仙台大学大学院スポーツ科学研究科修士論文集 Vo 1 . l3 .2 0 1 2 . 3 中国と日本におけるボート競技者育成体制の比較研究 笹井善仁 成万祥 勝田隆 キーワード:ボート競技者,育成体制 J a p a nandC h i n aRowingA t h l e t e sT r a i n i n gSystemR e s e a r c h Yo s h i h i t oS a s a i ChengWanxiang T a k a s h iK a t h u t a A b s t r a c t a sa l r e a d ybeenl i s t e da san0盟c i a le v e n tont h e Rowingo r i g i n a t e di nB r i t a i n,whichh twasc a n c e l e db e c a u s eo ft h ebadweather .Not f i r s tOlympicGamesi n1 8 9 6 .However,i u n t i lt h en e x tOlympicGamesi n1 9 0 0wasrowingh e l d .Rowingi sane v e n twhichh a sa l waysbeenm o n o p o l i z e dbyAmericansandE u r o p e a n s .Theya r emoree x p e r i e n c e dand s t a r t e de a r l i e rt h a nt h eA s i a nc o u n t r i e s .S i n c et h es e p a r a t i o no fw e i g h tc l a s s e si nt h eA t l a n t a tbecamep o s s i b l ef o rt h eE a s tA s i a np l a y e r s,whot e n dt oh a v e OlympicGames( 1 9 9 6 ),i o e n t e rt h eOlympicGames.Rowingwasc a r r i e do u ti nC h i n ai n1 9 9 5, s m a l l e rp h y s i q u e,t whicho n l yh a sah i s t o r yo f5 5y e a r s .A l t h o u g hi ts t a r t e dl a t e ri nC h i n at h a ni nEuropeand America ,C h i n ah a sa c h i e v e dg o o dr e s u l t sandf o u n dt h e i rowna d v a n t a g ei nA s i a nr o w i n g . JARA)h a sf o c u s e dont h ep r o j e c to fw e i g h ts e p a r a t i o nand J apanRowingA s s o c i a t i o n( ,t J apanwont h e2 0 0 0w o r l dc h a m p i o n s h i pg o l dmedali n s t r e n g t h e n i n ge x e r c i s e .Asar e s u l t h eI n t e r n a t i o n a lC o n f e r e n c ef o rt h e五r s tt i m e .Theycompetedi nt h e2 0 0 0SydneyOlympic Gamesandt o o k6 t hp l a c e .Thes t r e n g t h e n i n ge x e r c i s e sh a v ep r o d u c e dp o s i t i v ea n de f f e c t i v e r e s u l t s . ,e x p e r t sands c h o l a r s Rowingh a sbecomemoreandmorep o p u l a ri nJ a p a nandC h i n a p r e d i c tb o t hc o u n t r i e st oh a v eah i g hc h a n c eo fr e c e i v i n gg o l dm e d a l s .Moreandmoree x ,o n s i t e p e r t sands c h o l a r sa r eengagedi nr e s e a r c hi nr o w i n g .Throughl i t e r a t u r eandd a t a u e s t i o n n a i r e sandl o g i c a la n a l y s i s,t h ea u t h o rmadeas u r v e yi nt h ea g eo fr o w i n t e r v i e w s,q o t i v a t i o nandt h ee v e n t st h ep l a y e r st o o ki nt h ep a s tando t h e ra s p e c t so ft h e i n g,rowingm 4 i n v e s t i g a t i o namongt h eS h a n g h a iRowingteamo f3 8a t h l e t e s( o fwhich1 4weremale,2 a p a nr o w i n gteam4 4p l a y e r s( o fwhich3 1werem a l e,1 3 f e m a l e )a n dM i y a g iP r e f e c t u r e,J f e m a l e ) .Theya l s ocombinedJ a p a na n dC h i n aw i t ht h ed i f f e r e n tr o w e r st r a i n i n gs y s t e m, andd i dd e p t hd i s c u s s i o nanda n a l y s i s .I t 'ss a i dt h a t :l . J a p a nd o e sn o th a v ep r o f e s s i o n a lr o w h eC h i n e s e e r st h a ta t h l e t e st r a i ni nl e i s u r et i m et h r o u g ht h es c h o o ls p o r t sc l u b.However,t r o w e r sa r ep r o f e s s i o n a la t h l e t e st h a tt h e yt r a i ni ns p o r t ss c h o o l sfromane a r l ya g ei n t ot h e .2 .C h i n as t r e s s e dt h a tt h ei n t e r n a t i o n a lp r e s t i g es p o r t sandt h eg o l dmedal t r a i n i n gs y s t em f i r st .U s u a l l yi tt e n d st oi g n o r et h ea l l r o u n ddevelopmen , tJ a p a n ,a l t h o u g ht h ep u r s u i to f t t a c h e sg r e a ti m p o r t a n c et oc o m p r e h e n s i v ed e v e l o p m e n to fa t h l e t e s .3 .T r a i n g o l dm e d a l s,a i n gsystemi nJ apanl e dt o 回 1 1 7 笹井ほか 日本ボート協会(JARA)では、オリンピッ 1.本研究の背景 現在、世界のスポーツは、運動・スポーツ クでのメダル獲得のため以前から選手強化 活動による健康の維持・増進、スポーツ選 活動を行っていたものの、体格に勝る欧米 手のコンデイションニングや競技力の維 諸国の選手と差を埋めることが出来ずにい 持・向上、そしてスポーツ・レクリエーシ 9 9 6年アトランタ五輪から た。そんな中、 1 ヨン活動やスポーツ組織のマネジメントに 軽量級種目が採用され、体格的に劣ってい 関する知識と技術を持った人材を求めてい た日本選手でも上位進出の可能性が出たこ る。その中で、国際舞台で活躍できる競技者 とで、 JARAでは、軽量級種目に重点を置き には、天賊の才能が必要であることは論を 強化活動を開始した。その結果、 2 0 0 0年世 待たない。元中国オリンピック委員会主席 界選手権で国際大会初となる金メダルを獲 の震偉民は、「先天的に優れた運動才能をも 6位)を果た 得、シドニ一五輪でも初入賞 ( っている競技者だけがスポーツ競技のトッ すなど強化活動が確実に実を結んでいる プレベルに達することができる o ている Jと述べ O 現在、ボート競技が盛んに行われている のは発祥の地でもある欧米諸国である O 日本と中国は第二次世界大戦後、オリン O オ リンピック・世界選手権等の結果を見ても ピックとアジア大会をめぐり、互いに競い 競技力は高い位置にある。 合ってきた。現在は、北京オリンピックに象 ボート競技は、オリンピック種目として 男子は第 l回ア 徴されるように日本のスポーツ競技力はオ も正式に採用されている リンピックメダル獲得数から見て衰退しつ 1回モントリオール大 テネ大会、女子は第 2 つある O 近年では、 2 0 0 4年アテネ五輪に獲 O 会から競技が行われている O 7個、北京オリン 得した日本のメダル数は 3 アトランタオリンピック ( 1 9 9 6 )から軽量 ピックにおいては 2 5個と減少しているこ 級種目が採用され、体格的に劣っていた日 中国はア 本選手でも上位進出の可能性が出てきたこ とから競技力低下が見てとれる O テネ五輪では 6 3個のメダルを獲得し、 2 0 0 8 とで、日本ボート協会(JARA)では軽量級 年中国で開催された北京オリンピックにお 種目に重点を置き、強化活動を開始した。そ いてメダル獲得総数 1 0 0個という輝かしい 0 0 0年世界選手権で国際大 の結果として、 2 功績で金メダルの獲得数世界 1位の成績を 会初となる金メダルを獲得し、その年のシ 4 又めている その中で、中国はボート干重目で ドニーオリンピックにおいてもオリンピッ 北京オリンピックにおいて初めての金メダ 6位)を果たす。強化活 ク史上、初の入賞 ( 菱f 尋した。アジアからみても初めての ルを 5 動が確実に身を結んだ結果となった。 しか 獲得である し、先に行われた北京オリンピック大会(軽 O O 日本では、 2000年に当時の文部省から 3位 、 量級ダブルスカル)において男子が 1 「スポーツ振興基本計画」が発表され、スポ 女子が 9位と目標にした成績には届かなか ーツ各方面では、組織の現状や外部環境と った。また、メダルを期待された男子におい の関係、それに伴う諸問題などを正確に把 ては日本の第一人者である武田大作選手が 握した上で、その後の具体的な改革が迫ら 4大会連続の出場、女子の岩本亜希子選手 れるようになった。しかし、オリンピックで のメダル獲得数から見ても世界との競技力 の差は歴然である O 社団法人日本ボート協会(JA RA) 日本のボート 略史 中国奏艇協会中国奏艇協会官方岡上 日本のボート競技を統括する組織である 1 1 8 中国と日本におけるボート競技者育成体制の比較研究 も 3大会連続出場となっており、両選手を しずつ認められてきているが、中国・日本 超える若手の台頭が望まれている。当初は をはじめアジア勢はトップとの差にまだ距 未知のスポーツと取り組み、幾多の苦難の 離があり、これからの競技力向上と選手発 道を辿りながら、今日ようやく世界の水準 掘・育成は大事な強化活動だと考えられ に近づき、世界の仲間入りが出来るように る 。 なったと考える一方で、世界で活躍できる トップレベルの競技者を組織的・計画的に n . 研究目的 本研究は、世界で国際競技力の向上を見 育成する必要があると考えられる。 9 3 0年にイギリス 中国のボート競技は 1 せている中、中国と日本との聞において、ス 9 5 6年 、 人、ロシア人から中国に伝わった。 1 ポーツ事業の発展について着目する。特に 中国の杭州西湖で初めてのボート競技の試 日中両国のスポーツ選手育成システムの違 9 8 4年、ロサンゼルスオリン 合を行った。 1 いについて検討することを第一の目的と ピックで、中国は、女子舵手つきフォア種目 し、より良いボート競技者を生み出すため で第 8位を獲得し初めての入賞となった。 の選手育成システムの相違を分析すること 1 9 8 8年のソウルオリンピックでは同種目 を第二の目的とする。これまで、日本と中国 で銀メダルを獲得、女子舵手つきエイトで のボート競技分野での選手育成に関しての 9 9 6年のアトランタ 銅メダルを獲得した。 1 研究はあまり蓄積されておらず、また日本 オリンピックでは女子ダブルスで銀メダル と中国のボート競技についての現状はこれ を獲得。中国のボート競技の発展は、中国の からのアジアのボート界、世界のボート競 ポート競技の管理システムに従って曲折の 技力向上に繋がるものと考え、本研究は日 過程を経験してきている。 中ボート競技者育成システムに関する基礎 先に行われた 2 0 0 8年の北京五輪の準備 的な研究として位置付けられよう。 の際には、ボート競技の発祥の地といわれ これらのことを明確にし、今後のボート 0 0 6年 るイギリスのイ一トンで行われた 2 競技者発掘・育成に大きく関与し、世界の 世界選手権大会で初めて五輪種目である女 舞台で戦う未来の競技者をより良くサポー 子軽量級ダブルスカル、男子軽量級舵手な ト出来る体制を研究する。 しフォアで金メダルを獲得し、優秀な成績 を収めた。そして新たに 2 0 0 8年 8月 1 7日 、 E 研究方法 唐実・金紫蔽・柔愛華・張栃栃、この四人 本研究は日中のボート競技者の育成方法 は優勝を勝ち取った。中国ボート史初のオ の違いに関することを明らかにする調査研 リンピックで金メダルという新たな歴史を 究である。具体的には、日本と中国の競技者 改めて作り出した。 育成システムの研究をはじめボート競技者 2 0 1 0年広州アジアボート競技大会では、 の環境・生活等の現状を明らかにし、これ 多くの種目で中国代表が金メダル獲得、入 から世界へ羽ばたく未来の有望な競技者へ 賞を果たしている。日本は出場種目 5種目 の競技力向上の手助けになればと考える。 においてメダルを獲得。アジアの中では日 1.文献資料法 中共に高い競技レベルにあると考えられ 2 . インターネット調査法 る 。 3 . ヒアリング調査法 1 9 9 6年アトランタオリンピックより軽 量級種目が採用され、アジア勢の成長が少 1 1 9 笹井ほか N. 結果及び考察 校には部活動がある。その中でもボート競 日本と中国の競技者育成システムについ 技を選択する競技者はほとんどが高校から 開始する。これは何故かというと一つはボ て 1 9 2 0年代以来、競技スポーツレベルの急 ート競技を行う環境である。ボート競技は 速な発展にしたがって国際間の競争は日々 水上スポーツであることから湖・川・海と 激烈になってきた。世界中の競技スポーツ いった専用のコースが必要不可欠である。 強固はトレーニングの科学化を重視してき よってボート競技を運動部として存在する た。各国は、現代の先進科学技術をスポーツ 学校も限られてくる。その中から大学へ進 トレーニングの領域に積極的に活用し、科 学しボート競技を継続する競技者は減少傾 学的理論と方法及び先進技術と設備を用 向にある。そして小学校から中学校、中学校 い、競技者をトレーニングさせ、さらにスポ から高校、高校から大学へと進学時に指導 ーツタレントの選抜を科学的トレーニング が断絶するという欠点もある。競技者育成 の重要な部分にした。例えば、旧ソ連、ドイ には指導者の一貫した指導方法を確立する ツ(旧西ドイツと旧東ドイツ)、ルーマニア ことも問題の一つである。 などの国々は、スポーツタレントの選抜を これらのことを踏まえ、日本ボート協会 国としての重要な研究課題として、適切な はオリンピックや世界大会への出場選手を 選抜制度を打ち立てた。 大会等によって各チーム・学校・大学から 中国では 1 9 8 0年頃から、スポーツタレン 選抜する。この時、競技者たちは、基本的に トの選抜に関する研究が促進された。多く は、金銭的に全て自己責任でまかなうこと の研究者とコーチは外国のスポーツタレン になっている。現在は五輪出場選手の強化 ト選抜に関する経験を学習した上で、長期 を狙って、「強化金」の支給等が行われるが、 的な研究と検討を加えることにより、スポ 原則的には大会参加や日ごろのトレーニン ーツタレントを選抜する意義と選抜の仕方 グ、指導者の選択等、全て自己責任である を徐々に明確にしてきた。 よって競技者らが五輪や世界大会に出場す O 日本の競技者育成のシステムは大きく 4 るのも個人の資格ということになるし、そ つに分けられる。1)ナショナルチーム 2) こで優れた成績を収めれば、それは彼ら個 企業のクラブ 3)プライベートクラブ 4)各 人の功績となるのも事実である。ボート競 学校の代表チームの 4つである。 2)3)4) 技の大会によって賞金が出る大会は無く、 から国際大会に参加するため、各チームか 競技者の個人負担は疲労と同時に金銭的な ら優秀な人材を選抜して、短期的なトレー 問題も多くあると考えられる。 中国には「挙国体制 J というシステムがあ ニングを千子い、1)ナショナルチームとして 試合にでる。しかし、このような各学校とア る 。 マチュアクラブのトレーニングだけでは、 これは、中国におけるスポーツ選手は国 現在競争の激しい世界では、どうしてもス 家が育て、国家の為に競技を行い、その成果 ポーツ強国になるには難しい。 は国家に帰することが原則となる。そのた 日本は、基本的に小学校・中学校の義務 めに、国家は彼らに基本的な衣食住と豊か 教育を終え、高校そして大学へと進む。各学 な練習環境、指導者を提供する。最終目標は オリンピックであり、そこで金メダルを取 r 曾凡輝.王路徳.邪文華他著.関岡康雄監修. ス って、中国の威光を世界に示すことである。 ポーツタレントの科学的選抜J.道和書院 P 2 .1 9 9 8 中国の競技者育成システムは三つのレベル 1 2 0 中国と日本におけるボート競技者育成体制の比較研究 からなっている。この三つレベルの指導思 れ、「国家チーム jの一員として、超一流の英 想は「思想一章棋、姐奴一条北、洲捺一貫制。」 才教育を受ける。オリンピック・世界選手 である。これはつまり、「思想を一致させ、組 権などに出場するのも基本的に国家チーム 織を統一し、訓練を一貫する。」という方針 の選手から選出される。中国のボート競技 である。最初は才能がある子どもを選抜し、 大会では賞金がある。中国全国大会に出場 基本的なトレーニングをさせ、その中で優 し、一般的に 8位までに入賞すると賞金が 秀なスポーツ選手が生まれる。これを基盤 贈られ、優勝すると個人に対して 1万元以 とした広いピラミッドのようなスポーツト 上が贈られるという大会もあるという。 まとめると中国のボート競技者育成では レーニングシステムである。これがまさに 競技者養成の基本となる「業余体育学校」→ 軍事領域のような「挙国体制」である。 「省・市体表j→「国家代表」というピラミッ 表 1 中国の競技者育成管理システム ド型の「三級制度」システムは確立されてい 一、初級トレーニング形式:小学校、中 ることがわかる。この三級制度は、オリンピ 学校、伝統的なスポーツ学校、アマ ックで金メダルを取るためのものであり、 チュアスポーツ学校。 そのための「挙国体制」だと言える。このピ 二、中級トレーニング形式:重点アマチ ラミッドに入れない者は、基本的には競技 ュアスポーツ学校、スポーツ中学校 者としての道を遮断され、ボートを含めス 三、高級トレーニング形式:県と市チー ポーツとはほとんど縁のない生活を送るこ とになる。すなわち、日本のような中学、高 ム、国家代表チーム 校には部活動と言われるものはなく、スポ ーツと関わるといっても、休み時間に校庭 中国のボート競技者は各地方の水上運動 学校である業余体育学校へ入学する。入学 で身体を動かすというのが一般的である。 後は午前と午後に 1日 2回の練習が基本で そして、高校時は、大学入試に向けた勉学に あることが。そして夜には授業が行われる。 励むというのが中国人の一般的な姿であ 中国 S県ボートチーム N監督によると、 S る。しかし N 監督によると、省・市の代表 県のチームには 6歳から加入している選手 チームや国家チームに在籍した競技者が、 もいるとのことだった。業余体育学校で優 引退もしくは突然ケガや何らかの原因で競 秀な選手は、今度は地域ごとに集められ、地 技を継続できなくなった場合、大学受験や 域代表選手として指導を受ける。最近のボ 就職することは非常に難しくなる。専門競 ート競技者の中には、陸上競技・バスケッ 技のコーチにも人数は限られている。これ トボールを経験した競技者が、スカウトさ はご承知の通り一日の半分をトレーニング れ種目変更を行いボート競技開始すること や食事・休息に費やし、一 があるという。スカウトする際には、保護者 では同世代の子との知識の差の聞きが大き の身長・体重など身体測定も行われ、 10 くなってしまう。この事は、ボート競技に限 種類以上の項目があるとのことだった。競 らず、中国のあらゆる競技者に対して、そし 技者に対しては、身長・体重等の身体測定 てこれからの競技者に対しての大きな問題 は毎月行われ、競技の記録等が全部数字化 であると言える。 されているという。 ここで更に優秀な選手は北京へと召集さ 1 2 1 二時間の勉学 笹井ほか V. まとめと今後の課題 日本国では、世界でも通用するトップア るO そこから選抜された優秀な競技者で金 メダルを目指すことになる O スリートを多く輩出するために多くの政策 つまり、日本はある程度スポーツの普遍 を打ち出している O 現段階でボート競技に 化が進んでいるのに対し、中国はエリート 関しては「競技者育成プログラム」はまだ構 化していると言える O 二つ目は、国のサポー 築されていないのが現状である O ボート競技は、水上種目の為、湖や川とい ト体制である。中国は国家が全面的に衣食 住のサポートするのが大きな特徴である O った競技を行う環境がある学校へと限られ 競技者からすれば競技に集中でき、一握り てくる O その上で、一貫指導システムの構築 である国家代表を目指す大きな力になり、 が遅れていることもあり世界で通用するた 五輪での金メダルという目標に精進出来 めの日本国独自のシステム構築が必要であ る。しかし、一方で引退後や競技の道を外れ るO 特に閏際競技力向上の観点からも国家 た場合は、その後の生活において厳しい状 規模のタレント発掘システムの構築が必要 態になるのも確かである O 日本は、競技者に であると言えよう 対して、競技生活中は基本的に自己責任で O 中国の競技者育成システムは大きく 3つ ある O 金銭的なことから大会参加や日ごろ のレベルからなっていることがわかった。 のトレーニング、全てが自己責任で貫かれ 1)初級トレーニング形式 2) 中級トレー ている O しかしながら、引退後や競技を継続 ニング形式 3) 高級トレーニング形式 出来なくなった場合は、義務教育という制 これは低いレベルが高いレベルに従属す 度で基本的な勉学は培われているため次の るという管理システムであり、旧ソ連から 人生へのステップは行いやすいと考えられ 学んだ、ものであった。中国における競技者 る。以上のことが明らかになった O は国家が育て、国家の為に競技を戦い、その 成果は国家に帰することが原則となること 引用・参考文献 が大きな特徴である O そのために中国国家 1)曾凡輝.王路徳.耶文華他著.関岡康雄 は競技者に基本的な衣食住と豊かな練習環 スポーツタレントの科学的選抜J. 監修.I 境、指導者を提供する。最終目標はオリンピ 2 .1 9 9 8 道和書院 P ックであり、そこで金メダルを取って、中国 2 ) 国奏艇坊会中国奏艇坊会官方岡 ( 2 0 1 1. l0 ) の威光を世界に示すことである O 3 ) 和久貴洋, I ジ、ユニアからの選手発掘を 日本と中国の競技者育成システムを比較 r a s sR o o t s[ s a m p l e ] 国立ス 考える J G すると大きな違いは 2つあると著者は考え ポーツ科学センタースポーツ情報部. るO 2 0 0 3 一つは、世界に通用する競技者の輩出方 4 )J a s o nG u l b i n .I オーストラリアにおける 法である O 中国の競技者育成は三級制度を . JISS国際スポー タレント発掘モデル J 基本に、国家チームを目指し幼いころから 0 0 4 . P 1 3 .2 0 0 4 ツ科学会議 2 一貫した教育を受け、中国国家のためにオ 5 ) 勝目隆ら, I タレント発掘プログラムの リンピック金メダルを目指す。日本は、かな 必要性と可能性」種目転向プログラムの りの割合で競技者が中学・高校時代に運動 構築に関する基礎調査仙台大学紀要第 部に所属し、程度の差はあれ、チャンピオン 3 6巻第 2号. 2 0 0 5 シップ形式の大会に出場する経験を持って 6 )妻 洋 , I 中日スポーツ選手育成システム の比較からJ.現代中国事情 大学へ進学、もしくは企業で競技を継続す 1 2 2 第2 3号 中国と日本におけるボート競技者育成体制の比較研究 ( 2 0 0 9 .1 . 5 ) 7 )日本経済新聞.1 有望なジ、ユニアを発掘 J . 1月 2 9日朝刊. 2 0 0 4 8 )飯田 晴子 . 1オーストラリアにおけるタ r a s sR o o t s .国 レント発掘の取り組みJ.G 立スポーツ科学センタースポーツ情報 部. N o .1 . 2 0 0 3 9 ) 謝英2 1世会瑚我国克技体育管理体制与 話行机制比較研究.西安体育学院学技 2 0 0 2pl 11 4 1 0 )王氏侍,杵「樹,李貴成,嘆大利亜高水 平逗功員培葬体制調査研究,体育科学, 2 0 0 4p 1 7 1 9 1 2 3
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