(別紙様式4)推進校(高等学校) 完了報告書 <取組と成果のポイント> ・道徳教育を意識した教育活動ができるようになった。 ・全クラスで道徳の授業を実施したことで,全教職員が普段の授業のなかで道徳的価値を意識 するようになった。 1 推進校の概要等 学校名 広島県立尾道商業高等学校 2 校長名 小林 利幸 生徒数 連携校名 578 尾道市立栗原中学校 研究課題 共感する力や思いやりの心,協力し合う態度を育て,集団や社会の一員としての自覚と責任を 育む道徳教育 3 研究主題とその設定理由 【研究主題】 未来から現在を考え,将来の夢の実現を図る力の育成に向けた道徳教育の創造 ~道徳教育の全体計画の効果的な活用をとおして~ 【設定理由】 昨年度までの取組みで,全校生徒が参加する模擬株式会社尾商デパート(以下「尾商デパート」) でのお客様に対する姿勢,挨拶や身だしなみ,コミュニケーション能力など社会に通用する社会 性はほぼ身に付いている。本年度3回目となる尾商デパート開催に向け,今年度は自ら考えて行 動し,お客様に信用していただける商品を販売するために,生徒自身が信頼される人になること を目標とした。そのためには,普段の考え方や,生活態度が大事である。校外学習,クラス対抗 合唱祭,体育祭での3年生全員参加の創作ダンス,2年生修学旅行での進路別研修に積極的参加, 1年生インターンシップへの参加,生徒一人一人に役割を持たせ,責任を持たせることで,意識 を高めることができるのではないかと考えた。さらに今年度は新たに,各クラスでの店舗運営を 実施し,尾商デパートを本校の集大成の行事として位置づけ,他者と共感する力や思いやりの心, 協力し合う態度を育て,集団や社会の一員としての自覚と責任を育む道徳教育を確立したいと考 えた。 4 研究の概要及び特色 【尾商デパート全校説明会(4.30) 学校設定科目「尾商学」にて】 今年度取締役が全校集会で,第3回を12月6日 7日に開催することを発表した。あわせて,第2回 の振り返りを行うとともに,昨年度は学年を超えた 縦割りで店舗運営を行ったが,今年度第3回はクラ スごとの店舗運営で実施することや,デパート開催 の趣旨を全校生徒に説明した。 【摸擬株式会社・尾商デパート社是:SATISFY】 第3回尾商デパートの開催に向けて,取締役会議 で決定した社是「SATISFY(お客様に満足を)」 を発表した。第 1 回尾商デパートの社是「HOSP ITALITY(おもてなしの心)」に加えて,よ りよい接客をめざして取り組むことを提案した。 (後日,6.25 尾商学で再確認) 【全学年倉敷校外学習(5.2)】 生徒はグループごとにテーマを決め,店舗の魅力発見 や,商品陳列の仕方,お客様とのコミュニケーション方 法など,様々な視点から考察を行った。「倉敷の古い町 並みを活かした店舗が多くあった。私たちにも声をかけ てくださり,印象に残る接客だった。」といった感想が 聞かれた。 【セブンイレブンの経営から学ぶ (6.16)】 講師:セブンイレブン広島世羅町店 宮田 正己 様 ~セブンイレブンの経営から学ぶ」~ セブンイレブン基本四原則や店舗設計,効果的な陳列 方法をはじめ,ビジネスの心構えなど実演を交え御講演 いただき,生徒からは,「普段利用するコンビニに様々 な工夫や戦略があることを知って驚いた。」といった感 想が聞かれた。 【自転車乗車マナー法令遵守について作文(全校生徒対象)学校設定科目「尾商学」 にて】 1学期,地域の方から自転車の乗車マナーについて数件の苦情があり,全校集会を2回実施し た。規範意識の向上をめざし,自分自身を見つめさせた作文を書かせ,後日各クラスにて数名の 作文を紹介した。 “自転車の交通マナーの遵守について,200 字以上で,あなたの考えを述べよ。” <生徒の作文より> 自転車のマナーは絶対に守らなければなりません。もし事故を起こしてしまえば自分が苦しむ だけでなく,親,学校,加害者になってしまった人,自分の周りの人に迷惑をかけてしまいます。 もちろんとてもとても高額のお金も発生してしまいます。そうならないためにも普段から信号を 待つ,左側通行などの当たり前を徹底して少しでも自分の周りの人や関わっている人が悲しまな いように交通マナーを守りたいです。(2年生男子) 私は,自転車はすごく危険な乗り物だと思います。乗っている自分自身が事故に巻き込まれた り,逆に自分自身が相手を事故に巻き込んだりなど,被害者になることもあれば加害者になるこ ともあります。夜の無灯火運転はとても危ないし,並列で道路を走るのは,すごく迷惑です。自 分の身を守るため,相手へ被害を及ばせないため,自動車の運転者に迷惑をかけないため,絶対 に交通マナーは守るべきです。私もきちんと守ろうと思います。(2年生女子) 【道徳教育 教職員研修1(7.25)】 講師:大阪教育大学 名誉教授 藤永 芳純 先生 ~「高等学校における道徳教育の推進について」~ 年間を通して,御指導いただく藤永先生を講師にお迎 えし,全教職員を対象に道徳教育用教材の紹介とその 実践例についての内容であった。教職員からは「道徳 の読み物資料の利用の方法が分かった。」「道徳の授 業の進め方がイメージできた。」といった感想が聞か れた。 【8 月 「7.25 研修まとめ資料」「道徳の全体計画」教職員全員へ配付】 「7.25 研修まとめ資料」より 『高等学校における道徳教育はどうあるべきか』について ・現時点では教育活動全体を通じて行うことになっている。 ・生徒指導は言葉や行動に対して ⇒ 道徳教育は「こころ」(=道徳的実践力)に対して。 ・教科の中では“分かる授業”の保障・・・「分かる」ことの喜びが感じられる授業を。 ・生徒理解をする⇒生徒一人一人の学習状況や課題,家庭状況,未来への願いを知ってサポート する。 ・生徒一人一人が受容されているという実感を持てるように,行うこと。 ・生徒指導は次の3点に留意して行うこと。 ①生徒に自己肯定感をもたすこと。 ②共感的な人間関係を育成すること(生徒対教員,生徒対生徒)。 ③自己決定の場を与え,自立の可能性の開発を援助すること。 ・ 9 月 16 日 商業科会議 「駐車場の管理人」 指導案検討会 ・ 9 月 18 日 学年会 ・10 月 11 日 体育祭 3学年全員参加 各クラス創作ダンス発表 ・10 月 18 日~20 日 1学年 インターンシップ合宿(みろくの里) ・10 月 22 日~24 日 2学年 修学旅行(大学見学,イオンモール幕張見学,リーガロイヤル 「駐車場の管理人」 指導案検討会 ホテル実習,YONEX訪問,TAU販売実習) 【道徳教育 教職員研修2「模擬授業」実施(10.30)】 全教職員で模擬授業を行った。模擬授業の前には, 全体計画を配付し,各学年の重点目標を再度確認し た。 感想では,「生徒の思いを引き出していくにはど うするか。」や「これまでの学習内容に,いかに結 び付けられる展開にするか。」といった声が聴かれ, 真剣な協議が行われた。 ・11 月 10 日 「研究授業」学習指導案検討会(各学年別) 【道徳教育 公開研究授業実施(11.14)】 全学年全クラスでホームルーム活動の時間を使って道徳の授業を実施した。 「読み物資料」 1年生 「夜のくだものや」(偕成社刊「小さな町の風景」) 2年生 「駐車場の管理人」(きこ出版「どんな仕事も楽しくなる3つの物語」抜粋) 3年生 「夢はみんなでかなえるもの」(きこ出版「仕事が感動であふれる5つの物語」抜粋) <授業のねらい> 尾商デパート」開催に向けて,「真心・信頼」とはどういうものかについて,深く考える。「真 心・信頼」が尾商デパートでも基本になることに気付かせる。ペアワークを通して,自分の考え を相手に伝え,また,相手の考えを理解する。 <生徒の感想より> ・仕事に対してやりがいを求めて,それを考え,自分から行動に起こしたりすると,お客様にも いろいろなことが伝わるし,それが自分に返ってくるのだと感じた。 ・管理人さんの謙虚な姿勢は,誰にでもできることではないと思う。自分がしたくないことはい っぱいあるが, つまらないと思うものでも自分の工夫次第で楽しくなることを知れてよかった。 ・自分と他人との関係は,自分が他人をどう思い,どう接するかによって決まるものだと聞いて 本当にそうだなと思った。冷たく接している人からは支援されないと思うし,信頼関係も生ま れないと思うので, 相手を評価したり批判したりするのではなく,相手のために何が出来るのか を考えるようにしたいと思った。 ・私は,今まで人間関係をうまく保つことが苦手でした。それは,自分が相手を評価するばかり で相手のことをよく考えていなかったのがいけなかったと思った。これからは,もっと相手を 支援していきたいと思う。 『道徳をやることの4つの効果』 (藤永先生の講話より) ①授業規律が確立できる。落ち着いた態度になる。 ②学習の意味を考え,人としての生き方の意味を学べる。 ③真理真実を学びたいという心や探究心が育つ。知ったかぶりをしない誠実さも育つ。 ④向上心や学習意欲が上がり,成績が上がる。 ・12 月 16 日 17 日 尾商デパート開催 ・12 月 18 日 尾商デパート振り返り①尾商学にて ・12 月 17 日 尾商デパート振り返り②尾商学にて ・12 月 10 日 学習成果発表会 5 平成 25 年度からの生徒意識調査結果より「そう思う」の数値抜粋 研究の評価 <分析> 1年生は,体育祭,インターンシップ合宿,尾商デパートの行事への主体的な参加を通して尾 商生として自覚を深めさせることを目標としている。“自分にはよいところがある”の質問項目 では,年度当初 31.3%であった数値が,12 月には 20.0%と 11.3 ポイント減少している。しかし ながら,“ホームルーム活動などでは互いを信頼して話し合い,励まし合ってよりよい学級生活 をつくろうとしている”の数値では,44.7%から 55.8%と 11.1ポイント増加している。この数 値から,学級内でクラスメイトとの信頼関係ができ,互いに尊重し合いながら高め合える人間関 係ができつつあると推測できる。また,“ホームルーム活動などでは,ほかの人の考えを聞きな がら自分のことについてよく考えている”の数値では 47.2%から,44.2%と 3.0 ポイント減少し ており,自分のことについて考えたり,自分の考えを相手に伝える時間をホームルーム活動等で 取り入れ,生徒の自己肯定感を高めていく必要があると考える。 2年生は,入学時の 25 年度当初“将来の夢や目標を持っている”43.7%であったのが,26 年 度当初 36.1%となっており,7.6 ポイント減少しているが,尾商デパート実施後のアンケートで は,41.1%と5ポイント回復した。2年生では,将来の目標を見失っている生徒が増加している と考えていたが,1,2学期の取組を通して 12 月には将来の夢や目標を持ち,進路決定に向けて 準備を進めている生徒が増加しつつあると考えられる。3年生の進路決定に向け,継続した指導 を行っていく。 2年生では体育祭や「尾商デパート」の学校行事では,中堅学年としての自覚を持たせ,生徒 自ら積極的に行動できることを目標としている。“学校行事などにおいて学校の一員としての役 割や責任をしっかりと果している”の質問項目では入学当初 31.5%であったのが,2年生の 12 月には 54.5%と 23 ポイント増加しており,各自の役割を果たせる態度が育成されている。“自 分にはよいところがある”の質問項目では入学当初 16.2%であったのが,2年生の 12 月には 25.4%と 9.2 ポイント増加し,“ホームルーム活動などでは,ほかの人の考えを聞きながら自分 のことについてよく考えている”の数値は入学当初 25.9%であったのが,2年生の 12 月には 51.3%と 25.4 ポイント増加し,“ホームルーム活動などでは互いを信頼して話し合い,励まし合 ってよりよい学級生活をつくろうとしている”の数値では,入学当初 27.9%から 57.7%と 29.8 ポイント増加している。これらの結果から,クラスでの信頼関係が深まり,生徒それぞれが自分 を安心して出せる雰囲気が醸成されていると考えられ,主体的にホームルーム活動等に参加して いる態度が育成されている。 3年生は,2年生の年度当初“人の役に立つ人間になりたい”の数値が 69.3%であったのが, 3年生の 12 月には 87.5%と 18.2 ポイント上昇している。また,2年生の年度当初“ホームルー ム活動などでは互いを信頼して話し合い,励まし合ってよりよい学級生活をつくろうとしている” の数値が 20.3%であったのが,3年生 12 月には 63.6%と 43.3 ポイント増加した。これらのこと から「尾商デパート」をはじめとする学校行事等への積極的な参加により,他者と共感する力や, 協力し合う態度が育成され,集団や社会の一員としての自覚と責任を果たそうとしている生徒が 増えていることが伺える。最高学年として,「尾商デパート」では,生徒多くが自分の仕事の中 身を理解し,確実にやり遂げた結果,このような成果が出たのではないかと考える。 最後に,“あなたをよくわかってくれる先生がいる”の質問項目では,3年生は 28.6 ポイント 増加,2年生は 15.6 ポイント増加しているが,1年生では,9.7 ポイント減少している。教職員 全体で,特に1年生への生徒理解を深めることが課題である。また,本校生徒の自己肯定感を育 むために,安心して生徒が自分の考えを言えるクラスの雰囲気作りや,検定合格の全校集会での 表彰,まじめに頑張って取り組む生徒への教員の声掛け,今後も継続して学校全体で取り組んで いくことが課題であると考える。 <道徳を推進していくうえで良かった点(教職員アンケートより)> ・生徒が立ち止って仲間や自分を振り返る時間ができた。 ・指導案検討にて,どうやったら生徒に教員の思いが伝わるか学年会や全体で施行することがで きた。 ・いつも自分のことばかり主張する生徒たちだが,他者との関わりについて考える姿を授業で見 ることができた。 ・尾商デパートの準備では,生徒が互いによく話し,物事を決めていた。 ・道徳教育を意識した教育活動ができるようになった。 ・論語(国語科)の授業では,生徒が例年になく真剣に考える姿が見られた。
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