戦後日系移住地から見たボリビア社会~多文化共生と移住地存続

国際ウェルネスユニット
B さん
戦後日系移住地から見たボリビア社会~多文化共生と移住地存続~
(要約)
ボリビアには、戦後日系計画移住地であるオキナワ移住地 Colonia Okinawa とサンファ
ン移住地 Colonia San Juan がある。どちらも模範的な農村としてボリビアではとても有名
であり、多くのボリビア人が仕事を求めて移住地に移り住んでいる。この 2 つの移住地は、
これまでのボリビア社会に大きな影響を与えてきた。特に農業分野では大きな影響を与え、
大規模機械農業のもと、多くのボリビア人が日系人のもとで働いている。
しかし、やっと安定期を迎えたといえるボリビアは現在、ボリビア初の原住民出身大統
領エボ・モラレス率いる MAS(社会主義運動)政権の政策により、国内では混乱が起きて
いる。アンデス山岳地帯に住む原住民と、天然ガスや石油など天然ガスを地下資源に持ち
ヨーロッパの末裔または混血が住む東部の人々の対立は日増しに激しくなり、
「内戦がおき
るのではないか」と言われるほどである。
両移住地内は、とても平和で、オキナワ移住地には沖縄の文化が引き継がれ、スペイン
語だけでなく、ウチナーグチや日本語も話されている。サンファン移住地でも、日本語教
育は盛んで、日本の習慣を子供たちに身に付けさせたいと考える日系人が多く存在する。
しかし、これまで抑圧されてきた先住民に権利を与え、貧困をなくそうと社会主義政策
を進めるモラレス政権と反政府側の対立は、移住地にも影響を与えつつある。大規模機械
農業には必要なディーゼルの不足、生活にも必要なガスやガソリンの不足、頻繁に行われ
る道路封鎖。そして、移住地内では、1 世が苦労して開拓した移住地が農地改革によって接
収されるのではないかという心配もある。
また、移住地では日本文化や日本語が残されている一方、移住地内に働きに来ている低
層のボリビア人への否定的な意識や、日系社会を守ろうとするがゆえ、閉鎖的な部分もあ
る。
しかし、閉鎖的な態度がある一方で、貧しいボリビア住民と共存していくため、活動を
行っている 2 世や、ボリビア社会に寛容な 3 世も多くいる。多民族で複雑なボリビア社会
の中で、移住地を存続させていくためには、1 世の想いを知り、移住地やボリビアを愛する
彼らの役割は大きい。
以上のことを踏まえ、移住地の人々の生活の様子や経済活動、課題、そしてボリビアの
多民族社会や不安定性などを紹介しながら、移住地周辺社会との共生と、ボリビア社会の
中で移住地を存続していくことについて考察する。