close

Enter

Log in using OpenID

当院における出生後 24 時間以内の新生児の授乳

embedDownload
当院における出生後 24 時間以内の新生児の授乳回数について
吉野産婦人科医院
金山由香理(Yukari Kanayama) 青山恵里(Eri Aoyama)
小田美江(Mie Oda)
金築晴栄(Harue Kanetsuki)
河瀬しのぶ(Shinobu Kawase)
古居幸代(Yukiyo Hurui)
原 百子(Momoko Hara)
吉野和男(Kazuo Yoshino)
要 約
当院における出生後 24 時間以内の新生児の授乳回数を 7 回以上,
未満に分けて,新生児の最低体重となった日数,体重減少率,出生
後 5 日目,2 週間目,1 ヶ月目の新生児の体重増加率,入院中に補足
した割合,出生後 72 時間以内に有効な乳汁分泌が得られるようにな
った割合,化膿性乳腺炎の頻度について比較検討した。新生児の最
低体重となった日数,体重減少率,有効な乳汁分泌が得られるよう
になった割合,入院中に補足した割合,出生後 5 日目の新生児の体
重増加率については有意差がみられた。
出生後 24 時間以内に 7 回以上授乳することは有効であると思われ
る。
Ⅰ.緒言
母乳育児成功のための必要条件として,山内の 3.5 カ条がある1)。
その条件の一つに出生後 24 時間以内に 7 回以上の授乳(ただし,初
回授乳は数えず)があげられている。出生後 24 時間以内の授乳回数
は,出生後数日後の児の状態,あるいは母親の状態と密接に関連し
ているという意味で,非常に大きな意義をもっている。今回,出生
後 24 時間以内の授乳回数と新生児および乳房の状態について検討し
た。
Ⅱ.研究対象および方法
当院で,2009 年1月∼12 月に正期産で
出産した 2500g 以上の新生児 192 名(初産婦 77 名,経産婦 115 名)
を対象とした。出生後 24 時間以内の授乳回数を調べ,授乳回数 7 回
以上の群(以下 7 回以上群)と,7 回未満の群(以下 7 回未満群)に
わけ,最低体重となった日数,体重減少率および平均体重増加率,
有効な乳汁分泌が得られた時期,補足した人数,化膿性乳腺炎の頻
度についてt検定を用いて比較検討した。
Ⅲ.結果
1)出生後 24 時間以内の授乳回数について
出生後 24 時間以内の授乳回数が 7 回以上群は 78.1%,7 回未満群は
21.9%であった(図 1)。
(図1)
2)出生後 24 時間以内の授乳回数別の最低体重となった日数と体重減
少率について
最低体重となった日数は 7 回以上群で 2.3 日,
7 回未満群では 2.8
日だった。体重減少率は 7 回以上群で−7.1%,7 回未満群では−
8.0%で,7 回以上群の方が最低体重となった日数が有意に早く,体
重減少率は有意に少なかった。
1
%
系列2.8日
2
2.3日
-1
7回以上群
7回未満群
-3
-5
-7
-9
(日)
-7.1
-8.0
3)出生後 24 時間以内の授乳回数別の有効な乳汁分泌が得られるよう
になった時期について
有効な乳汁分泌の基準
(表1)
当院での有効な乳汁分泌の基準(表 1)を参考に比較検討すると,生
後 72 時間以内に有効な乳汁分泌が得られたのは 7 回以上群で 68.0%,
7 回未満群では 50.0%であり,7 回以上群の方が,生後 72 時間以内
に有効な乳汁分泌が得られた割合が有意に多かった。
48名
32.0%
102名
68.0%
7回以上群
72時間未満
72時間以上
21名
50.0%
21名
50.0%
7回未満群
0%
25%
50%
75%
100%
4)出生後 24 時間以内の授乳回数別の入院中に補足した人数について
補足した割合について,7 回以上群は 5.3%,7 回未満群は 16.7%
で,7 回以上群の方が補足した割合が少なかった。
補足の種類については,7 回以上群では,ミルクのみ補足したのが 8
名中 5 名だったのに対して,7 回未満群では 7 名中 6 名で,7 回未満
群の方がミルクのみ補足した人数は多かった。
5)出生後 24 時間以内の授乳回数別の平均体重増加率(出生後 5 日
目・2 週間目・1 ヶ月目)について
平均体重増加率は,出生後 5 日目は 7 回以上群が−2.8%,7 回未満
群が−4.1%で 7 回以上群の減少率は有意に少なかった。2 週間目,1
ヶ月目では大きな差はみられなかった。
33.5
35
30
32.4
25
20
15
7.9
10
5
0
-5
7回以上群
7.2
7回未満群
-2.8
出生後5日目
-4.1
2週目
1ヶ月目
6)出生後 1 ヶ月までの化膿性乳腺炎の頻度について
化膿性乳腺炎の頻度は,7 回以上群で 11.3%,7 回未満群では 9.5%
で大きな差はなかった。
Ⅳ.考 察
Klaus2)は,
「授乳回数−ささいな事柄、しかし母乳栄養の本質にか
かわる問題」として授乳回数の重要性を報告し,生直後からの頻回
授乳(10 回/日以上)の実施を勧めている。山内芳忠らは,生後 24
時間以内の授乳回数の平均値±1 標準偏差は 4.3±2.5 であったとこ
ろから,平均値+1 標準偏差以上すなわち 7 回以上を頻回授乳群とし,
それ以下を非頻回授乳群とし,2 群に分けて検討を行っている。その
結果,頻回授乳群では胎便排出回数が有意に多く,生理的体重減少
の程度も軽度で,日齢 3 と日齢 5 での母乳摂取量は有意に多く,高
ビリルビン血症の頻度も少なく,退院時での体重減少の程度は有意
に軽度であったと報告している3)。今回,当院における出生後 24 時
間以内の新生児の授乳回数について見てみると,7 回以上群の割合が
78.0%と高率であった。これは、WHO の「母乳育児を成功させるため
の 10 カ条」の第 8 条目に 赤ちゃんが欲しがる時はいつでもお母さ
んが母乳を飲ませてあげられるようにしましょう とあり、2006 年
に当院が「赤ちゃんにやさしい病院」4)に認定されて、かつ山内の
3.5 カ条1)を順守していることなどが関係していると思われる。
一般的な体重減少は生後 3∼4 日目頃で,生下時体重への回復は 7
∼10 日目頃と言われ,体重減少のピークは完全母乳群では 1∼2 日,
不完全母乳群では 3∼4 日で,当然のことながら母乳分泌の悪いもの
程,減少のピークは遅れていると報告されている5)。 当院におけ
る最低体重となった日数と体重減少率について,7 回以上群の方が最
低体重となった日数は早くなり,体重減少率は少ない結果となった。
産後 24 時間以内の乳汁分泌量は 10ml 程度,48 時間で 20ml 程度,
72 時間でようやく 30ml 程度だが,乳頭に吸啜刺激が加わるとそれに
応じてオキシトシンとプロラクチンの血中濃度は一過性に上昇する。
その働きにより産後 3 日を過ぎて分泌の早い人で 1 回 20∼30ml 程度
の哺乳量になる6)。生後 24 時間における授乳回数は,日齢 3 および
5 における母乳分泌量と強い相関を示し,生後 24 時間以内に回数多
く授乳した母親の方が,日齢 3 および 5 において明らかに多量の母
乳を分泌する7)。今回,当院においても,生後 72 時間以内に有効な
乳汁分泌が得られたのは 7 回以上群の方が,7 回未満群と比べて多い
結果となった。また,入院中に補足した人数については,7 回以上群
の方が補足した割合が少なかった。これは,乳汁分泌量が早期に得
られることによって,7 回以上群では補足の必要性がなかったためで
はないかと推察される。平均体重増加率は,出生後 2 週間目,1 ヶ月
目で大きな差はみられず、出生後 1 ヶ月までの化膿性乳腺炎の頻度
についても 7 回以上群と 7 回未満群の両群間で有意な差はみられな
かった。
出生後 24 時間以内に 7 回以上授乳することは,「新生児が哺乳す
るかもしれないと考えられるような動作・表情を示した場合には,
できるだけ積極的に授乳する」というのが基本的発想であり,この
場合の授乳は,授乳間隔・授乳時間・授乳量などとは全く無関係で
ある7)。母子という一組が,授乳・吸啜という行動,nonnutritive
な行動を出生後早期から繰り返すところに意味があるのである8)。
以上のことより,出生後 24 時間以内に 7 回以上授乳することは,
有効な乳汁分泌が生後 72 時間以内に得られ,新生児の体重減少率も
少なくなり,母乳確立に有効であると推察される。
Ⅴ.結 語
出生後 24 時間以内の授乳回数が 7 回以上群の方が,新生児の体重減
少率,入院中に補足した人数は低く,出生後 3 日以内に有効な乳汁
分泌が得られるようになった割合も高かった。出生後 5 日目の新生
児の体重増加率については両群間で有意な差はみられたが,出生後 2
週間目,1 ヶ月目の新生児の体重増加率,化膿性乳腺炎の頻度につい
ては両群間で有意な差はなかった。
よって,出生後 24 時間以内に 7 回以上授乳することは,有効な乳
汁分泌が生後 72 時間以内に得られ,新生児の体重減少率も少なくな
り,母乳確立に有効であると思われる。
参考文献
1)山内芳忠.「赤ちゃんにやさしい病院」の母乳育児指導.ペリネ
イタルケア.大阪,メディカ出版,2002,19(3),20−21.
2)Klaus,M.H.:The frequency of suckling A negrected but essential
ingradient of breastfeeding.Obst Gyn Clin,1987,14,623
−633.
3)山内芳忠,山内逸郎.母乳栄養児の授乳回数とその臨床的意義.
ペリネイタルケア.1989.8(2)
.19−23.
4)大山牧子,瀬尾智子,武市洋美 他.母乳育児支援スタンダード.
東京,医学書院,2007,26−35.
5)根津八絋.乳房管理学.諏訪メディカルサービス.長野,明倫堂
書店,1997,294−310.
6)橋本武夫.母乳育児支援アンサーブック.ペリネイタルケア.大
阪,メディカ出版,2004,95−96.
7)山内逸郎.小児科医へのアドバイス④母乳育児.小児科診療.1993,
56,2334−2335.
8)山内逸郎.早期授乳と母乳確立.周産期医学.1990,20,309−
312.
Author
Document
Category
Uncategorized
Views
1
File Size
372 KB
Tags
1/--pages
Report inappropriate content