2014 年ベトナム経済 2015 年 2 月 在ベトナム日本国大使館・経済班 (注)本資料の記載情報は、信頼できると考えられる情報源等をもとに作成しておりますが、その正確性・完全性 を保証するものではありません。また、記載された数値、意見、予測等は、作成時点のものであり、今後予告なく 変更されることがあります。 1 経済成長の動向 2014年経済成長率は 5.98%増(速報推計値)であり、ベトナム政府の当初目標である「5.8%」は 達成される見込み。2014年の経済成長率は、直近3年間で最高水準となっており、ベトナム経済が わずかながらも回復基調にあることがうかがえる。 2014年の高水準の経済成長は、外国資本を中心とした製造業(対前年比 8.45%増)が牽引したも のであり、ベトナム経済が持続的・安定的な成長を確実なものとするためには、個人消費を中心とした 内需面での力強い回復が待たれるところである(個人消費について、対前年 6.3%増とやや回復しつつあ る) 。 なお、2015年の経済成長率については、世界経済の回復による好影響を勘案し、2014年より も高い水準の政府目標(6.2%)が設定されている。 2 物価等の動向 年間通じてインフレの抑制に成功したと言える。CPI 上昇率は年平均 4.09%増(速報値)となり、ベ トナム政府の当初目標である「7%以下」は達成される見込み。 インフレ抑制に成功した背景には、食料品等の価格上昇や医療・教育等の行政サービス提供にかかる コストの値上げが抑制されたこと等だけではなく、住宅・建設資材の需要が弱く価格上昇が抑えられた ことも要因の一つであると認識されている。 さらに、2014年下半期の国際的な原油価格の下落は、石油関連製品の輸入コストの低減という形 で、ベトナム国内の各セクターでのエネルギーコストの低減に寄与したとも言われている。 消費者物価指数の推移(対前年同月比,%) 経済成長率と消費者物価上昇率の推移(%) 8 30 25 7.5 25 20 7 20 6.5 15 15 6 10 5.5 5 10 5 5 0 0 4 2005 2006 2007 2008 2009 実質GDP成長率(左軸,%) 2010 2011 2012 2013 Jan-08 Apr-08 Jul-08 Oct-08 Jan-09 Apr-09 Jul-09 Oct-09 Jan-10 Apr-10 Jul-10 Oct-10 Jan-11 Apr-11 Jul-11 Oct-11 Jan-12 Apr-12 Jul-12 Oct-12 Jan-13 Apr-13 Jul-13 Oct-13 Jan-14 Apr-14 Jul-14 Oct-14 4.5 2014 物価上昇率(右軸,%) 1 財貨・サービスの小売販売動向(兆ドン) 製造業における生産指数・在庫指数の上昇率 (対前年同月比,%) 300 30 25 250 20 200 15 10 150 5 100 50 -10 Jan-13 Feb-13 Mar-13 Apr-13 May-13 Jun-13 Jul-13 Aug-13 Sep-13 Oct-13 Nov-13 Dec-13 Jan-14 Feb-14 Mar-14 Apr-14 May-14 Jun-14 Jul-14 Aug-14 Sep-14 Oct-14 Nov-14 Dec-14 0 -5 -15 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 0 商業 ホテル・レストラン 観光 生産指数 サービス 2013年 在庫指数 2014年 インフレ上昇率が抑制的に推移したことで金融緩和の余地が拡大し、2014 年 3 月、リファイナンスレート及び ディスカウントレートはそれぞれ 0.5%ずつ引き下げられた。また、銀行貸出残高の増加率は前年比 12.6%増(速 報値)となり、政府目標(12%~14%増)は達成される見込み。 政策金利の動向(%) 16 14 12 10 8 6 4 2 Jan-09 Apr-09 Jul-09 Oct-09 Jan-10 Apr-10 Jul-10 Oct-10 Jan-11 Apr-11 Jul-11 Oct-11 Jan-12 Apr-12 Jul-12 Oct-12 Jan-13 Apr-13 Jul-13 Oct-13 Jan-14 Apr-14 Jul-14 Oct-14 0 貸出基準レート リファイナンスレート ディスカウントレート 3 為替の動向 2014年6月、対米ドル公定レートを1%切り下げたものの(1米ドル=21,036 ドンから 1 米ドル=21,246 ドン)、 それ以降は、それ以上の公定レートの切り下げを行わないと表明した国家銀行が市場介入(米ドル売却)を継続 したことで、ドンの対米ドル相場が支えられ、為替は安定的に推移した。 VND/USD為替レートの推移(2014年) VND/USD為替レート(2010年1月以降) 21,500 21,400 21,300 21,200 21,100 21,000 20,900 20,800 22,000 21,000 20,000 19,000 1.02 1.15 2.07 2.20 3.05 3.18 3.31 4.14 4.25 5.14 5.27 6.09 6.20 7.03 7.16 7.29 8.11 8.22 9.08 9.19 10.02 10.15 10.28 11.10 11.21 12.04 12.17 12.30 18,000 Jul-14 Oct-14 Apr-14 Jan-14 Jul-13 Oct-13 Apr-13 Jan-13 Jul-12 Oct-12 Apr-12 Jan-12 Jul-11 Oct-11 Apr-11 Jan-11 Jul-10 Oct-10 Apr-10 Jan-10 17,000 インターバンク(公定価格) VND/USD為替レート 店頭価格(Selling, Vietcombank) 2 4 国際収支(貿易収支)の動向 ベトナム政府の発表によれば、2014年の貿易収支は約20億米ドルの黒字となる見込み(速報値)。2012 年以降、三期連続しての貿易黒字の維持は、経常収支の改善に与える影響が大きく歓迎されるべき結果である と言える。 今般の貿易黒字は、外国資本による携帯電話等電子機器の輸出が大幅に増加したことによるところが大きい と言われており、外国資本の輸出力に過度に依存する貿易構造の改善までには至っていないところに留意する 必要がある。 したがって、今後、ベトナム内需の拡大局面において、原材料、中間財、資本財等の輸入が増加することがあ れば、再び貿易「赤字」体質に戻ってしまう懸念も残っており、外国資本の輸出に過度に依存しないための国内 基幹産業の育成が喫緊の課題である状況に変化はないと言える。 主要国・地域との貿易額推移(億ドル) 貿易額の動向(億ドル) 1502 1480 1600 1400 1200 600 1145 1138 1068 969 1000 800 700 1321 1321 500 848 722 700 571 400 600 300 400 200 7 200 21 0 0 2009 -200 2010 2011 -126 -129 2012 2013 2014 100 -98 0 -400 2009 輸出 輸入 2010 貿易収支 輸出額推移(億ドル) 2011 2012 2013 中国 ASEAN EU 米国 韓国 日本 2014 輸入額推移(億ドル) 1600 1600 1400 1400 1200 1200 1000 1000 800 800 600 600 400 400 200 200 0 0 2009 2010 越企業 2011 2012 外資企業 2013 2014 2009 輸出 2010 越企業 3 2011 2012 外資企業 2013 輸入 2014 主要輸入元(億ドル) 主要輸出先(億ドル) その他, 249.6 EU, 288.7 中国, 438.7 その他, 439.6 EU, 104.9 台湾, 110.8 米国, 286.6 日本, 147.0 ASEAN, 230.0 中国, ASEAN, 149.1 190.9 日本, 129.1 韓国, 217.4 5 対ベトナム直接投資の動向 2014 年の対ベトナム直接投資額(認可額ベース、新規及び追加投資案件の合計)は、前年比 6.5%減の約20 2億米ドルとなる見込み(速報値)。新規案件は前年に比べて増額している(前年比 9.6%増)ものの、追加投資 案件がそれを大きく上回る形で減額した(同 37.4%減)。 投資分野では、例年どおり、製造業が全体の 7 割以上(金額ベース)を占めている。また、主な投資元国・地域 は、韓国が 73.2 億米ドル(36.2%)、香港が 30 億米ドル(14.8%)、シンガポールが 27.9 億米ドル(13.8%)となっ ており、日本は 20.5 億米ドル(10.1%)で四番目となった。 2014 年の日本からの対ベトナム直接投資については、認可件数(速報値 436 件)については 2013 年に比べ減 少したものの 2012 年の水準(444 件)は維持している。また、認可金額(20.5 億米ドル)は、直近 5 年間で最も少 なかった 2010 年の 23.9 億米ドルをした下回る結果となっている。この背景には、大規模製造業の認可件数・金 額の減少があると言える。 他方、外資規制緩和の影響もあってか、物流業関連の認可件数が対前年で増加するなど、生産拠点としての ベトナムに着目した投資のみではなく、マーケットとしてのベトナムに着目した業種による対ベトナム直接投資と いう新たな傾向が見られる結果となっている。 2014 年の超大型直接投資案件(投資認可額 10 億米ドル以上)は次のとおり。 ① サムスン電子【電化製品製造・組立】(韓国、30 億米ドル、追加) ② サムスン家電【ハイテク電子設備等】(シンガポール、14 億米ドル、新規) ③ デワンインターナショナル【観光開発】(香港、12.5 億米ドル、新規) ④ サムスンディスプレー【スマートフォン用ディスプレー製造・組立等】(韓国、10 億米ドル、新規) 直近数年間、韓国からの直接投資の伸びが大きく、直接投資残高(認可額ベース)においても、韓国が 372.3 億米ドルと最大の投資元国となった(日本は、368.9 億米ドルで韓国に次ぐ二番目)。なお、韓国からの直接投資 の多くは、サムスングループに関連する案件であると言われている。 4 2014年主要投資国・地域(億ドル) 対越FDI動向(億ドル) 700 37 600 その他, 38.7 500 韓国, 73.3 400 603 300 200 100 台湾, 11.8 26 51 14 31 187 163 172 2009年 2010年 52 116 79 2011年 2012年 74 46 143 156 2013年 2014年 日本, 20.5 シンガポー ル, 28.0 0 2007年 2008年 新規認可額 総額202.3億ドル 香港, 30.0 追加認可額 累積投資認可額(2014年12月15日現在,単位:億ドル) 韓国 日本 シンガポール 台湾 英領バージン諸島 香港 米国 マレーシア 中国 タイ 372.3 368.9 327.5 284.0 179.9 154.6 109.4 107.7 79.5 66.9 0 50 100 150 5 200 250 300 350 400
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