風力発電システム IEC/TC88 国際標準化の動向

■ウィンドウズ
オブ
Wind
(風の窓)
風力発電システム IEC/TC88 国際標準化の動向
一般社団法人日本電機工業会 新エネルギー部 技術課 課長
石山 卓弘
1.はじめに
ここでは,一般社団法人日本電機工業会
(JEMA)が審議団体を努める風力発電システム
の国際標準(設計基準・試験方法などの規格)
を制定・管理している IEC/TC88 の概要,風力
発電事業における位置づけ及び最近の動向を
紹介する。
風力発電システムの国際標準化は,IEC(国
際電気標準会議)の Technical Committee 88
(通称:TC88)でなされ,概要を以下に示す。







TC88 名称:Wind Turbines
設 立:1988 年
議長国:米国
幹事国:デンマーク
参加国:P メンバー 25 か国,O メンバー 13 か国
風車の国際規格:IEC61400 シリーズ
国内審議団体:JEMA
2.風力発電システムの国際標準化
2.1 世界における風力発電の動向
図 1 に世界の風力発電導入量の変遷を示す。
欧州を中心に市場が形成され,続いて米国,中
国,インドなどの大規模な市場が形成された。
日本の風力累積導入量(GWEC 2013 年末)は,
2,661MW(1922 基)世界の第 18 位(シェア 0.8%)
で,我が国の消費電力おける風力発電による発
電電力量の割合は,0.3%と留まっているが,政
府による固定価格買取制度(FIT)の導入によ
り今後の躍進が見込まれている。
風力発電システムの標準化もこの導入量の
変遷と同様に,欧州が主導して始まるが,米国,
続いて,アジア諸国(日本,韓国,中国など)
において新市場創出や技術開発に合わせた標
準化への課題が顕在化し,国際標準化の重要性
が増している。そのため,規格作成においても
グローバルな審議が活発になされている。
図 1. 世界の風力発電累積導入量と日本の
ポジション(出典 GWEC)
2.2 風力発電導入のステークホルダー
風力発電システムは火力発電等の発電単価
より高い為,導入拡大には図 2 に示すように,
政府のエネルギー政策にも依存する。導入に当
たっては様々なステークホルダーが係わって
いることが分かる。
図 3 に風力発電導入における標準化の位置づ
けを示す。一般的な標準化は,製品に対する設
計基準及び試験方法など製造者が主に活用す
るものと思われがちだが,風力発電システムの
標準化は,製造者に留まらず,風力発電事業者
など広いステークホルダーの意見集約が求め
られている。
図 2. 風力発電導入の原動力
図 3. 風力発電導入における標準化の位置づけ
2.3 規格の発行状況
風力発電システムの標準化では,風車本体の
設計基準,部品の設計基準,及び性能評価基準
などを規定している。
規格の体系を図 4 に示す。
現在の IEC 規格は,先進的な欧米での気象条
件や知見が基礎となり策定されている。我が国
では,これまでこの IEC 規格と整合(完全一致)
した日本工業規格(JIS)を策定している。こ
れまでの IEC 規格及び JIS の発行状況を図 5 に
示す。
風車の国際規格は,一部電機部品を除き,
1988 年より IEC/TC88 で審議が行われており,
IEC61400 シリーズとして発行されている。これ
までに国際規格(IS)が 17 件,技術仕様書(TS)
が 5 件発行されている。IEC/TC88 に対しては,
一般社団法人日本電機工業会が日本の窓口(審
議団体)として,委員会を運営して国際会議対
応及び JIS 審議を行っている。現在の審議体制
を図 6 に示す。
風力発電システムの JIS は,IEC61400 として
発行されている規格を翻訳して JIS C1400 シリ
ーズとして発行されている。全ての IEC 規格を
JIS として発行しているわけではなく,国内で
の必要性を鑑みて現時点で IEC と整合した JIS
を 5 件,日本独自の JIS を 1 件,技術資料(TR)
を 1 件発行している。
本体の設計
性能評価
IEC61400-1 大形風車設計
IEC61400-2 小形風車設計
IEC61400-3 洋上風車設計
IEC61400-3-2 浮体式洋上風車
IEC61400-11 騒音測定
IEC61400-12-1 性能試験方法
(パワーカーブ認証)
IEC61400-12-2 性能試験方法
(ナセル風速計)
IEC61400-13 機械的荷重計測
IEC61400-14 音響パワーレベル
IEC61400-15 風条件のサイトアセス
IEC61400-21 電力品質
IEC61400-23 実翼構造強度
IEC61400-24 雷保護
IEC61400-26 シリーズ
利用可能率(風車/発電所)
部品の設計
IEC61400-4 ギヤボックス
IEC61400-5 ロータブレード
IEC61400-6 タワー・基礎
IEC61400-7 パワーコンバータ
IEC60076-16 風車用変圧器
互換性・その他
IEC61400-25 シリーズ
監視制御用通信
IEC61400-27 シリーズ
電力シミュレーション
用語
IEV60050-415
用語-風力発電分野
適合性評価
IEC61400-22
適合性試験及び認証
図 4. 風力発電システムの国際規格体系 (IEC61400 シリーズ)
WGs
規格名称
MT1
風車の設計要件
MT2
小形風車の設計要件
WG3
洋上風車の設計要件
PT61400-3-2
JWG 1
PT 61400-5
PT 61400-6
PT 61400-7
MT 11
浮体式洋上風車の設計要件
風車のギヤボックスの設計要件
風車翼の設計要件
風車のタワー及び基礎の設計要件
風車用パワーコンバータの安全要件
騒音測定方法
IEC
IEC 61400-1 Ed. 3.0
IEC 61400-1-am1 Ed. 3.0
IEC 61400-1 Ed. 4.0
IEC 61400-2 Ed. 2.0
IEC 61400-2 Ed. 3.0
IEC 61400-3 Ed. 1.0
IEC 61400-3 Ed. 2.0
IEC/TS 61400-3-2 Ed. 1.0
IEC 61400-4 Ed. 1.0
IEC 61400-5 Ed. 1.0
IEC 61400-6 Ed. 1.0
PNW 88-493 Ed. 1.0
IEC 61400-11 Ed. 2.0
IEC 61400-11-am1 Ed. 2.0
IEC 61400-11 Ed. 3.0
IEC 61400-12-1 Ed. 1.0
IEC 61400-12-1 Ed. 2.0
IEC 61400-12-2 Ed. 1.0
MT 12-1
発電用風車の性能試験方法
PT 61400-12-2
JWG25
ナセル風速計による風車の性能計測方法
発電用風車性能計測のための数値シミュレーションにもとづ IEC61400-12-4
(提案検討中)
く風速推定法
IEC/TS 61400-13 Ed. 1.0
機械的荷重の計測方法
IEC 61400-13 Ed. 1.0
IEC/TS 61400-14 Ed. 1.0
風車の音響パワーレベル及び純音性評価値の表示
IEC 61400-15 Ed.1.
風力発電所の風条件に関するサイトアセスメント
IEC 61400-21 Ed. 2.0
系統連系風車の電力品質特性の測定及び評価
IEC 61400-21-1 Ed. 1.0
系統連系風車の電力品質特性の測定及び評価
PNW 88-499 Ed. 1.0
風力発電所の電力品質特性の測定及び評価
IEC 61400-22 Ed. 1.0
適合性評価方法及び認証
IEC/TS 61400-23 Ed. 1.0
実翼構造強度試験
IEC 61400-23 Ed. 1.0
IEC 61400-24 Ed. 1.0
風車の雷保護
IEC 61400-25-1 Ed. 1.0
風力発電所の監視制御用通信:原則及びモデル全般
(MT25)
風力発電所の監視制御用通信:情報モデル
PT61400-12-4
MT13
WG14
WG15
MT21
MT22
MT23
MT24
風力発電所の監視制御用通信:情報交換モデル
風力発電所の監視制御用通信: XMLベースの通信プロファ
イルへのマップ
風力発電所の監視制御用通信:適合性試験
風力発電所の監視制御用通信:状況監視用ロジカルノード
クラス及びデータクラス
時間基準による風車の利用可能率
IEC 61400-25-2 Ed. 1.0
IEC 61400-25-2 Ed. 2.0
IEC 61400-25-3 Ed. 1.0
IEC 61400-25-3 Ed. 2.0
IEC 61400-25-4 Ed. 1.0
IEC 61400-25-5 Ed. 1.0
IEC 61400-25-6 Ed. 1.0
IS
IS
2CD
IS
-
JIS
JIS C 1400-1:2010
JIS C 1400-1:20XX (審議中)
JIS C 1400-2:2010
JIS C 1400-2:20XX (審議中)
JIS C 1400-3:20XX (制定予定)
JIS C 1400-11:2005
JIS C 1400-11:2005
/AMENDMENT 1:2010
JIS C 1400-11:20XX: (審議中)
JIS C 1400-12-1:2010
JIS C 1400-12-2:20XX (審議中)
JIS C 1400-12-4:20XX (審議中)
TS
1CD
TS
ANW
IS
JIS C 1400-21:2005
1CD
PNW
IS
JIS C 1400-22:20XX (制定予定)
TS
APUB
IS
JIS C 1400-24:20XX (制定予定)
IS
IS
CCDV
IS
CCDV
IS
IS
IS
利用可能率を基準とする風車の設備容量
TS
TS
ANW
ADIS
ANW
PNW
-
風力発電所の利用可能率
WG27
風力発電の電力シミュレーションモデル
風力発電所における風力発電の電力シミュレーションモデル
AHG1
風車:用語
JIS C 1400-0:2005
風力発電システム―第0部:風力発電用語
TR C 0045:2006
小形風車を安全に導入するための手引き
[IEC文書略称] NP:新業務提案,WD:作業原案,CD:委員会原案,CDV:投票用委員会原案,FDIS:最終国際規格案,IS:国際規格,TS:技術仕様書
TR:技術報告書 [IEC作業段階の略称] PNW:新業務の提案,ANW:新業務の承認,AMW:改正業務の承認,ACDV:CDV回覧の承認,CCDV:CDVの回覧
ADIS:FDIS回覧の承認,CDIS:FDISの回覧,APUB:発行の承認,PPUB:発行物(IS/TS/TRで表示)
PT 61400-26
IEC/TS 61400-26-1 Ed. 1.0
IEC/TS 61400-26-2 Ed. 1.0
IEC/TS 61400-26-3 Ed. 1.0
IEC 61400-27-1 Ed. 1.0
IEC 61400-27-2 Ed. 1.0
PNW 88-477 Ed. 1.0
作業
段階
IS
IS
WD
IS
IS
IS
WD
1CD
IS
ANW
ANW
PNW
IS
IS
発行済みの規格
現在作業中の規格(未発行)
イタリック ・・・最近の発行文書
図 5. 風力発電システムの IEC 規格及び JIS の発行状況
国内標準化審議体制
一般社団法人日本電機工業会
IEC61400 シリーズの開発
IEC TC88 (Wind Energy Systems)
風力発電システム標準化委員会(28 名)
MT21,JWG25,PT61400-26,WG27,etc
風力発電設計要件分科会 (20 名)
MT1,MT13,MT23,PT61400-5
小形風車設計要件分科会 (9 名)
MT2
洋上風車設計要件分科会 (21 名)
WG3
浮体式洋上風車設計要件分科会 (19 名)
PT61400-3-2
ギヤボックス設計要件分科会 (10 名)
JWG1
タワー・基礎設計要件分科会 (19 名)
PT61400-6
風車音測定方法分科会(8 名)
MT11
風力発電性能試験方法分科会 (21 名)
MT12
風力発電雷保護分科会 (11 名)
MT24
風力発電認証システム分科会 (16 名)
MT22
※括弧内の人数は,委員数
IEC61400 シリーズによる認証スキームの運用
CAB IECRE - Renewable Energy
WE OMC
図 6. JEMA 標準化(IEC 及び JIS)委員会の体制
2.4 風力標準化の最新トピックス
最近の話題として以下にいくつか紹介する。
 TC88 のスコープ拡大と名称の変更
Wind turbines ⇒ Wind Energy Systems
へ名称変更される予定である。
 TC88 の幹事国の変更
オランダ ⇒ デンマークへ幹事国が交代
した。(2013 年 5 月)
 IECRE の設立
風力発電システムを含む再生可能エネル
ギーの国際認証制度構築開始(2014 年 6 月)
 新規格:風条件に関するサイトアセスメント
米国より規格化が提案され WG15 設置・審
議開始された。
(2014 年 2 月)
 新規格:風車用パワーコンバータの安全要件
スペインが新規提案した。(2014 年 7 月)
 新規格:浮体式洋上風車の設計要件
IEC/TS61400-3-2 の素案完成(2014 年 6 月)
 JIS 発行の予定(2014 年 8 月)
JISC1400-3(洋上風車設計要件)
JISC1400-22(適合性及び認証試験)
JISC1400-24(雷保護)
2.5 規格の活用状況
(1)世界での活用
現在設置されている風車及び部品は,IEC 規
格,JIS 等の地域規格もしくは IEC 規格をベー
スとしたドイツ船級協会(GL)などの民間ガイ
ドラインに適合したものとなっている。また,
製造メーカ自身が,規格に適合していることを
証明することもあるが,信頼担保の為,第三者
機関が評価する認証(第三者認証)を取得する
ことが一般となっている。
風車は,巨大な構造物・電機設備であるが,
これら統一された基準及び第三者認証の活用
により信頼性の高い製品が量産・供給され,よ
り信頼性の高い風力発電事業が可能となって
きている。また,これら基準及び認証も更なる
信頼性向上のための見直しが行われている。
(2)日本での活用
日本においては,海外と同様に規格に適合し
た風車が設置されており,その多くは第三者認
証を取得している。その為,国内の導入ガイド
ラインとしても利用されている JEAC 5005(風
力発電規程)においても IEC61400 シリーズを
引用している。
また,20kW 未満の小形風車については固定価
格 買 取 制 度 ( FIT ) の 設 備 認 定 に お い て
JISC1400-2 をベースとした JSWTA0001 による認
証の取得が求められており,認証制度が 2012
年 7 月より運用されている。
3.風力標準化における我が国の取り組み
3.1 我が国における標準化の課題
我が国では,
国土の約 7 割が山岳地帯であり,
これに起因した高乱流並びに季節風あるいは
熱帯性低気圧起因の台風などによる極値風,雷
が原因と思われる故障・事故が顕在化したこと
から,独立行政法人新エネルギー・産業技術総
合開発機構(NEDO)は,我が国における風車の
設備利用率向上のため,風力発電施設の故障・
事故データの収集・原因分析を行い,利用率向
上に向けた報告書を取り纏めた。
また,これと平行して日本の環境に適合した
風車規格(指針)又は対策法の策定を目的に,
日本型風力発電ガイドライン(日本型風力発電
ガイドライン策定事業[H17-H19])を取り纏め
るとともに,次世代風力発電技術研究開発事業
(基礎・応用技術研究開発[H20-H24]及び自然
環境対応技術等/落雷保護対策[H20-H24])に
おいて,我が国の風及び雷条件に合致した風車
設計基準案及び対策方法を策定している。
図 8. 日本の国内環境に対応した基準の導入
された「①様々な立地制約を克服する技術的対
策を推進し,国内導入量の拡大を図る。②国内
市場で培った技術力を背景として海外市場で
競争力を有する国内企業を育成する。」という
目指す姿(目標)に向けた活動の一環である。
3.2 標準化の範囲拡大に向けた動向
前述の通り,国内設置環境を考慮した新たな
設計基準の IEC 規格への提案及び JIS の策定を
行っている。
現在,風力発電システム標準化委員会で推進
している主な活動は以下の通りである。
 大形風車設計に係わる台風,乱流,地震,
雷の基準及び評価方法の標準化
 洋上風車(着床式,浮体式)の標準化
 CFD を使った風速推定方法の標準化
 ナセル風速計を用いた性能評価法の JIS 制定
 小形風車の設計要件に関する JIS 改正
 風車音測定方法の JIS 改正
 タワー・基礎設計要件の国際標準化
 電力品質の測定・評価の国際標準化
 風車の国際認証制度の対応
図 7. 日本特有な気象条件と設置環境への対応
これらの標準化を推進することにより,国内
に設置される風車への適切な設計基準の提供,
これら成果の一部の標準化を推進しており,
風力発電事業への標準的な評価ツールの提供,
規格化が順次取り纏められている。これにより,
を行い,設置環境の厳しい地域(国内/海外)
国内の風力発電所の安定操業の確保,これら同
の市場拡大,国内設置風車の安全・信頼性の確
様の国内外の設置環境への市場拡大が見込ま
保を目指している。
れる。さらに,厳しい日本の立地環境を満足す
ることによる日本製品等の評価向上による輸
3.3 標準化活動における日本の主な成果
出促進効果,国内関連産業技術向上なども見込
(1)IEC 規格への日本意見の反映
まれる。これは,NEDO が平成 22 年 7 月に発行
① IEC61400-1 Ed4.0(大形風車の設計)
した再生可能エネルギー技術白書で示
 日本提案の台風トロピカルサイクロン用
風車クラス T(Vref,T=57.0m/s)が採用さ
れる見込みである。
日本提案の極高乱流カテゴリーH
(Iref=0.18)が採用される見込みである。
 極値風速及び地震荷重の評価法が採用さ
れる見込みである。
② IEC61400-2 Ed.3.0(小形風車の設計)
 日本提案(小形風車の EMC 測定方法)が
採用された。
③ IEC61400-3 Ed2.0(洋上風車の設計)
 日本の海象条件・評価法を提案中である。
④ IEC/TS61400-3-2 Ed1.0(浮体式洋上)
 日本意見を反映した文書構成及び内
容・基準・評価法で審議が進行中である。
⑤ IEC61400-6 Ed1.0(タワー・基礎)
 日本の建築基準法の土木学会指針の内
容をプレゼンし,提案中である。
(2)IEC 規格の開発への貢献
我が国からの規格開発への貢献が高まるに
つれて,日本での国際会議の開催の頻度が増加
し,日本のプレゼンスが向上している。2013 年
は下記の 6 つの国際会議を日本がホストした。
 2013.4.4-5 : 風車認証諮問委員会
 2013.4.8-10 : TC88 全体会議
 2013.4.11-12 : WG3(洋上風車)
 2013.4.15-16 : PT61400-3-2(浮体式)
 2013.9.24-26 : MT1(大形風車の設計)
 2013.9.27-28 : PT61400-6(タワー・基礎)
図 9. TC88 全体会議の日本開催(2013 京都)
(3)JIS の審議・作成・制定
以下の JIS 3 件が,
2014 年 8 月 20 日に公示(第
1 版発行)される予定である。
 JIS C 1400-3(洋上風車の設計)
 JIS C 1400-22(適合性試験及び認証)
 JIS C 1400-24(雷保護)
4.IEC 規格への適合性評価
風車製造メーカは,自社の製品が安全及び性
能に関する技術基準である「IEC 規格」に適合
していることを示すことにより,ユーザへの安
全性・信頼性を得ている。この適合の示し方と
して,①自己適合宣言,②第三者による認証の
2つの方法がある。
4.1 風力発電の国際認証制度
(1)IEC の認証の種類
認証基準(GL ガイドライン,IEC61400-22)
で規定された認証の種類及び概要は,図 10 の
通りである。
図 10. 風力発電に関する認証の種類
(2)認証基準で引用している主な規格
 IEC61400-1(大形風車の設計要件)
 IEC61400-2(小形風車の設計要件)
 IEC61400-3(洋上風車の設計要件)
 IEC61400-4(ギヤボックスの設計要件)
 IEC61400-11(騒音測定方法)
 IEC61400-12-1(性能試験方法)
 IEC61400-13(機械的荷重の計測方法)
 IEC61400-21(電力品質特性の測定・評価)
 IEC61400-24(雷保護)
 IEV60050-415(用語)
(3)民間の風車認証機関
DNV・GL,日本海事協会(ClassNK)
,TUV,UL,
KR,CGC 等が,風車認証サービスを提供してい
る。
図 11. IEC 国際認証スキームへの変革
(4)新たな認証制度の枠組み
風力発電システムの認証は,安全性・信頼性
の確保,輸出促進を目的に,市場及び製造メー
カが集中していた欧州で開始された。欧州の風
車メーカはもちろん,後発の欧州以外の風車メ
ーカも経験豊富な欧州の認証機関に依頼し,こ
れまでは,欧州機関の寡占状態であった。
しかし,グローバル化が進み各地域の要求が
増える中で認証機関の多様化の要望が増して
きた。このような背景から国際規格をベースと
した国際認証制度構築に向けた活動が開始さ
れている。
(図 11 参照)
IEC/CAB 適合性評価評議会
適合性評価システム
電子部品品質認証制度(IECQ)
電気機器・部品適合性試験認証制度(IECEE)
防爆機器適合試験制度(IECEx)
再生可能エネルギーシステム認証制度(IECRE)
海洋エネルギー運用管理委員会(ME OMC)
太陽光発電運用管理委員会(PV OMC)
風車の国際認証システム
風力エネルギー運用管理委員会(WE OMC)
認証機関グループ(CBC)
試験機関グループ(TL)
エンドユーザグループ(End User)
風車・部品製造者グループ(OEM)
小形風車グループ(SWT)(SWT)
図 12 再生可能エネルギー認証制度(IECRE)の概要
2011 年 5 月に国際風車認証諮問委員会(WT
Certification Advisory Committee)が設置
され,2010 年 6 月に発行された適合性試験及び
認証( IEC 61400-22 )を再構築する活動が開
始されている。2013 年 4 月には,
CAB WT CAC/SC22
と TC88/MT22 との合同会議が設置され,規格改
定作業が開始された。
さらに議論を続けるにつれて,風力発電シス
テムだけでなく,太陽光発電システム,海洋エ
ネルギーを含めた再生可能エネルギーシステ
ムの認証システム(IECRE)を新たに設置する
ことが,2014 年 6 月の IEC の適合性評価評議会
(CAB)で承認された。図 12 に示す審議体制に
おいて,制度構築に向けたルール,手順の整備
が進められている。
5.まとめ
日本においても,IEC/TC88 風力発電システム
国際標準の主要な審議に参画し,日本の提案が
採用されるようになっている。成果が有効活用
され,さらなる信頼性・安全性の向上とコスト
低減を目指し,日本でも経済的で持続可能なク
リーンエネルギーの利用を最大化され,将来の
日本が目指す中長期ビジョンの原動力の一助
となることを祈念している。
謝辞
平成 26 年度の風力発電の標準化は,経済産業
省の新エネルギー等共通基盤整備促進事業の
支援を得て推進しているものである。ここに記
して関係者の皆様に感謝する。