他の家 電品 と異なり埋 め立て ら
れない こと から、 収集 ・処理と費 用負担に困った州で検 討され てきた。
-
E-Scrap の 埋立 て 禁止 令 が 発 効 し て い る の は 、カ リ フォ ル ニ ア 、 マ サ チ ュ
ーセッ ツ 、メリー ランド、メイ ンの 4 州で 、07~08 年にさら に 3 州が加わ
る。
-
E-Scrap リ サイ ク ル法 は 既 に カ リ フ ォ ル ニ ア 、メ イ ン、 メ リ ー ラ ン ド 、 ワ
シント ンの 4 州で施 行 されて いる。2007 年だけで 、さ らにミネソ タほか 5
州が新 たに リサイ クル 法の制定を 予定し 、こ れら 9 つの州で全米人 口の 32%
をカバーす る。08 年 、09 年にもいく つか の州が 法制 化を予 定し ている。
-
多くの場合 、リサ イク ル法の対象 は CRT を持つ TV や PC などで あり、 い
わゆる 白モ ノ家電 は対 象ではない 。
-
カ リフ ォ ル ニ ア の リサ イ クル 法 は 2005 年 に 施行 さ れ 、 現 在 の 対 象機 器 は
CRT、 LCD 機器と TV、プラズ マ TV、携帯 DVD プレイヤ ーで ある。 これ
らは消費者が購入時にリサイクル費用を州へ払う。州は使用済み機器を収
集してリサイクル業者にリサイクル費用を支払う。その際のリサイクル費
は 0.48$/lbs(うち 収 集分 0.28$、リサ イク ル分 0.20$)であ る。
-
カリフ ォル ニア州 での 収支状況は 下記で 、収支は大きく 乖離し ていない。
収入
-
支出
処理重量
FY2004-05
3100 万 ド ル
2005
3100 万 ド ル
6500 万 lbs( 約 32500 ト ン )
FY2005-06
7800 万 ド ル
2006
6000 万 ド ル
12500 万 lbs( 約 62500 ト ン )
FY2006-07
7900 万 ド ル
2007Q2 ま で
7200 万 lbs( 約 36000 ト ン )
カリフ ォル ニア以 外の 法制化また は検討 中の州では、TV や PC モ ニタが 主
な対象機器で、自治体が収集、州政府に登録されたリサイクル業者がメー
カとの契約のもとでリサイクルし、その費用はメーカが負担するという形
が主流である。製造者が既に消滅しているブランドもメーカが共同で費用
負担す るの が一般 的。
- 81 -
-
州によっては、販売シェアや回収シェアに応じてメーカがファンドを分担
する。回収ターゲットに不足した場合は課徴金を課すというものもある。
また、リサイクル対象の消費者には住民、コミュニティ、小事務所を含ん
だり含まなかったりバラエティがある。リサイクル業者へ要求される環境
レベル も各 州で異 なる 。焼却やエ ネルギ ー回収を禁止し ている 州もある。
<Executive Director の見解 >
・
各州のリサイクル法制定への取り組みは統一性がなく、情報共有や協力体
制の努力も見られない。まさにパッチワークの状態。同じような作業の繰
り返し も多 いこと から、全米でか なりの ム ダなコストを 発生さ せている。
・
2004 年のメイン 州に 続く法 制度 で、カリフ ォルニ ア型 ではなく生 産者 責 任
が主流となったのは、大手小売業者組織が、カリフォルニアのシステムに
大反発 して 活動し たこ と、 HP や Dell がリ サイクル推進 へのメ ーカに よ る
ファイ ナン ス構築 を支 持したこと が影響 。
・
2007 年 7 月からスタ ートし たミネソタ州の リサイ クル法は、収集 とリ サ イ
ク ル の 双 方 含 め た メ ー カ 負 担 が 規 定 さ れ る 初 め て の 法 。 対 象 は Video
Display Devices であるが、メー カは州 内一 般消費 者向 けに販売さ れた重 量
の 60%をリ サイク ルする義務を負 うとい うきわめて 厳し いもの 。
・
このような方式では、メーカが市場を気にして収集・リサイクルコストを
押し下げることになろう。また州がリサイクルの実態を把握しきれなくな
ることもある。今の時点では、今後の「製造者責任」という実態がどんな
形でどれだけの幅を持つものになっていくのか、ステイクホルダーの役割
がどの よう に変わ って 行くのか、 まだ明 確でない。
・
E-Scrap リ サイク ルに関し、 連邦 法(National Law)を 制定す る機運は 今
の と こ ろ か な り 弱 い 。 独 自 の 州 法 の 準 備 に 手 を こ ま ね い た と こ ろ は 、連 邦
法ができたときにそれに従えばよいと考えて問題を先延ばしにしていると
ころも多い。現実に困っているところ(埋立て禁止や収集リサイクル費用
が重荷になってきているところ)から州独自のリサイクル法策定に進んで
いる。
・
いずれ かの 時点で 連邦 法ができる と考え ている人は多い が、た ぶん それは 、
全米統一的に、安全な製造デザインの規定や、気候変動対策の観点が盛り
込まれると いった レベ ルのものに留まる だろう。
- 82 -
○Envirocycle 社
NCER 内に 設置された E-Scrap リ サイク ラで、実際には、 前述の Amandi Service
社の WV 拠 点とな っている 。同 社の Senior Vice President の案内を 受けた。処理方法
等は、同社 の方法と同 様。ただし CRT 処 理施設は設置し ておら ず、ブラウ ン管の 状 態
で NY 州 Vestal の施 設に送 り、 処理してい るとの説明。
○West Virginia University
NCER 訪問 にあわ せ、 West Virginia 大学を 訪問し、Parkersburg 校校長 、工 学 部
長らの歓迎 を受け 、我 々の訪問・ 調査目 的など の説明を 行なっ た。
我々の 訪問 は、翌 日の 地元紙 に掲 載された。
○SDR Technologies, LCC (SDR-T)社
同施設 近傍 のプラスチ ック再 生業 者、SDR Technologies, LCC 社を 訪問し 、同 社 の
親会社 であ る Star Plastics, Inc.社 Business Development Manager、Start Plastics,
Inc.社 Sales Manager、な ど 4 名に対応 頂いた。
同社 で は、 E-Scrap から解 体 した プラス チ ッ ク等 を 、以 下のよ う な 手段 で 選別 し、
再 生 プ ラ ス チ ッ ク と し て 出 荷 する 業 務 を 実 施し て い た ( 現 場 で の 写 真 撮 影 は 許 可 さ れ
なかっ た)。
-重液 利用 による比重 分離
-炎を 当て た際の 色、 煙、その匂 いから 選別
-蛍光 X 線 分析
○Commercial Plastics Recycling Inc.社
SDR Plastics 社 の 近 く の プ ラ ス チ ッ ク リ サ イ ク ル 業 者 、 Commercial Plastics
Recycling Inc.社を 訪 問し、 Account Representative に 対応頂 いた 。
同社 で は、 化 成 メ ー カ の プ ラ ス チ ック 製 造時 の 端 材 、 民 生 用 ペ ッ ト ボト ル 、 運 搬 用
トレー など の材料 リサ イクルを実 施して いた。
工場 や 市内 か ら 直 結 す る 鉄 道 で 原 料( = 端材 、 ペ ッ ト ボ ト ル 等 ) を 運 び 込 み 、 簡 単
な選別後に リペレ ット を実施する 作業工 程であった。
- 83 -
④SIMS Recycling Solution 社
<場所>
California 州 Roseville
<対応者>
President, 同 社 U.S. の 責 任 者 、 Plant Manager & Engineering Director 、
Operations Manager
<会社概要 >
-
SIMS 社は 世界最 大の 総合リサイ クル会 社(本社:豪州 )
世界に 148 拠点、売上 約 3450 億 円、総資産 約 2300 億円、取扱 量 960 万ト
ン/年 。
2007 年 3 月 30 日に 三井物 産(株)が約 20%の株式を取得し て筆 頭株主 に 。
今回、 三井 物産( 株) に同社訪問 の仲介 を依頼して実現 。
-
近年、 E-Scrap に着目、 2003 年からグ ローバルに ビジ ネスを 展開 開始 。
-
訪問先は、 HP 社の再生セン ター 内にあ る旧 Noranda 社施設を 買収し た も
の。他 に米 国内で はシ カゴ、アト ランタなどにリサイク ル拠点 を持つ 。
-
IT 機 器、TV、携帯電 話など を中心に手 解体 中心の リサ イクル を実 施 。
IT 機 器については、 今も HP 社 のもの が 60%を占め る。
-
従業員は 170 名、内 常勤は 62 名。
-
処理量:24,000 トン/年( キャパ シティ 的に はまだ 十分 )、面 積:約 19,000
㎡。
-
低価格 の( 復路 )空コンテナを使 った E-Scrap へのアジア(中 国 、インド 、
フィリ ピン 、シン ガポ ール)への 流出が 課題という認識 。
-
従業員の通用口では入退室(指紋)管理を全員が実施。高いセキュリティ
意識。
-
手解体ヤードの全景。リサイクルの順番待ちする製品や解体後の部品等も
棚にきちん と保管 。整 然とした様 子が印 象的であった。
<処理概要 >
-
SIMS Gr.として最先 端の設 備はオラン ダ Eindhoven のプラント 。ただ し
今回訪 問の プラン トも ほぼ類似の 考え方 。
-
最大の 特徴 は手解 体後 に、3 段階 の破砕 機と人手・機械 選別を組み 合わせ た
- 84 -
資源回 収。今回の訪問 先では 最も日本の 家電リサイ クル 施設の 方式 に 近い 。
-
IT 機 器の CPU、メモリは丁寧に 解体し 、ス ペックによ りリユ ース 、リサ イ
クルを 判断 、旧タ イプ の方が金含 有量が 多く、ビジネス 的には 有用。
-
選別・ 回収 物の出 荷先 は以下の通 り。
→ SIMS Metal 社
・Fe、Al、Cu
・モーター 、ケー ブル → SIMS Metal 社
→ 破 砕、 再選別 後ス ウェー デン Bolden 社等に
・残り の非 鉄金属
→ 小 規模 精錬業 者(ノランダ社 、エク ストラーダ 社 )
→ 小 型イ ンゴッ トに して銅 精錬 業者へ
-
・プラスチ ック
→ 中 国に輸出
・CRT ガラ ス(鉛 )
→ カ ナダ の鉛精 錬業 者
・他の ガラ ス
→ タ イ、 マレー シア
解体作 業台には CRT モニタ が置 かれて おり 、解体品、選別方法な どの作 業
指示が行なえるという説明あり。ただし、同じ製品を繰り返し解体するこ
とも多 く、 ほとん どの 作業者の画 面はス クリーンセーバ ー状態 。
First破砕機
Second破砕機
鉄
回収箱
投入
リフタ
プラ
回収箱
集塵機
3 Ste p破砕
システム
磁選機
Third破砕機
渦電流選別機
メイン破砕システム(金属系)
手
選
別
台
投入
アルミ
回収箱
図 2.1.4-5
SIMS Recycling Solution 社メイン( 金属 系)破 砕シ ステム フロ ー
手解体 後の 破砕選 別ラ インの 流れ を以下に示 す。
・
破砕機の 3 基直列配置
- 85 -
理由 1)破砕エネ ルギ ーによ る破砕片の 高温 化(=発熱による 発火 )の 防 止
理由 2)三 段階低 速破 砕によ る安 定的破 砕片 の確保 →手 作業選別の 負荷 低 減
日本で はあ まり見 かけ ないが、大 量処理に向くと考えら れる。
・
鉄・非 鉄については、日本と 同様 、吊下 げ式磁選機、渦 電流選別機 など で 機
械的に 選別 ・回収人手 による 手選別を併用し 、回収 物は 日本と同様 の品 質 を
確保。
風力選別機
金属
回収箱
比重選別機
投入
横型四軸破砕機
サイクロン
重プラ
回収箱
集塵機
サブ破砕システム(プラ系)
図 2.1.4-6
クローズ型
風選機
軽プラ
回収箱
SIMS Recycling Solution 社
サブ( プラスチック系 )破砕 システムフロー
プラス チッ ク専用の破 砕・選 別ラ インの概要 を以下 に示す。
・
一段の 破砕 機で破 砕
・
破砕物 の比 重特性 を利 用した選別 機を多 用
-吸引 され る軽いもの(粉塵 など)
-風の 力で 飛ばされる物( PP など)
-飛ば され ない物( ABS など)
に選別。
金属 含 有率 の 高 い 物 と プ ラ ス チ ッ ク含 有 率の 高 い 物 を 別 の ラ イ ン で 処理 す る こ と は 、
安全面 、選 別・回 収精 度向上面共に優位 。
SIMS Recycling Solution 社の特 徴的な 考え 方として以 下があ る。
・
圧倒的 な管 理シス テム
- 作業員 は一 人一人入退 出の際 に指紋認証を実 施
- 86 -
- 手解体 から Shipping までを 一元 管理
- IT システ ムを用 いた解体作業指 示
- 破砕に 適さ ない(特に 爆発要 因物)物の分別 ・回収 に神 経質
・
作業者 安全 への配 慮(例:機器メ ンテ中 )
- メン テ 作業 者 が該 当 機 器 の 電源 ス イ ッチの 所 持 。 複数 の メン テ 作業 者 が
必要な 機器 は、人数分 の電源 スイッチを保持 。
- 全作 業 者が メ ンテ 作 業 を 終 了す る ま で、 全 電 源 ス イッ チ が揃 わ ず 、 工 場
管理者 も電 源投入不可。
⑤Electronic Recyclers 社(ER 社)
<場所>
ER 社本社 (カリ フォルニア 州 Fresno)
<対応者>
Chaiman & CEO、COO、CMO, Co-founder、CCO, Co-founde、Plant Manager (工
場見学 時の み)、Recycling Specialist
<会社概要 >
-
カリフ ォル ニア州 で最 大の E-Scrap リサイ クル業 者。
受入量 は年 間 100m lbs(約 5 万トン)。カ リフォ ルニ ア州がリサ イクル 法
の下で 集め る E-Scrap(TV、CRT、VTR な ど)の 42%のシェ ア。
-
事業所 はカ リフォ ルニ ア Fresno とマサ チューセッツ Gardner(2007 年 4
月 稼 動 ) の 2 箇 所 。 2008 年 に ロ サ ン ゼ ル ス 近 郊 に も 買 収 に よ り 増 設 予 定 。
-
Waste Management 社 との契 約関係にあり、カリフ ォルニアで は exclusive
に E-Scrap を扱う。
-
Fresno 事 業所は従業員 300 名。 カリフ ォル ニア全 域か ら 1 日 6-7 m lbs の
廃棄電 気製 品が集 まる 。このう ち E-Scrap 処理加工量は 1 日 200k lbs(約
100 トン)。
<工場見学での説 明>
-
建屋 72,000ft 2 (770m 2 )、敷 地は 4.5 エーカ ー( 2.6 万 m 2 )。
-
1 日に 40 台のト レーラ(ER 社 所有)が 入 り、6-7 m lbs/d の E-Scrap を集
荷。事 業者 と民間 (住 民)からの 排出品 があり、後者 が 75%。民間か ら は
- 87 -
大 手小 売 業 Best-Buy 社と 連 携 し た コレ ク シ ョン イ ベ ン トにト ラ ック を 送
り、廃 棄品 を回収 。
-
集荷廃 棄品の 75%が「 Video Display Device」。
「Video Display Device」と
は 、カ リ フ ォ ル ニ ア 州 リ サ イ ク ル 法 での 定 義 で 、 CRT、 LCD、 プ ラ ズ マ パ
ネ ルな ど の 動 画 表 示パ ネ ルを 有 す る 装 置( TV、 PC、 VTR など ) がこ れ に
当 た る 。( 販 売 時 に 消 費 者 か ら リ サ イ ク ル 料 金 を 徴 収 す る 対 象 。) 残 り の
「 E-Scrap」 と して は 、PC、 PDA、VCR、 フ ァッ ク ス 機 、 携帯 電 話、 コ ピ
ー機、MP3 プレイヤ ー、モ ニタ 、ステレオ等があ る。
-
廃棄 TV や PC は人手 で解体。コ ンベヤ作業 ではな く、一人当たり 一個の テ
ーブル でド ライバ 程度 の工具を使 い解体 し、大まか に分 解され たパ ーツを 、
仕分け され たダン ボー ルボックス(約 1m 角 )へ放 り込 む。Amandi Service
社や WM 社に比べる とかな り忙しく作 業を してい る。1 人当たり 一日の 解
体作業 量は 4000lbs(約 2 トン)。2 シフ ト 16 時間体制。各 シフ ト 120 人
程度で 、う ち 40 人が 解体作 業者である 。受 入量が 増加 してお り、 近々24h
体制に なる 予定と のこ と。
-
工場内 の様 子は 90 台のカメラで モニタ ーされている 。これは受入 品のフ ロ
ー監視によ るトレ ーサ ビリティ確 保や労 働安全上の監視 が目的 だが、当然 、
作業効率の監視にもなる。効率の良い作業者にはボーナスが加算されると
のこと 。そ のため か、 特に解体作 業者の 動きはせわしい 。
-
TV や PC の解体後の 筐体は 、( 破砕せず) 黒色と 白色 のプラスチ ック に 分
け、それぞ れ梱包 されて出荷 。木製の TV 筐 体だけ は green waste と称し、
チップ 化さ れて最 終処 分場へ埋め 立てら れる。
-
CRT 処理は、 ER 社 の自慢 技術 。小型の破 砕機ラ インがあり、ブ ラウ ン 管
ごと投 入し 破砕。処理 量は 300-500 台/h。下流側 のコンベヤ 上で 、破砕 さ
れて出 てき た 1-2 インチ角 程度 のガラス片 を、数 人の 人手により パネ ル ガ
ラスか ファ ンネル ガラ スかを色で 目視し 選別。
-
破砕さ れ分 別され たガ ラスはガラ スリサ イクル大手の Dlubak 社のア リ ゾ
ナ工場へ送られ、ここで化学的に鉛が除去される。その後ガラスはレンガ
材料と して 使い、 商業 ビルやスポ ーツス タジアム等に活 用。
-
PC から 取 り出さ れた HDD は、破砕保障 のた め小型 クラ ッシャで潰 し、個 々
の写真を残 す。潰した後のアルミ はベル ギーの Umicore 社(世界 的規 模 の
非鉄精 錬会 社)へ 出荷。
- 88 -
-
HDD を含 め、E-Scrap 受入品は すべて 、排出元・受入 日時・ロッ ト等が 記
載されたバーコードラベルで管理される。顧客はこの記録を全てトレース
可能。
-
基板の 処理 では、高機 能な CPU やメモリを 注意し て取り外し 、ま だ使 え る
ものであれば中古品市場へ出荷。使えないものはしばらく保管し、日々の
金の相 場を 見て高 く売 れるときに 貴金属 屑として売却 。新型 の CPU は小 型
軽量化 し金 の含有 量が 少なくなっ てうま みが減っている とのこ と。
-
プラス チッ クは中 国、 ベトナム、 シンガ ポール向けに出 荷。
<リサイク ル事業 見通しについて (同 社 Chaiman & CEO 談)>
―
世界の E-Scrap 市場は 2004 年には$7.2billion であっ たが、今後 毎年平 均
8.8%の成長 が期待され 、2009 年に は$11billion(約 1.1 兆円)規 模と予 想 。
それに 加え て、米 国の PC E-Scrap リサイク ル市場は 5 年間で$1.3billion、
10 年間で$17billion(約 1.7 兆円)に膨らむ と見て いる。
-
EPA の 推定によれば、 2005 年に米国で廃棄 された 電子機器は 5billion lbs
(約 250 万 トン) だが、そのうちリサイ クルされた のは 10%に過ぎ ない。
-
全米の 家庭 では今 でも 5 億台の廃 TV が処 理され ず死 蔵されてい る。米 国
では 2009 年にテ レビ の地デジ移 行が完 了するので、 2007 年から旧式 TV
の廃棄が進 む。8000 万台の廃 TV が出てく ると見 ている。
-
ブッシ ュ政権は E-Scrap のリサ イクル を重要テーマと は考え てこなかっ た 。
強力な連邦法がないのもそのためだが、次期の大統領は別の立場を取ると
予測。 今 後 8 年以内に、この 分野の 事業は大き く変 わる。NY タイム ズや
Wall Street Journal などのナショ ナルメ ディアは世界に かかわ る深刻 な 問
題 と し て 取 り 上 げ て い る 。 E-Scrap 問 題 は Political ド リ ブ ン で は な く 、
Media ドリ ブンで ある。
⑥E-Scrap 2007(The North American Electronics Recycling Conference 2007)
<Conference の 概要>
E-Scrap-2007(イースクラップ 2007 北米 電子機器 リサ イクル ・カ ンファ レン ス )
は 、 北 米 最 大 規 模 の 廃 電 気 電 子機 器 リ サ イ ク ル に 関 す る カ ン フ ァレ ン ス で あ る 。 米 国
の E-Scrap News 社が 主催し て米国ジョ ージ ア州ア トラ ンタ で 2007 年 10 月 24 日 ・
- 89 -
25 日に開 催され た。米国と カナダを中心に 、電気電子 機器メ ーカと廃電気電 子機 器 の
資 源 リ サ イ ク ル 関 連 業 者 、 及 び政 府 関 係 者 等 が 一 同 に 集 い 、 廃 電 気 電 子 機 器 の 資 源 リ
サイク ルに 関する セッ ションと展 示会を 行なうことを目 的とし ている。
今回(2007 年)のカ ンファレン スには 、米 国とカナダ を中心 に計 23 ヶ国から 900
名 を 超 え る 参 加 者 が あ り 、 日 本を 始 め と す る ア ジ ア や ヨ ー ロ ッ パの 国 か ら も か な り 参
加していた 。また、出展数 は 80 社を超 えており、やは り米国とカ ナダの資源 リサイ ク
ル 関 連 業 者 が 多 く を 占 め て い た。 今 回 の 参 加 者 数 及 び 出 展 数 は い ず れ も 前 年 を 大 き く
上回っ てい る。
今回 の カン フ ァ レ ン ス の ス ポ ン サ ーは 、 米国 の 大 手 電 気 電 子 機 器 メ ー カ の デ ル コ ン
ピ ュ ー タ 社 や ヒ ュ ー レ ッ ト パ ッカ ー ド 社 、 そ れ に 米 国 と カ ナ ダ の資 源 リ サ イ ク ル 関 連
業 者 が 中 心 で あ っ た 。 ま た 、 セッ シ ョ ン の ス ピ ー カ は 、 電 気 電 子機 器 関 連 の 大 手 メ ー
カ、大手 小 売業 、各種 研究機関 、州の関 係者、大 学、NPO 等、多彩 な顔ぶれで あった 。
なお 、主 催者・E-Scrap News 社は今回のよ うなカ ンファレンスを 主催す ると共 に 、
22 年前か ら E-Scrap News 等の資源リ サイ クルに 関す る定期 刊行 物を発行し ており 所
在地は 米国 ポート ラン ド(OR) にある。
- 90 -
Conference風景
発表内容の一部
図 2.1.4-7
発表内容の一部(中国の例)
E-Scrap2007 の Conference 風景
<セッショ ンの概 要>
今回の セッ ションは 2 日間に 亘り 、本セッシ ョンが 4 テーマ、並行 セッシ ョンが 6
テーマ 、計 10 テーマ が行なわれ た。本 セッ ションでは次のテ ーマ について報 告と議 論
が行な われ た。
・
廃電気 電子 機器の 資源 リサイクルに関す る産業界の動向
・
世界各 地域 におけ る資 源リサイク ルの現 状
・
米国と ヨー ロッパ にお ける環境関 連の法 規制の動き
・
合併・ 買収 ・新た な投 資による業 界の変 化
並行 セ ッシ ョ ン は 、 本 セ ッ シ ョ ン に関 連 する 内 容 や 別 の 視 点 か ら み た 内 容 に つ い て
報告と 議論 が行な われ た。各セッ ション の報告内容のポ イント は次の通りであ る。
- 91 -
○本セ ッシ ョン 1.
電 子機器 の資 源リサイク ルに関 する産業界の動 向
電気 電 子機 器 の 調 達 や 利 用 方 法 な ど製 品 のラ イ フ サ イ ク ル全 体 に つ い て 、 環 境 負 荷
を 軽 減 す る 方 向 に 動 い て い る おり 、 資 源 リ サ イ ク ル 業 界 に と っ ては 今 後 ビ ジ ネ ス チ ャ
ンスが 増加 してく るも のと予想さ れる。
サプ ラ イチ ェ ー ン や リ バ ー ス ・ ロ ジス テ ィク スの 視 点 か ら 、 資 源 の 再 利 用 や 再 資 源
化 な ど を 目 指 し た 活 動 や サ ー ビス が 電 気 電 子 機 器 メ ー カ や 資 源 リサ イ ク ル 業 界 に 強 く
求 め ら れ る 。 小 売 業 者 と 電 気 電子 機 器 メ ー カ ( サ プ ラ イ ヤ ー ) との 協 力 に よ り 、 環 境
に 優 し い コ ン ピ ュ ー タ ( グ リ ーン コ ン ピ ュ ー タ ) の 導 入 な ど 、 製品 の ラ イ フ サ イ ク ル
に影響を及 ぼすた めの 方策につい ての事 例が紹介された 。
○本セ ッシ ョン 2.
世 界各地 域に おける資源リサイ クルの現状
現代 の 電子 機 器 は グ ロ ー バ ル な 市 場で 製 造や 販 売 が な さ れ 、 最 後 に 廃 棄 や リ サ イ ク
ル が 行 な わ れ て い る 。 そ の た めに 、 世 界 の あ ら ゆ る 場 所 で 使 用 済み の 電 子 機 器 の 処 理
に大き な影 響を及ぼし ている。
イン ド では 、 世 界 各 地 の 先 進 諸 国 から 輸 入さ れ る 廃 電 子 機 器 ス ク ラ ップ の 量 が 急 増
し て お り 、 今 後 も 続 く も の と 予想 さ れ る 。 生 活 に 身 近 な 場 所 で そ の リ サ イ ク ル 処 理 が
行 な わ れ て い る た め に 、 健 康 被害 な ど 多 く の 問 題 が 発 生 し て い る。 ラ テ ン ア メ リ カ 諸
国 も 国 内 外 か ら 発 生 す る 廃 電 子機 器 ス ク ラ ッ プ の 処 理 は 同 様 で あ る が 、 問 題 を 軽 減 す
るため のイ ンフラ を整 えようと努 力して いる。
グリ ー ンピ ー ス ・ イ ン タ ー ナ シ ョ ナル は 、先 進 諸 国 か ら の 廃 電 子 機 器 ス ク ラ ッ プ の
輸 出 が 開 発 途 上 国 に 大 き な 問 題を 与 え て い る 現 状 を 懸 念 し て お り、 自 国 の 廃 棄 物 に 責
任を負 うよ う強く求め ている。
○本セ ッシ ョン 3.
米 国とヨ ーロ ッパにおけ る環境 関連の法規制の 動き
国 立 エ レ ク ト ロ ニ ク ス リ サ イ ク ル セ ン タ ー ( National Center for Electronics
Recycling: NCER) は 、 最 近 制 定 され た 米 国 の 電 子 機 器 リサ イ クル 法 の要 点 を 纏 め た
が、そ の内 容は州 毎に それぞれ異 なって いる。
これ ま でに 電 子 機 器 リ サ イ ク ル 法 が制 定 され た州 は 、 カ リ フ ォ ル ニ ア 、 コ ネ チ カ ッ
ト 、 メ イ ン 、 メ リ ー ラ ン ド 、 ミネ ソ タ 、 ノ ー ス カ ロ ラ イ ナ 、 オ レ ゴ ン 、 テ キ サ ス 、 ワ
シント ンの 各州で ある 。
ヨーロ ッパ の WEEE 指令に 関し て詳細な報 告がな された。そして 、 WEEE 指 令 の
実施に 伴う 環境的 、経 済的、社会 的な影 響について考察 しその 重要性を指摘し た。
- 92 -
○本セ ッシ ョン 4.
合 併・買 収・ 新たな投資による 業界の変化
米国 や カナ ダ に お け る 電 子 機 器 リ サイ ク ル業 界 は 、 合 併 や 買 収 を 通 して 業 界 の 統 合
に向け た動 きが今 後ま すます加速 される 。
電子 機 器リ サ イ ク ル 法 が 実 際 に 運 用さ れ ると 、 大 手 電 子 機 器 メ ー カ は 大 手 電 子 機 器
リ サ イ ク ル 業 者 を 必 要 と な っ てく る 。 従 っ て 、 電 子 機 器 リ サ イ クル 業 者 は 新 た な 投 資
により 事業 規模を 拡大 していかな ければ ならない。
○並行セッ ショ ン A.
カナダ の資源リサイク ルの状 況
アル バ ータ 州 は 、 電 子 機 器 リ サ イ クル 法 が成 立 し 既 に 実 施 し て い る 。 し か し 、 他 の
ブ リ テ ィ ッ シ ュ ・ コ ロ ン ビ ア 州、 ノ バ ス コ シ ア 州 、 お よ び サ ス カチ ュ ワ ン 州 で は 、 各
州 が 連 携 を 取 り 合 っ て 共 通 の 電子 機 器リ サ イ ク ル 法 の 成 立 を 目 指し て い る 。ま た 、 環
境費用 につ いては 全州 で統一する方向で 調整が行なわれ ている 。
○並行セッ ショ ン B.
3 つの重要な要素 :立 法・回 収・処理
今年 は かつ て な い ほ ど 多 く の 電 子 機器 リ サイ ク ル 法 案 が 各 州 議 会 に 提出 さ れ て い る 。
また、E-Scrap News 社が家庭か らの電 子機器の回収イ ベント を全米各地で 1100 件 以
上行な って 再利用 資源 の効率化等 の模索 を行なっている 。
さらに 、米 国初の 全州 的な E-Scrap 回収プ ログラ ムにおいて、電 子機器 リサイ ク ル
業 者 に 対 し て 支 払 わ れ る リ サ イク ル 費 用 の 妥 当 性 に つ い て 調 査 を行 な っ た 。 カ リ フ ォ
ルニア 州を 例にと ると 、回 収業 者 は回収 する廃電子機 器 1 ポンドに つき 20 セ ントの 払
い戻し を受 け、更にそ の廃電 子機器を解 体処 分する ため に追加 分と して 28 セ ント を 受
け 取 る 。 こ れ ら の 事 例 は 、 将 来的 な 回 収 シ ス テ ム の 設 計 や リ サ イク ル 費 用 の 適 正 に つ
いて検 討す る際の 重要な基準とし ている 。
○並行セッ ショ ン C.
連邦環 境保護庁主導の プログ ラム概要
米 国 環 境 保 護 庁( EPA) は 、 ク リ ー ン で 環 境 負 荷の 少 な い 廃 電 子 機 器 処 理 事 業 の 運
営 を 目 的 と し た ガ イ ド ラ イ ン の作 成 を 積 極 的 に 行 っ て い る 。 こ のガ イ ド ラ イ ン は 、 全
国的な 業界 基準に なる 可 能性が高 くその 実地テストを行 うこと にしている。ま た、EPA
は、回収さ れるべ き廃電子機器が どのく らいあるか を見 積もる ため の基準 を確 立 した 。
バー ゼ ル条 約 ( 有 害 廃 棄 物 の 越 境 移動 及 びそ の処 分 の 規 制 ) で 規 定 し て い る 有 害 廃
棄物の 内容 が、EPA の 主張と 相違してい るの で今後 の調整が必 要で ある。
- 93 -
○並行セッ ショ ン D.
今日の 処理 における大 きな課 題
新し い タイ プ の 電 子 機 器 ( フ ラ ッ トパ ネ ル、 液 晶 デ ィ ス プ レ イ 、 プ ラ ズ マ デ ィ ス プ
レ イ 等 ) が 大 量 に 市 場 に 出 回 って い る が 、 そ れ が 廃 電 子 機 器 と し て 出 て く る よ う に な
る と 新 た な リ サ イ ク ル の 問 題 が発 生 し て く る 。 そ の 問 題 を解 決 す る た め に い ろ い ろ な
研 究 が 行 な わ れ て い る 。 ま た 、廃 電 子 機 器 か ら で る プ ラ ス チ ッ クの リ サ イ ク ル に つ い
て は こ れ ま で も 課 題 で あ っ た が、 異 種 類 の レ ジ ン の 混 合 や 添 加 物に つ い て は 今 後 も 同
様の課 題が残る。
ある 大 手リ サ イ ク ル 業 者 の 廃 電 子 機器 の 再利 用( 中 古 市 場 ) に つ い ての 事 例 が 報 告
さ れ た 。 回 収 し た 廃 電 子 機 器 のな か で 再 利 用 で き そ う な も の を 掃除 ・ 修 理 ・ 改 造 ・ テ
ス ト し た 後 に 中 古 市 場 に 出 し て再 販 す る も の で あ る 。 廃 電 子 機 器を 資 産 と し て 価 値 を
積極的 に高 めてい くひ とつの方法 を示し た。
○並行セッ ショ ン E.
重要か つ有用な最新情 報
米 国 グ リ ー ン 調 達 基 準 ( Electronic Products Environmental Assessment Tool:
EPEAT)の 内容につい て説明 があ った。そし て、こ の 1 年間で 550 を超え る製 品( ラ
ップト ッ プ PC、 デスクトップ PC、モ ニタ等) が EPEAT の要求 事項を満た した。
典型 的 な廃 電 子 機 器 リ サ イ ク ル 工 場で 取 扱わ れ て い る 機 材 ( フ ォ ー クリ フ ト 車 、 コ
ン ベ ヤ 、 シ ュ レ ッ ダ ー 等 ) の 作業 安 全 に 関 す る 規 則 の 説 明 が あ った 。 こ れ は 、 廃 電 子
機器の リサ イクル 産業 に特有な作 業上の 安全情報である 。
○並行セッ ショ ン F.
リサイ クル 法の成立
新た に 電子 機 器 リ サ イ ク ル 法 が 成 立し た ミネ ソ タ州 、 ノ ー ス カ ロ ラ イ ナ 州 、 オ レ ゴ
ン 州 、 ワ シ ン ト ン 州 の 代 表 者 が、 成 立 ま で の 過 程 の 概 要 を 報 告 した 。 各 州 の 法 律 の 内
容はいずれ も独自 なも のとなって いる。
<Exhibition の概要 >
Exhibition 会場には、米国だ けで なく、カナダ、欧 州などから処理 業者や 収集業 者 、
リサイ クル サービ ス業 者など約 70 社がブースにより出 展を実 施。
米国内 から は IT 機器対象の回収 ・処理 受託ビジネスの 展示が 目立った。ま た 2009
年の TV 放送デジ タル 化を睨 んでか、CRT 処理に関 する 展示が 多か ったこ とも 印 象的 。
「 米 国 の 精 錬 業 は 衰 退 し て い る」 と い う 情 報 を 証 明 す る よ う に 、精 錬 に つ い て は カ ナ
ダ、欧 州の 業者が 目立 つ状況が確 認でき た。
- 94 -
米国 内 のプ ラ ス チ ッ ク 再 生 業 者 な どが 展 示を 行 な う と 並 行 し て 、 回 収 プ ラ ス チ ッ ク
の ( ア ジ ア 等 へ の ) 輸 出 を 専 門に 行 な う 「 リ サ イ ク ル 仲 介 商 社 」が 盛 ん に 動 い て い る
ことが 確認 できた 。
展示会会場
図 2.1.4-8
SIMS社(10/29訪問先)ブース
E-Scrap2007 Exhibition の風景
⑦California 州 E-Scrap 担当者 との面 会
<対応者>
Senior Integrated Waste Management Specialist
California Integrated Waste Management Board Special Waste/E-Waste(CA 州
環境 省 E-Scrap 責任 者)
<面会目的 >
米国内 で最 も環境、中でもリサイ クルに 積極的なカ リフ ォルニ ア州 の E-Scrap 担 当
者と DfR や IT 技術 の必要 性に ついて直接 意見交 換を行なう。
<面会概要 >
-
欧州の E-Scrap 関連規 則である WEEE 指 令との整合性は 特に意 識してい な
い。
-
現在 CA 州でメ ーカ 責任に よる リサイクル の対象 とし ているディ スプ レ イ
はテストケ ース。 この 結果を踏ま え対象 拡大予定。
-
CRT ガラ スが国 内で はリサ イク ルされずに 海外に 輸出 されている 件に つ い
ては「 適切 なリサ イク ル」の範疇 との認 識。
- 95 -
-
FPD リ サイ クルは 課題 であり 、メ ーカに対し て積極 的な 検討を要求 。
-
リサイ クル 性設計(Design for Recycling)に ついては 、米国は 日本、欧 州
に対して遅れているという認識。ただし今後は「リユース」を含めた資源
回収が 不可 欠で 、DfR を「 リユ ー ス」を含 め て検討 するスキームを 米国 EPA
(環境省) と共に立ち 上げ済。
-
リサイ クル 現場で の IT サ ポート は将来 課題。
-
調査団であった根本氏が工場長代理を務める日本の家電リサイクルプラン
ト「東 京エ コリサ イク ル」 の VTR に高 い関 心。
図 2.1.4-9
California 州 E-Scrap 担当者 との会 合
(東京エコ リサイ ク ル VTR 視聴風 景)
- 96 -
2.2
FPD の資源循環 (リサ イクル)技術の 現状・ 問題点と基礎検 討
FPD の 市場は、2000 年頃から急 速に拡 大し ている。こ のため FPD の廃棄 量は現段
階ではまだ 少ない が、初期製 品が 寿命を 迎え る 2010 年 頃から 急激 に増大する ことが 予
想される。
また FPD は現在 の家 電リサ イクル法で は対 象とな って いない が、
「 経済産業省 産 業
構 造 審 議 会 環 境 部 会 廃 棄 物 ・ リサ イ ク ル 小 委 員 会 電 気 ・ 電 子 機 器リ サ イ ク ル ワ ー キ ン
グ グ ル ー プ 中 央 環 境 審 議 会 廃 棄物 ・ リ サ イ ク ル 部 会 家 電 リ サ イ クル 制 度 評 価 検 討 小 委
員 会 合 同 会 合 」 等 に お い て 次 回改 正 時 に 対 象 製 品 と し て 組 み 込 むこ と が 検 討 さ れ て お
り、CRT に 変わっ て今後規制 対象 製品の 中心 的な製 品と なることは 確実で ある。
このよ うに FPD のリサ イクル はまだ本格化し ていな いが 、リサイ ク ル処理 技術に つ
いては 各方 面で検 討が 開始されて いる 。本節 では主 に欧 州の LCD リサイクル プロジ ェ
クトで あ る ReLCD と日本 の電子情報技術 産業協 会( JEITA)の レポートを 参考に 、
FPD の リサ イクル 技術 の検討 事例 を紹介する 。な お FPD には、LCD(Liquid Crystal
Display)、PDP( Plasma Display Panel)の 他、OLED、LED、SED など 多 くの方 式
がある が、 今回は 市場 規模が大き い LCD と PDP を対象 とした。
図 2.2-1
世界の FPD 需要
(韓国 Displaybank 社、「TV 中 長期市 場展 望レポート」より )
2.2.1
LCD のリサ イクルについ て
(1)LCD の構造
LCD は カ ラ ー フ ィ ル タ を 備 え た 液 晶 パ ネ ル の 背 面 か ら 光 を 照 射 す る こ と に よ り 画
像を表 示す る表示シス テムである 。LCD の構 造は 図 2.2.1-1 に示すように 、LCD の モ
- 97 -
ジュー ル部 と制御 部と により構成 される 。LCD の特徴で あるモ ジュ ール部 は、LCD パ
ネ ル を 中 心 と し て 、 周 辺 ま た は背 面 に ド ラ イ バ ー チ ッ プ や 光 源 と な る バ ッ ク ラ イ ト な
どが取 り付 けられ てい る。
図 2.2.1-2 は LCD の 材料構 成の例を示す。LCD は 銅 やアル ミな どの金属の 他、プ ラ
ス チ ッ ク 、 ガ ラ ス な ど 多 く の 材料 で 構 成 さ れ て い る こ と が 特 徴 であ る 。 バ ッ ク ラ イ ト
のランプに は水銀 (Hg)が含ま れており、 適正に 処理する必要が ある。
図 2.2.1-1
LCD の構造( ReLCD の資 料
図 2.2.1-2
1 ) より)
LCD の 材料構成
(Environmental Practices 資料
2 ) より )
(2)LCD のリサイク ル処理
LCD の リ サ イ ク ル に お い て 考 慮 す べ き こ と は バ ッ ク ラ イ ト に 含 ま れ る 水 銀 を 適 正
- 98 -
処理す るこ とであ り、欧州の WEEE 指令で も面積が 10cm 2 以上の LCD の 選択的 処理
が義務付け られて いる 。このた め リサイ クル 処理はま ず LCD を 解体し 、水 銀 を含む ラ
ンプを 取り 外す必 要が ある。
図 2.2.1-3 は LCD モ ニタを 分解 した例 を示 している。 赤枠は バックライトで ある 。
バック ライ トは 4mg 程度の水銀 を含ん でいる。
また表 2.2.1-1 は FPD の解体 時間を CRT と 比較し たものであ る。FPD は CRT より
解体時 間が 大きい とい う結果にな ってい る。
図 2.2.1-3
LCD の 解体例( Gaiker 資料
表 2.2.1-1
解体時 間( 分)
3 ) より)
解体時間
CRT
LCD
PDP
9.2
12.8
13.4
(Environmental Practices 社 の資料
2 ) よ り)
解体し たパ ネルに つい ては以 下の 処理を行う ことが 検討されている 。
・
全面と 背面 ガラスを分 離する。
・
加熱し た真 空チャ ンバ ーにより 、 液晶を 蒸発させる。
・
触媒酸 化に より、 ポリ マーを分解 する。
・
コーテ ィン グを研 磨除 去する。
・
発生し た粉 末をガ ラス 化し 、タイ ルなど として利用する 。
またパ ネル 以外に つい ては以 下の 処理を行う ことが 検討されている (図 2.2.1-4)。
・
ランプ を取 り外し た部 分を破砕機 に投入 し 、粗く破砕す る。
- 99 -
・
破砕屑 から フィル ムプ ラスチックを吸引 する。
・
破 砕屑を 渦 電流 選別機に 投入し 、 アル ミとプ ラ スチッ ク/ガ ラス成 分を 選 別
する。
・
破砕屑 を比 重選別 機に 投入し、ガ ラスと プラスチックを 選別す る。
図 2.2.1-4
LCD の リサイ クルフロー(Gaiker の資料
- 100 -
3 ) より )
(3)LCD リサイ クル におけ る問 題点と対応 策
LCD リ サイクル の問 題点お よび 対応策 とし ては以下の 項目が 検討 されている 。
表 2.2.1-2
LCD リサイクルの 問題点 と対応策
問題点
対応策
・ 場所を 探す のが難しい 。
バックライ ト
・ 取り付け場 所の表 示
・ 作業が 難し い位置にあ る。 ・ 解体の容易 化
・ 薄く壊 れや すい。
材料
構造
・ 標準化 され ていない。
・ 材料の統一 、標準 化
・ 接着剤 で汚 染されてい る。 ・ プラスチッ クの材 質表示
・ 過度に 頑丈 である。
・ ネジ点数の 削減
・ 留め具 が小さい上 、統 一さ
・ ネジ規格の 統一
れてい ない 。ま た手の 届か
・ 留め具の標 準化
ないところにあり作業が
・ 留め具の切 断の容 易化
困難。
・ 設計が 統一 されていな い。
(解体 性に差があ る)
・ 製品によってガラスの種
パネル
類が異 なる 。
・ ガラスが LCD 用とし てリ
-
サイク ルで きない。
・ 製品によって組成が異な
液晶
る。
-
・ 使用量 が少ない。
・ ガラス に付 着しやすい 。
他
・ 小型モニタはリサイクル
費用を 回収 できない。
(Environmental Practice 社
2 ) およ び
-
ReLCD 4 ) の資 料より )
(4)バッ クライ トの取り外 し方 法の検 討
上述の よう に手作業に よるバ ック ライトの取 り外し は安全上の問題 があり 、LCD リ
サイク ルの 課題 の 1 つとなっ ている。バッ ク ライトの取り外し方法 につい て は ReLCD
- 101 -
が 手 作 業 に よ る 方 法 と 機 械 を 用い た 切 断 方 法 を 比 較 し て お り 、 投資 額 と 処 理 能 力 の 観
点から評価すると 、手 解体が一番 よいと いう結果になっ ている 。
処理
時間
手解体
水ジェ ット 切断
レーザ切断
丸のこ
1.5 分
2.7 分
1分
0.9 分
デメリット
―
断面
―
図 2.2.1-4
2.2.2
投資(130kEUR) 投資(340kEUR)
耐久性 、排 気処理
メンテナン ス
振動
排気処 理
バッ クラ イトの 取り 外し方 法( ReLCD の 資料
5 ) より )
PDP のリサ イクルに つい て
PDP は、ガ ラス基 板上のセル に封 入され たガスを発 光さ せるこ とに より画 像を 表 示
す るシ ス テ ムで あ る。 PDP の リ サイ ク ル 処 理 は 、電 子 情報 技 術産 業 協会( JEITA) 6)
が以下に示 す検討を行 っているが 、現在 のところ実用的 な解は 得られていない 。
(1)PDP パネルとシ ャーシ の分離方法
PDP パ ネルは熱伝 導シ ートに より 金属性 のシ ャーシ に貼 り付け られ ている。こ れ を
分離す る方 法とし て、 リサイクル 業者で は以下の方法が 採用さ れている。
・
ダイヤ モン ドコー ティ ングワイヤ で熱伝 導シートを切断 する。
・
パネル とシ ャーシ の間にクサビを 挿入し 、イソプロピル アルコ ール( IPA)
を滴下する 。
その 他 にも パ ネ ル を 加 熱 す る方 法 など が 検討 さ れ て い る が 、 低 コ ス トで 多 量 処 理 を
行える方法 は確立され ていない。
(2)封着 材、リ ブ、機能膜 の除 去、回 収方 法
封 着 材 や リ ブ 、 機 能 膜 は 、 酸 化 鉛 ( PbO) を 多 く 含 む 低 融 点 ガ ラ ス ( フ リ ッ ト ) で
あ る 。 こ れ ら を 除 去 す る 方 法 とし て サ ン ド ブ ラ ス トに よ る 物 理 的除 去 方 法 と 、 酸 処 理
- 102 -
に よ る 化 学 的 除 去 方 法 が 検 討 され て い る 。 し か し 前 者 は 処 理 コ ス ト が 大 き く 、 後 者 は
機 能 膜 の 成 分 に 応 じ た 酸 を 開 発す る 必 要 が あ る が 、 現 在 の 機 能 膜を 使 い 続 け る か わ か
らない ため 処理プ ロセ スを決定で きない 、という問題が ある。
(3)パネ ルガラ スのリサイ クル
パネル ガラ スの再 生に ついて 、以 下の 3 つの方法が 検討 されて いる 。
・
パネルガラスへのリサイクル:パネルガラスの成分はメーカ、種別ごとに
異なるため 分離す る必 要があり 、 実現が 困難な見込みで ある。
・
カスケードリサイクル:建築用型板ガラスに混入することが可能である。
しかし 混合 比率 は 1%が上限と予 測され ており 、回収ガ ラスを消費 できな い
ため実 用的 でない 。
・
機能膜から有価物を回収:亜鉛精錬で使用される珪石の代替として溶鉱炉
に投入する ことが でき る。ガラ スの分別も不 要で、大量 利用も可能であ る 。
(4)フリ ット( 封着 材、誘 電体 、リブ)のリサイ クル
フリ ッ トと は パ ネ ル ガ ラ ス の 封 着 材な ど に使 わ れ る 低 融 点 の ガ ラ ス で あ る 。 フ リ ッ
ト は 多 量 の 酸 化 鉛 ( PbO) と 基 盤 ガ ラ ス に な い添 加 物 を 含 む た め 、 亜 鉛 精 錬 な ど で 鉛
を回収し 、 無害化 処理 することが 必要で ある。
2.2.3
各地域のリサイ クルに おける FPD の扱い
以上に 示し たよう に 、社会シ ステ ムとし て の FPD リ サイ クルを実現 するに は、まだ
技 術 的 な 課 題 が 残 っ て い る の が現 状 で あ る 。 一 方 で 日 本 を 始 め と し た 世 界 各 国 に お い
て、FPD を 対象に した リサイ クル 規制の整備 が進め られており、議 論の動 向を把 握 し
ておく 必要 がある。例 えば 欧州で は 2008 年 に WEEE 指令の 見直 しが予定さ れてい る
が、そ の事 前検討 にお いて LCD のリサ イクルについて 以下の 見解が示されて いる。
(1) LCD の市 場は現 在急 速に拡 大し ている が廃 棄数は 今の ところ少な く、 リ サ
イクル はま だ本格 化し ていない。
(2) LCD を安全 かつ大量 にリ サイク ルできるシ ステ ムはま だ確 立され てい な い。
その理 由と して、 以下 の問題点が ある。
・
リサイクル処理においてパネルとバックライトを手作業で分離するこ
- 103 -
とが必要で ある。バッ クライ トのランプ は水 銀を含 んで いるが 壊れ 易 く、
リサイクル 処理に おいて健康 や安 全上の問題がある 。
・
手作業によ る分離 の他に 、パネ ルを直接破砕 する 、あ る いはパ ネル ご と
埋め立てる 、と いう 方 法が考 えられる 。しか し前者 は水 銀を大 気に 放 出
する、後者 は材料 の価値を損 失す る、と いう問題が ある 。
(3) リ サ イ ク ル 配 慮 設 計 に つ い て は 、 バ ッ ク ラ イ ト の 解 体 時 間 ( コ ス ト ) を 削
減 で き た と し て も 水 銀 の 放 出 が 配 慮さ れ て い な け れ ば 意 味 が な い 、 と さ れ
ている。
2.2.4
FPD リサイ クルに関 する現状の まと め
・
FPD を大 量に効 率よ くリサ イク ルする技術の検討 が工 業会などで 進め ら れ
ている が、 現在実 用的 な技術は存 在しな い。
・
FPD のリ サイク ルは 今後数 年の うちに 本格 化する と思 われ、早急 な対 策 が
必要で ある 。
参考文 献
1)Bay Zoltan, Foundation for Applied Research, “Liquid Crystal Display Re-Use
and Recycling”, ReLCD ワーク ショップ 資料 (2006/3)
2 ) Betty Patton, Environemntal Practices, “ A Preliminary Assessment of
Flat-Panel Recycling”, The E-scrap 2007 Conference(2007/10)
3)Gaiker, “Liquid Crystal Display Re-Use and Recycling “ReLCD”” , ReLCD
ワーク ショ ップ資 料( 2006/3)
4)Active Disassembly Research Ltd., ReLCD ワー ク ショッ プ資 料(2006/3)
5)Mag. Stefan Steiner, “Possible ways for the separation of backlight lamps”,
ReLCD ワ ークシ ョップ資料 (2006/3)
6)液晶テ レビ及 び PDP テレ ビのリサイク ルに関 する調査研究 ,社団法 人 電子情 報 技
術産業 協会 (平 成 16 年 3 月)
- 104 -
第3章
E-Scrap の分 解・破砕実 験
日本の 家電 リサイ クル 法(特定家 庭用機 器再商品化法)は 2001 年 4 月より施 行( 1998
年 6 月制定)さ れ、現在、冷蔵庫(冷 凍庫 含 む)、洗濯 機、エア コ ン、テレ ビ(ブ ラウ
ン管式) の 4 品目が対 象とな っている。
本法律 は製 造者責 任の 一環と して 、廃 棄さ れ た製品 の回収・リサイ クルを 義務付 け 、
資源循 環を 明示的 に意 図した法律 である 。今後は、家 電 4 品だけ でなく、液 晶テ レ ビ
や プ ラ ズ マ デ イ ス プ レ イ テ レ ビな ど の 薄 型 テ レ ビ は 日 本 に 留 ま ら ず 、 全 世 界 に 供 給 ・
使 用 さ れ る 時 代 に な っ て お り 、グ ロ ー バ ル な 視 点 か ら も 製 品 の リサ イ ク ル を 考 え て 行
く必要性が 高まっ てい る。
次年度以降、現在の家電リサイクル法が改正され、現行 4 品に加え、薄型テレビ
(Flat-Panel Display:FPD)と 衣類乾 燥機の 2 品目が 追加さ れる 見込みとな り、益 々
リサイ クル(資源循 環)を 重視 した製品設計・製造へ の 転換期 を迎 えようとし ている 。
全世界 的に 見れば、EU(European Union)に ついて は WEEE(Waste Electrical and
Electronic Equipment)指令 の下 、約 100 品 目もの 電子・電気廃棄 物が資 源循環 対 象
になっていることを考えると、品目数では日本は遅れていることになる。日本では
2009 年度 を目指 し て FPD な どの品 目追加が審議さ れてお り、これら の分 解性な ど を
検討し てお くこと は重 要である。
本報告 では 家庭で 使用される 現行の 4 品以 外で世界 的に も流通 して いる小 型家 電 品
に 限 定 し 、 将 来 の 資 源 循 環 と いう 観 点 か ら リ サ イ ク ル 性 を 評 価 する 。 こ れ ら の グ ロ ー
バ ル 製 品 を 対 象 に 現 有 す る リ サイ ク ル プ ロ セ ス で 生 じ る 問 題 点 など を 整 理 し 、 今 後 の
製品設 計に 反映す べく 課題の抽出 と提言 を行う。
3.1
目的
家電 リ サイ ク ル 法 適 用 外 の 家 電 製 品等 を 対象 に 廃 棄 時 に お け る リ サ イ ク ル 手 法 を 検
証 す る 。 幾 つ か の 現 有 す る リ サイ ク ル 手 法 を 想 定 し て 模 擬 実 験 を実 施 し 、 今 後 の 製 品
設計( 低環 境負荷 ・易 リサイクル 設計)に反映すべく課 題の抽 出と提言を行う 。
3.2
3.2.1
実験 におけ る前提条件
対象品目
リサイ クル 実験に おい ては、3 種 類のリ サイ クル手 法( プロセス) を用い 、次の 10
- 105 -
製品(品 目 )を対象 としたリサイ クル(分 解・破砕等)実験を実施 するも のとする。
(白
抜き数 字は 製品№ を示 す。)①~ ⑧に着 目したのは、現在、一般廃 棄物として 廃棄さ れ
ている 比率 が高い ため である。
①暖房 器具 、② ガステ ーブル、③掃除機、④ AV 機器、⑤音響 装置、⑥電子 レンジ、
⑦扇風 機、 ⑧炊飯器、 ⑨プラ ズマ TV(PDP)
(但し 、⑨ の FPD に ついて は分解に要 する ネジ本 数の 比較の みと する。)
尚、現 行の 家電リ サイ クル法 の 4 品目に ついては今 回の 実験に は含 まず参 考比 較 用
と し 、 部 分 的 に 既 存 デ ー タ ( 出典 、 財 団 法 人 家 電 製 品 協 会 ( 以 下、 家 製 協 ) を 用 い る
ことと する 。
3.2.2
リサイクル手法 の定義
本実験 で用 いるリ サイ クル手 法は 表 3.2.2-1 のよう に定 義し、各実 験で得 たデー タ を
比較す る。
表 3.2.2-1
リサイク ル手法 の定義
定義概要
A 手法
B 手法
C 手法
※1
対象台数
手 分 解 で 出 来 る 範 囲 の 完 全 分 解 →分 解 品 毎 に
R 率※1 評価
簡 易 分 解 ※ 2 後 、複 合 品 を 破 砕・選 別 →分 解 ・
回収品毎に R 率評価
製品原形のまま破砕・選別しその後手選別→
回収品毎に R 率評価
備
考
製 品 №① ~ ⑧ 80 台
製 品 №① ~ ⑧ 40 台
製 品 №① ~ ⑧ 16 台
破砕試験
は実験施
設で実施
R 率とはリサイクル率を指す。
リ サ イ ク ル 率 = 有 価 回 収 物 ÷分 解 ・ 破 砕 前 重 量 を 重 量 比 ( % )
※2
簡易分解とはガラス、基板、電池、灯油、ごみ、電球などの破砕不適合部品のみを取外す
状態を指す。
- 106 -
3.2.3
取得データ
本実験 で取 得・評 価す るデー タを 表 3.2.3-1 に示す。
表 3.2.3-1
項
3.2.4
取得 デー タ
目
備
(1)
分 解 点 数 ・ 分 解 時 間 ( 設 備での 処 理 時 間 含 む )
(2)
A 手 法 に よ る 製 品 毎 の R 率、B、C 手 法の R 率
(3)
各 手 法 に よ る 設 備 電 力 量( 消費 エ ネ ル ギ ー )
(4)
埋立量(ダスト量)
考
実験施設に計測依頼
対象品目の内訳 、及び スケジュー ル
(1)分解 及び、 破砕 実験対 象物の台数内訳 を表 3.2.4-1 に示す。
表 3.2.4-1
対象製品 の内訳
A手法
B手法
C手法
(全分解)
(簡易分解+破砕)
(分解なし)
実施日:
11/20~12/10
ハロゲンヒータ
1
2
3
4
5
6
7
8
暖房 ガスファンヒータ
器具 石油ファンヒータ
電気ストーブ
AV ビデオデッキ
機器 DVDプレイヤ
ラジカセ
音響
CDプレイヤ
装置
オーディオコンポ
ガスレンジ
掃除機
電子レンジ
炊飯器
扇風機
計
4台
3台
2台
1台
8台
2台
4台
3台
準備期間:12/10まで
2台
10台
10台
10台
3台
1台
1台
1台
3台
2台
2台
2台
1台
5台
5台
1台
1台
1台
1台
5台
1台
2台
2台
2台
1台
10台
10台
10台
10台
10台
5台
5台
5台
5台
5台
2台
2台
2台
2台
2台
80台
40台
16台
注:実 験用 の使用 済み 家電品を入 手する 時間と台数に制 約があ った。
- 107 -
(2)全体 実験ス ケジ ュール を表 3.2.4-2 に示す。
表 3.2.4-2
全体実験 スケジ ュール
2007年(平成19年)
11月
12月
1月
2008年(平成20年)
2月
1.試験対象品集め
(暖房器、ガス台、掃除機、ビ
デオ、レンジ、音響、炊飯器、
扇風機)
収集&
簡易分解
(
2.A手法(全分解試験)
試験項目:リサイクル率、埋立
量、分解点数・時間
試
験
(破砕試験)
5.報告書
3.3.1
簡易分解とは
ガラス、基板、電
池、灯油、ゴミ、ラン
プ類を取外した状
態を指す。
▼12/14破砕実験(at.破砕実験施設)
4.試験結果まとめ
3.3
備考
全分解とは
手工具で分解・
分別できる範囲
を指す。
全分解
試験
)
日
機
連 3.B,C手法
暖房器、ガス台、掃除機、ビデオ、レンジ、音響、炊飯器、扇風機の8品種
3月
▼12/16~27破砕ダスト成分分析(to.分析会社)
手分別
分析
データ
整理
報告書
作成
▼08/1/15提出
分解 ・破砕 実験の内容
A 手 法(全 分解)の実験内 容
(1)
一般工具を 使用し て分解でき る範 囲を全て分 解し、 リサ イクル率の 評価を 行う 。
(2)
同 時に分 解 点 数、 分 解時 間を記 録 し 、対 象 製品 毎のリ サ イクル 時 間( 分解に 要 す
る時間)を 計測す る。
(3)
電力量は分 解作業 に用いる電 動工 具(CO 2 削減量を求め る際の設備電力) の 使 用
電力量とす る。
- 108 -
ス ピ ー カ を 例 に し た 場 合( 左 写 真 が“ 簡 易 分 解 ”、右 写 真 が“ 全 分 解 ”と 定 義 )
薄 型 TV の 台 座 の み を 例 に し た 場 合( 左 写 真 が“ 簡 易 分 解 ”、右 写 真 が“ 全 分 解 ”と 定 義 )
図 3.3.1-1
3.3.2
簡易 分解及び全 分解 の例
B 手 法(簡 易分 解→破 砕・ 選別) の実 験内容
(1)簡易 分解の 内容
①
一般工 具を 使用し て破 砕不適合部 品(表 3.3.2-1)を回 収し、リ サ イクル 率
を評価する 。リサ イク ル率は次式で定義 した。
リサイ クル 率=有 価回 収物÷分解 ・破砕 前重量を重 量比 (%)
(但し 、「有価」の判 断は経 済情勢にもよる ため、 現時点のも のを 指す。)
②
同時に分解点数、分解時間を記録し、対象製品毎のリサイクル時間を計測
する。
③
電 力 量 は 分 解 作 業に 用 い る 電 動 工 具 ( CO 2 削 減量 を 求 め る 際 の 設 備 電 力 )
の使用電力 量とす る。
- 109 -
表 3.3.2-1
部
①ガラス
②基板
③電池
破砕不適 合部品
品
④灯油
名
⑤ごみ
⑥電球類
⑦その他部品
(2)破砕 試験の 内容
①
破砕・選別 工程につい ては、図 3.3.2-1 のよ うな模擬ラ インを 構成し、簡 易
分解後 の対 象製品 を定 格量(1 ト ン/h 換算 )にて投入 する。
②
各 ラ イ ン か ら選別・回 収 した 破 砕 片 に つ いて 各 々 の 品 位( 手 分 別 )を 確 認 ・
評価を した 上で 、表 3.3.2-1 の事 前除去 品( 破砕不 適合部品 )と 併せて 、リ
サイク ル率 を求め る。
③
破砕機投入開始から最終設備の払出しが終わるまでの破砕・選別時間を計
測する。
④
破砕・選別工程における設備使用時の電力量(計測電流値から対象設備電
圧を乗じたもの)を算定する。本計測は、実験設備で行う関係から、一貫
ラインで計測したデータはなく、設備単体毎の合計値(時間、電力量)と
する。
⑤
破砕( 集塵 )ダス トに ついては 未 回収有 価物の含有量を 調査す る 。
コンベヤ
破砕機
集塵機
磁力選別機
渦電流選別機
鉄
非鉄
風力選別機
その他
(重 量 物 )
プラ
:移 動
ダスト
図 3.3.2-1
3.3.3
:回 収
破砕 試験 用模擬 ライ ン(構 成図 )
C 手 法(製 品原 形のまま破 砕・選 別→ 手選別)の 実験内 容
(1)破砕 試験の 内容
①
破砕・選 別工程につい ては図 3.3.3-1 のよう な模擬 ラインを構 成し 、原 形 の
ままの 対象 製品を 定格量( 1 トン /h 換算) にて投 入す る。
②
各 ラ イ ン か ら 選 別 ・ 回 収 し た 破 砕 片 に つ い て は 、 各 々 の 品 位 ( 手 分 別) を
- 110 -
確認・ 評価 をした 上で 、リサイク ル率を 求める。
③
破砕機投入開始から最終設備の払出しが終わるまでの破砕・選別時間を計
測する。
④
破砕・選別工程における設備使用時の電力量(計測電流値から対象設備電
圧を乗じたもの)を算定する。本計測は、実験設備で行う関係から、一貫
ラインで計測したデータはなく、設備単体毎の合計値(時間、電力量)と
する。
⑤
破砕( 集塵 )ダス トに ついては 未 回収有 価物の含有量を 調査す る 。
コンベヤ
破砕機
磁力選別機
渦電流選別機
鉄
非鉄
集塵機
風力選別機
プラ
:移 動
ダスト
図 3.3.3-1
その他 品
手選別
プラ
:回 収
ガラス
銅線
破砕 試験 用模擬 ライ ン(構 成図 )
(2)手選 別(最 終工 程)の 内容
①
風力選別機の重量物選別側から回収する物(その他品)を手作業により選
別・回 収し 、リサ イク ル率の評価 を行う 。
②
3.4
3.4.1
リサイ クル に要す る時 間は本工程も含め 、全体的に評価 する。
総合 評価の 方法
各手法における リサイ クル率評価
A 手 法では 手作業に よる全 分解よ り回収し た 各々 の部品 、素材を 東 京エ コの出 荷ル
ー トに当 て はめ た場合 を 想定し、 リサ イクル 率 を算定 す る。 B 手法 で は簡易 分解で 回
収 し た 部 品 、 又 は 素 材 の 他 、 破砕 後 の 回 収 物 も 併 せ 、 東 京 エ コ の出 荷 ル ー ト に 当 て は
めた場 合を 想定し 、リ サイクル率 を算定 する。最後の C 手 法 に つ い て も破 砕 後 の 回 収
素材か らリ サイク ル率 を算定する 。
- 111 -
3.4.2
各手法における 粉塵ダ ストの有害 物含 有量評 価
B 手法、及 び C 手 法 に 用 い る 破 砕 実 験時 の 破 砕 粉 塵 を集 塵 機か ら 回 収し、 ここ で 定
めた特 定成 分(表 3.4.2-1)の成 分 分析を 行い 、未回収 有 害物な どの 含有量を把 握す る 。
表 3.4.2-1
特定 成分表
元 素名
① Au
3.4.3
② Pd
③ In
④ Ag
⑤ Cu
CO 2 発生量抑制 評価
小型 家 電品 な ど 、 家 電 品 の 主 な 構 成素 材 であ る 鉄 、 非 鉄 金 属 ( 銅 、 アル ミ ニウ ム )、
プ ラ ス チ ッ ク 、 ガ ラ ス を 対 象 に原 料 毎 に 原 石 ( 原 油 ) の 採 掘 か ら原 料 調 達 ( 家 電 品 に
組み込 まれ る手前 の状 態)までの 工程におけ る CO 2(二 酸化炭素)の排出量を 把握し 、
リサイ クル 工程で 生産される原料 との CO 2 排 出量を 比較する。
比較す る際 に用い る概 念図に つい て、プラス チック を例に図 3.4.3-1 に示す。
<新 規 原 料 の場 合 >
原油採掘
0.079㎏CO2/㎏
海上輸送
石 油 化 学 コンビナート
石油精製
0.048㎏ CO2/㎏
(重 合 →合 成 樹 脂 製 造 )
0.181㎏CO2/㎏
1.38㎏CO2/㎏…(イ)
新規樹脂
ペレット
成
型
1.071㎏CO2/㎏
出 典 )財 団 法 人 プラスチック処 理 促 進 協 会 「石 油 化 学 製 品 のLCIデータ調 査 報 告 書 」1999年
<リサイクル原 料 の場 合 >
人 手 による
選別
樹脂粉砕品
生産
再生樹脂
ペレット
成
型
リサイクル過 程 で排 出 されるCO2/㎏…(ロ)
図 3.4.3-1
CO 2 排出量比較の概 念図
ここで 使用する CO 2 排出量につい ては、 新規原料の場合 は一般 に公開(文 献な ど )
されて い る CO 2 排出 原 単位を 用い て計算(図 3.4.3-1(イ ))し 、リ サイクル過程 の CO 2
排出原 単位 につい ては 、リサイク ル施設で使用する電力 量から 電力使用時の CO 2 排出
原単位 を用 い CO 2 排出 量( 図 3.4.3-1(ロ))を求め、各 々、原 料毎に比較 する 。
- 112 -
3.4.4
作業時間と人数 の評価
A~C 手 法 におい て計測した作業 時間か ら時間あたり 1 トン(1 ト ン/h) を処理し
た場合の 総 作業時 間と 人員 を求め る。
A 手 法につ いては、 手解体 工程に おける作 業時間 、及び必要人員 を 割り 出し、 小型
家電(8 製 品一括 )に ついて、ま とめる 。
B 手 法につ いては、 手解体 工程に おける作 業時間 、及び 必要人員 と 破砕 ・選別 工程
に お け る 作 業 時 間 、 及 び 必 要 人員 ( 設 備 運 転 に 関 す る 管 理 者 は 含ま ず ) を 割 り 出 し 、
小型家 電( 8 製品一括) について 、まと める。
C 手 法につ いては破 砕・選 別工程 における 作 業時 間、及 び必要人 員 (設 備運転 に関
する管 理者 は含ま ず) を割り出し 、小型 家電( 8 製品一 括)に ついて、ま とめ る。
なお、 本章 3.4.1~3.4.4 については、取得 データ を基に算出し、 各々の 評価項 目 毎
に優位性( 順位付 け) を求めるこ ととす る。
3.5
3.5.1
実験 結果
各手法によるリ サイク ル率について
小型家 電品 を対象とし た場合 、表 3.5.1-1 に示す よう にリサ イク ル率は A 手法→B
手法→ C 手 法の順 で手解体重 視の 解体・ 選別方式を 多用 した方 が高 くなる 。
A 手法(92%)のリサ イクル 率は C 手法(75%)に比べ て約 17% 向上し ている。一
括破砕 ・選 別方式の C 手法で は 、 破 砕 機 の 特 性 にも 左 右さ れ る が 、 元 々複 合 部 材 で 構
成 さ れ た 家 電 品 を 原 形 の ま ま 破砕 し て も 複 合 部 品 が 完 全 に 分 離 (剥 離 ) で き な い こ と
から、破砕 工程後 段の 機械選 別工 程にお いて は、例えば 鉄に同 伴す るプラスチ ック や 、
プラス チッ クに混 じる 非鉄金属な どが存 在する。このた め、有価 で 売却で きる部品( 材
料)は 金属 、プラ スチ ック類 の市 場値に 影響を受けるた め、実 験時(2008 年 1 月時点 )
での評 価で あり、 将来 、この数値 より低 くなる場合もあ る。
完全手 解体 の A 方式 では、こ れら 複合部 材を構成す る接 合部分 やネ ジの位 置な ど を
人 間 の 目 で 確 か め な が ら 工 具 を用 い 分 解 ・ 選 別 す る こ と で 、 最 も高 い リ サ イ ク ル 率 を
実現で きる ことが でき る。
- 113 -
表 3.5.1-1
リサ イク ル率ま とめ表(参 考値)
小型家電
分類
製品名
平均重量
回収品目
鉄・ステンレス
雑鉄・ビス類
プラスチック(再生)
プラスチック(焼却)
コード・線材
銅
アルミ
ミックスメタル
基板
モーター
トランス
コンデンサ
ガラス
電池
焼却廃棄物
(ゴム、吸音材等)
埋立廃棄物
(シュレッダーダスト等)
電熱管、蛍光管
マイクロ発振器
スピーカ
その他
(雲母、真鍮、ヒューズ、電球等)
ガステーブ
暖房器具
ル
6.4㎏/台
7.0㎏/台
掃除機
4.5㎏/台
ビデオデッ 電子レン
音響機器 炊飯器
キ
ジ
4.8㎏/台
11.7㎏/台
7.4㎏/台
2.6㎏/台
扇風機
2.9㎏/台
A手法
B手法
C手法
20.0㎏
15.9㎏
31.5㎏
4.0㎏
5.9㎏
4.0㎏
6.1㎏
0.5㎏
0.7㎏
11.4㎏
1.3㎏
0.1㎏
1.3㎏
0.1㎏
1.0㎏
左記8品
目
0.7㎏
0.1㎏
2.8㎏
0.2㎏
2.8㎏
3.1㎏
3.1㎏
4.0㎏
0.1㎏
4.0㎏
0.1㎏
0.8㎏
0.8㎏
0.1㎏
0.1㎏
1.7㎏
1.7㎏
0.0㎏
1.9㎏
0.0㎏
0.1㎏
0.6㎏
0.9㎏
0.9㎏
0.2㎏
0.1㎏
47.2㎏/8種類1セット
41.9㎏/8種類1セット
回収重量
92.3%
91.5%
リサイクル率
※青字下線が有価物(現時点で東京エコが判断したもの)
※ リ サ イ ク ル 率 = 有 価 回 収 物 ÷分 解 ・ 破 砕 前 重 量 を 重 量 比 ( % )
45.9㎏/8種類1セット
75.0%
如実 に 現れ た の は 埋 立 廃 棄 物 ( シ ュレ ッ ダー ダ ス ト ) で あ る 。 東 京 エコ の 出 荷 基 準
点 で有価 か 逆有 価かを 判 定し、 リ サイ クル率 を 算定し て いる ため、 A の手 解 体手 法 で
は破砕行為 が無い 分、 ダスト発生 割合な どで優位となる 。
一方、同 じ有価物でも 、A、B 手法ではモー ター(異 な る素材の複合部品)をその ま
ま の状態 で 出荷 できた が 、C 手 法で は モータ ー も破砕 し、 機 械選別 で 鉄、や 銅、 ア ル
ミをある程 度回収 して いるため、 見かけ 上の金属回収量 が高く なっている。
- 114 -
100.0%
80.0%
A手法
B手法
C手法
60.0%
40.0%
<参 考 データ>
20.0%
R率
0.0%
3.5.2
テレビ 冷蔵庫 洗濯機
77%
79%
71%
出 典 )財 団 法 人 家 電 製 品 協 会
「平 成 18 年 度 版 家 電 リサイクル年 次 報 告 書 」
小型家電(8品)
図 3.5.1-1
エアコン
86%
各 手法 別 リ サ イ ク ル 率 グ ラ フ
各手法における 粉塵ダ ストの有害 物含 有量に ついて
本実 験 では 各 家 電 品 に存 在 す る 高 価値 金 属 に つ い て 、 破 砕 時 に お け る浮 遊 ・ 飛 散 状
況を把 握す るため 、破 砕と同 時に発塵する微 量の粉 塵を回収・分析 した。表 3.5.2-1 の
分析結 果に 示すよ うに 粉塵ダスト には有 価物として微量 ではあ る が Ag や Cu が確 認 さ
れた。
ただし 、こ の小型家電 の破砕 試験 は少量サン プルで 実施したこと、 及び B、C 手 法
と も に 同 日 ・ 同 破 砕 機 で 実 験 を実 施 し た た め 、 時 間 的 に 前 の 実 験の 系 内 ( 破 砕 機 内 部
や集塵機経 路など )残 留物を 検出 してし まっ ている可能 性があ る。今回は実験 の日 程 、
及 び 費 用 に 制 限 が あ り 十 分 な 分析 が 出 来 な か っ た た め 、 結 果 の 信頼 性 は 今 後 検 証 し て
いく必 要が ある。
なお、Pb などの 環境 影響化学物 質は測 定し なかったが、過 去の 家 電製品 にはプ リ ン
ト基板など に Pb(は んだと して)が含ま れている ため 、原 形の まま破砕す る C 手法 で
は、鉛 を含 む粉塵 が破 砕機内で発 生する ポテンシアルが あると 予想される。
- 115 -
表 3.5.2-1
各手法に よる粉 塵ダストの 分析 結果( 参考値)
小型家 電
分析
元素
A 手法
B 手法
C 手法
Au
―
10ppm 未満
10ppm 未満
ICP 発 光分光分析法
Pd
―
10ppm 未満
10ppm 未満
ICP 発 光分光分析法
In
―
10ppm 未満
10ppm 未満
ICP 発 光分光分析法
Ag
―
11ppm
19ppm
ICP 発 光分光分析法
Cu
―
3600ppm
2600ppm
ICP 発 光分光分析法
備
考
※ 同 破 砕 機 、及 び 同 集 塵 機( 濾 布 交 換 な し )で 実 験 し た た め 、系 内 に 前 の 滞 留
物 が 残 留 し た 可 能 性 が 高 い た め 、本 デ ー タ は 参 考 値 扱 い で あ り 、信 頼 性 を 増 す
ためには多量のサンプルを用いた実験が必要である。
3.5.3
CO 2 発生量抑制 につい て
(1)家電 品の主 構成 素材の CO 2 原単位
各々の 手法 で取得した データを基 に今回定め た CO 2 原単 位を用 い、CO 2 抑制効 果 を
求める。表 3.5.3-1 は家電製 品の 主な構 成素 材であ る鉄、非鉄 金属(銅、ア ルミニウム)、
プ ラ ス チ ッ ク 、 ガ ラ ス を 対 象 に原 料 毎 に 原 石 ( 原 油 ) の 採 掘 か ら原 料 調 達 ( 家 電 品 に
組み込 まれ る手前 の状 態)までの 工程に おける CO 2 の排 出量を把握 し、リ サイクル工
程で同 等の 素材に 再生 されるまで の工程 で排出される CO 2 排出原単 位を比 較したもの
である。
CO 2 の排出 原単位 は 各 業界 や 団体 などか ら 公 開さ れ てい る情報 ( 文 献な ど )を 基に
素材毎 にま とめた もの である。表 3.5.3-1 に 示すように 素材の みに ついての参 考値は 得
られた が、 本稿で は素 材回収の効 果だけ について評価す る。
- 116 -
表 3.5.3-1
素材
鉄(粗鉄)
銅
アルミ
プラ(PP)
ガラス
区分 CO2原単位
素材 毎 の CO 2 排出 原 単位( 東京エコ独自調 査)
単位
出典
新規
1.043 ㎏-CO2/㎏
リサイクル
0.314 ㎏-CO2/㎏
新規
リサイクル
2.103 ㎏-CO2/㎏
0.592 ㎏-CO2/㎏
新規
9.218 ㎏-CO2/㎏
リサイクル
0.309 ㎏-CO2/㎏
新規
1.379 ㎏-CO2/㎏
5)
リサイクル
新規
リサイクル
0.047 ㎏-CO2/㎏
0.741 ㎏-CO2/㎏
0.440 ㎏-CO2/㎏
7)
対象範囲
資源採掘
海外製造
海外輸送
輸送燃料
不明
不明
不明
不明
―
―
―
―
○銅鉱石掘削
○
○
不明
―
―
1)
2),3)
2)
4)
国内製造
○高炉(焼結
鉱→銑鉄)
○製鋼(銑鉄
→粗鋼
電炉(スクラップ
→粗鋼)
○電機銅製造
―
―
○電気銅製造
○ボーキサイト
○燃料・輸送
○アルミナ製造
輸送
は資源採掘ま
対象外
○ボーキサイト ○アルミニウム電
○アルミナ・アルミニ
で含む
解精錬
ウム輸送
○展伸用スク
―
―
―
―
ラップ溶解
○石油精製
○石油採掘
―
○
不明
○化学コンビ
ナート
―
―
―
―
成形プラ粉砕
6)
国内輸送
不明
不明
―
―
対象外
―
不明
―
不明
不明
不明
不明
不明
不明
不明
不明
不明
不明
不明
不明
※ モ ー タ ー や 基 板 な ど の 部 品 を 回 収 す る 場 合 の CO 2 排 出 原 単 位 が 不 明 の 為 、 一 部 未 考 慮 。
出典文献
1) 新 エ ネ ル ギ ー ・ 産 業 技 術 総 合 開 発 機 構 、 (社 )産 業 環 境 管 理 協 会 、 エ ネ ル ギ ー 使 用 合 理 化 手
法 国 際 調 査 、 NEDO-GET-9528、 1996
2) 日 本 鉱 業 協 会 、 非 鉄 金 属 地 金 の LCI デ ー タ の 概 要 、 JICA-LCA デ ー タ ベ ー ス 2007 年 度 3
版
3) 新 エ ネ ル ギ ー ・ 産 業 技 術 総 合 開 発 機 構 、 (社 )産 業 環 境 管 理 協 会 、 製 品 等 ラ イ フ サ イ ク ル 環
境 影 響 評 価 技 術 開 発 成 果 報 告 書( 平 成 14 年 度 新 エ ネ ル ギ ー ・ 産 業 技 術 総 合 開 発 機 構 受 託 )
4) 日 本 ア ル ミ ニ ウ ム 協 会 、 ア ル ミ ニ ウ ム 新 地 金 及 び 展 伸 材 用 再 生 地 金 の LCI デ ー タ の 概 要 、
2005
5) (社 )プ ラ ス チ ッ ク 処 理 促 進 協 会 、 石 油 化 学 製 品 の LCI デ ー タ 調 査 報 告 書 、 1999
6) 環 境 省 、 環 境 家 計 簿 ( た だ し 、 ガ ラ ス ビ ン と し て )
7) 東 京 エ コ プ ラ ス チ ッ ク 粉 砕 機 の 電 力 量 (0.11kwh/㎏ )×電 力 CO 2 原 単 位
(2)家電 品構成 素材の CO 2 排出 量換算
ここで は、表 3.5.3-1 で定めた CO 2 排出 原単 位を基 に本実験で 得た 素材別 回収 量( 表
3.5.1-1 参 照)を各 々乗じた 値を CO 2 排出量 として計算 し、表 3.5.3-2 のよう に新規 時
(バージン 材料か ら生 産する場合 )の場 合と リサイ クル 時の場合と の CO 2 排出 量(差 )
を示し たも のであ る。
まず、絶対量とし ては 、A、B、C 手法の いずれでも 、直接埋め 立て よりも CO 2 削 減
効果が ある 。
各手法 の違 いにつ いて は、小型家 電の CO 2 削 減量は A 手法→C 手法→B 手 法の 順 と
なった 。一 括破砕・選 別方式 の C 手法の 方が 簡易分 解・選別方 式の B 手法 より多いの
は、C 手 法 は回収 した鉄の品位は 低いが 見かけ上、鉄素 材とし て回収され たた め、CO 2
- 117 -
削減量 が多 くなっ たも のである。
アルミ ニウ ムやプ ラス チック生産過程では新 規時(バ ー ジン材 料から生産する 場合 )
の CO 2 排出原単位と リサイ クル 時の排出原 単位に 極端な差(10 倍以上 )があるた め、
生産量 (使 用量) が僅 かでも、CO 2 排出 量の 差が顕著に 現れ て いる。
表 3.5.3-2
CO 2 換算まとめ 表
小型家電
A手法
原料名
鉄
プラ
銅
アルミ
ガラス
電力
区分
CO2原単位
新規
1.043㎏-CO2/㎏
リサ
0.314㎏-CO2/㎏
新規
1.379㎏-CO2/㎏
リサ
0.047㎏-CO2/㎏
新規
2.103㎏-CO2/㎏
リサ
0.592㎏-CO2/㎏
新規
9.218㎏-CO2/㎏
リサ
0.309㎏-CO2/㎏
新規
0.741㎏-CO2/㎏
リサ
0.440㎏-CO2/㎏
リサ
0.425㎏-CO2/kw
換算量
24.0㎏
B手法
CO2
排出量
25.0㎏
7.5㎏
8.1㎏
5.9㎏
0.3㎏
0.5㎏
0.2㎏
0.1㎏
7.6㎏
0.8㎏
0.3㎏
0.6㎏
0.8㎏
0.5kw
0.4㎏
0.2㎏
換算量
19.9㎏
C手法
CO2
排出量
20.8㎏
6.2㎏
8.4㎏
6.1㎏
0.3㎏
0.4㎏
0.2㎏
0.1㎏
0.9㎏
0.1㎏
0.0㎏
0.6㎏
0.8㎏
9.7kw
0.4㎏
4.1㎏
換算量
31.5㎏
CO2
排出量
32.9㎏
0.0㎏
0.0㎏
0.0㎏
2.3㎏
1.1㎏
0.7㎏
8.0㎏
0.9㎏
0.3㎏
0.0㎏
0.0㎏
9.5kw
72.0%
66.8%
71.3%
再資源化可能物の回収合計重量
63.8㎏
59.2㎏
63.2㎏
新規時のCO2排出量(a)
41.8㎏
31.1㎏
43.2㎏
再資源化可能物の回収率
9.9㎏
0.0㎏
4.0㎏
リサイクル時のCO2排出量(b)
8.8㎏
11.1㎏
14.8㎏
CO2排出削減量( a ) -( b)
33.1㎏
20.0㎏
28.3㎏
電力量 の考 え方に つい ては以 下の ように定義 する。
①
A 手法 の 電 力 は 電 動 工 具及 び 、 施 設 電 力( 照 明、 空 調な ど )の 使 用 電 力 量
とした。
②
B 手法 の 電 力 に つ い て は電 動 工 具 及 び 、施 設 電力 の 他に 破 砕機 な ど の 設 備
電力量 とし た。
③
C 手法の電 力につ いては施設 電力 及び、破砕 機など の設 備電力 量と した。
なお、 リサ イクル率の 検証で は明 確に表現で きなか ったが、各製品 とも C 手法 で の
有価物 は、 それぞ れの 回収品目( 鉄、銅 など)において 、A 手法 及び B 手法の回 収 物
に比べ 、品 位が悪 く、評価(売却 費)も 相対的に低くな った。
この ため、 C 手法で はそれ ぞれの 有価回収 物 の品 位を向 上させる た め、 機械選 別後
- 118 -
の 後 工 程 に 混 合 物 か ら 逆 有 価 物( 鉄 中 の 銅 分 な ど の 低 品 位 原 因 物 質 ) を 除 外 す る ピ ッ
キング 作業(人 手によ る破砕片回 収作業)を設けたが 、図 3.5.3-1 及び図 3.5.3-2 のよ
う に 細 い 銅 線 や ガ ラ ス 片 が 予 想以 上 に 多 く 生 成 し 、 し か も 破 砕 片が 細 か い た め 人 手 に
よるピ ッキ ング作 業に よる分別は 困難で ある。
図 3.5.3-2 のサン プルはこれ 以上 、鉄と銅線 などに細かく分別でき ないと 判断し た も
のであ る。 厳密に はそ れらの混合 物を丁 寧に分別回収し た重量 を CO 2 換算 対象にする
必要が ある が、今 回は そこまでの実験は 未実施 である。
また、B 手 法ではモー ターな どの部品を回収 したこ とによる CO 2 削減効果は含まれ
ていな いた め、CO 2 削 減量は C 手 法より 低く 見積もられ ている 。
このよ うに 、今 回の CO 2 排出 量を より正 確に求める には 回収し た素 材の純 度を 適 確
に 計 測 す る こ と と 、 部 品 単 位 で回 収 し た も の に つ い て も 素 材 構 成を 把 握 す る こ と が 必
要である。
図 3.5.3-1
B 手法で回収・手選別後の鉄
図 3.5.3-2
C 手法で回収・手選別後の鉄
(細い銅線が絡みつき、分別不可能)
3.5.4
作業量(時間・ 人数) 評価について
(1)点数 、及び分解 時間に つい て
各手法(A~C 手 法) にて、 小型 家電品 の分 解点数(品 数)、及び 分解時 間を計 測 し
た結果を 表 3.5.4-1 に 示す。限ら れた台数、または不慣 れ作業 などにより 、デ ータに は
ばらつ きや 、信頼 性に 欠けるもの あるが 、ある程度の傾 向は掴 めたと思われる 。
- 119 -
表 3.5.4-1
分解点数 ・分解 時間まとめ表
A手法(手分解)
分類
製品名
小
型
家
電
暖房器具
ガステーブル
掃除機
ビデオデッキ
電子レンジ
音響装置
炊飯器
扇風機
前処理工程
単体
重量 分解品数 分解時間
B手法(簡易分解+破砕・選別)
前処理工程
破砕+選別
合計時間
時間
分解品数 分解時間
C手法(原形破砕・選別)
前処理工程
破砕+選別
合計時間
時間
分解品数 分解時間
破砕+選別
合計時間
時間
6.4㎏
13品 27.0分/台
27.0分/台
9品 19.0分/台 0.3分/台 19.3分/台
0.4分/台 0.4分/台
7.0㎏
10品 35.0分/台
35.0分/台
8品 25.0分/台 0.4分/台 25.4分/台
0.4分/台 0.4分/台
4.5㎏
9品 20.0分/台
20.0分/台
7品 14.0分/台 0.2分/台 14.2分/台
0.3分/台 0.3分/台
4.8㎏
9品 25.0分/台
25.0分/台
7品 20.0分/台 0.3分/台 20.3分/台
0.3分/台 0.3分/台
11.7㎏
15品 35.0分/台
35.0分/台
11品 25.0分/台 0.6分/台 25.6分/台
0.7分/台 0.7分/台
7.4㎏
12品 40.0分/台
40.0分/台
9品 28.0分/台 0.4分/台 28.4分/台
0.4分/台 0.4分/台
2.6㎏
11品 26.0分/台
26.0分/台
9品 18.0分/台 0.1分/台 18.1分/台
0.2分/台 0.2分/台
2.9㎏
7品 16.0分/台
平均タイム
16.0分/台
28.0分/台
7品 11.0分/台 0.2分/台 11.2分/台
20.3分/台
0.2分/台 0.2分/台
0.4分/台
傾向と して は A 手 法か ら B 手 法を 比較し た場 合では 、ほ ぼ全製品に ついて 分解 点 数
の違い によ り分解 時間 の削減効果 が出て いる。分解点数 を約 3 割低 減する こと で 、 処
理 時間 は 概 ね 27%減 と なっ た 。 こ の こと は 部品 点 数 を 少 な く す る こと で 分 解 時 間が 、
短 縮 で き る こ と に も 繋 が る と みら れ 、 今 後 の リ サ イ ク ル 配 慮 設 計に お い て は 重 要 な ポ
イント にな ると思 われ る。
小型 家 電品 は 定 常 作 業で 熟 練 度 も 増 す こ とで 分 解 時 間 を 半 減 で き る 可能 性 が あ る 。
し か し 、 大 型 家 電 品 の 洗 濯 機 やエ ア コ ン に 比 べ 、 小 型 家 電 品 は 構造 や 素 材 構 成 に 大 き
な 違 い が な い た め 、 分 解 時 間 を大 型 家 電 品 よ り も 短 縮 す る こ と は困 難 と 思 わ れ る 。 逆
に小型家電 品は部 品( ネジな ど)が細かく、手間(時間 )が掛 かる という弱点 があ る 。
薄型 TV に ついて は、使用済 み製 品を確 保できなか った ため、 今回 実験が 出来 な か
ったが 、プ ラズマ TV(新品 1 台)の 分解 性評価(ネジ 個数比較の み)につ い て分析 し
た。図 3.5.4-1 はブラウ ン管テ レビとプラ ズマ TV の 取り付けネジ個 数を示 したもの で
ある。
ネジ個 数の 大きな違い の理由 としては、プラズマ TV は 全ての 取付け部品が従 来( ブ
ラウン管 TV)の横 置 きから 縦置きとなり、構造( 取付 方法や部材 強度)に大 きな違 い
が生じ たた めと考 えら れる。この 結果は プラズマ TV のリサイクル (分解 時間) に 影
響を与 える ものと予想 される。
- 120 -
分解時のネジ個数
(個)
300
267
250
200
147
150
100
50
35
25
17
0
ブラウン管TV32型 ブラウン管TV25型 ブラウン管TV14型
図 3.5.4-1
PDP32全分解
PDP32簡易分解
分解時の ネジ個 数比較
(2)分解 人数に つい て
各手法 につ いて分 解に 要する 人員(時 間当た り 1 トン処理時 )を表 3.5.4-2 にまと め
比較し た。 A 方式では 40 人以 上の作業員 を必要 とするのに対し 、B 方式は 28 人 、 C
方式は 16 人とそ れぞれの手法に よって作業員数に差が 生じて いる 。しかし A、B 方 式
に つ い て は 熟 練 度 を 向 上 さ せ るこ と で 分 解 時 間 の 大 幅 な 短 縮 が 見込 め る た め 、 実 業 作
業を想 定す れば、 特に B 方式につ いては、 C 方式と の差が僅差にな ること が予想さ れ
る。
表 3.5.4-2
人員 比較(東京エコ独自試 算)
前処理人員 後工程人員 合 計
A手法 小型家電
44人
B手法 小型家電
27人
1人
28人
C手法 小型家電
1人
15人
16人
―
44人
※小型家電は 8 品目一括処理(リサイクル)にて試算
※前処理とは手分解で有価物や破砕不適合部品を回収する工程
※ 後 工 程 と は 破 砕・選 別 工 程 に て 選 別 を 行 っ た 後 に 更 に 純 度 を 高 め る た め の 手 選 別
工程
(3)経済 性と環 境影 響化学 物質の管理
表 3.5.4-2 に示し たように、 C 手 法の後 工程には 15 人 程度を 要したが、図 3.5.3-2
のよう な低 品位の 出荷 物で妥協す る場合 は、この手選別 で 5~10 人を削減 でき 、 経 済
的 に は 優 位 と な る。 し か し 、 環境 影 響 化 学 物 質 の 観 点 か ら は 、 旧型 製 品 に 見 込 ま れ る
- 121 -
鉛 を 含 む プ リ ン ト基 板 に つ い ては 破 砕 前 の 事 前 除 去 が 望 ま し い 。有 価 物 の 売 却 益 、 人
件費、 残渣 中の環 境影 響化学物質 濃度と のバランスで後 工程の あり方が変わる 。
3.6
3.6.1
取得 データ の評価と今後の 課題
取得データの評 価
(1)必要 時間と 分解 人員
A、B 手法 は時間 (手間)が掛か るが、 総人員数では B と C 手法で は大き な差 が 生
じない と思 われる。特 に B 手 法に ついて は、分解点 数 も A に比べ軽 減され ている た め
慣れや熟練 度を増 すこ とで、C 手 法との 差も縮まる もの と考え られ る。
(2)リサ イクル 率
リサイ クル 率は C 手 法→B 手 法→A 手法の順で A 手 法が最 も高い結果 であ ったが 、
小 型 家 電 品 に よ っ て も 素 材 構 成に 違 い が あ る た め 、 こ の 手 順 も 一概 で は な い 。 現 時 点
で は 逆 有 価 物 ( ガ ラ ス 部 品 ) を含 む 電 子 レ ン ジ な ど 、 今 後 、 個 別 製 品 毎 の リ サ イ ク ル
率を求 めて いく必 要が ある。
(3)CO 2 排出量 抑制効果
全体 的 には 鉄 、 プ ラ ス チ ッ ク 、 銅 、ア ル ミニ ウ ム、 ガ ラ ス を 基 本 と し た 素 材 を 原 料
として 再び マテリ アル リサイクル した方 が、原石(原 油 )から製 造 する場 合よ りも CO 2
排出量 が削 減でき る。
ただし 、今 後、どの方 法が最 も CO 2 抑制 に効果的な 手段 である もの かをさ らに 検 討
してい く必 要があ る。
(4)破砕 ダストの分 析
今回 は 有価 物 に 着 目 し た が 、 破 砕 行為 に より 発 生 す る そ の他 の 物 質 は 、 今 後 の 調 査
項目と した い。
3.6.2
今後の課題
(1)今回の実験では A 手法、B 手法、C 手 法の 3 通り の実験 を行ったが、A 手法に つ
い て は あ ま り に も 作 業 工 数 が かか り 過 ぎ 、 日 本 な ど 人 件 費 の 高 い先 進 国 に は 不 向 き で
ある。 B 手 法、C 手 法 のプロ セ ス か ら 見て 、 経 済性 と 環 境 の 両 面 か ら 良い と こ ろ を 取
- 122 -
捨選択 して いく必 要が ある。
(2)電子レンジなど に使わ れているガ ラス(強 化ガラ ス)につ い ては、現 在 はリサ イ
クルの 用途 がない 。今 後の課 題である。
(メ ーカや業界 主導で ガラ ス製造業者 との 連 携
を高め る必 要性が ある 。)
(3)分解 性試験 は未実施に 終わ ったが 、プ ラズマ TV、液晶 TV は本体が大 きく、 持
ち づ ら く 、 構 造 も 複 雑 ( ネ ジ 個数 、 特 殊 な 接 合 方 法 ) な た め 、 分解 時 の 取 り 扱 い が 困
難と予 想さ れる。
(4)文献 調査で は薄型 TV には In(イン ジウム )な ど の希少 金属が微量含ま れてい る
こ と が 報 告 さ れ て い る が 、 小 型家 電 品 に も 若 干 の 希 少 金 属 が 確 認さ れ た 。 そ れ ら の 物
質の特 定方 法や回 収方 法が今後の 課題と なる。
(5)資源 採掘か ら製造時 ま でに 排出さ れ る CO 2 抑 制につ いては、 リ サイ クルの 効 果
がある こと を見い 出し た。今回は 家電品 構成素材の約 7 割 に 限 定 し て 算出 し た た め 、
部品と して 回収し た残 る約 3 割 についても、 CO 2 抑制効果をさらに 評価し ていく 必 要
がある。
3.7
まと め
現代 の 家電 製 品 は 小 型 軽 量 化 に 伴 い、 構 造が 複 雑 化 し 、 素 材 が 多 様 化 す る 傾 向 に あ
り 、 リ サ イ ク ル す る 企 業 に と って は 、 理 想 と 相 反 す る も の が あ る。 今 回 は 、 入 手 可 能
な 家 電 サ ン プ ル 数 、 実 験 期 間 、費 用 、 い ず れ も 制 約 の 多 い 中 で の実 験 と な っ た た め 、
数 値 の 絶 対 値 と し て の 評 価 は 難し い 面 が あ っ た 。 そ の よ う な 状 況の 中 、 素 材 、 部 品 を
選別・ 回収 するこ とで 、資源循環 や CO 2 排出 量の抑 制効果があ るこ とが判 った。
しか し 、そ れ を 人 間 の 手 で 全 て 行 うに は 経済 性の 観 点 で 不 利 と な る 。 ま た 、 機 械 式
選 別 を 選 択 し て も 、 結 局 、 環 境影 響 化 学 物 質 管 理 の 上 で は 後 工 程( 人 手 に よ る ピ ッ キ
ン グ 等 ) に 人 間 の 手 が 必 要 と 予想 さ れ る 。 人 手 を か け れ ば 、 有 価 物 の 回 収 と 環 境 影 響
化 学 物 質 の 除 去 は 可 能 で あ る が、 そ れ を 経 済 性 の 観 点 も 入 れ て 、よ り 実 現 可 能 な リ サ
イクル プロ セスを 検討すべきと考 える。
また 、 今後 の 資 源 循 環 型 社 会 に お ける リ サイ ク ルが 如 何 な る も の か を 導 き 出 す た め
には、 製品 設計者 とリ サイクルの 現場と の垣根を越えた 議論が 必要である。
- 123 -
<補足説明資料>
1.
プ ラ ズ マ TV の ネ ジ 個 数 調 査 実 験
( 工 程 1) PDP の 台 座 を 外 す 作 業
( 工 程 2) 本 体 背 面 カ バ ー を 外 す 作業
( 工 程 3) 内 部 フ レ ー ム と 基板 外 し
( 工 程 4) 基 板取 外し
- 124 -
( 工 程 5) パ ネ ル 裏 面 の 付 属 部 品 外 し
( 工 程 6)ガ ラ ス 枠 の 分 解 、前 面 ガラ ス の 取 り 出 し
( 工 程 7) プ ラ ズ マ TV 台 座 の分 解
- 125 -
第4章
4.1
グローバル製 品の資 源循環・リ サイ クルモ デル
背景 、社会 動向
使用 済 み製 品 、 特 に 使 用 済 み 電 気 製品 の 資源 循 環・ リ サ イ ク ル を グ ロ ー バ ル に 見 る
と 、 数 年 前 ま で は ほ と ん ど の 国・ 地 域 で 自 治 体 に よ り 収 集 さ れ 、そ の ま ま 埋 立 ら れ る
など、 資源 循環・ リサ イクルとい える取 組みはされてい なかっ た。
この 状 況に 最 初 に 具 体 的 に 対 応 し たと さ れる の が、 狭 い 国 土 か ら 最 終 処 分 場 の 不 足
が指摘され た日本 であ り、1991 年に成 立・施行し た再 生資源 の利 用の促進に 関する 法
律(通 称、リサイ クル法)に おいてリサ イク ル性設 計の推進な どが 促され、そ の後 2001
年 の 家 電 リ サ イ ク ル 法 、 リ サ イク ル 法 を 改 正 し た 資 源 の 有 効 な 利用 の 促 進 に 関 す る 法
律 ( 通 称 、 改 正 リ サ イ ク ル 法 )の 施 行 な ど に よ り 、 自 治 体 に よ る処 理 が 困 難 と さ れ る
「 適 正 処 理 困 難 物 」 を 中 心 に 製造 者 責 任 に よ る 資 源 循 環 ・ リ サ イク ル の 仕 組 み の 構 築
が義務化・ 推進さ れて いる。
これに 対し て、欧州で は 2005 年 に発効し た WEEE 指令 により 、使 用済み 電気 製品
98 品目に 対して 回収 リサイ クル を実施する ことが求められ、欧州内各国にお いて 製 造
者の責 任範 囲を定 め、それ にした がった 活動が行なわれ ている 。WEEE 指令 は、そ の
検 討 の 背 景 に 電 気 製 品 等 に 含 有す る 特 定 の 化 学 物 質 の 自 然 界 へ の拡 散 を 防 ぐ こ と に 主
眼 を 置 い た 議 論 が さ れ 、 ま た その 要 求 項 目 に 特 定 の 化 学 物 質 を 含む 部 品 や 、 そ の 他 の
特定ユ ニッ トの選 別処 理を求める など、再商 品化率(日 本固有 の定 義のリ サイ クル率 )
を要求の中 心に据 える 日本の法律 とは異 なる部分がある 。
また 米 国で は 、 有 害 性 リ ス ク の 観 点か ら の取 組 み が 特 徴 的 で あ り 、 古 く か ら 存 在 す
る 「 有 害 ・ 固 形 廃 棄 物 法 」 に おい て 、 有 害 と さ れ る 廃 棄 物 に つ いて の 適 正 処 理 の 徹 底
が 定 め ら れ て い る が 、 現 在 も 使用 済 み 電 気 製 品 の 資 源 循 環 ・ リ サ イ ク ル に 関 し て 定 め
た 連 邦 法 は 存 在 し て い な い 。 ただ し 、 カ リ フ ォ ル ニ ア 州 を 筆 頭 に多 く の 州 で 州 法 が 成
立・施 行を 始めて おり 、例えばカ リフォ ルニア州では Video Display Monitor を 対 象
と し て 、 費 用 の 消 費 者 負 担 の 仕組 み に よ る リ サ イ ク ル が 、 メ イ ン州 等 で は 拡 大 生 産 者
責 任 の 考 え 方 に よ り 、 自 治 体 が収 集 し た 使 用 済 み 電 気 製 品 を 製 造 者 責 任 に よ り 資 源 循
環・リ サイ クルす る規 制が動き始 め、製 造事業者は各々 対応を 始めている。
この よ うな 規 制 の 動 き は 、 韓 国 、 中国 な どア ジ ア 諸 国 に も 波 及 し て おり 、 今 後 そ の
傾向は 世界 的に広 まる のが確実で ある。
また 、2007 年 8 月にソニー( 株)が「全 米で自社 製品 を無償 回収 する 」旨 の発表を
- 126 -
行い、実際に米国内で 連携す る大手廃棄 物処 理業者 Waste Management 社に は、こ の
ス キ ー ム を 利 用 す る ソ ニ ー 製 品が 回 収 さ れ て お り 、 そ の 運 用 は 既に 始 ま っ て い る こ と
が確認でき た。( http://news.sel.sony.com/en/press_room/corporate_news/release/31014.html)
この よ うに 、 電 気 製 品 の 製 造 事 業 者は 、 国・ 地 域 が 定 め る 規 制 や 自 主的 な プ ロ グ ラ
ム に よ り 、 販 売 し た 製 品 の 資 源循 環 ・ リ サ イ ク ル を グ ロ ー バ ル で推 進 す る 必 要 に 迫 ら
れてい る。
しかし 使用 済み製 品の 資源循 環・リサイクルは、国・地域毎に求め る内容(例え ば 、
回収率 、リ サイク ル率、回 収対象 部位等)、国・地域 毎に作業者の 費用(= 人 件費単 価
等)、さ らには関 連す る規制 等( 例えば 、大気、土 壌、水質への排 出の制 約等)が異 な
り 、 そ れ に 伴 っ て 従 来 行 な わ れて き た 資 源 循 環 ・ リ サ イ ク ル が 異な る こ と が 確 認 さ れ
ている。
使用 済 み製 品 の 資 源 循 環 ・ リ サ イ クル を 有効 か つ 効 果 的 に 進 め る た めに は 、 実 際 の
リ サ イ ク ル 現 場 に あ っ た リ サ イク ル 性 設 計 や 、 そ れ を 支 援 す る 仕組 み が 有 効 で あ る と
考えている が、そ の具 体的な方法 を検討 する前段階とし て、 第 2 章、第 3 章な ど に お
け る 調 査 結 果 も 踏 ま え 、 国 ・ 地域 毎 に 異 な る 「 実 際 の リ サ イ ク ル現 場 」 の 方 法 に つ い
て、次 節以 降で整 理す る。
4.2
国内 におけ る資源循環・リ サイク ルフロー
本節 で は、 日 本 国 内 に お け る 家 電 リサ イ クル 、 パ ソ コ ン リ サ イ ク ル な ど の 情 報 を 整
理し、日本 国内に おけ る使用済み 電気製 品の 資源循環・リサイ クル フローを整 理す る 。
日本の 使用 済み電 気製 品の資 源循 環・リサイ クルフローの特徴 は以下の通り で ある 。
・
高い埋 立費(30,000~50,000¥/トンま たは㎥とい われ ている )の 発生を 最
小化す るた め、極 力埋 立が発生し ない手 法を採用。
・
シュレッダーダストの焼却は一部認められているが、ガス化溶融炉、セメ
ントキルン、精錬所等に限定されており、埋立に対してコストメリットに
乏しく、多 くの場 合シ ュレッダー ダストは埋立られる。
・
国内に高い精錬技術を持ち、鉄、非鉄金属、貴金属の回収を国内で実施可
能。
・
人件費 が直 接員を 含め 一般に高い 。
これ ら の特 徴 を 踏 ま え 、 特 に シ ュ レッ ダ ーへ の 投 入 物 の 最 小 化 を 目 的に 、 家 電 リ サ
- 127 -
イ ク ル や パ ソ コ ン の リ サ イ ク ルの 第 一 次 処 理 に お い て は 比 較 的 多く の 手 解 体 作 業 が 実
施 さ れ る 。 例 え ば 家 電 リ サ イ クル 施 設 の 一 つ で あ る 東 京 エ コ リ サイ ク ル ( 株 ) で は 、
表 4.2-1 に 挙げる よう な部品・ユ ニット を手解体してい る。
表 4.2-1
家電リ サイ クル施設に おける 解体対象ユニッ トの例
対象製品
エアコン
テレビ
冷蔵庫
洗濯機
パソコン
液晶モニタ
CRT モ ニタ
プリンター
スキャナ
解体対象部 品
冷媒フ ロン 、熱 交換 器、コンプ レ ッサ、コ ン デンサ 、モ ーター 、
吸音材 、真 鍮バル ブ、トラン ス、プラス チック製キ ャビ ネット 、
冷凍機 油、 アルミ放熱 板、銅 管、基板、等
テレビ ブラ ウン管、シ ャドウ マス ク、プ リン ト基板 、ス ピーカ 、
消磁コ イル 、偏 向ヨ ー ク、吸音 材、電 子銃 、キャビ ネット、前
面ガラ ス、 防爆バンド 、等
冷媒フ ロン 、コ ンプ レッサ 、冷 凍機油、板 ガ ラス 、コン デンサ 、
真空断 熱材 、ドア パッ キン、野菜 室プラ スチ ックケ ース 、銅管 、
基板、 吸音 材、等
洗濯槽 、モ ーター、バ ランサ(塩 水、コン ク リート ブロック)、
吊り棒 、コ ンデンサ、 キャビ ネット蓋、キャ ビネッ トベー ス 、
ガラス 、フ ランジ、排 水ホー ス、基板、等
キーボ ード 、コ ード 類 、ス ピー カ、プ リン ト 基板 、電 源ユニッ
ト、電池、ドライブ類 、ア ルミ 放熱板 、液 晶 パネル 、筐体、フ
ァン、等
液晶パ ネル 、スピーカ 、ケー ブル類、筐体、 等
ブラウ ン管 、シ ャド ウ マスク 、プ リント基板 、ス ピー カ、消 磁
コイル 、偏 向ヨーク 、吸音材 、電 子銃、キ ャ ビネッ ト 、前面ガ
ラス、 防爆 バンド、等
プリン ト基 板、ガラス 、蛍光 管、ケーブル類 、カー トリッ ジ 、
シャフ ト類 、ファン、 モータ ー、 筐体部品、 等
プリン ト基 板、ガラス 、蛍光 管、ケーブル類 、カー トリッ ジ 、
シャフ ト類 、ファン、 モータ ー、 鏡、発光体 、筐体 部品、等
東京エ コリサイクル( 株)Web サイトより
次に 、 上記 各 ユ ニ ッ ト は 一 次 処 理 業者 内 また は適 切 な 二 次 処 理 業 者 に 出 荷 さ れ 、 二
次処理 が行 なわれ る。 具体的には 以下の ようなものが確 認され ている。
・
ブラウン管について、前面ガラルと背面ガラスの分離、シャドウマスク、
蛍光体 等の 除去。
・
冷蔵庫やエアコンのコンプレッサについて、強固な外装を切断し、銅を多
く含有する コアの 取り出し(環境 新聞、 2007/7/25)。
・
各 製品 の 電 線 類 の 被 覆 と 銅 を 純 度 高 く 分 離 ( 日 経 産 業 新 聞 、 2006/10/17)。
- 128 -
・
プリン ト基 板から 大形 アルミ放熱 板等の 取り外 し。
・
熱交換 器か ら銅とアルミを分離 。
さらに 一次 処理業者に おいて は、 表 4.2-1 に例を示 した 解体対 象物 以外は 、多 く の
場合破 砕・粉砕さ れ、その後「磁力選別機」「渦電 流選 別機」「 風 力選別 機」「比重 選別
機 」「 振 動 篩 い」「 静 電 選 別 」 等 に よ り、 材 質 別 ( 鉄 、 銅 、 ア ル ミ 、 プ ラス チ ッ ク ( ポ
リウレ タン 、塩ビ 、そ れ以外等) に選別 される。
上記の 工程 を経た 各回 収物の 多く は、 表 4.2-2 に示すよ うな業 者で 処理が され 、 材
料としての 再生・ リサ イクルが行 なわれ る。
表 4.2-2
日本におけ る選別 材料・ユニット の処理 方法と回収 物
材料、 ユニ ット
鉄(破砕・選別後を含 む)
処理先
回収物
電炉
鉄
アルミ(破砕・選別 後を含む ) アルミ鋳造 炉
アルミ
銅(破砕・選別後を含 む)
銅
銅精錬
モーター、コンプ レッ サコ ア
プリント基 板
銅、金 、銀 、等
CRT メ ーカ (海外)
CRT
水銀精製業 者
水銀
プラスチッ ク
(サイズ大単一素材)
再生プラス チック 業者
(選別、粉 砕、洗浄 )
再生プ ラス チック
プラスチッ ク(ウレタ ン)
焼却炉
-
プラスチッ ク(上記以 外)
高炉
-(コーク ス代替 還元 剤)
フロン
フロン処理 業者
-(破壊処 理)
パネルガラ ス
ファンネル ガラス
蛍光管
電池
東京エコリ サイク ル(株)/ (株)ハイ パーサイク ルシ ステム ズ
両社の Web サイトを参考に作成
この よ うに 金 属 に つ い て は 最 終 的 には 精 錬業 者に 送 ら れ 、 資 源 回 収 が 行 な わ れ る の
が 一 般 的 で あ る 。 ま た プ ラ ス チッ ク に つ い て は 、 一 部 単 一 素 材 の大 形 の 部 品 を 対 象 に
解 体 に よ る 回 収 が 行 な わ れ 、 選別 ・ 破 砕 ・ 洗 浄 な ど の 工 程 を 経 て、 再 生 プ ラ ス チ ッ ク
と し て 資 源 回 収 が 行 な わ れ る 。そ れ 以 外 の プ ラ ス チ ッ ク に つ い ては 、 金 属 、 塩 化 ビ ニ
- 129 -
ルなどを除 去した 後、 高炉に送ら れ、還 元剤と して有効 利用が 図られる場合も 多い。
これ ら の過 程 で 、 シ ュ レ ッ ダ ー 工 程の 後 に設 け ら れ る 集 塵 機 等 に 回 収 さ れ る シ ュ レ
ッダー ダス トが埋 立さ れることに なる 。な お東京エ コリ サイク ル( 株)の例 に 拠れば 、
埋立量 は入 荷量 の 0.1%以下とな ってお り、リサイクル による最終処分場の延 命効 果 が
絶大で ある ことが 確認 されている 。
これ ら を整 理 す る と 、 日 本 に お け る使 用 済み 電 気 製 品 の 資 源 回 収 ・ リ サ イ ク ル は 一
般的に は 図 4.2-1 に示 すように行 なわれ ているといえる。
フロン
破壊
蛍光管
水銀精錬
水銀
電池
パネル
ガラス
CRT
輸出
CRT
P/F
分離
ファンネル
ガラス
①
電炉
鉄
②
銅精錬
銅
金
銀 等
③
アルミ鋳造
アルミ
シャドウ
マスクなど
ケース
手解体
モータ
コンプレッ
サ
機能
破壊
①
プラ等
ケース
分離
分離
選別
コア
使用
済み
製品
電線類
分離
選別
銅
被覆
基板類
プリント
基板
二次
解体
熱交換器
二次
解体
プラスチック
選別
②
④、⑤
②
アルミ
③
銅
②
PP
PS
ABS
磁力
選別機
集塵機
ウレタン
プラスチック
比重
選別機
アルミ類
③
銅類
②
④、⑤
①
④、⑤
④
埋立
シュレッダー
ダスト
図 4.2-1
アルミ
銅
渦電流
選別機
圧縮
再生
プラスチック
洗浄
粉砕
鉄
:主要フロー
銅
アルミ
放熱板
破砕
風力
選別機
④、⑤
⑤
・焼却
・精錬
・ガス化
・セメント燃料
・高炉還元剤
:一部フロー
日本に おける使用済み 電気製 品の資源回 収・ リサイ クル フロー
(図中の○ 数字は 右端 の数字 付プ ロセスに流 れるこ とを表す 。)
- 130 -
なお、 これ らの過 程に おいて 、例 えば国内に 製造工 場がなくなっ た CRT 用 ガラス 、
機 能 破 壊 を 実 施 し た コ ン プ レ ッサ な ど の 一 部 回 収 物 は 東 南 ア ジ アを 中 心 と し た 海 外 に
輸出さ れて いる。
日本 は シュ レ ッ ダ ー ダ ス ト 最 小 化 を目 指 し、 比 較 的 多 く の 手 解 体 作 業 を 実 施 、 プ ラ
スチッ クの 材料リ サイ クルを実現 、一部 の先進リサイク ル現場 では埋立 率 0.1%以 下 と
い う 極 め て 高 い 再 資 源 化 を 実 現し て い る が 、 高 い 人 件 費 が 大 き なネ ッ ク と な り 、 二 次
リサイ クル 以降の 一部 が海外で行 なわれ ていることは確 実であ る。
4.3
4.3.1
海外 におけ る資源循環・リ サイク ルフロー
欧州の場合
欧州の リサ イクルにつ いて、 第 2 章の調 査結果や文 献を 分析す ると 、その 特徴 は 以
下のように 整理で きる 。
・
一般に 人件 費が高 い。
・
“粗破砕”といえる「製品の弱い部分を分離する技術」を多くのリサイク
ル業者が活 用。
・
WEEE 指令 AnnexII(選択 的解 体対象 リス ト)が示す とおり、規 制の面 で
は環境影響 化学物 質等 適正処理に 対する 意識が高い。
ただし、現場レベルでは上述の“粗破砕”後の回収でもこの目的は果たせ
るとの 認識 が強く 、あ く まで経済 性を優 先した方法が実 践され ている。
・
シュレッダーダストの直接埋立が禁止されている国が多く、多くの場合焼
却を実 施。
・
欧州内 27 カ国におい て、各 国で施行され る WEEE 指 令各国法の 内容お よ
び運用に差 異。
・
欧州内 27 カ国に おいて、既 存の使用済 み電 気機器リサ イクル の仕 組み、リ
サイクル施設、保有するリサイクル技術、作業者の人件費などに大きな違
い。
・
欧州内には世界最大規模の精錬業者なども点在し、欧州内で閉じた金属回
収も可 能。
- 131 -
図 4.3.1-1
“粗破砕 ”装置 の一例(QZ machine)
出典: TechRec Ireland Ltd Web サイト
これ ら の特 徴 を 踏 ま え 、 一 次 リ サ イク ル 業者 に お い て は 、 特 に 解 体 の 人 件 費 最 小 を
意識し、
“ 粗破砕 ”を活用した処 理が行 なわれてい る場 合が多 い( ただし 、旧 東欧 諸 国
な ど 人 件 費 が 比 較 的 低 い 地 域 にお い て は 、 手 作 業 に よ る 解 体 が 行な わ れ て い る 場 合 も
ある)。
“粗 破 砕” 後 に 人 手 に よ り 、 モ ー ター 、 プリ ン ト 基 板 、 電 池 、 サ イ ズの 大 き い 金 属
片(銅、ア ルミ、ステ ンレス 、真鍮、等)、サイズ の大きなコ ンデ ンサ(電解 コンデ ン
サ 等)、 ハ ー ネス 類 な ど を 選 別 し 、そ の 後 、 破 砕、「 磁 力 選別 機 」「 渦電 流 選 別 機」「 風
力 選 別 機 」「 比 重 選 別 機 」「 振 動 篩 い 選別 機 」 等 に よ り 、 材 質 別 ( 鉄 、 銅、 ア ル ミ 、 プ
ラスチ ック (ポリ ウレ タン、塩ビ、それ 以外等)に選別 される 。
上記の 工程 を経た 各回 収物の 多く は、表 4.3.1-1 に示すよ うな業 者で処理が され 、材
料としての 再生・ リサ イクルが行 なわれ る。
表 4.3.1-1
欧州にお ける選 別材料・ユニッ トの処 理方法と回 収物
材料、 ユニット
処理先
回収物
鉄(破砕・ 選別後 を含む)
鉄精錬
鉄
アルミ(破 砕・選 別後を含む)
アルミ精錬
アルミ
銅(破砕・ 選別後 を含む)
銅精錬
銅
モータ ー、コンプレッ サコア
プリン ト基板
銅、金、銀 、等
CRT メ ーカ (海外)
CRT
電池
バッテ リ回 収業者
-(詳細情報なし)
シュレ ッダーダスト
焼却
-
パネル ガラス
ファン ネルガラス
(処理業者 ヒアリ ング 等から作成 )
- 132 -
これ ら を整 理 す る と 、 欧 州 に お け る使 用 済み 電 気 製 品 の 資 源 回 収 ・ リ サ イ ク ル は 一
般的に は 図 4.3.1-2 に 示すよ うに行なわ れて いると いえ る。
フロン
破壊
蛍光管
パネル
ガラス
手解体
CRT
ガラス
輸出
P/F
分離
CRT
モータ
コンプレッ
サ
ファンネル
ガラス
シャドウ
マスクなど
①
鉄精錬
鉄
基板類
②
銅精錬
銅
アルミ
放熱板
③
アルミ精錬
アルミ
輸出
電線類
使用
済み
製品
プリント
基板
粗破砕
二次
解体
電池
無害化
大形
金属片
鉄
①
銅
②
アルミ
③
選別
真鍮
破砕
磁力
選別機
集塵機
アルミ
銅
渦電流
選別機
プラスチック
鉄
アルミ類
③
銅類
②
⑤
①
シュレッ
ダー
ダスト
ウレタン
⑤
焼却
(エネルギリ
カバリ)
:主要フロー
図 4.3.1-2
比重
選別機
:一部フロー
欧州 における使用済 み電気 製品の資源 回収 ・リサ イク ルフロ ー
(図中 の○ 数字は 右端 の数字 付プ ロセスに流 れるこ とを表す。)
なお 、こ れらの過 程に おいて 、例 えば CRT 用ガラ ス 、モータ ー 、プリン ト基板など
の 一 部 回 収 物 は 東 南 ア ジ ア を 中心 と し た 海 外 に 輸 出 さ れ て い る 。高 い 人 件 費 が 大 き な
ネック とな り、二 次リサイクル以 降の一 部が海外で 行な われて いる ことは 確実 で ある 。
4.3.2
中国の場合
中国の リサ イクルにつ いて、 第 2 章の調 査結果や文 献を 分析す ると 、その 特徴 は 以
下のように 整理で きる 。
- 133 -
・
建屋、装置(コンベヤ、破砕機、排ガス・排水浄化装置)などに投資した
リサイクル施設と、屋根もほとんどないような作業場で地面に座ったまま
作業を する ような リサ イクル業者 に大別 。
・
業者を 問わ ず、圧倒的 に低い(400~800RMB/月、6000¥~12000¥/月、
地域等によりさらに低い場合もある)人件費を有効に活用する手作業中心
の作業を実 施。
・
中 国 国 内 に 多 く の リ サ イ ク ル 団 地 を 持 ち 、 各 団 地 が 「 鉄 」「 非 鉄 金 属 」「 プ
ラスチ ック 」「家電」 などの特徴を持った運 用 。
・
各リサイク ル団地 が連 携し 、極 めて高い 率の 資源回 収・リサイクル を実 現 。
・
(労働安全衛生に対する意識が低いと思われ)作業環境等への配慮が薄い。
中国 の 処理 の 特 徴 は 安 い 人 件 費 を 活 か し た「 徹 底 的 な 手 作 業 に よ る 選別 」 で あ る 。
例 え ば 使 用 済 み 家 電 製 品 か ら あら ゆ る ユ ニ ッ ト を 取 り 外 す だ け に及 ば ず 、 取 り 外 し た
ユ ニ ッ ト も さ ら に 手 作 業 で 解 体・ 分 離 さ れ る 。 例 え ば モ ー タ ー など は ケ ー スを 壊 し て
コ ア を 取 り 出 し 、 巻 線 と コ ア の分 離 も 手 作 業 に よ り 行 な わ れ る 。こ の 思 想 は 小 形 の ト
ラ ン ス な ど に な っ て も 変 わ る もの で は な く 、 ハ ン マ 等 を 使 い 、 1つ ず つ 筐 体 部 分 と コ
ア 部 分 、 コ ア 部 分 も 巻 線 と コ アを さ ら に 分 離 す る 作 業 が 施 さ れ る。 ま た プ リ ン ト 基 板
か ら は 大 き 目 の 部 品 ( サ イ リ スタ な ど ) は 手 作 業 で 外 し 、 そ れ 以外 の 部 品 も は ん だ を
溶 か し て取 り 外 し 、 さ ら に 種 類別 に 手 作 業 で 分 別 す る よ う な 作 業 が 行 な わ れ て い る 。
ま た 、 プ ラ ス チ ッ ク に つ い て も、 サ イ ズ の 大 き い プ ラ ス チ ッ ク 片を リ サ イ ク ル す る だ
け で な く 、 小 さ く 破 砕 し た プ ラス チ ッ ク に つ い て も 、 重 液 を 用 いた 比 重 分 離 に よ り 選
別 を 行 な っ た 後 、 人 手 に よ り 色別 の 選 別 も 行 な う こ と で 、 あ ら ゆる プ ラ ス チ ッ ク の 材
料リサイク ルを実 現し ている。
これ ら を整 理 す る と 、 中 国 に お け る使 用 済み 電 気 製 品 の 資 源 回 収 ・ リ サ イ ク ル は 一
般的に は 図 4.3.2-1 に 示すよ うに行なわ れて いると いえ る。
- 134 -
フロン
電池
パネル
ガラス
CRT
CRT
P/F
分離
ファンネル
ガラス
①
鉄精錬
シャドウ
マスクなど
電子銃
コイル
二次
解体
二次
解体
ガラス
電線類
使用
済み
製品
二次
解体
分離
選別
②
コア
ケース
モータ
コンプレッ
サ
再生ガラス
①
電極
銅
①
プラ等
三次
解体
コア
銅
②
被覆
⑥
⑥
銅
アルミ
放熱板
手解体
鉄
②
銅精錬
銅
金
銀 等
③
アルミ精錬
アルミ
再生部品
大形部品
②③
はんだ
プリント
基板
二次
解体
ベース
基板
再生はんだ
⑥
はんだ
外し
(加熱)
中形部品
電子部品
熱交換器
その他
ユニット
:主要フロー
図 4.3.2-1
二次
解体
二次
解体
・
三次
(以降)
解体
:一部フロー
③
銅
②
金属類
プラスチック
類
種類別
電子部品
再生部品
精錬等
金属類
篩い選別
小形部品
アルミ
磁力選別
手選別
磁力選別
手選別
種類別
電子部品
鉄
アルミ
銅 など
⑦ 金属選別、再生工程
選別
PP
PS
ABS など
⑥ プラスチック選別、再生工程
選別
色選別
各色
プラ
粉砕
再生部品
精錬等
金属類
精錬等
金属類
洗浄
再生
プラスチック
中国 における使用済 み電気 製品の資源 回収 ・リサ イク ルフロ ー
(図中 の○ 数字は 右端 の数字 付プ ロセスに流 れるこ とを表す。)
中国の リサ イクルの大 きな課 題は 、以下のよ うなも のがあると考え る。
( 1) 精 錬 技 術 は 未 発 達 な た め 、 例 え ば 選 別 し た プ リ ン ト 基 板 上 の 部 品 等 か ら 、
有効な 資源 回収が 十分 には行なえ ていな い可能性が否定 できな い 。
(2)労働 安全衛 生への意識 不足 から、 作業 者に劣 悪な 環境を強い る。
( 3) 水 ・ 大 気 ・ 土 壌 へ の 汚 染 へ の 意 識 不 足 か ら 、 汚 水 、 排 ガ ス 等 の 処 理 の 意 識
が不十分。
- 135 -
4.3.3
米国の場合
米国の リサ イクルにつ いて、 第 2 章の調 査結果や文 献を 分析す ると 、その 特徴 は 以
下のように 整理で きる 。
・
連邦法 はな いが、 多く の使用済み 電気製 品の一次リサイ クル業 者が存在 。
・
手解体のみのリサイクル業者と、手解体と破砕・選別を組み合わせる業者
に大別。
・
いずれの業者においても、再使用可能部品、環境影響化学物質含有部品、
破砕困 難部 品を中 心に 手解体作業を積極 的に実施 。
・
各 業 者 で 行 な わ れ る 手 解 体 作 業 は 、 ハ ン マ、 ド ラ イ バ 程 度 を 使 っ た 簡 便 な
ものが大半 。
・
手解体 、機械選別いず れの回 収物においても、そ の出荷 先の多くは 米国 外 。
特に金属系はカナダ、ベルギー、スウェーデンの精錬業者、プラスチック
は中国を中 心とし たア ジア、CRT のガラ ス は東南 アジ ア、ブラジ ルなど に
出荷。
・
米国内 は精 錬業が 衰退 しており、 国内で の金属再生はほ ぼ不可 能な状況 。
・
人件費 は現 場作業 者レ ベルでは比 較的安い労働者の確保 が可能 。
・
使用済み製品についてもその管理レベルは高く、多くのリサイクル業者で
トレー スシ ステムを導 入 。
・
リサイ クル 業者に おい ても IT サ ポート を進 めてい ると ころもあり 、現 場 管
理から作業 指示ま でを 実施 。
ここ に 示す 米 国 の 使 用 済 み 製 品 リ サイ ク ルの 特 徴 は 、 米 国 の 法 律 に おい て 「 有 害 廃
棄物」とさ れる例 えば充電池付プ リント 基板などは リサ イクル を行 なうこ とが できず 、
埋 立 が 義 務 化 さ れ る こ と に 大 きな 理 由 が あ る と 思 わ れ る 。 米 国 のリ サ イ ク ル 業 者 は 、
そ の ま ま で は 製 品 全 体 が 有 害 廃棄 物 と な っ て し ま う ユ ニ ッ ト を 製品 か ら 取 り 出 し 、 選
別(例 えばプリント基 板から 充電式電池を外 す)、そ の 選別品 を国 外に輸出し て資 源 循
環 ・ リ サ イ ク ル す る と い う 大 きな 流 れ を 作 っ て い る と い え る 。 これ は 米 国 で は リ サ イ
ク ル 施 設 を 持 た ず に 、 ア ジ ア や欧 州 、 カ ナ ダ へ の 輸 出 を 専 門 に 扱う 「 商 社 機 能 」 の み
を持つ リサ イクル 業者 (と彼らは 称する )が多数居るこ とから も把握できる。
これ ら を整 理 す る と 、 米 国 に お け る使 用 済み 電 気 製 品 の 資 源 回 収 ・ リ サ イ ク ル は 一
般的に は 図 4.3.3-1 に 示すよ うに行なわ れて いると いえ る。
- 136 -
フロン
蛍光管
輸出
電池
輸出
パネル
ガラス
輸出
CRT
P/F
分離
シャドウ
マスクなど
輸出
ケース
モータ
コンプレッ
サ
電線類
輸出
輸出
CRT
ファンネル
ガラス
ケース
分離
分離
選別
鉄
②
銅精錬
銅
金
銀 等
③
アルミ精錬
アルミ
①
プラ等
分離
選別
コア
④
銅
② 銅
被覆
④、⑤
アルミ
放熱板
輸出
①
鉄精錬
手解体
再生部品
大形部品
②③
使用
済み
製品
はんだ
プリント
基板
輸出
二次
解体
ベース
基板
再生はんだ
⑥
はんだ
外し
(加熱)
中形部品
電子部品
熱交換器
輸出
金属類
輸出
プラスチック
輸出
破砕
磁力
選別機
アルミ
③
銅
②
鉄
アルミ
銅 など
⑦ 金属選別、再生工程
PP
PS
ABS など
⑥ プラスチック選別、再生工程
渦電流
選別機
集塵機
鉄
色選別
アルミ
銅
比重
選別機
プラスチック
④
輸出
①
シュレッ
ダー
図 4.3.3-1
磁力選別
手選別
選別
選別
種類別
電子部品
再生部品
精錬
金属類
篩い選別
小形部品
二次
解体
磁力選別
手選別
各色
プラ
粉砕
アルミ類
輸出
③
銅類
輸出
②
種類別
電子部品
再生部品
精錬
金属類
精錬
金属類
洗浄
再生
プラスチック
④
埋立
米国 における使用済 み電気 製品の資源 回収 ・リサ イク ルフロ ー
(図中 の○ 数字は 右端 の数字 付プ ロセスに流 れるこ とを表す。)
米国に は、スーパーフ ァンド法(俗称、正式 名称:Comprehensive Environmental
Response、Compensation and Liability Act、略称:CERLA)と呼 ばれる 有害物 質 に
よ る 汚 染 の 浄 化 を 、 有 害 物 質 に関 与 し た 全 て の 潜 在 的 責 任 当 事 者が 永 久 に 追 う と い う
規 制 に よ り 、 結 果 と し て 精 錬 業が 衰 退 、 国 内 で の 金 属 資 源 回 収 が事 実 上 不 可 能 と い う
大 き な 問 題 が あ る 。 た だ し 、 米国 環 境 省 の 考 え 方 と し て 、 米 国 内の 使 用 済 み 製 品 お よ
- 137 -
びその 一次 ・二次 処理 後の回収物 が、OECD 諸 国に 輸 出 さ れ て 処 理 さ れる こ と に 対 し
ては、何 ら 制約を 掛けていな い。そのため金 属資源 などはカナダ 、欧州等に輸 出され 、
資源回 収さ れてい るこ とが実情で ある。
また 、米 国 でもプ ラスチックや先 進国に おいて需要 がほ ぼなく なった CRT ガラ スな
どは中 国、 ベトナ ム、 ブラジルな どに流 れている状況で ある。
4.4
国際 資源循 環における資源 循環社 会像
この よ うに 見 る と 、 埋 立 を 最 小 化 する た めの 工 程 を 持 つ 日 本 、 環 境 汚 染 の 小 さ い 処
理 を 目 指 す 欧 州 、 徹 底 的 な 手 作業 に よ る 最 大 限 の 資 源 回 収 を 目 指す 中 国 、 国 内 で の 再
資 源 化 が 事 実 上 困 難 な 米 国 と 、国 ・ 地 域 に よ り 資 源 循 環 ・ リ サ イク ル の 考 え 方 、 方 法
はまっ たく 異なる 。
現在 、 各国 ・ 地 域 は 、 自 ら の エ リ アが 求 める 要 件 に 沿 っ た 処 理 を 進 め て い る が 、 規
制 の グ ロ ー バ ル 化 、 資 源 価 格 の高 騰 、 有 用 資 源 の 偏 在 ・ 資 源 ナ シ ョ ナ リ ズ ム に 端 を 発
す る 調 達 困 難 の 発 生 な ど 、 グ ロー バ ル 化 し 、 高 機 能 化 す る 製 品 を持 つ 製 造 業 が 必 要 と
なる取 組み は、今 後複 雑になる。
各国 ・ 地域 に 有 効 に 対 応 可 能 な 資 源循 環 ・リ サ イ ク ル の た め の 施 策 、 例 え ば リ サ イ
クル性 設計 や処理 支援 技術などの開発が 不可欠である。
- 138 -
第5章
グローバル製 品の低 環境負荷・ 易資 源循環 設計のため の技 術課題
これ ま での 議 論 か ら 、 グ ロ ー バ ル 製品 の 低環 境 負 荷 、 易 資 源 循 環 設 計 に 関 す る 課 題
は、
(1)循 環シス テム の設計 に関 する課 題、
(2)製品 設計に 関する課題 、および、
( 3)
具 体的 な リ サ イ ク ル 技 術 に大 別 で き る 。さ ら に、 そ れ ぞ れ の課 題 ( 1)~ ( 3)に は、
技 術 的 な 課 題 と 法 制 度 、 経 済 社会 シ ス テ ム に 主 と し て 起 因 す る 課題 に 大 別 で き る 。 本
章 で は 、 本 報 告 書 で 明 ら か に なっ た 課 題 の う ち 、 主 と し て 技 術 的要 因 が 大 き い 課 題 に
ついて 整理 し、そ の解 決に向けて、技術 開発の方向性に ついて 考察する。
5.1
課題 (1):循環 システ ムの設計に 関す る課題
大き く 、使 用 済 み 製 品 を ど の よ う に循 環 させ る か、 そ の 循 環 シ ス テ ム を ど の よ う に
設 計 す る か と い う 課 題 で あ る 。今 回 の 調 査 で 明 確 に 示 す こ と が で き た 点 は 、 各 地 域 の
循 環 シ ス テ ム に は 極 め て 強 い 地域 性 、 す な わ ち 、 法 制 度 、 経 済 状況 、 社 会 状 況 な ど の
相違が 強く 影響を 与え ていること である。その結果、 第 4 章にま とめられて いる よ う
に 、 埋 立 を 最 小 化 す る た め の 工程 を 持 つ 日 本 、 環 境 汚 染 の 小 さ い処 理 を 目 指 し 、 人 件
費 の 問 題 か ら 手 解 体 を 優 先 し ない 欧 州 、 徹 底 的 な 手 作 業 に よ る 最大 限 の 資 源 回 収 を 目
指 す 中 国 、 国 内 で の 再 資 源 化 が事 実 上 困 難 な 米 国 、 と い う よ う に、 異 な る コ ン セ プ ト
に基づ く循 環シス テム が構築され ている (これをここで は、循 環シナリオと呼 ぶ)。
一方 で 、我 が 国 を 除 く 諸 外 国 で は 、リ サ イク ル業 者 の グ ロ ー バ ル 化 、 寡 占 化 も 進 ん
で い る が 、 こ れ が 直 ち に 、 グ ロー バ ル 循 環 ( 多 国 間 に 跨 る 垂 直 分 業 を 包 含 す る リ サ イ
ク ル シ ス テ ム ) に 結 び つ い て いる 訳 で は な さ そ う で あ る 。 す な わち 、 米 国 に お け る グ
ロ ー バ ル 循 環 の 普 及 は 、 ス ー パー フ ァ ン ド 法 に よ る 精 錬 業 者 の 衰退 と い う 要 因 を 加 味
し て 考 え る べ き で あ り 、 中 国 にお け る 諸 外 国 か ら の リ サ イ ク ル 可能 製 品 ・ 素 材 の 受 け
入 れ も 、 中 国 の 急 速 な 経 済 成 長に よ る 極 端 な 素 材 不 足 と 法 制 度 の未 整 備 状 態 の 要 因 を
加 味 し て 考 え る べ き で あ り 、 これ ら の 状 況 か ら 、 使 用 済 み 製 品 のグ ロ ー バ ル 循 環 が 拡
大 し て 行 く と は 必 ず し も 言 え ない 。 む し ろ 重 要 な こ と は 、 現 状 のグ ロ ー バ ル 循 環 は 経
済 原 則 と 法 の 盲 点 を 突 い た 側 面が 多 分 に あ り 、 環 境 影 響 の 面 か ら適 切 な 循 環 が 構 築 さ
れてい ると は言え ない点である。
今後は 、効率性を求め たグロ ーバル循環 化の流れと 、
( 希 少資源を含 めた )資 源確保 、
国 レ ベ ル で の 使 用 者 責 任 と し ての 使 用 国 処 理 、 環 境 影 響 最 小 化 など を 目 的 と し た 政 策
的 な ロ ー カ ル リ サ イ ク ル の 間 で種 々 の 試 行 錯 誤 が 続 く と 考 え ら れ、 リ サ イ ク ル を 中 心
と し た 循 環 に 限 っ て も 、 当 面 は、 シ ナ リ オ が 世 界 的 に 共 通 化 さ れ る の で は な く 、 地 域
- 139 -
特 性 に 根 ざ し た 様 々 に 異 な る シナ リ オ が 維 持 さ れ る と 考 え ら れ る。 む し ろ 、 ラ イ フ サ
イ ク ル の 明 示 化 、 ト レ ー サ ビ リテ ィ の 確 保 と い う レ ベ ル に お い て世 界 レ ベ ルで レ ベ ル
向上が 図ら れると考え られる。
この 意 味で 、 循 環 シ ス テ ム の 設 計 にお け る技 術 課 題 と し て 、 ト レ ー サビ リ テ ィ の 確
保 を 目 的 と し た ト ー タ ル サ プ ライ チ ェ ー ン 管 理 と 、 ラ イ フ サ イ ク ル を 通 じ た ス テ ー ク
ホルダ ー間 での情 報流 通の二つが あげら れる。
トレー サビ リティの確 保に関 して 言えば、製 品カテ ゴリー(CRT テ レビ、冷蔵 庫 等 )
単位で の EPR(Extended Producer Responsibility、拡大生産者責 任)か ら、個別 製
造業者 単位での IPR(Individual Product Responsibility、個々の 製品に対 する 責任)、
個 体 管 理 と い う よ う に 徐 々 に 厳密 化 す る 方 向 で 進 む の は 間 違 い な い 。 米 国 に お け る グ
ロ ー バ ル な リ サ イ ク ル 業 者 に おけ る 高 度 な ト レ ー サ ビ リ テ ィ 確 保の 例 が 見 ら れ た が 、
一 般 的 に は 、 ト レ ー サ ビ リ テ ィ確 保 の た め の 管 理 コ ス ト の 増 大 とそ れ に 対 す る 社 会 的
信 用 を 含 め た 経 済 的 、 環 境 負 荷削 減 な ど の 効 果 の 関 係 性 を 客 観 的に 評 価 す る こ と が 課
題 と し て 残 さ れ て い る 。 ま た 、い ず れ の 地 域 シ ナ リ オ に お い て も回 収 率 向 上 は 重 要 な
課 題 で あ り 、 こ の 意 味 で も 、 リサ イ ク ル 業 者 に 入 っ て か ら の ト レ ー サ ビ リ テ ィ の み な
ら ず 、 製 品 が 廃 棄 す る 前 の 段 階、 も し く は 、 製 品 販 売 時 点か ら の ト レ ー サ ビ リ テ ィ 確
保が大 きな 課題で ある 。これは、 使用済 み製品の 約 50%が 家 電 リ サ イ クル ・ ル ー ト に
乗 っ て お ら ず 、 ま た 、 家 電 リ サイ ク ル 法 の 下 で の 不 適 切 な 製 品 リユ ー ス が 問 題 と な っ
て い る 我 が 国 に お い て も 重 大 な問 題 で あ る 。 グ ロ ー バ ル 製 品 に お い て は 特 に 、 ト レ ー
サ ビ リ テ ィ を 確 保 す る 仕 組 み を製 品 に エ ン ベ ッ ド す る 方 策 を 今 から 検 討 す べ き 必 要 性
が高い。
ライ フ サイ ク ル を 通 じ た ス テ ー ク ホル ダ ー間 で の 情 報 流 通 技 術 に つ い て は 、 本 報 告
でも再 三指 摘して いる ように、リ サイク ル業者から 、製造業者の有 害物(バ ッ テリー 、
蛍 光 管 )、 有 価 物 、 含 有 素 材に 関 す る 情 報 提 供 の ニ ー ズ は 非 常に 強 い 。 し か し な が ら 、
基盤的 な情 報流通 技術 、データベ ース技 術に関して は大 きな技 術開 発要素 は多 くなく 、
製 造 業 者 と リ サ イ ク ル 業 者 に 代表 さ れ る 逆 工 程 の 種 々 の ス テ ー クホ ル ダ ー の 間 の 協 業
の仕組みを 構築す るこ とが課題で ある 。技 術的な課 題と しては 、使 用済み 製品、部 品 、
部 材 と 情 報 を 対 応 づ け る 技 術 、お よ び 、 ロ ー テ ク 機 器 が 中 心 で あ る 逆 工 程 に お い て 、
必要な 時に 必要な 情報 を迅速に提 示でき る技術が挙げら れる。
5.2
課題 (2):製品 設計に 関す る課題
リユ ー ス、 リ サ イ ク ル 、 適 正 処 理 を含 め て、 使 用 済 み 製 品 を 再 資 源 化 し や す く す る
- 140 -
ように 、製 品を設 計す る技術課題 である 。
本報 告 書に お い て も 多 数 の 製 品 設 計に 対 する ニ ー ズ が 挙 げ ら れ て い る 。 こ れ ら は 例
え ば 、 易 分 解 化 、 有 害 物 質 の 易除 去 、 貴 金 属 が 一 箇 所 に 集 ま る 製品 構 造 、 不 要 材 料 の
選 別 、 一 体 と し て リ サ イ ク ル でき る 材 料 統 一 化 、 材 質 表 示 、 複 合 部 材 の 手 解 体 ・ 易 解
体 性 な ど で あ る 。 こ れ ら の 課 題に 対 し て 、 要 素 設 計 技 術 と し て は既 に あ る と 見 る こ と
が 妥 当 で あ ろ う 。 す な わ ち 、 分解 性 設 計 技 術 、 リ サ イ ク ル 性 設 計技 術 、 モ ジ ュ ー ル 化
設 計技 術 、 材料統 一化 設 計、 材 質表 示設 計な ど である
1 )。 むしろ 問 題 はこ れ ら要 素設
計技術 の適 用方法 にあ り、 第 4 章に ま と め ら れた地 域 で 異 な る循 環 シ ナリ オ を 考 慮 し
て い な い こ と 、 設 計 者 が 教 条 主義 的 な 製 品 ア セ ス メ ン ト マ ニ ュ アル に 従 い こ れ ら の 要
素 設 計 技 術 を 適 用 し て お り 、 現実 と 対 応 し て い な い こ と に 問 題 があ る 。 す な わ ち 、 同
じ 解 体 性 設 計 を と っ て も 、 有 価物 の リ ユ ー ス の た め の 解 体 性 設 計、 有 害 物 質 を 除 去 す
る た め の 解 体 性 設 計 、 有 価 素 材を 回 収 す る た め の 解 体 性 設 計 は 、技 術 と し て は 同 じ で
も、得 られ る製品 形態は大きく異 なる。
この 問 題に 対 し て は 、 製 品 開 発 段 階で の 、製 造 業 者 、 リ サ イ ク ル 業 者、 精 錬 業 者 等
の 対 話 、 も し く は 各 プ ロ セ ス を明 確 化 し 、 各 シ ナ リ オ に 適 し た 製品 設 計 と リ バ ー ス ロ
ジステ ィッ クス 、処理 プロセ スの 設計 、計画を 行う、ま さに「ライフサイクル 設計 」1 )
の必要性が 明確化 され たと言って 良い。
特に 、 グロ ー バ ル 製 品 に お い て 固 有の 問 題と な る の は 、 こ れ ら 地 域 で 異 な る 循 環 シ
ナ リ オ に 合 わ せ て 個 別 対 応 の 再資 源 化 設 計 を 行 う の か 、 ど の 循 環シ ナ リ オ に も 適 応 可
能 な ユ ニ バ ー サ ル な 再 資 源 化 設計 を 行 う の か と い う 点 に 戦 略 的 な判 断 を 必 要 と す る 。
す な わ ち 、 こ の よ う な 戦 略 的 判断 を 具 体 的 な 製 品 設 計 、 製 品 設 計技 術 に 落 と し 込 む シ
ス テ ム 化 技 術 が 大 き な 課 題 と して 挙 げ ら れ る 。 こ の 問 題 に 対 し て は 、 各 地 域 の 実 情 に
合 わ せ た 循 環 シ ナ リ オ を 常 に 収集 、 ア ッ プ デ ー ト し 、 各 地 域 で 適用 可 能 な 処 理 技 術 の
デ ー タ ベ ー ス を 構 築 し 、 こ の 情報 を 用 い て 、 計 算 機 上 で 設 計 対 象製 品 の デ ジ タ ル 再 資
源 化 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 い 、再 資 源 化 設 計 の 効 果 を 定 量 的 に 評価 す る シ ス テ ム の 構
築を提 案す る。
米国 で 注目 を 集 め て い る 「 リ ユ ー ス設 計 」に つ い て も 問 題 の 構 造 は 同 様 で あ る 。 す
な わ ち 、 リ ユ ー ス 設 計 と は 、 モジ ュ ー ル 化 設 計 、 分 解 性 設 計 、 劣化 予 測 技 術 、 劣 化 不
感 化 設 計 、 易 洗 浄・ 検 査 設 計 など の 要 素 設 計 技 術 の 総 合 化 設 計 課 題で あ り 、 適 切 な リ
ユ ー ス シ ナ リ オ の 設 定 と そ れ に対 応 し た 製 品 設 計 、 プ ロ セ ス 設 計が 鍵 を 握 っ て い る 。
た だ し 、 リ ユ ー ス は リ サ イ ク ルよ り も 一 般 に 高 付 加 価 値 で あ り 、環 境 負 荷 削 減 効 果 も
大 き い の で 、 経 済 合 理 性 が よ り高 く 、 こ の 意 味 で 実 現 可 能 性 が 高い 。 た だ し、 リ ユ ー
- 141 -
ス 品 の 発 展 途 上 国 へ の 流 出 は 、そ の 後 の ト レ ー サ ビ リ テ ィ 確 保 を困 難 に す る の で 、 こ
の 点 で 注 意 が 必 要 で あ る 。 い ずれ に せ よ 、 リ ユ ー ス 、 リ サ イ ク ルを 含 め た 設 計 技 術 に
お い て 我 が 国 の 先 進 性 を 維 持 、確 保 す る た め に も 、 ラ イ フ サ イ ク ル 設 計 技 術 の 向 上 が
重要な 課題 である 。
再資源 化設 計の非 技術 的な課 題と しては、以 下の点 が挙げられる。
・
技術的には可能であっても、その設計技術を適用することにより発生する
オーバ ーヘ ッドコ スト や、全体性 能への 影響のトレード オフ問 題。
・
製品開 発時 期と製 品が 使用済みに なる時 期の時間的な遅 れに起 因する問題。
・
製造業者がこれら再資源化設計を行う場合に、それが商品選択理由などの
製品競争力に結びつくか、設計を行った投資が再資源化時点で製造業者に
還元さ れる 仕組み の構 築。
5.3
課題 (3):具体 的なリ サイ クル技 術に 関する課題
破砕 技 術、 金 属 と プ ラ ス チ ッ ク の 分離 技 術な ど の 具 体 的な リ サ イ ク ル 技 術 の 課 題 で
ある。課 題( 3)については 、基 本的な技術 の開発 は既に世の中で 行われ ており、解 決
で き な い 要 素 技 術 ( 例 え ば 、 プラ ス チ ッ ク 材 料 の 素 材 毎 の 選 別 技術 ) に 関 す る 共 通 認
識 も あ る と 整 理 で き る 。 こ の 意味 で 、 引 き 続 き 着 実 な 技 術 開 発 は必 要 で あ る も の の 、
そ の 技 術 の 導 入 に 対 す る 経 済 合理 性 ( 技 術 導 入 が コ ス ト 的 に 見 合わ な い ) が 主 要 な 課
題であると 考えら れる 。具体的に は以下 の点が挙げられ る。
・
希少金 属の 回収、 リサ イクル技術 の開発 。
・
FPD に代 表され る、 高機能な新 製品に対す る適 切 な再 資源化処理 技術 の 問
題。この点は、要素技術の問題もあるが、新たなカテゴリーの製品に対し
て、要素技術を組み合わせてプロセス設計を迅速に行う手法も大きな課題
である と考 えられ る。
リサ イ クル 技 術 に 関 し て 重 要 な 課 題は 、 リサ イ ク ル 工 程 の 環 境 影 響 と経 済 性 の 定 量
的 評 価 技 術 で あ る 。 特 に 、 手 解体 の 有 無 に よ る 得 ら れ る リ サ イ ク ル 材 料 の 質 、 有 害 物
質 の回 収 率、 そ れ に伴 う 経済 性 、お よ び 、CO 2 排出 削 減効 果 の評 価は 、よ り 一層 の具
体 化 が 必 要 で あ る 。 こ れ に よ り例 え ば 、 我 が 国 の 家 電 リ サ イ ク ル法 の 下 で の リ サ イ ク
ルプロ セス の優位 性、 自己循環プ ラスチ ックの効果の定 量的な 評価が可能にな る。
5.4
まと め
我が 国 の家 電 リ サ イ ク ル 法 の 下 で 、製 造 業者 が ラ イ フ サ イ ク ル 全 体 に 責 任 を 持 つ 仕
- 142 -
組みは、 IPR の 明 確 化 、リサ イ ク ル 工 程 へ の 設 計情 報の 流 通 、 ま た 逆 に、 リ サ イ ク ル
工 程 の 経 験 の 製 品 設 計 へ の 反 映、 リ サ イ ク ル 材 の 生 産 で の 活 用 (自 己 循 環 な ど ) と い
っ た 面 で メ リ ッ ト が 多 く 、 循 環生 産 に 向 け た 一 つ の 理 想 的 な 形 態で あ る が 、 世 界 的 な
視 野 で 見 れ ば 例 外 的 な 状 況 で ある 。 例 え ば 、 今 回 の 調 査 に お い ても 日 本 以 外 で は 埋 め
立 て 処 理 の 話 が 殆 ど 話 題 に 上 って い な い 、 我 が 国 に は 国 内 に 有 力 な 家 電 製 造 業 者 が ひ
し め い て い る と い っ た 特 殊 事 情に 起 因 し て こ の よ う な状 況 に な った と 考 え ら れ る 。 技
術 的 に は 、 個 々 の 要 素 技 術 、 例え ば 、 リ サ イ ク ル 性 を 高 め る た めの 易 分 解 設 計 技 術 、
は 既 に 存 在 し て い る と 考 え ら れる が 、 そ れ ら の 技 術 の 普 及 、 日 々の 設 計 開 発 活 動 に お
け る 十 分 な 活 用 に 課 題 が あ り 、さ ら に は 、 こ れ ら 要 素 技 術 を 有 効に 活 用 す る た め の シ
ス テ ム 化 技 術 が 欠 け て い る と 考え ら れ る 。 こ の 意 味 で 、 こ の 特 殊な リ サ イ ク ル ・ シ ス
テムも さら に高度 化で きる余地が 大きい と考えられる 。特に重 要な課題として 、5.2 で
挙 げ た リ サ イ ク ル プ ロ セ ス の 評価 技 術 、 リ ユ ー ス を 含 め た 戦 略 的な 循 環 生 産を 具 体 的
な製品設計 に落と し込 むライフサ イクル設計技術が挙げ られる 。
日本 の 製造 業 が 製 造 す る グ ロ ー バ ル製 品 の拡 大 生 産 者 責 任 を こ れ ま で 以 上 に 問 わ れ
る 状 況 に な っ た 場 合 に 、 こ れ が、 協 業 ・ 連 携 に よ り ラ イ フ サ イ ク ル マ ネ ジ メ ン ト を 行
う 仕 組 み に 拡 散 す る と き に 、 どの よ う な 形 態 が 考 え ら れ る か 。 特に 、 リ サ イ ク ル を 手
広く扱 うリ サイク ル・ スキームの 枠組の 中では、 IPR の 実 施 が 本 質 的 に困 難 な の で は
な い か な ど 、 グ ロ ー バ ル 製 品 の循 環 シ ナ リ オ に つ い て の 合 理 的 な検 討 が ま す ま す 重 要
に な っ た こ と が 明 ら か に な っ た。 特 に 、 ゴ ミ 処 理 の 高 度 化 と し ての リ サ イ ク ル か ら 、
資 源 ・ 素 材 ・ 部 品 の 最 上 流 と して の 循 環 生 産 と い う コ ン セ プ ト を我 が 国 と し て 発 信 し
続けること が重要 であ ると考える 。
参考文 献
1) 木 村 文 彦 他 (編 著 ): イ ン バ ー ス ・ マ ニ ュ フ ァ ク チ ャ リ ン グ ハ ン ド ブ ッ ク , 丸 善 ,
2004.
- 143 -
第6章
総括
使用済み電気、電子機器の処理については、我が国の家電リサイクル法、欧州の
WEEE 指令 等、各国で 規制が 導入 されつつあ り、効 果的なリサイク ルの実 現がま す ま
す重要な課 題とな って いる。また 、最近 の BRICs 等の急速な経済 発展に ともない 、資
源不足 の問 題が顕 在化 しており、 その面 でもリサイクル の重要 性は高まってい る。
一方、デジ タル家 電、OA 機器、自動車 など の製品は、市場のグロ ーバル 化が急 速 に
進 行 し て お り 、 生 産 、 使 用 、 再使 用 、 使 用 済 み 製 品 の 処 理 と い った ラ イ フ サ イ ク ル の
各段階で の プロセ スが 異なった国 で実施されるという状 況があ る。
この よ うな グ ロ ー バ ル 製 品 の 資 源 循環 に 関し て は 、 技 術 的 に は 、 易 資 源 循 環 製 品 設
計 と リ サ イ ク ル と を 整 合 さ せ た設 計 ・ リ サ イ ク ル 技 術 の 開 発 、 およ び グ ロ ー バ ル な 資
源 循 環 を 可 能 に する 循 環 チ ェ ー ン の 構 築 技 術の 開 発の 問 題 と し て 捉 え る こ と が で き る 。
本調 査 研究 が 主 に 取 り 上 げ て い る 前者 の 課題 は 、 以 前 よ り そ れ な り に は 検 討 さ れ て
き た 問 題 で あ る が 、 そ れ ら は 、例 え ば 日 本 で あ れ ば 日 本 に お け る法 規 制 、 回 収 メ カ ニ
ズ ム 、 リ サ イ ク ル 施 設 等 を 暗 黙の 前 提 と し て い る 。 と こ ろ が 、 実際 に は 、 世 界 各 地 域
で こ れ ら の 前 提 条 件 が 異 な っ てお り 、 そ れ に 基 づ い た リ サ イ ク ル技 術 や 易 資 源 循 環 製
品 設 計 技 術 に 対 す る 基 本 的 な 考え 方 も そ れ ぞ れ 違 っ て い る と 考 えら れ る 。 こ の よ う な
違いは、グ ローバ ル製 品の易資源 循環製 品設計の面から は大き な問題となって くる。
本調 査 研究 に お い て は 、 以 上 の よ うな 視 点か ら 、 世 界 各 地 域 の リ サ イク ル の 現 状 を
調 査 し 、 そ れ ぞ れ の 特 徴 を モ デル と し て ま と め た 。 ま た 、 こ れ らの リ サ イ ク ル 方 法 の
違 い が 資 源 回 収 効 率 、 環 境 負 荷の 面 か ら ど の よ う に 異 な る の か を見 る た め に 家 電 製 品
14 種類 136 台を用い たリサ イクル実験を行 った。これ らの研 究よ り、世界 各 地域の リ
サイク ルの 考え方 や技 術 に明らか な違い があることが分 かった 。
今回 明 らか と な っ た 違 い は 、 各 地 域で の リサ イ ク ル の ね ら い 、 設 備 や 回 収 ネ ッ ト ワ
ーク、ある いは、法規 制、社 会制 度とい った 多様な要因 に基づ くと考えられる 。今 後 、
我 が 国 が グ ロ ー バ ル 製 品 を 世 界各 地 に 供 給 し て い く 上 で 、 こ れ らの 違 い に 適 切 に 対 応
し て い く こ と は 非 常 に 重 要 で ある 。 そ の た め に は 、 今 回 の 調 査 で明 ら か に な っ た 違 い
に 関 し て さ ら に 詳 細 な 評 価 が 必要 と 考 え ら れ る 。 す な わ ち 、 今 回の 調 査 で は 、 リ サ イ
ク ル の モ デ ル 化 に つ い て は 、 主に 各 国 の リ サ イ ク ル プ ラ ン ト に お け る 処 理 プ ロ セ ス を
対 象 に 行 っ た が 、 こ れ ら を 、 法規 制 、 回 収 ネ ッ ト ワ ー ク な ど を 含め た リ サ イ ク ル シ ス
テ ム 全 体 の モ デ ル に 拡 張 す る 必要 が あ り 、 そ の た め に は 、 さ ら によ り 広 範 で 詳 細 な 調
査を実 施す る必要 があ ると考えら れる。
- 144 -
また 、 リサ イ ク ル 実 験 に 関 し て は 、今 回 行っ た よ う な 回 収 し た 材 料 の量 的 な 評 価 に
加えて、質 、価 値な ど の面か らの評価も必要 となる 。こ のよう な評 価を行うた めには 、
そ の 前 提 と し て 、 リ サ イ ク ル の本 来 の 目 的 で あ る 資 源 ・ 環 境 問 題の 軽 減 の 評 価 に 明 示
的に繋 がる 評価の 体系 化を図るこ とが重 要である。
さら に 、以 上 の よ う な 、 モ デ ル と 評価 体 系に 基 づ い て 、 各 地 域 の リ サ イ ク ル 特 性 に
つ い て の デ ー タ ベ ー ス を 構 築 し、 そ れ に 基 づ い た リ サ イ ク ル プ ロセ ス の 最 適 化 の 方 法
論 を 確 立 す る と と も に 、 そ れ らと 整 合 し た グ ロ ー バ ル 製 品 の 易 資 源 循 環 製 品 設 計 の 方
法論を 確立 してい くこ とが必要で ある。
現在 の 資源 ・ 環 境 問 題の 逼 迫 し た 状況 か ら 考 え て 、 こ の よ う な リ サ イク ル の 評 価 体
系とプ ロセ スの最 適化 、および易 資源循 環製品設計 技術 の検討 は緊 急の課 題で あるが 、
こ の よ う な 研 究 は 一 企 業 あ る いは 一 国 で で き る こ こ と で は な く 、そ の 意 味 で も 、 本 研
究の成 果に 基づい た早 急な研究体 制の確 立が必要と考え られる 。
最後 に 、本 調 査 研 究 を 進 め る に あ たり ご 協力 を い た だ い た 方 々 に 深 く 感 謝 の 意 を 表
す る と と も に 、 本 調 査 研 究 の 成果 が 今 後 の グ ロ ー バ ル 製 品 の 易 資 源 循 環 製 品 設 計 お よ
び循環技術 の確立 に資 することを 強く期 待する次第であ る。
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執筆者
(財)製造科学技術 セン ター
八木 淳一
2.1.1
(財)製造科学技術 セン ター
八木 淳一
2.1.2
(株)日立製作所
2.1.3
東京大学
2.1.4
東京エコリ サイク ル(株)
2.2
(財)製造科学技術 セン ター
第3章
東京エコリ サイク ル(株)
第4章
(株)日立製作所
第5章
大阪大学
第6章
早稲田大学
第1章
第2章
熊澤 孝明
中谷 隼( 平尾雅 彦)
根本 武
八木 淳一
馬場 研二
弘重 雄三
梅田 靖
高田 祥 三
非 売 品
禁無断転載
平 成 1 9 年 度
グローバル 製品の 資源循環におけ る
低環境 負荷・易資源循 環製品 設計技術
に関す る調査研究 報告 書
発
行
発行者
平成20年3月
社団法人 日本機 械工業連合会
〒105-0011
東京都港区 芝公園 三丁 目5番8号
電 話 0 3-3 434-538 4
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