中古住宅ローンの借り手を阻む クレジットの壁 SAREX News 2015 年 4 月 金融庁が金融機関検査に入るという。空前絶後の住宅ローン金利競争に、金融システム の健全性への懸念を抱いたものらしい。何を考えている、金融庁。 アベノミクスの異次元の金融緩和は、富裕層にはキャピタルゲインを、無産者には0% ローン金利を。あまねく万民に福をもたらす御心である。 金融機関を糺すとしたら、貸したいのに貸せない、借りたいのに借りられない、債権融 資という住宅金融の根源的な仕組みそのものであろう。中古住宅・リフォーム市場の成長 期待への阻害要因の1つと名指しされても仕方がないほど、中古住宅ローンは生彩に欠け る。担保不足が最大のネックとなる中古住宅ローン。830 万戸からさらに積み上がる空き 家の問題。金融ソリューションは解法を有しているのだろうか。 実は、中古住宅ローンは独立したカテゴリーがあるわけではなく、0.5%近傍にある最低 金利変動型ローンでも新築と中古は同列に適用される。ただし、新築と中古では建物担保 評価額が大きく異なり、中古住宅購入者は新築購入者より相対的に高い個人信用力を要求 される。 建物の担保評価額は新築で 100~120%、中古は 70~0%である。つまり国が盛んに後 押しをする中古住宅購入+大規模リフォームのような案件の住宅ローンこそ、個人信用力 が担保そのものとなる。 中古住宅ローンに厳しい融資姿勢で臨む金融機関にも一理ある。それは固定資産税評価 だ。床面積が増加する増築工事は増税評価し、改築改修工事は据え置きとなる定量評価法 に従えば、長期優良住宅化リフォームといえども担保評価が変わらないことになりかねな い。 ■リノベマンションは価値 再販戸建ては価格■ 中古住宅ローンの最大かつ最優良顧客層は現在のところ中古マンションである。消 費税の駆け込み需要が終わり、資材費と労務費の高騰だけが残る新設マンション市場 は、分譲価格の上昇と生活者の取得能力との乖離 が広がり新規供給は急減した。その結果、従前か ら人気を集めていた中古マンションは需給関係か ら価格が上昇し、住宅価値(ホームエクイティ) の増高の好循環サイクルに入っている。 担保価値の上昇は住宅ローンにも有利に働き、 購入価格に加えリノベーション費用までも融資 価格上昇でホームエクイティが発生。ReBITA の マンションリノベ(ReBITA ホームページより) 額として評価されることも珍しくはない。 「マンションリノベ」という言葉が定着するほど中古マンション購入とリノベーシ ョンは人気が高騰している。マンションリノベは新築価格の 8 割程度と、収益還元法 ではじいた投資利回りが高い。つまり再々販売価値が見込め、賃料収益も計算できる 担保要件を具備している。マンションリノベが成立する理由は、①立地利便性、②流 通性、③標準性、④区分所有などの市場が要求する担保価値の優先項目を満たしてい るからだろう。 資産となる家のステイタスを固めつつあるマンション。では、累積が進む中古戸建 て対応策はいかに。 泉州河内の大手住宅会社フジ住宅の戸建て再販ビジネスモデルに解の1つを求める ことができる。再開発プロジェクトが奏功し、ひと頃に比べればナベ底からの脱出感 が強まってきた大阪経済圏ではあるが、中小企業の街・大阪府民の所得水準は厳しい ままだ。住宅コストパフォーマンスニーズがとりわけ高い南大阪地方でヒットした商 品がフジ住宅の買取再販モデルである。 同社はリフォームを必要最小限に留めて再販価格を抑え、価格魅力への高い顧客支 持を獲得している。買取再販住宅の中心取得層は相対的低所得層であり、普通ならば ローンアウトが続出する。 そこで審査を通すテクニックの1つである提携ローン効果が発揮される。同社の買 取案件はとにかく立地魅力に優れているとされる。加えて物件の眼効き力、一部上場 の信用力、地域流通市場への影響力など、提携住宅ローンを可能とする条件を備えて きた。金融機関としても下手にリフォームを行い物件価格を上げるよりも、土地担保 評価と販売価格の乖離が少ない方が担保評価的には望ましい。一定期間住みつぶした ら売却、もしくは建て替える。使用価値へのローン付けも中古住宅ローンのリアリテ ィである。 ■既存住宅の長期優良住宅に係る認定基準策定で中古住宅ローンは変わるのか■ 2015 年国土交通省告示が予定される既存住宅の長期優良住宅に係る認定基準は、現 在行われている長期優良住宅化リフォームの S 基準がほぼ踏襲され認定制となり、A 基準は性能評価機関の適合証明発行に落ち着く模様だ。登録免許税や不動産取得税な ど住宅減税対象となるのは S 基準のみとなる(ローン減税に変更はなし) 。告示を先 取りするかのように住友不動産の大規模リフォーム“新築そっくりさん”では全棟長 期優良住宅化リフォーム S 基準を適用としている。 地方公共団体は長期優良、認定低炭素、そして既存住宅の長期優良などの住宅認定 制度で個人資産との関係を深める形になってきている。税制優遇を設けてまで認定住 宅の普及に努める以上に、将来の資産価値の上昇、そして固定資産税増収が期待され ているものと考えられる。 既存住宅の長期優良認定で、中古住宅担保価値評価が始まるのか。そして住宅金融 は、中古流通市場への信用創造の真価を問われことになる。
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