ロシアのクルミア併合以後、ウクライナのドネツク州、ルガンスク州では親

ロシアが抱えたウクライナ問題とは
「直面している問題の多くは海外に端を発している。
」
ロシアのクルミア併合以後、ウクライナのドネツク州、ルガンスク州では親ロシア派武装
集団が人民共和国の独立宣言を行いロシアへの編入を求めています。
もともと帝政ロシア時代はこの地域をノボロシアと呼び、ウクライナではなかったのです。
その後ロシアは様々な理由からこの地を失い、そのころのロシア人はその地に残りました。
ロシアが併合したクルミア自治共和国は人口が240万人、その内の6割がロシア人です。
2014年3月に住民投票が行われロシア編入に 96.7%の賛成票が投じられました。この
住民投票には不正があったと言われているのも事実です。また、ロシアがクルミアを併合
した時点でウクライナの市民たちは抵抗しませんでした。ロシア国民にとっても1954
年にフルシチョフがクルミアを気まぐれで手放したというロシア国民にとっては未消化の
事実もあります。
しかし一方のノボロシアのロシア編入に対してはクルミアとでは事情が全く異なります。
ロシア系住民は39%に過ぎませんし確かにドネツク州やルガンスク州は親ロシア派政権
でロシア語を話す人は75%もいます。2014年10月の世論調査によれば49%がウ
クライナにのこり、42%はロシア編入を希望していますが、ドネツク州、ルガンスク州
では住民投票も行われていません。2014年11月にウクライナのポロシェンコ政権は
特例としてこの地域に12月7日に独自の選挙を認めましたが、親ロシア派武装集団は強
硬的手段をとりました。この状況の中でロシアが併合などすれば、世界の反発をかい制裁
などの大きなリスクを強いられることをプーチン・ロシアは理解しています。実際にEU
は経済制裁を行い、米国議会は武器をウクライナに供与する支援することを決めました。
ウクライナとロシアの関係で重要なことの一つにウクライナは自国で消費する天然ガスの
約9割をロシアから輸入し、その代金の滞納は55億ドルが現在も未払いとなっています。
ロシアの天然ガス国家独占体「ガスプロム」とウクライナの国営企業「ナフトガス」の間
にも政権が親ロシア派か親欧州派かで価格条件が変わるなどで国際仲裁裁判所に要求を出
しております。石炭も世界的な規模ドネツク炭田は親ロシア派が抑え、火力発電の石炭も
アフリカから輸入するという事態になっています。原子力発電4基も同様に核燃料の供給
側はロシアでウクライナは電力供給量の45%を原子力発電に依存しています。
2国間には歴史的経緯や化石燃料が国の外交的手段に利用されるなど、さまざまな内包さ
れる問題の総ては解りませんが、両国間で早期にこれらの問題を含め協議し解決をしてほ
しいと願うばかりです。他国による武器の供与、経済制裁か両国に良い影響を当てられる
のでしょうか、終焉した東西冷戦の枠組みで視ることは避けた方が良いと思います。
原油価格とロシア経済について
ロシアは国営企業である石油・天然ガス関連企業に大きく依存しています。化石燃料は連
邦予算の半分、輸出額の約60%に寄与しています。政府は多くのエネルギー企業に出資
し、政府が支援する銀行による融資でこれらの企業と間接的な結びつきも有しています。
過去 6 カ月間に原油価格はほぼ半分に下落しました。12 月半ばには 60 ドルを割り込んで、
金融危機以来の最安値に落ち込みました。原油価格の下落は、ルーブルを下落させ国内の
インフレを加速させました。
12月9日付けモスクワタイムスには楽観視した原油価格とロシア経済のプーチン見解が
掲載されたが、12 月 15 日、ブレント原油がわずか1%の値下がりしただけなのに対し、ル
ーブルは対ドルで 10%も値を下げました。1998年のルーブル暴落以来最大の下落とな
りました。直ぐさま深夜にロシア中央銀行は為替市場に介入し 6.5%の利上げ、20 億ドル(約
2400 億円)のルーブルを買いましたが、この巨額の介入も深夜の利上げも、効果は奏せず
に 12 月 16 日にはルーブルはさらに 11%値下がりしました。
何がこの危機の加速をもたらしたのは単純明確な答えはありませんが、ガスプロムやロス
ネフチなど巨大な国営エネルギー企業が資金調達を行ったことは理由の1つでありましょ
う。これらの企業は信頼性の高いドルの稼ぎ手であったが、事実はロスネフチは巨額の対
外債務を抱えており、ドルで利払いや返済をしなければいけません。
ロスネフチは 12 月 12 日、同日のロシア国債の利回りをも下回る利率で 110 億ドル(1
兆 3300 億円)に上るルーブル建て社債を発行しました。ロシア中央銀行はすぐに、この社
債をローンの担保として受け入れると発表しました。
これを国の債務と企業の債務を混同するものであると懸念する声もあるなか、ロシア政府
は、2015 年末までに約 1150 億ドル(約 13 兆 8060 億円)のドル建て債務が満期を迎えて
いる。この背景のなかでロシアがウクライナで戦争を煽ったことに米国と欧州連合(EU)
が多数のロシア企業に経済制裁を科しました。結果、これらの企業は海外での資金調達が
困難になっています。さらに米国議会は 12 月 12 日、ウクライナ軍に武器を供給すること
で合意しました。欧米諸国はさらなる経済制裁を視野に入れているようですが、これによ
り戦争がさらに激しさを増す可能性が高まったとおもわれます。
2014年12月8日の早朝、1ドルは60ルーブル、同日4時には65ルーブルに翌日
の朝には更に68ルーブルとなった。このまま下落が進めばロシア国内は更なるインフレ
と同時に賃金も下がることは容易に理解できるとおもいます。天然資源依存から脱却をす
すめるプーチン政権にとっては、この問題が海外から端をはしているだけに米国、欧州連
合はこれら問題に知見をもった理解と英断が必要ではないでしょうか。
文責OMD