1.Introduction and Methods 背景と方法

1.Introduction and Methods 背景と方法
Robert Teasell MD
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Table of Contents
1.1 Introduction ...............................................................................................................3
1.2 Article Assessment ..............................................................................................................3
1.2.1 Literature Search Strategy .............................................................................................................3
1.2.2 Data Abstraction and Quality Assessment Tool.................................................................................4
1.3 Determining Levels of Evidence.........................................................................................6
1.3.2 Formulating Conclusions Based on Levels of Evidence ................................................................6
1.3.3 Meta-Analysis .................................................................................................................................7
1.4 Changes to the SREBR Since the First Edition ................................................................8
1.5 The Importance of Evidence-Based Practice.....................................................................8
1.6 The Limitations of Evidence-Based Practice ....................................................................8
References...................................................................................................................................11
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1. Introduction
背景
1.1 Introduction 背景
The Heart and Stroke Foundation of Canada(2003)は,正確な算出は困難であるものの,カナダにおける
新規脳卒中患を調査し,年間 40,000 人から 50,000 人と推定しました.これは,10 分に 1 人が脳卒中に苦
しんでいる計算になります.脳卒中に関連した経済的損失や人的損失は,かなり大きく,特に脳卒中に関係
した機能障害の影響が大きいとされています.2002 年に算出された,最近のカナダの脳卒中関連費用は,
年間 27 億ドルと報告され,高齢人口の増加にともなって,この費用はさらに増加すると予測されています.
脳卒中リハビリテーションは,脳卒中によって生じる機能障害や社会的不利を,大いに軽減させ脳卒中後
遺症患者に自立した生活を取り戻す事を可能にします.The HSFO(Heart and Stroke Foundation of Ontario)
は 1999 年に Ministry of Health and Long-Term Care (MoHLTC)協議において,脳卒中リハビリテーション委
員会(Consensus Panel on Stroke Rehabilitation)が設立されました.この脳卒中リハビリテーション委員会
は,その後の 2000 年 5 月に HSFO に報告書を提出しました.
その報告書には,15 の提言が考え出されました.12 番目の提言には,MoHLTC と HSFO が協力して脳卒
中リハビリテーションに関するレビューと,最新の脳卒中リハビリテーション研究を要約する為に,継続的
な支援を行なうと表明されています.この目的は,脳卒中に効果のあるタイムリーで正確な情報を維持する
事,さらなる研究のアイデアを識別する事,継続的なピアレビューを支援する事,そして,根拠に基づいた
訓練を促進する事です.The Stroke Rehabilitation Evidence-Based Review (SREBR)はその提言事項を全て
支援する事が目的です.
SREBR は薬理学的な介入と非薬理学的な介入の両方に関係して,最新の脳卒中リハビリテーションのレ
ビューを記載しています.私たちは,最高な脳卒中リハビリテーションの訓練方法を促進するために,多く
の人に,簡単に手に入れる事の出来るレビューとして,毎年最新のレビューを更新し続けています.
1.2 Article Assessment
論文評価
1.2.1 Literature Search Strategy 検索方法
SREBR の初版は,複数のデータベース(MEDLINE, EBASE, MANTIS, PASCAL and Sci Search)を用いて,
研究デザインに関わらず 1970 年から 2001 年の論文を参照しました.検索した論文言語は英語とし,動物
研 究 は 除 外 し ま し た . 検 索 単 語 は , “stroke”, “cerebrovascular accident”, “cerebrovascular disorder”,
“rehabilitation”, “physiotherapy”, “occupational therapy”, “speech therapy”, “recreation therapy”としました.
2001 年以降は,それぞれの module の著者が独自にデータベースを用いて検索を行い,各 module の小項目
に対して,適当な研究を抽出しています.この方法は,各 module の著者が,各々の専門家であり専門知識
を有し,その分野に精通しているとしてことから用いられました.脳卒中リハビリテーションに関連する広
範囲な介入を識別するには,もはや非特異的なやり方は意味をもちません.検索者は,最新エビデンスが広
範囲であるために,最も重要な結論を定式化する時には, RCT に限定して検索するかもしれません.
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このレビューは,公式な論文に限定して作成されています.このレビューは,RCT に限定していないもの
の,定式化した結論を導くには,RCT 論文を優先的に参照しています.
1.2.2 Data Abstraction and Quality Assessment Tool
データの抽象化と質の評価
RCT の質の評価は Physiotherapy Evidence Database (PEDro)を使用しました.PEDro は理学療法分野に
おける RCT や準 RCT,システマティックレビューの要約に関して,著書目録の詳細へアクセスする目的で
提供されています.非介入研究や非対照試験(非ランダム化比較試験,コホート試験または後ろ向き研究)
は,PEDro スコアを割り当てることができず,PEDro スコアは no score (ns)とされます.
PEDro スケールは,yes か no score かいずれかを選択する 10 項目の評価から成ります.スケールとスケ
ールの解釈,スケールの付け方は Table 1 に記載しました.多くの場合,PEDro スケールは簡単に採点出来
て,再現性もあります.しかしながら,フォローアップの妥当性(#7)に関するスコアリングは実際と異なっ
ています.
(適格基準の識別は PEDro スコアによって考慮しましたが,このレビューでは PEDro スコアの
計算には使用しませんでした.被験者の選択は研究の内的妥当性または,統計的妥当性ではなく,外的妥当
性に影響を及ぼします)
.研究は最大 10 点を与えられます.2 人の評価者が各論文を評価しました.得点の
異なった時は,議論によって決められました.
方法のよく考えられ研究はスコア 9-10 で,“excellent”,6-8 は“good”,4-5 は“fair”,4 以下は“poor”と評価
されました.著者たちは介入結果の解釈を容易にする為に,任意で記述内容に従いました.PEDro スコア
は方法の質を解釈するために,読み手を助けるガイドとして取り入れられています.質の低い研究でも,本
レビューから除外する事はありませんでした,RCT ではない研究は,PEDro スコアで評価出来なかったの
で“no score”と示された.それらの論文は,RCT が存在しない場合のみ結論を定式化するために使用されま
した,
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1.3 Determining Levels of Evidence
エビデンスレベルの定義
1.3.2 Formulating Conclusions Based on Levels of Evidence
エビデンスレベルに基づいた結論
知識体系の要約やエビデンスレベルの構築に,現在,多くのシステムが利用出来ます.それらはますます
複雑になっており,正確な解釈をする為には,専門的な知識体系を必要としています.容易さとアクセスの
利便から,私たちは,意図的に単純で直接的なシステムを採用しました.エビデンスレベルは,the United
States Agency for Health Care Policy and Research (AHCPR) Guidelines for Stroke Rehabilitation によって
用いられているエビデンスレベル(一部 Eastern Ontario/Queen’s Evidence Based Report)に基づいて要約さ
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れました.エビデンスの 3 つのレベルは 1a (strong), 1b (moderate) そして 2 (limited)として考えられました.
エビデンスレベルを下記に示します.
• Level 1a (Strong): 尐なくとも“fair”レベルの 2 またはそれ以上の RCT におけるメタアナリシスがある.
• Level 1b (Moderate): 尐なくとも“fair”レベルのシングル RCT がある.
• Level 2 (Limited): 尐なくとも最小対象者が 10 名の対照実験がある(この定義は 13 版から加えられた)
• Level 3 (Consensus): エビデンスは欠如しているが,専門家グループ内で適切な治療と認められている.
意見の合意は,最も低いエビデンスレベルであり,エビデンスがあると見なされない.
• Level 4 (Conflicting): 尐なくとも 2 つの RCT において結果が異なるもの.4 つ以上の RCT と1つの結果
が異なったときは,大多数の結論に基づいて決められました.これは,矛盾した結果の研究の質が非常に高
い場合には,その限りとしません.
(13 版より対象者数が尐ない,または非コントロール実験などの,最もエビデンスの弱い結果を捉える
為に,新たな分類分けを採用しました.過去において,そのような肯定的な研究結果はエビデンスレベルに
よって制限されていました.これらの研究に関するバイアスのリスクが増加するため,私たちは同じような
ランダム化していない先行の臨床研究のエビデンスレベルを定式化する時には,それらの研究を強調しない
ようしました.したがって,そのような研究のエビデンスは,エビデンスが欠如しているとして扱いました.
もし治療としてこれらの研究の利益を関係づけるときには,実験デザインを付け加える必要があると判断し
ました.
このシステムを用いたことで,多くの結果が肯定されている時,結論は容易に導きだされました.
しかしながら,研究結果が異なった時には,解釈が困難になります.この場合,RCT の方法の質に関して
も難しくなります.結論に達するには PEDro スコアの高い研究結果がより重みづけられました.しかしな
がら,解釈に問題を残したままの,いくつかの事例がまだ残っていました.例えば,質の高い症例報告と質
の低い幾つかの研究が矛盾する時,著者には判断が必要となります.このような場合,私たちは,そのよう
な結論に至った論理的根拠を示し,その解釈に至るプロセスをできるだけ透明化することを試みました.
結局,読者はすべての素材に関する重要な消費者である事が推奨されています.
1.3.3 Meta-Analysis
メタアナリシス
私たちは,個々の RCT の結果を用いた,特定の介入に関連した治療効果の要約するために forest plots を
作り始めました.forest plots は Review Manager version 4.2.8 によって作成され,いくつかのセッション
に組み込まれました.この過程の結果は,2 値アウトカムでは共通オッズ比を用い,連続値アウトカムの為
には加重平均差(weighted mean difference)を用いました.研究間で統計学的な有意な不均一化が認められ
た場合には,ランダム効果モデル(random effects model)を用いて,それ以外の場合には,固定効果モデル
(fixed effects model)を用いました.
残念ながら,研究間で介入方法や結果のいずれかが異なり,この制限によってプールされた分析結果を一
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貫する事は不可能でした.時に,単純に研究結果を結び付ける事は適切ではありません.そうすることで,
誤解を招く結果につながる可能性があります.これまでのところ,私たちは 5,8,15,16,17,18 章に結論を策
定するメタアナリシスを使用しています.本章での結果は,メタアナリシスによって得られ,エビデンスレ
ベル 1a によって構成されています.このプロセスは,このレビューにおいて今後も継続していきます.
1.4 Changes to the SREBR Since the First Edition 初版からの変更
2002 年 4 月の初版発行以来,SREBR は定期的に更新し続けており,最新の論文は 2011 の 9 月です.デ
ータには 1,171 の RCT 論文を含んでいます.初版から若年脳卒中,重度脳卒中,2 次予防,脳卒中リハビ
リテーションの主要アウトカムの 4 つを追加しました.脳卒中後の認知機能と知覚機能についてのレビュ
ーのモジュールは,以降の 2 つのモジュールに分けられました.appendices は痛みと痙縮の管理について
4 つ追加しました.私たちは,本調査内の全 RCT から,最も重要かつ影響力がある 50 の研究を選び,結果
のグラフを描写し簡潔に要約を提示しました.最後には,本レビューで参照した査読付き論文のリストを記
載しました.
1.5 The Importance of Evidence- Based Practice
エビデンスの基づいた訓練の重要性
エビデンスに基づく訓練は,患者の治療が改善する可能性のある,結果が明らかとなっている方法です.誰
がエビデンスに関連した訓練を行いたくないでしょうか?医師は長い間経験に基づいて治療を提供してきま
した.しかしこれは,効果が無いばかりか,最適なアウトカムよりも,治療が未然に終わってしまう危険性
を含んでいます.だれが簡単で安い治療薬であるアスピリンが,extracranial-intracranial (EC-IC) bypass術よ
り脳卒中を予防するのに効果的であると予測したでしょうか? extracranial-intracranial (EC-IC) bypass術は
Hart et alらの無作為化比較試験において,効果がない,または有害であると示されました(Hart et al. 2000,
EC/IC bypass study group, 1985).
したがって,エビデンスに基づいた訓練は臨床訓練の重要な要素を増加させます.これは,リハビリテー
ション医または一対一でのチームケア提供のままリハビリテーションを改善するための道具です.一対一の
治療によるバイアスは,実際の治療よりも他の要因があり,アウトカムに影響を与えるとされています
(Banja, 1997).
慢性期や絶えず変化のある多くの患者では,治療の開始時に最適な治療の量を決めるのが
困難となります(Purtilo, 1992).リハビリテーションの臨床医における経験や熱意と共感は,依然として脳
卒中患者のリハビリテーションに非常に重要な役割を果たしています.しかしながら,それは完全に科学的
根拠に基づいて訓練を構築する事は困難です.脳卒中リハビリテーションのアウトカムは,様々な決断の中
で何が望ましいのか,何が受容できて,何が合理的であるのか,何が適しているのかといった異なった利害
関係を反映し,どのようなアウトカムを決めるかは,主観的な価値判断によって決定されています(Banja,
1997).それでもなお,エビデンスに基づく訓練は,経験豊かな臨床医でさえ,患者を改善させる最重要な
訓練を提供しています.
1.6 The Limitations of Evidence- Based Practice
エビデンスの基づいた訓練の限界
エビデンスに基づいた訓練には限界があります,上記で述べられた限界の一つは,個々のよりもむしろグ
ループ治療に焦点を当てていました.したがって,エビデンスは全体の患者がどのように治療されなければ
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ならないかに関するガイドラインを提供しており,その中から,個々の患者にどのように治療をするべきか
いくつかのガイダンスを提供しています;しかしながら,結局,患者の治療は,個々の臨床医によって決定
されます.特異的な患者の治療では,エビデンスに従わない事も必要になります.重要な要素は,それらは
一般的ではなく珍しいケースであると言う事です.そして,多くの患者はエビデンスにしたがって治療を施
されるべきです.
エビデンスの解釈が間違っている時,エビデンスに基づく訓練は問題になることもあります.最も良くあ
る事例は,本来あるべき治療対象よりも広く使われた時です.この顕著な例は,早期支援退院です.早期支
援退院は,自宅において総合的なリハビリテーションサービスを提供するもので,脳卒中患者の入院リハビ
リテーションを代用するものとして,高いエビデンスがあります.研究対象の全て患者は,自宅で総合的な
リハビリテーションサービスによって管理されていたので,悪影響は認められませんでした.しかしながら,
対象者となった殆どの患者は,高機能な患者が多く,通常,認められる脳卒中患者は殆ど含まれていません
でした.加えて,早期支援退院の効果を必ずしも反映しておらず,通常の脳卒中治療と異なっていませんで
した.脳卒中入院患者に提供されるリハビリテーションは,軽度の脳卒中患者に対して有意な効果を持って
いる訳ではありませんでした.したがって,脳卒中リハビリテーションにおいて,早期支援退院は軽度の脳
卒中患者の入院リハビリテーションにおいて,不必要な入院期間の延長を避ける事が出来ます.このタイプ
の研究は中等度から重度の脳卒中患者治療に用いられる時には,非常に危険です.このグループに関する早
期支援退院の良好なエビデンスは持ち合わせていません.そして,このグループにおいて有害であるかもし
れない事を示唆していました.しかしながら,このようなシステムが十分に研究されていない場合,リハビ
リテーションシステム及び政治の圧力は重度の脳卒中患者の早期支援退院を促進させます.エビデンスは道
具であり,良くも悪くも使う事が出来るのです.
エビデンスの解釈が難しい失語症の治療について例をあげます.例えば,Lincoln et al. (1984)は失語症の
治療は効果的ではないと結論付けました.彼らは,週 2 時間の治療を最大 6 か月間施行しました.この結
果は,イギリスの言語療法の治療において,著しくネガティブな結果を与えました.この影響を受けたこと
によって,音声言語病理学の使用は効果のない治療法として減尐しました.エビデンスは間違っていたので
しょうか? 答え No です.しかしながら,エビデンスは結論として述べるには制限がありました.
解釈の異なる他の例として,脳卒中後のうつがあります.うつ病の治療に関する研究で,私達のエビデン
スに基づくレビューによると,うつ病患者のみを対象とした研究では肯定的な傾向があり,うつ以外の患者
も含む場合にはネガティブな結果の傾向がありました.これは,統計的な検出力の問題であるかもしれませ
ん.抗うつ病の治療は,脳卒中リハビリテーション患者には有効であると述べられていますが,非うつ病患
者を含む研究では,抗うつ病の治療は効果的ではないと示されています.繰り返しになりますが,うつ病患
者と非うつ病患者の療法を含んだ研究をみると,治療の効果がなく,著しい希釈効果が表れていました.こ
の問題はデータそのものではなく,どのように研究が行なわれていたかにあります.そして,より重要な事
は,どれくらい上手く解釈をしたかと言う事です.
どのような効果判定方法や分析方法を使用していたかに関わらず,ほとんど,結果を保証する事が出来な
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いので,脳卒中リハビリテーションの効果判定を検証する 必要があります (Englehardt 1996) .Banja
(1997)が示したように,たとえ特別な治療法が 33%の患者に効果的であったとしても,それは 33%が許容
されるかどうかはまだ推測の域を出ません.33%の治療効果は,もし命を救う事が出来たのであればすばら
しい事かもしれません.しかし,患者の QOL のみを改善するのみであれば,かなり効果は尐ないと考えら
れます.最後のポイントは,明らかな脳卒中リハビリテーションのパラドックスへの私達の言及を思い起こ
させます.脳卒中リハビリテーション専門家は,潜在的にエビデンスに基づいた訓練の発展に,莫大な資源
を提供する事できます.もし研究方法論が,臨床環境の要求に適する場合,臨床医はより多くの研究データ
を生み出し,開業医により価値のある研究が出来ます(Hayes 1998).脳卒中リハビリテーション分野におい
てより十分に利用される手段の一つは,治療の遂行機能に研究の構造を使用する事です(Jayaratne and
Levy 1979).幾つかの厳しいテクニックは,RCT が非現実的かつ非倫理的である状況で使用するために,
アウトカム研究によって,より実験的に近い結果をもたらす為に利用出来ます (DePoy and Gitlin 1998,
Kazdin 1998).これらのデザインと方法は,臨床家と患者同様にフィードバックを増加させる事や,開業医
においてケースへの関与を増加させる事で,治療に対する患者の反応について利用出来る情報が増加し,臨
床効果を高める事が出来ます(Hayes 1998).RCT の補完として,脳卒中リハビリテーションアウトカムに
基づいた知識は,治療サービスを受ける人と提供する人の共通の価値をより反映します (Gitlin et al. 1998).
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