ミニ・コンサート 今年の、夏恒例ミニ・コンサートは、関西二期会のバリトン

ミニ・コンサート
今年の、夏恒例ミニ・コンサートは、関西二期会のバリトン歌手 西田昭広さん、並びにそ
の奥様のソプラノ歌手 西田佐知子さんによる、オールヴェルディのプログラムで行われま
した。
若きヴェルディの歌曲『6つのロマンツェ』(ヴェルディ25歳の作品)からの“寂しい部屋
で”に始まったコンサートは、『オテッロ』からの“イヤーゴの信条~無慈悲な神の命ずる
ままに”、ピアノソロ(高橋敬一さん)による『リゴレット』の“女心の歌”、ソプラノソロの、
同じく『リゴレット』からのジルダのアリア“慕わしい人の名は”、そして同じく『リゴレ
ット』からの“悪魔め鬼め”、ジルダとリゴレットの二重唱“祭りの日にはいつも”と続く、
独唱有り、二重唱有り、ピアノソロ有りと、例年に無い変化に富んだプログラムでした。
アンコールは、『ラ トラヴィアータ』からの“プロヴァンスの海と陸”そして最後が、同
じく『ラ トラヴィアータ』からの“乾杯の歌”をバリトンとソプラノで歌う、盛りだくさ
ん、且つ充実したものでした。
西田 昭広さんの歌声は、ここ最近何度か実際のオペラ公演で聴く機会があり(『ドン・カル
ロ』の修道僧、
『アンドレア・シェニエ』のルーシェetc.)期待していましたが、目の前
で聴く彼の声は、期待を上回り、久し振りにヴェルディバリトンを間近で聴いた満足感に
満たされました。又、彼は今回、イヤーゴ、リゴレット、ジェルモンとヴェルディが生み
出した3名のバリトンヒーローを歌ったわけですが、イヤーゴの残忍性、リゴレットの父
親としての情感、ジェルモンのある種の高貴性、この辺りの性格を巧みに歌い分けている
と感じました。又、
“イヤーゴの信条”では、特に最後のフレーズ、
“Vien dopo tanta irrision
la Morte. E poi? E poi? La morte e` il nulla.”、をどのように歌うのかが大きなポイントで、
その中でも特に“il nulla(無の意)”という言葉が重要ですが、西田さんは、声の力で押し切
るだけではなく、言葉の意味を十分に理解させられる、納得のいく歌唱を示してくれまし
た。
ソプラノの西田佐知子さんが歌った“慕わしい人の名は”は、大変な難曲ですが、彼女は
立派に歌いきって聴衆に感銘を与えてくれました。
高橋さんの息の合った伴奏も相まって、大変感銘深い、又内容からしても“ミニ”とは言
えないミニ・コンサートでした。
岡
部