社会的インパクトとは

第 40 回定例会 プログラム
2015 年 12 月 18 日(金) 14:00~17:00
場所:株式会社日立製作所 品川事業所(JR品川イーストビル 20 階)
「社会的インパクトとは」
~社会的インパクトを意識した NGO と企業の連携~
司会:株式会社リコー 赤堀久美子(コアメンバー)
Ⅰ.はじめに (10 分)
14:00~14:10
開会あいさつ
[進行]司会
新規メンバー自己紹介
[進行]司会
Ⅱ.基調講演(30 分)
14:10~14:40
「コミュニティ投資とインパクト測定」
・社会的インパクトとは、コミュニティ投資とは何か
赤羽 真紀子
・なぜ、誰のためにインパクトをはかるのか
CSR アジア 日本代表
・国際社会の動向と、様々なインパクト測定手法の紹介
/連携ネット アドバイザー
※質疑応答込み
休 憩 (5 分)
Ⅲ.事例発表 -対談形式 - (30 分)
14:45~15:15
ファシリテーター:JANIC 事務局
パネリスト:
城戸 浩史氏
~社会的インパクトを意識した NGO と企業の連携~
武田薬品工業株式会社
「タケダ-Plan 保健医療アクセス・プログラム」
コーポレート・コミュニケーションズ
※質疑応答込み
&パブリックアフェアーズ
CSR
主席部員
寺田 聡子氏
公益財団法人プラン・ジャパン
プログラム部 シニアオフィサー
休 憩 (10 分)
Ⅳ.ワークショップ (90 分)
15:25~16:55
インパクト測定実践ワークショップ
社会貢献活動の効果の把握のための国際的基準 LBG(ロンドン・ベン
チマーキング・グループ)を用いて、実際に社会貢献の事例を測定して
みよう!
赤羽 真紀子
CSR アジア 日本代表
/連携ネット アドバイザー
Ⅴ.おわりに(5 分)
16:55~17:00
・メンバーからの報告と事務連絡
[進行]司会
会場提供:株式会社日立製作所
1
Ⅱ.基調講演
1.「コミュニティ投資とインパクト測定」
講師:赤羽 真紀子 / CSR アジア 日本代表
CSR アジアについて(http://csr-asia.jp/)
CSR アジアは香港に本社があり、アジア太平洋地域に 10 拠点、45 名の CSR エキスパートが、国際機関や企業から
の依頼で CSR やサステナビリティに関する各種コンサルティング、リサーチ、研修等を実施している。
誰の責任?
コミュニティ投資と社会的インパクトの測定には密接な関わりがあるが、コミュニティ投資の話に入る前に、なぜ企業が
NGO との連携でインパクトを測定する必要性に言及してきているのかを説明したい。途上国を中心に様々な社会課題が
存在するが、20 世紀の初めまではこうした課題にはその国の政府や国際機関が対応するべきとされてきた。しかし 21 世
紀に入り、実際にゴミを排出したり排水を流したりしているのは企業であり、企業にもこういった社会課題を解決するため
に役割を持ってもらいたいという世論が活発になったことから、コミュニティ投資という考え方が始まった。
アジアにおける CSR ホット・トピックと、アジアでの問題意識
アジア太平洋地域の専門家 80 名に「CSR の課題の中で何が問題か」を質問し、出てきたキーワードの内 9 個を紹介
する。それらは、自然災害、コミュニティ投資、貧富の格差、気候変動、情報開示、リーダーシップ、人権、ソーシャルメデ
ィア、パートナーシップである。2008 年から同様の調査を実施しているが、そこで出たキーワードの中で「今後アジアの
CSR で何が問題となるか」をランキングすると、“コミュニティ投資”が 2009 年に 7 位で初めて登場して以来、常に上位に
いる。コミュニティ投資に対する専門家の関心が非常に高まっていると考えられる。
インパクト測定の関心の高まり
コミュニティに対する行ないについてインパクトを測るということは、実はまだ新しい取り組みである。2008 年に CSR ア
ジアが行った調査では、インパクト測定を実施している企業はほとんどいなかった。しかし 2010 年に Ethical Corporation
(イギリスの調査会社)が行った調査によると、およそ 7 割の企業が何らかのインパクト測定を行っていると答えた。この 2
年の間にインパクト測定を行う企業が増加した理由としては、2008 年に起こったリーマンショックにより、社会貢献活動に
対しても企業の説明責任と透明性が問われるようになったことが挙げられる。“良いこと”をしているからといって、その効
果を測らなくてもいいわけではない、という風潮が高まった。
コミュニティ投資(CI)とは?
イギリスの BITC(ビジネス・イン・ザ・コミュニティ)によると、「企業がコミュニティ活動をどうやって管理し、企業にとって
もコミュニティにとってもどうやったらプラスの影響をもたらすことができるかを重視するものである」とある。2008 年頃は
「企業にとってプラスになるような社会貢献活動はむしろやらないほうが美徳だ」という意見が根強かった。しかし 2008 年
以降になると、「社会に良いことをやったからには企業にもポジティブなリターンがあるべきだ」と考え方が変化してきた。
IFC(国際金融公社)によると、「事業に関係する地域において、優先度が高い開発課題に対して、企業が行う自発的な
活動で、持続可能で事業の目的達成に資するもの」とある。コミュニティ投資をした側にもメリットがあるべきである。
コミュニティ投資 該当する? しない?
下記の 3 つのチェック項目にあてはまるものがコミュニティ投資といえる。
 自発的か?
 慈善目的か?
 貢献している主体は誰か?
【事例 1】キャセイ航空は乗客を対象にユニセフニへの募金を呼び掛けている。今まで乗客から 20 億円の募金を集め、
150 か国以上の子どもの支援に使われた。この場合、キャセイ航空が自発的に行い慈善目的ではあるが、募金を行って
いる(貢献している主体)は乗客であるため、コミュニティ投資にはあてはまらない。
【事例 2】ドリンクメーカーが途上国にある工場の最寄りの高速道路までの道を作り、地元のコミュニティのアクセスを向
上させた。この場合、ドリンクメーカーが自発的に道路を作り、貢献している主体でもあるが、あくまでも自分たちのビジ
ネスの為にしたことであって慈善目的ではないため、コミュニティ投資にはあてはまらない。
【事例 3】Yell(イギリス版タウンページ)は、赤十字社に無料のオンライン広告を提供している。この場合、Yellが自発
的に慈善目的で行い、且つ貢献している主体も Yell であることから、コミュニティ投資にあてはまる。
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コミュニティ投資 トレンド
世界的に、チャリティよりもコミュニティ投資に企業の社会貢献事業を持っていこうという強いトレンドがある。実際、日
本の CSR 報告書では「社会貢献」となっており、英語版は「social contribution」と章立てされていることが多いが、海外の
企業の CSR 報告書では「community investment」となっている。他にも、お金だけではなく時間やスキル、他の経営資源
も投資の一部と考えることや、コミュニティと・企業双方に投資効果を期待すること、SDGs と関連付け、広範囲の開発課
題も視野にいれること、コミュニティ投資の効果と、もたらされたインパクトを測定することなども最近のトレンドである。
戦略的なコミュニティ投資
開発課題への対応が企業の役割の一つになってきた。そのため社会貢献活動であっても、企業とコミュニティの両方
に対して説明責任と ROI(投資対効果)が必要になる。しかしコミュニティ投資は決して無駄な事ではなく、企業にとってブ
ランディングとレピュテーション、人材採用と確保、新規参入機会、コミュニティとの関係構築と創業ライセンスなどの機会
となる。そうした戦略的なコミュニティ投資を考える上で大切なのは、ビジネスとの整合性、企業・コミュニティ間でのメリッ
トの共有、インパクト重視の課題解決、パートナーシップ、資源の有効活用、持続可能であること、などが挙げられる。
何を測るか
コミュニティ投資を行った時に重要なのは「何を測るか」である。社会的インパクトを測る手法はたくさんあるが、それぞ
れのツールに得意・不得意があり、また主体(NGO、企業、国際機関など)によって測る目的が違うので、何を測りたいか
を明確にする必要がある。
なぜ測定するのか
その事業の現在の位置を確認することはもちろん、限りある経営資源を有効活用できているかどうかは測定しないとみ
えてこない。NGO やコミュニティは企業の社会貢献事業に対して常に継続性への不安を抱いている。インパクトをきちん
と測らないと、コミュニティ投資の継続も判断もしてもらえない可能性がある。
インパクト測定手法の紹介
【SROI(Social Return on Investment)】
社会課題に対して投入したもの(資金、時間、現物寄付など)と成果(経済、環境、社会・文化)を貨幣換算して評価す
る。使いやすい事例としては寄付金や助成金、開発の為の銀行の投入資金、また財団などでも多く使用されている。
【LBG(London Benchmarking Group)】
コミュニティ活動にどれだけ投入(インプット)し、どれだけの成果(アウトプット)を上げることが出来たかを示し、コミュ
ニティとビジネス両方にとってどれだけの利益があったか(インパクト/リターン)を評価する。定量的な評価はするが必ず
しも貨幣換算するものではない。
その他にも下記のような評価手法がある。
・IRIS(米国 NGO の Global Impact Investing Network)
・Measuring Impact Framework(WBCSD)
・Poverty Footprint Framework(Oxfam)
・SLIR(CSR Asia)
IRIS、Measuring Impact Framework は開発庁や開発銀行などがよく使用しており、開発課題に対して使いやすい。
Poverty Footprint Framework は NGO と企業が協働した際に使用するフレームワークである。SLIR は企業そのものの事
業がその地域に雇用を生んでいるかなどを測る手法である。
このように様々な手法があるが、コミュニティ投資の測定には SROI か LBG が使い勝手が良いと思われる。
ケース紹介:アディダス香港(LBG 使用)
現地の NGO(突破行動)からの要請を受け、香港の少年院の子どもたちにアディダスがスポーツ用品を寄贈し、社員が
ボランティアでスポーツコーチとなり子どもたちの更生を手伝うという活動がある。コミュニティへのアウトプットとしては、
毎週土曜日に社員がスポーツコーチとなりバスケチームの指導が行われるようになった、24 人の子どもたちが参加した、
などが挙げられる。ビジネスへのアウトプットとしては、社員のチームビルディングの機会やスポーツの機会を創出した、
社員が地域から感謝される存在となった、などがあげられる。コミュニティ・インパクトとしては、参加した少年の 100%が
ポジティブな心身の向上があり、78%の少年が以前はできなかった他人への配慮ができるようになったと感じた、などが
ある。ビジネス・インパクトとしては、86%の社員がコミュニティとのつながりが感じられるようになった、57%の社員のモ
チベーションがアップした、などが挙げられる。
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最後に
コミュニティ投資に対するインパクト測定には様々な手法があるが、一番重要なのは「なぜコミュニティ投資をするか」
と「なぜ効果を測りたいか」であることを忘れないでいただきたい。
質疑応答
Q:コミュニティ投資とは、その企業が関わっている地域に投資することが前提と思っていたが、関係のない地域であって
もコミュニティ投資かどうかの 3 つの質問にあてはまれば良いということか?
A:いろいろな考え方があるかと思うが、世界の流れではその 3 つの質問にあてはまればコミュニティ投資とされる。その
ため、CSR レポートの社会貢献の章立ても「Community Investment」となっているのだろう。
Q:アディダス香港の事例では、事業の実施後に参加者へアンケートやインタビューを実施し、参加者の感じ方をもってイ
ンパクトがあったかどうかを測定しているが、効果の測定方法としてその他にも方法があるのか。また本当に少年たちが
更生したかどうかが重要であると思うが、5 年、10 年といった長期にわたって測定をした事例があるか。
A:LBG の評価の手法としてアンケートやインタビューは多いが、数字がとれるようなデータ設定もあるので適宜交えなが
ら測っている。アディダス香港の事例では、インプットではシューズの数などの数字がでているが、効果の測定としてはア
ンケートとインタビューが主である。アディダス香港の場合は 3 年間の活動の評価をしたもので、その後更生したかどうか
までは確認していない。どれほどの期間の評価を行うかは測る目的によるもので、アディダス香港としては 3 年間のコミ
ュニティ投資での効果を見たいという目的があった。なぜ測りたいか、どこまで測りたいかというのは測る側で決めるとい
うのが今のコミュニティ投資の測り方の大きな特徴である。
Q:コミュニティ投資かどうかを確認する 3 つの質問があったが、企業側にメリットがあるかどうかも重要なポイントでは。
A:コミュニティ投資というのは、あくまでも社会課題を企業や NGO などがステークホルダーとのパートナーシップで解決し
ようというものである。その活動がコミュニティ投資なのか、商業活動なのか、それとも慈善活動なのかを整理するにあた
り、その 3 つの質問が役立つと想定している。行ったことが企業の為になるとするならば、それは企業の販促活動やコー
ズマーケティングにあてはめた方が効果の測定も測りやすい。企業の為になるかどうかはコミュニティ投資においては含
んではいない。
Ⅲ.事例発表-対談形式~社会的インパクトを意識した NGO と企業の連携~ 「タケダ-Plan 保健医療アクセス・プログラム」
パネリスト:城戸 浩史氏(武田薬品工業株式会社
コーポレート・コミュニケーションズ&パブリックアフェアーズ CSR
寺田 聡子氏(公益財団法人プラン・ジャパン
主席部員)
プログラム部 シニアオフィサー)
ファシリテーター:藤森 みな美(連携ネット事務局/特定非営利活動法人国際協力 NGO センター(JANIC)広報・渉外グループ)
藤森:お話をお聞きする前に、「タケダ-Plan 保健医療アクセス・プログラム」について概要をお聞きしたい。
寺田:「タケダ-Plan 保健医療アクセス・プログラム」は、武田薬品工業とプラン・ジャパンが連携し、タイでは若年層向け
HIV/エイズ感染予防プロジェクト、インドネシアではコミュニティ主導型屋外排泄禁止促進プロジェクト、中国では子ども
の栄養改善プロジェクト、フィリピンでは子どもの医療支援プロジェクトをそれぞれ 5 年間実施した。
藤森:そもそも、なぜこのプロジェクトを始めたのか。
城戸:当時、事業のグローバル化が進んでいた事が背景にある。CSR のレベルもグローバルレベルに相応しいものにす
る必要があり、2009 年にこのプログラムを開始した。武田薬品の創業は 1781 年(230 年以上)で、国内での薬づくりを続
けてきた会社である。日本では市販薬(ヘルスケア用品)の認知度が高いのだが、実はその売上げは全体の 4%程度に
すぎず、医療用医薬品が 90%以上を占めている。事業としても国内市場には成長性に限界があり、国外にもプロモーシ
ョンをしなければならない時期でもあった。CSR としてもグローバルな展開を考える必要があり、2009 年にグローバル・コ
ンパクトに加盟し、MDGs の考え方等を踏まえ、最初に立ち上げたのがこのプログラムであった。翌年には、グローバル
製薬企業として取り組まねばならないグローバルヘルスの課題として「アフリカにおける三大感染症」を大きなテーマとし、
グローバルファンドと「タケダイニシアチブ」立ち上げるなどグローバルレベルの CSR を進めてきた。
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藤森:「タケダ-Plan 保健医療アクセス・プログラム」を 5 年前に始めた時に、インパクトまで視野に入れていたのか。
城戸:正直、開始当初はインパクトやアウトカムまで考えておらず、幾ら投資(インプット)し、どれだけリーチしたか(アウト
プット)の把握と報告に留まっていた。しかし、現地コミュニティにいかに貢献できるか、というプログラム本来の趣旨に鑑
みて、受益された方々の態度がどのように変わったのか、さらにはこのプログラムが生んだ波及効果までを把握・報告す
べきでは、という議論が社内であり、インパクトやアウトカムまでを意識するようになった。
寺田:最初にお話を頂いた当初は時間も限られていたこともあり、特にインパクトを意識した活動をしていた訳ではなかっ
た。途中から互いに実施したプログラムの内容を整理するようになった。
藤森:5 年というのは長期の取り組みだが、どのように社内を説得されたのか。
城戸:武田薬品工業では、他のプログラムも含め最初から 5 年以上続けることを考えている。人の命に係わる保健医療
のプログラムにおいては、短期ではなく長期でコミットする必要があるという考え方を持っており、長期的な視点でプロジ
ェクトを進める事に関しては、社内のコミットを得るのはそれほど難しい事ではなかった。プログラムの社内承認を取るた
めに、当時は、「やらないことに対するリスク」を説得材料としていた。「メガファーマ各社が途上国で様々なプログラムを
実施している中、そこに進出する当社が、CSR プログラムを行わずにビジネスのみで進出することは、儲けるためだけに
きたのかと思われるリスクがある」と説明した。当時の当社においては、このようなストーリーが効果的であったと考えて
いる。
藤森:インパクトを整理する際にはプランさんがかなり動かれたと聞いているが、連携して良かった点や学んだこと、改善
点や苦労した点などを教えてほしい。
寺田:プランとしても 5 年間という長期間をかけて企業と組んでプログラムを遂行した経験はなかった。またハードではな
くソフトコンポーネント(意識啓発、感染予防)への支援事業で、アウトカム、インパクトまで出すことは半年~1 年の短期
プログラムでは難しかっただろうと思う。結果として 5 年という長期間をかけることで、最終的には現地でモデルケースとし
て他県まで波及効果がみられるようになったし、医療支援を実施した保健所では「日本の企業が支援してくれたのだから
自分たちも協力しなくては」と地域住民の意識が変わり、朝清掃をしてくれるようになった。このエピソードは NGO からす
ると当たり前にとらえがちだが、企業側からこれは立派なアウトカムであると言っていただき、気付きを得た。
藤森:企業側としてはどうか。
城戸:会社のオフィシャルの報告書でインパクトまで整理し開示できたという事は、社内的な認知はもちろん、CSR に係わ
るチームにとっても大きいことだった。インパクトまで測れたことで、より深い形で考えるきっかけを作れたと考えている。
藤森:最後に、今後に向けてこの経験をどのように活用していきたいかを一言ずつ頂きたい。
寺田:長期的支援且つソフトコンポーネントで連携できた事は大きかった。ハードはわかりやすくアウトプットが出てくるが、
ソフトという民間或いは NGO ならでは出来ることで、ご支援を得てパートナーシップを結べるとよいと思う。また、プログラ
ムを遂行する上で、コストとインパクトにおける説明責任の必要性は、NGO も一緒に考えていきたい。
城戸:今後プログラムの知見を活かしたいと考えているが、プログラム開始当初から比較すると、地域別の売り上げや従
業員の構成などを見ても、社内のグローバル化はかなり進んでいる。経営層も欧米でマネジメントを経験してきた方ばか
りとなり、CSR プログラムを検討するにあたっても、「皆やっているから、らうちもやらないと・・」というかつてのようなストー
リーは通用せず、タケダならではのユニーク性を強く求められている。グローバルメガファーマと比較して、光った目のつ
け処を持つことが競争力を持つ上で必要となる。今後のプログラムを考えていく際に、インパクトまで視野に入れた支援
を CSR チームが経験していることは、とても大きなメリットになってくると思っている。
質疑応答
Q:アウトカム、インパクトを分ける際の指標は、どのような事に注意されたか。
5
A 寺田:この 2 つは分けるにあたり、混乱するところはあったが、プラン・ジャパンである程度定義付けを実施した。長期的
な視点を重要視し、学術的な視点では定義付けをしなかった。
A 城戸:アウトカム=対象者・対象コミュニティの行動変化(対象者のポジティブな行動変化を生み出せたかどうか)、イン
パクト=社会への波及効果(社会にポジティブな波及効果を及ぼすことが出来たかどうか)を軸に指標を作った。
Ⅳ.インパクト測定実践ワークショップ
講師:赤羽 真紀子 / CSR アジア 日本代表
実際に行われた事例を用い、LBG を活用しながらインパクトを意識したコミュニティ投資を考える。
事例 A:

あなたは先進国のホテルグループの CSR 担当

インドネシアにリゾートホテルを経営

現地の貧困削減のためにコミュニティ投資を行うことを決定

現地を調査すると、初等教育水準が低く、子ども達の健康状態も不良

学童らを支援することにした
グループワーク その 1
① あなたがこのホテルの CSR 担当者だとして、どういう活動を考えて実施するか。
② 考えた活動を実施するにあたり、インプット・アウトプットの指標は何にして、どう測るか。
グループワーク その 2
① インパクトの指標は何にして、どう測るか。
実際の事例の紹介(企業の社会貢献活動を評価した事例とその効果)
プロジェクト名:A Tree For a Child(ATFAC)
企業:アコーホテルグループ(本社:フランス)
国:インドネシア
評価手法:LBG をベースにした「CSR Asia Community Investment Score Card」
内容:アコーホテルグループはインドネシアに富裕層や外国人旅行者向けのホテルを展開していた。宿泊者から「ホテ
ルの中はキレイだが、一歩ホテルから出ると貧しい地域が広がっている」という指摘を受け、ホテルがあるコミュニティ
の課題にも向き合おうと始まった。その地域の子どもたちへ英語やパソコンの指導をしたり、奨学金や給食、医療を提
供したりと、その地域の発展に貢献している。
目標:

コミュニティ:貧困削減に貢献し、教育へのアクセス機会の増加および児童の健康改善する

ビジネス:ホテル周辺のコミュニティに対する意識を高め、配慮ある会社というアコーの評判を高める
ビジネス指標
コミュニティ指標
インパクト:
インパクト:
・奨学金受給児童の 67%の成績が向上
・従業員がアコーで働いている誇りが向上
アウトプット:
アウトプット:
・75 人 の児童に奨学金を支給
・かかわった社員数
・12,180 人分の給食と 838 個の食品の配給
・メディアの報道の数
インプット:
・現金とマネジメントコスト: USD 93,511 (約 7,480,880 円)
・時間: 従業員が英語とパソコンを児童に教える
・現物支給: 栄養豊富な食品がホテルから提供 ⇒ 学校出席率 95%の児童の家庭に届けられる
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