EGARA 欧州会議2005

EGARA 欧州会議2005
氏名:郷古
実
訪問国:ベルギー、ブリュッセル
目的:EGARA2005年度第2回欧州会議への参加
期間:平成17年11月16日至平成 17年11月21日
はじめに
本年9月に行われた ARA 総大会において、欧州14カ国の自動車リサイクル団体の中心
的 な 役 割 を 担 う ア ン ブ レ ラ 組 織 、 EGARA“Europe Group Automotive Recyclers
Association”(以下、EGARA)の事務局長、レナート・シャルフ氏(Lennart Scharff)
より、2005年度第2回 EGARA 欧州会議(以下、EGRA 会議)への招待を受け、11
月17日(木)から11月18日(金)の2日間、会議出席のためベルギーの首都ブリュ
ッセル(Brussels)を訪れた。
(添付ワード参照;日程表、EGARA2005)
この会議の参加国は、地元ベルギーは勿論、フランス、オランダ、ドイツ、スウェーデ
ン、フィンランド、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、リトアニア、デンマーク、英
国、アイルランド、スイス、そしてカナダARC(Automotive Recyclers of Canada)
、米
国(ARA)
、日本と総勢17カ国から20名が集まった。
(添付エクセル参照;出席者名簿、
EGARA2005)日本からは当方の参加に加え、一橋大学大学院で産業廃棄物の研究を行
い、ドイツの自動車リサイクルについて優れた論文を発表している阿部新氏も参加し、こ
の会議は2日間の日程にもかかわらず非常に内容の濃いものであった。今回の会議は北米、
そして何より、日本からの参加により実質的に主要先進国のリサイクラーが集う国際会議
のようであった。
(添付パワーポイント参照;EGARA 会議2005)
フランス、パリのシャルル・ドゴール空港着後、フランスとオランダに挟まれた王制
国家ベルギーの首都ブリュッセルへの移動は大陸間列車タリス号を利用し、およそ1時間
半の旅は共通通貨ユーロの普及と相まって、かつての国境という意識も薄れあたかも国内
旅行のような感覚で行えた。ここブリュッセルは、フランスに負けず劣らず文化の豊かな
ところでありコクのあるビールや美味なムール貝料理などの食文化はもちろん、中世の香
り漂う街には王立美術館など多くの博物館
が立ち並び、年間を通して観光客が絶えない
ところである。また、一般市民がフランス語、
オランダ語、ドイツ語そして英語を日常的に
使い、言葉の壁を感じないブリュッセルは当
方にとって居心地のよい場所であった。ちな
みに、
“ベルギー”の語源はローマー皇帝、
シーザーと戦ったケルトの戦士を意味する
“ベルガエ”から派生している。
EGARA について
EGARA はデンマークに本拠地を構え、13年
前に設立された組織で、欧州14カ国の自動車リサ
イクル団体のアンブレラ組織である。この EGARA
の理事長はアイルランドのリサイクル団体、IMVRA
代表で、自らもリサイクラーであるジョン・マーフ
ィー氏(John Murphy)が就任しており、そして事
務局長には先の ARA 総大会にも参加し、今回の会議
の進行役を務めるレナート・シャルフ氏(Lennrt Scharff)が就任している。この他、
各団体の代表者が EGARA の役員を務めて組織が運営されている。EGARA は上記14
カ国の他にオーストリアやイタリア、ポルトガルなどの団体にも現在入会へのアプロー
チをかけている。EGARA は将来的には全欧州をカバーするアンブレラ組織への発展を
目指しており、今後益々欧州のリサイクラー、各国の行政に影響力を与える組織になる
と思われる。よって、北米や日本といった欧州以外の自動車リサイクル先進国との友好
関係は EGARA の発展に願ってもないことである。
今回の会議は米国 ARA のリサイクラー同様に国籍、言語の差別なく同じリサイク
ラーとして肩肘の張らない雰囲気の中で行われた。また、天明理事長に代わってマーフ
ィー氏に贈呈の蒔絵(輪島塗り)のダイヤリーとお盆は EGARA 幹部より感謝の意を
示していただき、JARA と EGARA の友好を喜んで頂いた。
EGARA 会議、初日
11月17日(木)午後からブリュッセルのホテ
ル・チューリップ・インで行われた会議は各国代表
者の自己紹介後、各国リサイクル団体の活動紹介が
行われた。はじめに、参加者が最も興味を抱く日本
の自動車リサイクルについて当方が発表し、日本の
リサイクル産業や JARA の活動、リサイクル法、そ
してグローバルネットワークの必要性など、1時間
強と短い時間であったが高橋理事から提供頂いた写真等を交えてのパワーポイントは
好評であった。この発表で自動車リサイクル
法に関心が寄せられ、参加者の多くが日本の
リサイクル法についてはじめて理解出来た
ようで、参加者から“リサイクル法の施行に
よるリサイクラーのメリット”について質問
が寄せられた。
(添付パワーポイント参照;EGARA 会議2005)
参加者には、リサイクルシステムがしっかりした日本のリサイクラーは社会的地位
や自動車産業界での発言権など、高く評価されていると思っていた人々も多く、当方の
発表で日本のリサイクラーの地位や発言権など、欧州同様の問題を抱えていることを理
解したようである。また、JARA の活動ではJARA優良認証制度や JARA 技能士制度
も興味を引き、EGARA にとってこれらの制度はリサイクラーのレベルアップと標準化にと
って重要な課題である。
その後、カナダ ARC 事務局代表のスティーブ・フレッツシャー氏(Steve Fletcher)
発表が行われ(添付パワーポイント参照;ARC)
、続いて ARA 事務局代表のジョージ・エ
リアデス氏の発表が行われた。エリアデス氏の発表では今回の会議の重要なテーマである
グローバルネットワーク、国際協力について行われ、ARA 幹部会議での決議内容、第1回
リサイクラー国際会議が来年3月に米国ラスベガスにて開催する意向を正式に表明した。
この件については、EGARA 幹部、カナダ、JARA も口頭で同意していることであるが、
しかし、その実施には多くの課題があるのも事実
のようである。例えば、ルーマニアやリトアニア
などからの参加者の経済的な負担など、今後更な
る討議が必要に思われる。この後、国際協力につ
いてのブレイン・ストーミングが行われ、各参加
者から思い思いの意見が出された。
その後、ルーマニアの代表者が発表を行い、
ルーマニアの保有台数で車歴が11年から20年
までが37%を占め、20年以上が24%を占めるといったように、ルーマニアには車
歴11年以上の車が61%を占めていることには強い印象を受けた。また、旧ソ連のリ
トアニアの発表でも、車歴の平均が16年で20年以上の車もまだ多く保有しているよ
うである。恐らく、このような国々ではハンドルの取付け位置の規制がなければ、良か
れ悪しかれ日本の中古車と中古部品のよい輸出先と
なることであろうと感じた。
尚、11月17日夜には参加者の夕食会が催され、
EGARA 理事長のマーフィー氏が当 JARA はじめ、米国
ARA やカナダ ARC からの参加に対し祝辞を述べ、和気
あいあいとベルギー料理を味わいながら、心地の良い夕
べのひとときを過ごすことができた。
EGARA 会議、2日目
会議2日目は早朝より EGARA 幹部と JARA, ARA, ARC との国際協力に関する
会議が行われシャルフ氏を進行役として来年3月の国際会議について ARA、エリアデス氏
の発表を軸に、開催地の良し悪しや会議の運営方法等について話し合った。いずれにせよ、
これらの幹部はスクラップ鉄の国際価格や不正な部品輸出入、災害車の不正売買そして各
国政府機関やカーメーカーのかかわりにおいて、一国だけでは解決しない問題も多く、国
際会議の開催はリサイクラーにとって計り知れないメリットを生み出すと確信しているよ
うである。
(添付パワーポイント参照;国際協力、EGARA)
EGARA との合意書
今回の出張では JARA から EGARA 側
に対し、ARA と交わしたような合意書案
についても話し合った。この合意書案は
1)業務提携、
2)情報交換、
3)JARA のアジアでのアンブレラ組織構
築の支援、
4)他組織との提携条件
の4項目を記した内容である。この件につ
いて、当方が以前から事務局長シャールフ氏に打診していたため、スムーズに事は進んだ
が、EGARA 幹部会議の結果、4)他組織との提携条件、“1.
EGARA は日本の他の
団体、組織等と提携を結ぶとき、J
ARAの了解を得ることとする。”の項目については、幹部
より自由なリサイクラーとの関係を基本とする EGARA では受け入れられないとの意
見が出された。よって、4)他組織との提携条件の項目を除いた合意書案に署名すると、
正式に代表のマーフィー氏とシャルフ氏より申し出があった。よって、天明理事長の署
名後に EGARA 側に郵送すると当方より述べた。ちなみに、各国の団体は EGARA のつ
ながりにおいて特に合意書交わしているわけではく、今回提案した合意書案は
EGARA 側には異例なことに写ったようである。しかし、この合意書が JARA にとっ
て必要なことであれば、喜んで署名するとのシャルフ氏の意見であった。EGARA は
ARA 同様、JARA のアジアのリーダー、アンブレラ組織としての活動に大きな期待と信
頼を寄せていることに他ならないのではあるまいか。(添付ワード参照;合意書案、
EGARA2005)
あとがき
今回のブリュッセルの滞在は合計3日間と短く、会議の事前準備や内容の濃い会議の
ため、ほとんどホテルに缶詰状態で市内観光もままならない状況であった。各国の参加者
との会話にもあまり時間を取ることができなかったことは心残りで残念であった。しかし、
日本からはじめての参加とあって全員から歓迎を受け、今後の友好関係の礎を築いたこと
は幸いである。また、休憩時間等で日本の部品に対する考えを聞き、参加者数名から高品
質な日本のリサイクル部品に興味を抱いているとの話を伺うことができた。先の ARA 総大
会でARA会員企業を訪れた折に、ホンダ・アコードのトランスミッションの日米の価格
差に驚いたことがあったが、恐らく欧州と日本でもリサイク部品販売価格に大きな差のあ
る商品があると思われる。このような情報のいち早い入手は、双方の会員企業のビジネス
振興にも貢献することであり、この点からも国際的なネットワークは大きな力となる。
ちなみに、冒頭で記したように EU 統合以後、ユーロ通貨の普及により国境を越え
た取引がより行い易い環境にあり、自然環境の厳しい北欧等ではリサイクラーのビジネス
形態はコンピュータネットワークの活用へと移行しているようである。今後、国境を越え
た国際的なリサイクル部品のコンピュータネットワークの広がりも進むものと思われる。
今回参加した阿部氏は会議の各所で研究者の立場から意見を述べ、また写真撮影も
手伝って頂き、当方の良きサポート役であった。ARA 総大会はじめ、今回の出張でも感じ
たことは、どのリサイクル団体も多忙で人手不足であるという
ことである。今回参加した阿部氏をはじめ、次の自動車リサイ
クルの研究をリードする平岩氏や貫氏など優秀な人材をぜひ
長期で ARA や EGARA、ARC の事務所などに出向でき、彼ら
がじっくりと研究できるような体制が整えば幸いと感じた次
第である。このように自動車リサイクル研究者の国際化にとっ
ても、リサイクラーの国際協力は望ましいことであろう。
EGARA 会議終了後は、再びタ
リス号にてパリへ戻り、週末を多
くの芸術家が住み、パリの夜景の美しいモンマルトルの丘で
過ごした。ここモンマルトルではピカソなども通ったシャン
ソニエ(シャンソンのライブハウス)に足を運び、新鮮なワ
イン、ジョレ・ヌーボと旬の生牡蠣に舌鼓を打つことができ
た。昼夜共に治安の良い小さな町並には、夜遅くまで晩秋の
パリに魅せられた人々の足が絶えない。その土産店では自動
車のボルト、ナットや自動車中古部品を使った現代アートも
売られており、結構な値段で販売されている。日本国内でも
自動車中古部品を現代アートの芸術家たちに提供するのも、自動車リサイクルの啓蒙に一
役買うのではと、モンマルトルのカフェでその思い深めた。
今回のブルッセル訪問では当方を温かく迎え入れて頂いた EGARA 代表ジョン・マー
フィー氏、そして事務局長レナート・シャルフ氏には心より感謝し、再会を願って止まな
い。最後に当方の欧州出張を快く了解いただいた、JARA 理事の方々には心より感謝する次
第である。