馬上 丈司(まがみ たけし)

自然をエネルギーに、エネルギーを未来に
千葉エコ・エネルギー株式会社
馬上 丈司
[略歴]
馬上 丈司(まがみ
たけし)
昭和 58 年生まれ 30 才
千葉大学法経学部総合政策学科卒業
千葉大学大学院人文社会科学研究科公共研究専攻博士後期課程修了
日本初となる博士(公共学)の学位を授与
専門はエネルギー政策論、地域政策論、環境マネジメントシステム論など
千葉大学法経学部特任講師(2012 年~2013 年)
千葉エコ・エネルギー株式会社代表取締役(2012 年 10 月~)
NPO 法人ソーラーシティ・ジャパン理事(2013 年 4 月~)
[近著]
知ろう!再生可能エネルギー(少年写真新聞社 刊)
地図で読む日本の再生可能エネルギー(永続地帯研究会編 旬報社 刊)
[会社概要]
社 名:千葉エコ・エネルギー株式会社
設 立:2012 年 10 月
本 社:千葉県千葉市稲毛区緑町 1-16-22
事 業:自然エネルギー発電事業の開発支援・コンサルティング
自然エネルギー発電事業に対する事業性評価レポートの提供
自然エネルギーを活用した地域づくり支援
[事業実績]
自然エネルギー発電事業に対する事業性評価実績
:550MW 以上
メガソーラーを含む太陽光発電所のプロジェクト支援
:17MW 以上
資源エネルギー庁「平成 25 年度新エネルギー等共通基盤整備促進事業」採択
経済産業省「平成 25 年度グループ単位による事業競争力強化モデル事業」採択
鎮守の森コミュニティ研究所との共同研究事業(平成 26 年度以降)
ほか
平成 26 年 6 月 18 日
自然をエネルギーに、エネルギーを未来に
馬上 丈司
1. エネルギー政策の転換期
東日本大震災によるエネルギー供給構造の変化

福島第一原子力発電所のメルトダウンによる原子力政策見直し

大規模災害に対するエネルギーインフラの脆弱性露呈

防災用のエネルギー利用設備の導入拡大
2. 再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度(FIT)
2012 年 7 月から導入された、自然エネルギー発電設備によって発電された電気を電
力会社が政府の定めた価格で買い取る制度。発電設備によって異なるが、10~20 年間
は発電所建設時に決定した買取価格が適用され続ける。
3. 化石燃料資源の消費拡大
1973 年の第一次オイルショック以降、原子力の拡大や太陽光発電・地熱発電の技術
開発などエネルギー構造を変えようとしてきた一方で、消費の絶対量は拡大の一途。
特に震災以降は天然ガスの消費が拡大すると共に、従来から増加傾向にあった石炭
消費も伸びていく可能性が高い。この輸入コストが社会的負担として急増している。
4. 自然エネルギーバブルの到来
固定価格買取制度の導入によって、従来は地球温暖化対策など環境問題への関心か
ら導入されていた自然エネルギー発電設備が、投資対象としての魅力を獲得。特に太
陽光発電は建設の容易さ、計画から売電開始までの期間の短さから外国資本も含めた
新規参入が相次いでいる。
ただ、急激な導入拡大に対して規制強化も進んでおり今後の動向は不透明である。
平成 26 年 6 月 18 日
自然をエネルギーに、エネルギーを未来に
馬上 丈司
5. 地域資源としての自然エネルギーへの注目
太陽光、風力、水力など自然エネルギー源は各地域に固有の資源であり、化石燃料
などと異なって地産地消の傾向が非常に強い。それに加えて適切に利用すれば環境負
荷も低く、買取制度などの政策で普及が進み技術革新と低コスト化が進めば各地域で
自立したエネルギー事業を打ち立てていくことが可能になる。
外部から購入していたエネルギーを自給できれば、その分の支払いコストが地域内
にとどまることになるだけでなく、余剰エネルギーを域外に売ることで収益を得られ
ることになる。他方で、自然エネルギー設備の設置ノウハウや資金不足というハード
ルもあり、取り組むことが出来ている地域はまだ少数である。
6. 2020 年の先
自然エネルギーを巡る社会情勢は大きく変化しており、政策的にも 2016 年の電力
小売り完全自由化や 2020 年を目処とした発送電分離など、過去 100 年のエネルギー
政策を大転換するような変化が今後相次いでいく。
その中で、これまで中央集権的であった政府主導のエネルギー供給システムから、
地域分散的あるいは各個の自給自足的なエネルギー生産体制が自然エネルギーを軸に
整えられていくと考えられる。
この変化と並行して進んでいくのが、少子高齢化・人口減少社会と称される日本全
体の経済縮小・衰退を招く将来社会像である。自然エネルギーの普及によって各地域
の経済生産性が向上する可能性はあるものの、それを上回る速度で人口流出・減少が
進んでいけば地方の衰退を止めることが出来ず、その先にある国家全体の衰退にも歯
止めをかけることができない。
7. エネルギーを未来に
自然エネルギーの最大の特徴は、適切に利用した場合の環境負荷の低さと、小規模
分散利用による自給自足性にある。各地域あるいは個人が自らの消費するエネルギー
を、自然エネルギーによって得られる範囲に抑えることが出来れば、現在のような国
土の隅々まで張り巡らせた長大なインフラを整備・管理する社会的コストを抑制でき
る。また、自然エネルギーは農業とも親和性が高く、食料とエネルギーの自給自足・
地産地消が進めば安定した地域経済圏の確立も可能になると考えられる。
他方で、現在わが国で自然エネルギーを選択する際の志向には、社会的な議論が不
十分な傾向がある。化石燃料の環境負荷と資源不安、原子力災害の甚大な被害など既
存のエネルギー資源に対する不信感、自然災害に対する防災としての手段、エネルギ
ーの自給自足というポリシー、あるいは単に投資的な魅力があるからなのか。
今のような「哲学なき自然エネルギーの普及」は、エネルギーを未来に残すことに
必ずしも有益な結果をもたらさないだろう。
平成 26 年 6 月 18 日
自然をエネルギーに、エネルギーを未来に
馬上 丈司