平成27年度募集入試問題 専門 (数学)

静岡大学大学院総合科学技術研究科
修士課程・理学専攻・数学コース
平成27年度入学試験問題
専 門(数 学)
注意事項:
1 2 3 はすべて解答せよ.
4 5 6 7 8 9 から2問を選び解答せよ.3問以上解答しては
いけない.
なお解答用紙は問題ごとに別にし,各用紙に問題番号を明記せよ.
1
次の各問に答えよ.
(1) {an }n=1,2,··· を数列とし, α を実数とする. このとき, {an }n=1,2,···
のすべての部分列が α に収束する部分列を含むならば, 数列
{an }n=1,2,··· は α に収束することを背理法により証明せよ.
(2) f を [0, ∞) で定義された実数値連続関数とする. このとき, 極
限 lim f (x) が存在するならば, f は [0, ∞) で一様連続である
x→∞
ことを示せ.
2
n を正の整数, A, B を n 次複素正方行列とし, α1 , α2 , . . . , αn を A
の固有値の全体とする. このとき次の各問に答えよ.
(1) A = (aij ), B = (bij ) がともに上三角行列であるとき, AB =
(cij ) も上三角行列であり, 任意の i = 1, 2, . . . , n に対して,
cii = aii bii
となることを示せ.
(2) A2 の固有値の全体は, α12 , α22 , . . . , αn2 となることを示せ.
(3) A が正則であるためには, 任意の i = 1, 2, . . . , n に対して αi 6= 0
となることが必要十分であることを示せ.
(4) A が正則のとき, A−1 の固有値の全体は, α1−1 , α2−1 , . . . , αn−1 と
なることを示せ.
(5) A が正則のとき, A2 + A−2 の固有値の全体は, α12 + α1−2 , α22 +
α2−2 , . . . , αn2 + αn−2 となることを示せ.
3
集合 X と, X のある部分集合の族 O について, (1), (2) のそれぞ
れの場合において, O は X の位相となるか, すなわち, O は開集合
の公理を満たすかを証明を付けて答えよ. もし, 満たさないときは,
開集合の公理を満たすようにするために, O に付け加えるべき最小
の部分集合族も答えよ.
(1) X = {1, 2, 3, 4}, O = {{1}, {2}} のとき.
(2) X = [0, 1], O = {∅, [0, 1]} ∪ {[0, a) | 0 < a ≤ 1} のとき.
4
G を群とし, H を G の部分群とする. H が G の正規部分群で
あるとは, 任意の x ∈ G に対して x−1 Hx = H が成り立つときにい
う. 次の各問に答えよ.
(1) 次の命題の真偽を答えよ. また, 真であるものと偽であるもの
を一つずつ選び, 理由を述べよ.
(i) 可換群の任意の部分群は正規部分群である.
(ii) G, G0 を群とし, f を G から G0 への群準同型とする. こ
のとき Ker f は G の正規部分群である.
(iii) G, G0 を群とし, f を G から G0 への群準同型とする. こ
のとき Im f は G0 の正規部分群である.
(iv) G を群とする. G の中心 Z(G) に含まれる G の任意の部
分群は, 正規部分群である. ただし, G の中心 Z(G) は,
Z(G) := {z ∈ G : xz = zx, x ∈ G}.
(v) G を群とする. G の交換子群 D(G) を含む G の任意の部
分群は, 正規部分群である. ただし, 交換子群 D(G) とは,
{xyx−1 y −1 : x, y ∈ G}
で生成される G の部分群をいう.
(2) H が群 G の正規部分群であるとき, 剰余群 G/H が定義され
た. その演算の定義は
(xH) · (yH) := (xy)H
である. この演算が, 実際 well-defined であることを示せ.
(3) G を群とし, H, K を H ⊂ K なる G の正規部分群とする. こ
のとき, 同型
/
(G/H) (K/H) ' G/K
を示せ.
5
複素平面上の整関数 f (z) にたいして, M (r) := max |f (z)| とおく.
{|z|=r}
このとき, 次の問に答えよ.
(1) M (r) は, r(> 0) に関して単調増加関数になることを示せ.
(2) f (z) の原点における Taylor 展開を f (z) =
+∞
∑
cn z n と表せば,
n=0
|cn | ≤
M (r)
, (n = 0, 1, 2, · · · )
rn
になることを示せ.
M (r)
< +∞ を満たせば, f (z) は高々
r→+∞ r N
N 次の多項式になることを示せ.
(3) ある自然数 N で, lim
6
(S, F, µ) を有限測度空間とし, {fn }n=1,2,··· を lim fn = 0 (a.e.)
n→∞
を満たす可測関数の列とする. このとき, 次の各問に答えよ.
∫
(1) lim
n→∞
S
|fn |
dµ = 0 を示せ.
1 + |fn |
(2) 任意の自然数 k に対して,
lim µ({x ∈ S : |fn (x)| ≥ 1/k}) = 0
n→∞
を示せ.
(3) 任意の ε > 0 に対して, ある δ > 0 が存在して
∫
µ(A) < δ
ならば
sup |fn | dµ < ε
n≥1
が成り立つと仮定する. このとき,
∫
lim
|fn | dµ = 0
n→∞
を示せ.
S
A
7
a と b を正の定数として, γ(t) = (a cos t, a sin t, bt) と定める。また,
点 a0 = (0, −2a, π2 b) を考え, 2 点 γ(t) と a0 を u : 1 − u に内分す
る点を x(t, u) とする。このとき, 次の問いに答えよ。
(1) 曲線 {γ(t) | 0 ≤ t ≤ π} を図示して, この曲線の曲率 κ(t) と捩
率 τ (t) およびこの曲線の長さを求めよ。
(2) 曲面 A = {x(t, u) | 0 ≤ t ≤ π, 0 ≤ u ≤ 1} を図示せよ。
◦
(3) 曲面 A= {x(t, u) | 0 < t < π, 0 < u < 1} は C ∞ 多様体である
ことを説明せよ。
8
確率変数 X, Y は互いに独立で, 同分布とする. X, Y は標準正規
分布であり, 次の密度関数 fX (x) をもつとする.
x2
1
fX (x) = √ e− 2
2π
(−∞ < x < ∞)
次の問いに答えよ.
(1) t を正定数とし, W = etX とおく.W の密度関数 fW (y) を求
めよ.
(2) X, Y の結合密度関数 fX,Y (x, y) を求め, P (a2 < X 2 + Y 2 ≤ b2 )
を求めよ (b > a > 0 は定数).
(3) 2X − Y + 1 と (2X − Y + 1)2 の期待値 E[2X − Y + 1],
E[(2X − Y + 1)2 ] を求めよ.
5
(4) a を正定数とするとき P (|2X − Y | ≥ a) ≤ 2 を示せ.
a
9
論理記号 ∧, ∨, →, ¬ はそれぞれ「かつ (and)」, 「または (or)」,
「ならば (if ... then)」, 「... でない (not)」を表す. また, ∃, ∀, =
はそれぞれ「ある ... が存在して (there exists ... )」, 「すべての
... に対して (for every ... )」, 「 ... と ... は等しい」を表す. さら
に, L を群の言語 {e, ∗ · ∗, ∗−1 } とする.
L-構造の集まり C が初等的クラスであるとは, L-閉論理式の集合 Γ
が存在して, どんな L-構造 M に対しても,
M ∈ C ⇐⇒ M |= Γ
が成り立つときを言う. 次の問いに答えよ.
(1) 群の公理を実際に書くことにより, 群の全体は初等的クラスで
あることを示せ.
(2) 正の整数 p に対して, 位数 p の群全体は初等的クラスである
ことを示せ.
(3) 有限群全体は初等的クラスでないことを示せ.
(4) 可算無限群全体は初等的クラスでないことを示せ.