複素関数論入門(2)

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複素関数論を勉強する( 3)
2001.9
by KENZOU
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3回目に入った。3回目はCaushy の 積 分 表 示 から留 数 までを勉強する。
5 . Caushy の 積 分 表 示
◆コーシーの積分表示
【定理1】
・f(z)は領域D で正則であるとする。D 内に
単一閉曲線C があって、C の内部は領域D に
R
a•
含まれているとする。点a がC の内部にあれば
f(a )=
1
2π i
∫
f(z)
dz
z-a
C
Γ
C
[ 証 明 ] 点a を中心とし、十分小さい半径R の円を描けば、
Γ はC の内部にある。ゆえに f(z)/z-a はC ろ Γ で囲ま
れた領域で正則である。したがって 4.Caushy の 定 理 【 定 理 4 】 より
f(z)
f(z)
dz =
dz
①
z-a
C
Γ z-a
∫
∫
となる。①の右辺の積分を考える。円 Γ の上の任意の点は z=a +Re iθ (0≤θ ≤2π)と表せ
る。dz=iRe iθdθ であるから
∫
∫
Γ
X
C
∫
f(z)
dz= i∫
z-a
f(z)
dz=
z-a
2π f(a +Re iθ)
Re
0
iθ
iRe i θdθ
2π
f(a +Re iθ)dθ
0
ところで上式の左辺はR を含まないので、十分に小さい R (>0)に対して、この積分の値は
R に無関係である。したがってf(z)が連続であることを利用すれば
2π
2π
f(z)
iθ
dz =i Rlim
f(a +Re )dθ =i
f(a )dθ =2π i f(a )
$+0 0
z-a
0
C
∫
∫
∫
ゆえに
f(a )=
1
2π i
∫
f(z)
dz
z-a
C
<例 題 1 > 次の積分を求めよ。ただし、C は円|z |=4 とする。
∫
(1)
C
z3
dz
z-i
∫
(2)
C
cos z
dz
z-π
∫
(3)
C
-1-
ez
dz
z 2-2z
∫
(4)
C
z
dz
(z+2)(z-5)
[ 解 答 ] ① z=i はC の内部にあり、f(z)= z
3
は C の内部で正則であるから
1
z3
z3
3
dz=f (i)=(i) =-i X
dz=2π
2π i C z-i
C z-i
② z=π はC の内部にあり、f(z)=cos z はC の内部で正則であるから
∫
1
2π i
③
∫
C
∫
∫
cos z
dz=f (π)=-1
z-π
C
ez
1
dz=
2
z 2-2z
∫
C
ez
dzz-2
∫
C
X
∫
C
ez
dz
z
z3
dz=-2π i
z-i
z=0,2は C の内部にあり、 e zは C の
内部で正則であるから
∫
X
∫
C
ez
dz=2π if(2)=2π ie 2,
z-2
∫
C
ez
dz=2π if(0)=2π i
z
z
C
e
dz=π e 2-1 i
z -2z
2
④ z=-2はC の内部にあり、z=5はC の外部にある。したがって関数 f(z)=
z
はC の内部
z-5
で正則である。よって
∫
C
z
4
dz=2π if(-2)= π i
z-5
7
1
z+2
【定理2】・・・定理1の拡張
* a
・単一閉曲線C1の内部に単一閉曲線C2があり、
C1とC2で囲まれた領域D で関数 f(z)は正則
であるとする。点 a が領域 D の内部にあれば
f(a )=
1
2π i
∫
C1
f(z)
1
dzz-a
2π i
∫
C2
f(z)
dz
z-a
D
C2
C1
いま、定理2の条件が成り立っているとする。点 a +h がC の内部にあるように|h |を小さ
くとる。このときCaushy の積分表示によって
∫
∫
f(a +h )-f(a )
1
f(ζ)
f(ζ)
=
dζ
h
2π hi C
ζ-(a +h ) ζ-a
1
f(ζ )
=
dζ
2π hi C (ζ-a -h )(ζ-a )
ここで、h →0 とすれば上式より
1
f(ζ )
f '(a )=
dζ
①
2π hi C (ζ-a )2
同様にして、①を利用して f(z)の代わりに f ' (z)について上と同じ推論をすれば
2!
f(ζ )
f "(a )=
dζ
2π hi C (ζ-a )3
∫
∫
-2-
が得られる。
以下同様にして次の公式が成り立つ。
【公式1】
f
(n)
(a )=
n!
2π i
∫
f(ζ )
(ζ-a )n+1
C
dζ
(n =1,2,Q)
【定理2】
・正則な関数f(z)は何回でも微分できる。f(z )の導関数 f
(n)
(z) (n =1,2,Q)は f(z)
が正則である領域で正則である。
この定理2は正則関数の特徴の一つである。
< 例 題 1 > 次の積分を求めよ。ただし、C は円 |z |=2 とする。
(1)
∫
3z 2+z+2
dz
(z-i)3
C
(2)
∫
C
z+2
dz
(z-3)(z-1)2
2
[ 解 答 ] ① 点 z=i はC の内部にあり、関数f(z )=3z +z+2 はC の内部で正則である。
f "(i)=6である。よって
3z 2+z+2
f(z)
2π i
dz=
dz=
f "(i)=6π i
3
2
C
(z-i)3
C (z-i)
② 点 z=1 はC の内部にあり、点 z=3 はC の外部にある。
z+2
5
したがって関数f(z)=
はC の内部で正則であり、 f '(z)=
。よって
z-3
(z-3)2
∫
∫
6.留
∫
C
∫
z+2
dz=
(z-3)(z-1)2
C
f(z)
5π
dz=2π
if
'(1)=i
2
(z-1) 2
数
◆留 数
関数 f(z)が点 a では正則でないが、a のある近傍の、 a 以外のすべての点で正則なとき、点
a を f(z)の孤 立 特 異 点 という。このとき、点a を囲む閉曲線C に沿った積分
1
f(z)dz
2π i C
の値は、C の選び方に関係なく一定である。これを f(z)の a における留 数 といい、記号
Res(f(z);a ) または Res(a )
∫
で表す。したがって
∫
*a
f(z)dz=2π iRes(a )
C
C
-3-
【定理1】(留数定理)
・関数f(z)が閉曲線C 内に孤立特異点
D
∫
n
C
• an
• a1
a1,a2,Q,an をもつとき
f(z)dz=2π iΣRes(ak )
• a2
k =1
C
• ai
さて、具体的に留 数 を 計 算 するには
次の2つの公式を用いる(これ以外の
計算法はあとでローラン展開の項で述
べる)。
【定理2】
・点a が関数f(z)の孤立特異点で、極限値
α =lim
(z-a )f(z)
z$a
が存在するとき、
Res(a )=α
である。
【定理3】
・f(z),g (z)が点a で正則で、g (a )=0,g'(a )≠0ならば、h (z)=
Res(h (z);a )=
f(z)
に対して
g (z)
f(a )
g'(a )
《注意》g (a )=0ならば、g'(a )=lim
z$a
g (z)
である。
z-a
< 例 題 1 > 次の関数の特異点を求め、そこでの留数を計算せよ。
(1) f(z)=
cos z
z(z-2i)
(2) f(z)=
z
z 3+8
[ 解 答 ] ① f(z)は点z=0,z=2i 以外で正則だからこの2つの点が特異点である。留数定理
2を用いて留数を計算すると
Res(0)=lim
z f(z)=lim
z$0
z$0
cos z
1
i
=
=
z-2i -2i 2
cos z cos 2i
i(e -2+e 2)
Res(2i)=lim
( z-2i) f(z)=lim
=
=z$2i
z$2i
z
2i
4
3
② z +8=0 より a 1=-2, a 2,a 3=1± 3i が特異点である。定理3より z=a での留数を
求めると、Res(a )=
a
1
1
1# 3i
2 = 3a だから Res (-2)=- 6 ,Res(1± 3i)=
12
3a
-4-
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《 E x e r c i s e 》
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少し演習問題をやって腹ごなしをしましょう。
◆問題−−−−−−−−−−−−−−−−
【 問 題 】 留数定理を用いて次の積分値を計算せよ。ここで、C は円|z |=2とする。
(1)
∫
2z+1
dz
z(z-3)
C
[ 解 答 ] ① 関数 f(z)=
1
(2)
2π i
∫
C
e ax
dz (a :定数)
z 2+1
2z+1
の特異点は z =0,3 である。このうち円C の内部にあるの
z(z-3)
は z=0 である。故に定理1(留数定理)と定理2により
∫
C
2z+1
2z+1
2π i
dz=2π iRes(0)=2π i lim
z
f(z)=2π
i
lim
=z$0
z$0 z-3
z(z-3)
3
e ax
② 関数 f(z)= 2
の特異点は z=" i で、いずれも円 C の内部にある。定理2により留数
z +1
を計算すれば
e ax e ai
e -ai
Res(i)=lim
(z-i)f(z)=lim
=
, Res(-i)=z$i
z$i z+i
2i
2i
ゆえに留数定理より
1
2π i
∫
C
e ax
dz=Res(i)+Res(-i)=sin a
z 2+1
(第3回目終了)
-5-