詩誌『四囲』

詩誌
四囲
Vol. 5 特集 「序数詩」 詩誌
四囲
目次
特集「序数詩」
小峰慎也
詩の各章に序数を付ける、という決まりで同人が競作しています。
王の予感
わたしの天国
中島悦子 飯田保文
近藤弘文 この道は きっちょむ
吉四六
となりの腕は折れている
廿楽順治 高塚謙太郎 27
蛍たち
40
後記
3
50
14
61
79
王の予感
小峰慎也
詩誌『四囲』Vol.5 小峰慎也
王の 予 感
7時40分起床。
めし。
ハミガキ。
脱糞。
掃除。
メールチェック。2万4000円の注文あったと思った
ら、よく見たら在庫消し漏れだった。落胆するが、いい
本ならまだ注文があるという希望もある。
昨日はなした福間さんのお祝いの会、
必要なメール2通。
それから概要をまとめた出欠確認のメール。
カレー。
忘れないうちに買いもの、
食パン、
牛乳、
マーガリン、ヨー
グルト。
帰って入力→アップ。
のフォロワーの方から妙なダイレクトメッセー
Twitter
ジが来ていて、無警戒にそこに飛んだら、AVGがガー
ドしてくれてそこへ行くなという。そこでやめて、その
フォロワーの方のつぶやきをみると、ウィルスだかにさ
わってしまって、勝手にそういうのが送られるようにな
1
詩誌『四囲』Vol.5 小峰慎也
ったというようなことが書いてある。棚の本移動。散歩。
価格更新。
仕入れ値より相場が落ちているものあり。まいったな。
まあいい。
安く売っちまおう。
地元産の葉大根、
レンコンと鶏肉のなんとか、納豆。チョ
コパイほろにが仕立て(新発売か)
。葉大根はサラダ用
なのか?とも買ってから思ったが、味噌汁にしたらうま
かった。
習字。
7時40分起床。
目覚まし仕掛けてなかった。
めし。
脱糞。
洗濯。掃除。
注文ゼロ。ムラがありすぎる。
ビバホームでカート。
カートってことば一般的でないのかな?
通じず。
そのあとケーズデンキでひげそりをみる。
なんかわからない魚の味噌焼き。
サラダ。
糠漬け。
ハムとキャベツとにんじん、たまねぎのスープ。
2
詩誌『四囲』Vol.5 小峰慎也
おでん。
柿。
入力。
「大竹まことのゴールデンラジオ」
。メインディッシュ山
本太郎の話。山本太郎、1コ下だったのか、いやあと少
しでオレ38だから、2つなのかな。ダンス甲子園で出
てきて、おぼえている。メロリンQ だっけ?
アップ。
入金督促。
電話がかかってきた。
だれだろうと思って出ると、いま督促したお客さんで、
前に入金確認しましたってメール来ていたという。調べ
ると、こちらのミス。ほかの督促も入金があった。
医者。今日は薬だけ。
戻って値付けして、冷凍の五目チャーハンと納豆。葉大
根の味噌汁。
発送確認メール等。
注文品の梱包。
掃除。
脱糞。
ハミガキ。
めし。
体操。
7時40分起床。
3
詩誌『四囲』Vol.5 小峰慎也
7時50分起床。
めし。
メールチェック。
ハミガキ。
掃除。
発送5件。
J AMで、森山良子「すべてが歌になっていった」
。由紀
さおり& ピンク・マルティーニ「1969」注文する。
どちらも「ミュージックマガジン」11月号で紹介され
ていて興味を持ったもの。
ハム。ベーコンとひじきの炊き込みご飯。えのきの味噌
汁。サラダ。さといもの煮たの。脱糞。
車で、ビバホームで、カーテン見て、ニトリでカーテン
見る。
入力→アップ。
自転車でふたたびニトリに行ってカーテン買う。
適当な飯屋に入ってナスチリ定食というのを頼んだら、
まずいうえに量が多い。
ダイソーで磁石のフックを2つ。
「週刊文春」立ち読み。
カーテンを画鋲でとめる。
10時起床。
4
5
詩誌『四囲』Vol.5 小峰慎也
雨。
めし。
ハミガキ。
脱糞。
掃除。
携帯で本の資料写真撮る。だいたいよくわかってないの
で、デジカメモードで撮ると重すぎてメールで送れない
ので、フォトモードで撮っていたのだが、まずデジカメ
モードになる仕様になっており、すぐ撮りたいときなど
にいちいち切り替えていたのでは、シャッターチャンス
を逃すことになる。パソコンに直接つないでデータを送
る方法を説明書で読んでいた。
店のメールが20件も来ている。
あきやまで中華丼。
と思って、
ホームページのアプリ機能で、商品情報を写真などもそ
のまま、 facebook
ページにリンクできることがわかり、
それを試してみる。
値付けしていたら、高額で仕入れた本に線引きが。
大宮に行ってプレゼントにかばんを買う。
8時起床。
使用期限が切れていた。
のどぬ~るを塗る。
のどが痛い。
6
詩誌『四囲』Vol.5 小峰慎也
めし。
ハミガキ。
洗濯。
脱糞。
掃除。
発送3件。
ダイソーでマジックテープ。
十六穀米。
ロールキャベツ。
ナスの味噌汁。
ブロッコリ。
かぼちゃの煮物。
カーテンを切って縫う。
少し丈を切りすぎたか。
入力。
線引き消し。
アップ。
冷凍の五目チャーハン。葉大根の味噌汁。
ロールキャベツ。
梅干。
納豆。
手紙書く。
不燃物。
めし。
7時50分起床。
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詩誌『四囲』Vol.5 小峰慎也
ハミガキ。
掃除。
発送3件。
金がないので服を売る。
3点で30円。
豚肉とシメジの炒め物。ポテトサラダ。
白菜とこぶの浅漬け。
味噌汁(の具が思い出せない)
。
値付け。
入力→アップ。
メールで行き違いがあったので、
確認するメールを出す。
歩く。
おいらせで野菜炒め定食。
10
戻って少し本を読み、
また歩いて、
公民館に入り、
鴻巣市の人口
平成二十三年十月一日現在で、
だいたい十二万人、男が五万九千何人かで
女が六万人強。
女のほうが多い。
「日本全国8時です」
。
明け方へんな寝方をしたので、頭が変だ。
7時50分起床。
8
詩誌『四囲』Vol.5 小峰慎也
めし。
ハミガキ。
脱糞。
掃除。
発送4件。
鯖かな。まいたけ汁。
ポテトサラダ。
ほうれん草のおひたし。
何かお菓子。
もらったの。
「花筏」とかいうの。
値付け。
手間どる。
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ソーセージ。
ほうれん草のおひたし。
ごまどうふ。
白菜とこぶの浅漬け。
スイスロール(モカ)半分。
掃除。
脱糞。
洗濯。
ハミガキ。
めし。
一度起きていたのだが。
8時起床。
9
詩誌『四囲』Vol.5 小峰慎也
注文1件。
高額注文先払い結局連絡ない。
発送して、
セイムスでニベア買う。
まぐろといかのどんぶり。レバニラ炒め。ほうれん草の
、
「自由すぎる鬼束ちひろが話題」とか
おひたし。まいたけの味噌汁。
ヤフーニュースで
出てるので、
動画の一部をちょっと見てみた。
車で大宮まで。
入力→アップ。
エルミへ。
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酢豚。納豆。コージーコーナーでチョコミルクレープ、
渋栗タルト。
注文がつづけて入る。
電話で注文。
ひたし。がんもどき。さやえんどうのゆでたの。
マーボー丼。わかめの味噌汁。サラダ。ほうれん草のお
注文4件。
掃除。
脱糞。
ハミガキ。
めし。
7時30分起床。
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詩誌『四囲』Vol.5 小峰慎也
入力→アップ。
入金確認。
麻婆豆腐。トマト。ほうれん草のおひたし。さやえんど
うのゆでたの。納豆。
「週刊文春」と
「ユリイカ」
(やくしまるえつこ特集)みにリブロへ。
「週刊文春」読んでいるあいだに「閉店のお時間」になっ
てしまう。
坪内祐三の「文庫本を狙え!」が北杜夫の『マンボウ家族
航海記』
( 実 業 之 日 本 社 文 庫 ) を 取 り 上 げ て い る。 2 4
日に北杜夫が亡くなって3日しかたっていない。いや昨
日出ている地区もあるし、24日に亡くなっても、死去
の 知 ら せ が 出 た の が 2 6 日 の 朝 く ら い?
ということ
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は、
偶然なのか?
昼間「荒川強啓デイ・キャッチ!」で、
坪内祐三と同年生まれの山田五郎が話していた北杜夫体
験と符合するところがある。
家に戻ったら、時計が遅れていた。
にくそば。
ハンバーグとからあげの定食。
発送5件。
脱糞。
ハミガキ。
めし。
7時30分起床。
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わたしの天国
中島悦子
詩誌『四囲』Vol.5 中島悦子
わた し の 天 国
終点へ向かうバスは、がらんどうで、運転手もいるのか
いないのか。私の世の終わりもこんなふうにどこへ行く
のか。どこふく風。きらきら市役所の前に柩が置かれた。
柩には、
「生きながら、入りますか?」という張り紙が
してあった。きらきら市役所のシステムは、すでに魂が
抜けており、この事件をどのように対処すべきかわから
なかった。これは、
批評ですか。批判ですか。というか、
芸術表現ですか、いわゆる。ついこの間の合併でできた
ばかりのきらきら市のシステムにとっては、まともに批
判を受け入れることができるわけもない。結論は、所詮
芸術ですから、表現の自由ですから、とにかく自由にお
やりになれば。と、言うが早いか、直ぐさま柩は粗大ゴ
ミ置き場に直行させられた。彼が私の右手首からずっと
キスをはじめて、
脇まで。そのきれいな横顔を見ている。
そして、その頭を抱いてあげる。重い頭、黒髪。きらき
ら市とは、最近ひらがなでの命名が流行ることを受けて
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詩誌『四囲』Vol.5 中島悦子
の統合的血名、もとい地名である。わざとらしいんだよ
ね。どこが光るのだか。この市では死にたくないな。サ
ラリーマンのガラス張りの税率では、どこも後ろめたく
ないし。つい、われわれまっとうな庶民はなんて言い方
をしそうになるじゃないですか。図書館には、一冊も新
しい本はなくて、節電ばかり。無料の図書目録がずらり
と並んでいる。麻婆豆腐なんて、あなたが思うほど好き
じゃない。雲南省の花椒をうんざりするほどもっとかけ
て。あなたが全然辛くないよという時の声がいい。花椒
って、銀色だよね。岩から採れたみたい。しびれる。柩
の値段はまちまち。たいていは中の上くらいを望む。分
相応で結構。火葬場って、なぜ東とか西とか、方角を表
す文字が入ることが多いのか。何かの出口や入り口みた
い。市役所は、人間だけはこれからも燃やし続けてくれ
るだろう。火葬は、燃やされた瞬間身をきられるように
辛いが、それでいいと思う。肉体がいつまでも腐りなが
ら残るのは未練が残るから。釜は、予算がなくても、い
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詩誌『四囲』Vol.5 中島悦子
つも快適でお願いしますよ。みんな、東口か西口から空
へ出て行きますから。彼は、空中ブランコ乗り。抜群の
運動神経と力で、私をしっかりと空中で抱いている。彼
の息は耳にかかる。何か言う。言いたいことは分かって
いるのに、もっと聞きたい。遠く遠く離れる前に。今日
は、きらきら市役所に給付金を取りに行った。判子と身
分証明書をもって。そしたら、まだ身分証明書の住所が
前の市の表記のままで、ものすごく怒られた。もうその
市は存在しないのだ。合併して流行の名前になって、生
まれ変わって給付金をあげているのに、まだ前の地名に
未練があるのですか。どうなんですか。そんな人に本当
はあげたくありませんね。
便宜上私の彼といわれる男は、
演技の線が細く、かすれ気味の声が一本調子。深みがど
うしても出ない。そこにいつもはらはらさせられる。他
の男の演技がよく見える。このご時世にあげるといって
いるのですよ。高飛車な職員の名札をじっと見て、あと
で市長に手紙を書く。きらきら市の職員ともあろうもの
がああでは、きらきらと名乗る資格もありませんね。税
金がちょっと返ってきただけにすぎないのに。市民は分
からないことが多いんですよ。これらの手紙は、市長へ
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詩誌『四囲』Vol.5 中島悦子
のファンレターとごちゃまぜにされ、市長の手では開封
されず、事務職のお姉さんの白い手で上手に粉砕葬され
ていた。きらきら市役所の大事な仕事は、ゴミ収集なの
だが、市民のゴミの出し方こそ批判に満ちていた。市役
所が決めた以上のていねいな分別をし、職員をこまらせ
ていた。時々エレベータに乗る。妙な奥行きのあるエレ
ベーターは、本当の配慮に満ちている。柩を立たせるわ
けにはいかないのだからね。
生きていて申し訳なくなり、
じりじりと後ずさりする。奥につめなくていいよ、そん
なには。苦しくて、声にだせない息を吐いている。男の
演技力は、命より大事である。そんなことは、すべての
女の了解事項である。女がどんな魑魅魍魎の世界に生き
ているのか知っているのか?
その程度の演技力で女に
好かれようとは。給付金はすぐに中止になった。きらき
ら市レベルでない、国家レベルでの惨事があり、お金が
なくなったのだ。職員は言う。どうせ、国民全員が癌に
なっても、証明のしようがないのだから。証明するまで
に全員が死んでしまう。それだけの国だったのだ。って
いうか、惨事なんてそこら中にあったんだから。今には
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詩誌『四囲』Vol.5 中島悦子
じまったことじゃない。リフレインの一部にすぎない。
くりかえし泣く人がいるというのに。見ないことにして
いる。彼は、空中ブランコに失敗し、両足骨折。ブラン
コ乗りに見切りをつけた。そして、案外あっさりとサラ
リーマンになった。いつも、職場の人の夢しか見ない。
それは、心の病なのか、本当に職場の人が好きなのか。
きらきら市役所の職員たちのひそかな悩み。真冬のエレ
ベーターにあの人と乗っていた。どこまで上昇するかわ
からない、粉雪が入り込んでくる。あの人は、昔、屋台
をひいていたこともあるし、ハノイを放浪して小説を書
いていたこともある。でも、今はそんなことがあったの
かという横顔。私は、あの人とこんな不安定ないつどう
なるかもわからないエレベーターの床にはいつくばって
いた。このまま、エレベーターの底は抜けてしまうよう
な気がする。この砂場は大丈夫なのですか。牛乳は大丈
夫ですか。今まで聞いたこともなかったような質問ばか
りされる。職員達は、ただただとまどう。答え方がとん
と分からない。とんと。そして、凍てつくコンクリート
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詩誌『四囲』Vol.5 中島悦子
に私だけがたたきつけられて、結論はでない。私の心に
ヒントなんてありませんよ。ヒントを下さいと馬鹿な男
達は言うけれど。あるはずないでしょう。近頃の不動産
売買は、あるはずのない家を売ったり、買ったり。売る
家には、未練があり、買う家には、どこか欠陥がある。
突然殺人者が乱入し、殺されそうになる(あるいは殺さ
れる)
。湖の見える蒼白の家がほしい。夢からさめると、
春は曙。私の天国は、殺されても春だといい。ステンレ
スの柩を作る男。ステンレスって洒落?
すごくわから
ない。後になると、こんな予兆を感じたなどとさかんに
いう老女が出てくる。私は、何も分からなかった。その
日の惨事を予測するなんて神業である。私は、石碑の文
字が神だと思った。彼は、三ヶ月も君をがまんするなん
て到底できないと言う。私は、いつも嫌いなふりをして
いるというのに。秋の夕暮れ。私の体からすべての痕跡
を消してほしいと言う。私の内臓のにおい、私の髪のに
おい、それは、枯れ草の腐ったようなもの。すでに、あ
のステンレスの柩に行儀良く半分入っている。発酵の過
程は、あなたが知る必要もない。友達が手相占いをした
いというから、待つ。彼女の手は、まだステンレスのど
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詩誌『四囲』Vol.5 中島悦子
こにも入っていないから、全部の線が見えるだろう。市
役所の仕事と占い師の仕事とどっちが信じられるかな。
おみくじの棒は、九十九本。その筒はちょうどいい頭の
重さ。振る。もう、十五番は吉で、十四番は凶と分かっ
てる。人がそのせいで死んでも気にしない。生まれ変わ
っても気にしない。法律が新しくできるたびに新しい市
役所ができるといいな。そのたびに職員も新しくなった
らいいな。私は、最近思うことがある。プロフェッショ
ナルとは、心も強いことだって。ちょっとやそっとの非
難や逆境にくじけてはならない。上司のへんな口癖を聞
く。
「かかとぉ」
。つまり踵をくっつけて気をつけをしろ
という号令だ。ここは、市役所なのにと思う。
「つまさ
き ぃ」
。 つ ま り 爪 先 は、 九 十 度 に 開 け ろ と い う 号 令 だ。
不必要に大きい押しつけがましい声。ここは市役所なの
にと思う。たかが上司の話を聞くだけで、
いつ市役所は、
軍隊になったのだ。これで心の病にならないほうがおか
しい。彼のキスが胸から左脇へと移る。ここが一番心臓
に近いから、ずっと留まってほしいのに、すうっと左腕
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詩誌『四囲』Vol.5 中島悦子
を通って、左手首の内側に長い長いキスをする。そして
夜が明ける。私の骨の音を聞いていたという。溶けてな
く な っ て い く 骨 の 音。 そ の 骨 に 自 分 の 目 印 を つ け た く
なったと言う。言葉が無理矢理熟すことは、決してない。
つまり、熟すまで待つ。永遠に熟す機会を失って、見捨
てられたとしても、それは仕方のないこと。時が来るか
来ないかは、運命。市役所は、言葉そのものをあらため、
荘子のひとつやふたつでも学んで、信念をもって市民サ
ービスをするべきです。三百年消えない金属をいったい
どうしろと?心の中で笑っていたとしても。あの人が私
に描いてくれた油絵が見つかった。二十年前のものなの
に、
まだ絵の具が乾いていなかった。したたる油絵の具。
未完成の絵。これは、誰のせいで濡れたままなのか。咄
嗟には分からなかった。私の心のせいだとは、認めたく
ない。自分はもう世の中から外れた。この間のニュース
では、死ぬまでハローワークに行けだなんて口汚い言葉
で通達された。庶民だけは、ハッピーリタイアがないな
んて。死ぬまで働く気持ちの長さはどれくらいか。恐怖
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詩誌『四囲』Vol.5 中島悦子
だ。油絵の具の生々しいにおい。きらきら市は、合併に
よってできた。合併されるということは、毒が強まるの
か、弱まるのか。つくづく思うことは、野蛮な市には、
野蛮な制度があってもしかたがないということ。野蛮な
制度を死守して、これが近代都市です、先進国ですなん
て、恥ずかしくてとても言えない。我慢にも限度がある
な あ。 ど こ か で 座 り 込 み を す る な ら 誘 っ て く だ さ い。
ち ょ っ と 子 ど も っ ぽ い 年 下 の 彼 を 誘 っ て 行 き ま す か ら。
彼は、
若い筋肉をすべて鍛えていて高飛びひとつにも「ベ
リーロール、やってあげようか」と言う。私は、それが
無駄なことのようにも、尊いことのようにも思って黙っ
ている。そして少し悲しくなる。今は、市役所の言葉も
数字も一つも信じていない。大きい数字は、あまりに大
まか。飛び散る砂場も置き去りの側溝も、公園のどんぐ
りも全部信じてはいない。あの油絵は、私自身だから。
い つ ま で も あ の 人 を 許 し て い な い。 私 を 棄 て た 理 由 も
ずっと聞けなかったし。電話一本で棄てられたのに、素
直に従った。今では、同じ金属の雨の中にいる。市役所
では、タイムカードがある。一分でも残業したら、残業
代なのに、誰も申請しない。不満は喉ぎりぎりまで。ど
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詩誌『四囲』Vol.5 中島悦子
こかで手をぬきたいのに、
その暇もない。それって、
けっ
こうすごい。そして笑える。彼には、市役所に通達され
なくても、カルシウムを飲ませる。ストロンチウムの吸
収を防ぐために。そんなの近頃では常識だし。彼には、
私の分まで将来を生きてもらう。隣家の八十五歳の素人
批評家のY 氏は、週刊誌に投稿。
「市長ごときに」とい
う言葉に思わず、しびれる。八十五歳の熟し方。私は、
つい彼の演技に「ま、いいんじゃない」と言いがちだけ
れど、それはいけないと思った。絶対彼を許さず、とこ
とんまで追い詰める覚悟がなければ。彼が脇役で出てい
る映画のDVDは、理由もなくフリーズする。そのたび
にリセット。そして、
そのたびに演技の内容が気になる。
彼が動く。フリーズ。そしてリセット。それは、台詞が
悪いんじゃない。あなたが悪いのだ。フリーズ。映画が
全く進まない。リセットの繰り返しで。何年かかるのだ
この映画は、いったい。 だ
( からってどうなる と
) 彼は言
いたげだ。こんな先進国でどうなる。彼と雨樋を見てい
る。うちの雨樋も毒で、こうやってながめているだけで
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詩誌『四囲』Vol.5 中島悦子
毒をあびているんだろうな。見えない、感じないだけで、
この毒はずっとあるんだろう。俺の演技の毒なんて使い
方が違う。見えない、感じないって俺の愛もわかんねー
だろ、どうせ。そのうち、二人の間で市役所の話はしな
くなった。他人の生涯のつめこめるだけの毒の量を勝手
に決めて、その神経はどこから来るのか。先進国の方か
ら来るのか。ダイジョーブ。ダイジョーブ。すっからか
んの冬晴れ。バス停では、今朝も十人の顔なじみが待っ
ている。バスに乗って二交代制で、自分の弁当をもって
工場に行く我々に人生があるとは、見えていないのだろ
う。彼とは、天国に行く時間がずれる。それが自然だか
ら、私は気にしていない。そんなの関係ない。ただ、彼
は市役所の方に向かって唾を飛ばすほど本読みをしてい
る。
「無意識だよ」と言う。柩はどこに行ったのか。柩
はどこに行ったふりをしたのか。作った人間はどこに身
をひそめているのか、なじみの恋人はいるのか。材料は
どこで調達したのか、何で運んだのか。そして、今も市
役所を見ているのか。私達は、
もう見なくなったけれど、
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i
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詩誌『四囲』Vol.5 中島悦子
また機会をうかがっているのか。西の外れに痩せた土地
がある。墓はない。痩せた土地こそ、
私が好きな場所だ。
三千年前の英雄の歯が落ちている。あんたって性格悪い
し。会わなくても分かる。芋もできない。クローバーも
咲かない。さめざめとした赤土が剥き出しになって咆え
ている。柩は、どこに棄てられ、どこにまわされたのか、
私には分かる。
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この道は
飯田保文
詩誌『四囲』Vol.5 飯田保文
この 道 は
この道はいつか来た道
自我はそのようにしか来得ないほら
時計台だよ
空白は体験をし得ない眠り入る瞬間を感じないほら
過
ぎた
眠りは自我には有り得ない体は知る
死ぬ事は有り得ない知る体の有限に不死の私載っかり悲
しみが
人間は皆死ぬ自分は人間だ自分も死ぬそれは外部の言葉
内部にしか無い意識は死ねないただ遠い知識からグァー
ン体を不安が
アキレス亀に追い付き死が体に追い付き原理的に出れな
いと感じてたマンションからこうして買い物にも追い
付き
トップスだよ死ぬ感じる事の無い小さな永遠存在の右手
は生ラーメンに
追い付いて死にアクセス出来ない死を在り在り思い浮べ
れない死の薄っぺら恐怖を在り在り浮べて眼を背ける
人肉をたっぷり入れてラーメンを食おう途方もない生物
の
血は赤いのは血液のためにこの色が選ばれたわけでもな
く酸素を運ぶ分子が選択されたとき
その分子がたまたま赤かった
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詩誌『四囲』Vol.5 飯田保文
言葉は全て外部だ
外部としての内部だああ
そうだよ死ぬのは良いが何時
死んだのか知らない内に死んでる永遠に
悲しいというのを誰に伝えるんだその悲しみすらもう無
いと
誰が喋ってるんだ俺はもうマンションから一歩も出ない
六十でグレてやると真っ赤なラーメン
叩き付けた己の見えない顔にこんな馬鹿な顔何処にも無
いぞ人間が進化の頂点だなんて思ってる碌でもない
他の生物は賢いからこうならないんだ狂い死に人類をあ
なた知ってるか
誰も知らない狂い死にすらしなかった比較的幸せに滅亡
したそれ位の能力しか無かったんだ事も宇宙どーでも
いー
僕等は適当に幸せでいるしかなくあなたの手を取りよく
尻を平手打ちにし太り気味の体を美しいと思い口づけ
する
愛してます
死は無ですらなく
死ぬ瞬間などなく
もう怖くもなくなってんだろう
死は無い
生きてもない
生れなかったグレた俺
あなたの豊かな両尻たぼを素晴らしい進化的に良く出来
た両手で掴んでただけ
この道はたちまち道ですらなくなるはじめて来た
生れ来る胎児にとってそうではない
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詩誌『四囲』Vol.5 飯田保文
生れない胎児にとってもそうではないただ
彼はあなたの柔らかな胸を指で何回も確め進化的に新し
い心が永遠に祈っているだけ
良く出来てはいない心
が僕に成る
永遠を造るなんてねえ
良く出来てない僕が
そこで消える
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詩誌『四囲』Vol.5 飯田保文
1234567890
が世界であるピタゴラス学派のメタファー宇宙を
飛ばずあんたに埋め込まれて
電話向うから飯田さん数学は完全なんです数学が有ると
いう事が神の存在の証明なんです千葉コーリング!
電話向うの身体に数字は言葉だメタファーが
思考は言葉であるだから書かれた文のように思考を一つ
ずつ点検出来る
言葉は世界の事物と対応してるから世界も点検出来る僕
らは完璧に世界を知りうる埋められた只の
フォーク・セオリーから
23456789∞1
デカルトが乱舞!マインドは自らのアイデアを絶対確実
性をもって知る全ての思考は意識的で
マインドの構造は、それ自身に直接的に接近可能である
実証研究は必要ない。
マインドは非身体化されてる。それは、メンタルなサブ
スタンス?で構成され、一方身体は物理的サブスタン
スで構成されて
この私 い
[ うならば、それによって私が私である魂 は
]全
面的かつ絶対に私の身体からは峻別され、身体無しに
も存在しうる!
3456789∞12ゴー!
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詩誌『四囲』Vol.5 飯田保文
不死を信じてる何人ものデカルト少女に会う暗い夜
4567890123
苦しい生をリセットしよう世界は数式で表わされ宇宙自
身巨大コンピュータガチョーンと
幸福なあたし
ガチョーンチューリング・マンだ多数の科学者動物であ
る
デカルト先生が神信じ似姿として理性与えられし人間世
界を知り
ああ
この詩の言葉は世界の事物と対応してません
どこに保証が
神に頭を撫でられる永遠に生きたい
どうして?
5678901234
時間は流れない時間が流れるメタファーが身体の奥底に
在る①自分が移動していく②自分は佇み回りをあらゆ
のが流れていく分裂した二つのメタファーが
ビッグバンの前が有るような 1
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詩誌『四囲』Vol.5 飯田保文
金も社会的地位も
無い男が川面見て
やりたい
絶望が光り輝く
川面が光り輝く
その光で生きる
夕暮れの地球
ひとり
金の鯉
プアプア
顔も運動神経も
無い男が地面穿ち
やりたい
絶望が穴に輝く
地面に穴が輝く
その穴に回る
夕暮れの月面
ひとり
金のミミズ
ポエポエ
愛も性的能力も
無い男が散々にも
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詩誌『四囲』Vol.5 飯田保文
やりたい
何故こうやって生きるのか
死を夢見る贅沢の
淡い光抱いて
夕暮れの空中
ひとり
銀の魂
歩いてる
34
詩誌『四囲』Vol.5 飯田保文
のこ
このこね
このこ
このこ
ねこのこ
この
こどういう
このこ
どういう
ここのね
このこ
ここ
のねこのこ
ここ
ねねこのの
ここね
ねこのの
ねむれね
このこ
ねむれねこ
のこ
ねむれ
ねこのこ
のはらにねこがふってきた
うちゅうにねこがふってくれば
ぼくもねんねこにくるまれ
ねこになっちゃって
うちゅうがニャーになっちゃう
うちゅうがニャーになっちゃえば
このこね
このこ
このこ
ねこのこ
このこねこ
のこ
この
こどういう
35
詩誌『四囲』Vol.5 飯田保文
このこ
どういう
このこどうい
う
ここのねこ
のこ
ここのね
このこ
ここ
のねこのこ
ここねね
このの
ここ
ねねこのの
ここね
ねこのの
ね
むれねこのこ
ねむれね
このこ
ねむれねこの
こ
ねむれねこ
のこ
ねむれ
ねこのこ
ねむった
ねこのこ
ねむったね
このこ
ねむったねこ
のこ
のはらにねこがふっている
うちゅうにねこがふっている
うちゅうがニャーになっちゃう
うちゅうがニャーになっちゃえ
のはらにねこがふっている
うちゅうにねこがふっている
うちゅうがニャーになっちゃう
うちゅうがニャーになっちゃえ!
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詩誌『四囲』Vol.5 飯田保文
0
真赤なラーメン飛び散った見えない顔よ
信じて呉れ心要らない
馬鹿なもの大切にした三万年辺りに
撥ねた油この机を宇宙が認識し得ようか
運動が僕の手指身体だよ
返せ
したら身体が作るだろう1つの主体複数の自分を
1つの宇宙複数の宇宙よまた会おう
いいえもう良い僕は
決して生れ変らない
たくさんだこの
動物としての
死体に人間よ触れるな
*
お願いだ人間だと頼んでるクオリアを
思い出す眠りから覚めた後に
ありありと思い出そうよさおり一〇億の星の死滅した後
に眼潰れるほど泣く事も出来ない僕らは
もはや覚めないから自分が眠入ったのを知らないみみず
として這う一〇億の星の上
明るさあれ
エロあり
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詩誌『四囲』Vol.5 飯田保文
ドドッーオ千匹みみず道玄坂を見ろ光速で登ってく
坪内美子めめずの君のこの上ない気持いいさおり
の二八パーセントのガラス玉この永遠は壊れると永遠に
繰り返す君の
ガラス球もし爆発すれば産れた宇宙に人間として愛し合
う
ガラスが融けた!あの空の青さニッパチ永遠!にゾンビ
愛しようよ
青い空の裏側は
恐らく無数の眼が有る
から送られて
来るマイクロ波
二つの岩が有る一つの地球が有ると誰が認識しようか
岩がセックスしているまるで僕らみたいに永遠に抱き合
って
ある一つの生物が習性か構造のどちらかでほんのわずか
でも変異して
同じ地域の他の棲息者に優る利点を得るならば
この棲息者の場をたとえそれが自分の場とどんなに異な
っていようと奪い取るであろう
乾いた陸地に棲んだり滅多に着水しない水搔のある足を
備えたガンやグンカンドリの存在することも
沼沢の代わりに草原に棲んでいる長い足指のウズラクイ
ナの存在することも
ほとんど樹木の生えない所にキツツキが存在することも
水に潜るツグミや水に潜る膜翅類
ウミスズメの習性をもつミズナギドリの存在することも
こうして何時かまるで永遠の心もって遠い!
光る水紋のような岩石である!
38
詩誌『四囲』Vol.5 飯田保文
心がずっーと黄金に変えてた全世界を抱きたい!
岩石が世界抱いてんだ岩石と抱き合ってまた
ここより生命も平行するが何故かしら永遠に
僕じゃないので生きてる君という岩の中に愛するばかり
の
自分を感じない本当の愛が見える?例えば
薄箔を君の形に折れば忽ち祈り始める宇宙の何処でもか
ら
君の孤独が有るのではなくただ物質が光ってる寂しい宇
宙に愛そうとしている君を?
39
蛍たち
近藤弘文
詩誌『四囲』Vol.5 近藤弘文
蛍た ち
地を這う存在の匂い
一回の呼吸であらかたの
暴力に輝く蛍たちを
汲み尽くした
41
1
詩誌『四囲』Vol.5 近藤弘文
思考のないピアスに植えた名を
ふくらみが、腕が、結うのかもしれない
ここで生かされたもんじゅ
あたたかな話し声に、いいよという
失語の気配が満ちてくる
42
2
詩誌『四囲』Vol.5 近藤弘文
アブサードなあいりん
薪能の寝相がぎくっとする
見る、ミルク、海松
歩いてはいけない場所を口ずさんで
流木のリズムに重なった途端
丘に出た
43
3
詩誌『四囲』Vol.5 近藤弘文
これほど脆く
と語り始めた月はきらびやかな黙示を
降り注ぎ脱北
無花果
の∞に拡散する兎たちが
籠絡することの意味に
姿を変えはじめて
44
4
詩誌『四囲』Vol.5 近藤弘文
死の行を跨ぐ粗忽
疲れ果てた僧侶の群れを
点字みたいに愛おしく
六根清浄、と
ともに哄笑したかつての虹
秋刀魚を地に突き立てた彼女の
声変わりした琥珀を
かざしてみる
45
5
詩誌『四囲』Vol.5 近藤弘文
雷鳥の姿を真似る
ことばをもつということ櫃まぶし
やわらかな黄泉の行く末に
秋雨のあかりが灯る頃
あざやかな鉄砲水だ
見世物にするのを禁じる
ことを沈黙といい
もうこれ以上
布団を葬る必要はない
46
6
詩誌『四囲』Vol.5 近藤弘文
退屈を聴く日々
朝顔の灰について考え
われらの声と
そうでないものとの薄明のなかに
静かに降っている
息ならぬ息
衰弱した蕪の軌跡が引かれ
描かれた纏足を茶化す
寝顔の草書体
ざわざわ
47
7
詩誌『四囲』Vol.5 近藤弘文
唐変木
という閃きを
人称のなまずのために
頬擦りする酸漿
こんにちは
曼陀羅をひきずって
紅葉する酒量が増える
馬刺を食う普天間やろ?
蛍たち
精液の光を漂わせながら
震えている
48
8
詩誌『四囲』Vol.5 近藤弘文
ヴィークルを毀した
革命という文字をひさしぶりに
見る
そうではなく
起こりうることの果てに
人見知りする碁石
囲碁ではなく死後の
鵺のように眠る
そして不可侵の鉈を一閃
てくてくと歩いた除染
斜視の雪に微笑みながら
墨のような人妻を描く日課
49
9
きっちょむ
吉四六
高塚謙太郎
詩誌『四囲』Vol.5 高塚謙太郎
きっちょむ
吉四 六
「ぼくの永遠は、きみが作ってくれたんだ」
ノヴァーリス「青い花」
霧がのびてきた。防空にみせて群青の敷石を歩いた。さ
もなくば、天井にひそむ吐息を、はるか向こうに消えて
いる道に流し続けている村落は、今もしずかに見わたせ
る。軽めの砂煙と見紛う。
いくらか経てきた髪留めに近いものの、ひとつの密告か
ら引いてくる。すると幾ばくかの撲殺と、心ばかりの飢
えを、高くたかく経てくることになった。軒下ばかりに
なって、飛翔、立ち上がる蒙昧に手を触れて、志半ばで
降りてしまった。
気を述べる。片方の耳で、静粛と思う。
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1
2
3
詩誌『四囲』Vol.5 高塚謙太郎
崩落しかないところで、互いを奉っていたところで、ど
れほどの泣き落としがきくというのか。ものを言う、と
言う。かなりほど遠い気分に見立てるところから、泣き
崩れていた母堂たちが、遠くほの見えている。
うわご と
譫言のように茶碗をすすっている座敷を回転させ、聞こ
えてくるのは今様歌留多のそれは立派な佇まい。惚れ惚
れするような御御御付けを、ずず、と譫言のように長々
と伸びやかに。口伝ではそこまでが限界だろう。
うどん
饂飩をはじめて焼いてから、この国は散種の方策に組み
込まれている。山椒を撒いて、髪を振り乱し、音をたて
て、そこいら中で転覆しているミラーレス餅を装着して
みた。
畳まれている襟足を摘まみ上げ、弾力を堪能している最
中に、糸が切れたように生姜湯を垂らし、神仏は言の葉
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4
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7
詩誌『四囲』Vol.5 高塚謙太郎
にしか見えないと言葉で書かれてあったのを思い出し
た。こそあど言葉に見え隠れしている生娘の腹具合がど
うもその言葉に近いようだった。
一本の釣り糸が大きく弾け飛び、
夜の天井が剥き出した、
さ
ば
え
星菫派ともあろうものが、命を粗末にする。歌に託す。
五月蝿なす肝の静けさ、それから眼球のもどかしさ、そ
ういったものを一息に吊り上げて凪をもう少し待った。
冥途の手前までシャッフルして列を乱し、前髪の淫らな
かそけさを光線上に開いて、このまま忘れていった。梵
字に迫るほどの夕暮れをかまいつけ、喉を鳴らし、気を
持たせ、新しい袖口まで匂いは稲妻、もしくは諸人こぞ
りて斉唱する和田金。
猛禽類、という果物を、口に差し出し、赤や緑の眼差し
を寄り返す。夕餉の後の、おかしな音もそこかしこに言
葉を濁し、啄む帯にからからと、そういう姿でもたれて
いるのは、膨れっ面の一抹と、通り過ぎた旗本珈琲の薫
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詩誌『四囲』Vol.5 高塚謙太郎
りでした。
点眼、魚、文字、隣組三軒に御用聞きとして巡回してい
た時分のカドミウムで、雨戸を屛風のように信じていた
五 人 組 は 軒 並 み 石 で 撲 た れ、 す っ か り 盛 り を 過 ぎ て し
まった。
焦 れ る 音 か ら 気 が ま い る こ と を 見 き わ め て 今 が あ る。
代々の口伝はのっけから身仕度を始めてしまった。
耳飾りだけなら気を揉む必要もなかった。清々してうた
ほりもの
た寝をしていた。微睡んださきから昼は技巧的に来てい
た。やはり刺青の輪郭で鼠にしてやれば良かった。肥や
しになった。ほどほどと。
若年寄の廻し、
は絶後と聞こえた。
山を越えた。
年々歳々、
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詩誌『四囲』Vol.5 高塚謙太郎
遠く見える道から瓜実はしゃなりしゃなりと。
とうとう楼閣を攻めた。挙げ句が歌枕だった。
しののめ
車座になり一斉に口をすぼめる。婚礼は東雲、耳をそば
だて氷室で切り出されてくるものを思いつつ、口をすぼ
める。いずれ鈍痛が走る、各々の前頭葉に。
墨染めの葉桜を凝っと支えていると、岩陰から一つの守
が寸断の間際のまま這い出てきて、集落の銀座までご足
労願う羽目になる。
ちょうど色が呼ばれた頃合いのため、
いつまでも手枕というわけにもいかず、一幅拡げて、年
貢の建前とした。
子を譲り、干支もすっかりわからなくなった。手鞠唄は
遠く今でもてんてんとおもしろく、まわりくどい音がす
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詩誌『四囲』Vol.5 高塚謙太郎
る。箸の使い手として、たとえ免許皆伝とはいえ、使い
ものにならないと、大水のときが来るとも限らないし。
気ばかりが急いて緒がぷちんと切れてしまった土の匂い
に、手繰り寄せてみればみるほどそれは不釣り合いだと
思い至るばかりで、旅籠に吊られていた糸のそれは愛嬌
めいたことよ。一服せしめて、気乗りにまかせ、その方
角に進んでみたらいいと思う。
河原までほんの半時間というところで息が切れた。凧の
ように、
などと言ってみたらいい。
跳び過ぎるくらい昇っ
てゆくと皆が噂している。
回転木馬という悪い噂がある。年寄連も柚子風呂で囁き
あっている、とのこと。今も木のままの馬どもが水車の
いくさ
ように静かに嘶いている。水は、相変わらず流れている
が、もうそろそろ戦が始まる。
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詩誌『四囲』Vol.5 高塚謙太郎
どのような儲けを当て込んで百貨店と名乗っているの
か、番頭に問い合わせると、混線か不通か、血の気を失っ
て紙のような描かれ方をしていた。
紙が白い時代は若い。
大王の時代は、博打打ちの度胸と紙の度肝が混線してい
た。今朝、紙を見ていて気づいた。
数え唄にしたらよかった。少し頓知のきいた。
口もとのしどけない感じが受けたらしい。喉が渇いたか
ら筒井の井筒まで比べに出てみた。丈が伸びたのびたと
しきたり
触れまわっていたのは、あれは髪のことだった。髪が肩
より越えたから身請けをする掟らしい。だから互いに横
にいる。いつも夏を過ぎるころになると方々を詣で、蜘
蛛の巣を張り合う。
コース取りを誤ってしまった。棚田の方へ逸れている。
棚卸しには間に合いそうにない。損得勘定でいうと、上
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詩誌『四囲』Vol.5 高塚謙太郎
手く事が運んだことになる。奉行はしっかりと機能して
いる。
うし
ボーダー柄の陣地は、はや平らげられた。背ろの正面を
叩き呵成に押し上げ、昇るのは野火ばかり、底知れぬ曰
くに憑かれ、荷をほどく土間に御来光敷きたえて。
しらす
白子の喃語は身罷った。寝床でもぞもぞ命ばかりは大本
営に、気づかれてはいけない。映画ニュースの道々、大
活字で印字されているのは転戦に次ぐ転戦、戦果もたわ
わにうらなり、嫁菜の横顔をずっと見凝めていた。そろ
そろ届いている。
かずら
しろ
麹町、という天竺よりも明るいご立派な演芸場へ行きた
い。門外不出の蔓橋を渡り、夜な夜な編み上げた代を懐
手に、一人またひとりといなくなる。あ、お隣の惣領も、
麹町、にお行きなさったか。してみると嫁菜も刈りごろ
になっている。それも鳥目次第だが。
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詩誌『四囲』Vol.5 高塚謙太郎
鈴が鳴りはじめると、山の方から遮断機が下がり出し、
水車が回りはじめ、水が音をたてて通り過ぎていく。追
分の二股辺りで飛沫を上げながら。
泊を遠望できる出島の窓を前にすると、
回転扉を背にし、
海鳴りのまま海猫の目を支点に、くるくると回りはじめ
ることから、手向け山でも塩が出ると、思いの中で読み
上げた。
促音と撥音の現れなかった時分の女房言葉には、村落の
かどわ
落ちていくような鼓がある。鳴りをひそめ、水無瀬の音
を認めず、御家騒動のどさくさに、ぽん、と拐かす若年
寄の笛がなんとも凄まじい限りであった。延着証明を配
り歩いた者もその中に混じっている。
か、と言いながら、裾をからげて。
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詩誌『四囲』Vol.5 高塚謙太郎
睡魔の中に水があるとは、いやはやしてやられた、とい
う耳障りだった。うなじの、一条の、黒髪に、陽が差す
から、緑の擂り衣が、中央アジアのヴァーティゴを烙印
せねばならなかった。吉祥に見えたところで幕間に。
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となりの腕は折れている
廿楽順治
詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
となりの腕は折れている
かもしれない
それを言ってはおしまいである
ことばがとまらない
折れていることが理解できないのはかわいそうだ
と嘆く
みんなのこころもちは
その角度で妙にまっすぐのびている
と
女に手をのばそうとする
その手がもうたくさんでうすきみわるい
(おかあさん)
わたしは現状復帰できた
四方が
わたしのとなりの腕の折れぐあいを観察している
おめでとう
千本もある
すこし多すぎやしないか
(ファッションだからね)
しかし今はひとつのものをつかむことができない
ちょっとした美文の折れを
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となりの腕は折れている
1
詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
体験しているのである
活動のしかたに問題があるのではないですか
にんげんが
折れているわけではないし
となり町の腕のことだ
後生だから
このたくさんある文の構造は
家族には内緒にしてほしい
この長さのことがすこしも実感できない
ごめんなさい
実感
というのはうそです
この人の誠意がつかめない
ほんとうは六インチとすこし
恥
という感覚が
むやみにわたしとして伸びてしまう
だが正確には
「伸びてしまった」
ではないか
ただしくあるために
わたしはさらに六インチ伸びる
(これはほんとうです)
どうして事前に電話しなかったのか
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わたしは六インチ伸びた
2
詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
それは
しかし、能書きだな
わたしは構文ではない
だったらおまえはなんだと責められてもこまる
ただされて
実感が
ひざ下まで
落っこちてしまったのだ
(気の毒だがこのひとは助からない)
東側にいる残りのわたしは
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伸び放題のまま
そこらに置いていってしまおう
こうなんども
わたしの話題がつづくことに
その大将(対象)はきみの前では3である
きさま、おれを誰だとおもっているのか
酒ものんでる
しょせんは不良の手口である
(表記はやわらかいが)
せいさい
てっけん
なぐらなければわからないこともある
議論しよう
ふるいにんげんたちはもっと立腹するべきだ
わたしは額にこぶがある
3
詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
理由もみっつあるが
それ以上はいわない
相手にしてはだめですよ
わたしの額のこぶを基準にして
これ以後の会話をかんがえてはならない
だが
わたしたちの話題はなんどもつづいてしまう
大将
(対象)
いっぱいいかがです
なるほどてっけんにしては話のわかるやつだ
しかしわかったからといって
ぶつかってきた存在を
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ゆるすわけではない
この人(のこぶ)
を見よ
やってくるひとを期待する
そのものがたりからは
何もはじまらない
スミスは硫黄島で死んだ
ものがたりのおわりの場面をかんがえる
肉を焼いておこうか
米を用意し
彼とともに死んだ日本兵ももう来るころだ
スミスはもう来るころだ
4
詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
米をくい
肉をくいちぎる
そういう別れかた
(それもひとつの結論だね)
でもそれだけかな
スミスはうごかない
ずっとテレビの女の子をみている
そこではカーテンだけがゆれていて
おじゃまします
東洋のきいろい二、
三の声がする
ハロー
モンキー
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こわがることはない
みんな
島で会った静かなひとたちだよ
どういう途方のおわりだろうか
それは
わかっていてまちがえる
わたしたちはひとつのものをふたつだと
いるのだろうか
なろうとして
数多く
様式ということである
それは
わたしたちは途方にくれている
全体は常にふたつある(あった)
5
詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
などと
急ぐきぶんに
きのうの血がよりはげしく回っていく
いかにも全体的だ
はやく
そこへ着こうとして
わたしたちは血の合計を欠いてしまう
予感は
なにもあたらない
パンも皿も
みんな
きのうはふたつそこにあった
67
いまもある
それは様式なのである
くらべてみよう
(あのひとずいぶん怒ってますよね)
なんと呼ぶのか
それを
また脚がねじれていたりもする
急に
そんなことはない
いち日はどれだけおおきくなったのか
そのひとの
というときにその椅子はちぢんでしまうのである
椅子が急に小さくなったらこまる
6
詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
椅子で
ひとの感情をはかってみる
いったい
どっちの脚の方がこまっていたのか
わたしはくらべるが
優劣がつけられない
(いい根性してるな)
おれはみたこともない単位で
ずっとおまえらをはかりつづけてやる
椅子
というのはつまり自称である
だから座るな
というのは横暴だろう
68
すなおに見くらべてからものを言う
それが
存在の根性というものだ
かどうか
指導員は
(だって教える必要なんかないだろ?)
きみはそれを知らされてない
つまり虎である
Aというのは
虐待ではなかろうか
きみはたしかめてみよといわれたのか
その歯がAの口のなかにある
7
詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
休日であった
喰うとか
喰われるとかに
関わってはいられない
歯は口のなかにないかもしれないではないか
ほんとだ
アタマと手が取れて
きみは基本的なところがかわった
A
は吼えている
ということはたぶん確実
そういうときの英語は苦手であった
(わおっ)
いつまでたっても
口のなかで
うまく受け身ができなかったのだ
ところで
ひとつだけ教えてやろう
きみは
そのうち大けがするぞ
ひとはかぞえられない
だから
大学は平行して燃えている
69
それできみはとうとう黒帯がとれなかった
カールトン大学は火事である
8
詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
暫定的に
それを仮定の火事と呼ぼう
みなさん、このうつくしい炎をたやしてはならない
ならんで
章ごとにほろんでゆく大学をみてごらん
(なぜか過去形)
こころが乾いているのでいい音がする
ひとつ
ふたつ
とはかぞえられない
とおく離れているがわたしにはわかる
カールトン大学は火事である
そう
書いて
わたしはまたひとりぼっちで平行になる
かぞえられないひとは
どんなにかぞえても消えはしない
せんせい
大学が
(ふるさとが)
仮定から出られずに燃えています
外から
鍵をかけたひとがいるんですよ
そのひとは
きょうも
あしたも
げらげら過去形で笑っています
70
詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
それはうわさです
つまり、例のふたつのこと
その頭はとりあえず粉砕しておこう
なかに
ちいさな階級がはいっているかもしれない
わたしは
すすんで頭を前に出します
うたれるひとが
無言でちかづいてくる
そんなことはしたくなかった
というふうに
事件は文字どおりてんかいしていきます
(どんな文字だ)
とかとんとん
こんな文字ですがなにか問題はありますか
この金づちはよい
ふたりして打つのに夢中になってしまう
粉砕する側と
粉砕される側
入れ替わってもよいというひとは
みんな
油ねんどのように無言であった
(そりゃあどれも物体だもの)
最後尾のひとは
くやしくてかみさまのように眼がやさしい
71
この金づちでふたつのことをする
9
詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
つまり
文字づらというやつだ
と言ってはみたものの
そこに(わたし)とやらがいないのでは
お話にならない
おまえさまの国では
それでもドラマになりますか
かれはうーんと考えてしまった
なりますまい
そのときの思量はしかし
あたりのひとびとにとって
さほどのおおきさともおもわれていない
お茶碗いっぱい
せいぜいそれくらいだ
たくわんをおかずにがつがつと考える
あわてるでない
いっきにかけこむと苦しむぞ
老僧が
(わたし)の背に手をあてて言った
のまずくわずで
よくも
あの谷をこえてきたものよ
その話はいずれ
それらしく語るときがやってこよう
72
わたしの考えはこうである
10
詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
いまはまずおのれの
記号みたいな蓑をはずすことだ
ではサービスで
もひとつ
たくわんをくれてやろう
たしかだろうか
さっきまでそうであったものが
今はちがう
今は小学生になっている
73
ぼうず
べんとうに
どれも
でなくなった
あの木
それらももう
たばねられていた
すてられた長いものがなん本も
(たしかだろうか)
町の焼け跡ではなく
そこはもう
ぬすみにきた西の男だった
あの木を
わたしはすこし前まで
ウィンナーがはいってないようだが…
それはもう木ではなくなった
11
詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
ほそい子どもになって
まちがったかけ算をしたりしていた
くやしいが
わたしたちはもうここを焼かねばならない
わたしたちはもう
あのころの木ではなくなったのだ
田口です
ごぶさたしています
74
このとがった口
おぼえてますか
それだってりっぱな社会の数字である
かぞえてごらん
すべての指をつかって
きみはどれだけのひとびとをたべてきたか
そのとがった口で
そういうものだろう
生きていく方針というのは
だがいないひとの霊もたいせつにした方がいい
多数派だな
田口くんはいつもひとつおおい
おっしゃるとおり
いかにも
口をひらけばいいってものではない
その口で話しているのはだれだ
12
詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
(どれもまずかったなあ)
ほう
れん
そう
なまいきなその口はいったいどいつだ
田口です
やっぱり
(田口だよ)
たぶん三度
75
おじさんは意識をうしなった
どこに
行っていたのかはいわない
約束だからね
と
うさぎの陰謀
五人のうちひとりはきっと疑っている
にちかいかもしれないぞ
予感
というのは正確だろうか
(知っている)
そういう状況のことを
病室にいたので知っている
みんな
でもそれが月面であったことは
おじさんは月に行ったことがある
13
詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
引き継ぎのノートに書いてしまった
宇宙旅行には
まじめに
付き添うように
そのひとりはするどい注意をうけて
くやし泣きしてしまう
(いいきみだ)
おじさんは隙をみて
四度目の月に行こうとしている
76
発射に
意識なんていらない
いったいなんという
巨大になってしまう過程をごらんください
わたしも立つ
こめつぶがたち
電気釜の解説書といっしょだ
なにからなにまで
一致している
だが
だれもその正体をしらない
大根
ひとよんで
(おどろくべきことに)
わたしが書いたのは詩であった
おどろくべき偶然の一致ではないか
14
詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
ことでしょう
大根
おどろくべきこの偶然
わたしはびっくり仰天して顔をひっこめた
書いた詩が
まあ、すこしまちなさい
いかりくるった軍勢を美しく制している
これも
みごとに一致している
わたしはなんというか
背景が
見あげてごらん
夜のわたし
でっかいこの電気釜を
そしてひとは手ぶらでやってきた
それはまちがっている
ひとではない
あらわれた手が
先割れスプーンになっている
吐きそうだ
すこし曲げてみようか
ちからが加わったのにそのひとは
まだ
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意味の通りおおきくなっていくのにおののく
お間違いではありませんか
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詩誌『四囲』Vol.5 廿楽順治
ふるい夜からめざめられない
路地を引きかえすと
どこからか
なにものかの腕のうらへとつながっていく
(のだろうな、きっと)
途上が
とつぜん折れている
光の加減をまちがってしまったのだ
そして
わたしは青い液体をすくう
それは飲みこめない
ちがう惑星からきたたべものなのであった
でもどこがちがうのか
舌がふるえて
すぐにはたしかめられない
(しつれいですが)
あなたは
わたしたちを
だれかとお間違いではありませんか
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【後記】
小峰慎也
いう感じだったが、意外にも5個しか思い浮かばなかった。次にボールペンでできる
ことを思い浮かべてみた。ところが6であった。タオルを使ってできることの一つに、
空を飛ぶということがあるが、これはボールペンでもできる。少し工夫は必要だが。
というか、タオルでできる5のうち、4までがボールペンと共通していた。タオルと
ボールペンは実は全く同じものだというつもりはないが、てもとにタオルがないとき、
ボールペンで代用するということはできるかもしれないと思いはじめている。
中島悦子
実
在しない公的機関、権力と闘ってみました。フィクションですから、あくまで。
番号は機械的に八行ごとに進歩しない数字で区切って、押し通しました。意味と章が
ちぐはぐなのが今の私の勘。フリーズのくりかえしです。読む方が辛いでしょう。た
ぶん。
飯田保文
承前詩賞パーティーで白日夢路加奈子版見てると指で頬の腋毛気になる副賞である
シェーバー借りて別の部分も剃れば如何しても乱交パーティー出来ケントデレカッタ
この儘死んで行くであろう顔顔顔アシーオブフェイシズアーチーシェップ
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タオルでできることがいくつあるか、思い浮かべてみた。予想では10はいくなと
詩誌『四囲』Vol.5 後記
近藤弘文
四囲のメンバーがだいぶ流動した。これまでの四号を少し読み直したが、やはりうつ
ろうものなのだなあと思った(自分のへたくそな詩については案の定へこんだよ)。
さて、五号ではどんな感じになるのだろうか。楽しみである。今年は自分の個人詩誌
の二号も出したかったのだけれど、あと一篇がなかなか書き終わらない。うーむ、来
年か。
高塚謙太郎
いろいろと、詩など書いている場合ではなかった一年だったが、もう少しその「詩
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など書いている場合」ではない時間が残っている。
そんな中で「吉四六」という詩を書いたことが、一つの心残りを薄めてくれたので
あれば、嬉しい。ということで、次のツァラの言葉を自分に贈りたい。
おれは、自分がとても感じがいいと思うよ。
廿楽順治
同人に新たに小峰慎也さん、中島悦子さんを迎え、結局、「四囲」という詩誌名の
根拠だった四人の同人数が変わることになったが、
「四囲」という名前は残すことと
な っ た。 今 回 の テ ー マ は 「 序 数 詩 」
。といっても、変わり者の同人たちなので、一筋
縄ではいかな い 。
の例文を一部引用したり、参照したりしている。
笑しいので読み通すことができた。ということで、今回の詩はウィトゲンシュタイン
け正確に把握しているか覚束ない。出てくる例文が笑えるのと、大森荘蔵の訳注が可
数学が苦手なのでずっと敬遠してきた人だが、これが面白い。もっとも論旨をどれだ
最近柄にもな くウィトゲンシ ュタインの『青色本』
(ちくま学芸文庫)を 読んだ。
詩誌『四囲』Vol.5 後記
詩誌『四囲』Vol.5 後記
詩誌 四囲 Vol.5 She 5
発行日 2011 年 11 月 23 日
同人
飯田保文(いいだ やすふみ)
小峰慎也(こみね しんや)
近藤弘文(こんどう ひろふみ)
高塚謙太郎(たかつか けんたろう)
廿楽順治(つづら じゅんじ)
中島悦子(なかじま えつこ)
代表者連絡先
廿楽順治 E-mail: [email protected]
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