平 成 2 1 年 9 月 九州産業保安監督部 電 力 安 全 課 ⅱ.平成20年度電気事故報告の概要について はじめに 「電気」は、あらゆる社会活動の基盤となるエネルギー源として、今や私たちの家庭生活や産 業活動にとって、欠くことのできないものです。 インターネットをはじめとした様々な情報通信機器や家事支援のための各種電気製品が急速に 普及しており、「電気」はこれからも私たちの生活のすみずみまで行きわたっていくものと思わ れます。 このように、身近で大切なライフラインである「電気」であるがゆえに、事故による感電、火 災及び停電などによる社会的な影響は一層大きくなっています。電気設備の保安に携わっている 方々の努力にもかかわらず、残念ながら電気事故は毎年発生しています。 そこで、電気事故の実態をお知らせすることで、電気事故の未然防止に役立てていただくため に、電気事業法第106条(電気関係報告規則第3条)の規定に基づき、平成20年度に九州産業 保安監督部に報告のあった電気事故の概要を取りまとめました。 平成20年度電気事故報告の概要 平成20年度の九州管内における電気事故の総件数は50件で、前年度と比較すると電気事業 用の件数は減尐しましたが、自家用の件数は増加しているものの、総件数では前年度を下回りま した。 電気事故の種類別(第1表参照)で前年度と比較すると、感電以外死傷(アークによる火傷) は増加しており、感電死傷事故、破損事故及び波及事故の件数は減尐しています。また、電気火 災、供給支障及び異常放流の事故の発生はありませんでした。 第1表 平成20年度電気工作物の種類別事故件数 電気事業の 区分 自 家 用 計 用に供する 種類 電気工作物 (事業用電気工作物) 電気工作物 感電死傷 1 (4) 5 (3) 6 (7) 感電以外死傷 0 (0) 2 (1) 2 (1) 電気火災 0 (0) 0 (1) 0 (1) 破 損 3 (6) 8 (11) 11(17) 供給支障 0 (1) - 0 (1) 波 及 - 31(38) 31(38) 異常放流 0 (0) 0 (0) 0 (0) 計 4 (11) 46(54) 50(65) (注)( )内は前年度の件数です。 - 105 - 1.感電死傷事故 平成20年度の感電死傷事故は6件発生し、感電死傷者数は6名(死亡1名、負傷5名)で あり、前年度に比べ1件(1名)減尐しました。(第2図参照) 過去の統計では夏場(7月~9月)において、発生件数が増加しています。平成20年度の 夏場の発生件数は3件でした。 なお、各事故の内容については、別表1及び別表2で電気工作物の区分毎に事故概要、原因 及び再発防止対策を記載していますのでご参照下さい。 第1図 事業用電気工作物における感電死傷事故等の年度別発生状況 件 感電以外 25 20 15 10 2 16 5 3 2 13 3 16 感電死傷 5 11 6 5 12 9 0 11 12 13 14 15 1 17 16 17 1 2 7 2 6 18 19 20 年度 第2図 件 事業用電気工作物における 感電事故の推移(死亡、負傷別) 20 負傷 死亡 15 10 5 9 11 7 0 11 12 15 11 2 4 12 13 11 2 11 5 2 5 4 15 16 年度 17 18 19 20 1 14 5 1 (1)自家用電気工作物における感電死傷事故 自家用電気工作物における感電死傷事故は5件発生し、感電死傷者数は5名(死亡1名、 負傷4名)であり、前年度に比べ2件(2名)増加しました。(第3図参照) 感電死傷事故5件は、何れも作業者による感電事故であり、これを原因別でみますと、 「作 業方法不良」が2件、「作業準備不良」が2件、「調査中」が1件でした。 - 106 - 第3図 自家用電気工作物における感電事故の推移(死亡、負傷別) 件 14 12 10 8 6 4 2 0 負傷 死亡 7 9 8 5 12 2 7 4 2 11 10 9 13 14 4 1 2 3 1 1 2 1 1 15 16 年度 17 18 19 20 (2)電気事業の用に供する電気工作物における感電死傷事故 電気事業の用に供する電気工作物における感電死傷事故は1件発生し、感電死傷者数は1 名(負傷1名)であり、その原因は「作業方法不良」でした。前年度に比べ3件(3名)減 尐しました。 第4図 電気事業の用に供する電気工作物における感電事故の推移(死亡、負傷別) 件 6 5 4 3 2 1 0 負傷 死亡 2 2 11 3 12 3 13 5 4 2 14 15 16 年度 3 1 17 3 0 18 1 1 19 20 (3)感電死傷事故の防止対策 平成20年度の電気工作物による作業者(電気作業従事者)の感電死傷事故は、6件発 生しており、主な原因は次のとおりです。 1) 作業者は作業手順にある作業方法を自分の判断で変更し作業を行った。 2) 作業前の作業方法、作業分担及び安全対策等について打合せが不十分であり、十分 に周知されていなかった。 3) 作業前の感電防護の措置が不十分であった。 作業を行うに当たっては、作業前のミーティングを十分に行い、作業分担、作業方法及 び安全対策を十分に周知することが必要です。 また、作業者は十分な感電防護措置を行い、作業を行うことが重要です。 作業を変更する場合は、主任技術者(作業責任者)に連絡し、指示を受けるようにする ことが大切です。くれぐれも独自の判断で実施しないようにして下さい。 - 107 - 事故を未然に防ぐには作業者の作業経験や知識の量に関係なく、保安規程等で決められ た安全確認を確実に実施することが重要です。被災者の中には作業経験も知識も豊富な方 がいました。作業経験や知識の豊富な方の中には、つい作業を簡略化するために安全確認 を省略することがあるようですが、そのようなことがないよう十分注意して下さい。 2.感電以外の死傷事故 平成20年度の電気工作物による感電以外の死傷事故は、自家用電気工作物において2件 (負傷2名)発生しました。 死傷事故の内容は、 「作業者がアークにより火傷した」ものであり、原因は「作業者の過失」、 「原因不明」となっています。 なお、事故の内容については、別表3で事故概要、原因及び再発防止対策を記載しています のでご参照下さい。 第5図 件 6 5 4 3 2 1 0 事業用電気工作物における感電以外の負傷事故の推移 事業用 1 自家用 1 3 1 2 2 11 12 3 13 5 4 2 14 2 15 16 年度 17 1 1 18 19 2 20 3.主要電気工作物の破損事故 主要電気工作物の破損事故は11件(前年度17件)で、電気事業用は3件(前年度6件)、 自家用は8件(前年度11件)となっています。(第2表参照) 設備別では、発電設備に関するものが11件(前年度17件)、発電設備以外に関する事故の 発生は前年度以降ありません。 (1) 発電設備に関する破損事故 発電設備に関する破損事故は11件と前年度に比べ6件減尐しています。 自家用電気工作物では8件と前年度に比べ3件減尐し、電気事業用電気工作物では3件と 前年度に比べ3件減尐しています。(第2表参照) 事故原因別で見ると、「保守不完全」によるものが4件(前年度13件)、「製作不完全」 によるものが2件(前年度1件)、「施工不完全」によるものが2件(前年度は発生なし)、 「自然劣化」によるものが1件(前年度1件)、「作業者の過失」によるものが1件(前年 度0件)、「自然現象」によるものが1件であり、火力発電設備のボイラーの水管噴破等及 び水力発電設備のダム(取水設備含む)の破損事故によるものです。 - 108 - なお、風力発電設備において事故の発生はありませんでした。(第2表参照) 第2表 電気工作物別発生状況(発電設備に関する主要電気工作物の破損事故) 電気事業の 発生 自 家 用 発電種別 電気工作物 用に供する 計 順位 電気工作物 電気工作物 1 汽 力 ボイラー 1( 4) 7(10) 8(14) 2 汽 力 給水加熱器 1( 0) 0( 0) 1( 0) 2 汽 力 発電機 0( 0) 1( 0) 1( 0) 2 水 力 ダム・導水路 1( 1) 0( 0) 1( 1) - 水 力 水車 0( 1) 0( 0) 0( 1) - 汽 力 タービン 0( 0) 0( 1) 0( 1) 3( 6) 8(11) 11(17) 合 計 (注)( )内は前年度の件数です。 第3表 原因分類別発生状況(発電設備に関する主要電気工作物の破損事故) 電気事業の 発生 自 家 用 原 因 計 用に供する 順位 電気工作物 電気工作物 1 保守不完全 1( 4) 3( 9) 4(13) 2 施工不完全 0( 0) 2( 0) 2( 0) 2 製作不完全 0( 0) 2( 1) 2( 1) 4 自然劣化 1( 0) 0( 1) 1( 1) 4 作業者の過失 0( 0) 1( 0) 1( 0) 4 自然現象 1( 2) 0( 0) 1( 2) 合 計 3( 6) 8(11) 11(17) (注)( )内は前年度の件数です。 発電設備に関する破損事故の多くは、火力発電所における火力ボイラーの水管噴破事故で すが、火力ボイラーの水管噴破事故を防止するためには、管の補修、取り替えに係る判断基 準の一つとして、定期事業者検査における肉厚測定の結果をベースに、蒸気圧力、炉内温度 を考慮して、管の外内部の減肉スピードを評価することはもとより、ばい煙濃度抑制設備等 の稼働状態の把握も重要です。 また、水管内部のスケール(不純物)の堆積状況や異物混入の状況把握も重要であると考 えます。 なお、事故の内容については、別表4及び別表5並びに別表6で事故概要、原因及び再発 防止対策を記載しておりますのでご参照下さい。 (2) 発電設備以外に関する破損事故 平成20年度において発電設備以外に関する破損事故は発生していません。 - 109 - 4.ダムの洪水吐きからの異常放流 平成20年度においてダムの洪水吐きからの異常放流は発生していません。(第1表参照) 5.供給支障事故 平成20年度において供給支障事故は発生していません。(第1表参照) 6.波及事故 平成20年度の自家用施設からの波及事故は31件(前年度38件)発生し、前年度に比べ 7件の減尐となりました。(第6図参照) 第6図 波及事故の年度別発生件数 件 70 60 50 40 30 20 10 0 42 38 11 12 58 24 13 34 14 27 31 15 16 年度 17 22 18 38 31 19 20 (1)原因別発生状況 事故を発生させた原因別の順位は第4表のとおりで、「雷」が18件(前年度20件)、「保 守不完全」が4件(前年度2件)、「公衆の故意・過失」が2件(前年度1件)、「作業者の過 失」が1件(前年度4件)、「火災」が1件(前年度3件)などとなっています。 ① 波及事故の原因の第一位は「雷」であり、18件と全体の58.1%の発生率を占めてい ます。被害電気工作物別に見ると、区分開閉器が13件と一番多く、高圧ケーブル(機器) 3件、避雷器が2件になっています。 「雷」による事故は、雷撃や雷サージ電流により区分開閉器内部やブッシングが破壊され、 地絡や短絡を起こしたもので、直撃雷のように防止することが困難なものもありますが、誘 導雷のように比較的小さな雷サージ電流であれば、避雷器を区分開閉器近傍に設置するとい ったような対策をとることで、その他の設備への影響を小さくすることが可能です。 また、雷により直接電気工作物に被害はなくとも、保護継電器の制御回路が雷サージ電流 により焼損して動作不能となったケースがありました。このため、需要設備内の地絡や短絡 事故発生時に保護することができず、波及事故となったものがあります。 近年、雷の発生が多い傾向にありますので、雷発生後は保護継電器を含め電気設備全体の - 110 - 健全性の確認を行うことが非常に重要と思われます。 第4表 原因別発生状況(波及事故) 発生順位 原 因 件 数 前年度の件数 1 雷 2 保守不完全 3 公衆の故意・過失 2 ( 6.5% ) 1 ( 4 作業者の過失 1 ( 3.2% ) 4 ( 10.5% ) 4 火災 1 ( 3.2% ) 3 ( 7.0% ) 4 鳥獣接触 1 ( 3.2% ) 2 5.3% ) 4 施工不完全 1 ( 3.2% ) 1 ( 2.6% ) 8 その他 3 ( 9.7% ) 2 ( 5.3% ) - 自然劣化 1 ( 2.6% ) - 風雤 1 ( 2.6% ) - 塩・ちり 1 ( 2.6% ) 100% ) 38 ( 100% ) 合 計 18 ( 58.1% ) 20 ( 52.6% ) 4 ( 12.9% ) 2 ( 5.3% ) 31 ( ( 2.6% ) ( 注 ) 四 捨 五 入 の 関 係 で 合 計 は 100% に な ら な い 第7図 原因別発生状況(波及事故) 製作不完全 その他 火災 作業者の過失 鳥獣接触 公衆の故意・ 過失 保守不完全 雷 ②保守不完全 波及事故の原因の第二位は「保守不完全」であり、4件発生し、前年度より2件増加しま した。内容は、以下のとおりです。 ・ キュービクル式受電設備のLBS(高圧交流負荷開閉器)に何かが接触し、地絡・ 短絡事故が発生し、波及事故となったものと思われる。保護装置の電源は、喪失 状態であった。GR制御電源は、変圧器二次側から供給しているがこのGR電源 上段ブレーカーは以前、事業所隣にある旧社宅に供給していたが、電力会社から - 111 - 直接受電することになり、工事業者は、上段ブレーカーの負荷はなくなったもの と思いこみ、ブレーカーをOFFにしたものと推測される。主任技術者はこの工 事については設置者からの連絡がなく、知らなかった。さらに、主任技術者は、 GR電源用ブレーカー(GRの横にあるGR専用ブレーカー)がONになってい たことから、制御電源は確保されているものと思いこんでいたもの。 ・ アレスター用CFリード線は、やや長めであったため、そのリード線に鳥が止ま ったことや風圧により傾いたことで、接近接触し短絡したもの。 ・ PASは22年使用しており、PASの底蓋の縁に腐食穴が空き、そこから雤水 が浸入し、内部で短絡事故を起こしたもの。 ・ PASの上部に腐食(錆)による穴が空き、そこから雤水が浸入し、地絡事故を起こ したもの。 ③公衆の故意・過失 波及事故の原因の第三位は「公衆の故意・過失」であり、2件発生し、前年度より1件増 加しました。内容は、以下のとおりです。 ・ 建物解体にあたって、電気主任技術者への連絡なしに主幹の真空遮断器以降を開 放し、作業を行っていた。PASを開放していなかったため、3階天井部分を解 体中に高圧引込ケーブルを切断したことにより短絡した。保護装置の電源が喪失し ていたため、保護装置が動作しなかったもの。 ・ 除草作業中、草刈機により高圧引込ケーブルを損傷させ、地絡し、波及事故に至った もの。なお、ケーブル損傷前に、保護装置電源線を切断していたため、保護継電器が 動作しなかったもの。 ④作業者の過失、火災、鳥獣接触、施工不完全、その他 波及事故の原因として、「作業者の過失」、「火災」、「鳥獣接触」「施工不完全」が 各1件、「その他」が3件となっています。内容は次のとおりです。 【作業者の過失】(1件) ・ PGSを開放するため、地絡試験押ボタンを操作したが、開閉器の指針が「入」 の状態であり、PGSは開放していないと思い(実際は開放していた)、PGSの 引き綱による開放を行った際、無意識に「切」操作の後「入」操作をした。一方、 受電室にいた別の点検者は停電を確認し、清掃作業をするため、ショートアース を取り付けており、PGSの引き綱誤操作で「入」とした際に短絡が発生したも の。 - 112 - 【火災】(1件) ・ 当事業場の火災(半焼)による炎により、高圧引込ケーブルが損傷したため、地 絡・短絡事故が発生したもの。また、同時に制御線も焼失したため、保護装置は 動作しなかったもの。 【鳥獣接触】(1件) ・ キュービクル式受電設備にヘビが侵入し、LBS(高圧交流負荷開閉器)1次側 の裸充電部に接触したため、地絡事故が発生したもの。 【施工不完全】(1件) ・ キュービクル内の高圧引込CVTケーブルとVCT(電力高圧計器)引出線との 間でリークが発生し、絶縁劣化により高圧引込CVTケーブルの青相端末部分が 焼損したもの。 【その他:不明】(3件) ・ PGSのガスが何らかの原因で抜け、絶縁劣化が急激に進み、内部で短絡事故を 発生したものと推定される。 ・ 当事業場が原因で、波及事故に至ったことから、絶縁抵抗測定等の原因調査を実 施したが、原因が特定できなかった。 ・ PGS(高圧ガス式区分開閉器)を開放するため、キュービクル内に設置してい るGR継電器を動作させた瞬間にPGSが破裂音とともに焼損したもの。 (2)電気工作物別発生状況 電気工作物別の発生順位は第5表のとおりで、例年と同様に責任分界点となる「区分開閉 器」が最も多く18件(前年度21件)、次いで「高圧ケーブル」が5件(前年度6件)と なっています。 第5表 電気工作物別発生状況(波及事故) 発生状況 電 気 工 作 物 件 数 前年度の件数 1 区分開閉器 2 高圧ケーブル 5 ( 16.1% ) 6 ( 15.8% ) 3 避雷器 3 ( 9.7% ) 2 ( 4 遮断器 2 ( 6.5% ) 4 ( 10.5% ) 5 計器用変成器 1 ( 3.2% ) 1 ( 2.6% ) 5 耐張碍子 1 ( 3.2% ) 1 ( 2.6% ) 5 不明 1 ( 3.2% ) 0 断路器 0 2 ( 5.3% ) 高圧受電設備一式 0 1 ( 2.6% 合 18 ( 58.1% ) 21 ( 55.3% ) 計 31 ( - 113 - 100% ) 38 ( 5.3% ) 100% ) 第8図 電気工作物別発生状況(波及事故) 計器用変圧 器 耐張碍子 遮断器 その他 避雷器 区分開閉 器 高圧 ケーブル ①区分開閉器 電力会社との責任分界点に設置した区分開閉器に係る事故は18件で、前年度に比べ3件 減尐しています。 原因別にみると「雷」が13件、「保守不完全」が2件、「作業者の過失」が1件、「不 明」が2件となっています。 区分開閉器は、ほとんどが引込柱上に設置され保守点検が容易でないことに加えて、風雤 にさらされ雷撃を受けやすいという過酷な条件下にあり、事故発生の誘発要因を多分に有し ているため特に細かな保守点検が必要です。 ②高圧引込ケーブル 高圧引込ケーブルに係る事故は5件で前年度に比べ1件減尐しています。 原因別に見ると「公衆の故意・過失」が2件、「施工不完全」、「火災」、「雷」が各1 件となっています。 ③遮断器 遮断器に係る事故は2件で前年度に比べ2件減尐しています。原因は「鳥獣接触」、「保 守不完全」が各1件となっています。 (3)保護装置の動作状況 電力会社の変電所において動作した保護継電器を種類別の発生率をみると、第6表のとお り、短絡が23件で全体の74.2%、地絡が8件で全体の25.8%となっています。 第6表 事故の種類(波及事故) 事故の種類 件 数 前年度の件数 短 絡 23 ( 74.2% ) 27 ( 71.1% ) 地 絡 8 ( 25.8% ) 11 ( 28.9% ) 合 計 31 ( 100% ) 38 ( - 114 - 100% ) 第9図 短絡・地絡事故の割合 短 絡 74.2% 地 絡 25.8% 事故発生箇所が自家用電気工作物側の保護装置の保護範囲内にあったかどうかでみ ると、第7表のとおりで、保護装置は設置していても、事故発生箇所が保護外であった ため波及事故となったものが19件、保護範囲内にもかかわらず、保護装置の不動作の ため波及事故に至ったものが12件となっています。 保護装置の不動作の原因は、「電源喪失」が6件、「継電器不良」が2件、「間欠地 絡」が2件、「継電器焼損」、「不明」が各1件となっています。 波及事故は、事故を起こした事業場だけでなく近接の需要家も停電させることになり、 近年の電子機器の目覚ましい普及とともに、その社会的影響がますます増大しているこ とを十分認識しなければなりません。 したがって、保守点検を入念に行い、常に保護装置などを正常な状態に維持し運用す ることが、何よりも重要となります。 第7表 保護装置の状況(波及事故) 件数 保護装置なし 0 ( 保護装置あり 0.0% ) 31 ( 100.0% ) 保護外 19 ( 61.3% ) 保護内 12 ( 38.7% ) 電源喪失 6 ( 19.4% ) 継電器不良 2 ( 6.5% ) 間欠地絡 2 ( 6.5% ) 継電器焼損 1 ( 3.2% ) 不明 1 ( 3.2% ) 31 ( 100% ) 不 動 作 の 理 由 合 計 ( 注 ) 四 捨 五 入 の 関 係 で 合 計 は 100% に な ら な い ※ 「継電器不良」の2件のうち雷サージにより破損したものは1件 - 115 - 別表1 自家用電気工作物における感電死傷事故 番 種 事故原因 号 別 内 容 死 負 計 亡 傷 1 作 作業準備 (事故概要) 0 1 1 事故当日、被災者は同僚2名と水槽上部の既設手摺の撤去、 業 不良 新しい手摺の取り付け(溶接)作業を実施していた。 者 当日は雤のため、保護具(手袋、作業着等)が湿潤化して いた。また、作業も中断したりし、作業が予定よりも遅れて いた。 被災者は、溶接棒を交換しようとし、左手に持っていた溶接 棒を右手のホルダーで掴んだ直後、左手に衝撃を感じ(作業用 の皮手袋が雤で濡れていたため、通電した模様)、その反動で 溶接棒を付けたホルダーが被災者の胸に接触し、感電した模様。 (原因) ①溶接作業における保護具等の湿潤に対する安全指示が不十 分であった。 ・雤天時は作業中断の指示はしていたが、保護具湿潤に対 する安全指示をしていなかった。 ・溶接作業標準に雤天や発汗時の安全注意事項が明記され ていなかった。 ②湿度の高いところでの溶接作業の保護具が適切でなかっ た。 ・濡れた作業着や革手袋等で溶接作業を継続した。 ③狭隘な場所での溶接作業となり身体と金属面の接触面が多 くなった。 ・経験が浅い者に対して、安全な溶接作業場所の指示が不 足していた。 ・歩廊の外側からの溶接作業の方がやりやすいと判断し た。 (主な再発防止対策) ○感電事故が発生した協力会社の再発防止対策 ①アーク溶接作業時における「感電防止」に向けた教育・ 指示の強化 ・感電防止基準及び安全衛生法における電気災害等の教材 作成と教育。 ・作業標準書の見直し、湿潤時の作業判断基準を作成し徹 底する。 ・作業指示書に保護具等の湿潤に対する具体的指示を記載 する。 ②湿潤した保護具・作業着での溶接作業排除。 - 116 - 2 作 作 業 方 法 (事故概要) 0 1 1 当事業所の年次点検において、発電機本体側の高圧ケーブル 業 不良 の接続部の焼損が発見され、 早急に改修するよう依頼があった。 者 これを受け、設置者は速やかに改修工事を実施した。その際、 主任技術者へ連絡していなかった。 今回の事故の被災者は、改修工事を実施した工事業者の作業 者であり、前日に高圧ケーブルの取替工事を完了した。 事故当日は、当事業所に連絡なしに明日の耐圧試験に備えて、 試験前の最終確認及び張替えたケーブルのシールドアース線接 続とアクリルパネルの現状復旧(取付)作業に取りかかり、そ の際、充電部に接触し、感電したもの。 なお、明日の耐圧試験の依頼を病院側から受けた際、初めて 主任技術者は改修工事が行われたことを知った。 (原因) ①被災者は、当事業所に無断で発電機室の鍵を取り出し(作 業者は前日の工事実施時に、発電機室の出入り用鍵が発電 機室横の消火器ケース内にあることを知った)、入室した。 ②被災者は、計器用変圧器が充電していることを知っていた が、今回の作業で感電することはないと考えて作業を実施 した。 (主な再発防止対策) ①発電機室の出入り用鍵の保管場所を発電機横の消火器用ケ ースから事務所に変更した。今後、鍵管理を厳密に行うこ ととした。 ②事業所の出入り電気工事業者に対して、工事発注時に「工 事体制表」を作成させ、安全管理を徹底する。今後は、主 任技術者の指導・監督の下で実施するよう体制を確立する こととした。 ③主任技術者に依頼し、連絡責任者他営繕担当者を対象に保 安教育を実施した。 3 作 作 業 方 法 (事故概要) 0 1 1 事故当日、事務所にて現場代理人(元請)、元請指揮者(元 業 不良 請)は二次請負作業者全員(4名(被災者含む))に対し、作 者 業方法を説明し、作業現場にて、元請指揮者と作業者全員で現 場ミーティングを実施後、作業に取りかかった。 現場作業箇所は、新しく増設された高圧盤で、当日の作業は、 その高圧盤に高圧ケーブルを立ち上げ、端末処理、接続等を行 うものであった。 元請指揮者は遮断器の引き抜き位置を確認し、スイッチ札掛 けを実施し、その後、作業者4名へ作業開始を指示した。制御 ケーブル6本の立ち上げを確認後、元請指揮者は他の場所での ミーティングを行うため移動した。 作業者4名は、各2名に別れ、被災者Aと作業者Bは高圧盤 の裏で、残りは表で作業を実施した。被災者Aが高圧ケーブル のブラケット固定と皮剥を実施し、作業者Bはその助勢をした。 - 117 - 作業者BがS相とT相のケーブルを支持し、被災者AがR相 のケーブル寸法取りのため、高圧盤内にR相のケーブルを入れ、 マーキングを実施した。 被災者Aは、末端処理を行うため、高圧盤外へR相ケーブルを 引き抜こうとしたとき、結線位置より約400m上部に露出してい た充電中の1次側T相ブスバー(6.6KV)にケーブル先端部が触 れ、感電したもの。 (原因) 1)工事設計・計画段階で対象高圧盤内の活線充電部の存在を 見落とし、その結果、充電部の安全養生計画に抜けが生じ た。 ①工事計画策定段階でケーブル端末処理作業範囲内には充電 部はないものと思い 込み高圧盤の構造図・現物でのチェ ックを怠った。 ②施工計画書レビューが不十分であり充電部安全養生の計画 漏れが見逃された。 2)作業における感電防止の歯止めルール(感電・接地)を守ら なかった。 ①元請指揮者は遮断器引出しを確認したが、施工範囲内(接 触の可能性のある箇所)の検電をしないまま作業開始を指 示した。 ②充電箇所の具体的指示がなかったため、作業者は施工範囲 に充電部はないと思っていた。 (主な再発防止対策) ①施工計画書作成時の調査確認の手順の制定と実行の徹底。 ②電気取り扱いルールの再徹底と継続的な実施。 4 作 調査中 業 者 (事故概要) 1 0 1 当事業所は、配電盤および制御盤の設計・製作をしており、 電気主任技術者に委託していた。 事故当日は、作業者4名(A,B,C,D)で製作中の高圧閉鎖型配 電盤(キュービクル8面体)の配線組立作業を行っていた。 被災者は、作業者Cに高圧受電盤の計器用変圧器(VT)の取替え 作業を指示した後、引越業者(社屋移転予定であった)との打 合せのため作業現場を離れた。 作業者Cは指示された作業を終え、別作業のため作業現場を離れ た。 作業者A,B,Dは休憩時間のため作業現場を離れ、休憩に入っ た。その後、1階にいた引越業者が工場2階作業現場より、煙 が出ているのを発見し、状況を確認するため、従業員と一緒に 2階に上がるとキュービクル内の高圧真空遮断器2次側母線の 下に仰向けに倒れていた被災者から炎と煙が上がっていたた め、消火器で消火した。 なお、当事業場では、作業現場が薄暗いことから、事故前日 から制作中のキュービクル内の照明器具配線を組立室のコンセ ントに接続している延長コードのコンセント(100V)に直接差 し込んで盤内照明を点灯させていた。 - 118 - この時点で、所内電源用ブレーカーは投入状態であったため、 コンビネーショントランス(50kvA)が昇圧され、高圧交流負荷開 閉器(LBS)も投入状態であったため、高圧母線は充電状態となっ ていた。被災者は、この充電部に接触し、感電したものである。 (原因) 調査中 (主な再発防止対策) 当面の対策として、 ①全従業員を対象に保安教育を実施する。 ②配電盤組立作業の標準作業手順書を作成し、全従業員へ周 知徹底する。 5 作 作 業 準 備 (事故概要) 0 1 1 業 不良 事故発生現場である計圧空設備(耐熱樹脂の製造施設)は屋 者 内で定期点検を実施していた。点検は事故前日より実施してお り、被災者(協力会社B)は、再冷水設備(冷却塔ファン;C-774 電圧 440V)の点検のため、電動機のケーブルの解結線し、電 動機を取り外し、そしてケーブルをテープで保護した後、分解・ 整備をおこない、そのままの状態で作業を終了した。 事故当日は、被災者(協力会社B)は前日、分解・整備した 再冷水設備(冷却塔ファン;C-774)の運転準備のために、電動 機を取り付け、結線作業時にケーブル端部のテープを素手で取 り外した際に感電(入電;両手指先、出電;右足下部)したも のである。 なお、感電時は保護装置(漏電リレー;100mA 動作)は作動 しておらず、現場の状況等により感電電流は 30mA 以下であった と考えられる。 (原因) ① 分解点検すべき機器の現地指示が間違えていた。 ・事業所は設備関係の維持・管理を協力会社の協力会社A に外注している。協力会社Aは再冷水設備の定期点検を 協力会社Bに発注し、現地説明を実施した。その際、協 力会社Aの電気担当者は、整備の対象は冷却塔ファン;C -773であるにも拘わらず、別の冷却塔ファン;C-774を整 備するよう間違った指示をしていた。※再冷水設備は冷 却塔ファンを2台設置していた。 ② 当該作業を行う前に検電を実施しなかった。 ・事故前日、当該設備の電源コントロールセンターでは事 業所作業者と協力会社B作業者でNFBを「切」とし、協力 会社A電気担当者は「電源ロック」の表示札を掛け、被 災者は検電確認後、作業を実施した。 事故当日、被災者は前日同様の電源は遮断していると思 い込み検電未実施であった。 - 119 - ③ 当該施設に施設番号等が確認できる機番(タグ番号)の表 示がなかった。 ・設備本体に機番の表示がされておらず、判別しにくい状 態であった。 (特記事項:事故前日に作業者が感電しなかった理由) 事故前日は当該設備の定期点検とは別に、当該設備の電 源側(3.3kV)の高圧電 気系統の定期点検も実施していた ため、負荷設備は全停状態となっていた。 被災者は冷却塔ファン;C-774の解結線前に検電により 「通電なし」を確認したことで、電源コントロールセンタ ーで事業所作業者と協力会社B作業者により電源は遮断 したものと思い込んだ。 一方、電源コントロールセンターで事業所作業者と協力 会社B作業者は冷却塔ファン;C- 773 の電源を遮断して おり、当該設備の検電により「通電なし」 を被災者が確 認したことで、電源は確実に遮断したと思い込んだもの である。 (主な再発防止対策) ① 機器配置図を用いたマーキング ・配置、機番を正しく記載した配置図を原本管理する。 ・工事対象機番、配置図、現地表示を確認し現地マーキング (札を掛る) ② 現地機番(タグ番号)を表示する ・統一機番で現地表示 ③ 結線時の検電(非接触型)を実施する ・非接触型検電器の全員配布 ・電気関係協力会社へ周知 ④ 解結線チェックリスト様式の見直し 合 計 - 120 - 1 4 5 別表2 電気事業の用に供する電気工作物における感電死傷事故 番 種 事故原因 号 別 内 容 死 負 計 亡 傷 6 作 作業方法 (事故概要) 0 1 1 事故当日、委託工事会社の作業者である被災者は班長以下3 業 不良 名で高圧事業場の全撤工事に従事していた。 者 高圧引込線を撤去後、電力の電柱の高圧アームに設置されて いた開閉器を撤去する際、被災者は誤って高圧線振分縁廻り部 に接触し、感電負傷した。 (原因) ① 作業班が作業手順を遵守しなかった。 今回の作業は、本来、間接活線作業(又はバイパスケーブ ル等に停電作業)で行うべきものである(委託工事会社の 標準工事手順)と決められている。 しかし、作業班は当日のミーティングにおいて、時間短縮 等(当日、他に3件の工事有り)から絶縁防具取り付けに よる直接作業で実施することに変更した。 ② 作業者(被災者)が感電防護措置を実施しなかった。 ミーティングでは作業の実施において、高圧線に絶縁防具 を取り付けた(感電防護措置の実施)上で、作業を行うこ ととしていた。 しかし、被災者は高圧線に絶縁防具の取り付けを実施せず に、作業を実施し、高圧線に接触し、感電した。 (主な再発防止対策) ○安全教育の強化・充実 ・社員の階層別教育の実施 ・模擬作業を利用した安全実技研修の実施 ・教育センターでの災害(感電等)疑似体験研修の実施 ・今回の作業に関する安全教育用ビデオを作成し、教育に 活用 ○工法・工具の開発改良 ・委託安全作業工法・工具の見直し 合 計 - 121 - 0 1 1 別表3 自家用電気工作物における感電以外の死傷事故 番 種 事故原因 号 別 内 容 死 負 計 亡 傷 7 作 作 業 者 の (事故概要) 0 1 1 当事業所の電気炉技術マネージャーが電気炉を運転しようと 業 過失 したが起動できなかったため、出入りの業者(被災者)に調査 者 依頼した。 被災者とマネージャー2人で電気炉室へ行き、調査を開始し た。被災者は調査中に電気炉用主開閉器の電源側端子部分(中 相)のテーピング箇所が溶けているのが気になり、メガレンチ で増し締めを実施しようとした際に、メガレンチが隣の相と接 触、短絡し、アークを発生させ、負傷したものである。 (原因) 事故時は電気炉用主開閉器は開放されていたが、一次側は充 電状態であった。 被災者は、高圧側の遮断器(電気炉用変圧器用遮断器)が開 放されているものと思い込み、検電を行わず、主開閉器一次側 接続端子の増し締めの作業を実施したため。 (主な再発防止対策) ① 連絡体制を強化するため、従業員を対象に保安教育を実 施した。 ② 出入り業者に対して、「工事安全・防災打合せ議事録」を 作成し、安全指導・教育を強化した。 8 作 業 者 不明 (事故概要) 0 1 1 当日は、定期点検のため、停電作業を実施中であった。 SOG単体試験・PGS連動試験を実施し、LBS一次側で 検電、無電圧を確認した後、設備の絶縁抵抗測定(高圧、低圧) を実施した。絶縁測定終了後、LBSの清掃作業に着手し、L BS一次側端子に濡れタオルが触れたところで線間短絡、アー クが発生し、被害を受けたもの。 (原因) PGS連動試験で受電「断」を確認し、検電のうえケーブル 絶縁測定を実施している。 従って、作業途中に何らかの原因で通電状態となり、事故に 至った可能性がある。(被災者本人はPASを「入り」にした 記憶なし) なお、事故当日の被災者は、作業服、安全靴、ヘルメットを 着用、清掃時は素手の状態だった。 PGSを取り外し、メーカー工場立ち会いの上、試験を行っ た結果、異常は発見されず、不具合は確認出来なかった。 - 122 - (主な再発防止対策) 保安面の対策 ① 作業は二人以上で実施 ② ショートアースの確実な実施 ③ 接近警報機の着用 合 計 - 123 - 0 2 2 別表4 自家用電気工作物における主要電気工作物の破損事故 【火力発電】 番 号 事故原因 1 保守不完全 発電種別 汽力 内 容 (事故概要) ボイラーの出口ガス温度低の警報を確認。運転員がボイラーの 巡視点検を実施し、ボイラー下部の点検口から内部確認を行った ところ、炉壁からの水滴落下を確認。ボイラーのチューブリーク と判断し、減負荷を開始。 節炭器の52パネルの最下段(18段目)の端から1,050mm付 近の管上部に3箇所の破孔を確認。 (原因) 節炭器管の損傷原因は、取り外した当該管の観察結果からコー クス粉によるダストカット(炉内の粉塵が剥がれる際、管の外面 を摩耗させること)による減肉、破孔と推定している。 減肉、破孔に至る経緯については、炉内点検を実施した際、節炭 器の損傷管と炉壁との間にコークス粉(ダスト)の堆積を確認し た。また、取り外した当該管の破孔付近にもダスト固着物がある ことを確認した。 以上の観察結果から損傷管に付着したダスト固着物が剥がれ 且つ、ガスの吹き抜けによる局部的な偏流により減肉、破孔に至 ったもの。 (再発防止対策) ①節炭器管をフィン付き管から裸管への検討 ②金属溶射による管の摩耗防止等の検討 しかしながら、今回の事故においては、平成10年まで実施し ていた定期事業者検査における節炭管の定点肉厚測定箇所か ら損傷管が存在する52パネル目を除外したことも要因の一 部と判断していることから、次回の定期事業者検査から定点肉 厚測定箇所の見直しを実施する。 2 保守不完全 汽力 (事故概要) ボイラー給水流量が増加(30t/h 程度)していることをオペレ ーターが確認。また、ボイラー給水用の純水タンク水位も低下傾 向にあったことから、ボイラーの巡視点検を開始。外観巡視点検 で は 、 漏 水 等 の 特 定 はで き な か っ た も の の 、地 上 高 約 4 0 mの過熱器付近において、漏水と思われる異音を確認。巡視点検 結果等から、ボイラー内の漏水を疑い、ボイラー停止作業を開始。 二次過熱器(全8パネル)の7パネル目の外側から4番目の管 の折損及び近隣の配管3本に折損管からの蒸気噴射における破 孔(二次被害)を確認。 (原因) 二次過熱器管の損傷原因は、損傷管の外観検査、顕微鏡観察結 果から、損傷管が異常な温度上昇に伴う短時間クリープ(熱によ る歪みや膨出)により破損に至ったものと推定。 管の破孔に至る経緯については、推定される破損要因の検討及 - 124 - び損傷管の顕微鏡観察結果から、破損管に何らかの異物が混入 し、管自体が閉塞状態となり、ボイラーの熱によるオーバーヒー トに伴い、破孔に至ったもの。 (再発防止対策) ①熱交換器等管寄の内部点検では、マンホール等開放作業後、直 ちに異物侵入防止用のキャップを取り付ける。 ②管寄等の内部点検終了後は速やかに点検口を異物侵入防止用 のキャップにて閉止する。 ③内部点検終了後、管内部への異物侵入及び残留物無しであるこ とを記録する。 以上、①~③を保安規程に基づく「電気工作物点検基準」に追 加記載すると共に、この内容を検査員(社員)及び外注作業員に 十分周知する。 3 保守不完全 汽力 (事故概要) ボイラーエコノマイザダストコンベアの灰詰まりによる設備故障発生。ダス トコンベアの現地確認を実施したところ、ダスト搬送コンベアの 焼却灰が湿潤していたことを確認。ボイラーの帳票やトレンド監 視でボイラー給水量の増加等、漏水と考えられる兆候を把握。 ボ イラー炉内漏水確認を実施するため、ボイラーの立下げ及び炉内 冷却を開始。炉内冷却途中において、炉内目視点検を行ったとこ ろ、漏水があることを確認。 蒸発管群である第3パスR側水ドラム上部(ドラム取り付け位 置から約 10mm 程度)水管管理番号11列目30番管1本が破孔 していることを確認。 (原因) 水管の破孔原因は、破孔管及び周辺管の外観検査、顕微鏡観察 結果等から、ボイラーの第2パス仕切壁下部の隙間からショート パスした燃焼ガスにより、破孔管周辺に通常のガスの流れと異な った速度の速い偏流が生じ、この編流によるガスの流れと灰によ って起こされたアッシュエロージョン(灰などの粉塵による浸 食・摩耗)により、水管が破孔に至ったもの。 また、当該箇所は、燃焼ガスの流れる方向が変化する場所であ り、ボイラー内の他の箇所と比較すると減肉傾向が強い箇所であ る。 (再発防止対策) ①第3パス11列目の水管下端に燃焼ガスの流れをしゃ断する 遮蔽板(高さ 200mm,厚さ 6mm)を取り付け、ダストが水管に直 接当たらない対策を実施する。 ②第2パス下端の隙間にキャスター(充填剤:高さ 250mm,幅 100mm)を設置し、隙間から燃焼ガスがショートパスしない対策 を実施する。 ③今回の破孔箇所は毎年の定期修理時に実施している水管定点 肉厚測定箇所外であったため、破孔箇所周辺について、目視点 検及び触手点検の強化を図る。また、管表面にダスト付着が無 く滑らかな水管については、摩耗が疑われるため、必要に応じ 肉厚測定を実施する。 ④水平展開として、他のボイラーについて、今回の破孔が発生し - 125 - た箇所を中心に水管の肉厚測定を行い、配管肉厚管理基準を下回 る水管がある場合は、取り替え等の対策を順次実施する。 4 作業者の 過失 汽力 (事故概要) ボイラー給水流量が増加(30t/h 程度)していることを運転員 が確認。また、補給水量も増加していたため、漏洩の疑いがある と考え、ボイラーの巡視点検を開始。 外観巡視点検の結果、ボイラー天井ハウジングから蒸気漏洩を 確認し、ハウジング内部の管寄せ等からの蒸気漏洩と判断。 三次過熱器(全23パネル)の出口管台(11、12パネル目) にて、開口、減肉等を確認。 (原因) 三次過熱器管の損傷原因は、RT検査の結果、入口管台と過熱 器管の溶接部上流に溶接時に使用する開先加工機の先端袋ナッ トが発見されたこと、また、漏洩部は膨張を伴った管軸方向の縦 割れであることから、異物閉塞に伴う異常過熱によりクリープ破 損したもの。 て また、炉内加熱部で使用されている SUS347J1TB(XA704)と比較 すると、漏洩部で使用されている STBA28S-9Cr 鋼のクリープ強度 のほうが低いため、非加熱部分の漏洩部が先に破孔したものであ る。 (再発防止対策) ①これまでも工器具数量確認を実施していたが、今後は工器具単 位ではなく工器具の部品を含めたチェックシートによる工事 前後の工器具確認及び記録の保存を実施。 ②上記①の作業標準書への反映及び異物混入防止チェックシー トの整備と運用を実施。 ③従事者への定期的な教育(外注先を含む)を実施。 ④次の④-1~④-3については、既に実施中ではあるが、対象 部位を拡充して実施する。 ④-1熱交換器等管寄、管等の内部点検では、マンホール等開放 作業後、直ちに異物侵入防止用のキャップを取り付ける。 ④-2管寄、管等の内部点検終了後は速やかに点検口を異物侵入 防止用のキャップにて閉止する。 ④-3内部点検終了後、管内部への異物侵入及び残留物無しであ ることを記録する。 5 製作不完全 汽力 (事故概要) 定格出力に到達後、発電機主回路地絡過電圧継電器(64GN) 動作しタービントリップ。 発電設備発電機の励磁機側固定子コイルエンドシリース部(接 続部)の溶断・損傷を確認。 (原因) 発電機固定子コイル素線間の循環電流とコイルエンドシリー ス部(接続部)の接続抵抗のバラツキにより、不完全接触部の温 度が上昇し、コイルが溶断したもの。 (再発防止対策) - 126 - ①固定子コイルのトランスポジションを 360°から 540°に変更 し、循環電流を低減させる。 ②固定子コイルエンドシリース部を素線ろう付け接続から銅バ ーろう付け接続に変更し、素線間電気抵抗の均一化と冷却効果 の改善を図る。 6 施工不完全 汽力 (事故概要) 現場パトロール中に高温節炭器灰ホッパーを点検したところ、 ホッパー南西角側に芒硝(Na2SO4)が湿ったような跡を発見。ボ イラー・タービン主任技術者が確認し、高温節炭器漏洩の可能性 があると判断し、ボイラーの消火、点検を行うこととした。 炉内点検の結果、高温節炭器管1本に漏洩を確認。 (原因) 当該漏洩管は、過去にピンホール割れの補修のため、溶接加工 を行っており、同溶接個所においてクラックが発生していること から施工が不完全(溶接後の残留応力の除去が不十分であった) であった。 (再発防止対策) 残留応力が発生すると考えられる部位(例:高温加熱部等)に ついては溶接補修後、ショットピーニングを実施し残留応力の除 去を行うこととする。 また、外注先管理要領書において「残留応力が発生すると考え られる部位については溶接補修後、残留応力の除去を行う」旨に ついての追記を行う。 7 施工不完全 汽力 (事故概要) ボイラーの帳票やトレンド監視でボイラー給水量、蒸気発生量 の逆転を確認。熱電対取付管台フランジから燃焼室内部における 吹き出し音を確認。 漏水箇所の確認のため、焼却炉の立ち下げ を開始。燃焼室右側壁キャスタブル(耐火物)被覆終端上部の水 管より漏水を目視確認。燃焼室右側壁 19 本目の水管キャスタブ ル被覆終端上部(150mm 上部)にある溶接継手部に直径2mm 程度 の孔が発生していることを確認。 (原因) 材料分析メーカーにおける調査の結果、溶接時の開先端部にブ ローホールがあり溶接不良が認められた。破孔の原因は、水管の 溶接内部に欠陥(ブローホール)が存在し、当該部分の腐食減肉 が欠陥にまで達したことによるもの。 (再発防止対策) キャスタブル(耐火物)被覆終端上部 150mm の部分に溶接継手 部が存在するため、キャスタブル(耐火物)被覆終端上部からさ らに 200mm の部分までキャスタブル(耐火物)の打ち増しを実施 し、溶接継手部をキャスタブル(耐火物)で被覆。 - 127 - 8 製作不完全 汽力 (事故概要) 点検員がボイラー内部(火炉と後部煙道の渡り箇所-缶右側) より蒸気漏洩音と思われる異音を確認した。外観点検では漏水は 発見されず内部リークの可能性もあるため、ボイラー停止、解列 した。点検の結果、後部煙道側壁蒸冷壁管の洩れを発見した。 (原因) 起動時の熱伸び差に起因する応力による低サイクル疲労破壊。 (当該ボイラーは運転開始後7年が経過しており、起動回数は2 14回。) 当該事故部分の設計は工事計画書通りに完成しているため、設 計時に推定していた温度分布が実際とは異なっていたことが予 想される。これについては、定期事業者検査後に実測し、確認す る。 (再発防止対策) ①暫定対策:亀裂部分及び類似箇所 3 箇所にクラック(貫通なし) が発見されたため、計 2 本管の取替とフィンの取付を実施し、 復旧立上を実施。 ②恒久対策:当該事故部分の温度分布状態を定期事業者検査後に 実測する。その後、実測結果をもとに応力シミュレーションを 行い、フィン形状の改良案の妥当性を確認する。 ③今後の定期事業者検査毎に当該破損箇所及び亀裂発生箇所に ついてPT検査(液体浸透探傷試験)を実施する。 - 128 - 別表5 電気事業の用に供する電気工作物における主要電気工作物の破損事故 【火力発電】 番 号 事故原因 9 保守不完全 発電種別 内 容 汽力 (事故概要) 給水量、補給水量等の増加を発見し、ボイラーチューブリーク の疑いがあることから点検を開始。ボイラー4階付近にて異音確 認。水管破裂を疑い、減負荷調整を開始。炉内点検にて漏水箇所 視認。ボイラー火炉水冷壁管の1本(#10管)に亀裂を確認。 (原因) 当該水冷管内部にマグネタイト(酸化鉄)スケールが堆積して おりその表面に更にヘマタイト(赤錆)スケールが堆積し、メタ ル温度が上昇し、これにより局所的にクリープが発生し破損に至 ったもの。 (再発防止対策) 今回の破損箇所については定期検査時の管肉厚測定箇所には 選定されていなかった部分であるため、次回の検査時以降、非破 壊検査による肉厚測定実施部位に追加し管理する。 10 自然劣化 汽力 (事故概要) 定期事業者検査に入るため出力降下中に給水流量減にてトリ ップ。高圧給水加熱器ドレンブロー開始。給水加熱器水位高警報 発信 (ドレンブロー中に高圧給水加熱器の水位は低下したが、 給水加熱器のみ水位上昇したことから、給水流量低トリップの原 因は給水加熱器のチューブリークと推定。)高圧給水加熱器リークチェ ックの結果、他の高圧給水加熱器の健全性を確認し、給水加熱器 のチューブリークと判断。 (原因) ・加熱管損傷原因は管板部付近の加熱管外面がドレンアタックに よって減肉され、減肉した加熱管が管板部で振動し、損傷(破 断)に至ったものである。 ・ユニット停止過程において抽気系統が停止し、胴側圧力の低下 による漏洩量の増加で給水流量を確保できずにMFTに至っ たもの。 (再発防止対策) ①今回予定していた定期点検期間内に、計画していた給水加熱器 の超音波探傷検査に追加して、今回破損した給水加熱器の超音 波探傷検査を実施する。(漏洩管近傍に位置する管に対し超音 波探傷検査を行い、管理基準値を下回る管に施栓を行う。) ②今後はユニット停止時にて節炭器入口給水流量と給水ポンプ 吸込流量を確認することとする。確認の結果、両者に差があっ た場合は、現場にて高圧給水加熱器の状態(水位調整弁開度、 - 129 - 異音等)を確認し、高圧給水加熱器給水漏洩の疑いがあれば当 該高圧給水加熱器(片系)のバイパス運転を行い、リークの疑 いのある高圧給水加熱器を使用しない運転とする。 - 130 - 別表6 電気事業の用に供する電気工作物における主要電気工作物の破損事故 【水力発電】 番 号 事故原因 発電種別 11 自然現象 水力 内 容 (事故概要) 降雤増水による放流中に取水口及び魚道、堰排砂門が破損 した。また、災害発生後、堰を監視中であったが、後日更に 被害が拡大し一部ゲート及び管理橋が落下した。 (原因) 大雤による自然現象。 (なお、詳細な原因については調査中) (再発防止対策) 被害拡大防止工事を実施。 復旧計画については検討中。 - 131 -
© Copyright 2024 Paperzz