経営者以外の第三者の個人連帯保証の制限

【金融】
◇経営者以外の第三者の個人連帯保証の制限◆
株式会社などの法人が金融機関から借入をする場合,しばしば,連帯保証人を付ける
よう要求されます。
実際に,会社の経営者が,個人としても連帯保証人となっているケースが多いと思わ
れます。
しかし,金融機関によっては,会社の経営者以外に,会社の経営に関与していない第
三者を連帯保証人にするよう求めることがあります。
このようなケースは,以前にはかなり幅広く見られたようですが,近時は,社会的な
批判が高まり,金融機関に対し一定の制限が求められるようになっています。
具体的には,①立法による制限の動き,②行政官庁の監督による制限の動き,があり
ます。
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立法による制限の動き
このような流れの一つとして,民法(債権関係)改正の動きがあり,平成27年2
月末現在では,法制審議会による「民法(債権関係)の改正に関する要綱案」が公表
されている段階です。
今後法改正が成立すれば,保証人保護の方向で一定のルールが追加される見込みで
すが,現時点ではいまだ流動的な状況です。
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行政官庁の監督による制限の動き
もう一つの流れとして,金融機関を監督する行政官庁による監督指針の改正があり
ます。
金融庁は,平成22年12月24日付で「金融資本市場及び金融産業の活性化等の
ためのアクションプラン」を公表しました。
その中では,「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資
慣行を確立し,」という方針が宣言されています。
そして,金融庁は,平成23年7月14日,「主要行向けの総合的な監督指針」「中
小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」「金融検査マニュアル」を改正し,「経営
者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立等」とい
う項目を設けました(原文は,金融庁のWebサイトから入手可能です)。
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金融庁の監督指針の内容
これらの監督指針等の中では,次のような方針が定められています。
・個人連帯保証契約については、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めな
いことを原則とする方針を定めているか。
・また、方針を定める際や例外的に経営者以外の第三者との間で個人連帯保証
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契約を締結する際には、必要に応じ、「信用保証協会における第三者保証人徴求
の原則禁止について」における考え方を踏まえているか。
・特に、経営者以外の第三者が、経営に実質的に関与していないにもかかわら
ず、例外的に個人連帯保証契約を締結する場合には、当該契約は契約者本人に
よる自発的な意思に基づく申し出によるものであって、金融機関から要求され
たものではないことが確保されているか。
上で言及されている,信用保証協会での取扱いとは,次のような内容です(中小企
業庁・平成18年3月31日付「信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止
について」より)。
・中小企業庁では、信用保証協会が行う保証制度(略)について、平成 18 年度
に入ってから保証協会に対して保証申込を行った案件については、経営者本人
以外の第三者を保証人として求めることを、原則禁止とします。
・ただし、下記のような特別な事情がある場合については、例外とします。(中
略)
1.実質的な経営権を有している者、営業許可名義人又は経営者本人の配偶者
(当該経営者本人と共に当該事業に従事する配偶者に限る。)が連帯保証人とな
る場合
2.経営者本人の健康上の理由のため、事業承継予定者が連帯保証人となる場
合
3.財務内容その他の経営の状況を総合的に判断して、通常考えられる保証の
リスク許容額を超える保証依頼がある場合であって、当該事業の協力者や支援
者から積極的に連帯保証の申し出があった場合(ただし、協力者等が自発的に
連帯保証の申し出を行ったことが客観的に認められる場合に限る。)
つまり,金融庁の監督指針の考え方は,経営者以外の第三者による個人連帯保証は
原則として禁止とし,例外的に経営者以外の第三者である個人が連帯保証人になる場
合には,書面による厳格な意思確認を求めるもの,ということができるでしょう。
また,監督指針は,金融機関の内部管理体制に疑義や問題がある場合には,必要に
応じて報告を求め,業務運営の適切性,健全性に重大な問題があると認められる場合
には,業務改善命令を発する,としています。
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経営者以外の第三者の個人連帯保証を求められた場合の対応
金融庁の監督指針は,あくまで金融庁が金融機関に対する監督の方針を公表したも
のにとどまります。
したがって,監督指針には,法律上,金融機関と会社・経営者・経営者以外の第三
者との間の契約関係を直接制限する効果はありません。
しかし,金融機関にとって,金融庁の監督・検査が持つ意味は,決して小さいもの
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ではありません。
したがって,金融機関から,会社の経営者以外の第三者の個人連帯保証を要求され
た場合には,「金融庁は,経営者でない第三者の個人連帯保証は,原則として要求しな
いようにするべき,としているのではありませんか。」等と尋ねて,詳しい説明を求め
てみるべきでしょう。
なお,金融庁と各地の財務局が,「金融モニタリング情報収集窓口」を設置して,金
融機関についての情報提供を受け付けており,匿名での情報提供も可能となっていま
す。
(注)本コラムは,個別の事案についての結論を保証するものではありませんので,具
体的な事案について疑問がある場合には必ず専門家にお尋ねください。
〒848-0041 佐賀県伊万里市新天町615-1
弁護士法人いまり法律事務所 弁護士 圷悠樹(佐賀県弁護士会所属)【文責】
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