機械インピーダンスによるコンクリート圧縮強度の推定

機械インピーダンスによるコンクリート圧縮強度の推定
Estimate of compression strength of concrete
by mechanical impedance
○久保 元樹 極檀 邦夫 宮田 義典
佐々木 博文 東海大学
Genki Kubo, Kunio Gokudan, Yoshinori Miyata, Hirohumi Sasaki, Tokai University
境 友昭
アプライドリサーチ(株)
Tomoaki Sakai
Applied Research
久保 元 日東建設(株)
Hajime Kubo Nitto Construction
概
要
機械インピーダンスによってコンクリートの圧縮強度を推定することを目的に基礎
的 な 実 験 を 行 っ た 。供 試 体 は 、強 度 の 異 な る 円 柱 供 試 体 を 主 と し た 。直 径 15cm,長 さ
30cm の 円 柱 供 試 体 を 自 作 イ ン パ ル ス ハ ン マ ー で 打 撃 し 、打 撃 波 形 の ピ ー ク の 後 半 部 は
コンクリートの復元力に対応すると仮定して機械インピーダンスを求め、これと、圧
縮強度の相関関係を求めた。また、円柱供試体を衝撃すると円柱供試体自身が微少移
動すると思われたので、モルタルで板に固定した場合とゴムシートに乗せた場合の機
械インピーダンスを比較検討した。
キーワード : コンクリート,圧縮強度,ポアソン比,弾性波速度,品質管理
1. は じ め に
コ ン ク リ ー ト 構 造 物 は 本 来 , 100 年 の 年 月 を 経 て も 安 心 し て 供 用 さ れ る ほ ど 信 頼 性 が
高 い と い わ れ る 。 し か し 、 昭 和 39 年 の 東 京 オ リ ン ピ ッ ク 以 降 の 高 度 成 長 期 に 築 造 さ れ
たコンクリート構造物には欠陥が存在するものもあると報じられている。人の平均年齢
が 約 80 年 で あ る 現 在 、 コ ン ク リ ー ト の 寿 命 も 同 程 度 は 期 待 さ れ る よ う な っ た 。
こ の よ う な 気 運 を 反 映 し 、土 木 学 会 コ ン ク リ ー ト 委 員 会 で は ,2001 年 に 性 能 照 査 型 の
示 方 書 体 系 の 整 備 を 目 標 と し て 新 た に コ ン ク リ ー ト 標 準 示 方 書 [ 維 持 管 理 編 ] ,平 成 11
年 版 コ ン ク リ ー ト 標 準 示 方 書 [ 施 工 編 ] -耐 久 性 照 査 型 な ど ,コ ン ク リ ー ト 構 造 物 の 長 期
的ライフサイクルを考慮するように変化しつつある。
人々の健康管理には定期的な健康診断が欠かせないのと同様にコンクリートにも定期
的な健康診断が必要である。現在、非破壊的にコンクリートの健全性を強度の点から検
査するものとしてシュミットテストハンマーがあるが、シュミットハンマーは表面が劣
化したコンクリートでは測定誤差が大きい、器差による測定値の変動、同一点の測定値
の ば ら つ き が 大 き い な ど 問 題 点 が 多 い と い わ れ て い る [1]。
本研究では、先端を半球状に整形した鋼棒に加速度計を取り付けた自作インパクトハ
ンマを試作し、ハンマーで打撃した応答波形を解析して、コンクリートの圧縮強度およ
び 縦 弾 性 波 速 度 と の 関 係 を 求 め た [2][3][4]。
2. 機 械 イ ン ピ ー ダ ン ス と 応 答 波 形
コンクリート構造物を半無限弾性体と仮定して、質量 m のハンマーが速度 vでコンク
リート表面に衝突した場合を考える。ハンマーの速度が 0 となった時のコンクリート表
面の変位量を x とし,コンクリート表面の変位と力の間にフックの法則が成立するとす
る.すなわち,コンクリートの表面に発生する最大抵抗力 F は,コンクリート表面の擬
似 的 な バ ネ 係 数 を k と お く と , F = kx と し て 表 現 さ れ る . エ ネ ル ギ ー の 釣 り 合 い か ら ハ
ンマーの最大運動エネルギーとコンクリート表面の最大ポテンシャルエネルギーは等し
いから,エネルギーの釣り合い式を展開し,
1 2 1 2
mv = kx ,
2
2
mv = k x ,
mv =
kx
,
k
mv =
F
k
(1)
が得られる.これから,
mk =
F
v
(2)
が と な る .こ こ で , mk は ,機 械 イ ン ピ ー ダ ン ス で あ る が ,作 用 し た 力 の 最 大 値 を 打 撃
速度の最大値で除することによって求められることが分かる.作用反作用の法則からコ
ン ク リ ー ト に 発 生 し た 力 は ,ハ ン マ ー に 生 じ た 力 と 等 し い .ま た ,式 (2)か ら 明 ら か な よ
うに,ハンマーの質量が一定であれば,コンクリート表面のバネ係数の平方根は,打撃
によって発生した力の最大値をハンマーの初速度を除した値に比例することになる.実
際 の 測 定 解 析 で は , 打 撃 力 波 形 の 前 半 (最 大 値 に 至 る ま で の 時 間 )と 後 半 を 分 け , 後 半 部
分 に つ い て , 式 (3)に 示 す よ う な 機 械 イ ン ピ ー ダ ン ス 指 標 値 を 用 い た .
ZR =
F
2VR
(3)
これは,図−1に示すように,打撃力波形を
最大値に至る前半と後半に分け,後半部分で
のコンクリートがハンマーを押し戻す時間に
着目したものである.打撃力の前半部分は,
ハンマーがコンクリートに力を作用させてい
る時間であり,この間ではコンクリート表面
の劣化等の影響を受ける可能性が考えられる.
図−1 打撃力の模式図
これら対し,後半部分は,コンクリートが弾
性変形エネルギーを放出してハンマーを押し戻す時間であるから,よりコンクリートの
弾性的特性を反映した指標となるものと考えられる.
3. 実 験 方 法 お よ び 実 験 結 果
3.1 設 置 方 法 (較 正 試 験 方 法 )の 検 討
打撃による測定方法を用いる場合,反力の発生機構について考慮する必要がある.す
なわち,打撃によって供試体が運動すれば,打撃エネルギーが供試体の運動エネルギー
に 吸 収 さ れ 式 (2)の 関 係 が 成 立 し な い .こ の よ う な 影 響 は ,シ ュ ミ ッ ト ハ ン マ ー の 場 合 に
見られることが知られている.
ゴム
モルタル
直接
1200
1000
加速度
800
600
400
200
0
-200700
写真−1
実験状況
800
900
1000
時間(μs)
図−2 測定波形
1100
こ の 実 験 で は , 同 一 配 合 の コ ン ク リ ー ト (W/C=50%, ス ラ ン プ 80mm)を 用 い て 6 個 の テ
ス ト ピ ー ス を 製 作 し ,テ ス ト ピ ー ス の 設 置 方 法 を 3 条 件 (防 振 ゴ ム の 上 に 置 く ,コ ン ク リ
ー ト 床 に 直 接 置 く ,モ ル タ ル で コ ン ク リ ー ト 床 に 接 合 す る )と し ,機 械 イ ン ピ ー ダ ン ス に
変 化 が あ る か ど う か を 検 討 し た . 実 験 の 状 況 を 写 真 − 1 に 示 す . 打 撃 に は , 半 径 10mm
の 球 面 を 持 つ 質 量 30g の ハ ン マ ー に 加 速 度 計 PCB 350B03 を 取 り 付 け た ハ ウ ス メ イ ド の イ
ン パ ル ス ハ ン マ ー を 用 い た . 弾 性 波 速 度 の 測 定 に は , 加 速 度 計 PCB352C66 を テ ス ト ピ ー
スの測定面に押しつけて測定した振動応答から算出した.測定は,テストピースの中心
か ら 25mm の 位 置 を 打 撃 し , ま た 振 動 応 答 は 打 撃 点 か ら 50mm 離 れ た 点 で 行 っ た . な お ,
測 定 装 置 は ,2ch 同 時 測 定 ,サ ン プ リ ン グ 時 間 1μ s,サ ン プ リ ン グ デ ー タ 数 8000 個 で あ
る.ハンマーで測定した加速度波形を図−2に示す.打撃の強さは,試行ごとにことな
るが,波形の継続時間は,ほぼ同様となっている.
表−1に実験結果を示す.なお,実験後,テストピースの1軸圧縮試験を行ったが,
そ の 結 果 を 表 − 1 に 併 記 し て い る .各 要 因 の 分 散 は ,残 差 3,401,057 に 対 し ,(A)テ ス ト
ピ ー ス 間 2,597,367, (B)支 持 条 件 間 46,514 で あ り , 支 持 条 件 に よ る 測 定 値 に 違 い は な
い こ と が 分 か っ た .ま た ,テ ス ト ピ ー ス の 1 軸 圧 縮 強 度 に 違 い は あ る が ,分 散 分 析 で は ,
テストピース間の有意差は,検出されなかった.
表−1
テストピース番号
支持条件の影響
1
2
3
4
5
6
圧 縮 強 度 (N/mm )
39.1
36.8
40.2
39.3
40.7
37.6
イン
24547
24101
26778
25986
24852
26301
2
ピー
ダン
ゴム
設置
方法
ス
直接
24698
24693
24486
23961
25317
29736
モルタル
23637
29426
20524
32300
22811
26253
24294
26073
23929
27416
24327
27430
平均
3. 2 機 械 イ ン ピ ー ダ ン ス に よ る 圧 縮 強 度 の 推 定
表−2に示す強度の異なる8種のコンクリートを用い,機械インピーダンスによる圧
縮 強 度 推 定 実 験 を 行 っ た . コ ン ク リ ー ト は , い ず れ も ス ラ ン プ 150mm, 最 大 骨 材 25mm,
テ ス ト ピ ー ス の 寸 法 は ,150mm×φ 300mm で あ る .実 験 で は ,設 置 方 法 を 防 振 ゴ ム 上 に 置
く方法と直接コンクリート上に置く方法を用いた.測定項目は,表−2に示すとおり,
弾 性 波 速 度 お よ び 式 (3)に よ る 機 械 イ ン ピ ー ダ ン ス 指 標 値 で あ り ,実 験 後 1 軸 圧 縮 試 験 を
行 っ て い る . 弾 性 波 速 度 は , テ ス ト ピ ー ス (高 さ L )の 軸 方 向 に 多 重 反 射 す る 弾 性 波 動 の
固 有 周 波 数 ( f 0 )を 測 定 し , v = 2 f 0 L と し て 算 出 し た .
表−2
供試体番号
強度の異なるテストピースによる実験結果
No.1
No.2
No.3
No.4
No.5
No.6
No.7
No.8
15
18
21
24
27
30
33
36
65.0
58.0
53.2
48.5
45.2
41.8
38.9
37.0
圧 縮 強 度 (N/mm )
16.7
22.0
23.2
29.0
30.7
30.9
30.9
32.5
弾 性 波 速 度 (m/s)
3447
3635
3680
3750
3825
3825
3710
3780
2
設 計 強 度 (N/mm )
W/C
2
イ ン ピ 設 置
ゴム
22155
23879
24231
24916
25117
27220
26626
26531
ー ダ ン 方法
直接
23627
22148
24178
26142
25942
25335
24769
24074
22891
23014
24204
25529
25530
26278
25697
25303
ス
平均
実験結果を図−3および図−4に示す.図−3は,機械インピーダンス指標値と圧縮
強度の関係,また図−4は,弾性波速度と圧縮強度の関係を示している.図に示すよう
に,いずれも圧縮強度と相関関係はあるが,弾性波速度の方が高い相関係数となってい
る.
30
20
10
0
20000
図−3
2
40
50
y = 0.0041x - 74.434
r = 0.93
圧縮強度(N/mm )
圧縮強度(N/mm 2)
50
22000
24000
26000
28000
機械インピーダンス指標値
機械インピーダンスと圧縮強度
y = 0.042x - 127.5
r = 0.92
40
30
20
10
0
3400
3500
図−4
3600
3700
3800
弾性波速度(m/s)
3900
弾性波速度と圧縮強度
5. ま と め
テストピースの設置方法による機械インピーダンス指標値の測定結果に違いは認めら
れなかった.このことは,本測定方法を適用する場合にコンクリート供試体の支持条件
に つ い て 厳 密 な 管 理 が 必 要 で な い こ と を 意 味 し て い る .ハ ン マ ー の 質 量 が 150g の 場 合 に
ついても同様に支持条件による測定値の違いは見られなかった.
機械インピーダンスによる圧縮強度推定では,ブロック状の供試体を対象として場合
と比較して,テストピースを用いた場合の方が高い相関係数を示した.しかしながら,
図 − 2 に 示 す よ う に 圧 縮 強 度 が 30N/mm 2 を 越 え る 供 試 体 で は , 機 械 イ ン ピ ー ダ ン ス 指 標
値と圧縮強度の関係が乖離する傾向が見られる.弾性波速度と圧縮強度の相関は,機械
インピーダンスの場合よりも高いが,これは測定手法の違いによるものと考えられる.
すなわち,弾性波速度は,テストピースの軸方向に伝搬する波動の多重反射周波数から
求めており,テストピース全体の平均的な弾性率を反映した値であるのに対し,機械イ
ンピーダンス指標値は,テストピースの測定表面近傍の弾性率を反映している値である
ためと考えられる.
参考文献
1) 古 賀 裕 久 ほ か : 反 発 度 法 に よ る 新 設 構 造 物 検 査 に 関 す る 検 討 ,日 本 道 路 協 会 第 24 回
日 本 道 路 会 議 一 般 論 文 集 ( A), pp.342-343, 2001.10
2) Ste phan P. Pessiki, Nicolas J. Carino: Setting Time and S trength of Concrete Using the
Impact Echo Method, ACI Materials Journal, 1988 September-October, pp.398-399,1988
3) 岩 野 聡 史 , 境 友 昭 , 極 檀 邦 夫 , 森 濱 和 正 : 非 破 壊 試 験 に よ る コ ン ク リ ー ト 品 質 、 厚
さ 、鉄 筋 の 計 測 に 関 す る 研 究 そ の 2 3 弾 性 波 法 に よ る コ ン ク リ ー ト 強 度 の 推 定 ,
日 本 非 破 壊 検 査 協 会 平 成 13 年 度 秋 季 大 会 講 演 概 要 集 , pp.111-114, 2001.10
4) 境 友 昭 , 極 檀 邦 夫 , 久 保 元 樹 , 久 保 元 : 接 触 抵 抗 に よ る コ ン ク リ ー ト 強 度 の 推
定 ,日 本 非 破 壊 検 査 協 会 シ ン ポ ジ ウ ム コ ン ク リ ー ト 構 造 物 の 非 破 壊 検 査 へ の 期 待
論 文 集 , pp.57-64, 2003.7