Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 33, No. 6 寒冷地の住宅における高効率給湯・暖房システムの稼動特性 と性能評価に関する研究 Study on Operating Characteristics and Performance Evaluation of Efficient Residential Hot Water Supply and Space Heating Systems for Cold Regions 武田 清賢 * ・ 濱田 K i y o t a k a Ta k e d a 後藤隆一郎 * 靖弘 * * ・ Ya s u h i r o H a m a d a ・ 中村 Ryuichiro Goto 充 * 高田信一朗 * * S h i n i c h i r o Ta k a t a ・ Mitsuru Nakamura 板野 愉朋 ・ 南沢 慶一 * * Keiichi Minamisawa * Yo s h i t o m o I t a n o (原稿受付日 2012 年 5 月 30 日,受理日 2012 年 10 月 12 日) This paper describes the effectiveness of residential condensing boiler and load following gas engine (GE) combined heat and power (CHP) systems in cold regions for energy conservation. Filed measurements of GE-CHP were carried out. From the feature that the exhaust heat is only used for space heating, GE-CHP does not operate when space heating is not required. However, when space heating is applied, both power and heating load become rather high, making the introducing effects of GE-CHP high. Operating results of the filed measurements clarified that high effects can be obtained throughout a year. の一部は発電しない.しかし,北海道においては暖房使用 1.はじめに 改正省エネルギー法(エネルギーの使用の合理化に関す 期間が長い(11 月~5 月程度)ことと,冬期は電力・熱負 る法律の一部を改正する法律)では,住宅の省エネルギー性 荷ともに比較的高くなることから,通年の GE-CHP の導入 能の判断基準として,基準一次エネルギー消費量が示され, 効果は高くなる. 1) .そして,省エネルギー 本論文では,当該家庭用 GE-CHP システムを,寒冷地の 性能については,これまでの断熱・気密性能などに加え, 実住宅に設置した際の導入効果について報告する.まず, 暖冷房・給湯など住宅設備の機器効率を踏まえた評価が必 潜熱回収型給湯・暖房機単体の性能を明らかにするため, 要となる.住宅における省エネルギー化は,近年増加傾向 試験モードによる実験,およびフィールド実測による実使 にある民生部門のエネルギー消費量を削減する上でも重要 用下におけるシステム性能について評価を実施した.次に, である.このような状況から,給湯・暖房用のボイラは潜 GE も加えた当該家庭用 CHP システムのフィールド実測試 熱回収型が普及しつつあるが,さらに高い省エネルギー 験を実施した.冬期代表週および年間の運転状況の評価を 性・環境保全性を有するガスエンジン(Gas Engine:GE) 通じ,本システムの省エネルギー性・経済性を明らかにし その達成率の報告が求められる 2) ,燃料電池(Fuel Cell:FC) 3) , 4) た. などの家庭用熱電併給 (Combined Heat and Power:CHP)システムが注目されて いる.また,寒冷地区である北海道では,家庭部門におけ 2.潜熱回収型給湯・暖房システムの試験モードおよびフ る一人当たりのエネルギー使用量が全国平均の約 1.5 倍程 ィールド実測による評価 5) 度 になっている. 潜熱回収型給湯・暖房機は,従来回収しきれなかった排 気ガス中の水蒸気による潜熱を二次熱交換器により回収し, このような状況を受け筆者らは,潜熱回収型給湯・暖房 加熱に用いる高効率な機器である.本研究で取り上げた機 機と負荷追従型 GE を併用した寒冷地向け CHP システムの 6) 導入効果について検証してきた .本システムは,GE の排 器の概要を表 1 に示す.使用した潜熱回収型給湯・暖房機 熱を暖房にのみ利用するのが特徴であり,別置きの貯湯タ は給湯時最大 52.3 kW,5.58 kW の最小能力を有する.追焚 ンクが不要である.また,潜熱回収型給湯・暖房機は,給 に関しては 8.72 kW,暖房時には 2.5~14.0 kW の出力であ 湯負荷および GE の排熱で足りない分の暖房負荷を賄うた る.測定項目は外界気象条件,給湯・給水温度,流量で測 めに使用する.このため,暖房を使用しない夏期と中間期 定間隔は 2 秒とした.図 1 に給湯需要パターンの変動を重 視した複数日モードである財団法人建築環境・省エネルギ *北海道ガス株式会社 〒060-8561 札幌市中央区北 4 条東 5 丁目 373 e-mail [email protected] **北海道大学大学院工学研究院 〒060-8628 札幌市北区北 13 条西 8 丁目 e-mail [email protected] ー機構の修正 M1 モード 7)における給湯負荷を示す.修正 M1 モードは, 「平日(小)」, 「平日(大)」, 「休日在宅(小)」, 「休 日在宅(大)」,「休日不在(小)」,「休日不在(大)」の 6 パター ンからなる複数日モードであり,平均・変動が実測結果よ 21 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 33, No. 6 表1 給湯 ふろ 暖房 潜熱回収型給湯器・暖房機の概要 0 100 200 給湯量〔L〕 300 400 500 600 台所 湯はり 全体給湯負荷 47 MJ/d 潜熱回収型 ガス給湯機 給湯 有効給湯温度 41.5 ℃ 有効給水温度 15.6 ℃ 総合効率:91.8 % (全体給湯負荷/1次エネルギー消費量) 図2 700 外気温度 14.2 ℃ シャワー 洗面 CPEC:0.82 給水 ガス消費量 11 m3 51 MJ/d 平日(小) 平日(大) 排気 4 MJ/d 外気温度 9.6 ℃ 項目 能力最大 能力最小 ガス消費量 52.3 kW 5.58 kW 24 L/min 水温 +25℃上昇 出湯量 15 L/min 水温 +40℃上昇 能力制御範囲・方式 24号~2.5号・FF+FB+水比例制御+Q機能 温度調節範囲 37~48℃(1℃刻み) 60℃[13段階] 追焚能力 8.72 kW 最低作動流量 3.5 L/min 温度調節範囲 37~48℃(1℃刻み) 流量 5 L/minの時,53.9 kPa =5.5 mH 2O ポンプ機外揚程 暖房能力(出力) 2.5 kW ~14.0 kW 暖房水設定温度 高温側:80℃(エアコンアメニティー制御時は60℃) 流量 8 L/minの時,39.2 kPa =4.0 mH 2O ポンプ機外揚程 最大ガス消費量 69.5 kW (1次エネルギー消費量/従来システム1次エネルギー消費量) 修正 M1 モードにおける運転実績 排気 4.8 MJ/d 全体給湯負荷 42.5 MJ/d 潜熱回収型 ガス給湯機 休日在宅(小) 休日在宅(大) 給湯 有効給湯温度 40.3 ℃ 休日不在(小) 有効給水温度 16.0 ℃ 休日不在(大) 総合効率:90.0 % (全体給湯負荷/1次エネルギー消費量) 18:00 5 5 0.83 5 洗面 台所 5 0.83 台所 5 0.83 台所 5 25 台所 5 5 2.5 5 台所 台所 5 0.83 台所 5 0.83 台所 5 10 台所 5 5 2.5 5 台所 台所 5 0.83 台所 5 5 台所 5 5 台所 5 0.83 台所 5 0.83 台所 5 0.83 台所 5 2.5 台所 5 0.83 台所 5 0.83 19:45 21:45 台所 シャワー 5 2.5 台所 5 0.83 台所 5 2.5 台所 5 0.83 台所 5 0.83 台所 10 50 シャワー 5 0.83 台所 5 0.83 台所 5 0.83 台所 5 5 0.83 10 台所 洗面 5 0.83 洗面 5 0.83 洗面 5 0.83 洗面 10 20 シャワー 5 0.83 洗面 5 0.83 洗面 10 50 シャワー 5 2.5 洗面 5 0.83 洗面 5 5 洗面 600 500 400 300 200 100 0 図4 2009/5/6 洗面 台所 20 暖房 2009/4/22 0.83 2.5 追焚 2009/4/8 5 5 10 湯張 2009/3/25 洗面 給湯 2009/3/11 0.83 JGKA 標準モードにおける運転実績 2009/2/25 5 図3 用途 湯張 台所 2009/2/11 洗面 流量〔L/min〕 使用量〔L〕 15 180 5 10 (1次エネルギー消費量/従来システム1次エネルギー消費量) 2009/1/28 0.83 時間〔s〕 720 120 30 30 300 120 120 30 30 10 300 30 30 10 30 10 600 300 60 10 30 10 30 10 30 10 120 30 10 30 10 30 10 600 120 30 10 30 10 900 300 120 30 60 10 120 60 60 2009/1/14 5 開始時刻 19:30 2008/12/31 12:45 用途 洗面 2008/12/17 8:00 JGKA 標準モードにおける給湯負荷内訳 流量〔L/min〕 使用量〔L〕 5 10 2008/11/19 6:45 時間〔s〕 120 30 10 30 10 60 10 30 10 60 30 10 30 10 600 300 120 30 60 30 10 30 10 300 120 60 30 60 30 10 120 60 300 60 30 10 30 10 30 10 300 30 30 10 30 10 熱量 [MJ] 表2 開始時刻 CPEC:0.83 給水 ガス消費量 1.03 m3 47.3 MJ/d 修正 M1 モード概要 2008/12/3 図1 冬期運転実績 定 義 す る 一 次 換 算 エ ネ ル ギ ー 消 費 係 数 ( Coefficient of Primary Energy Consumption:CPEC)9)に関しても 0.82 と省 エネルギー性が高いことが示された.図 3 に JGKA 標準モ ードにおける運転実績を示す.継続時間・停止間隔が細か いため,熱効率 90.0 %,CPEC は 0.83 と修正 M1 モードと 比較して効率が低下したが,その差はそれほど大きくない. り設定されたものである.表 2 に給湯負荷の継続時間,停 また,フィールド実測は,札幌市内の戸建て住宅において 止間隔を重視した単日モードである社団法人日本ガス石油 実施した.対象住宅は総 2 階建てであり,延床面積は 128.35 機器工業会(Japan Industrial Association of Gas and Kerosene m2 となっている.図 4 と表 3 にそれぞれ冬期間の運転実績, Appliances:JGKA)の標準モード 用途別供給熱量を示す.湯張・追焚を含む全体給湯負荷, 8) における給湯負荷を示 期間暖房負荷はそれぞれ約 18 GJ,約 34 GJ であった(表 3). す.継続時間・停止間隔が細かく設定されている. 図 2 に修正 M1 モードにおける運転実績を示す.51 期間における給湯・暖房総合熱効率は 80~95 %の範囲であ MJ/day のガス供給を行い,47 MJ/day の給湯を賄っており, り,期間平均では 89.6%であった.図 2 の実績に従い給湯 熱効率は 91.8%となった.従来方式(非潜熱回収型ボイラ, 熱効率を 91.8 %と想定した場合,暖房熱効率は 88.5 %とな 熱効率 75.0 %)に対する一次エネルギー消費量の比として る. 22 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 33, No. 6 表3 期間用途別熱負荷 給湯負荷 湯張負荷 追焚負荷 暖房負荷 総熱負荷 原燃料消費量 図5 9.7 6.6 1.6 33.9 51.8 57.8 GJ GJ GJ GJ GJ GJ 図7 ガスエンジン外観 表4 ガスエンジン仕様 最大発電出力 最低発電出力 発電熱効率 排熱回収熱効率 寸法(mm) 従来型ガスエンジンシステム 1.5 KW 0.5 KW 23.5%(HHV) 53.3%(HHV) W750×D400×H1150 90 -40% +40% 標準 +80% 80 F 70 I +80% 24 暖房負荷〔GJ〕 60 B +40% 50 40 標準 30 20 図6 22 14 A D 26 29 19 32 38 31 16 52 55 E 34 48 41 G 39 58 51H 49 21 53 33 28 57 27 04 47 25 35 40 18 15 17 59 02 23 42 13 C 03 61 54 30 12 56 50 36 20 37 05 -40% 10 新規開発ガスエンジンシステム 0 0 3.潜熱回収型補助熱源機を併用するガスエンジン熱電併 5 10 15 20 25 30 電力負荷〔GJ〕 給システムの概要 6) 図8 寒冷地世帯のエネルギー需要特性 3.1 従来の熱電併給システムと寒冷地における課題 初めに,本論文における新規開発システムとの比較のた ラよりも大きく,室内スペースを要することである.2 点 め,従来型 GE-CHP システムの概要を説明する.従来型 目は,本システムのバックアップボイラが高効率の潜熱回 GE システム 2)の構成を図 5 に示す.一般的な GE-CHP は, 収タイプでないことである.熱負荷が少ない非寒冷地区に 通常の設定(初期設定)においては学習制御により発電時 おいては,排熱で大半の熱需要を賄うので,二次熱交換器 間を決定する 10).GE 停止時および GE 発電分で賄いきれな が無く初期コストで有利な非潜熱回収型を採用するのは理 い電力は,商用電力を利用する.また,発電時は常に定格 に適っているが,寒冷地においては暖房利用によるバック 出力で運転し,余剰分の電力はヒータで熱に変え,逆潮流 アップボイラの稼動率が高いため,潜熱回収を採用するメ はしない制御になっている. リットが大きい. 3.2 新規開発システムの概要 発電時の排熱および上記の逆潮防止ヒータの熱は,貯湯 タンクに貯めて給湯に利用するほか,暖房にも利用する. 新規開発システムの構成,外観をそれぞれ図 6,図 7 に 排熱で賄いきれない給湯・暖房負荷は,貯湯ユニット付属 示す.本システムは GE 発電時の排熱を暖房にのみ利用す のバックアップボイラで補助するため,湯切れの心配はな るのが大きな特徴である.GE は暖房使用時,かつ電力使 い.北海道において貯湯ユニットは室内設置方式であるが, 用量が一定以上の場合に発電する制御となっており,別置 それ以外の日本国内地域では屋外設置方式である.また, きの貯湯ユニットが不要である.エンジンユニット内部に GE は何れも屋外設置である. は小型のバッファタンクを内蔵しているが,従来システム 本システムは環境性に優れているが,寒冷地においては の 10 分の 1 程度の容量であり十分に小さい.また,GE 発 課題もある.1 点目は,貯湯ユニットが一般的なガスボイ 電分で賄いきれない電力は,商用電力を使用する.給湯負 荷は潜熱回収型ボイラで賄い,GE 排熱で賄いきれない暖 23 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 33, No. 6 受電電力 発電電力 1600 1400 1400 1200 1200 1000 1000 出力〔W〕 出力〔W〕 発電電力 1600 800 600 800 600 400 400 200 200 0 1日目 2日目 3日目 図9 4日目 6日目 0 7日目 1日目 電力収支(世帯 A) 排熱利用 3日目 4日目 図 12 電力収支(世帯 B) 排熱利用 50 50 40 40 30 30 20 10 5日目 6日目 7日目 6日目 7日目 補助ボイラ 20 10 0 1日目 2日目 3日目 図 10 ガスエンジン供給量 4日目 5日目 6日目 0 7日目 1日目 熱収支(世帯 B) 潜熱回収型ボイラ(暖房) 2日目 3日目 図 13 ガスエンジン供給量 潜熱回収型ボイラ(給湯) 200 200 180 180 160 160 一次エネルギー削減量[MJ] 一次エネルギー削減量[MJ] 2日目 補助ボイラ 熱量〔MJ〕 熱量〔MJ〕 5日目 受電電力 140 120 100 80 60 40 4日目 5日目 熱収支(世帯 B) 潜熱回収型ボイラ(暖房) 潜熱回収型ボイラ(給湯) 140 120 100 80 60 40 20 20 0 0 1日目 図 11 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 一次エネルギー削減量(世帯 A) 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 図 14 一次エネルギー削減量(世帯 B) 7日目 房負荷もまた潜熱回収型ボイラにて補われる.貯湯ユニッ ~I では電力負荷が 11.4 GJ~18.5 GJ,暖房負荷が 49.1 GJ~ トを不要とし,小型の潜熱回収型ボイラを使用することで, 75.3 GJ となっている.なお,結果の整理にあたっては,2. コンパクトなシステムとなり,コストダウンの効果も期待 の実験とフィールド実測結果に基づき,潜熱回収型ボイラ できる. の暖房効率,給湯効率をそれぞれ 88.5%,91.8%とした.な 表 4 に本 GE-CHP の仕様を示す.従来型 GE-CHP が常に お,今回取り上げている GE-CHP と潜熱回収型ボイラの複 定格出力で発電するのに対し,本システムは 0.5~1.5 kW 合システムは,商用電源と非潜熱回収型ボイラ(電力換算 で負荷追従発電を行い,最大出力時の発電熱効率は 係数 9.76 MJ/kWh,ボイラ熱効率 75.0%)を比較対象とし 23.5%(HHV),排熱回収熱効率は 53.3%(HHV)に達する. て評価を行った. 4.フィールド実測の概要 5.代表週稼動状況 図 8 に既往のエネルギー調査 11) 5.1 世帯 A 等で得られた札幌地区の 実負荷等(世帯 02~61)と今回のフィールド実測世帯(世 世帯 A における稼動状況として,図 9,図 10 に代表週(1 帯 A~I)のエネルギー需要特性を示す.年間の電力負荷お 月 16 日~22 日)の電力収支及び熱収支を,図 11 に一次エ よび暖房負荷は世帯 A で 15.3 GJ,60.9 GJ,世帯 B で 12.6 GJ, ネルギー削減量(比較対象:電力換算係数 9.76 MJ/kWh, 55.8 GJ,世帯 C で 19.4 GJ,35.8 GJ となっている.世帯 D ボイラ熱効率 75.0%)を示す.一週間の総発電電力量は 92.3 24 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 33, No. 6 世帯A 発電電力 受電電力 世帯B 世帯C 世帯D 世帯E 世帯F 世帯G 世帯H 世帯I 80 1600 70 1400 60 電力負荷 [MJ/day] 出力〔W〕 1200 1000 800 600 50 40 30 20 400 10 200 0 0 1日目 2日目 3日目 4日目 図 15 電力収支(世帯 C) 排熱利用 5日目 6日目 1月 7日目 2月 3月 4月 図 18 世帯A 補助ボイラ 世帯B 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 各世帯の月別電力負荷 世帯C 世帯D 世帯E 世帯F 世帯G 世帯H 世帯I 500 50 450 400 40 暖房負荷 [MJ/day] 熱量〔MJ〕 350 30 20 300 250 200 150 100 10 50 0 0 1月 1日目 2日目 図 16 3日目 4日目 5日目 6日目 2月 潜熱回収型ボイラ(暖房) 4月 図 19 熱収支(世帯 C) 世帯A ガスエンジン供給量 3月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 7日目 潜熱回収型ボイラ(給湯) 世帯B 各世帯の月別暖房負荷 世帯C 世帯D 世帯E 世帯F 世帯G 世帯H 世帯I 80 200 70 160 60 給湯負荷 [MJ/day] 一次エネルギー削減量[MJ] 180 140 120 100 80 60 50 40 30 20 40 10 20 0 0 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 図 17 一次エネルギー削減量(世帯 C) 1月 7日目 2月 3月 4月 図 20 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 各世帯の月別給湯負荷 kWh,受電電力量は 9.0 kWh となり,発電寄与率(発電電力 の電力収支および熱収支を,図 14 に一次エネルギー削減量 量÷電力負荷)91.1%と高い値になった.また,排熱利用量 を示す.一週間の総発電電力量は 59.4 kWh,受電電力量は は 1313.0 MJ,潜熱回収型ボイラ熱量(暖房)は 1702.7 MJ, 19.5 kWh となり,発電寄与率は 75.3%となった.排熱利用 排熱寄与率(排熱利用量÷暖房負荷)は 43.5%となった.ま 量は 888.1 MJ,潜熱回収型ボイラ熱量(暖房)は 1584.1 MJ, た,一週間の一次エネルギー削減量は合計 1185.3 MJ とな 排熱寄与率は 35.9%となった.また,一週間の一次エネル り,そのうち GE-CHP により 698.3 MJ,潜熱回収型ボイラ ギー削減量は合計 764.1 MJ となり,そのうち GE-CHP によ における暖房及び給湯分により 346.6 MJ,140.7 MJ 削減さ り 297.2 MJ,潜熱回収型ボイラにおける暖房及び給湯分に れた.本世帯は電力負荷及び暖房負荷が共に大きいため, より 322.2 MJ,144.7 MJ 削減された.本世帯は暖房が間欠 一次エネルギー削減量が大きくなっている.また,暖房時 運転で使用時間が短いため,結果として発電時間が短くな 間が長いことから発電時間も長くなっており,GE-CHP に った.そのため,GE-CHP よりも潜熱回収型ボイラによる よる一次エネルギー削減効果が高くなっている. 一次エネルギー削減効果が高くなっている. 5.2 世帯 B 5.3 世帯 C 世帯 C における稼動状況として,図 15,図 16 に代表週 世帯 B における稼動状況として,図 12,図 13 に代表週 25 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 33, No. 6 世帯A 世帯B 世帯C 世帯D 世帯E 世帯F 世帯G 世帯H ガスエンジン供給量 世帯I 潜熱回収型ボイラ(暖房) 潜熱回収型ボイラ(給湯) 4500 100 4000 90 一次エネルギー削減量 [MJ] 80 発電寄与率 [%] 70 60 50 40 30 3500 3000 2500 2000 1500 1000 20 500 10 0 A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C A B C 0 1月 2月 3月 図 21 世帯A 世帯B 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 各世帯の月別発電寄与率 世帯C 世帯D 世帯E 世帯F 世帯G 2月 図 23 世帯H 世帯A 世帯I 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 世帯 A~C の月別一次エネルギー削減量 世帯B 世帯C 世帯D 世帯E 世帯F 世帯G 世帯H 世帯I 160 100 一次エネルギー削減量 [MJ/day] 80 70 排熱寄与率 [%] 2月 1月 2月 140 90 60 50 40 30 3月 120 4月 100 2月 12月 1月 3月 80 1月 11月5月5月 4月 60 40 20 0 0 図 22 2月 3月 4月 5月 10月 11月 11月 12月 12月 12月 1月 3月 2月 2月 1月 2月 12月 11月 12月 3月 1月 2月 12月 3月3月 4月 11月 3月 11月 4月 4月 4月 4月 11月 11月 4月 11月 11月 5月 10 1月 1月 3月 10月 4月 20 0 1月 12月 1月 12月 2月 2月 10月 10月 5月 10月10月 5月 5月 10月 10月 5月 6月 6月 5月 10月 6月 5月 7月 10月 9月 7月 6月 8月 9月 8月 7月 7月 9月 6月 6月 8月 9月 7月 9月 7月 7月 8月 7月 8月 9月 8月 8月6月 8月 7月 9月 8月 9月 100 12月 200 300 400 500 600 熱負荷 [MJ/day] 暖房期間における各世帯の月別排熱寄与率 図 24 各世帯の熱負荷と一次エネルギー削減量 の電力収支および熱収支を,図 17 に一次エネルギー削減量 おける各世帯の月別排熱寄与率を示す.世帯 A~I の冬期間 を示す.一週間の総発電電力量は 117.9 kWh,受電電力量 (1~2 月,11~12 月)の平均発電寄与率および平均排熱寄 は 22.7 kWh となり,発電寄与率は 83.8%となった.排熱利 与率は 49.4~88.2%,27.6~93.2%であった.冬期は,大半 用量は 1401.4 MJ,潜熱回収型ボイラ熱量(暖房)は 54.4 MJ, の世帯で高い発電寄与率を示す一方で,排熱寄与率はさほ 排熱寄与率は 96.3%となった.また,一週間の一次エネル ど高くなかった.これは,札幌の冬期における暖房負荷が ギー削減量は合計 840.4 MJ となり,そのうち GE-CHP によ 電力負荷に比べて高いためであり,電力の大半を GE-CHP り 729.2 MJ,潜熱回収型ボイラにおける暖房及び給湯分に で賄っても,排熱の利用先が十分にあることを示す.CHP より 11.1 MJ,100.0 MJ 削減された.本世帯は電力負荷が高 システムは,電気と熱ともに有効利用することが導入効果 いため,GE-CHP による発電・熱出力ともに高くなってい の向上につながるため,熱を十分に有効利用する本システ る.また,基本的に 24 時間連続暖房であるため,GE の運 ムは,寒冷地に適していると言える. 転時間も長く,その削減効果も非常に高いものとなった. 図 23 に世帯 A~C の月別一次エネルギー削減量を示す. 一方で,潜熱回収型ボイラの稼動率は低いため,その削減 冬期間(1~2 月,11~12 月),世帯 A での一次エネルギー 効果は小さい. 削減量が期間月平均で 3715 MJ となった.この内,GE-CHP による削減量は 2162 MJ,潜熱回収型ボイラの暖房及び給 6.実測結果と考察 湯による削減量は 1060 MJ,493.2 MJ となった.同期間で 図 18~図 20 に世帯 A~I における月別日平均電力負荷, の世帯 B では,一次エネルギー削減量が期間月平均で 2713 暖房負荷および給湯負荷を示す.年間を通して電力負荷が MJ,この内,GE-CHP による削減量は 990.7 MJ,潜熱回収 大きい世帯 C では 38.5~72.3 MJ/day,小さい世帯 I では 23.4 型ボイラの暖房及び給湯による削減量は 1271 MJ,451.6 MJ ~38.4 MJ/day となった.暖房負荷,給湯負荷に関しても電 となった.同期間,世帯 C では,一次エネルギー削減量が 力負荷と同様に,世帯間で負荷の差異が大きくみられた. 期間月平均で 2556 MJ,この内,GE-CHP による削減量は 図 21 に各世帯の月別発電寄与率を,図 22 に暖房期間に 2038 MJ,潜熱回収型ボイラの暖房及び給湯による削減量は 26 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 33, No. 6 7 30 6 25 光熱費削減量 [万円] 一次エネルギー削減量 [GJ] 5 20 15 10 5 4 3 2 1 0 0 A B 図 25 C D E 世帯 F G H I A B C D E F G H I 世帯 図 26 各世帯の年間一次エネルギー削減量 各世帯の年間光熱費削減量 生活スタイルによらず,基本的には発電すればする程効果 表5 ガス料金・電気料金メニュー が発揮できるシステムである.このような特徴から,全て の世帯で一定のコストメリットを得ることができたものと 言える.また,電力負荷・暖房負荷が高い A・F のような 世帯では,特にその効果が高くなる. 7.まとめ 本 GE-CHP は,排熱を暖房にのみ利用するという特徴か ら,夏期と中間期の一部は発電しない.しかし,寒冷地に おいて暖房使用期間は電力・熱負荷ともに比較的高くなる 82.99 MJ,434.4 MJ となった.世帯 A と世帯 C においては ため,その時期に集中的に発電することで CHP の導入効果 GE-CHP による一次エネルギー削減量が大きく,世帯 B で は大きくなる.また,熱負荷の高い寒冷地においては,CHP は潜熱回収型ボイラ(暖房)による削減量が大きくなる結 の排熱で賄いきれない熱負荷が大きく補助ボイラの熱効率 果となった. の高さが重要であるため,本 GE-CHP は高効率な潜熱回収 図 24 に各世帯の熱(暖房+給湯)負荷と一次エネルギー削 型ボイラと組み合わせで使用する.本報では,当該 GE-CHP 減量の関係を示す.熱負荷の増加に伴い一次エネルギー削 システムのフィールド実測を行い,冬期のみならず通年で 減量も大きくなることがわかる. も高い導入効果が得られることを明らかにした. 図 25 に各世帯の年間一次エネルギー削減量を示す.世帯 (1) 給湯需要パターンの変動を重視した複数日モードであ A~I において年間一次エネルギー削減量 15.9~27.1 GJ と る修正 M1 モードを用いて潜熱回収型給湯システムの性能 なり,いずれの世帯でも大きな削減効果が得られた.既報 評価を実施した結果,熱効率,一次換算エネルギー消費係 6) 数は,それぞれ 91.8%,0.82 と極めて高い値を示した. ネルギー削減量は 20~45%上昇している.発電・排熱寄与 (2) 給湯負荷の継続時間,停止間隔を重視した単日モード 率が高い値となった世帯 A と世帯 F では削減量も特に大き である JGKA 標準モードを用いて潜熱回収型給湯システム い結果となった. の性能評価を実施した結果,熱効率,一次換算エネルギー で述べたとおり,既存の定格型 GE-CHP に対し,一次エ 図 26 に従来型ボイラ及び商用電力と比較した,各世帯の 消費係数は,それぞれ 90.0%,0.83 であり,修正 M1 モー 年間光熱費削減量を示す.ガス料金(都市ガス) ・電気料金 ドと比較した場合の性能低下は僅かであった. は,札幌市における一般戸建て住宅向けの料金メニュー (3) 潜熱回収型給湯・暖房システムのフィールド実測を実 (2012 年 5 月現在)を用いた.各メニューの基本料金およ 施した.湯張・追焚を含む全体給湯負荷,期間暖房負荷は び単価を表 5 に示す.世帯 A~I において年間光熱費削減量 それぞれ約 18 GJ,約 34 GJ であった.冬期間における給 は 3.3~6.2 万円となった.一次エネルギー削減量の大きい 湯・暖房総合熱効率は 80~95%の範囲であり,期間平均は 世帯 A と世帯 F では光熱費削減量も大きい結果となった. 89.6%となっており,本給湯・暖房システムの実動効率が 本システムは学習制御などが無く,電力・熱負荷ともに存 非常に高いことを示した.本研究における GE-CHP は,当 在するときのみ発電するシンプルなシステムであるため, 該潜熱回収型ボイラと組み合わせで使用するため,導入効 予測が外れて蓄熱分をロスするようなことが無い.よって, 果の押し上げが期待出来る. 27 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 33, No. 6 (4) 寒冷地の実住宅に設置した負荷追従型 GE-CHP の冬期 3) M. Itagaki;Environment conscious residential energy use by 代表週及び一年間の稼動状況と一次エネルギー削減量を確 fuel cell CHP technology , Proceedings of the 35th 認し,GE-CHP,潜熱回収型ボイラの省エネルギー性を示し International Symposium on Water Supply and Drainage for た. Buildings-CIB W062 2008(Sep., 2008),81-94. (5) 冬期間における月平均の排熱寄与率および発電寄与率 4) M. Itagaki, S. Murakawa and Y. Hamada ; Operation は世帯 A~I において 49.4~88.2%,27.6~93.2%であった. characteristics and performance evaluation of residential その期間は大半の世帯で高い発電寄与率を示す一方で,排 combined heat and power system,Proceedings of the 38th 熱寄与率はさほど高くなく,電力の大半を GE-CHP で賄っ International Symposium on Water Supply and Drainage for ても,排熱の利用先が十分にあることがわかった. Buildings-CIB W062 2011(Sep., 2011),110-116. (6) 年間における一次エネルギー削減量および光熱費削減 5) 北海道経済産業局;北海道のエネルギー消費動向につい 量は世帯 A~I において 15.9~27.1 GJ, 3.3~6.2 万円となり, て(2008 年度版). いずれの世帯においても大きな削減効果が得られた. 6) 武田清賢,濱田靖弘,村井拓矢,後藤隆一郎,中村 充; 負荷追従型ガスエンジンを導入した家庭用熱電併給シ 本報に関連した既発表文献 ・武田清賢,後藤隆一郎,中村 ステムに関する研究,日本冷凍空調学会論文集, 充,濱田靖弘,天澤敬太, 29-2(2012-6),237-245. 村井拓矢,長野克則;負荷追従型ガスエンジンを導入した 7) 前 真之,三浦尚志,羽原宏美,堀 祐治,桑沢保夫, 次世代家庭用熱電併給システムに関する研究(第3報)実住 秋元孝之,宇梶正明,澤地孝男;住宅のための省エネル 宅における稼動特性評価,空気調和・衛生工学会大会学術 ギー手法の実験的評価に関する研究(その3),日本建築 講演論文集(2010-9),951-954. 学会環境系論文集, 659(2011-1),49-57. ・武田清賢,後藤隆一郎,中村 充,濱田靖弘,村井拓矢, 8) 新エネルギー・産業技術総合開発機構;給湯器の年間エ 長野克則:負荷追従型ガスエンジンを導入した次世代家庭 ネルギー消費効率測定方法に関する調査,(2006-4). 用熱電併給システムに関する研究(第4報)実住宅における 9) 濱田靖弘,永廣健太郎,後藤隆一郎,中村 充;高効率 運転実 績, 空 気調和 ・衛 生 工学会 大会 学 術講演 論文集 機器を導入した戸建て住宅の環境エネルギー工学的診 (2011-9),775-778. 断,人間と生活環境,16-1(2009-5),27-35. 10) 日 本 ガ ス 協 会 ; http://www.gas.or.jp/ecowill/index.html 参考文献 (2012 年 9 月アクセス). 1) 経済産業省,国土交通省;告示第二号,(2009-1). 11)濱田靖弘,中村真人,落藤 2) Y. Shimizu, S. Murakawa, H. Takata, H. Kitayama, Y. 横尾美雪,成田涼子,鴫原 澄,村越千春,鶴崎敬大, 亮,長倉香織,横山真太郎; Hamada and M. Nabeshima;Study on running condition of 札幌における家庭用エネルギー消費量とその季時別変 residential gas engine co-generation system,Proceedings of 動に関する実測と評価,空気調和・衛生工学会論文集, the 35th International Symposium on Water Supply and 82(2001-7),29-37. Drainage for Buildings-CIB W062 2008(Sep., 2008) , 106-117. 28
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