秋は宿根草の植え付け適期。 年を通した色彩計画で花選びを 美しい花姿を見て育ててみたくなるよ うな、個性ある花色や形がバラエティー 豊富なのが宿根草の魅力です。花苗は主 に春と秋に入手できますが、多くが初夏 咲きで、立派な花を咲かせるには、開花 までにじっくり育てられる秋の植え付け がおすすめです。苗の状態ではまだ株は 小さく、多くが葉だけであまり大差なく 見えますが、植え付け後の生長は、品種 によって異なります。大きく分けると、 横に広がったり、こんもり茂る草丈の低 いもの、立ち上がり膝丈ほどになるもの や100㎝ 以上にもなる大型のものがあ vol.16 ●キク科 ●花期:5∼10月 ●草丈:60∼ 100 ㎝ 長い花茎に咲く丸い花が個性 的。ほかの草花とあわせると、 一層花形が映える。シルバー リーフも美しい。 さまざまな花色、 花形の宿根草が 変化に富んだ表情を生み出す ペンステモン 「スモーリー」 ●オオバコ科 ●花期:6∼10月 ●草丈:50∼60㎝ ラベンダーと白のバイカラ ーの小花がやさしい印象。 コンパクトなタイプで狭い スペースでも植え込みやす い。暑さにも強い。 リクニス コロナリア 「ガーデナーズワールド」 春から初夏に美しい花姿を見せる クラスペディア 魅力的な宿根草を上手に生かそう ! ●マツムシソウ科 ●花期:6∼9月 ●草丈:約40㎝ ワインレッドの花がシックな印象。株元 でこんもりと茂り、花茎が立ち上がるの で、花壇手前に植えると姿が際立って美 しい。 上手に管理すれば、数年繰り返し花を咲かせてくれる宿根草は、庭づくりのベースとして欠かせない存在です。 アーチに誘引したつるバ ラにあわせて見頃を迎え た宿根草。つるバラは一 番奥に配置し、手前に草 花を植えているので普段 の手入れもしやすい。さ まざまな花形やシックな 花色が淡い花色のバラを 引き立てている。 中でも春から初夏に花期を迎える種類には、魅力的な花姿のものが豊富に揃い、新しい品種も登場しています。 注目の品種やおすすめ品種の上手な使い方をご紹介します。 クナウティア 「マースミジェット」 1 ●ナデシコ科 ●花期:6∼8月 ●草丈:40∼60㎝ リクニスの珍しい八重咲き 種。シルバーのリーフに濃 紅色の花色のコントラスト が美しい。よく枝分かれし て、ボリュームよく茂る。 2014.10 33 アプローチガーデン 北 人目につきやすいコーナ ーで、美しい宿根草の花 は一際目を引きます。長 く楽しめるように開花期 の長い品種を、また、通 路沿いでは通行の妨げに ならないようコンパクト な矮性タイプを選んで。 南 西 わいせい 34 2014.10 ります。品種によっては暑さや寒さが苦 淡ピンクから黒赤へのグラデ ションがとても ショ てもお も しゃ しゃれ し ゃ 。 ゃれ ーションがとてもおしゃれ。 に こんな場所! て 植え付け 東 ●サク ●サクラソウ科 ● サ ラソウ科 ●花期:4∼6月 ●草丈:30∼50㎝ ブルーグレーの葉に、ワイン レッドの花穂。個性的だが落 ち着いた花色でほかの花とも 組みあわせやすい。花壇に加 えると大人っぽい装いに。草 丈がコンパクトなので花壇手 前に。 手で、屋外では一年草扱いとなるものも リシマキア「ボジョレー」 秋から初夏までは日当たりを好む多 くの宿根草を育てることができる。 初夏以降は日差しが強くなるので、 暑さが苦手な草花は切り戻してコン パクトにしたり、掘り上げて風通し のよい涼しい場所に移動を。 あり、花後に植え替えが必要になります。 スマートな花穂がおしゃれ! 初夏のバラのシーズンには、同時に 多くの宿根草が開花を迎える。バラ と宿根草の組みあわせはとりわけ華 やか。バラにない花色や形を意識し て組みあわせると、バランスがとり やすく、美しいシーンになる。 暑さ寒さに強く、植えたままにできる宿 大きなベル形の花をたくさ ん咲かせるカンパニュラ・ メディウムと、その間に咲 くシレネ「ファイヤーフラ イ」。濃淡のピンクや形の 変化で印象的なシーンに。 日当たりのよい南の花壇 年目以降は株が老化して花 シレネ「ファイヤーフライ」 ベル形のカンパニュラとは異 ベル形 ベ ベル ル形 形のカン のカ カンパニ カン カンパニュ パニュ パ ニュ ニ ラ ラとは とは と は異 は異 なる花形でとても新鮮な印象。 ローズガーデン 4 宙に飛ぶように咲く花は小さくても存在感大! ●ナデシコ科 ●花期:4∼6月 ●草丈:50∼70㎝ 小花でも蛍光色のピンク花をたく さん咲かせて目を引く。ほどよい 草丈でよく枝分かれするので、大 きな花穂が上がるデルフィニウム やジギタリスの間に合わせると、 バランスがとりやすい。 ●キキョウ科 ●花期:5∼7月 ●草丈:60∼80㎝ パーシフォリア種の八重咲きタイプ。まっすぐに上がる 花茎に、ブルーの整ったカップ状の花をたくさん咲かせ る。順に咲いていくので長く楽しめる。 根草でも、 つきが悪くなるので、株分けが必要にな ります。庭を見渡して、大きくなりすぎ たものは、春や秋に草花の植え替えと併 せて、株分けも行うとよいでしょう。 また、冬には地上部を枯らして落葉す るものもあるので、常緑のものをあわせ て冬の彩りも考慮する必要があります。 1 開花期も一年草に比べて短いものが多い ので、庭で楽しむ場合は、 年を通して カンパニュラ「ラ ベル」 寂しくならないように、開花期をずらし まるで青紫色のミニバラのよう! た植物の組みあわせが大切になります。 年を通して表情を変えてい 1 草丈や開花期、冬の姿を考えて草花を組 みあわせ、 東京農業大学地域環境科学部造園科学科 卒業後、愛知県豊田市にある「ガーデニ ングミュージアム 花遊庭」の植栽・メ ンテナンスを担当するほか、個人邸の植 栽デザインも担当。植物に対する豊富な 知識と抜群のセンスのよさからメディア でも活躍。NHK「趣味の園芸」の講師 としても人気。著書に「一年中美しい 手間いらずの小さな庭づくり」「小さく てもセンスのよい庭づくり」がある。 ●「ガーデニングミュージアム 花遊庭」 http://www.kayutei.co.jp く庭を楽しみましょう。 天野 麻里絵 ゲラニューム(フウロソウ) ●フウロソウ科 目立つ花ではありませんが、その美しさに心ひかれる個性的な花で、切 れ込みのある葉もきれい。こんもりとまとまるコンパクトなタイプはバ ラの株元に。写真下のクロバナフウロソウは草丈があるので花壇中ほど に。ほかの草花ともあわせやすく和洋を問わずさまざまなシーンで楽し めます。 ●花期:5∼7月 ●草丈:30∼60㎝ クリアなブルーの大輪花。ゲラニ ュームの中でも早咲きで、強健で 大株になるとさらに花つきがよく なる。 クロバナフウロソウ 「レイブン」 ●花期:5∼9月 ●草丈:約50㎝ 従来のクロバナフウロソウよりも 黒みが強く、やや大きな花を咲か せる。大株になると見応えがあり、 深みのある花色が庭のポイントに。 スカビオサ コーカシカ ブルー スカビオサ ●マツムシソウ科 長く伸びた繊細な花茎に咲かせる丸い花が風に揺れる姿は、さわやかさ を感じさせます。初夏にかけて開花し、夏への橋渡しをしてくれます。 花色や草丈も豊富で、ドーム状に盛り上がって咲くアトロプルプレア種 や、大輪で花弁の広い花をつけるコーカシカ種などが流通します。 初夏に咲く宿根草は涼やかさも魅力 ! ゲラニューム 「ジョンソンズブルー」 カンパニュラ ●キキョウ科 ベル形の愛らしい花形が多く、系統や品種によって花の表 情も大きく異なり、草姿や草丈もさまざまです。ブルー系 の花色が豊富で、初夏の庭をさわやかに彩ってくれます。 カンパニュラ パーシフォリア ●花期:6∼10月 ●草丈:60∼ 100 ㎝ モモの葉に似た葉姿から 別名「モモバキキョウ」 ともいわれる。純白種は とりわけ清楚な美しさが ある。姿も乱れにくく、 狭い庭にも植え込みやす い。 ●花期:6∼10月 ●草丈:60∼ 100 ㎝ 大きな花びらの大輪花が見応えが ある。株元で葉が茂り、花茎が立 ち上がって咲くので、花壇の手前 にも加えて。 スカビオサ アトロプルプレア 「エース オブ スペード」 カンパニュラ 「サラストロ」 ●花期:初夏 ●草丈:60∼70㎝ 別名を「青花ホタルブク ロ」ともいい、鐘形のボ リュームある鮮やかな青 紫の大輪花は見応えがあ る。シェードガーデンに おすすめ。生育旺盛で地 下茎を伸ばして広がる。 ●花期:初夏∼秋 ●草丈:約 100 ㎝ 黒い蕾から、花開くとえんじ色に なるシックな花色。草丈があり、 花壇後方に植えると、深みと落ち 着きある景色になる。 つぼみ 大株に育ったギボウシは株分けを! 1株に3芽以上 つくようにする。 先がとがったス コップで切り分 ける。太い根を 切らないように 気をつけて。 今すぐやりたいガーデンケア 庭植えにしていると年々大株になるギボウシは、5年を目安に株分 けをしましょう。10月下旬から翌年2月上旬が株分けの適期です。 まずは株を、根を切らないようになるべく大きく掘り上げ、軽く土 を落とします。太い根を切らないようにしながら芽を確認し、1株 に3芽以上つくように見計らいながら、先が尖ったスコップで切り 分けます。株分け後は、腐葉土を加えて水はけをよくした場所に、 3株に切り分 けたところ。 ◀◀◀この記事でご紹介の一部品種はp.57∼58で販売。 新芽が地表から隠れるようにして植え付けます。 2014.10 35 冬 な ら ではの美しさを 楽 し む ボリュームが出るよう育てておくことが大切で す。 また、冬から早春にかけては植物も生育が緩 やかなので、いろんな植物を寄せて植え込むこ 冬は花が少なく、ガーデンも寂しいイメージ がありますが、寒さで葉が美しく色づき、花も とができ、すぐに完成した姿を楽しめるのも魅 ちがよくなるなど、冬ならではの楽しみもあり ます。冬を楽しむポイントは、まず、耐寒性の 力です。冬の庭を彩るコーナーを、秋から作っ 2014.10 ある品種を選ぶこと。そして冬の間も休まず咲 36 き続ける草花を加えること。本格的な寒さがく 植え替え直後の冬花壇の様子。赤をテーマカラーに ビオラで色みを出し、銅葉のキンギョソウやアジュ ガ、ブラックの「コクリュウ」で落ち着いた印象に。 シルバーリーフのシロタエギクで全体を明るく。春 になると株間がしっかり埋まり、大きく育ったビオ ラも花をたくさん咲かせる。ブラックの花がアクセ ントに。ヒューケラやペルシカリア「シルバードラ ゴン」の新芽がとりわけ美しい。早春に加えた白花 のローダンセマム「アフリカンアイズ」でさらに明 るく華やかに。 ライムグリーンのス キミア「フィンチー」 で高さを出し、フリ ル咲きのパープルの パンジーでボリュー ム感を出した。トレ イルタイプ(下垂す る)のティアレラで 彩りと変化をプラス。 てみましょう。 ●ゴマノハグサ科 ●花期:5∼6月、10∼12月 ●草丈:40∼50㎝ 耐寒性が強く、気温が低くなるにつれて、つや のある葉がチョコレート色に色づき、春になる と緑色に戻る。ラベンダー色の花穂とのコント ラストも美しい。こんもりとまとまりよく茂る。 る前の秋のうちに植えてしっかりと根づかせ、 るる ベロニカ「グレース」 大きな木製プランターに、ピンク系の花と冬を彩るカラ ーリーフをあわせた寄せ植え。エリカやカルーナなど、 花も楽しめる低木を加えると立体感だけでなく華やかさ も演出できる。冬も咲き続けるパンジーやアリッサムで 常に彩りを。 ●ベロニカ「グレース」、エリカ「プチブライダル」、 ピラカンサ「ハーレクイン」、カルーナ「ガーデンガ ールズ」、リシマキア「ミッドナイトサン」、パンジ ー、アリッサム ウインターガーデン こんな庭が欲しい! 憧れのガーデンスタイル 赤い蕾が美しいスキミア「ルブラム」 を中心に、 ガーデンシクラメンと リシマキア「ミッドナイトサン」 を交互に入れたシンプルな寄せ植え。 スキミアは春に白い小花を咲かせる。
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