シンポジウム| 中部からクールジャパン発信: 知多半島を例に中部エリアの食文化発信のあり方を考える 報 告 書 2016年4月30日 開催 会場:澤田酒造 株式会社 ・主催・ International Sake Federation 国際日本酒普及連盟 ・共催・ 東海4県21世紀國酒研究会 、澤田酒造株式会社 ・協力・ 中部からクールジャパン発信委員会、名城大学日本酒研究会 目次 1. 開会の背景 ɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɹ 2. 開催概要 ɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɹ (1) 概要 (2) 来場者内訳 3. 開催によせて ɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɹ 4. 開催内容 ɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɹ (1) 開会・来賓のご挨拶 - 伊藤忠彦 氏 - 宇澤達 氏 (2) 基調講演 - 丸山優 氏『欧州ワイン文化を取り巻く状況とクールジャパン発信へのヒント』 (3) ティーブレーク - 坪内浩文 氏「お茶のご案内」 (4) 加藤先生の基調講演にかえて - 宮田久司『シンポジウムの趣旨について - 知多・西三河における実践の提案』 (5) 活動発表 - 原田晃宏 氏『製造者から見たクールジャパン発信』 - 赤崎真紀子 氏『ルージュなプロジェクト…「発酵食文化」で世界と交流を!』 - 吉田綾子 氏『bien-美宴…日本酒と食の経験プロデュース』 (6) パネルディスカッション 『愛知・知多の食文化発信について∼私たちができること・地域としてできること』 - モデレーター:飯尾歩 氏 (7) 総括 - 高橋孝治 氏 (8) 第二部(懇親会)について 5. シンポジウムを終えて・関係者メッセージのご紹介 ɹɹɾɾɾɾɾɹ 6. 終了後アンケート回答・ご意見ɹɹ ɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɹ 7. おわりに(編集者まとめ) ɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɾɹ 1. 開会の背景 本シンポジウムは、当地における多様な関係者の今日までの取り組みと、知多半島、そして 愛知県を脈々と流れる醸造文化の歴史の中で、特に日本酒を中心とした、知多半島の食文化の 国際発信について、関心ある様々な人々が集い、現状を多様な視点から確認する場として、ま たその先を見据えるための場として開催された。 第一部のシンポジウムにおいては、学識経験者、製造者、交流事業のプロデューサー、国際 唎酒師、メディア関係者といった顔ぶれゲストスピーカーらの中で、それぞれの今日までの活 動と認識を持ち寄り、今回のタイトルにもなっている『中部からクールジャパン発信:知多半 島を例に中部エリアの食文化発信を考える』に関して、それぞれの見解を述べた。 第二部の懇親会では、知多半島の日本酒、知多の食材を用いたイタリアン、和らぎ水として のお茶という、郷土性に根ざした産品(物としての資源)を活用した経験のプロトタイプにつ いて提案され、楽しみ、共有することとなった。 今回の企画が成立した文脈の背景には、様々な関係者の取り組みや認識の集積、そして時代 的背景が既に存在していたことが全てとも言える。 まず第一に、本シンポジウムのタイトルにも登場している「中部からクールジャパン発信」 に関する動きである。中部エリアに「クールジャパン」の風が吹き始めたのは、平成24年5月 に「ENJOY JAPANESE KOKUSHU(國酒を楽しもう)」(通称「國酒プロジェクト」)という 国家プロジェクトが始まったことに起因する。 民主党政権下で始まった同プロジェクトの趣旨、すなわち日本のお酒をはじめとした食文化 を価値あるものとして発信を通じて、農林水産物やコンテンツをはじめとした文化的商品の輸 出やインバウンドを促進し、結果につなげていくという点については、その後も自民党政権下 に引き継がれ、標語である「クールジャパン」という言葉が国内を賑わすようになった。 詳細については、本シンポジウムの中でもゲストスピーカーが触れており割愛させて頂くが、 中部エリアについては、先述した「國酒プロジェクト」の立役者の一人でもあった佐藤宣之氏 が名古屋大学(大学院経済学研究科教授・当時)に就任され、その後「中部からクールジャパ ン発信委員会」を立ち上げたことにはじまり、同氏の積極的な働きかけにより、多様な関係者 が集い、「クールジャパン」について議論を重ね、また分野横断的なネットワークが築かれて いったということは、紛れも無く意義があったことであろうと思われる。 一方で、知多半島における地域連携による振興についての取り組みとしては、さらに り、 日本福祉大学が同地にキャンパスを移転させ、昭和63年に「知多半島総合研究所」を開設した ことに始まる。その後、広域的な産官学民のネットワーク化と事業推進の為の枠組みとして平 成11年に「知多ソフィア・ネットワーク」が同研究所のイニシアチブにより発足し、国(観光 庁)の「観光圏の整備による観光旅客の来訪及び滞在の促進に関する法律」(観光圏整備法) などの施策に対応する形で、平成21年に「知多半島観光圏協議会」が立ち上がることになった など、一連の流れが存在している。 「國酒」としての日本酒や醸造文化をはじめとした食文化発信と観光地域づくりは非分離の 関係であり、シンポジウムの中でもその重要性については触れられている。その中でも、今回 の企画に少なからず助言をいただいた、知多半島総合研究所の現顧問で、知多ソフィア・観光 ネットワークの会長を経て、新たに立ち上がった「知多半島観光圏協議会」の副会長でもある 山本勝子氏ら関係者の長年の功績も大きいと思われる。 近年におけるこれらの動きに触発され、そこでつながった関係性により本シンポジウムが開 催される運びとなったことについて、両名ならびに、携われた多くの関係者の皆さまに敬意を 示すとともに御礼を申し上げたい。 また、その基礎的な背景には、開催地である「知多半島」や西三河地区を含めた愛知県が、 歴史的に見ても日本酒、酢、味醂、味 、醤油の生産地として、国内でも有数な地方であり、 現在においても本会場をご提供いただき、企画を共催していただいた澤田酒造様、あるいは活 動発表やパネルディスカッションでご活躍頂いた原田酒造様、更にご来場頂いた生産者の方々 をはじめ、脈々とその「品質と伝統(quality & heritage)」を受け継ぎ、育てられている皆さま の日々の努力が存在し、担い手として創意工夫をされ、刻まれる歴史の中で、その文化的、産 業的発展を盛り立てているという現実が存在している。 醸造文化という点においては、同日ご登壇いただけなかった加藤雅士教授(名城大学農学部 応用微生物学研究室)をはじめ、発酵や微生物に関する数々の研究の蓄積と、それらの地域的 な連携や発信を通した社会的認知の向上を目指した「発酵文化研究会」のような活動もそれを 支える大切な要素として存在していると思われる。 その他、ゲストスピーカーの皆様やご来場者の皆様には様々なバックボーンがあり、今回、 一同に会し、多様な視点やアクティビティについての相互の理解を深め、第二部において一つ の飲食経験としての提案とともに様々な意見が交わされたことであろう。 本文の中で、イタリアの「スローフード運動」に関する言及もストーリーとして登場したが、 人々の豊かな生活に資するクオリティがそこに資産として「存在している」からこそ発生した ものであり、守るべき対象があり、守らなければならない脅威(危機感)もあったという両面 があったからこそ生まれたものであろう。 知多、西三河、あるいは愛知の醸造文化の発信を通じた保全という側面には、イタリアのピ エモンテ州(食文化が豊かであると同時に自動車・航空宇宙産業が存在している)でスローフー ド運動がその産声を上げ、イタリア全土のみならず、欧州全土・世界一帯へと広がりを見せた ように、やはり、守るべき対象と、守らなければならない脅威(危機感)の両面があり、だか らこそ取り組む意義と、波及効果をもたらす要素が内包されているように思われる。 そのような文脈からも、今回の錚々たるゲストスピーカーの皆さま、来場者の皆さま、また 協力・後援団体の関係者の皆さまの理解と関心の上で、会を開催し、場を共有することができ たことについて、大変意義を感じており、すべての関係者の皆さまにあらためて感謝の意を表 したい。 2. 開催概要 (1) 概要 催事名| 中部からクールジャパン:知多半島を例に中部エリアの食文化発信のあり方を考える 開催日時| 2016年4月30日(土) 第一部/13:30∼17:40 ・第二部/18:00∼19:30 会場| 澤田酒造株式会社(愛知県常滑市古場町4丁目10) 参加者数| 109名(別表来場者内訳参照・第二部はうち54名が参加) 関係団体| 主催:国際日本酒普及連盟 共催:東海4県21世紀國酒研究会、澤田酒造株式会社 協力:中部からクールジャパン発信委員会、名城大学日本酒研究会 後援:愛知県、常滑市、常滑商工会議所、半田商工会議所、名古屋日伊協会、名城大学、 愛知県酒造組合、半田酒造協同組合、中部国際空港株式会社 (2) 来場者内訳 来場者内訳(職種等分類) 来場者内訳(地域別分類) 製造者 16 公的機関 12 うち日本酒製造者 12名 知多半島 27 西三河地区 10 その他 愛知県内 44 地域団体・交流団体・組合等 9 メディア・映像関係 8 食品・小売・サービス 7 大学・学術研究機関 6 日本酒愛好団体等 4 不明 17 物流・流通業 2 合計 109 旅行業 2 金融 1 学生 1 一般 / その他 / 不明 合計 41 109 中部地区(愛知県除く) 5 その他 6 3. 開催によせて 英国王立国際問題研究所 客員研究員 中部からクールジャパン発信委員会 座長 佐藤 宣之 氏 シンポジウム| 中部からクールジャパン発信: 知多半島を例に中部エリアの食文化発信のあり方を考える の開催に寄せて - 中部からクールジャパン発信委員会座長からのメッセージ 名古屋、愛知、中部の皆様、お久しぶりです。 27年夏よりロンドン所在の世界的シンクタンク・チャタムハウス(英国王立国際問題研究所) 客員研究員に転じ、物理的には皆様から大分遠くなり、職場では唯一の日本人になってしまい ました。 公私に触れるテーマも難民、フランス・ベルギーでの同時多発テロ、英国のEU離脱 等々、欧州に関係するテーマ一色になりつつありますが、名古屋、愛知、中部の皆様のことは 決して忘れていません。 中部からクールジャパン発信委員会座長も続投して毎日のようにメンバーともやり取りして いますし、今年1月からは名古屋大学とチャタムハウスとの結節点の役割を期待されて名古屋 大学客員教授にも就任しました。それは同時に、名古屋、愛知、中部にはまだまだ多くの課題 があり、ロンドンに転勤しても放っておけないとの私自身の強い危機感の表れでもあります。 そうした中、懐かしい仲間の1人である宮田氏より今回シンポジウム開催のことを聞いて、 いてもたってもいられない気持ちになりました。まず以って、開催に至る準備過程での関係各 位のご努力に心より敬意を表したいと思います。 あわせて、今回のシンポジウムが「中部って良いね、凄いね」的なお決まりの自己満足に終 わらないよう、中部からクールジャパン発信委員会の27年7月の提言書の中から特に大事と思 われる個所2つをここに引用しておきましょう。 − 「中部の現状を見ると、名古屋という地名は知られているだろうが、京都、金沢な どと比較して地域ブランドはそれほど高くないと言わざるをえない。例えば、名古屋には 日本はおろか世界に冠たる和菓子、茶席文化の伝統が継承されているにもかかわらず、 名古屋、中部以外で知るものはどれだけいるだろうか。」 − 「中部、東海の共通の特徴として、中部の中でも特に名古屋の人的ネットワークの 強さは東京等と比べて目を見張るものがあり、団結力としての強みを有している半面、閉 鎖性、現状肯定等の弱みも内在していることに留意する必要がある。地元愛は決して悪で はないが、「名古屋は住みやすくて良いでしょ?」との名古屋特有の部外者への問いかけ は、事実関係は措くとして、「いいえ。」との回答をし難い意味において自由な言動を許 さず、流石に行き過ぎではないか。モノづくりを中核に主要産業地域を抱える中部、特 に名古屋にあっては、地域の繁栄にとどまらず日本全体の繁栄を担っているのであり、 一都市・地方として存在することは許されず、いわば「中核都市責任」を担う立場にある とも言えよう。」 それでは、今回のシンポジウムが中部からクールジャパン発信の大きな礎となることを心より 祈念して。 遠くロンドンの地より、活発な議論と結論が導かれていく様子を思い浮かべていま す。 平成28年4月30日 中部からクールジャパン発信委員会 座長 佐藤 宣之 国際日本酒普及連盟 代表理事 宮田 久司 知多半島の地をみた時、そこに暮らし生計を立てていた多くの人々の姿を思い浮かべます。 豊富で美味な魚介類を採る漁師、海運を担う水夫、江戸へと出荷する酒や醤油、酢、味醂、味 などの醸造産品を造る職人、それを入れるやきものを作 っていた陶芸家、それを統括する商 人。 そして、その生き生きとした姿の面影を、今日もなお、この地に息づいている産業の中に見 いだすことができます。そして、それを楽しみ続けている消費者である私たちがいます。 食の作り手や伝え手、その環境を構築しようとする人々、楽しむ人々。そのような人々に よって時代は作られていることを実感されられますが、時代の移り変わりとともに立ちはだか る変化の中で、Why(なぜ)それらの暮らしを守り育てていくことが重要であるか、What(何を)、 How(どうやっ て)それを守り伝えていくのか。 その様な、今、私たちが抱く問いかけに対し、今回のシンポジウムを一つのヒント、きっか けとして、過去から現在においてもこの地に根を下ろし暮らす人々の声なき思いや、この地に 価値を感じて関わる人々の期待を背景に、そして、ここ数十年の「知多ソフィアネットワー ク」が醸成した地域連携の土壌、今回、中部の地に一つの波風を起こした「中部からクールジャ パン発信」のインパクトを受け、知多半島から現代に即した地域のあり方を示す方向性、具体 的な動きが「出現」してくることを楽しみにしています。 ご参加いただきました方々にはもちろんのこと、今回、企画に携わっていただだいた関係者 の皆様、企画に際し特にご助言をいただきました「中部からクールジャパン発信委員会」座長 の佐藤宣之様、「日本福祉大学知多半島総合研究所」顧問の山本勝子様に感謝を申し上げます。 名城大学農学部応用微生物学研究科 教授 東海21世紀國酒研究会 会長 加藤 雅士 氏 平成25年12月に「和食」が『「自然の尊重」 という日本人の精神を体現した食に関する「社会 的慣習」』として、ユネスコ無形文化遺産に登録 され、日本の和食、食文化や食材が注目度を高め ています。私自身、昨年8月9日のミラノ万博会期 中に、『愛知の発酵食品の魅力』と題し、在ミラ ノスイス商工会議所にて行われたシンポジウムの 基調講演をさせていただき、現地における「和食」 に対する関心の高まりを肌で感じることができま した。 「食」をテーマとし、背景にある環境や 農業、 食の安全や貧困問題などに焦点を当てたミラノ万 博が世界に投げかけた問いかけの答え、その一つが、まさに先述した「和食」のユネスコ無形 文化遺産に登録された際の理由と重なっていることは、着目すべき点であるように感じます。 しかしながら、伝統的な食文化に対し、食の楽しみや悦びとともに、大切に守り育てていく という価値観や行動という側面においては、我が国以上に、1980年代後半から生まれた「ス ローフード」運動に代表されるようにイタリアにおいて盛んである一方で、日本においては、 大切な歴史的資産(遺産)を持ちながらも、常に喪失の分岐点にいるような危機感を感じていま す。 すでに、今、この土地に育まれてきた資産を、過去の遺産としてではなく、今日においても 私たちの豊かな、生きた文化として、楽しみ、育み、守るために、今一度、取り組みの見直し をしていくことが大切であると強く感じます。そして、今回、私の故郷でもあり、歴史的にも 和食の重要な食材である「醸造製品」のメッカである知多半島や西三河、そして自然風土を代 弁する地酒の生産地としても十分に力のある愛知がその発信地としての取り組みを始めること に、大変意義を感じています。 今回のシンポジウムも一つのきっかけに、 ぜひそのような社会的な機運が生まれ、 具体的な 取り組みへと結びついていくこ とを期待しております。 澤田酒造株式会社 会長 澤田 研一 氏 本日は澤田酒造にお越しいただきありがとうございます。 また、このような会を当社で開催 して頂きました「国際日本酒普及連盟」様に厚く御礼申し上げます。 当社は幕末の嘉永元年に、船の便が良く水質に恵まれたこの地に創業しました。当時知多郡 には二百を超える酒蔵があり、全国二番目の酒の大産地として栄えていました。その後時代は 変わって、現在は六蔵しか残っていませんが、依然として酒どころとして、また、その関連の 酢、味 、醤油など醸造業が盛んな地域です。 最近、日本食の世界遺産登録などと相まって、醗酵の効能が見直されていますが、観光資源 としても日本の食文化の粋として「日本酒」が再評価され始めたことを大変うれしく思いま す。 このような背景のもと、質、量ともに極めて優れた知多並びに西三河の醸造が多くの方々に 再認識され、日本はもとより世界の食通に ほんもの の素晴らしさを感じて頂きたいと願って います。 日本酒をはじめとするこの地域の醸造の素晴らしさは、原料の生産から始まり、製造、貯蔵 管理、ブレンドに至るまで、実に優れたものがあります。イメージだけでなく、優れたものづ くりの根拠を明確にしていくことで、世界で納得してもらえる「醸造のメッカ」になれればい いですね。 現在醸造業は大変厳しい環境にありますが、今後、世界で通じることが日本での生き残りに 通ずるのだと思っています。 私どもは息の長い活動を展開してまいりますので、どうか皆様に は、よろしくご理解ご協力を賜りますようお願い申し上げます。 4. 開催内容 (1) 開会・来賓のご挨拶 衆議院議員 伊藤 忠彦 氏 皆様方こんにちは。当地、知多半島から選 出させていただいております衆議院議員の伊 藤忠彦でございます。 今日は随分ネクタイをされておられる方が 多いのですが、クールジャパンと書いてあり ましたので、私はちょっと、こんな格好で参 りましてまことに恐縮です。でも皆さんにぜ ひ見ていただきたいものがあるのです。私の 体じゃないですよ、ここでプリントされてい るのは「亀崎潮干祭」というところで、ここ にある一番の特徴の食というのは、これ、実 は「串あさり」っていう食べ物をプリントし てある柄のTシャツなんです。 お祭りの時に食べるのが「串あさり」、そ して地酒を飲みながら亀崎の祭を見るという のが、長い長い間の文化なんです。 本日こうして澤田酒造様の大切な仕込み蔵 を使い、これからクールジャパンをどうやっ て世界に発信していこうかということについ て、様々な経験と知見ある皆様方のお話を聞 いていただくことになろうかと思いますが、 是非皆様方に知っていただきたいのは私たちは本当に素晴らしい中身があります。 そして、時代は、私も随分あちこちの外国に参りまして、大使館の対応や中身が変わってき たのは、今まで日本の大使館というと外国のワインを買っていました。この買いっぷりを全く 改めて、日本のお酒をどれだけ買ってくるかということが大事なテーマなんだというところま で変わってまいりました。 随分私もあっちこっちの大使館に行って、味あわせていただくんですが、自分は実はお酒が 飲めないんですが、ワインではなくて、日本酒を出してくるようになりました。 でもまだまだ私たちには、マーケットが外にあるんですよね。それで、日本食がどんどん伸び ていくことで、どんなことが起きているか。実は日本茶が伸びてまいりました。後でお茶の話 もあるかと思います。 ではお茶に通じて何が出てきたか、今、皆さんたちがおられる、常滑市の焼き物、常滑焼の急 須が欲しい、買いたいという人が、ヨーロッパでも出てまいりました。ここまで繋がっていく 話なんです。 それで一番、私が皆さんにやっていただかないといけないな、政府として力を貸して差し上 げなければいけないと思っていることは何かというと、やっぱりこれを知らせる、運ぶ、現物 を運ぶ、そして、運ぶ時にもやりやすくするということ。 今日は国税局の名古屋のトップの方にも来ていただいておりますし、空港の関係の方にも来 ていただいておられると思いますが、2027年に二本目の滑走路ができるというのはどういう 意味かと言いますと、物を運ばなきゃいけない。多くの物が向こうへ飛んでいかなきゃいけな い、そして向こうで買ってもらった人は、今度は、来てもらわなきゃいけない。そして楽しん でまた向こうに帰ってもらわなきゃいけない。こういうロールプレイングの中に、日本がどこ まで入りきれるかということをしっかりとやらないといけない。 その時に、今日皆さんに確認していただきたいのは、我々にはこんないいいものがある、我々 には、こんなに知恵がある。日本酒だってどんどん進化していますよね。先ほど私は、皆さん がパーティーをやられるところにあるお酒を見ていましたら、「アラフォー」(盛田「純米 AR4」のこと)というのがありました。私の家内が近づいて参りまして、このお酒を見たら怒 られるなと思ってパッと見たら、桜の花(酵母)でお酒が造ってあります。今日、原田酒造さ んが後でお話しされますが、ここはカーネーション(酵母)のお酒を造っています。 さらに半田では「モッコウバラ」という長いあいだ咲いてきた白いバラの花を使ったお酒が できようとしています。こういう工夫を重ねるということが私たちにはまだまだできる。そし て、本当に海外では味わったことのない、私たちの醸造の文化を伝えるには、まだまだ深い可 能性があるということを確認をしていただきたいなと、だからこそ、みんなでお金を出し合っ てでも、向こうに通じるように、そして向こうの人たちに売っていけるようにしていくことが、 私たちの文化発信の具体的なことなんだと思います。 ここに金融機関の人がいて欲しかった、金融機関の人がいてくれれば、そこまで ったこと ができるんじゃないか、ぜひ、ここで皆様方が、そうやって思ったことを本当に具体的にして いくということを次はしなければならない、こう思っています。 私たちは、何ができるかを考えさせていただきますが、一番大事なことは、メインで汗をか いて、「やった」っていう気持ちをみんなが掴むことです。そして、それを次につなぐこと。 ここまでやれてはじめて、実はクールジャパンを発信し、味わい、分かち合い、そして次に進 化する。こういうところまで行くことだと、そういうように思っています。 今日、私たちが目指したいことは、中部の、知多半島の醸造の文化を世界に花開かせていく ために、皆さんの間で確認をし、行動するという、このスタートを切ることをぜひみなさんと やっていただければと思います。 どうぞ、今日が有意義な1日となりますことを、心から祈念を申し上げて私の挨拶に代えさ せていただきます。今日は本当におめでとうございます。ありがとうございました。 国際日本酒普及連盟 代表理事 宮田 久司 皆様、本日はお忙しい中お越しいただきましてありがとうございます。 本日は、タイトルがちょっと長いんですが『中部からクールジャパン発信:知多半島を例に 中部エリアの食文化発信のあり方を考える』ということで、書類を作る時に長ったらしい文で、 皆様に申し訳ないなと思ったんですけれど、この長い名前を考えたのが、今日皆様が持ってお られる冊子に書いてありますけれども、イギリスのチャタムハウスというシンクタンクに行っ ておられる佐藤先生という方でして、もともと財務省で「國酒」のことに取り組んでおられ、 その後、中部に来ていただいて「中部からクールジャパン発信」ということで、いろいろな方 を巻き込んでプロジェクトを立ち上げられ、そんな中で私も参加させていただきましたし、今 日来賓・スピーカーで来ておられる方々も、そういった関係でかなりの方々に集まっていただ いて本日は、「中部からクールジャパン発信」というタイトルを入れて企画することになりま した。詳しくは、宇澤先生の方からいろいろなお話が聞けるかと思います。 まさにこの長いタイトルなんですけれども、本当にこの通りなのかなと思いまして、中部エ リアというのも、日本の文化というのも含めて、海のものもありますし、歴史的にはみなさん ご存知の通り「醸造のメッカ」であったということがありまして、今も常に「醸造のメッカ」 であり続けているということですが、先ほど伊藤先生が仰ったように、すでに資源があるとい う風に私も感じております。 そういった資源をどうやって情報として整理したり、みなさんで高め合うような動きをしたり とか、そういうところに思いを巡らせて次の行動につなげていただければ良いなと思います。 大変申し訳ないのですが、今日、基調講演の丸山先生の次に、もう一人のメインスピーカー であった加藤雅士先生という方がおみえなんですが、こちらの方は、醸造の研究をされている 方で、ぜひお話をしていただきたかったのですけれども、体調を悪くされまして入院をしてし まったものですから、急遽、ちょっとスケジュールを変更させていただいております。 本当は、すごくお一方お一方、長い時間をかけてお話しを頂きたい方ばかりなのですが、あ まり時間が取れないのですが、なんとかパネルディスカッションで皆様のお考えを凝縮させて、 整理して、次につなげていくことができればなというように期待をしております。 では、1日お楽しみください。本日はどうもありがとうございます。 名古屋大学大学院多元数理科学研究科 教授 中部からクールジャパン発信委員会 委員 宇沢 達 氏 宇澤と申します、よろしくお願い致します。 これも非常に名前が長くて申し訳ないんですけれども、大学院多元数理科学研究科というと ころで、本職は数学者です。本当は数理科学研究科にしようとしたら、東大に先に取られてし まいまして、同じ名前ですと商標と同じで通りませんので、じゃあ長くしようということで多 元数理科学研究科ということになったんですけれど、書く度に手が痛くなるというような具合 です。 「クールジャパン」とは、ということですが「クールブリタニア」、世界に冠たる大英帝国 「クールブリタニア」のもじりから来ているんだと思うんですけれど、ネーミングについては 色々批判はありますが、ここでは『日本人のための日本ではなく、日本の「良いもの」をより よく外からの目で見て良くしていこう』と、そういうこととして解釈しております。 それで、「こういうことをやっても意味があるのか?」ということですが、後でイタリアの 事例が出てきますので、世界の中での日本という観点からご説明いたします。 これは2009年の製品輸出の統計です。これは金額ベースで、ちょうど中国がドイツを抜いた 時ですので話題になったのを覚えている方も多いと思うんですけれども、一位が中国、二位が ドイツ、三位がアメリカ、次に日本が来まして、日本の次は中々出てこないんですけれど、オ ランダなんですね。その次にフランスとかイタリィとかきてきます。 皆さんの質問で出てくるのは、韓国はないのか、というと結構下で、ヨーロッパ諸国というの は、域内の貿易金額も多いと思うので、これをそのままにということにもいかないのですけれ ども、何が起こっているのかというと、数学者ですので数ベースで言いますと、ドイツの人口 は中国の20分の1なんですね、それでもほぼ製品輸出が同じと、ドイツの人口は日本と比較し ても63%程度、オランダの人口に至っては日本の7分の1なんですね。 それで、ドイツはどこが強いのかと言いますと、「Mittelstand」という中小企業とか家族経 営が多いんですけれども、そこが非常に強いんです。 今日お話しする前に確認してからと思ったのですが、大体雇用の60%、輸出の50%を 「Mittelstand」が担っていると言われています。 ですから、先ほどの数字を見ていただくとわ かりますように、輸出の60%ということは、日 本の全部が出している製品輸出と同じくらいの 輸出を、ドイツでは中小とか、家族経営のとこ ろが担っているということになります。 それで、ニッチ市場は、一国だけですと小さい のですけれど、グローバルニッチ市場で強いと ころです。 ですから、先ほど伊藤先生が仰っていたお茶 とか、日本酒も、日本一国で見れば小さい市場 かもしれないですけれど、全世界で愛好家を増 やせば非常に強くなると。 実は、ドイツでは「Mittelstand」がグローバ ル化とイノベーションの推進力になったと言われ ています。「Koening&Bauer」は印刷機を作る 会社なんですけれど、ここは売り上げの95%が 海外向けです。大体優良「Mittelstand」と言わ れるところは、平均23か国に販売代理店を持っています。例えば有名なのですと「Kaercher」 という高圧洗浄機っていうのもドイツの「Mittelstand」の製品ですよね。 ドイツ国内でも、(「Mittelstand」の)評価が高く、フランクフルト空港通過した時にポ スターがあったんで写真撮ってきたんですけれど、『ドイツは「Mittelstand」で成り立ってい る』と、これはドイツの銀行協会がポスター出しているんですね。その次に書いてあるのは「あ りがとう、時が来た」っていう。それだけ中小企業がいろんなことを担っているというのが象 徴的だと思います。 それで、ドイツにしてもオランダにしても、非常に特徴的なのは、製造業と農業というのが バランスが取れて発展しているという点だと思います。 農業の役割っていうのは、経済学的な分析をしますと非常に面白い、というのは市場経済で は捉えきれない役割を果たしています。 どういった役割を果たしているかと言いますと、自然環境をはじめとする「社会的共通資本」 という概念があるんですけど、それを持続的に維持する役割とかですね、人類が生存するため に最も重要な食糧生産、もう一つですね、農村という「社会的な場」がありまして、自然と人 間の調和的な関わり方を可能にして文化としての基礎をつくるという点があります。 その中では「造り酒屋さん」というのは、非常に象徴的な役割を果たしているわけです。米 という余剰生産があった時に、それをどうやって保存するかという時に、発酵技術、今で言え ばバイオですね、バイオベンチャーで非常に成功していたところというのが、ここを提供して いただいている澤田酒造さんとか、そういうとこも代表例だと思います。 のほうですと 校とか、甲南大学とか、造り酒屋さんが設立しています。教育でも大きな役 割を果たしています。 農業ですと、例えば、すみません、知多半島の写真を用意していなかったので今度是非提供 いただければと思うんですけれども、こういった形で持続的な農業をやっていたのですね。 それでやらなかった場合どういう風になるのかというのが次の例で、「ダストボウル」とい う現象で、これ大体1931年から1939年アメリカ中西部で、乱開発をしたために全部禿山に なって、農地が破壊されてしまって、風が吹くとこういう風に埃が舞い上がって、ほぼ空がみ えなくなる日が続いたという。ご存知の方いらっしゃると思うんですけれども、スタインベッ クの『怒りの葡萄』というのは、これによって農地、住むところを失った方たちがカリフォル ニアに行って苦労をされるという話なんですけれども、これだけの被害があります。 ですから、田んぼと比較していただくと、どれだけの環境的インパクトがあったかというと 明らかだと思います。 次ですが、地球の中の日本ということで、私はこの画を見せるのが好きなのですが、これは わざと逆さまにしています。それで、ここが日本なんですね。ここにはもうオーストラリア大 陸が見えています。ここに見えてるのがインドです。ここに見えてるのが中国と、いろんなと ころがあるわけですね。 日本というのを中心に見た時に普通の地図で見て分からないところというのは、実は日本 というのは、ものすごくいろんなところと繋がっているんです。 例えば、米は原産は中国中南部です、大豆は原産地は中国東北部からシベリアにかけてとい うことです、それで、独特の苦味がありますから、発酵とか独特の処理をしないと食べられな いわけです。ゴマも和食に欠かせないと思うんですけれども、アフリカ原産で、今栽培されて いる種はインド原産という風に言われている。小麦は中央アジアのコーカサスからということ で、もともといろんなところのものを取り入れ、発酵とか、独自のその場所にあった形で、味 とか酒とかそういったものを作り出している。 ですので、新聞社の方いらっしゃるのであまり 闊なことは言えないのですが、よくグロー バル化というと英語ができるようにということが書かれているんですが、僕は英語ができると いうことじゃないだろうなと思うんですよね。 それで、この前、スティグリッツ(米国の経済学者ジョセフ・スティグリッツ)っていう人 が来て、経済成長戦略についてアドバイスしたんですけれど、また怒った編集の方が、そんな テレビや車を増やしてもしょうがないだろうと書かれてたんですけれど、こっちがエッて思っ たんです。経済成長とはイコール、テレビや車を増やすことではないんです。 では何かと言ったら、貧困、病、老いなど、人間が人間らしく生きる時に出てくる問題点っ ていうのは、世界共通なんですね、それに関する視点を持って、その解決に寄与できるという のが本来のグローバル化だと思うんです。 先ほどお見せしました大豆、小麦、米っていうのは、みんなの食糧を供給するっていう点で はものすごく大事な発明で、それが世界中に広がっていったわけで、ただ、ローカルな解決が なければグローバルな問題への寄与はないということで。 専門家じゃないんであんまりしゃべりませんけれど、ワインとかも、この前、ロバート・パー カー(米国のワイン評論家)という人がボルドーのプリムール(新酒の先物取引)から手を引 くと、「パーカーポイント」のパーカーですけれども、それアナウンスしたんですけれども、 かえってそれはアメリカ人的な見方で、フランスではその土地土地の、その生産者の、その特 質を表現しているのが良いワインで、ワインというのが土地と切り離されて独立な価値を持っ ているものではないという、ちょっと今日のテーマにつながります。 伊藤先生も仰っていましたけれど、日本は過去の経験、あと、現在直面している取り組みを 通して、貢献できるので、みなさんで頑張りましょうというのが私の話でした。 どうもありがとうございました。 (2) 基調講演 日本福祉大学 名誉教授 丸山 優 氏 『欧州ワイン文化を取り巻く状況とクールジャパン発信へのヒント』 ① はじめに 丸山です。よろしくお願いいたしします。私はパワーポイントを使わないので、レジュメを ご覧いただきたいと思います。 自己紹介を先にさせて頂くと、イタリア南部問題とイタリア経済に興味を持って勉強を始め た人間ですので、イタリア南部の「果肉」と言うんですけども、小麦の産地なんですが、小麦 などの穀作と比べるとはるかに収益性の高いものに果樹栽培がありまして、その果樹栽培の関 連でイタリアでワインの研究を、シチリアのワイナリーはかなり訪問しているんですけれども、 そういうことをしていました。 それと、1990年代に日本が、デフレと言うものを改めて世界の経済学の辞書に載せるよう な時代がありましたが、この時に日本とヨーロッパとアメリカの産業の国際競争力、その組織 や政策の比較研究をすることになり、中部地域の新産業振興、あるいは地域経済振興というも のに取り組むことになりました。 地場産業である酒造業というものは、金融業と共に財務省の管轄で、経済産業省の管轄では ないものですから、今もそうですけれども、どういう風に振興するかというのは対象外なんで すね。産業観光、観光ということでようやく 上に登るようになり、今、これから議論になる クールジャパン構想でやっと産業政策として、日本酒が位置付けられるようになったというこ ともありまして、今日は「ワインと日本酒」、特に日本酒の輸出振興という関連でお話するこ とにしました。 もう一人の基調講演ができないということで急遽変えたところもあるのですが、三部構成に なっています。「ワインの生産と消費の現状」をまずお話をして、次に「ワインの歴史」のお 話をして、最後に「クールジャパンにおける日本酒の輸出についてどのように進めるか」の若 干の提案をしたいと、そういう構成になっています。 ワインの話をする前に一つだけ申し上げておくと、日本は今、国産のブドウの種類から作る ワインがブームになっているのでちょっと憚れるところもあるのですが、日本には甲州種とい う在来の食用ブドウからワインを作ってきたので、本格的なワイン専用のブドウの種類を作っ ていなかったんですね。 それで、1972年から長野県、私の生まれ故郷ですけれども、塩尻市で今まで食用ブドウを作っ てワインを作っていたのをやめて、ワイン専用のブドウ「vitis vinifera」と言うんですけれ ど、そのブドウを植えてワインを作ることになった。私は大学院生だったのですけれど、頒布 会に参加してなんとかこの大きな転換を応援しよういうことでやってきた人間でもあります。 ちょうどそんな風にしているうちにですね、今、知多半島で食用ブドウとしてはとても高い ものを使ったワインができたんですね。 その時、つゆ思うんですけれども、甲州ブドウ、食用のブドウを使ってワインを作ろうとい う時に、同じ時期に知多半島でフランスからワイン専用のブドウを輸入して、そのブドウを植 えてワインを作ろうという試みがあったんです。 今の盛田酒造が、武豊町にブドウ畑を作ってワインを作ったんですけれど、それがヨーロッパ 全域を覆う昆虫の病害に侵されている苗だったので、全部根絶せざるをえなかった。あれがも しそうでなければ、知多半島はお酒、日本酒とともにワインの先駆けになったはずだったんで すね。それほど大きな規模だったんですけれども、それができなかったので、もしそのブドウ を使って作るということでいえば、知多半島ワインということになるので、今も知多半島ワイ ンという名前を冠して製造していることになります。 ② ワインとは何か そういう関係もあって、ワインの話をすることになっているのですが、簡単に説明するとワ インとは、食用のブドウ、あるいは干しブドウ用のブドウではなくて、ワイン専用の赤ならカ ベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなど、白ならシャルドネ、リースリングなどの熟した果実 を、その糖分だいたい20∼25%で食用より低いですけれど、それをワイン専用の酵母がワイ ンに変えていく、その液をそのまま製品にしたものをワインというふうに言うわけですね。 日本酒やビールと違って、水を加えることがありません。そのかわり、土壌や、石灰質が良 いと言われているんですけれど、天候の純不純による作物の質の変動というのが大きくて、そ れがワインの品質を決定的に規定する。 もう一つは、ワインというのは、その作り手の腕もかなりあるんですね。これは、醸造学の 世界ではわからないものがあって、例えば、シャルドネは栽培がすごく難しい。そういうブド ウでワインを作ろうとすると、どうも日本酒の世界でいうと「ひねか(老香)」というか、臭 い匂いのワインができて、どうしても自家用ではできないんです。 それで、昔からワインは専属の造り手が造るものというふうになっている。醸造学の専門家 が、近代的設備を使ってワインを造ってもなかなか美味しいワインができない。そういう意味 で日本酒に近いんじゃないかって、僕は思っています。 ワインの種類は、これから話すワインの話はほとんど、非発泡ワイン、「still wine」という んですけれど、そういう世界ですね。 それと、もう一つ「スパークリングワイン」ですね。シャンパーニュというのがあります。 シャンパーニュ産のものでなければシャンパンとは言わないので、あとはスパークリングワイ ンという風に言うわけですが、これは「still wine」を作るベースワインを瓶詰めにして作るも のです。これは後で触れます。 香り付けワインというのを除けば、三つ目は「酒精強化ワイン」という、シェリー、ポート ワイン、マデーラ、マルサーラ、あれは料理に使いますけど、そういうものです。 対照的なんですけれど、醸造酒にしても、蒸留酒にしても、世界にある酒の殆どが穀物を原 料とするものであると。一方でワインは果汁を原料とするものです。 果実酒といえばシードル、日本のサイダーの元になった言葉ですけれど、シードルというの はリンゴ酒で、結構美味いんですけれども、それらが唯一果汁を原料とするものであると、そ のワインを水を加えて蒸留したものが、ブランデーということになります。 ③ ワイン生産・消費の現状 −統計による概観− 《 ワインの生産量 》 そういったワインが今、どうなっているかというのをご覧いただきたいと思います。 ワインの生産と消費の現状ということで統計的に整理してみたんですが、世界のワイン生産 量は、日本酒と同様で、20世紀末から減少傾向を続け、2001年に3億hℓを割り込んだ後、 2003年、2004年の2年を例外として、今の2.7億hℓまで落ち込んでいるということになりま す。 それでも、イタリア、フランス、スペイン、この3国で世界シェアの半分近く、これにドイツ とポルトガルを加えると、50%を超えて作っているんですけれど、今、EUは、ブドウ酒、ワイ ンが過剰生産気味なので、ブドウ栽培を制限してワインの供給量を制限しているので、このシェ アは一貫して低下しています。 それに対して表にもあるように、アメリカ合衆国、アルゼンチン、チリ、オーストラリア、南 アフリカ、そして中国というところがどんどんシェアを伸ばしているという状況です。 《 ワインの消費量 》 次に、消費というのは、先ほど過剰生産と申し上げましたけれども、微増ですが、増えてい るんですね。 今、フランス、イタリアなどにしてみれば減少しているんですけれど、世界の中でいうと、 例えば2011年から2014年に消費の伸びの著しかった国は、ルーマニア、日本、スウェーデ ン、オーストリア、オーストラリア、ギリシャという順になってきます。 それで、フランス、イタリアの両国の世界シェアはまだ40%弱なんですけれども、消費の割 合から言いますと4分の1を切っている。25%弱になっているんですね。これは、生産量との比 較をしてみますと、フランスとイタリアのワイン業者は、販路の40∼45%を輸出せざるをえな い。日本酒の売り上げの50%を輸出にするっていうのは、山口県の獺祭一つですけれども、こ れが実態です。スペインに至っては生産量の4分の3は輸出に回るということになっています。 注目するのは中国で、後に触れますので簡単に触れますけれども、中国のワイン消費量は今、 ちょっと停滞気味ですが、2012年までは年率10%を超える驚異的な成長を遂げて、今や世界 第5位のワイン消費国になります。 ただし消費量の30%は輸入に頼らざるをえない。その輸入のほとんどがボルドーの赤ワインと 相場が決まっているんですね。中国がワインブームにあるということをちょっと念頭において いただければと思います。 それから、アメリカ合衆国が今、世界1位のワイン消費国で、カナダと合わせますと15.08% というシェアを持っていて、今やフランスとイタリアのシェアを合わせたのとほぼ接近してい るということになりますね。ですので今、ワインを飲んでいる国というと、代表的にはフラン ス、イタリアだけでなくて、アメリカ、カナダというところが挙がってきます。 次、主要ワイン消費国の国民一人当たりの年間消費量を2011年で見ますと、驚くことにル クセンブルクが1位なんです。これは当時から言われていて、ルクセンブルクと言うのは経済的 には豊かな国ですが、国民がワインを世界中で一番飲む国民かというとそうでないと。 ヨーロッパは酒税というのがかかるんですけれど、25%なんですよ。それに対して9%くらいの 税率しかかけていないので、ベルギー、フランス、ドイツの大量にワインを買いたい人は、ル クセンブルクまで車で出かけて買っているんです。デンマークやスウェーデンの人まで来てい ると言われているんですけれど、ただし、カリフォルニアの「Wine Institute」が発表した 2014年でいうと、表を見ていただきますと、年間49.8ℓだったものが、(Wine Instituteの 統計では)9.82ℓという風になっていますね。 税率の変化もないし、産業として酒税販売が衰えているという情報もないので、どうしてこう 言う情報になるのかわかりませんけれども、他にデンマークという8位の国を見ていただいて も、2011年と2014年で比べれば格段に落ちていますね。 それについてはまだ、こういう理由だと詳らかにしないんですけれども、そのカリフォルニ アのWine Institute、ワイン研究所の2014年の資料でいうと、今、消費のトップ10はクロア チア、スロベニアという旧ユーゴスラビア、フランス、ポルトガル、スイス、イタリア、オース トリア、ウルグアイ、ルーマニア、ハンガリー、トカイワインというのがあるところですけれど、 こう言う順序になっています。 これは、主要なワイン国(のデータ)で、一人当たりのワイン消費量を小国まで入れると、 断然のトップはバチカン市国です。法王はじめ彼らが一番です。 それから、次から来るのがルーマニアに隣接するモルドバというところになります。それから、 アラブ首長国連邦。彼らはアルコールを飲んじゃいけないはずなんですけれど、そういう小さ なところは別としてですね、イタリア、フランス、ポルトガルといった伝統的な生産国は、ワ イン一人当たりの消費量は減少傾向にある。 おそらく、水が酒(ワイン)にとって変わりつつあるんではないかとおもっています。ビール は水より安いですから、ビールにも変わっているんじゃないかというようには思います。 それと、寒冷な気候で、蒸留酒、スピリッツと言われているウイスキー、ブランデーが好ま れてきた北欧、東欧では、このブランデーや、ウイスキー離れが進んでいるんですけれども、 まだワインがそれにとって変わるということではないと。 《 ワインの輸出入貿易 》 次ですが、ワインの輸出入貿易で見ると、世界のワイン輸出は急激に増加しています。 2000年から2014年の14年間で、数量では73%。つまり、2000年を100とすると、173と いうところに現在いると。金額では186という指数になります。近年でいうと、2011年から14 年の4年間で、数量では3.55%(増加)、金額では10.12%(増加)になります。 ワインの輸出でトップはスペイン、イタリア、フランスの順になっています。 これを金額でいうと逆転して、フランスが一位というように。同じ年度ですので、2015年の データを比較しますと、フランスが相対的に高額であると。 これは後で日本酒の原価のことを考えるときに必要なんですけど、(フランスは)1ℓあた り5.89ユーロ、ボトル換算でいうと4.42ユーロで輸出している。これと反対にあるのがスペイ ンで、4分の3を輸出しなければならない、そういう国では、あるいは南アフリカではかなり低 くて、スペインのワインはボトル換算で0,83ユーロ、100円ですね。南アフリカが1.12ユーロ というようになっています。 他の7か国を見ると、ドイツ、アメリカ、アルゼンチン、イタリア、ポルトガル、オーストラ リア、チリの順で安くなっていく。 ただし最近、ここ4年間くらいで大きく乖離しつつあるんですけれども、輸出数量の増加率 よりも、金額の増加率の方が大きくなっています。我々ワイン愛好家は安価なワインのことを バルクワインと呼んで決して買いませんけど、そういう安価なワインではなくて、ファインワ インとか、プレミアムワインというものが常時売れているということになります。 そして、ワインの輸入について。輸入額は輸出額とペアになりますから、2014年の国別ラ ンキングを見ていただくと、アメリカが1位で4位がカナダということになります。ヨーロッパ でいうと、イギリス、ドイツ、ベルギー、スイス、オランダというのが続いてきますが、注目 すべきは中国ですね。 先ほど言いましたように、ワインブームというのを今、世界的に作っているのは中国なんで すね。この理由は、まず第一にワインは、他の酒に比べるとステータスシンボルなんですよ。 中国は、贈答文化がまだかなり残っていまして、贈答品にすると、例えば岐阜の一個2千円す る柿とか、リンゴとかというものを送るんですが、基本は今、ワインになっているんですね。 それと、もう一つはワインの方が、茅台酒などの蒸留酒や紹興酒のような醸造酒と比べると、 乾杯を繰り返す時にアルコールのまわりが遅い分だけ、乾杯の酒に変わりつつあるんですね。 私たちが中国にいくと、一人に紹介され乾杯すると、招待された客の側からいうと、一人が 酒を注ぎに来ると3杯飲まないといけない、それで10人いると30杯飲まないといけないわけで す。高粱酒をね。これに耐えられないと客ではないと言われるんで、そういう状態の中ではワ インというのは、それに比べるとまわりが遅いので、ワインというのが中国中を席巻している と。 さらに注目されるのは、中国では「色」が重要でして、ワインの大半が赤ワイン、紅酒とい うものですね。2013年に赤ワインの世界消費量の第1位は中国だと言われています。 白ワインというのは、山東省で作っているんですけれど、ワインの生産者が大体億万長者な んで、中国の格安航空の社長もしてますけれど、それはあまり生産量は伸びてないですね。そ れで、ボルドーワインのワイナリーを買ったり、かなりワイン産業に進出しているということ もみられます。 以上が、ワインの生産と消費と輸出入についてです。 ④ 西洋におけるワインの歴史 《 古代のワイン 》 本来は私は、これからお話しする歴史の話をして終わるはずだったんですが、表題にありま すようにクールジャパン構想につなげると良いと思うので、ワインの話はこれから、もう20分 ほどお話をしたいと思います。 この中ではですね、特にワインはどういう意味を持って飲まれたか、何のために飲まれたか ということに注目していきたいと思います。 歴史の悪い癖で、最初がなんであったかということが重要になってきますので、ちょっとお 付き合い願いたいですれけども、野生のブドウではなく、ブドウ栽培が開始されたのが紀元前 1万年頃に、先ほど言われたコーカサス、カフカス山脈で始まります。 それで現在のアゼルバイジャンやダゲスタンの新石器時代の遺構で栽培ブドウの種子が発見 されています。まだ、醸造学者がどういう風に言っているのかわからないんですけれど、一番 最初の酒は、はちみつを発酵させたものだと。 英語で「ミール」といって北欧では結構飲まれているんですけれども、だと言われているんで すけれど、ミルク、羊やミルクから発酵させたものもシルクロードでは飲んでいるので、たぶ んそれもあるのではないかと思いますが、そのワイン醸造が青銅器時代(前3000∼前750) になりますと、メソポタミアや地中海地域の至る所で行われる。5000年前くらいからワイン 醸造が行われたと考えていいと思います。 ビールはそれよりも早い。だから、古代メソポタミア人や古代エジプト人、古代インド人は ビールも、ワインも飲んでたんです。 ただ、ビールに比べるとワインは、生まれつき「商品」なので、ビールは大衆向け、ワイン はエリート向け、支配階級しか飲めないものだったと。それは、交換目的で栽培されるブドウ の特性でもありますけれど。 ワインの語源は、サンスクリット語で「ウェナ(vena)」というところからきているのです が、ヨーロッパでは、ネクタルという風に訳されています。ギリシャやドイツは「nektar」、 ラテン語や英語、フランス語、スペイン語では「nectar」、イタリアでは「nettare」という 風に言っていますけれども、これが、「甘いもの」というふうに言われている。 だから日本では、ジュースでネクターってありますよね。ネクターというのは、酒、ワイン のことなんですけど、甘いとされたのは、これは有力な説ですけど、はちみつを原料として作っ た蜜酒の影響だろうという風に言われていて、古代人は、ワインにはちみつを入れて、水や湯 で割って飲んだと言っているんですけど。私はこれ、あまり信じていないんですね。アルコー ル発酵が不十分で、甘かったんではないかと。 それと、そのヨーロッパの水は今、ヒット商品になっているわけですけれども、日本の水と 違って硬水なので飲みにくいんですよ。だから、水を飲むために、ワインを入れたという方が、 私は正しいんじゃないかというふうに思っているんです。 参考のために中国語の「福」というのは、神に捧げられた酒 がいっぱいの状態、豊かさの 象徴ですね、転じて「幸せ」ということになるんで、「福祉」というのは同じ意味ですけど。 酒 にお酒がいっぱいの状態を「福祉」、あるいは「福」「幸福」という風に言うわけです。 《 古典古代のワイン 》 二番目の古典古代、ギリシャ、ローマの世界に移ります。 ギリシャ語では、ワインのことを「オイノス(oinos)」と言うんですが、この「ディオニソ ス」という神、これが「アポロン」と好対照の二つの主要な神で、ニーチェが19世紀末に喝破 したんですけれども、ワイン商品を象徴とする「ディオニソス信仰」と、「アポロン信仰」と は根本的に対峙するんですね。 表を見ていただければわかると思うのですが、「ディオニソス」は意志をを代表し、「アポ ロン」は表象、representation、形態、形式を代表すると。 同じことですが、英語ではlife-forceと訳されていますけども、「ディオニソス」は人間の生命 の根源的な力を代表するのに対して、「アポロン」は永劫不変のidea、理想を代表する。 「ディオニソス」は運動、形式の創造と破壊ということを代表するわけですが、「アポロン」 は形式や秩序の維持、完成を代表すると。 それで、人間に対してどういうことを要請するかというと、「ディオニソス」は本来は人間は 苦悩のもとにあるけれども、本来は喜ばしいもの、そういう人間の「生」を肯定するというの に対して、「アポロン」は冷静な自己抑制を求める。 だから「ディオニソス信仰」というのは、集団的な狂騒とか、陶酔、酩酊というのがあるん ですが、それは日常的な苦難を超えるための儀式だった訳ですね。まさしく芸術表現で言えば、 「アポロン」という神が死んだ後の状態の中で人間がどう生きるかということで、悲劇を始め て世界にもたらしたというのがディオニソス。 こういう象徴的な意味を持ってワインが飲まれていた。 しかし、このワインを(ギリシア)哲学としては承服することができないということで、古 代ギリシャのソクラテス、プラトン、アリストテレスに至る系列の中で「ディオニソス信仰」 は哲学としては採ることができないというように否定されます。 酩酊、陶酔とか、狂騒とかというものは、道徳的に否定されるんですけれども、行為、労働 や、仕事と区別された。政治と言ってもいいですけど、「アクション」を円滑に進める潤滑油、 「lubricant」とは、語源は「読むもの」ですね。油じゃない。日本では潤滑油として訳してい ますが、そういうものとしてあって、ワインとはこういう場で必ず飲むものだったんですね。 要するに、会議や、集会などでは、ワインが出ないことはない。 ですから、シンポジウムの「 宴」というのは、そこから出ているんですけれど、別にご飯 食べるためにやっている訳ではなくてですね、先ほど触れたように、硬水だけではどうしても 飲みきれないので、ワインに入れて、飲んでいたんだというように私は思っています。 それで、ワインは松脂や海水を防腐剤として入れて、ギリシャに詳しい人はご存知かもしれ ませんが、「アンフォラ」と呼ばれる素焼きの壷や、革袋に入れて運んだと。 そして、古代ギリシャから古代ローマに移りますと、今度はvinoですね。フランスのvin(と いう単語)のもとになりますけど、ラテン語の「vinus」と呼ぶようになって、「ディオニソス 信仰」は英語でバッカスになりますけど、「バッコスの信仰」に変わるんですね。 庭園はこの「ディオニソス信仰」の残したものを全部それこそ飾る。神棚には塩とともにワ インが常にお供えされる。そして、人が亡くなった時に、当時は焼くんですけど、その焼いた 骨をワインで洗って骨壷に納めるというのが習慣です。 そして、ワインを飲むという時には、混ぜるための大きな器、ギリシャ語と同じですけど、 クラテールという器を使って、ワインを水で割ってコップに移して飲む。 当時、朝食とか昼食とかは、非常に約しいものですから、晩 でしかワインは飲みませんで したが、エリートはしょっちゅうワインを飲んで、祝祭日の大宴会では、食後にワインを飲む ことになります。 その中で、「 宴の王」というものを選んで、その「 宴の王」が勝手に、各自が何杯、ど のワインを飲むかというのを決めるんです。 さらに、祭りの中にさかしまな世界、日本の祭りと共通していますけれども、その時は現世の 日常の秩序がひっくり返る訳ですね。だから「 宴の王」になるのは奴隷。これがいわゆるガ ス抜きとして行われているわけです。 次に、暇を持て余していたエリートというのは、パトロンとして被保護民である平民にワイ ンやオリーブ油を施しものとして与えたんですけども、後にはこれが制度化されて、政府が平 民に小麦やパン、ワイン、オリーブを安価に、時には無償で配るということになって、ワイン は庶民が飲めることになったということなんですね。 ただしワインは、ローマ帝国の価値ある輸出品の一つでして、ワイン生産は、大規模農場で ほとんど機械化されていまして、その産地が古代ローマの都市の近郊に作られたんです。 一番有名なのがファレルノというローマ近郊になりますけれども、そこの白ワイン。次いで トスカーナワインというのも有名なものになります。 それで、これが陸のシルクロードと、まだシルクロードと呼んでいませんけど、東方に、海 と陸の道で輸出されることになります。日本には、とても航海に耐えられませんからワインは 来ていません。 幹線道路沿いの旅籠には、シルクロードのサライ(隊商宿)と同じように、地元産のワイン や、輸入された高級ワインを提供することが一般化していきます。この場所を英語ではinn、フ ランス語ではauberge、イタリア語ではtabernaといういうんですね。aubergeは宿と言いま すけど、居酒屋はこれが語源です。 そういう高級なワインだから、輸入する代わりにブドウ栽培を行ってワイン醸造を行うとい うのが流行ったんです。 醸造法を書いていますけれども、このアンフォラに入れて土の中で醸造していたのが、 に 入れてできるのは紀元1世紀末ごろで、北イタリアとフランスで流行ることになります。 古代ローマが滅びる頃には、伝統的な産地を圧倒して、それらが売れるものになっていきま す。 《 中世ヨーロッパのワイン 》 それから中世の世界が展開していくわけですが、中世というのは、「キリスト教」の世界と いう風に考えていただければいいと思うんですけれども、キリスト教は自らメシア信仰という ですね、救世主を待つ宗教だと思いますから、ローマ帝政で流行った「バッカス信仰」を除く、 別の東洋の神を、神秘主義的、そして禁欲主義的な宗教と差別化しなければならなくなった。 ということで、このワインというのをキリストの血、血液として位置付けることになります。 当然、赤ワインということになりますね。 そして、そのワインを作る主体が修道院に変わります。修道院というのは当時で言いますと、 男と女の半数が修道士にならないと暮らしていけない貧しいヨーロッパでしたので、相当多い と考えていただければいいと思うんですけれども、これが修道院になると、祈りかつ働けとの 規律の元で、細かく日課が定められていく中に、ブドウ栽培とワイン醸造というのが位置付け られるわけです。石を取り除いたり、棚を作ったりという作業をずっとしていく中で、修道院 で醸造されたワインは、商品として商人に売られることになります。 ドイツなどの地域では、ワインを作りたくてもブドウができなかったので、代わりにビール を作ることになります。 次に、商品としてのワインの生産と発展ということになりますけれども、14世紀くらいから ワインが大いに発展していくことになります。修道院のワインに加えて、世俗のワイナリーと いうものも出てきます。 この頃にフランスのボルドーとか、シャンパーニュ、ブルゴーニュ、ドイツのライン、モーゼ ルと言うのが産地として形成されていくことになります。 それで、内国関税、当時、今の中国は税金取らないですけれど、中世の国家というのは税収 といものが基本的に関税、しかも国と国との間で取る関税、関所で撮る関税ですね。その関税 収入が基本なので、これが移動していくほどかかるわけですから、なかなか手に入らないもの になっている訳ですね。 そこで、フェアとかメッセとか言われる、数ヶ月にわたって開かれる国際市、大市というよ うに訳していますが、それが開かれるところではワインが多く売れると。 それがシャンパーニュですね。後で話しますけれども、ドン・ペリニヨンというのも、シャ ンパーニュの出身ですけれど、修道士です。その修道士を支えてワインを売った毛織物商、今 もフランスの自動車メーカーも毛織物商出身ですけれども、庶民の口には入らないということ になるんですね。 その間に大陸部で発展したのが、ビールです。 ちょっとビールに触れると、13世紀頃からホップを添加して飲むビールが大陸で流行りま す。ピルゼンとかピルスナーと呼ばれているものです。現在イギリスなどで飲み続けられてい るものは、日本で飲んでいるのと違って、エールというものです。どんなに濃いものでもエー ルです。ホップは入ってないんです。 これが日本で、ドイツ語の貯蔵するという言葉から入っているんですけれど、ラガービールっ ていう名称で言われるものがありますよね。 そういうものが、庶民はワインを飲めなかったのでビールを飲むということになる。 そこで、ドルトムントタイプというものも触れていますが、半田にカブトビールというのが あるんですけれど、キリンはラガービールで、半田は、私はまだ確証を持っていませんが、ド ルトムント系のビールだったような風に思っています。 《 近世のワイン 》 次、近世のワインに移りますけれど、19世紀末から大航海時代がはじまりますと、新大陸、 南北アメリカ大陸に、ジェスイット会の宣教師が、フランス、イタリアなどからワイン専用の ブドウ種を移植する。この味が「美味」には程遠い。 教会で飲むワインほど不味いものはないんですけど、still wine、我々が飲むテーブルワイン は航海に耐えられない。帆船で運ぶわけで、その波に揺られているうちに着いたら到底飲めな いものになっているものですから、やむなく作ったものとは思います。 航海に耐えて料理にも使うことができるものがブランデーということで、「焼いたワイン」 というのが語源ですけれども、15世紀頃からできるようになりました。日本で最初にワインを 飲んだのは織田信長だという説もありますが、これはワインではなくブランデーです。 次の所を見ていただきますと、ルネッサンス国家におけるワインの衒示的(げんじてき:見 せびらかしの)消費というふうに書いていますけれども、メディチ家の娘が二人、フランスの 国王に嫁ぐことになりますけれども、メディチ家、イタリアの料理がフランスに行きます。 フランスの料理は、豆とエスカルゴに代表される非常に粗末なものだったんですけれども、 イタリアの料理がフランスの宮廷に入り、コックも来ますね。だからフランス料理とイタリア 料理というのは外国語では区別がありません。 そのころ国王がワインを飲むようになるんですね。料理に必ずワインがつくと。これを見せび らかすことが支配階級だったんです。貴族や当時のブルジョワジーというのは、国王と同じ消 費をするということが、生きがいというか、消費のスタイルということになるので、まさにこ の頃から世界中というか、ヨーロッパ中で支配者がワインを飲むというふうになるのです。 この時、ルネッサンス国家という、フランスの国家を代表しますけれど、イギリスも同じで して、イギリスでもワインブームが起きます。 イギリスは、東インドに植民地を持つ、ボンベイが基本ですけど。そしてブラジルに植民地 を持つポルトガルがありますが、ブラジルでは「金」が発見されるので、この資金力。そして オランダ、世界一に経済的に進んでいたところですが、そのオランダ商人の資金力を背景に、 まずスペイン、次いでフランスへとワイン生産に乗り出すんですね。 ボルドーワインっていうのは基本的に、作り出したのはイギリス商人です。今のボルドーワ インですね。クラレットっていう澄んだ赤ワインが有名になっていくことになります。 資料をご覧いただくとわかるんですが、ドン・ペリニヨンというのは修道士なんですけれど も、シャンパンを作ったかどうかっていうのは怪しいんですよ。ドン・ペリニヨンが何よりも 長けていたのは、色々な畑のブドウを選別して美味しいワインを作ることができた。 イギリス本国では、コーヒーハウスで飲んていたのは、コーヒーはもちろん飲みますけれど も、談論風発の時はワインを飲んたというふうに考えていればいいと思います。 《 近代のワイン 》 ちょっと時間が押していますので、近代のワインというところを見ていただくとわかると思 いますが、ワインというのは、ワイナリーで働く労働者は決して飲めなかったということをま ず指摘しておきたいと思います。 彼らが飲めたのは、フランス語ではマールとか、イタリア語ではグラッパという、そういう ブドウの搾りかすを蒸留して作るようなものしか飲めなかったといいます。 二番目にあるように、ボルドーワインの格付けがフランスの最初の万博の時に行われまして、 詳しくは後で確認していただけるといいと思いますけれども、赤ワイン中心の格付けが行われ ています。当時、赤ワインと白ワインの消費量は、フランスでは、赤ワインが8に対し、白ワ インは2ということなんですけれど、そういう形で格付けが、格付け自体は重要なんでけれど も、その格付けは今も変わっていないということになります。 最後にですね、ちょっと触れておきたいと思いますが、19世紀にはパリという大都市の労働 者はワインを飲めるようになります。 この仕組みを少し説明すると、当時のパリでは、労働者が住むようなところには台所というの はないので、食事をとるのはみんな外で、今のアジアもそうですけれど、外で食べるんですね。 だからワインを飲まないわけはない。そして、安ワインが増えるということになります。 その安いワインに位置づけられると産地は困るので、なんとか地域としてワインを売り出そ うとしたのがボジョレーです。ボジョレーブームというのは日本では1980年代に起こるんです が、1世紀前に地域としてなんとか高いワインで売りたい、もっとたくさん飲まれるようなワ インにしたいということで、地域ぐるみでボルドーに対抗して、ボジョレーワインという名前 で、イタリアのキャンティもそうですが、一つのワイナリーの名前じゃないんです。キャンティ を作るワイナリーが別々にある。ボジョレーも一緒。そういうようなものが出てきます。 その頃にですね、先ほど説明した、武豊でのワイン生産で失敗した(原因になった)、病害 「フィロクセラ」というのがヨーロバ中を席巻することになります。結局、ほとんどのブドウ 園は、特にフランス、イタリアのですね、アメリカからブドウを輸入をして、そこに接ぎ木を するという形でブドウ栽培の再開をします。 ワインの味の歴史は存在していないので、それから前と後がどう変わったかはわかりません けれど、ここから再建されていくということが、新たにワインを作るにはチャンスということ になる。 ちょっと、立ち入ったことを申し上げましたけれど、最後にそのワインのこのことを踏まえ てですね。どういう風に輸出をしたらいいかについて触れていきたいと思います。 ⑤ 日本酒の輸出振興に向けての提言 最後にですね、日本酒の輸出振興に向けて、提言を行いたいと思います。 今、前提となっているのは、三つあるのですけれども、ヨーロッパに日本酒はまだ殆ど行っ ていないことが第一点ですね。 それで、ヨーロッパにどうやって売るのかということを念頭に置きながらちょっと話をしま すけれども、「和食を好み、和食レストランを頻繁に利用して、日本酒をもっと堪能するため に、食事中に日本酒を飲みたい人」、これは確実に日本酒を売ることができるわけですから、 こういうレストランが増えているところは日本酒を売ることができると。 新しく輸出を始める人は、自分だけでやることはほとんど不可能なので、向こうでレストラン 開きたいという人たちと組んで、日本酒の宣伝を考えるということが基本だろうと。 次にターゲットとするのは、向こうはアルコールを飲むのは日本と違ってですね、肉やパン を食べる時、食物を胃の中に収める時にどうしても必要なので飲むんですね。酔うために飲む 人もいますが、「美味いから飲むという層」を当てにしなければいけないと思います。 そして三番目にアルコール濃度が高い蒸留酒、中にはスタウトみたいな濃いビールもありま すけれども、こういうのが飽きて、かといって水のようなビールの部類には変えられないとい う人たちをターゲットにしてやるっていうことですね。 なかなか白ワインの消費は弱いので、日本酒は苦しいんだけれども、北欧とか、東欧とかいっ たところもターゲットになってくるだろうと。 そして、その3つあるチャンネル構築の中で強調したいのは、クールジャパンというのは、輸 出補助金ではないので、海外の試飲会とか、展示会に行く時には補助金は原則としてない、と 考えていただければいいと思います。基本的には投資促進政策なので、海外でそういう探す事 業をやるという人には、銀行の金利よりもさらに低い低利融資が約束されていますが、メー カー、醸造元はすべて自分の責任でやれということなんですね。 だから、ちょっと口幅ったい言い方になりますけれども、クールジャパン構想では、投資を 進める蔵元以外は相手にしない。 普通、蔵元は、アキレス は、マーケティング、営業に人材を投資できない。ここをどう超 えるかということがポイントになってくると思いますね。 ヨーロッパで、今はまだ、日本酒はあまり進んでいませんけれども、ここにターゲットを入 れて、食と一緒にセールスをしていくと。 だから「社会的なネットワーク」を広げて、その中で候補者となる人を見つける。 それで、その候補者を日本に呼んで商談をするということには多分ですね、酒造組合中央会 から補助金が出るはずです。 ちょっと水を注ぐことになるかもしれませんけれども、あまり大量に売るということは考え ないほうがいい。なかなかできることではないので、信頼のできる、つまりワインに対して一 家言のあるような卸売先をどう見つけるかということについて、「社会的なネットワーク」の 中で、ぜひ見つけてその候補者を日本に呼んで、その前に申請しなければいけませんけれども、 契約に成る相手を見つけると、そうなるように頑張ってもらえればと思っております。 (3) ティーブレーク 茶心居 代表 坪内 浩史 氏 みなさまこんにちは。 今日はですね、お酒のシンポジウムなのにもかかわらず、なぜお茶かというように思われる 方もいらっしゃるかと思います。 二つの目的を持ちまして、本日はこちらに来させていただきました。 一つは、これからティーブレークということで、長いシンポジウムの中で、ちょっと休憩し ていただく時に一服お茶を飲んでいただくということが一つ。 もう一つは、第二部になるんですけれども、お食事とお酒のマリアージュということで、非 常に意欲的な企画がなされております。その中で、お酒を美味しく、健康的にずっと飲んでい ただくにあたって、実はお茶が果たす役割というのは、非常に面白いものがあるのではないか ということが言われております。 お酒を飲んだ後、少し口の中の味を整える。または少し深酔いを避けるとかですね、健康的 な目的で使うことによって、よりお料理とお酒を楽しく飲んでいただく、かつ健康に楽しんで いただけるということで、そういうことをみなさんにも少しですね、知っていただこうという 目的がございます。 本日ここに用意させていただきましたお茶は、一つが静岡で作られた手摘み、手作りで作ら れたお茶。 炒り茶という、普通のお 茶とは違うタイプのお茶がございます。 そしてもう一つが工芸茶といいまして、ジャスミン茶はみなさんご存知かと思いますが、ジャ スミンのお花などを木綿の糸で結いつけて、そこに茶葉を仕込んで、お茶でできた工芸品とい うことで工芸茶という名前がついておりますけれど、二種類の違ったお茶を用意させていただ きましたので、飲み比べていただいて、お茶にもこう言ったタイプの、普段飲んでいるものと は違ったお茶があるんだなということを感じていただければと思います。 本日はよろしくお願い致します。ありがとうございます。 (4) 加藤先生の基調講演にかえて 国際日本酒普及連盟 代表理事 宮田 久司 『シンポジウムの趣旨について - 知多・西三河における実践の提案』 宮田と申します。度々の登場を失礼します。スライドを使って説明をさせていただきます。 今日はですね、加藤先生が入院をしてしまいまして、急遽、代わりにはなりませんが加藤先 生の思いも含めて今回の企画をご一緒させていただきましたものですから、そういった背景を 私なりに飲み込んで、話をさせていただきたいと思います。 私自身の紹介も含めて話をさせていただきたいと思います。 私は、もともとは行政の関係で、ずっと観光振興とか、まちづくり、インバウンド促進もそ うですし、国際交流みたいなことをやっておりまして、その後ですね、中国に行き来して、テ レビの番組を、岐阜県のほうの誘致をやったりですね、投資家さんがいまして、現地でアンテ ナショップをやらないかということで、そういった調査をさせていただいたりしていました。 今日おみえになっているみなさんのように輝かしいキャリアがある訳ではないんですが、私な りに考えて、国際日本酒普及連盟もやらせていただいております。 スライドの写真の下が「志野焼」なんですけれども、観光誘致をやっていた時にですね、志 野焼は私の育ちのふるさとのものなんですけれど、中国でですね、こう言う場所が良いですよ とか、物が良いですよとかそういうことを色々と言っていたんですけれど、そういうことを一 生懸命やっている時にですね、カフェで、隣にフランス人の人が座っていて、ちょうど彼が、 パソコンを開いていたらですね、私の地元の陶芸のものがいっぱいあって、これ鈴木藏(おさ む)先生の作品なんですけれども、こういうものがあってですね、素晴らしいと。日本のお酒 も素晴らしいと彼は言う訳です。 偶然隣で会った、ジュリアンとソムリエなんです けれども、中国で会って、そういう話をしたんです けれども、「あれ?」と思って、中国で一生懸命やっ ても自分の地域のことって理解してもらえるのって なかなか難しいなと思っていたら、隣でフランス人 が「素晴らしい」といってくるというふうに思って、 これ一体どういったことかなと思ってですね、私も 色々と路線を考えました。 そのあと、菓子製造などもやったりしています。 そのような経緯があって、ISF、「International Sake Federation」というんですけれど、元々、国 際日本酒普及連盟というのは後付けでつけた名前で、 最初はISFということで、私の友人のクリスチャ ン・シューベルトという人間がいるんですけれども、 ルクセンブルク人ですが、彼と一緒に日本酒を伝え ていくということをやりたいよねということを出発点にして、始めました。 今、ルクセンブルクを中心に普及プログラムということをやっておりまして、最初に彼とい ろいろと話し合った部分でですね、何が日本酒を、本質的な価値も含めて伝えていくというこ とが、かつ持続可能な形でですね、いろいろな側面を含めて考えた時に何が取り組む必要があ るのかなということを整理してですね、今はこう淡々と、というか右往左往しながら進めてい る状態です。こんなことを念頭にしてやっているということをお伝えさせていただきます。 ルクセンブルクというのは、ご存知な方とご存知ではない方がいらっしゃると思いますけれ ど、フランスとベルギーとドイツの間にある、サイズは神奈川県くらいの小さい国です。 金融であったり、衛星通信の関係が強い国でして、そういうこともあって、一人当たりのGDP でいうと世界一位の国でもあって、ちょっと面白い国ではあります。EUの機関も立地していま して、パリとフランクフルトと、ブリュッセルとルクセンブルクなんですけれど、ルクセンブ ルクに司法裁判所と欧州投資銀行とか、そういったいろいろな機関があったりして、結構昼間 の労働者の方が周りのフランスとかドイツとかから集まってくると。 それで、モーゼルワインというが有名なのですが、モーゼル川を反対に挟んで、ドイツ側の 土地の値段が、ルクセンブルクの土地の値段の半分とは言わないですが、それくらいの水準と いう、物価差のあるような場所ですけれども、先ほど丸山先生の話にもありましたけれども、 税制に関してはすごく優遇されていまして、企業もヨーロッパの本社として有名なところが立 地していまして、ペイパルとか、アップルのヨーロッパであったりとか、マイクロソフトであ るとか、楽天さんであるとか出ているみたいです。 元々ですね、ルクセンブルク家というのは、力を持っていまして、(スライドに映し出され た地図の)紫色がルクセンブルク家、それでこのオレンジ色のがハプスブルク家ですね。有名 な。これは14世紀の図なんですけれども、元々はルクセンブルク家というのは、力を持ってい たようなところです。 それで、2015年はですね、お城があるんですけれども、そこをお借りしてちょっとテイス ティングパーティーをやったりとかして、白老さんもここに出ていますけれども、あとは、左 の方はですね、クリスチャンの友人なんですけれども、オスカーのショートアニメーションの 受賞監督のアレクサンドレ・エスピガレスという方を招いてテイスティング会をやったり、あ とは現地の俳優さんを使ってちょっと紹介用のものを作ったりして、細々と一応テスト的にこ ういったこともやってきました。 2016年、今年に入って1月にですね、多面的な交流とか、先ほどの丸山先生の話ではないで すけれど、やはりワイン醸造の所との関係をうまく作りながら、お互いの品質を高めあったり、 理解を高めあうということをやる必要があるだろうということで「Institut viti-vinicole」、ル クセンブルク政府ワイン=ワイナリー機関という研究機関があるんですけれども、そこの担当 のアンドレ・メーレンさんという方と 色々とディスカッションをしたり、日本酒とワインの 比較テイスティングをしたりして、貴重な時間を過ごさせていただきました。 それで、IVV(Institut viti-vinicole)は、皆さんご存知の、先ほど話が出たと思うんですけ れど、ワインの品質基準のAOPと言うものを、2015年から基準としては導入しはじめまし て、そういうところを話を聞かせていただいたんですけれど、そのパンフレットにはですね、 勿論当たり前の話なんですけれど、フドウの品種のことについてであったり、これは土地の状 況ですね、どういう土壌質をしているかということの地域別の分布であったりとか、あと、こ れ「テロワール」っていう、ここにテロワールというのは何かということが書いてあるんです けれど、ワインのキャラクターを構成していく要素というのをですね、明確に紹介しながらやっ ていますよということをやったり、それをラベル表示として紹介したり、後はシーリングをし ているということをしてですね、ルクセンブルクという土地のモーゼルワインが本物でありま すよと、そして、先ほどの宇澤先生の話にもありましたけれども、土地の固有性に基づいて造 られたもので、それを紹介していくということを政府の機関としてやっていらっしゃいます。 やはりですね、先ほどの土地の話じゃないですけれども、どうしてもドイツとルクセンブル クというと、ドイツの方が物価が安かったり、土地の値段が安かったり、土地がたくさんあっ たりということで、大量で比較的大規模で安いものができやすい。土地としてどうやって生き 残っていくかということを考えた時に、やはり、品質と価値を高めるということ。では、その 品質や価値というものが何なんですかということの背景をしっかり支えていく。 いろいろな研究機関の調査を含めて、それを、生産のための、クオリティの向上のための取 り組みをバックアップしていくと、そう言ったことをIVVは役割としてやっているんですけれど、 実は、お話をうかがったら1935年から基本的には同じことをやっていたということで、「生 産地と品質を担保し、本物としての消費者理解を促す」ことで、「価値と価格を保ち、生産者 が良い製品を生み出す意欲を高めていく」ということを目的としてですね、「Marque Nationale」というのが、1935年から取り組まれていますよと。 基本的にはやっていることは同じだけれども、新しくEUのワイン法というのが2008年に改 正されたこともあったりして、それに合わせて、便宜的にというか、よりグレードアップした り、より固有性を求める消費者動向を踏まえた上で、AOPと言うのを2015年に導入しました よ、ということを彼はおっしゃっていました。それで「Quality in the Glass.」ということで、 グラスの中のワインというののクオリティっていうのは何なんですかというのを担保する背景 として、こういった取り組みをしているということが、1935年から取り組まれているというこ とです。 先ほど、「テロワール」というのがあったんですが、「土地」とか「土」とかいう意味らし いんですが、それをAOPでは、この6つですね、「ワイン醸造とか製法」に関すること、「生 産・加工地域」に関すること、「気候」に関すること、「土壌」に関すること、「熟成」に関 すること、あと「ワインヤードマネジメント」に関することを、一応、そのものでは謳ってい ます。 というのが、今年2016年に私たちが行ってきた時のですね、そういう情報を紹介させてい ただいて、じゃあ「Quality in the Sakazuki」って何ですかと。 おそらくお酒ってみなさん、1万円で売られたり、千円で売られたりしていますけれど、そ の価値って一体何なんですかっていうところを、やっぱり私たちというのは見ていかなければ いけないのかなということもありますし、特にルクセンブルクであったりとか、先ほどのイタ リアであったりとか、フランスもそうなんですけれども、彼らと一緒に飲んでいたりすると、 やっぱり味わい、味覚についてもそうだし、なぜその味覚に違いがあるのかとか、後ほど吉田 さんが外国の方とのやりとりを色々とやっている中で、いろんな素朴な質問が、当然、先ほど のワインのような観点から見てくればですね、反応してくるわけで、私たちはやはりそれに対 して、納得できる妥当なですね、紹介できる情報なりツールというのを伝えていくことが必要 なんじゃないかなということをですね、「Quality in the Sakazuki」でもなんでもいいんです けれど、見ていくということが、今後、先ほどのクールジャパンであって、かつ持続可能であっ て、宇澤先生の農業の話がありましたけれども、いろいろお米のことであったりということも 含めて見ていった時にですね、大事なんじゃないかというふうに思っておりまして。 これは仮説ですけれども、日本酒の価値を構成する要素ということを見ていく時に、テロワー ルは土地に関することだったんですけれども、私たち自身であれば、また違った側面も含めて お酒というものを見ていかないといけないんじゃないのかなということがあって、歴史的な背 景であったり、環境的な側面、製造方法、味覚、価値経験、価値の提供の手段とかですね、そ う言った部分を見ていくことができるのではないかと。 今日ですね、色々とお話をして頂く皆さんもですね、客席で来ていただいている皆さんも、 本当に錚々たる方々であったり、現場で従事されていて、本当にいいものを造っておられる方 も多いと思うのですけれども、まさにそういった方々の知恵であったり、日々の取り組みとい うのを集約させてですね、そういった価値の正当性を見せていくということがすごく大事になっ てくるんじゃないかと。 お配りした冊子の中にですね、加藤先生の紹介文があって、最初にユネスコ無形文化遺産に 登録されましたよというところが載っているんですけれども、その理由のですね、政府の資料 を見ますと『「自然の尊重」という日本人の精神を体現した食に関する「社会的習慣」』とし て、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたということなんですけれども、まさに、そ う言った側面も含めて見たときに、それをより細分化させて、ではそれって何ですかというこ とを考えたときに、一つは在り方として証明していくということも大事でしょうし、要素分解 して情報として伝えていくということが必要になってくるのではないかと。 それで、そういうときに、地域としてそう言ったことをやるということも、知多半島だった らできるんじゃないかなということが、すごく思っていることではございます。 そういうのをみていくときに、まだ日本酒というのをですね、海外に伝えていくとか、醸造 製品を伝えていくというときに、じゃあ価値って何なんですかというところであったり、イメー ジといったところがですね、和食ブーム、日本酒ブームと言われますけれど、確立していない のではないかというのが私の感覚としてありますし、日本人自身にも実は共有されているよう で曖昧であったり、共有されていないんじゃないかなということがあります。 あとは、先ほどのターゲットの話にもありましたけれど、誰に伝えていくかといったときに、 どういうところが良いのか、理解していただけるところ、私、中国に行ってこれ良いですよと 言ってもなかなか理解してもらえなかったというのも、たまたまご縁がなかったという部分も あるし、「良いね」という部分の理解の度合いというものもあると思うんですけれど、地域と して情報整理をしていくというときにですね、やはり理解していただける方に対して、理解さ れるに足る情報をですね、ブラッシュアップをして、それによって国内においても海外におい ても、いわゆる相対的にというだけではなく、絶対的に価値を高めていくというプロセスを、 今回、国際発信ということを通じてやっていけるんではないかと、そんなことが背景でもあり、 加藤先生と話し合っていた内容でもあります。 それは、先ほどの話でもないんですが、日本酒というものを通じて出来てくるものでもあり ますし、醸造の製品として、食文化として物を見せていくということが、例えば、この地域で インバウンドであったりとか、地域の観光のことをずっと取り組まれている先生も、今回の企 画ご指導いただきましてご来場頂いているんですけれども、現地に日本酒というもの、これだ とルクセンブルクの人たちが楽しむということが、訪日にもつながってくるのではないかと。 例えば、(現地で日本酒や食文化を紹介して)これは何ですか?、こういう風に作られてい るんですかとか、面白いですね、と言って来ることもあるでしょうし、来た人が、実は来た場 所で楽しんでいるんですけれども、これって何ですか?と言って、いや分かりませんというこ とではなくて、これって何ですか?とに聞いた時に、いや実はこういう物で、こういうところ で作られていて、こういうものなんですよ。それで、これと合わせると美味しいですよね。と、 実はこういうものも同じ場所で作られていますよといったことを、そう言った部分にいろいろ な背景も含めてですね、いろんな場所で、関連性がある地域の素材であったり物を伝えていく ということをですね、「文化リピーター」を育成していくということができれば、波及効果と して観光立国とかですね、インバウンド促進とか、そういったところに繋がっていくんじゃな いかということでですね。 私たちが、例えば今回ルクセンブルクで紹介したことは、もしかしたら発地(旅行者の出発 側の地点、ここでは海外)側での「文化リピーター」の育成に対する貢献だったのかもしれな いし、今回のこういったシンポジウムの先に、例えばこういった地域の情報が整理されてです ね、地域の飲食店で例えば外国人の方が来た時に、なんかいつもよりちょっと切れ味のいい紹 介をすることによって、実は「文化リピーター」というものが育成されていくかもしれないん ですけれども、そう言った部分をですね、現地、物であれば向こうに持っていけるので、そこ で現地で紹介してくるとか、来ていただいた方にはそれによって素材を見せることによって、 着地というのは日本国側の例えば常滑でセントレア降りてからですけれども、そういったとこ ろで、見ていただけるかなというところで、いい循環ができるのではないでしょうか。 その時に、先ほど宇澤先生が仰っていましたけれども、日本酒というのは、食とのコラボレー ションという、今日、第二部でもありますけれど、そういった側面や、観光につながってくる という側面もあれば、農とか農業、農業ということであれば、結局自然であったり、人のその 土地での生業や生活ということにも関わってきたりしますし、あらゆる側面でですね、郷土性 であったりというものを代弁するというとか、つなぎとめる要素になってくるだろうというこ と が あ り ま して、 そ れ が ク ール ジャパ ン で あ っ た り 、 佐 藤 先 生 が 進 めて い た 「 E N J OY JAPANESE KOKUSHU」というプロジェクトですね、「國酒」プロジェクトと言われるもの であったりするのかなと思います。 それで、知多半島に関して言えば、今日みえている方もいますし、いろいろと造っていらっ しゃる方もいるかと思いまし、観光に関する取り組みをされている方もいらっしゃいますし、 すでにそう言った素地が、ここ何十年の中で取り組まれてきたと思うので、色々な次の、その、 壁があったりとかですね、ちょっと繋ぎあわせる何かアイデアがなかったりとか、方向性がちょ こっと見えてないというとあれですけれでも、何かアイデアとかですね、そういった部分の中 で取り組める、横につなげる要素というのがですね、もう一つ、この土壌の上に出来てくると 面白いのかなということがありますし、その可能性はありますし、ポテンシャルというのは十 分にあるだろうと思いますし、この後パネルディスカッションの中であったりとか、皆さんが お話頂ける中でですね、そのアイデアがきっと出てくるだろうと、あるいはその先ですね、そ んなふうには感じております。 先ほどの着地側の話になりますけれど、観光誘致ということに元々私も取り組んでいたので、 日本酒と関連付けて言いますと、プロモーションという意味では、現地で紹介していくという ことに関する戦略というものは当然ありますし、私たちそういった部分はアクションプログラ ムとして整理しているんですが、こちらに来た方々に、どうやって日本酒であったり、知多や 西三河の醸造製品というものをですね、先ほどの「文化リピーター」になっていただくかとい う時に、ではどこに接点があるのかというのを考えた時、この4つ(スライドに表示:①小売 店、②飲食店、③酒蔵、④文化交流企画等への参加)だろうと思っていまして、その人達の、 そこに来た時により深い理解であったり、満足度であったりを高めていくことができれば、そ れがやはり、すごく地味なようで、すごく重要なことなんだろうと思っております。 特にですね、「酒蔵ツーリズム」というのが言われるんですけれども、それも一つでしょう と、だけれどもそれでどれだけの蔵が受け入れられますかとか、どれだけの人が来ていますか というと、まだまだわからない。 それで、事例として挙がっているという程度だと思うんですけれども、すでにたくさんの現 実として来ているのがですね、宿泊しているホテルであたりとか、旅館さんであったりとか、 あるいは立ち寄ったお店であったりとか、もうすでに来て買おうか買わまいかは分からないで すが、お金を落とす余地があって、場合によってはそこに日本酒が提供されていたり、置いて いるということだと思うんですけれども、その時にやはり、先ほどの澤田さんとか、原田さん とか、他の蔵さんもみえていますけれども、やはりそれぞれの魅力であったり情報であったり とかをですね、しっかり背景も含めて伝えていけるような啓発、外国(人)に対して伝えてい けるような代弁者というか、そのような人たちに対して適正な情報であったり、啓発していく ということのほうが、実はすごく地味だけれども、重要なんじゃないかということが、今回こ ういう事をあれこれ考えている時に洗い出してみると、そうなのかなという感じはしました。 ですので、海外にプロモーションに行きます、こう(発信して)いきますというのも有りで すし、酒蔵ツーリズムというふうにやるのも有りなんですけれども、一方で、こういった地味 な、既にある接点を活かしていくということがすごく大事だし、やはり伝えられるだけの情報 をですね、冒頭の話なのですけれども、何がクオリティなんですかということを伝えていくこ とのできるコンテンツというのを構築していくということがこの先、絶対に必要になってくる だろうと、そういうふうに思っております。 その意味で、締めになりますけれど、地域連携における取り組みとしては、私個人としては、 やはりAOPの話がありましたけれども、そういった観点も含めて、情報をしっかり、多様な専 門性のある方、実践して造られている方々を含め、やはり「盃(さかずき)」にあるクオリティ を証明するだけの情報を整備していくということはすごく大事だろうと。 もう一つは先ほどの話で、やはりインターナルマーケティングですけれども、国内の既に接 点を持っている方々に、より魅力を海外(の来訪者)に伝えていくかということを整備していっ たり、啓発していくかというのがすごく大事だろうと。それはお酒だけじゃなくて、味 とか、 味醂とか、醤油とか色々含めた上での話だと思うんですけれども。 あとは、それをどうやって経験として提供していくかというところで、今日の第二部も、お 茶と、お酒と、知多の食材を使ったイタリアンということですけれど、そういった部分を色々 取り組まれていると思うんですけれども、関係者の中でのそういった実践と、価値、経験価値 というものを照らし合わせながら実践を重ねていくということがすごく大事であると思いまし て、この知多という場所が、そういう意味では、時代的背景がありますし、地理的背景もあり ますし、人も、色々と造られている方もいますし、すでに背景としては っているのかなとい うふうには思いますので、それをじゃあどうやってやっていくのかなというところになってく ると思います。 それで、私どもが海外に向けてということでしたら、今の日本酒をどうやって海外に見せて いくのかなというところと、やはりそれを集約させた上で、実践的に文化啓発をしていかない と、価値を理解していただくことができないというように思いますので、そういった啓発と物 の紹介といったことを兼ねてですね、あとは近年ですとポーランドの方もですね、そういった ことをやりたいという要望がありまして、その辺りを中心にして取り組んでいます。 他にも色々と取り組まれている方々もいると思いますし、そう意味で日本としては、先ほど の「文化リピーター」を育成していくということが大事になってくるのかなというように思い ます。 ありがとうございました。 (5) 取り組み発表 原田酒造合資会社 代表社員 原田 晃宏 氏 『製造者から見たクールジャパン発信』 皆様これまで長時間に渡って、色々な先生方の話を聞いたところで大変お疲れだと思います けれども、今から10分間、今までの取り組みについてお話をするように言われましたので、10 分しかありませんので、レジュメがあるんですけれど、うちが何をやってたかということ、そ んなことを話しながらこの10分間、お話を聞いていただきたいと思います。 こういう話をしますといつも「國酒」と言いますよね、それで「國酒」って何だっていう話 ですけれど、今は空港に行って、免税の方に行きますと「國酒キャンペーン」ってやっていま すけれど、今、愛知のお酒を中心にやっているんですけれど、あれも、日本酒、焼酎、泡盛、 この3つを日本の「國酒」として取り扱っていただいています。 日本の「國酒」という言葉なんですけれど、一番最初に使ったのが大平首相の時ですね。 あの時に、外国人をもてなすんだったっら日本酒が一番いいよねということで、この時に折 角やって頂いて、ずっと続けて頂ければ良かったものを、次からまたやめちゃったからおかし な方向に行ってしまったんですけれど、それが、平成24年の5月なんですけれど、ここで 「ENJOY JAPANESE KOKUSHU(國酒を楽しもう)」という、よく言われる「國酒プロジェ クト」というものが立ち上がりました。 平成24年、こういう話が立ち上がったこの頃から、お酒の輸出の話というのが出ておりまし て、うちもこの頃、オーストラリアだったかちょっとお話をいただいて、何も知らずに手を出 して見事に失敗するという、本当えらい目にあわされましたけどね、そういう失敗をしていま すので、ここで余計なことを言うと、ミスター・クールジャパンが今日来ていますので、今日 はちょっと気合いを入れて、要らないことを話さないようにいきたいと思いますけどね。 それで、24年の5月にこんなこと(國酒プロジェクトのスタート)があって、24年の7月に 佐藤先生が名古屋にやってくる訳ですよ。 そんなことは私は全く知りませんから、お盆明けくらいの頃に急にうちの弟が、名古屋大学 の変なおじさんと名刺交換したけれど、訳のわからんこと言っていましたと、誰と言ったら、 佐藤宣之という名刺を持っているじゃありませんかね。そしたら、私のところにメールが来ま して松華堂に饅頭買いに行きたいから付き合えと言われちゃいましてね、それでご夫婦でやっ てきて、中埜酒造さんを見学された後に、松華堂に入りましたので、そこでお会いしまして、 名古屋でも「東海4県21世紀國酒研究会」、そんなのを立ち上げましょうという話がそこで出 てきて、宇澤先生とも初めてお会いさせていただきまして、それから4年にわたって宇澤先生 からもいろんなことを教えていただきましてね。 この24年というのが、私自身がバタバタした年でして、ちょうど24年の5月ごろ、加藤先生、 今日お休みですけれど、あの方に捕まっちゃいましてね、カーネーションの花から酵母を採っ たと言うんですよ。それで、酒つくろうよというから、ほんとできるの?というと、試験管の 中でできたからOKと言われて、断わるに断れずに、名城大学の農学部の方々とのおつきあいも ありますので、進んでいってしまいまして、米が実際に入ってきたときに、じゃあ3月1日に記 者発表やるから、もう失敗は許されないですよと言われる訳ですよ。 そうなったら、もう、その日に合わせて仕込みのスケジュールが立ってきますので、もう途中 の失敗が全く許されない状態で、出来上がっちゃったのが、これですね。 この「華名城(はなのしろ)」というやつですね。 本当にね、この花の酵母取ってきた子(名城大学農学部の研究生)、彼女たちがいろいろ企 画してくれましたので、アルコール11度、日本酒度マイナス50というね、ちょっと甘酸っぱく て、アルコールが少なくて、まぁ非常に飲みやすくてね、甘い物食べながらでも美味しくいた だけるお酒が、ここで出来あがった訳ですよ。 普通酒造メーカーでやったら、アルコールどこまで出せるかで勝負しますので、絶対にこん な甘いのができる訳がないんですけれど、やっぱりね、学生の方の柔軟な頭でやりますと、こ んなものができまして。またラベルのデザインもね、こうやってピンク色のね、これ酒造メー カーというか、僕だと多分黒か白ですよね。同じようなものばかりまた作っちゃうようなとこ ろを、なんとか名城の皆さんに助けていただいて、こんなものができました。 なんとかそこまで漕ぎ着けたわけですが、ここで政権変わりますので、自民党政権に変わっ て、本当にやってくれるのかなということになったんですけれど、平成24年の12月の総選挙で 自民党圧勝しましたけれど、1月11日の「日本経済再生に向けた緊急経済対策」、ここで 「クールジャパン」という言葉が入ったわけです。 ここでは、本部長というのが内閣総理大臣、今は安倍首相ですよね、それでクールジャパン の担当大臣、今は島尻さんですよね、が入って、各関係省庁との大臣とも一丸となって動いて いくという格好で、国が動きましたので、本当に最初は何のことかさっぱりわかりませんでし たけれども、これに乗っかってやっていこうやということで、その翌年の8月にこちらの「中 部からクールジャパン発信委員会」が立ち上がった訳ですよ。それから1年経って出来上がった のが『中部からクールジャパン発信のためのアクションプラン∼輝ける中部・名古屋を目指し て∼』、これが出来上がりました。 これやった頃はね、最初蔵元いっぱいいましたけれど、私と数人の蔵元と、よく一緒に酒ば かり飲んでいましてね、終わってからもよく三人で飲みに行ったもんです。まぁ本当に、そう いう取り組みをやると世の中の流れが変わってくるなというのが実際感じたところではありま す。 そこでですね、10分しかありませんのでさっと言いますけれど、やはり先ほども言われまし たけれど、輸出って誰でも手が出せる分野ではないんですよね。 やっぱり、私一回失敗しましたので、ちゃんと計画を立てて、ちゃんと利益が上がるように やっていかないとえらい目に遭わされますので、そこでまず、そこまでたどり着くにあたって、 何をやったほうがいいのかということになってくるんですよ。 そうしますと、「中部からクールジャパン」の資料(アクションプラン)にも記載していま すけれど、各県、各市町村の中にクールジャパンの連絡協議会を立ち上げていこうというのが 出てまいります。 連絡協議会が立ち上がったからって、観光地でもない自分の町が、何ができるのということ を私も町長から散々やられましたんで、どうかなっていうところがあるんですけれども、です けどね、これを読むとちゃんと書いてあるんですね。 まず今までの輸出政策と明らかに違うところは、「相手国の文化等を理解した上、色、日本 産酒類、ファッション、ものづくり、コンテンツ等の連携の可能性を検討し」ってあるんです よ、要は相手の国に入って行って、相手の国の料理にやっぱりお酒が溶け込んでいかなければ だめでしょという訳ですよね。それが、先ほどの丸山先生のお話とも相通じるんですけれども、 今、ワインが日本に入ってきて、日本人は、例えばお酒だと肴でしょ、刺身でしょというんで すけれど、じゃあワインはというと無理やりにでも日本の食べ物に合わせちゃいますよね。和 食屋さんでワインの品 えが良いのはやっぱりそこだと思うんですよ。ですので、やはり相手 国に行った時に、相手国の方々から必要とされるアルコール飲料でないと、やはり日本酒とい うのは、受け入れられていかないと思うんですよね。 ここは、きちんと国で押さえていらっしゃいますので、それは私たち酒造メーカーも大きな 課題ですし、これができたところが、他の某酒造メーカーのように世界でも大ヒットを飛ばし ていく蔵になっていけるというところが、やっぱりうちとの大きな違じゃなかったかなという のが、私が考えていることです。 そしてまた、「クールジャパン」の文を読んでいきますとね、「外国の要人・著名人への働 きかけや、内外でのイベント、在外公館の活動等を通じて、日本国内に滞在する外国人に対し てはもとより、広く外国においても日本産酒類の魅力を日本産農林水産物・食品と併せて発信 する」ということを国が言っているわけですよね。 これやはり、インバウンドでね、では外国人のお客さんを自分の町に取り込んでいこうとい うことを考えるといった時に、うちには観光地がないので、というのではここで話が終わっちゃ うんですよ。外国人に対して、情報を伝えていかなくちゃダメですよね。そうすると今、大使 館と言いましたけれど、確かに名古屋に大使館はありませんけれど、総領事館は8つか9つです ね、8ヶ国か9ヶ国あるわけですよね。やはりそういうところに情報発信をしなければダメだろ うと。 それで、常滑市、ここが一番凄いんですよ、セントレアがありますよね。そうすると、外国の 航空会社、旅行会社、そういうところに対して発信していって、良いねといわれれば当然来ま すよね、JAL ANA、国内の航空会社もありますけれど、彼らも海外への旅行パックを売ること もできる訳ですよね。 そうすると、そういうところでの発信だって仕掛けていくことができる訳ですよ。じゃあそ ういうところに対して、何かできないかということでね、私もこう推進しておりますし、この 分野に関してはね、本当に知多半島、愛知県が本気になって動けば、宇澤先生もね、いろいろ とご指導に回っていただけますよね? ということですので、今日はここ、常滑でやっておりますので、まず常滑市から始まる。「竜 の子街道」がありますよね、常滑、半田、碧南、西尾ですか。それで、今日お茶のイベントも やっておりますので。知多半島のこの二つの街、そして碧南、西尾で二つありますよね。そし て、さらに隣接した市がありますよね。そこでやはり連携をとって、連絡協議会などを起こし て、そして、海外に対してどんどんこの情報発信をできるようにしていただきたいなというの が私の希望でございます。 本当に、常滑市商工会議所の会頭さん、これ常滑でやっていただけますでしょうか? オッケー出ましたね、片岡(常滑)市長とともにですね、まず常滑からスタートして、周り の町をどんどん巻き込んで、まぁどうしても嫌だという町は無理に引っ張ることはしませんけ れど、やはり、セントレア開港してからの10年間、いろいろな学者の方々が入ってインバウン ドのことやりましたけれど、最終的にはお客さんって、高山か金沢に流れちゃうんですよね。 この観光ルートは今まで山ほどできましたけれど、愛知県の中に留まらせる。これを一つ取り 組んでいくことは、これからやってかなければいけないことだと思います。 冒頭の伊藤代議士の挨拶にもありましたけど、27年には2本目の滑走路ができます。19年に はラグビーW杯、20年には東京オリンピック、それで27年リニアが開通してセントレアに2本 目の滑走路ができます。中部の経済これからどんどん大きくなってきますので、やはりその中 で、もっと愛知が情報発信ができるように、皆様と共にやっていきたいと思いますので、どう ぞよろしくお願い致します。 今日ちょっと短い時間でしたので、十分な説明ができませんでしたけど、また第二部で何か ございましたらお話しましょう。 東海発酵文化研究会 事務局長 赤崎 真紀子 氏 『ルージュなプロジェクト…「発酵食文化」で世界と交流を!』 皆さんこんにちは、赤崎でございます。 私はご紹介いただきましたように、東海発酵文化研究会という、去年出来たばかりなんです けれども、事務局長をさせていただいておりまして、本業は、カーネルコンセプトというIT企 業の中で、コンテンツ、ウェブサイトを立てて運営をしたり、紙の媒体を色々作ったり、それ で業界の団体の事務局をお預かりしたりしているんですけれども、今この東海発酵文化研究会 と、それから、大体テーマが観光とものづくりということに集中的にコンテンツを作ってまい りまして、もう一つ「中部圏インバウンドセールスプロジェクト」という、「昇龍道プロジェ クト」と連携して民間主体で、この地域に沢山の外国人にいらしていただこうという、そうい う団体の事務局もお預かりしています。 それで、ルージュのプロジェクトということで、日本酒のお話なんですけれども、この地域、 発酵食文化ということで言いますと、味 、醤油、味醂、これに日本酒を加えた4つが代表的 な発酵食品だと思うんです。これに漬物とかもありますよね。そういった物がすごいというの で、昨年ミラノ万博ありましたよね。ミラノ万博は「食」がテーマでしたので、それに合わせ て発酵食文化の国際交流のシンポジウムとワークショップを実施してまいりました。 これ助成事業だったんです。この一般社団法人地球産業文化研究所、これはですね、愛知万 博のテーマが自然の叡智、「nature s wisdom」というテーマだったのを皆さん覚えていらっ しゃるかもしれませんけれども、この自然の叡智というテーマ、理念を継承するということと、 国際交流を支援する団体なんですね。 その助成を受けて実施して参りました。それで主催はと言いますと、一般社団法人中部圏社 会経済研究所というお堅い団体がありまして、2014年と15年は発酵文化研究会というのも やっていただいておりましたので、そちらから出していただいてミラノで、そういうふうなシ ンポジウムができた訳です。 皆さんのお手元にも、A4のカラーの裏表で『日本愛知 イタリアの発酵食文化交流』という リーフレットお配りしておりますので、これを時々ご覧いただけるといいと思います。 8月9日に行いました。「愛知・名古屋ウィーク」というのが、ミラノ万博の日本館で開か れていて、それが終わった翌日だったんですね。在ミラノスイス商工会議所のとても素敵なホー ルだったんですけれども、定員は120名ということにしていましたけれど、この時期ミラノは バカンスなので、誰もいないんですよ。シャッターもみんな下りていて、それで、本当に集まっ てくださるのかなととても心配しましたが、関係者16名を含めて満員御礼の176名参加という ことで、会場ぎっしりというような状態となりました。 今日いらっしゃらなかったんですけれど、加藤先生の基調講演などなどというように進めて いたんですけれども、このシンポジウムについては登壇者がこういうふうな方達でした。 加藤先生は、先ほどの「華名城(はなのしろ)」、本当にカーネーションの酵母といううこ とで日本酒を造ってくださっています。発酵文化研究会のメンバーでもいらしてくださいまし た。 日本からこの加藤先生、それから岡崎の八丁味 、まるや八丁味 の浅井信太郎社長。で、 これがまた定年がないんだったかな。お話していただくんですけれども、八丁味 と言うのが そもそも、塩と大豆しか使っていない、すごいオーガニック食品なので、そういうことに対し てもとても反応がありましたし、経営のポリシーについてもお話いただいたんですけれども、 70歳を過ぎてもキャリアを持った社員の方が働いているという話に、アンケートをとりました けれども、イタリア人の人もすごく感動されていました。 それでこのお二人と、加えてイタリア側からは、スローフード協会のほうから、アンドレア・ ペッツァーナ先生と、そしてマルコ・マサロットさん。 マルコさんは、デジタルマーケティングの会社なので、同業者なんですけれども、日本に出 張してきて、日本酒とか食は素晴らしいというので、「La via del Sake」という、イタリアで 日本酒を広める活動をしてくださっています。 さっきの、宮田さんのお話でクリスチャン・シューベルトさんと同様の形だと思いますけれ ども、この方、それから日本人とイタリア人とをつなぐという意味合いでは、林基就さんとい う、ミラノでもトップソムリエの一人ですけれども、彼はなんと名古屋の出身なんです。奥さ んも愛知県の出身で、オペラ歌手の加地早苗さんという方なんですけれども、それで林さんが 日本語とイタリア語を使ってパネルディスカッションをコーディネートしてくださいました。 この中で、アンドレア・ペッツァーナさんの話を最後にしたのは、ミラノ万博は「食」をテー マにする万博だからということで、これは発酵食文化をPRしに行かないといけないと思ったん ですけれども、イタリアの食文化を色々調べていると、イタリアが「スローフード」という考 え方の国だということが、私はすごく大きかったなと思っているんですね。 伝統的な食材だとか、あるいは質の良い食品やワインを守る。それは、スローフード協会が 何故できたかというと、ローマにマクドナルドが出店するという時に、伝統的な郷土のお料理 だとか、品質の良いものだとかが、ファーストフードに駆逐されては困るよねという、そんな 危機感も背景にあって始まって、それで、すごいんですよ。このカルロ・ペトリーニさんが始 められたんですけれど、今、世界中に広がっていて、8万人以上の会員がいらっしゃるというふ うな。 その中ですごいのは、「ガストロノミック・サイエンス・カレッジ」という、食科学大学と いう大学もお持ちなんですけれども、アンドレア・ペッツァーナさんは、そこの大学の教授な んですね。それで尚且つ医師でもいらしたので、お話の中では例えば、発酵食品を摂ると色々 な体内バクテリアが増えて消化を促進してくれる、そう言った身体にいい機能というのが、発 酵食品はいっぱいあるんですよというお話をしていただきました。 これが当日の様子(スライドで写真を表示)です。すごく皆さん熱心に聞いてくださってい て、こちら左側が、基調講演で加藤先生が浴衣を着て講演をしてくださっています。 シンポジウムでは、日本の、愛知の発酵食品、調味料、飲料のアピールを色々させていただ いて、イタリア側からのお話をいただいて、色んなディスカッションがあった訳ですけれども、 そのあとワークショップを行いました。 ワークショップは「手巻き寿司」というテーマでやりました。お寿司はもう世界中で一杯寿 司レストランもできていますけれども、大体握りなので「手巻き寿司」というのはご存知ない 方も多かったんですね。 それで、日本では家庭でみんなでこうやって巻きながら食べるんだよとか、そんな話をしてい ただきました。 実演をしていただいたのは、イタリアの日本食レストランで初めてミシュランの星をとった レストラン「Iyo」というのがありまして、そこの市川シェフに実演をしていただいて、その時 には、日本酒もお味 汁も、日本茶もサービスをさせていただきました。 そのあと、名古屋文化短期大の山田実加先生が、発酵食品を使ったスイーツのサービスをし てくださったんですね。下の方に写真がありますけれども、澤田酒造さんからもお酒を出して いただいて、皆さんに試飲をしていただきました。 これは、手巻き寿司を作っているところですね。ここで作っているのが市川シェフです。そ れで合間合間に試飲をしていただいたり、試食をしていただいたり、お味 汁も作ってお出し したんですけれども、本当に和食が大好きというふうなイタリアの方たちに喜んでくださった のが、とっても嬉しかったです。 これはまるや八丁味 の浅井社長ですけれども、徳川家康の扮装をして出てきてくださった ので、会中の人気を引っさらっていきました。それでこの写真、共同通信さんが撮られました ので、日本全国の地方紙に、それからイタリアのマスコミにも、写真が配信されています。 この事業では、色々とコンテンツも作らせていただきました。小冊子も作りましたし、それ から動画も作ったんですね。イタリア語のナレーション、英語の字幕で作ったんですけれども、 この地域に関わりがあることというと、寿司が世界中で人気なので、最初の入ったところは寿 司から始まっています。 それで、ミツカン酢の中野(中埜)又左衛門さんが、酒粕を使って粕酢を作られた。それが、 ちょうど江戸時代の「江戸前寿し」の勃興の時期に重なって、寿司の興隆を支えたのは愛知の 粕酢なんですよ、ということでミツカンさんからは「山吹」っていう、粕酢の復刻版を作って いらっしゃるんですね。色も濃いですし、風味も濃いですけれども、これを2ダースいただきま して、ミラノに持ち込んで参りました。 こういうようなものを作って、ミラノでやってきたんですけれども、ではなぜ発酵食文化に 注目したのか。これ、愛知県の地図ですよね、それで、醸造メーカーの数は日本一と言われて います。 ちょっと流動的で正確な数が今、自信がないのですが、例えば醤油メーカーの愛知県内のメー カー数は49社があったと思います。全部合わせると、勿論100を超える醸造メーカーさんがい らっしゃるんですね。 全国の生産出荷額でいうと、お味 は2位です、それから醤油は3位、味醂が3位、酢が1位、 日本酒が6位というふうなことになっています。 それで、愛知のこの醸造食って、ものすごく独自性が高いんですね。豆味 、岡崎の八丁味 もそうですけれど、全国のすべての生産量の中でたった5%しかないです。そのうちの75% を愛知県がつくっています。溜り醤油は全ての醤油の1.5%、白醤油に至っては0.7%しかシェ アがないんですね。いかに愛知の発酵食の文化がオリジナリティが高いかということの一つの 現われだと思います。 それから長期熟蔵しているケースも多くて、まるや八丁味 さんの八丁味 は「ふた夏ふた 冬」というふうに言っています。長ければ1000日間蔵の中にいて、それが出荷される。 あるいは愛知の味醂というのは、メーカーの数も多いですし、非常に素晴らしいというふう に思っていますけれども、このみりんも長期熟蔵のものが多いんですね。そうすると、風味が 濃くなって美味しくなって、健康機能も上がっていく。 ちょっと高いですけれど、本当に素晴らしい、発酵食の文化があるという風に思っています。 こういう活動をし始めたのは、始まりは2011年です。名古屋大学に森川先生という方がい らっしゃいまして、発酵と全然関係ないんですよ。ITS、交通とかの先生なんですけれども、私 は昔、ITSの共同研究開発をよく一緒にしていたんですけれども、多分共通しているのは、発酵 飲料を人並み以上にいっぱい飲んできたというところじゃないかと思うんですけれども、森川 教授がボルドーに、あるミッションを持っていかれました。 ボルドー市というのは、環境都市でもあるわけです。 ワインの産地だけではなくて、それで、環境をテーマにした名大のシンポジウムに、副市長、 女性の方でした、この時、マダム・ヴァルリックさんをお呼びするというので、出かけて行っ て、それで、仕事の話が終わるとご飯食べたりしますよね。その時にマダムが「ミソスープ」飲 んでいるわよというような話をされたそうです。 それで、森川先生は、私と一緒で兵庫県人ですけれど、今や愛知のPRをされているので、愛知 の発酵食って凄いんですよというようなことを熱弁されて、じゃあ愛知とボルドーで「発酵食 文化」というテーマで交流すると良いよねというふうな、これ私ね、ボルドーは世界的なブラ ンドじゃないですか。で、愛知側にとっては、凄いプラスだと、お得だよな、というふうに思っ たんですが。そうして「ルージュ・プロジェクト」というものを立ち上げました。 この時には「vin rouge」の赤ワインと、赤味 の赤い糸つながりで、発酵文化の持続的な つながりを一緒に文化として深めていきませんかというテーマでした。 どんな指標を立てたか、これまでに無い新しい愛知ブランドという点では、愛知って工業製 品出荷額は、これで連続33年間一度も全国1位を譲ったことがありません。今、多分47兆円位、 2位は神奈川県17兆円、3位は大阪府12兆円、それ位、断トツに工業製品出荷額が多いんで す。でも、イメージとして車とか航空機って思いますよね。 でも、食品加工だって凄いんですっていうような、これまでハードなイメージが多かった愛 知のものづくりのイメージをソフトで美味しいというところに持っていきたいとか、あるいは 食を通した観光振興、そして、次世代の人たちに食育を、そして発酵産業の持続的な発展をお 手伝いしたいよねというふうなことを考えました。 実行委員会を作りまして、たった4人しかいませんけれども、私たちは名もない人たちなの で、名のある方たちに賛同人になって頂こうって、今見たら、一番上が飯尾さんですね。飯尾 さんありがとうございます。 例えば、須田さんは産業観光の旗を振ってこられているので、私は飛行機が嫌いなので、鉄 道移動ですから、でも国際的な産業観光をちゃんとやってくださいねということをお約束をし ています。 それで、イベントをやっています。この「ルージュ・プロジェクト」は、「発酵女子会」と いうものなんですけれども、第一弾は小泉武夫先生にいらしていただいて、すごく面白いお話 を聞きながら、次に上野万梨子さんというパリにいらっしゃる料理研究家なんですけれども、 彼女とウェスティンのシェフが澤田さんからも出していただきましたし、マルサンアイさんで すとか、スポンサーの発酵食品メーカーが出してくださったものを使ったレシピを開発して、 そのお料理とワインを楽しんだ、というようなことをずっと続けています。 それで、中部圏社会経済研究所で、「発酵文化研究会」をつくっていただいたので、これが ミラノにつながったということで、私も色々勉強させていただきました。それで、今年ですけ れども、もう一度助成事業に申請をして、採択していただいたんですね。そして『発酵食文化 の国際交流 in Bordeaux』ができることになりました。 11月5日、やはり、シンポジウムと「手巻き寿司」ワークショップすごく好評だったので、 ボルドーでもやります。このA4の資料の裏側がボルドーの時のシンポジウムと手巻き寿司ワー クショップの内容を入れてあります。パネリストは、だんだん固まってきていますが、まだ全 部は決まっているわけではありません。 ボルドーなので、ワインと日本酒と和食の「旨味」にフォーカスした企画で実施をします。 そして、それ以外に商談会、ワイナリーツアーの開催も準備をしているところです。なので、11 月5日、そうそう、東海発酵文化研究会については、加藤先生が、会長を務めてくださってい るので、今(資料を)皆さんにお配りいただいたかと思います。事業者の方は是非ご参加下さ い。研究者の方も一般の方もこういうところに是非集っていただけたらと思います。 そして11月5日、ボルドーへ、是非みなさんでご参加いただきますようどうぞよろしくお願 い致します。ありがとうございます。 それでですね、今日の会場にこれに関係した方が来てくださっているので、中部圏社会経済 研究所と申し上げましたけれども、小林さんすみません、今は別の会社にいますけれど、去年 ミラノに行けた時の小林宏之さんです。小林さんどうもありがとうございます。それからお隣 にいらっしゃるのが、名古屋の小売酒販組合の高橋さんです。で、全然畑違いなんだけれども、 このルージュプロジェクトのミラノも、ボルドーも一緒に行くという名古屋大学の森川先生で す。 それで、お三方を代表して森川先生にちょっとご挨拶をいただきたいと思います。 森川高行氏・名古屋大学未来社会創造機構 教授: 名古屋大学の森川でございます。冒頭ご挨 拶された宇沢先生も全然畑違いの日本酒、私 も普段は交通計画とか都市計画とか、堅いこ とをやっていますけれど、二人とも発酵飲料 を人並み以上に多分飲むということぐらいは 共通しております。 それで内容については、先ほどの赤崎さん が全部ご紹介いただいたんですけれども、ボ ルドーに私行った時、ボルドーというと赤ワ インしか恥ずかしながら知らなかったんです けれども、あそこEUの環境モデル都市でし て、そのためにヴァルリック副市長に講演の お願いに行ったんですけれど、あそこの町の 食文化、もちろんワインの文化、それから町 の素晴らしさ、非常に感動しまして、これが 一番欠けているのが名古屋、愛知だと思いま して、まぁこれ、私自身の専門でもあって恥 ずかしいんですけれども、お互いにないとこ ろを補完しあうような交流ができないだろうかということで、「ルージュ・プロジェクト」と いうのを始めたという次第です。 愛知というと本当に今、自動車とか航空機、宇宙だとか、硬いものづくりばかりで、いわゆ るクールさ、もうちょっと私は「セクシーさ」といつも言っているんですけれど、それが一番 欠けているんですね。 それに比べてボルドーの地方っていうのは、食べ物ですとか、町の佇まいとか、ものすごく セクシーでして、ここと交流できれば、またちょっと違った愛知というものが生まれるんじゃ ないか。元々良いものは持っているんだけれども、それが出てこない。それが地元の人の誇り になっていない、それが一番問題だと思いまして、この愛知、名古屋の硬いものづくりだけじゃ なくて、本来持っている、クールなというか、セクシーな所を世界に発信して、交流できたり、 地域の産業の活性化とか、そういうのができたらいいなと思ってこのルージュなプロジェクト を始めた次第ですので、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。 bien-美宴 代表 吉田 綾子 氏 『bien-美宴…日本酒と食の経験プロデュース』 皆さんこんにちは。今ご紹介いただきました吉 田と申します。 日本人、外国人問わず、日本酒を勧める活動を しています。 今回の第二部、懇親会では、私「bien-美宴」 がプロデュースさせていただいております。 このようにお話しをするのが得意ではなく、第 二部の懇親会の方では本領発揮ということになり ますので、懇親会で私の活動を、またはやってい ることを実体験で体感して頂ければと思います。 今日は10分ほどのお時間をお借りいたしまし て、私の活動発表をさせて頂ければと思います。 まず、本日のお話する内容は大きく分けて3つ です。 一つ目はなぜこの「美宴」の活動をしているの か、二つ目は活動内容、三つ目は活動を通しての 課題点、改善点、それから今後の取り組みに関するお話をさせていただきたいと思います。 まず一つ目、なぜこの活動を始めたのか。私は幼少の頃から、海外の人たちや文化と接する 中で育ってきました。やっぱりその文化とか色々体験するんですね。それで違いだとかを色々 感じながら育ってまいりまして、16年前に、大正6年創業の酒屋に嫁ぎました。 海外にいると、日本の良さとか魅力ってすごく感じるんですね。私は、向こうから戻って嫁 いできましたので、日本酒の魅力を(外国人の)皆さんに頑張って伝えるぞとすごく張り切っ ていた訳です。ですが、ちっとも活躍できる場は無いんですね。 海外のお客様は全然いらっしゃらない。そうこうしているうちに、メディアでは日本酒ブー ムだとか、日本酒輸出だとかすごく騒がれるようになってきました。にも関わらず、やはりお 店にはそういう海外の方が来られないんですね。どうしてかなとすごく自分なりに原因を探っ ていたんです。それで、自分なりに分かった原因としては、やはり海外の方にとって、日本酒 を購入するということはかなりハードルが高いことなんですね。 それはなぜかというとまずスーパーに行っても日本酒と焼酎の違いがわからない。それから、 本醸造から大吟醸になぜこの値段の差があるのか、その違いがわからない。まず第一に漢字が 読めない。 漢字が読めないんです、全く分からないんです。こちらの感覚で分かるだろうと思っているこ とが、やっぱり全く分かっていないということで、どうにか身近に、日本酒に親近感を持って もらいたい、楽しんで日本酒の知識や味わいをわかっていただきたいということで、「bien-美 宴」を立ち上げました。 愛知県はみなさんご存知の通り、産業の地であります。トヨタだとか、三菱重工さんの駐在 の外国人の方々がすごく多いんですね。 せっかく、二、三年、まぁ二、三年のスパンで皆さん入れ替わるんですけれど、せっかく二、 三年滞在される期間、いい体験、いい経験を通して国に帰っていただきたい。せっかくいらっ しゃる時間、やはり日本酒が分からないまま、日本のことが分からないまま帰っていただくの はとても残念なことだと思いまして、この期間をどうにか楽しんでいただきたいと思って、 「bien-美宴」を立ち上げました。 活動内容としては、色々なレストランとのコラボレーションを通して、私はセミナールーム や教室などは持っておりません。 ハウスパーティーが好きな外国人に合わせて、駐在員の自宅だとか、あとは色々なレストラ ンとのコラボレーションをしております。 こちら(スライドの写真を使いながら説明)は、鉄板焼の「kokura」さんでの、美味しいス テーキと豪快なパフォーマンスでみなさんに楽しんでいただいております。それから、風情 れる四間道にある和食創作レストラン「満愛貴」さんです。こちらも、みなさん目で楽しんで、 芸術的なお料理ということで、こちらを日本酒に合わせたりしています。 このようなお店ですることに対して、やはり外国人が知らないお店ですので、この会を通じ てお店を知っていただけるんですね。そうするとやはり、この会の後にまたあのお店に行った よ、逆に、このお店からもあの人たちまた来てくれたよという、そういうフィードバックをい ただけることが私にとってすごく嬉しいことで、それがエネルギー源となり活動しています。 それで、季節感を大切にしているんですが、こういう新酒の会、春の宴、涼夏の宴、夏です ね。ひやおろしの会、そういったものを、せっかく日本ですので四季折々の季節感 れる、こ ういうところも重要な、大切にしているポイントとなっています。 こちらは外資系企業様から依頼を受けたりするんですが、三重の「いかだ荘」さんという旅 館で、伊勢志摩のお料理、幸と合わせて日本酒をセレクトして接待をさせていただきました。 やっぱり外資系企業様の接待ですので、ただ飲んで楽しむだけでなく、知識、あとはマリアー ジュを楽しんでもらいたい。それも、やはりおもてなしに入るんですね。そういうところでご 依頼を受けてさせていただいております。 これは、春の宴。ヒルトンホテルさんで開催した海外の接待、企業様のご接待でさせていた だきました。 やっぱり突拍子もない質問がいつも来るんですね。それで、ワイン文化で学ばれている、そ ういうところで生活をされていて、じゃあ日本酒はどうなのというところで凄く色々な質問を されますので、私にとっても、もの凄くいい勉強を、毎回新たな発見があったりして面白いと ころです。 これは、ハウスパーティーなんですが、外国人の方やはりハウスパーティーがお好きで、み なさんよく集まられるんですね。 それで、駐在外国人の方は、時にご家族の方が来日したり、ご友人が来日されたりしますの で、その時の一週間、二週間を目一杯、楽しんでもらいたいというお気持ちが強いんですね。 そこで、経験を通して、こういう日本文化、日本酒というようなものを、知識も含めて楽しん で、思い出にして国に帰ってもらいたいというところでご依頼をよく受けます。 これはアメリカ人の娘さんカップル、あとは日本にみえるインドネシアの方、台湾の方、そ ういった方が参加されます。 これは、旅行でいらっしゃった方ですね。スパークリングの日本酒を含めて、5種類の日本 酒を用意させていただいてテイスティングパーティーをしています。 それぞれ、違った味のものを選びますので、みなさん、これが何なのか、味わいながら、私 も教材を一応英語で作らせていただいて、教材で説明をしながら、味わっていただきながらっ ていうパーティーになっております。 皆さん、やっぱりこういう会を通して、日本酒ってこんなに美味しかったんだとか、自分の 好きな味を知ることができただとか、これからスーパーに行っても買いに行けるっていうお声 が聞けることが私にとって凄い活力になっています。 この方も本当に喜ばれて、分からないことを直で質問してきてくださるので、そのことに対 して説明をして、納得をいただけるというのがすごく嬉しいです。 ハウスパーティーを通して、良いことは、やはりこういう小さなお子さんでも安心して受け られるという。お母さんもなかなか外に出かけられないけれど、息抜きでこうやってお酒を楽 しんでいらっしゃる。 あと、私は和食と日本酒というのはすごく重要なポイントだと思うんですが、(逆に)ポッ トラックスタイル、持ち寄りでパーティーを開いているんですね。持ち寄りという所にポイン トがあるんですけれど、日本酒に合うだろうと思うものを各自持ってきてねとお願いするんで す。そうすると、ありとあらゆる面白い物が集まるんですね。パンだとか、チョコレートケー キだったり、本当に皆さんがいつもお好きな、口に合うものを持ってきてくださるんです。 そうすると、これに合わせて、あ、こんなものに日本酒って合うんだとか、新たな発見がすご くあるんですね。 そういう所で、和食で合わせるのも勿論大切だと思うんですけれど、国に帰られた時に、な かなか手に入らない食材を使っても、身近に、日常には落とし込めないんですね。とういうこ とで、やはり、自分たちが身近に感じられる食材、チーズだったり、パスタだったりサラダだっ たり、チキンだったり、こういうものに合わせることによって、やはり国に帰っても身近に感 じていただける。そういうものに落とし込めるのではないかと私は考えております。 それで、三つ目のこれからの課題点なんですが、活動を通して思うことは、やはり、ラベル 表記の明確化とかですね。基準というものを作って、すぐにはできないことだと思うんですが、 ラベル表記を分かり易くすることによって向こうの方にもすごく安心して、買う前にまず、何 が何なのかというところをわかってもらえるだけでも、凄く購入につながるのではないかなと 思います。 まず、その日本酒、国内で作られた日本のお酒を日本酒って書きましょうと定められたと思 うんですけど、去年の12月にね、まだまだ昔の名残で清酒っていうそのまんまのラベルの蔵が まだあったりだとか、やはりあの、徐々にでいいと思うんですが、日本酒っていうところで、 皆さんがシンボルとして分かるように、統一していただく。あとは、日本酒度ですね。プラス 3だとか、プラス6、逆に、先の「華名城(はなのしろ)」のようにマイナス50だとかぱっと見 て分かるように、買ってから「凄い甘かった」というのは、やっぱり不安の材料になりますの で、そういうところでこれから進めていけたら良いんではないかなと思います。 最後に、私一人の力では本当に微力です。今日のように、ISF(国際日本酒普及連盟)のこの ようなシンポジウムだとか、今日ご参加いただいている、皆様と力を合わせて、協力しながら、 日本酒を始め、日本文化を世界に広めていけたらなって凄く感じております。 そこで皆さんと一緒にやっていけたら私もすごく心強いですし、幸せなことだと思っており ます。 日本で、ワインが日常化されたように、日本酒も必ず世界の食卓に並ぶことを信じて、それ を夢見て活動しております、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。以上、私からの活動発表 とさせていただきます。ありがとうございます。 (6) パネルディスカッション 『愛知・知多の食文化発信について∼私たちができること・地域としてできること』 モデレーター : 中日新聞 論説委員 飯尾 歩 氏 パネラー : 日本福祉大学 名誉教授 丸山 優 氏 原田酒造合資会社 代表社員 原田 晃宏 氏 東海発酵文化研究会 事務局長 赤崎 真紀子 氏 bien-美宴 代表 吉田 綾子 氏 中部からクールジャパン発信委員会 委員 宇沢 達 氏 飯尾(以下、全て敬称略): 今、下で、トイレに行っていたら、すっごくいい匂いが漂って いまして、まぁこの先は、難しい話をするのも野暮だと思いますので、手短に終わらせたいと 思います。 まず、今まで、ここが酒蔵だということもありまして、お酒を中心に話が進んでまいりまし た、けど、これ「知多半島・中部エリアの食文化の発信」という、かなり大きな面的な広がり のある括りになっているいうこと、それをまず念頭に置いていただきたいと思います。 丸山先生の話の中で僕はハッと思ったのは、皆さん、先ほど活動事例を色々発表いただいて、 既にいろんなことやっているんですよね。いろんなことをやっていて、それから赤崎さんのお 話を伺って、この地域がすごい食文化、ものづくりということの中に食文化というものがある、 ものすごい資産を持っている、個々にすごい資産があって活動もしているのに、まだそれが世 界に伝わらないっていう、そういう段階だっていうことをまず押さえて、丸山先生の話の中に、 これ僕最初からすごくいいフレーミングをいただいたと思うんですけれども、大量に売ろうと 思ったって無理なんですよね。 それで、お酒屋さん個々に、大量に、たまたま「獺祭」とか、「九平次」とかブーム来ている かもしれませんけれども、それだってワインの、他国に日本の日本酒としてそれが定着すると いうほどのことではないと思うんですよ。 やはりそれは「文化としての発信というのが大事」だと思うんですよね。ということは、個 別のプレーということではなくて「チームプレー」に組み上げていかなければいけない。 すごいですよ、知多半島って本当に。僕はびっくりしました。特に知多半島エリア外から来 ている人はそれを実感しておられるかと思うんですが、先ほどのお酒ではない、醸造という風 に括ったらものすごい力を持っている。その源と言ったら何かと言ったら、先ほどのルージュ・ プロジェクトの第一回のゲスト基調講演をやられた小泉先生(小泉武夫氏;農学博士・東京農 業大学名誉教授)に以前にお話しをうかがった時に、「海なんだよね」というふうにおっしゃ る訳ですよ。海がいい、食文化を生み出すのは海なんだ。塩がいい、食材もいい、その上ここ は野菜もいっぱい取れるところなんですよ。それらを組み上げていけば素晴らしい食文化にな らざるをえないんですよね。 じゃあ、どういう風に組み上げていったらいいかということなんです。 宇澤先生のおっしゃったように、トヨタという大企業にぶら下がったものづくり文化だけで いいのかと、個別の力があるのだったら、その中小企業というものを、酒造メーカーでテレビ で毎日宣伝しているような大企業というのはございませんよね。ミツカンさんは別にしたとこ ろで、ソニーだって盛田と関係あるわけではない訳ですから。その中小の力、ものすごい力を 一体どのように組み上げていって、それを結果的に世界に知ってもらうかと。 もう一つ、この地域にはものすごいものができました。セントレアです。 考えてみていただきたいのですが、常滑っていうのは「六古窯」(日本古来の陶磁器窯のう ち、中世から現代まで生産の続く常滑焼、瀬戸焼、備前焼、信楽焼、丹波立坑焼、備前焼をい う)の一番古いものです。では何故常滑で、これ、常滑焼の陶器の凄さっていうのは、器とし ての力、本当の器としての力、海がありますよね半田にも常滑にも、だから本当に容れ物とし て、そこに入れるコンテンツとともに発展していった。 だからその美術品としての価値としてはイマイチ欠けるみたいなところがあるんですけど、そ れは、すごく質実でいいと思うんですよ。だったらそれに徹すればいい、それで今まで、千年 以上残ってきているわけですから。 では、なぜ器があって中身があるか。それは海があるからですよね。運びたいからです。そ れが日本全国に広がっていった。 器と中身とそれから運搬する力。今、セントレアできましたよね、千年前の人がやったこと を、今空港を使ってやれないわけがない。それをどういう風に組み上げていくか、今日がその 第一歩だと思うんですよね。 「秘策」というのはないし、最初からゴールの設定も程よく決まっている。バカ売れする商品 ではない。 その、ワインと対抗するというより、ワインと一緒に時々楽しんでもらえるかなというぐら いのところでも良いと思う。それを個別にやるのは無理だと思う、じゃあどうしたら良いのか? それを今日から、ちょっと長いスパンをかけて考えていったら良いじゃないかと思うわけです よね。 じゃあ端的に、第一歩として、丸山先生、今、何を始めれば良いんでしょうか? あの、今日、もう一つね、「風土」とか「テロワール」とか、「土」が作るんですね、これ も象徴的だと思います。 常滑焼、土がないと作れませんね、良い土があるからできる。野菜もそう、それから海のミ ネラル分というのも土が運んでくる、この地域は土がいいから水もいい、だからいいお酒もで きる、風土が作る、すべてが風土に形成されている。 僕ね、丸山先生、パレルモ大学におられたんですよね、どのくらいおられたんですか? 丸山: 一年だけです。 飯尾: 一年だけですか。それにしては、何かドンとか呼ばれません?パレルモってナポリに 近いですよね。ナポリ、シチリア島って本場ですよね。 イタリアで美味しいワインと、あの美味しい、フレンチもイタリアもない、私もそれ聞いたこ とあるんですけど、そうすると本当に、人間が出来てくるみたいな象徴的な先生だと思うんで すけれども、まず最初に口火を切っていただきたいんですが。 丸山: 何から始めるかと言われると、最後に書いてた通り、いろんな「ネットワーク」を構 築していく以外にないという風に思うんですよね。 ですから、「日本酒のファンのネットワーク」もあるだろうし、食事、日本食だけでなくて、 フランス料理をやっている店、そういうのも全部あると思うんですけれども、最終的には日本 酒の場合はラーメンも入んじゃないかと思ってますけども、そういう「食のネットワーク」、 さらに日本文化を伝えたい、あるいは「交流したいというネットワーク」の中で、必ず、売っ てあげるからというような人たちもいるので、そういう人たちと繋がって実験的にではあって も契約を結んでいくと、クールジャパン構想っていうのはそういう実験を可能にするはずなの で、それを少しやっていくことが重要かなと思うんですね。 何か出展するとか、試飲会を向こうでやるとか、必ずしも助成金つかないですから、輸出助 成制度じゃないので、自分たちで切り開いていけっていうことなんですよね。さもなければ日 本の経済成長になりませんから。 そういうことなので、そのネットワークをどういうふうに作っていくことなのかと。 だから言われる通り、ボルドーのネットワークであるとか、様々なネットワークを広げてい くことしかない。それで知多半島で言えば、それをもっと半島規模で広げていく必要があると いうふうに私は思っています。 飯尾: 半島の中でも外でもそうですけれども、紹介するとかですね、交流するとかいう規模 ではなくて、ちゃんと「仲間」になってもらう、そういう深い強い交流。ネットワーク作りっ ていうのは、非常に大きな、というか最大の テーマだと思うんですよね。つながるという ことですから、今まで繋がってなかったから もうひとつ、発信力に欠けていたということ もあると思うんです。 赤崎さん専門ですよね、ネットワークを作 る。誰とどのようにネットワーキングを構築 すればいいんでしょうか。 赤崎: その前に、さっき吉田さんのお話って、みなさんすごく頷いてらっしゃったと思うん ですけど、日本酒のことを外国人に伝えるのってすごく難しいんですよね。漢字読めないし、 吟醸酒と純米酒ってどう違うのかわからないし。 これは、蔵の方たちのよそ者視線で自分たちの酒を、客観的に見直した方がいいと思うんで す、その上でちゃんと表現する。 それなくして、ネットワークがあってもダメなんですよ。 この地域、特に物を作っている方たちが、自社の強みを語れないとか、すごいものを作って らっしゃるとか、技術的に素晴らしいのにそれを表現するのが、結構上手じゃないなと思うこ とがよくあって、これはみんなでやれば怖くないですよね。 それで、どこがすごいんだ、どう違うんだというのを外国人に伝えるのに、吉田さんのよう な人の力も借りて、みんなでこうだよ、ここがすごいんだよって、これとこれはこう違うのっ て。 例えば漢字のキャラクターね、漢字なんかは外国人大好きなので、その意味合いをちゃんと 教えてあげたら、そうかっていうことになるので、その伝え方を磨きつつネットワークを作るっ ていうことだと思います。 飯尾: やっぱ日本人のこと、絵のような美しい、文字を書く人々とか言いますからねぇ。 赤崎: 漢字大好きですよ。そのかわり、ぎょっとしたTシャツ着てる人なんかもいますけど ね。 飯尾: 原田さん製造ですよね、原田さんは喋るの上手そうですよね。今の赤崎さんのアドバ イスいかがですか? 原田: 本当に、僕らのこの業界って本当に閉鎖的な業界で、今日言っちゃまずいかもしれな いですけれど、国税局からこうしなさいよって言われたら、はい分かりました。これが明治以 降ずっと続いてきた結果こうなってしまったっていう部分はやっぱりあると思うんですよ。 その分、自分で何も考えずに言われた通りにやればいいっていう、そういう楽な点もありま したけれど、ただ、それがやっぱり外国の方々にしてみても、情報としてわかりにくいってい うことはあったでしょうね。 飯尾: なるほどね、行政というのいうのは全国を統一しようとしますからね。そこで、個性 を発揮しようという方向にはいきませんもんね。まぁ、あなたは、十分個性的ですからこれか らどんどん海外でやってください。 丸山先生、随分頷いていらっしゃいましたけど、どういったところを頷いていらっしゃった んですか? 丸山: 国税庁が管轄なんで、産業振興っていう要素に日本酒業界って日が当たったことがな いんですよね。観光って言ってもなかなかやれないですけれども、かといって直売って言って 各メーカー、一人ずつ来られても困るんで、流通経路に乗せて、買ってくださいっていうのが、 醸造メーカーの蔵元が言われることなんで、我々もなるべくお邪魔しないで酒屋で買うように してるんですけれども、そういう中で輸出をやれと言われても本当に難しいと思うんですね。 だから、今クールジャパンっていう、クールっていうのは、この場合賢いっていう意味でし かないんですけど、森川さんのいったセクシーなジャパンっていう、ことも含めて、もう少し 垣根を取っ払って、省庁の利害じゃなくて、本当に日本文化を伝えるにはどうしたらいいかと、 あるいは、ワインというようなものと並ぶような象徴的な商品にしていくんだと、物語を伝え て日本文化を広めて頂ければと思うのですが。 飯尾: なるほどね、ネットワークを作ろうにも垣根取っ払わないとね、まず。 それで、吉田さんのやっておられるお仕事というのは、垣根を取っ払うことにもなるし、そ れもあって、僕らに日本酒のイメージがあったじゃないですか、なんかオヤジが飲むものだっ ていうような。それで、吉田さんみたいな方が、もう広めていただけるだけでも、光になるの だと思うのですけれども。今のご意見どうです? 吉田: そうですね、広めて、ネットワークを作るためには、基準っていう、土台となるもの がすごく必要だと思うのです。 やはり日本人として誇りを持って海外の方に、お土産でもいいですし、企業のノベルティで もいいのですけれども、やはりそこで、自分たちの国のものだっていう自信を持って、世界へ 広めていってほしいんですね。 それで、話が変わるかもしれないですけれど、日本酒を洋風に見せたり、アルファベットで 書いたりっていう日本酒って、そういうお酒もあるのですけれども、私個人的には、日本酒っ ていう日本らしさ、それこそ漢字がお好き、そういう本当にカッコイイ日本というものを、ぶ れないものを、それで、それが日本文化だと思うので、「これってワイン?日本酒?」ってい うようなものではなく、やはりその日本がせっかく海外の方が好きって言ってらっしゃるんだっ たら、中身のお酒を外国風に売るのではなく、やはり「和」できちっと、正々堂々と、正面か ら戦っていただきたい、戦う必要はないですけれどアピールですね、していただきたい。 誇りを持って本当にネットワーク作りをしていきたいなと思っています。 飯尾: あの、戦う姿勢というのは、本当に大事ですよね、姿勢を見せるということも大事で すよね。日本で大抵ちゃんと戦っている方というのは女性ですよね、これがまた。頑張りましょ うね。赤崎さんも戦う姿勢をお持ちで。 赤崎: あの、ネットワーク作りということなんですけれども、いきなり海外とのネットワー クというのももちろんすごく大事だと思います。ボルドーにいらしてください。 その前にね、やはり自分たちのいるここでのネットワークを作るってのは、これがすごく大 事だと思います。 例えば、地域ネットワーク。「知多6蔵」でしたっけ。それで昔は200蔵あったんですよ ね。今は6蔵で、協力して打って出よう、これ素晴らしいと思います。 でも、外国人の人たちから見たら、知多ということだけで売っていくのがいいことなのかど うか。これの検証の必要がありますよね。 よく観光で言っているんですけれども、県の人は県の境でものを考えられますけれども、やっ てくるよそ者にとっては、市の境目とか県の境目とか、全然関係ないんですよ。交通ネットワー クで、鉄道ネットワークとか道路ネットワークで動いていくっていうことがあるだけで、あと は文化の違いだとか、そういうのを知りながら、楽しむということだと思うんですよね。 ただ、知多が良いのは、半島だから、形がすごくはっきり見えていて、さっきの海というのが あるので、「知多6蔵」の共同ネットワークというのをどんどん、盛り込んで行かれたら良い と思います。 でも、もう一つは、酒と言っても、日本酒は食中酒だから、お食事しながら飲むお酒ですよ ね。そうすると、やっぱり食文化というところに広げないと、お酒があって、美味しいお料理 があって、そうするとそこにはそれが乗っかっているテーブルがあるし、さっき「盃(さかず き)」っていうキーワードも出てきましたけど、飲む器もあれば食べる器もあるし、しつらえ もあるし、あるいは日本ならではの四季を楽しむような、そういういろんな仕掛けがあって、 それが総合的に食文化としてあって、その中に、日本酒が素敵ねっていうことがあると思いま すので、そこの食文化つながりのネットワーク作り、これも大事だと思います。 飯尾: なるほど。今回のこの地域、すごくそれ恵まれていると思うんですけどね。 あの、同心円状に書くんだったら、お酒の拝見盆みたいになってくるけど、酒文化があって、 その外回りを醸造文化が包んでいて、その外回りを食文化が包んでいるわけでしょ、だから、 徐々に波紋を広げていくっていうことが、世界に近づく。 僕ね、美浜町の人はすごいと思うんんですよ、南知多の人も。もう平気で言うもんね「隣は ハワイだでよ」って。半島って、半島根性って間違いですよね。常に先端の方に行くと海外を 見ていますから。 宇澤先生、今までのお話、感想でも付け加えていただくことでも、提案でもなんでも結構な んですけれども。 宇澤: 大変面白い問題が一杯出てきまして。それで、ラベルの話なんですけど、私、日本酒 じゃないものを日本酒としてラベル付けて、スーパーで売っているのは、非常に誤解を受けや すいと思うんですよね。味の素が入って、どこかで作ったアルコールが入ってて、大抵外国人 の友達を案内すると、これなんだっていうんですよ。それとか、これちょっと買ってみたけど 飲んでも全然まずいっていうんで、見てみると、これは工場でつくっったんじゃないかという ものになっちゃうんですね。 それで、森川先生がセクシーとおっしゃったんですけど、みんなが一番セクシーだと思う目、 みんなが一番セクシーだと思う唇、そういうのを全部くっつけたら化け物になっちゃうんです よ。 セクシーっていうのは、自分が持っているものを大事にして、それを人に魅力的に思ってもら えるっていうのがセクシーだと思いますので、まずここにあるものをもっと大事にして、それ で、ここに根付いているものを、ここでしか維持できないので、それを、今流行りだからこれ やってみよう、これが流行りだからこれやってみようっていうのは、外から来る人は、オリジ ナルを見に来るわけで、多分、(丸山)先生もそれで実感されていると思うんですけれども、 イタリィの人っていうのは、ものすごく、オリジナルのものを大事にするんですよね。 やはり、日本人も、そのオリジナリティを大事にしていけば道はあると思うんですね。 それで、ちょっと、お話1分だけなんですけど、中小企業について僕が調べ始めた一つの理 由っていうのは、東急ホテルの裏に、豊田通商の人たちのたまり場の飲み屋さんがあったんで すね。 五千円払うと飲み放題で、僕はビール沢山飲むんで、あなたの場合はもうちょっと取るわっ て言われたんですけれど、そこにおもちゃ販売会社の社長さんが、ドイツ人の親子を連れてき たんです。非常にいいおもちゃを作ってくれるっていうんで、たたき上げの方なので、ドイツ 人の方はドイツ語しかできない。社長さんは、英語と日本語できるけど、ドイツ語できない。 まぁ、でも連れてきて、楽しそうにやっているんですね。それで僕ドイツ語できるから通訳し てたんですけど、逆に考えたら、まぁ、こういうのありかなと思ったんですよ。 こちらで、原田さんが、ドイツに をいくつか持って行って、それで、ドイツ語できないん でどうしようかなと思ったら、こっちに留学していたドイツ人の人が、元学生さんが、通訳し てくれたりとか。 物を作っていることのメリットは、説明要らないんですよ。真面目に作ってくれる人がいれ ば、それを解ってくれる人がいるというのが非常に大きいと思いますし、もう一つは、ギリシャ 人の友達の結婚式に呼ばれていった時、突然、電話かかってきて「お前なんで来ないんだ?」っ て言うから、招待受けてないって言ったら「今招待した」と、いつだって言ったら来週の月曜 だっていうんで、その当時でギリシャ3日行くのに20万円くらい飛行機代で使ってしまって、 ちょっと信じられないような旅だったんですけれど、その時には、ちゃんと日本酒を一升瓶スー ツケースに隠して持っていたんですよ。 そしたらやっぱり、向こうの人たちは、良い日本酒持ってったんですけど、みんな覚えててく れるんですよね。あの時お前の友達はわざわざ、日本からすごく美味しいお酒を持ってきてく れたって。 それで、それ持って行ったら、その友達は、じゃあうちのも飲んでってくれって、3日間僕は どっか拉致されていったんですけど、そう言った形の、赤崎さんも仰っている「ネットワー ク」っていうのは、やっぱり、ちゃんと真面目に作られたものだったら、それを媒介にして人 と人のつながりはできると思いますので、味 とか醤油、日本酒、まぁスーパー行って、ちゃ んとして作ってあるものはなかなか買えないと思うのは、そこら辺のラベリングも含めて、変 えていかなければと思います。 すいません、長くなりまして。 飯尾: いえいえ、今、このご時世に日本酒一升びんを内緒で持ち出すのは、すごく厳しいと 思うんですけれども、その熱意っていうのは素晴らしいと思うんですよ。 丸山先生、オリジナリティっていうのは大事ですよね。ヨーロッパの人は大事にするんです かね。オリジナリティがクオリティを保つ。いかがですか、先生。 丸山: 難しいですけど、オリジナリティというより、とにかく地域を売るという考え方は、 ヨーロッパであれ、アメリカであれ、基本だと思いますね。地域で品質を保証したり素晴らし いものを作らなければ、決して売れなかったわけですから。 一つの企業が売っていたのでは、どれでも売れなかったっていうのがあって、その地域のオ リジナリティっていうのがあるわけですね。 現在では製造業の世界では、一つのメーカーが巨大になれる力がありますけれど、全体とし てみれば、ヨーロッパは産地の集積なんですよ。だから、中小企業、中には日本で大企業に分 類されるようなものもありますけど、刃物なら刃物って決まっているわけだし、その中で切磋 琢磨してということがあるわけです。 だから、日本酒なんかだと、遠くへ行くほど安くなるというマーケティングをやっていたの では、つまり、青森に出荷するときにはかなり原価下げなきゃいけないっていうやり方してい て、地元が一番高く売れるというようなことになっているんですけれど、そういうようなこと はやめないと、というか、地域でやっぱちゃんと、一つの企業が存続できるようにね、やって かないといけないというふうには思っています。 飯尾: ありがとうございました。宇澤先生もそうですけれども、丸山先生のところに来る と、大事なキーワードが必ず出てくるんですよ。 お酒の流通・販売に携わる方は絶対メモってほしいんですけれども、これからの手順を逆に たどっていますよね。 「ネットワーク」、「自らを知る」、それから宇澤先生の仰った「クオリティ」、自分たち のクオリティがどんなものかを知るということが大事かと思いますよね。そして、ネットワー クを作っていくという風に、だんだんパズルが埋まっていくような思いで、うかがっているん ですけれども。 そういう意味でいうとですね、原田さん、「國酒」という括り、ちょっと大きすぎません? 原田: 「國酒」という括りですか? 飯尾: 日本酒という括りすら、大きすぎる気がするんだけど。 原田: 日本の国を代表するお酒という考え方をすれば「國酒」でも悪くないかなって思いま すけどね。 飯尾: なるほど。でも「國酒」っていう大きな括りの中で、知多のお酒ですとか、地元のお 酒がどのような位置付けにあるかっていうのは、知ることっていうのはすごく大事なことのよ うな気がしてきたんですが。 原田: そこがはっきりしないと、やっぱりこれから生き残っていけないという部分はあるで しょうね。 飯尾: そういうそのクオリティが高いお酒、それが集積されて、その「國酒」というものの ブランドが初めて活きるような気がしました。やはり地域というものはすごく大事だなと。 赤崎さん、今までのところいかがです? 赤崎: 今度のボルドーで、日本酒の話を「九平次」の萬乗醸造さん、萬乗醸造さんの「九平 次」って今は、パリの星付きのレストランでも出してますっていうふうなことになってますよ ね。で、それを一番最初に始めた頃に、あのフランス人とこんな会話をしたんだ、っていうの がとても印象的だったんですけれども、「あなたの会社は小さい会社だよね、このお酒飲むと、 小さい会社で一生懸命作っているのがわかるよ、だからうちに入れて」というような話をレス トランからしてもらったというんです。これが私とても印象的だったんです。 それで、共通してるんですけれども、去年イタリアに行く時に、スローフードのことを色々 勉強していて、本当にスローフード、イタリアって「マンマ」の味ですよね。みんな自分のお 母さんが作ったお料理がいちばんおいしいと思っていて、基本的に地産地消じゃないですか。 大都市は別として、田舎に行けばみんなその土地で採れたものを、結構シンプルな調理法で作っ て食べている。 それが危うくならないように、スローフード協会ができて、みんなでこの国でできるもの、 それぞれの地域でできるいい食材、本物の食材、健康に良い食べ物をしっかり守っていこうと いうのがポリシーだから。 それで、こちら側からいった例えば「まるや八丁味 」さんの味 、「澤田酒造」さんのお 酒、あるいは「三河みりん」というのが、とても高い評価を得た。絶対に通じるものがあるの と思うんです。 大企業が作ったものがいけないと言っている訳ではないんですけれども、でも、伝統的な製 法を守ったり、小規模で一生懸命作っていたりというところに、本物があるよね、という感覚 が、結構皆さんの中にあるんだなっていうことをミラノでも感じましたし、今回ボルドーでも、 ボルドー側は、サンテミリオンであり、隣がシャトー・ラフィット・ロートシルトっていう、 ポンテカネのオーナーに出ていただくことにとりあえずなっていますけれども、そんなに大き くないんです。 ボルドーは、本当に大きなところが多いんですけれども、そういうものをきちんと本物を作る という感覚をとても尊ぶというのが、私はわかったのはイタリアとフランスだけなんですけれ ども、多分、今日の話のルクセンブルクとか、みんな共通しているんじゃないかと思うんです よね。 その辺をちゃんと、対話ができるようにして、出かけて行っていただく。 お商売は、やっぱり人と人のつながりが大事なので、行ってみて、話をして、飲んでもらっ て、食べてもらって、感想を言ってもらって、それを自分たちが取り入れて、自分たちがどう やって返すかって、この中でしか育っていかないと思いますので、そこで、生(なま)なやり 取りをしていただきたいと思います。 飯尾: それすごくわかります。ロマネコンティんなんて1.8haしかないんですもんね、あれ。 じゃあそれだけ、その「テロワール」、「風土」も大事にして、クオリティを落とさないよ うにする。 もうひとつね、僕も、昔フィレンツェなんですけれども、向こうで知り合った人に、これか ら我が家の料理をご馳走するよって言われて、本格的なイタリア料理ですねって聞いて、そし たら「イタリア料理なんてものはないんだよ」って、各地域の料理があるんですかね、ここは フィレンツェ料理ですかねって言ったら、バカにした顔されて、「各家庭の味があるだけさ」っ てかっこいいよね、本当にね。 宇澤先生、いい話ですけど、これ、ただいい話だけじゃなくって、やっぱその理屈が通って いると思うんですけどね、今赤崎さんのおっしゃったこと。その辺いかがですか? 宇澤: そうだと思いますし、あと、日本でよくあるのは、すぐアメリカと比較するんですけ ど、日本というのは、車ができる前からまちづくりをしているところで、実はヨーロッパの方 にスーって持って行きますと、だいたい北海道あたりがロンドン、で九州の南端がだいたいイ タリィのつま先あたりに来るんです。 ですから、昔のスケールで言ったら、これはかなりの、ヨーロッパで言えばいろんな国をま たいでいるわけで、それですから、昔から「お国自慢」というのもありますし、それぞれの風 土に合わせて食べ物もできたと思います。 だんだん知多のお酒に慣れてきたんですけど、こちら味 とか、味 はやはり大豆使ってい るのでちょっと独特の苦味があって、それで日本酒はそれとちょうど、コンセントするような、 いい具合なんで、多分単独で飲むとあれって思われる方もいるんですけど、ここの食べ物と合 わせると非常によく合ってて、僕好きなんですけど、そう言ったそれぞれの特徴を生かしてっ ていうところが、先ほどの飯尾さんの話につながるわけですけど。 飯尾: それでしかも、中小だ、大企業だなんて気にする必要はないですよね。その辺のコン テンツというのは、どちらにもいいところがあるわけですから。どちらにも必要性があり、中 小の方が小回りがきくところがあるし、個性が出せるところもありますので。 そういう力を組み合わせやすいですよね。食っていうのは、テーブルの上で。 そして赤崎さんのお話の中で、もう一つ大事だったのは、やっぱり食文化、醸造文化。この 地域お酒だけじゃないっていうのを、関係者の方いらっしゃるんですけれど、帰っちゃったか な?帰られちゃったね。本当にこの地域には、ここにしかない0.7%だけれども、すごい文化、 「白醤油」。すごい味だって、これなんか受けそうだと思うんですけどね。 見た目がね、関西風のドロドロの天ぷらうどんよりも、真っ白で透明な、ごめんなさい、美 しいクリスタルな感じのうどんって、だから、さっき森川さん言っていたけど、硬いもの作り すぎですよね。ここね。 硬いものっていうか、鉄でできた車だけじゃなくって、固い麺のきしめんだけが名古屋のき しめん文化じゃない、柔らかいうどんがあったっていいんじゃないかっていう気もするし、と にかく醸造文化の集積みたいなことを、大事にしてほしいなっていう気がします。 そしてもう一つですね、この地域のすごい強みって、やっぱり海運が文化を広げ、その海運 が常滑に、常滑焼、あるいは醸造文化として根付く。赤崎さんがご紹介いただいた「尾州早ず し」。これ、良い酢があっても、江戸へ運べなければ、「江戸前寿し」はできなかったわけで すね。 だから運搬ってすごく大事だと思うんですけど、そこにその「セントレア」なんてものがで きちゃったじゃないですか。 日本で4つしかない、これ拠点空港ですよね。これどういう風に活かしていったらいいか、こ れはもう、ものはついでだから森川さん、なんかない? 森川(森川高行氏・名古屋大学未来社会創造機構 教授): かなり、無茶振りですね。 そうですね、セントレアができたのと、この知多半島の文化のつながりは、知多半島の会が あって一生懸命にやられているのは私も存じているんですけれども、あの、しかし、知多で頑 張ってられる方は頑張っておられるんですけど、私もセントレアの有識者委員の一人ですけれ ど、セントレアの頑張りが足りないのかなと、いや、セントレアのせいじゃないですよ。 この地域のひとが、この空港を使わない。卵と鶏なんですけれども、だから路線ができない ということで、ちょっと万博以来悪循環になって、どんどんどんどん路線が減っちゃってると、 もう頼みはローコストキャリアだけだっていう話になっているんですけれど、もうちょっと、 さっきから地域地域っていう話があるんでしたら、やはりこのセントレアを使っていかなく ちゃ、このセントレアがもっとネットワークのハブにならないので、もうちょっとセントレア のハブ性を広げて、それで、路線が増えたからこの地域の文化が広がるかっていうのはわかり ませんが、一つのインフラとしてね、もうちょっとヨーロッパ、それからオセアニア、それか ら北米、あの路線ができてもっとたくさんの人が来てくれれば、相乗効果でまたこの地域の文 化をもっと世界に広げようっていう話にもなりますので。関係者の方来ていたらごめんなさい、 けれども、セントレアのせいでは決してないです。 みんなこの地域の人たちが、地域の空港を使って、そして需要ができれば供給が生まれます ので、ぜひそいう循環、全然話がずれましたけど、そういう風になっていければいいのかと。 飯尾: でも先生、ボルドーもね環境都市ですけれど、元々港湾都市ですよね。港を中心に栄 えたから世界商品になったわけですから。 森川: そうですね。まさにクラレットをイギリスに輸出するために、あそこのガロンヌ川 に、川の港を作ったという話なので、それと似ているといえば、似ているわけですね。 飯尾: だから地の利というのはすごくあると思うんですよここ。地の利と、空の利まででき ちゃったんだから。 森川: そうですね、昔、今話あったように、この辺のやっぱり東側と西側の両側に、半島に 港があるので、西風が吹いたら東側の港から江戸に運べるとか、逆の風が吹いたら西側から運 べるとか、それができたのが、今、港が名古屋港だけになっちゃいましたけど、セントレアを 活かさない手はないと思います。 飯尾: ありがとうございました。 空港会社の皆様これは、熱いエールですし、これを聞いた皆さん、これもテロワールだけじゃ なくて、でもこれテロワールの一つかもしれません。 他のところにない宝物ですから、どんどん活用していただきたいし、どんどん応援していた だきたいと思います。森川先生ありがとうございました。 で、そろそろ、時間なんですけれど、赤崎さん、今の森川さんお話も含めてね、もう一回、 具体的に、じゃあ次のステップに移る時に、今も、問題点の整理と、状況把握をこれからして いこうということだと思うんですけれども、次にどういうステップを踏めばいいか、なんか一 言アドバイスをいただきたい。 赤崎: アドバイスなんておこがましいですけれども、愛知県の「食品輸出研究会」ってあり ます。平松食品という蒲郡の佃煮の企業の社長が会長をされていますけれど、結構アグレッシ ブですよ。で、それは、補助金が出たりとかではないですけれども、省庁、自治体がいろんな 取り組みをしていて、食品フェアを海外でやりますっていう時に、やっぱりみんなで出て行っ ているということをされています。 それで、こういうの私やっぱりとても大事だと思っていて、実際に、その国の人と会って話 をして、ご飯食べてお酒飲んで、自分たちのお酒どういう風に思ってくれるのか、これがわか るというのがやっぱり最初だと思うんですよね。 そのあと一生懸命研究して、いろいろ作っていく。それでセントレアの話が出たので、セン トレアの活用ということでいえば、コンテナ混載だと思います。一社単独でコンテナに商品を 詰め込んで、海外に出すなんてとても大変なことだけれども、コンテナの中にこの地域のお酒 だけじゃなく、発酵食だけでもなくて、いろんなものが一緒に混載されて出て行くというよう なことを、かつてこの地域が、出来上がったお酒やお酢を乗っけて、劣化させずに大都市であ る江戸へ、京、大阪へ持って行ったように、それを海外に持って行く。そういうことを皆さん でなさったらいいと思います。 それで、最後に一つだけいいですか。あの、地域のブランドができているっていうのがやっ ぱり大事だと思うんですね。知多半島なら、知多半島というのが日本にあって、ここすごいん だよね、とっても美味しい街なんだよねみたいな。で、そのためには、「インバウンド」で外 から来ていただくということと、「アウトバウンド」でこの地域のものを外に売っていくって いう、これが両輪だと思っています。 だから、広い範囲での地元のネットワークを作っていくのが、やっぱりこれはこれで大事と いう風に思います。 飯尾: なるほど。広くも狭くも、浅くも深くも、これからせっせとつながりを作らないとい けない、それはみなさん、共通の課題であり楽しみであるということだと思いますけど。 これで、今日、多分ね、一般の消費者の方もお酒好きな方参加していただいていると思うん ですけれども、これ流通だけの問題じゃないんですよね。 これ宮田さんの書かれた論文、これ結構感動して読んだんだけど、日本酒というのはまさに ね、『風土(テロワール)を代弁する産品であるといえる』と、これ飛ばし飛ばし読みますけ ど、『日本の国土や風土そのものを表現するもの』であると、『それを元に価値や魅力を伝え ていくための情報整備、発信のための取り組みや努力は不可欠』だと、このあとがいい、『こ れらの継承・保全は、そこに住む私たち自身が、健康で文化的な生活、持続可能で豊かな生活 を世代をまたぎ、享受する』、私たち自身が受けるという、サービスじゃなくって、『という 理念・価値観が背後にあり、「品質や伝統資産を(伝えることを通じて)守る」という目的が 意味を持つ』って、これみなさ んのクオリティ、生活のクオリ ティを高めること、未来世代の 暮らしのクオリティを高めるこ とに直結する問題ですから、こ れからご一緒にお考えいただき たいと思います。 どうもありがとうございまし た、みなさん。 (7) 総括 名古屋小売酒販組合 専務理事 高橋 孝治 氏 大変長時間にわたり、聴講ありがとうございました。私は、名古屋小売酒販組合の高橋と申 します。 パネラーの方、私も4年くらい前からですね、順次ご存知の方々が多くて、非常に興味深く 聞いておりました。 もともと我々は、小売酒販組合と申しまして、町の酒屋の組合でございますけれど、町の酒 屋は非常に疲弊しているというはみなさんご存知と思いますけど、なんとか日本酒で復権をと いうことで、平成24年10月1日、日本酒の日にですね「愛知銘酔会」というのを立ち上げ、私 は小売酒販組合の名刺と一緒に「愛知銘酔会」の名刺を渡しております。 そこに「ENJOY JAPANESE KOKUSHU」というのが度々、イギリスのチャタムハウスにみ える、我々はどうしても佐藤教授と言いがちなんですけど、現在でも名古屋大学の客員教授と しても就任されておりますので、佐藤教授が民主党政権時代にですね、「ENJOY JAPANESE KOKUSHU」ということで、私が一番最初に名刺に刷りまして、新しいオリジナル商品につい ても、ラベルに「國酒を楽しもう」という、名刺に書いてある赤い文字を入れております。 本日のシンポジウムについても、非常に貴重なご意見、生の声をお聞きして、私も非常に まぁ、シンポジウムというのは眠たくなるんですけれど、目がパッと開いているような状況で、 非常に長時間でしたが、楽しい時間、有意義な時間を過ごすことができたと思います。 このシンポジウムについては、先ほどから出ております、佐藤教授がパンフレットの裏に、 メッセージを寄せていただきましたけれども、佐藤教授なければこのシンポジウムも、このご 縁で開催されなかったかなとも思っております。 私は日本酒のことで、ずっとお聞きして興味があるものですから、日本酒っていうのは、昭 和50年に第一次日本酒ブームがございまして、それ以降ずっと低迷期ですね。上昇することが ありません。昨年度も、全体量の総本数としては、1.7%くらいの減というのが日本酒造組合中 央会で出ております。 ただし、吟醸酒がですね、前年の10.5(%の上昇)、純米酒が4%(上昇)と、少し明るい兆 しが見え始めているのが事実でございます。 そのような中で、売り場でもですね、地方の吟醸酒、純米酒の注目度が高まっている傾向が 見られていると思います。 このような傾向を背景に、本日は「知多から」ということで、愛知県酒造組合の会長さんも お越しになっておりますけれども、ウイスキーも「知多」というものを出しています。ですか ら、知多から世界に羽ばたくように、ご参加していただいた方も、お茶の文化とともに、これ からもご協力をしていただければありがたいと思っております。 本日は、私は都合でちょっと参加はできませんけれど、メニューを見ましたら非常に魅力的 な、トラットリア・ケイヤさんの中島シェフの、知多の幸を使った料理と、日本酒のソムリエ ということで、吉田綾子さんは個人で免許を取られまして、吉田さん言われなかったのですが、 名古屋では有数な地酒専門店に嫁がれた方で、お酒のことはプロなんですね。それで、国際唎 酒師ということで、個人でまた免許を取られて、私の誕生日のこの1月28日に免許を付与され まして、名古屋小売酒販組合の組合員にもなっていただきましたので、力強く、女性の方が世 界にですね、発信していただけるということで、我々は組合としても心強く思っております。 本日はまたお忙しい中、藤田名古屋国税局長をはじめ、行政の方からですね、県の方、市の 方、それから首長の方も2名、おみえになっておりましてありがとうございました。 加藤教授が今回ご体調を崩されたということなんですけれど、講演が本当に聞きたかったな ということで、また宮田さんにもお伝えしていただきたいと思います。 また本日は司会も、お手伝いも、名城大学の日本酒研究会、加藤教授が部長をされています けど、日本酒研究会というのは関西地区が非常に今、盛んになっています。 それで、当地区では名城大学が核となって、やはり若者の酒離れと言われていますけど、や はり若い人たちが日本酒に興味持っていただくためには、こういう若い方々のお力を借りなけ ればなりませんので、また是非、名城大学の日本酒研究会の方々にも頑張っていただきたいと 思います。 最後に、この会場を貸していただきました澤田酒造様には、感謝申し上げるとともに、今後 益々、我々末端の小売組合としても、愛知県の酒を普及・発信するために頑張りますので、皆 様ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。 以上です。ありがとうございます。 (8) 第二部|懇親会 『知多の幸とイタリアン、日本酒のマリアージュ|和らぎ茶というチェイサーの提案』 第二部:懇親会 bien-美宴 代表 吉田 綾子 氏 Trattoria KEITA 中島 慶 氏 茶心居 代表 坪内 浩史 氏 Sake Pasto Tè 梅酒 白老梅 純米大吟醸仕込み 豊橋紅茶 冷茶 澤田酒造 愛知県豊橋市(後藤潤吏) 半田郷 酵母 1801 純米吟醸 前菜盛り合わせ 足助寒茶 焙 中埜酒造 ・知多産豚と千賀ファームの新玉ねぎのパテ 愛知県豊田市 日本酒度 +3 タイプ ・三種のキノコのペーストのクロスティーニ(薄切りパンに乗せたもの) ・ハム三種(パルマ産生ハム、モルタデッラ、サラミソプラータ) ・カポナータ ・人参のサラダ オレンジとフェンネルの香り ・師崎産タコのマリネ ・師崎産スズキのカルピオーネ(南蛮漬け) サルサヴェルデ(パセリのソース) ほしいずみ 純米吟醸 パスタ ベニフウキ包種 烏龍仕立て 丸一酒造 ・千賀ファームのアスパラとリコッタチーズのリガトーニ 静岡県牧ノ原市(柴本俊史) 日本酒度 +2 ・和牛ラグーのフジッリ 金鯱 純米 盛田金しゃち酒造 メイン 日本酒度 +2 炒り茶 こってり味 ・知多産豚とキャベツの煮込み 静岡県牧ノ原市(柴本俊史) 華名城 特別純米 デザート 冷凍包種 7132 原田酒造・名城大学農学部 ・ヨーグルトのムース 萬秀フルーツのルビーグレープフルーツのソース 静岡県牧ノ原市(柴本俊史) Trattoria KEIYA 茶心居 日本酒度 -50 AR4 純米 盛田 日本酒度 - 43 bien - 美宴 日本酒について 梅酒「白老梅 純米大吟醸仕込み」は、山田錦で造った純米大吟醸を二年、古酒に漬け込んだ贅沢な梅酒です。濃厚な美味 しさが特徴の白老梅を、本日は炭酸で割り、爽やかなスターターとさせて頂きました。 前菜の盛り合わせには、中埜酒造の「半田郷」をどうぞ。香り高く、お米の旨味ある味わいの中にもすっきり感がある幅の 広さが、多種にわたる本日の前菜をはじめ、まろやかな味わいのお食事と良く合います。 パスタには、とても華やかで膨らみがある「ほしいずみ」純米吟醸を。青リンゴやメロンを思わせるようなフルーティーさ が、緑色野菜や柔らかなチーズと好相性です。 山田錦を使用した盛田金しゃち酒造の「金鯱」は、柔らかくまろやかな旨味に特徴があり、そのフルボディ感がお肉料理な どに良く合います。口中でのマリアージュをお楽しみください。 原田酒造と名城大学農学部のコラボレーションにより誕生した「華名城(はなのしろ)」はカーネション酵母と知多米「若 水」100%で造られ、口当たりの柔らかい、華やかな甘酸っぱさがとても可愛い日本酒です。 甘口白ワインのような優しい味わいが特徴の「名古屋大学桜酵母」で造られた、盛田「AR4」とともに、デザートと合わ せて、贅沢な時間をお楽しみください。 同じ知多半島でも蔵の特色、水質、それぞれの製品の特徴から多様な食の味覚のパレットと合わせることで楽しみが広がる ことを実感しました。そんな懐の広い知多半島のバリエーションをお楽しみください。 bien - 美宴 吉田 綾子 料理について 前菜は盛り合わせの為、酸味の有る物から塩味の強い物また少し甘味の有る物と少しバラエティーを持たせました。また知 多半島の恵みをハム三種以外には取り入れています。 最初はアタックの強さからスッキリとした余韻へと続き、料理の味わいとの接点を様々な形で受け止めてくれる純米吟醸「半 田郷」が料理、酒の双方を引き立ててくれるのではないでしょうか。 パスタは双方ともイタリアではよく食べられているものです。アスパラのリガトーニは新鮮なアスパラの香りとパスタの噛 みごたえが特徴的ですが、リコッタチーズのミルキーな味わいが優しい春の午後の日差しのように全てを調和させています。 和牛のラグーのフジッリは赤ワインをたっぷりと使用してハーブとスパイスで味わいに奥行きを持たせています。今回はト マトソースを多めに使用し、やや南寄りのテイストに仕上げました。個性の異なるパスタですが純米吟醸「ほしいずみ」の 華やかな香りとふくよかさがイタリア料理の花形であるパスタをより華やかに演出してくれます。 メインは知多産豚のスペアリブとバラ肉を3時間程煮込んだものです。骨から出る豚肉の味わいの強さと純米「金鯱」の個 性的で強いボディーが料理に負けず最後に相応しい力強い組み合わせかと思います。 デザートはヨーグルトのムースが「華名城」の優しい甘味やほのかな乳酸の香りとマッチしピンクグレープフルーツのソー スの軽い苦味がアクセントと成ってお互いを引き立ててくれます。 日本酒との組み合わせの会は私にとっても初めての事で大変有難く幸せな経験となりました。 どうか今日参加された皆さまにもこの会が幸せなひと時で在ります様に。 Trattoria KEIYA 中島 慶 お茶について 最初の茶はウエルカムティーとして、ごとう製茶の「豊橋紅茶」のアイスティーを用意しました。近年国産紅茶が脚光を集 めるなかで、豊橋のごとう製茶は精緻な茶の数々を世に送り出し注目を集めています。 8年以上無農薬、無肥料栽培のもと採集された茶葉は、癖のない素直な紅茶に仕上がりっております。 足助の里山、藪などに育つ野生茶を厳寒期に手摘みし、軽く焙 を加えた「足助寒茶」。気取らず鄙びたお茶は、味の宝石 箱としての前菜、それに合わせた香り高い半田郷との出会いを、そっと見守るような存在です。次なるパスタへの期待が高 まります。 静岡県牧之原市で独創的な茶の数々を作り出す茶師、柴本俊史が手がけた「ベニフウキ包種」は、軽醗酵烏龍茶です。ベニ フウキは紅茶以外には使い難い品種ですが、柴本の手にかかると、存在感のあるさわやかな烏龍茶となり、肉やチーズを使っ たしっかりした味わいのパスタ、そしてフルーティーなほしいずみとの華やかなダンスを、春風のようにまとめてくれるで しょう。 主役ともなるメインの肉料理と風格ある金鯱は、いわばオペラのような重厚さがあります。そんな力強さを締めくくるのは、 日本人にもなじみやすい、茶の芳ばしさが前面に出た、柴本の「 炒り茶こってり味」です。茶の旨みが出過ぎない 炒り 製茶のため、せっかくの料理や酒の余韻の邪魔をしません。ジャンルを超越した口福をお楽しみください。 デザートは食事の感動をもう一度振り返るひと時です。甘くやさしいムースと華名城の軽やかなワルツに、楽師として寄り 添うのは冷凍庫で一年熟成し、甘みと香りを引き立てた「冷凍包種7132」です。茶葉のポテンシャルをはっきり感じてい ただける、香り高い茶は、今宵の出会いを忘れがたい思い出に変えてくれると思います。 料理と酒の化学作用を、健康の面からもさりげなくサポートしてくれるのが、チェイサーとしての茶です。 皆様の感動に少しでも寄り添うことができれば、嬉しく存じます。 茶心居 坪内 浩文 5. 終了後関係者のメッセージ Trattoria KEIYA 中島 慶 氏 クールジャパンの言葉を耳にして久しいですが、「クール」と言うと海外ではカッコいいと 言う意味から初めはメディアでも海外の若者の間でのJ-pop人気やアニメやコスプレの普及の 様子が流れ、「Kawaii」と言う言葉も合わせて素晴らしい様な恥ずかしい様な複雑な想いで見 ていました。 また一方で、パリの星付きレストランや若手の話題のレストランでも日本酒がオンリストさ れワイングラスに注いで料理と供に提供される等、トップシェフやソムリエの間でも日本酒に 関する興味と認識が高まり、愛知のお酒も一部ではありますが三ツ星レストランにて提供され るだけの地位を得ています。 今回、美宴の吉田様より声を掛けて頂きこのような形で少しでも開催に関われた事は私に とって大変有意義でありました。 先ずは私自身の自国の文化に対する無関心さを改めて考えさせられた点です。今 の日常の 中で日本酒やお茶を口にする機会はもちろん有りましたが、深く掘り下げる事も無く何となく 傍にあるものでした。しかしながら今回の趣旨である海外への普及を考えた時に世界で飲まれ ているワイン(ブドウ)には聖書というバックボーンが有るように、私達もただ日本酒の味を 知っているだけではなく、その歴史や古くから親しまれた知多での文化を良く知らないと本当 の意味での理解には成りえず、また普及にも繋がりにくいのではないかと思いました。 良い物を知ってもらう上で理屈ではなく、難しく考えずとも先ずは親しんでもらうことは非 常に大切かと思います。ただ何か聞かれた時に答えられるよう歴史や背景を知っている事は、 相手に対してもより深い理解と興味を与える事と思います。 二つ目のはチェイサーとしてのお茶の可能性です。私自身ワイン会の開催時に水ではなく水 出し冷茶を使う事がたまに有りましたが、今回の茶心居さんのお茶は、湯で出しながらどれも 繊細で、料理とお酒の間を取り持ちつつ口の中を綺麗にリセットさせるだけの力が有ることに 非常に驚きました。 日本酒と同じく日本茶にも新たな可能性が有る事を感じ、石原様(日本茶アドバイザー・ISF 文化アドバイザー)が提唱されていた様にセットで考えた方が海外ではインパクトを持って受 け止められるのではないかと思いました。 ただスパゲティーが好きで始めたイタリアンでしたが、私自身は日本人であり誤解を恐れず 極端に言えば、私の造る物全てはイタリアンに似た日本食なのかも知れません。 今一度足元を見つめ直して仕事と向き合いたいと感じる一日でした。 懇親会には海外を良く知る方々も参加されていましたので今後のプロモーション活動には良 い知恵を授けて頂ける事と思います。名古屋、各務原には航空産業が発展している事から特に シアトルからの滞在者が多く滞在中に日本酒を学びたいと思っている方々も多いと思われます。 今回の様な懇親会に海外からのお客様も含めるとより目指す方向に近づくのではないでしょう か。発信する側だけでは無く、受け止める側の声も今後は重要に成るかと思われます。 茶心居 代表 坪内 浩史 氏 この度は、大変意欲的かつ実験的な企画の元、その一端に携わらせていただけた事は、私の 今年の大きな収穫でもありました。 産業としての日本酒という側面だけでなく、それを世界にむけて発信、推進するための様々 な取り組み、試みが交錯する刺激的一日となった事は、疑いもない事実です。 日本酒をより深く楽しむために、美味しい料理はもちろんの事、チェイサー(和らぎ茶)と しての茶の可能性を、今回はっきり認識することができました。 健康飲料として、今や世界のいたるところで「茶」飲料は用いられています。人類にとって も不可欠となった、普遍的飲料もそのバリエーションは実に多彩です。当然ながら日本酒との 組み合わせも、無限に広がる奥深さを秘めております。 茶の専門家としても、新たな視点を得ることができました。 中部地方の伝統産業、また中小様々な企業がつないできた技とその製品は、酒、茶にとどま らずまだまだ見直され、世界へ出ていく可能性をもっていると思います。 こうしたイベントの重要性はますます増すばかりと感じております。 最後に、今回ご参加、ご協力を賜りました、 すべての方々に深く感謝をいたしております。 bien-美宴 代表 吉田 綾子 氏 去る4月30日、シンポジウム及び懇親会が滞りなく終了しましたことを、まずは関係者の 方々へ心より感謝申し上げます。 第一部のシンポジウムでは、様々な専門分野でご活躍の皆様方と登壇させて頂き、多方面か らの発表やご意見をもとに、自分自身の活動を振り返ることができました。 第二部の懇親会では、日本酒とのマリアージュを考慮したKEIYA様によるイタリア料理、お 酒とお料理へのチェイサー、また健康飲料としても提供されました茶心居様の繊細なお茶、た くさんのご協力を下さいました澤田酒造様、常滑屋様、皆様の力が集結し、54名のお客様と共 に有意義な時間を過ごすことができました。 次回への様々な改善点は見えましたものの、今回できる限りの力は出し切れたのではないか と、私自身にとって大きな経験となりましたことは、紛れもない事実でございます。 「和」を世界へ。これはbien-美宴が大切にしていることです。 日本酒は2000年の歴史とともに、日本の冠婚葬祭、宗教的なものに深く根付いているもの です。和とは、人との和であり、日本文化の和。日本酒単体で伝えるよりも、それを取り巻く 空間、旬の花・料理、また地理的・歴史的背景とともに、日本酒の魅力をアピールしていくこ とが大切だと感じております。 先ずは無関心を関心に変えること。関心の次に知りたい欲求がある。知りたいことを楽しく 学んで納得すれば、それは日常に変わり、魅力が広まっていくのではないかと考えます。 幸いにも最近では、海外の方々からの日本酒への関心が高まっています。「和」を伝え広め る良い傾向だと思います。私たちに歩み寄って下さる世界の方々へ自分たちも歩み寄り、押し 付けではない文化のマリアージュ、価値観のマリーアージュを楽しめたら、とても幸せなこと ではないでしょうか。 知識や理論付けて伝えることを大切にしつつも、最終的にはやはり心で感動するかどうか。 日本酒を通じて、五感で「和」を伝える活動を、これからも続けて参ります。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 6. 終了後アンケート回答・ご意見 1.今回のイベントについての感想や質問がありましたらお聞かせください。 とても勉強になりました。開催ありがとうございます。 現在仕事でワインや酒の流通に携わっており、丸山先生のお話に聞き入っておりました。 気になったのが、ワインの輸入量が日本は多いのに、消費量で見るとベスト10に入っていないということで(本日の趣旨とは異な るのですが)理由が気になりました。 SAKEを通じて日本の価値や品質を伝えていく活動、とても素晴らしいと思います! 知多地域のまとめていく貴重な機会であります。 継続されることを期待します。 テーマは大変興味深く、産地としては関東(甲信越)、関西、東北の陰にかくれた中部の発酵文化をPRすることは、良い機会で注 目したいと思います。 楽しいシンポジウムでした。 講演も含め、みなさんの熱意がビンビンと伝わってきました。 参加してよかったと思いました。飯尾さんのとりまわし、すごい。 サケ、ショウユが英語になっているようですが、大和ことばの たまり こそ、英語にしたいものです。たまりは、豆だけで小麦は 使っていないというこだわりがあり、また3年熟成です。 今回のイベントを通して、愛知での食文化の課題がよく理解できました。 必要なネットワークを作るにはテーマを設定しそこに関わるチームが自身を降り返り、評価し合うことでより質の高い食文化のネ ットワークにつながるとあらためて感じました。 私はミラノ万博(5月11日∼)でサポーターとして活動してきましたが、その後の中部圏の食文化発信をどのように取り組んでい けばいいのかと考えていました。今日の出会いを大切に連携していきたいと思います。 発酵食品について、印象とかを再確認した。 健康にいい事をあらためて認識!!同年配の友人に若い頃の神経質で、元気のなかった今の私を見直している。 ただ大病をした事がない事に、幼少期、みそと大根漬が食卓に毎日あった事がー。よかったような気がする。 <第一部> 1. 講演内容については、期待しておりましたが的を得る事が出来ませんでした。 講義として聞くのであれば、学校ですれば良い と思いますし、今回の様に 一般対象であれば、配布資料の読み上げでなく、話の中にもう少し緊張を 緩和し面白味のある話題 である様に今後は希望します。間延びをし、時間が長く感じました。 2. 商売ありきの発表で、かつ中身のない内容に唖然としました。 国酒と言いながら全く、本質が理解できていない様に感じとれ ました。 3. 吉田さんの発表には好感がもて、本質的に一番近いと感じました。 発表についても確りとした意見をお持ちであり、伝わるも のがありました。 4. パネルディスカッションは最悪かと。 司会者が何をどの様に進めるか、パネラーに確りとした打ち合わせが できていない様に 感じました。 場当たり的な感じで、今回は無でも良かったと思います。 素人丸出しですね。 5. 息抜きとして、原田さんの発表は笑いもあり少し和らぎました。 <第二部> 1. 値段の割には、内容が今一 お酒と料理のバランスが悪い。 料理に押され、お酒が打ち消されてしまう。 愛知には、料理に負けないお酒は沢山あります し、お酒の量も少ない為 本当の意味でのコラボが出来ない。器にもう一工夫が必要です。 知多の地酒を無理やり、取って付け た様に感じました。 2. 和らぎお茶の演出がボケている。今回の出し方であれば、水で十分。折角のお茶の良さが伝わらない。 全般に何か、ドタバタで構成がすし詰め状態であり、余裕が無いように感じました。 • お酒のシンポジウムらしい会場で、雰囲気がとても良かったです。 • 吉田綾子さんのお酒の基準づくりが必要とのお話は共感しました。 身近にある手に入るお酒の中で本物を探すことは本当に骨 が折れますので。 • 国際発信と同時に、日本酒をはじめとする麹文化、食文化の地域循環を確立すべきだと思いました。 • その地域循環の観点で、加藤先生のご講演や吉田さんによるマリアージュのイベント(なるべく安価で)を 再度開催していただき たいです。 2.今回を通じて感じた「中部からクールジャパン発信」のヒントがあればお聞かせください。 ISFの宮田さんのお話にもあったのですが、日本文化の品質・価値を客観的に理解・深めていくようなカリキュラムを中学校や高 校でやったらいいと思います。 クールジャパンの力を借りて知多の地域をまとめて胃く 大切な方策です。大いにクールジャパンの活動を知多ですすめられるといいと思います。 中部は豆味 文化で、米味 主体の関東、関西との違いを独自に研究して、差別化をより図る必要があると思います。 留学生が帰国すると、よく日本酒を好む外国人の話を耳にします。再び外国に戻る時には、私は、留学生に日本酒をもたせます。 おみやげとして・・・。そして、次の帰国をまちます。日本酒のおみやげ作戦は、地味ですが、日本酒を買いおっくへ伝える方途 の一つと思います。 若い頃の自分なら日本酒が甘くて好きでした。やはり、多くの人には無理だと思います。年をしてからでも、キョウセラの社内だ けの何周年の日本酒はスッキリしてうまかった。 八丁みそさんを通して貴団体の活動に興味を持っていました。 (株) TT・Jと連携していきたいと思います。 同じ目標を持っています。 地元の発酵食品を使用した地元の飲食店に●《解読できず》特典がある事があればと思います。行政でなく会議所等で、何かない か? プレミアム商品的な事を業者のみ相手にどうか 2∼3年前お伊勢神宮会館のレストランはアサヒのスーパードライが本当に違和感を体験。 それがその時飲放題。《それ以降解読できず》 洋文化と和文化を現代風にアレンジする事も大切ですが日本というテーマで、昔ながらのこだわりを取り組んで欲しいです。 3.今回を通じて感じた「知多半島の食文化発信」について、今後の取り組みなどに関するアイデアやご意見があれば お聞かせください。 知多半島の知名度が域外では低いので、やたかな食材を活かした新しい食の提案が必要と思います。 このような機会を継続してほしいと思います。 沢田酒造には十年酒がありますが、新酒だけではない。 新せんだけでなく、熟成肉も知られてきました。刺身だって熟成が大事です。バラエティが多少なりとも多くの人に受け入れやす いと思います。 私は農業分野で資材(肥料)を150年売っている会社の社長です。蔵元もそうですが、農家も自分の作った物を人まかせで売って もらってきたと思います。それでよかった時代はいいですが、物が良いだけでは売れない時代が来ました。海外も大事ですが、ま ずは地域、もう少し広く考えれば日本で自分の作った品質の良いものをお客様にどう届けるかを、もう一度しんけんに考えて、動 いて、お客様から自分の商品を作った人の顔が見える行動をしないとはじまらないと思います。 今回はそのヒントがいっぱい詰まっておりましたので、その一人としてがんばっていきたいと思います。 公式行事パーティのカンパイを地元の酒でーを徹底したらー。まだ難色を示すところが散見される。 特に飲食店組合とか会議所とかの出番だと思います。 まるは食堂さんのエビフライをはじめ、たくさんの海の幸がたくさんあります。参加型のイベントを企画し、年中楽しめる様にし て欲しいです。 4.今後、ISFや今回の延長線上に期待するものがあればご記入ください。 私は実家がわさび農家なのですが、様々なプロダクトの価値や品質を見直して皆様と一緒に世界に対して発信・定着させる活動が できればと思います。 パネルディスカッションで、赤崎様がおっしゃっていただいたのですが、酒蔵を客観的な立場で分かりやすい情報を整理し、伝え るという話があったのですが、私は民間企業に所属しているので、多くのメーカーに働きかけたい、と思いました。 日本酒と共に、焼ちゅうもよろしくお願い致します。 特に南日本は焼ちゅう中心の文化で、但し、焼ちゅうはまだ男性中心の酒文化で、世界に向けたPRの機会が欲しいところです。 昔ある酒屋の蔵元の経営者にある焼酎の合成アルコールが入っているのではと質問したら、アルコールはアルコールであると言わ れて、びっくりしました。発酵で得られるアルコールと絶対違う思った事です。 今回それを納得しました。その蔵元は今ありません。 7. おわりに(編集者まとめ) 本シンポジウムは、『知多半島を例に中部エリアの食文化発信のあり方を考える』というテー マに対し、多様な背景と見識、関心や着眼を持つ関係者にご参集頂き、その多様な立場から様々 な意見や意向、情報や知恵の提供を頂いた。 一見、総花的でまとまりがないように感じるかもしれないが、振り返ると、この多様な視点 が与えられたこと、そして、その多様な視点を踏まえた上で「知多半島を出発点とした食文化 の国際発信」の「あり方」について考え、また共有するということが短期的にも長期的にも必 須であるということに気づかされる内容となったのではないかと思える。 その点を踏まえると、絶対的な回答を得て、それをもとに唯一の事業を仕掛けていくという ことではなく、多様な視点や動きを認知した上で、相互の見識や取り組みの往来を経ながら、 多様な主体による複合的な展開の集積から、より良い「あり方」を、連動しながら、表面化・ 具現化させていく、一連の動きに向けた知見と「社会的な場」を得る機会であったと捉えてい ただければ幸甚である。 私個人として、会を通じて第一に得られた知見として、宇澤達氏より冒頭のお話で投げかけ ていただいた設問であり、その切り口となる視点が挙げられる。 宇澤氏からは、『日本人のための日本ではなく、日本の「良いもの」をより良く外からの目 で見て良くしていこう』という「クールジャパン」の視点がなぜ必要かについての問いかけと そのヒントを提示して頂き、それを考えるときに重要な切り口となるものとして「社会的共通 資本(social overhead capital)」の概念について触れていただいた。 ここで、「社会的共通資本」の概念を提唱した第一人者でもある宇沢弘文氏(故人・経済学 者)の説明を引用したい。 − 社会的共通資本は、一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経 済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持 することを可能にするような社会的装置を意味する。 社会的共通資本は自然環境、社会的インフラストラクチャー、制度資本の三つの大き な範疇にわけて考えることができる。大気、森林、河川、水、土壌などの自然環境、道路、 交通機関、上下水道、電力・ガスなどの社会的インフラストラクチャー、そして教育、医 療、司法、金融制度などの制度資本が社会的共通資本の重要な構成要素である。都市や 農村も、さまざまな社会的共通資本から作られているということもできる。 【引用:『社会的共通資本』宇沢弘文 著(2000年11月初版)岩波新書】 冒頭の話の中で宇澤達氏は、日本酒の主要な原料である米、あるいはその米の生産現場であ る農村、あるいはその営みとしての農業について事例を挙げ、農業には『「社会的共通資本」 を持続的に維持する役割、人類が生存するために最も重要な食料生産を可能とし、自然と人間 の調和的な関わり方を可能にし、農村という「社会的な場」があり、それが文化としての基礎 を作るという点』があり、農村の喪失が環境的悪影響をもたらし、人々の生活に支障を出すこ とを「ダストボウル」の事例を挙げ、日本酒の原材料を一つとっても、単に製品として、また 単純な経済的合理性の上にのみ成立している商品としての側面のみならず、それ以上の社会的 な意味合いがあるということについて、大変分かり易く言及を頂いた。 それは、米のみならず、日本酒の主要な原材料となる水、あるいは麹菌や酵母などの微生物、 そしてそれに手を加える人間の存在が、宇沢弘文氏の言葉を引用すれば、「大気、森林、河川、 水、土壌などの自然環境」という基盤によって成立するものであり、それらの「社会的共通資 本」と人々の日常、あるいは非日常的な(食)生活や慣習と密接に結びつく「媒体」、あるい は「触媒」としての日本酒の価値について、顧みるべき重要な要素として触れていただいたの でないだろうか。 私自身は「社会的共通資本」を繋げる媒体として、または「社会的共通資本」そのものとし ての日本酒、あるいは食文化について、理解をより掘り下げる必要があると感じた。 第二に得られた知見は、歴史を知ることの意味についてである。 丸山優氏の基調講演において、ワインの歴史を紐解く中で登場した『ニーチェが19世紀末に 喝破した、ワイン商品を象徴とする「ディオニソス信仰」と「アポロン信仰」との対峙』は、 その時代の人々の「生(せい)」に対する根源的な問いかけと、お酒(ワイン)との関わり(ワ インへの投影)について顕著に示されたものであった。 その後のバッカス信仰やキリスト教的メシア信仰を経て、ワインに対する意味づけも変遷し ていく訳であるが、その点を探っていく中で、科学技術は幾何級数的に進歩を遂げたとしても、 人としての本質的性質にはあまり大差がないであろうと思われる、先人達の「生」に対する観 念、思想・哲学、宗教的観点、さらにそれらを背景とした表現や表象としての芸術的発露など、 そこに投影されてきた数々の先人の息吹を、手にした「ボトル」を通じて知り、現代において 体感し、思いを馳せることができるという「価値」について、理解を深めることができた。 同時に、丸山氏の解説した別の視点、すなわち流通や税制も含めた商品(経済的商品)や、 社会的ステータスという位置付け(社会的商品)の中でのワインという視点。 また、必要や創意工夫の中から時に応じて進化を遂げた醸造法や貯蔵法などを含めた技術的 観点、ないし、それを実現する職人気質(クラフツマンシップ)や研究・探求というものの中 で生み出されてきたワインという視点。 最後に、それらの背景を踏まえ、ブドウ果汁を元に発酵・醸造されたアルコール飲料という 共通点を持ちながらも、地域や生産者、時代的文脈による多様性や固有性のある「風土」とい うものの中に根付き、育まれてきた地域固有の産品としてのワインという視点。 これら歴史を ることで得られる4つの観点に関する変遷は、本シンポジウムで度々登場し た「テロワール(terroir)」という概念とも大きく関連性があると思われるが、ワインそのも の文化的価値、「伝統的遺産・資産(heritage)」としての価値を形成し、そのものの奥深 さ、そしてそれを背景とした消費者としての悦びや愉しみなどの価値経験への反映につながる ものとして、不可欠な要素であることを改めて認識させられた。 それは、「國酒」としての日本酒においても、また「知多半島・中部エリアの食文化発信」 という観点からも、歴史を り、様々な観点から対象となる物や、背景としての文化を俯瞰す ることの必要性についてを、丸山氏の講演を通して再認識させられることとなったということ でもある。 第三に得られた知見は、日本酒を発信するにあたり、魅力を知覚化(形式知化)させること の重要性という観点である。 これは「当たり前」と思われる事なのであろうが、本シンポジウムにおいても吉田綾子氏が 発表において問題提起し、またパネルディスカッションの中で赤崎真紀子氏が再び指摘された 通り、現段階では十分にできておらず、それが「國酒」を外国人に紹介する時や、外国人が日 本酒を選択して購買する際の第一の障壁となっているということであった。 また、吉田氏が併せて述べたように、『突拍子もない質問』に対してや、『ワイン文化で学 ばれている』外国人に対し、より深い引き出しや納得性や妥当性があり、理解することが可能 な説明が用意できるように、幾重もの、あるいは体系化された引き出しを用意しておくことが 重要であるということも認識させられた。 またその際、自分たちの思い込みだけに陥らず、パネルディスカションにおいて赤崎氏の話 にあった通り『よそ者視線で自分たちの酒を、客観的に見直し』、『その上でちゃんと表現す る』ということも大切だということも非常に重要であろう。 これを考えた時、当日ご来場いただくことができなかった加藤雅士氏が、当日配布用の冊子 の中で明記された指摘が思い起こされた。 加藤氏は、「和食」のユネスコ「無形文化遺産」登録に際し、『「自然の尊重」という日本 人の精神を体現した食に関する「社会的慣習」』として申請・承認されたという点を挙げてい いるが、一般的に想起する食卓に並ぶ「和食」として、あるいは近年メディアで取り上げたら れているようなブーム・現象としての「和食」という概念や対象としてではなく、より一歩踏 み込んで、その魅力や価値について捉えられていることがわかる。また、このような視点につ いて、外国人以上に日本人が自覚していない要素なのではないかと推察される。 この視点について認識を共有するため、以下にユネスコ「無形文化遺産」にて承認された社 会的慣習を含めた「和食」文化についての説明文の原文訳(編者訳)を転記したい。 − 『和食;日本人の伝統的な食文化 ‒ 正月を例として -』 「和食」は技術、知識、慣習、製法上の伝統、調理法、準備、食事の経験を包含した 食に関する社会的慣習である。それらは、自然への敬意という日本人の精神と結びつき、 持続可能な自然資源の活用と密接に関連している。「和食」は、日々の暮らしや、年中行 事と共に発展し、自然環境や社会環境と人との関わりの中で、時と共に形作られてきた。 「和食」に関する基本的な理解や、社会的、あるいは文化的特徴は、正月のお祝いの光 景に見いだすことができる。新年に日本の人々は、世代を超えて伝わる正月の伝統に浸り、 日本人としてのアイデンティティやコミュニティについて再度確認することになる。 正月における「和食」は、歴史や地理的な特性によって、それぞれの土地にもたらされ た郷土的特色を色濃く反映している。人々は、新年の神々を迎えるにあたり、様々な準備 を施す。その土地で得ることのできる食材を元に、餅(お米をついたもの)や、美しく装 飾された「おせち」、「雑煮」、「屠蘇(とそ)」と呼ばれる、特別な、それぞれが象 徴的な意味を持つ料理の数々が用意される。 それぞれの料理は、特別な食器によって提供され、家族や近しい人々の輪の中で、健康 や社会的結束を祈念して共有される。これらは、年長者から子供達に対して、社会的慣習 に含まれる伝統的な意味を伝える良い機会となる。 日常において「和食」は、伝統的でバランスのとれた食事を共有することを通して、日 本人がアイデンティティを確認し、家族を養い、コミュニティの団結を導き、健康的な生 活に寄与する重要な社会的機能を有している。 【引用:NOMINATION FILE NO. 00869 FOR INSCRIPTION IN 2013 ON THE REPRESENTATIVE LIST OF THE INTANGIBLE CULTURAL HERITAGE OF HUMANITY】 ここで説明されているのは、単に調理され提供されたものとしての料理のみならず、慣習と しての「和食」であり、そこに組み込まれた象徴的な意味や知恵などの思想的背景、さらに健 康的機能性など、掘り下げれば掘り下げるほどに知ることができるという、複合的な意味や機 能を以て継承され、体現されている「和食」文化である。 そして、それらの複合的要件によって成立する分かりづらい(目に見えない=intangible)文 化的資産(cultural heritage)や概念(あるいは事象の集合体)こそが、「日本文化」とし て、国際的に価値として認められるに足る「魅力」のエッセンスであると捉えることができる のではないかという事を、この認定に至って紹介されている内容からも推察されるのではない だろうか。 これは、例えば「祭り」という日本に古くから根付いている「無形文化遺産」に対象を移し ても見いだすことができると思われるが、「和食」や「祭り」の有り様に象徴されるように、 歴史的経緯や先人の洞察、知恵、気づき、環境的影響といった背景によって育まれた感性や思 想等を、経典や憲章、法規などを生み出してきた文明のように体系化・明文化された「形式知」 として俎上に載せ、変更を加えていくという形で構築されてきたものではなく、慣習や儀礼・ 風習、神社などの建築やオブジェ、歌や民謡などの芸能的表現、呪術的世界観など、目に見え ず、把えづらい「暗黙知」として、日本的な感性や文化が育まれ、継承されてきたいうアイデ ンティティが存在し、それが今回、「無形文化遺産」として「知覚化」されて大切な資産とし て国際的に認知・共有されるに至ったと見做すことができるのではないかとも考える。 これらの先人の積み上げた複合的要件によって成立する「暗黙知」としての大切な資産は、 近代的な合理主義を背景にした近代国家の枠組みが明治以降に導入される過程や、高度経済成 長における労働と暮らしに対する習慣の変化の中で「必要性の認識・理解」が薄まり、近視眼 的な経済的合理性など、目先のことをが唯一絶対的な判断指標となる中で、その継承が難しい 局面にあるということも非常に理解ができるものである。 そのような失われつつある品質(quality)や資産(heritage)を、現代的な評価の視点に立 脚した上で、保全・継承していくという意味においても、宇澤氏が冒頭にて提示した「社会的 共通資本」の概念は、まさにその日本文化・社会の中に組み込まれてきた「暗黙知」を、日常 や非日常の暮らしや風習というものの中に組み込まれた叡智というチャームポイントはそのま まに尊んだ上で、その複雑で複合的な価値形成の要素についてを明確に知覚化していくという 点において有益なものであり、その観点を含めた有り様を、人類共通の、あるいは日本人にとっ て非常に重要で尊重されるべきものとして、国内外に発信していくということが、まさに「クー ルジャパン発信」の上でも、一つの側面として、重要なヒントになるということを認識させら れた。 関連事項として、シンポジウムの中でも登場したイタリアの「スローフード協会」では、「プ レシディオ計画」として、継承の危ぶまれる伝統食の中にある科学的合理性について究明し、 保全のための価値付けに用いようとする試みがなされていることも、ここに付記させて頂く。 第四に得られた知見は、「ネットワーク」に関する見解についてである。 本シンポジウムでもキーワードとして頻発した「ネットワーク」の一般概念は、「人やもの ごとを網状につなげた系、システム」とされており、今回は、多様な「系」の対象分類が議論 に上がった。 一つは、丸山氏がワインの歴史を解説する中で提起したお酒の「文化的価値」を構成する背 景として、考察対象となるネットワークについてである。 すなわち、「哲学・宗教や芸術的表現やその傍らにある媒体」、「社会的商品や経済的商 品」、「必要性や技術的進化とクラフツマンシップによる製品」、「郷土の文脈や風土の固有 性に基づく産品」という4つの要素から構成される系(視点)である。 二つ目は、これも丸山氏が指摘したもので、共通の関心を持つ「社会的ネットワーク」をベー スとした人的な関係性、ネットワークについてである。 これに関連し、私は「文化リピーターの育成」というキーワードを挙げたが、この考えだけ では不十分であることを認識させられることになった。 − 半島の中でも外でもそうですけれども、紹介するとかですね、交流するとかいう 規模ではなくて、ちゃんと「仲間」になってもらう、そういう深い強い交流。ネットワー ク作りっていうのは、非常に大きな、というか最大のテーマだと思うんですよね。 飯尾歩氏が上記の通り触れたように、「文化リピーター」というものを超越して、「文化の 共創造者」や「文化的価値の共有者」として、信頼と共感、互恵を元にして地理軸や分野軸、 主客を超えた輪をいかにして広げていくかが重要な命題であるということは、まさにその通り であると、私自身も実感として合点がいくものであった。 「社会的ネットワーク」とはそのような人的結びつきについての系であり、加えて言及する と、ここで登場した「社会的ネットワーク」については、長年、日本福祉大学知多半島総合研 究所が中心となり地域連携による活性化の取り組みの中で重視され、成果指標の一つにもなっ てきた「社会関係資本」とも関連すると思われる。この「社会関係資本」も今回の重要なキー ワードの一つである「社会的共通資本」を構成する一つの要素と捉えることができるだろう。 三つ目は、「テーマ性」としての分類分けに関する観点でのネットワークである。 知多半島や愛知、中部といった国内、ボルドーなどの海外という「地理的分類」、日本酒、 醸造文化、食文化、窯業など多様な産業という意味での「産業分野における分類」、あるいは 産官学民といった「セクター別の分類」などの多様なテーマからなる要素を結びつけるという 意味でのネットワーク・系であり、異なる「テーマ性」の結びつき(新結合)が新たな創造的 活動や成果、イノベーションにおいては不可欠であるということはよく言われている。 そのような観点からして、パネルディスカッションで飯尾氏が述べた言葉を引用すると「垣 根を取っ払う」ということが、(勿論、利害調整も加味することは不可欠だが)やはり大切で あると思われるのである。 最後に、共創造のプロセスとしてのネットワーク(系・ループ)が存在する。 シンポジウムというのは、人が集い、意見や情報を対話の中で集約していく場であり、情報 を取り扱うものである。 一方、今回の第二部の懇親会で提示された、郷土性を背景とした日本酒、食、お茶などを関 連付けた食の楽しみの提供、あるいは受容は、例えば「テーマ性」を結びつけた価値提案のあ り方を提示する上でのプロトタイプとしての「実践」の場でもあった。 実践という点に関しては、既に、実際に国際的な発信をしている多様な動きもあり、魅力あ るお酒をはじめとした製品が研究され、製造されているという点もある。あるいは食の「テロ ワール」に関して調査研究を行うことも一つの実践であろう。 そして、それらの実践から得られたフィードバックを社会的に共有し、改めて次の進歩や洗 練された実践へとつなげていくというダイナミックな循環(系・ループ)を共有していくため の「社会的な場」が今回を通じても生み出されたのではないだろうか。 あらゆるネットワーク分類は、この社会的な「共創造プロセス」の中に結びつき、アウトプッ トしていくことによって意味を持つという点があり、「背景的視点」を踏まえ、人的関係(「社 会的ネットワーク」)を構築しながら、多様なテーマ性を結びつけ(「垣根を取っ払い」)、 ともに創造していく(「共創造のプロセス」)という、多様なネットワーク(系・ループ・関 連性)としての視点と実践を持ち合わせる姿勢が必要であると理解することとなった。 以上4つの点について、今回得られた知見として私なりに記載させていただいたが、上述し た以外にも、関係各位にとって有益な個別のヒントが散らばっていたのではないだろうか。 本シンポジウムを通して、本文に示された情報や意見に限定することなく、それぞれの参加 者が得ることのできた知見に基づき、多面的なネットワークが育まれ、単純に一言では括れな い今回のテーマに対して、各位の答えや実践が導き出されていくことを願いたい。 また私たちISFも、本会を踏まえ、次の知多半島や中部エリアにおける食文化の国際発信 と、それを通じた「社会的共通資本」の保全に資することができるよう尽力したいと考える。 一つのゴールイメージとしては、宇澤氏が冒頭で挙げていただいた言葉を強引に用いるので あれば、世界中でローカルに根付いた産品としての「日本酒」が楽しまれ、その上でグローバ ルな「社会的共通資本」を構成する要素をつなぎとめる媒体として「日本酒」が存在し、ロー カルにおける個別の課題を解決し、ひいてはグローバルな課題を解決する糸口ともなっていく 逞しい「國酒」の有り様も想像できるのではないだろうか。 このような観点から演繹的に見た場合、飯尾氏のパネルディスカッションにおける言及とは 裏腹に、「國酒」という概念ではちょっと小さすぎたり、狭すぎたりするのかもしれない。 そのような広い意味での日本酒(SAKE)をはじめとした食文化の未来について、そして知 多半島をはじめとした中部エリアの未来について、「クールジャパン」というテーマも一つの きっかけに、多様な関係者とともに創造できる展開を楽しみにしたい。 〔文責:宮田 久司〕 シンポジウム| 中部からクールジャパン発信:知多半島を例に中部エリアの食文化発信のあり方を考える 報告書 2016年6月1日 発行 編集・発行 | 国際日本酒普及連盟(International Sake Federation)
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