すでに国内未承認の不活化ポリオワクチン(IPV)を接種された方に対して、引き続き定期 接種として IPV の接種を施行していただける医療関係者の方、そして保護者の方へ。 2012年9月 ふじもとこどもクリニック 当院では2011年6月末から国内未承認であった Imovax Polio の接種を開始。 (2012年5月から 予約中止しましたので約1年弱の期間) 十分な時間をかけ未承認のリスクや接種スケジュールを説明し同意を頂いた方だけに接種。欧米各国の 接種スケジュールの違いを説明し、アメリカ CDC 方式の接種に従い4回目までの具体的接種予定時期を 記載し保護者にお渡ししてあります。十分に説明させて頂いたつもりですが、同じ製品が国内承認とな り日本の接種方式(DPT 準拠式)が示されてから一部の保護者の方においては接種間隔の違い等で戸惑 いの声が聞かれます。また定期接種として IPV 接種に携わられる医療関係者も困惑される事が予想され ます。そこで今後の接種方法について選択肢をあげましたので参考にして頂きたいと思います。 また今回の日本の接種方式において下記の点を踏まえて置いて下さい。 *既に任意で IPV を1~3回接種されている方は、生後90カ月(7歳6カ月)に至るまでの間で あれば、不足分の接種を受ける事ができます。 *3年程度の間、IPV の接種間隔は20日以上の間隔をおけば接種可能であり、接種間隔の上限は ないとしております。 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/polio/dl/leaflet_120510.pdf *任意の IPV 接種から定期の IPV 接種への継続における選択肢* ① 当院が保護者に説明し、資料に記載させて頂いた予定通りの日程で接種を継続する方法 この選択肢が現時点では一番お勧めする方法です。 CDC 方式(日本と同じ4回接種法)は1回目と2回目は4~8週間隔で日本方式と同じですが、2回目 と3回目を数か月(2~14カ月)あけて1歳半頃までに、4回目は4~6才頃を標準としております。 日本方式(DPT 準拠式)とは違って初回免疫のうち3回目を2回目から数カ月~1年程度空けて接種す ることでブースター効果がかかり3回終了後の強い免疫獲得があるとしております。さらに 4 回目は長 期免疫維持を期待するために4歳以上で接種する事を CDC は繰り返し要求しております。この方法は DPT より日本脳炎の接種方式に類似しております。このことについては下記を参考にして下さい。 http://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/rr4603.pdf#search='CDC%20MMWR%201997%20%20Vol.46%20 %20poliomyelitis%20prevention' IPV Alone The primary series consists of three doses of vaccine. In infancy, these primary integrated with the administration of other routinely administered vaccines. administered at 2 and 4 months of age; the third dose should age with an interval of 6–12 months between the doses are The first two doses are be administered at 12–18 months of second and third doses (Table 4). Whereas the first and second doses of IPV are necessary to induce a primary immune response, the third dose of IPV ensures “boosting” of antibody titers to high levels. If accelerated protection is needed, the minimum interval between doses of IPV is 4 weeks, although the preferred interval the second and third doses is 6 months (see Recommendations for Adults). received three doses of IPV before their fourth birthdays should between All children who have receive a fourth dose before or at school entry. The fourth dose is not needed if the third dose is administered on or after the fourth birthday. またヨーロッパ方式をみますと1~4回目までの間隔は DPT に準拠した日本方式に近いですが 必ず4歳以上で5回目の追加接種を設けております(現時点で日本方式は4歳以上での接種なし)。 欧米とも4歳以上での追加を強く推奨しているところです。以下に欧米の接種スケジュール表をあ げておきますので比較してみて下さい。 IPV alone (IPV+IPV+IPV+IPV) <アメリカCDC式> スケジュールを外れた 4 ヶ月~6 歳児 標準 すでに1回生ワクチンを接種 (catch up schedule) 1回目 生後 2 ヶ月 または任意の時期 2回目 3回目 (4~)8 週後 1 歳~1 歳半 または(2~)8(~14)ヶ月後 4回目 任意の時期 (生ワクチン接種) 4 週後 2 ヶ月以上経過した任意の時期 4 週後 (4~)8 週後 4(~6)歳 4歳前に4回の接種が終了してしまった場合、CDCは4~6歳で5回目となる接種を要求しています。 <ヨーロッパ式> イギリス フランス ドイツ イタリア スイス 1回目 生後 2 ヶ月 2~3 ヶ月 2 ヶ月 2回目 生後 3 ヶ月 4~5 ヶ月 4 ヶ月 3回目 生後 4 ヶ月 10~12 ヶ月 6 ヶ月 5~6 歳 15~24 ヶ月 4回目 3 歳 4 ヶ月~5 歳 16~18 ヶ月 11~14 ヶ月 5回目 13~18 歳 6歳 9~17 歳 6回目 11~13 歳 7回目 16~18 歳 4~7 歳 <日本方式(DPT準拠式)> 標準 1回目 生後 3 ヶ月 または任意の時期 2回目 3~8週後 3回目 3~8週後 4回目 (6~)12~18 か月後 5回目 4(~6)歳 日本も4歳以上で4種混合(DPT+IPV)での5回目接 種を検討している様子もあるがまだまだ未定の段階。 ただ単独 IPV はいつ定期接種から外れるかが不透明です(4種混合への1本化)。最低3年程度、 あるいは今3か月で IPV を開始した赤ちゃんが7歳半になるまで(約7年程度)は存続するともい われます。もし4回目の接種を4~6才まで待っていてその時点で定期接種からはずれているよう な事があれば自費(4種混合を利用)になるかもしれない事も保護者の多くにはお話してあります。 (これらの資料は多くの保護者にお渡ししてあります) ② CDC 方式で接種をスタートしたが2または3回目以降、日本方式に変更する。 この選択肢は CDC 方式の利点は納得されているが、やはり周囲が日本方式で接種していると横並び した方が安心という保護者向けです。また実際定期接種をされる先生の意向が日本方式にこだわら れた場合もこの方法で構わないと思います。 例えばすでに不活化ポリオが2回接種済みの場合、任意の時(2回目から20日以上空いていれば 上限は問わない)に3回目接種、その後1~1年半後に4回目を接種する事になります。4歳以上 での定期接種利用はなくなりますが自費でも良いのなら4種混合での接種は可能(国が4歳以上で の5回目接種を4種混合定期接種として決定することがあればそれを利用)。 元々DPT 接種において小学校入学前、中学校入学前での接種がないのが問題となってます。 ③ すでに任意で IPV を接種した回数はカウントせずに、定期接種の IPV4回分を利用する方法。 この選択肢は裏技ですがお勧めはできません。 原則は任意の IPV と定期の IPV で合計4回接種して頂くとなっておりますが、これには“医師の判 断と保護者の同意に基づき”との前文がついております。2012年6月1日の自治体向けの不活 化ポリオの質疑応答集の33番において、 任意の接種回数はカウントしないで定期接種として4 回接種することを保護者が希望すれば可能であるとしています。 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/polio/dl/topics_20120601-03.pdf 2~3歳までに全体で6~7回接種しても意義が少なく、十代後半までに分散できるのなら良いが 定期の枠組みは7歳半で終わりなので無理があります。一方、②の選択肢において4~6才で5回 目接種(全体で)を定期で行うための手段として利用する手もありますが、予診票の回数記入の方 法や保護者の意向の記入場所など、いろいろ複雑であり自治体との対応など混乱を招く要素が多く 難しいと思います。選択肢①の4~6才での4回目接種を定期としてを行った場合、3回目から間 隔等でもし問題がある場合などにこの裏技を利用できるかもしれません。あくまでもこの選択肢は 緊急避難的な位置としておく方が良いと思われます。 いくつか選択肢を挙げましたが、国内未承認の IPV を接種している子供たちのために定期接種とし て規定の回数を接種して頂ける様、医療関係者の皆様にお願いする次第であります。
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