④ 直角二等辺三角形が重なった部分の面積 <教材観> 身近な問題を解決するのに、様々な方法があるが、その中の1つとして2次不等式の活用があ る。この教材は、条件を不等式で表現することのすばらしさを実感できるものである。 <指導観> 身近な教材として、紙を使用し、実際に手で動かし操作することによって、まず、予想を立て てみる。この予想を立てることが、問題への興味・関心を抱かせる一要因となる。さらに、手で操 作することは、物事の変化の様子を捉えるヒントとなり、式で表す手助けとなる。2次不等式の 解法が、実際の課題の解決策として役立つことを、実感として味わうことができるように心がけ たい。 指 導 対 象 学 年 1年 場 所 教室 教科書 プリント 折り紙 科目名・単元名 数学Ⅰ・2次不等式 使用教材 パソコン プロジェクター 2次不等式の意味を理解し、その解法を身につけ、身近な問題に応用する 単元の目標 ことによって、問題を解決することができる。 合同な直角二等辺三角形の重なり部分の面積変化を、2次不等式を利用し 学習目標 て調べることができる。 ・ 折り紙を実際に重ね合わせることにより、予想しようとする。 (関心・意欲・態度) ・ 事象から、問題の本質的な部分を抜き出すことができ、いろいろな見方 評価規準 ができる。 (数学的な見方や考え方) ・ 実際の事象を式で表現することができる。 (表現・処理) ・ 2次不等式を解く手順を理解している。 (知識・理解) 本 時 の 展 開 過 程 学習項目 (指導のねらい) 学 習 活 動 (□:指示・説明 ○:発問・活動) 指導上の留意点・観点別評価 (⇒:評価方法) 導 2 次 不 等 式 と <課題> 入 して表現する 1辺10cmの正方形を対角線で2 ことができる。 等分し、直角二等辺三角形を2個作る。 この2個の直角三角形を、△ABC(∠ A=90°) 、△DEF(∠D=90°)と し、図のようにxy平面上y≧0の箇所 に置く。まず、△DEFの点 F を原点に 一致させ、辺FDをx軸上に重ね固定する。次に、△ABCの点 Aを原点に辺ACをx軸に重なるように置き、△ABCをx軸の 正の方向へ移動させる。重なった部分が、△ABCの面積の 1 以 2 上となるのは、点Aのx座標がどの範囲のときか。 □2次不等式で条件が表現できてい ・2次不等式の応用として、取り るかおよびそれが解けているかを 付き易い問題を提示し、本時の 確認する。 導入とする。 数学化の場面 同じ直角三角 形を2個重ね るとき、重ね 方を変えると 重なった部分 の面積が変わ ることに気付 く。 ○2つの直角三角形の重ね方を変える ・重ね方を変えると重なった部 と、重なった部分の形はどのように変 分の図形がどのようになるの わりその面積はどのように変化する かを予想してみることの楽し のだろうか。 さを感じさせたい。 ・やってみたいという意欲を高 める提示方法を工夫する。 <課題> 1辺10cmの正方形を対角線で2等分し、 直角二等辺三角形を2個作る。この2個の直 角三角形を△ABC(∠A=90°) 、△DEF (∠D=90°)とし、図のようにxy平面上 y≧0の箇所に置く。まず、△DEFの点 F を原点に一致させ、辺FDをx軸上に重ね固 定する。次に、△ABCの点Cを原点に辺A Cをx軸に重なるように置き、△ABCをx軸の正の方向へ移動させ る。重なった部分が△ABCの面積の 1 以上となるのは、点Cのx座 2 標がどの範囲のときか。 展 二 つ の 三 角 形 ○重なった部分がどのような図形にな ・折り紙を実際に動かして考え させる。 が重なった部 るのだろうか。 ・重ねる方法が変わると、重な 分 の 面 積 の 変 □折り紙で重ねてみよう。 った部分の形が変わる面白さ 化 の 様 子 を 観 ○次のようになるときはどのようなと や、予想を立てることの楽し 察し予想をた きだろうか。 さを実感できる。 てることがで ① 二つの三角形が重なった部分 (関心・意欲・態度) きる。 の面積が最大 開 ② 二つの三角形が重なった部分 ⇒机間指導により、予想をノー トに書かせる。全体で挙手に 1 の面積が△ABCの面積の よる予想の確認。 2 ③ 二つの三角形が重なった部分 の面積が△ABCの面積の 1 2 以上 数学的考察・処 ○二つの三角形が重なった部分の面積 ・事象を不等式で表現すること yを、xを使って式で表現するとどん ができるよう助言する。 理の場面 な式になるのだろうか。 ・様々な考え方で面積を出すこ 二つの三角形 とができる。 が 重 な っ た 部 □面積を求める多様な方法を生徒の考 (数学的見方や考え方) 分 の 面 積 を 式 えの中から紹介する。 ⇒机間指導により確認する。 で表現するこ とができる。 不 等 式 を 解 く ○課題を不等式で表現するとどうなる ・重なっている部分の図形によ ことにより、問 か。 って、面積を表す式が異なっ 題を解決する ているかを確認する。 ことができる。 ・不等式で解くことができるか の確認をする。 (知識・理解) □不等式を解いて問題を解決しよう。 ⇒机間指導による確認 ・実際の折り紙で確認すること □不等式の解法の確認をする。 の大切さを知る。 (関心・意欲・態度) □答えを実際の折り紙で確認しよう。 ⇒机間指導による確認 ま 不 等 式 以 外 の □重なった部分の2倍の面積が1辺 ・図形の持つ不思議さに触れさ と 図形的見方か せる。 10cmの正方形の斜線部分を除い め ら、解決された た面積になることを知る。 答えの確認を する。 □重なった部分の面積がちょうど、直角 三角形の面積の 1 となる場合は計算 2 の結果からどんなときであったか。 □重なる部分が五角形の場合は、直角二 ・図形的に問題を解決すること ができる。 1 等辺三角形の等しい辺の の長さを (数学的な見方や考え方) 3 ⇒机間指導による確認 重ねるときが、重なる面積が元の直角 二等辺三角形の面積の 1 となる事実 2 を、実際折り紙を切って示す。 三角形の重な った部分の面 積の変化の様 子をより詳し くとらえ、発 展的な課題の 解決に応用で きる。 □重なった部分の面積の変化をグラフ ・グラフをかいて面積の変化を にかいてくることを指示する。 調べることができる。 (表現・処理) ⇒課題を提出させて確認する。 □ 次回までのレポート課題 ・発展的な学習に意欲的に取り ∠Cが直角でAC=BC=10 の直角 組む。 (関心・意欲・態度) ) 二等辺三角形ABCにおいて、直線A ⇒レポートを提出させて確認 C上の点Pを通り、辺BCに平行な直 する。 線PQを折り目として折る。 ・重なった部分はどんな図形に このとき、AP=x、重なる部分の面 なるかを考えることができ 積をyとしてyをxで表せ。その式を る。また、面積を式で表し、 もとに各自、問題を作成し、それに関 その変化の様子を考察でき する解答を作成せよ。 る。 (数学的見方や考え方) ⇒家庭学習課題として、提出さ せて確認する。 <解説> ・ 実際に操作しながら、予想してみる。ここに、おもしろさがあると思う。また、より鮮明に 問題意識を持たせることができ、それを数学的処理により解決することで、一層の楽しさを味 わうことができると思う。 ・ 重なった部分の図形の面積を式で表現するとき、いろいろな考え方があるので、それを生徒 から引き出したい。 ・ 発想力をつけるには、物の見方を示していくことが大切だと感じる。クイズの答えや手品の 種明かしを知ったときの「あっ!」 、 「へー」というような感覚を生徒が持てるとよいと思う。 ・ パソコン等の教具は、上手く使用すると、生徒の理解の手助け、興味関心付け、授業の有効 な時間使用等使い道はいろいろあると思う。今回は、「Studyaid D.B 関数と図形 MATH-ter」を利用して、2個の直角三角形をスクリーンに映して提示した。三角形の重なっ ている箇所の色が変わって見えるため、生徒は分かりやすかった。 ・ 点Cの x 座標に伴う、重なった部分の図形の面積 を式で表現すると、 y= 1 2 x 4 (0≦ x ≦10) 3 y = − x 2 + 20 x − 100 (10≦ x ≦20) 4 グラフで表すと図1のようになる。 このグラフは、 重なった部分の図形が三角形から五角形に変わる 部分で、 連続でしかも接線の傾きが一致するため、 微分可能でもあるということもわかる。滑らかに 変化している様子がグラフから読み取れる。数Ⅲ の微分の所で扱うとおもしろいと思われる。 ▲ 図1 ・ この教材は、減少する部分と、増 加する部分に着眼して、式で表現 すると一層深く味わうことができ る教材である。重なる部分の図形 が五角形のとき、すなわち、点C の x 座標が (10 < x < 20) の範囲 で、微小変化を考えてみる。面積 の変化する部分は共に台形となり、 図2において微小変化量を h (h > 0) 、減少する台形の面積 を S1 、増加する台形の面積を S 2 とすると、 S1 = ( x − 10 + x − 10 + h)h 2 ▲ 図2 S2 = h 20 − x + 20 − x − h 2 2 2 f ( x) = S 2 − S1 とし、 f (x) を計算すると、 f ( x) = − h (6 x − 80 + 3h ) 4 h − (6 x − 80 + 3h) S − S1 f ( x) 3 x − 40 lim 2 = lim = lim 4 =− h →0 h → 0 h → 0 2 h h h これは、点Cの x 座標に伴う、重なった部分の図形の面積を式で表現したときの、 3 y = − x 2 + 20 x − 100 (10≦ x ≦20) において、 x で微分した式に等しくなることがわ 4 かる。 ・ 2 枚の折り紙の重ね方はいろいろ他にも考えることができ、よりおもしろい問題も作ることが できる。 ・生徒の感想を載せておきます。 (生徒の表現をそのまま使用しています。 ) 授 業 後 の 感 想 1. 昨日の授業で「へー。なるほどなあ。 」と思ったことは何ですか。 ・ 三角形を四角形に変えて、小学 1 年生でもわかる説明に「ああー」と思った。こんな考えも あるんだなって思った・・・・・・ ・ 式を使わなくても面積が、半分になると分かる図形。 2. 昨日の授業で折り紙が手元にあったことはどうでしたか。 ・ 自分で重ねたり折ったりできて、考えるときに目を使えたからすごく楽でした。 ・ 重なった部分の面積yの変化が分かりやすくて良かった。いろいろな見方ができた。 ・ 自分の手元で考えることができてよかった。いつもあんなふうに手元にあると分かりやすい。 ・ 想像するよりも実際に折り紙をあわせて分かりやすい。 ・ 実際にやってみることが答えを導くかぎになると思います。 3. 昨日の授業で興味を持ち、もっと追及したいと思ったことはありますか。 ・ いろいろな向きや形で重ねたい。 ・ 三角形だけでなく、もっといろいろな図形についても調べてみたいと思った。 ・ 式と図でやったのでグラフでできるかやってみたい。 ・ 三角形の置き方を変えてやってみたい。 ・ 難しい問題を自分で解くと、次々に解きたくなる。 ・ 三角形でなくもっと違う図形でやるとどうなるのか。 ・ 見た感じでは何も面積は分からなかったけれど、式を作ることで分かったので、違うものも やってみたい。 4. 昨日の授業で「式」についてどんな感想を持ちましたか。 ・ 式をつくれば正確に答えを出すことができるし、いろいろな考え方の式ができるのに、答え は一緒!!っていうのに改めて感動。 ・ 難しく考えずに、求めたいと思っているところの周囲に着目すれば式を立てるのが簡単だと 思った。 ・ 式がたてられればほとんどのものが解けてしまうのですごいと思った。 ・ 式の力はすごいと思った。 ・ 見た感じで予想するのも大事だけれど、確信するためには、式を使う必要があるのだなあと 思いました。
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