仲裁と調停 - HKTDC

2009 年 7 月 6 日
仲裁と調停
概要
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香港は、高度に発達し、充実した内容の法律制度を完備しているため、
商事紛争解決の主要な場所となっている。
香港には経験豊富な法律専門家が多数おり、仲裁及び調停によって執り
行われる商事紛争解決の支援が可能である。
香港で行われた仲裁裁定は、世界の貿易経済圏のほとんどの裁判所にお
いて法的強制力を有する。
香港国際仲裁センター(HKIAC)が扱った紛争解決の案件は 2007 年の
448 件から 2008 年の 602 件と増加している。
HKIAC の新規定が 2008 年 9 月に導入され、言語の選択肢を増やすこと
で当事者に一層の自治性を提供し、紛争解決の際に香港で仲裁を行うこ
とを推奨している。また、国際仲裁サービスにおいては、香港が主導的
存在であるという認識に基づき、国際商業会議所(International Court of
Arbitration of the International Chamber of Commerce(ICC))はアジ
ア初の事務所を 2008 年 11 月に香港に開設した。
中国本土企業が香港を仲裁センターとして利用するケースが増えてい
るが、中国の WTO 加盟に伴い、海外投資家や貿易業者と中国との取引
が増加しているため、紛争件数も増えることが予想されている。多くの
海外投資家は、第三者的な場所(中立地)における紛争解決を選択して
いるが、香港は中国-海外企業プロジェクト関連の紛争解決に当たり、
理想的な場所である。
業界データ
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2006
2007
2008
HKIAC が扱った仲裁件数
394
448
602
商事
102
103
129
建築
181
183
208
海運
18
27
36
その他
93
135
229
出処:香港国際仲裁センター
サービス
仲裁とは、裁判所でなく仲裁者が裁定を行う法的プロセスのことである。また、
仲裁が行われる際、当事者双方が紛争は裁判所ではなくて仲裁者によって処理
されることに合意していなければならず、この同意は通常、紛争が発生する前
の商業協定の条項の中で署名されている。HKIAC のもと執り行われた仲裁件
数は 2008 年には 602 件を数え、2007 年の 448 件から大きく増加している。
一方、香港では個別の仲裁についても多数行われている。
紛争を解決する今一つの手段として調停がある。これはメディエーターなど中
立の第三者が同席した上で、当事者同士が話し合いによって紛争を和解するプ
ロセスである。仲裁と違ってメディエーターは紛争和解に向けた強制力は持た
ないが、当事者同士の話し合いを促すに当たり、感情的な表現を抑制するなど
して意志伝達がきちんとできるように側面支援を行う。当事者間が合意に至っ
た場合は、合意した全ての内容が含まれる法的拘束力のある契約書に署名する。
一定期間内に合意に至らなかった場合、メディエーターは費用を抑えるため、
調停を一時的または永久的に終結することを提案することがある。
香港仲裁条例(Hong Kong Arbitration Ordinance)は、世界で最も先進的な仲
裁規則の 1 つとして広く認知されている。香港でなされる仲裁裁定は、香港が
外国仲裁判断の承認と執行に関する「ニューヨーク条約(New York
Convention)」の当事国であることから、世界の貿易経済圏のほとんどの裁判
所を通して法的強制力を有する。また、これらの裁定は、2000 年に香港と中
国本土間で相互承認と仲裁裁定の実施についての相互協定が成立しているこ
とから、中国本土でも法的強制力がある。香港で行われる国際仲裁には国際連
合国際商取法委員会(United Nations Commission on International Trade Law
(UNCITRAL))の国際商事仲裁モデル法が適用されている。
サービス・サプライヤー
仲裁者は一般的に、仲裁を必要とする専門的な問題について知識を備えた専門
的職業出身の上級プロフェッショナルであり、例えば弁護士、会計士、エンジ
ニア、建築家、建築積算士などがそれに当たる。言い換えれば、仲裁のサプラ
イヤー・サービスは経済圏の専門的職業に応じて広く点在していると言え、こ
の点で仲裁センターとなる場所は、主要な商業センターがその権利を有してい
ることが多い。
調停者は紛争を解決するスキルと知識を持ち、訓練を受けている中立の第三者
であり、通常ソーシャルワーク、建築、教育、法律、エンジニアリングなど各
分野の専門家であることが一般的である。調停者の任務には、当事者の紛争解
決に向けた話し合いと、相互理解による紛争終結を促進するプロセスの企画、
準備も含まれており、そのプロセスは公平かつ極秘に行われなければならない。
調停者の役割は和解に向けて両当事者の援助者となることであり、審判を行う
ことではない。
アジアの主導的商業センターとしての香港は、商業、財務、情報技術、事業法、
海運、建築の各分野において確かな専門的知識を兼ね備え、数多くの経験豊富
な専門家と共に、仲裁及び調停による商事紛争解決の支援が可能である。
香港の仲裁・調停サービス関連機関には、香港国際仲裁センター(Hong Kong
International Arbitration Centre(HKIAC))、香港仲裁司学会(Hong Kong
Institute of Arbitrators(HKIArb))、英国仲裁人協会(Chartered Institute of
Arbitrators(CIArb))、国際商業会議所(International Chamber of Commerce
(ICC))、香港調解學院(Hong Kong Institute of Mediation(HKIMed))、
香港和解中心(Hong Kong Mediation Centre(HKMC))、香港調解會(Hong
Kong Mediation Council(HKMC))、香港調解顧問中心(Conflicts Resolution
Centre(CRC))などがある。
輸出
アジアのその他の地域と比較すると、地場当事者が関係していない仲裁取り扱
い件数は香港が最大であると見られている。例えば 2007 年に HKIAC は 313
件(インターネット上のドメイン名紛争を除く)を扱ったが、そのうち 78 件
は、両当事者ともが非香港企業であり、61 件の当事者は香港と外国企業で、
残りの 174 件は両当事者ともに香港企業だった。非香港企業が当事者だった
ケースの国籍には、中国本土、米国、台湾、シンガポール、韓国が含まれてい
た。
更に、中国本土企業が香港を仲裁センターとして利用することが増加している
ことも特筆に値する。香港が仲裁地域として特定され、当事者が共に中国本土
企業の仲裁は 1997 年以前は 0 件だったが 2005 年には 15 件、2007 年には 20
件と増加傾向にある。
業界の発展と市場動向
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近年、仲裁と調停は従来の訴訟に頼ることなく紛争を解決する 1 代替手
段として一般的になってきている。今後、地元のどの地域よりも香港で
一層の国際商事仲裁が扱われるものと予想される。
近年アジアにおける仲裁件数は著しく増加している。中国国際経済貿易
仲裁委員会(China International Economic and Trade Arbitration
Commission(CIETAC))の取り扱い件数は 1985 年の 37 件から、2008
年には 1,230 件、また、HKIAC では 1985 年の 9 件から 2008 年には
602 件とともに急増している。
HKIAC はインターネット関連サービスに関する仲裁解決の点でも特に
重要視されている。例えば近年では”.cn”ドメイン名関連の仲裁が増加し
ており、2005 年の 8 件から 2008 年には 128 件と増えている。このこ
とは HKIAC が”.cn” 関連のドメイン名仲裁解決サービスを提供する主
要機関となっていることを示している。
中国と海外企業との仲裁件数は中国の WTO 加盟を機に増加しているが、
多くの海外投資家は第三者的な場所(中立地)における紛争解決を選択
している。香港は中国-海外企業プロジェクト関連の紛争解決の場所と
しては理想的である。
2008 年 1 月、HKIAC は CIETAC との提携合意書に署名し、両機関の保
有する情報、管理ノウハウ、仲裁の知識の共有と強化を図っている。
2008 年 9 月、HKIAC は、中国と海外企業との仲裁において言語の選択
肢を増やし、当事者に対し一層の自治性を提供できるようにするために、
国際仲裁についての新規定を導入した。
「香港仲裁法案」が 2009 年 2 月に議会を通過し、全ての国内及び海外
の仲裁機関は同一の規則に従うことになった。それによって香港の法律
が国際標準に並ぶことになり、混乱を避けることが可能となった。新条
例は、「国際連合国際商取法委員会(UNCITRAL)」基準に則っている。
2007 年から 2008 年の政府方針演説によると、香港政府は香港を国際
紛争解決センターとしてプロモートすることを宣言している。具体的に
は、HKIAC は香港の仲裁サービスをアメリカにおいて普及させる目的
のプロジェクト「Professional Services Development Assistance
Scheme(PSDAS)」を 2008 年 3 月に完了している。
2008 年 11 月に国際商業会議所(ICC)は、国際仲裁サービスにおいて
香港が主導的存在であるという認知のもとにアジア初のオフィスを開
設した。このことは国際的仲裁機関と連携を深め、香港の仲裁サービス
機能の強化に繋がるものと期待されている。