第4回 夏の草原や湿地の野草観察 平成 26 年7月13日 みちのく自然

第4回 夏の草原や湿地の野草観察
平成 26 年7月13日
●みちのく自然共生園で再生した湿地や草原の野草を観察しました。
(1)湿生花園の野草
かつて、棚田があるような沢沿いに存在した、野草が多い湿地を復元しています。
・チダケサシ:ユキノシタ科の多年草で、アスチルベの仲間です。傷つけるとべたべたする「チチタケ(乳茸)
」
をこの花の茎に刺して持ち運んだことが名の由来となっています。ブナ林やミズナラ林に生える乳茸と湿地に
生えるチダケサシが、一緒にあるような地方は会津などで、そう多くはありません。
・クサレダマ:レダマという地中海沿岸に生える低木に似た草であるという意味で、腐れ玉ではありません。サ
クラソウ科のオカトラノオに近い種類です。
・ミソハギ:盆花に使われます。長野県や山形県の一部では、この花に水を含ませ、その水を掛けることで、先
祖を迎える盆棚をみそぎ清める風習があります。雌しべが長いタイプと短いタイプがあります。
・サワヒヨドリ:ヒヨドリバナの仲間で湿地に生えます。ヒヨドリバナの名の意味は、ヒヨドリが山から里に来
る頃に咲くという意味のようですが、現代のヒヨドリは年中見られます。
・ヌマトラノオ:サクラソウ科の多年草です。草地に生えるオカトラノオの花は、虎の尾のようにしだれていま
すが、ヌマトラノオは湿地に生え直立し小柄です。除草剤や圃場整備により、なかなか見られなくなりました。
・イヌゴマ:シソ科の植物でゴマの仲間ではありません。タネが黒くゴマに似ていることが名の由来のようです。
茎や葉に硬い毛がありざらつきます。マルハナバチがよく訪花しています。
・トモエソウ:オトギリソウの仲間で 1 日花です。よく目立つ黄色の大きな花が巴型にねじれています。
・ノハナショウブ:花菖蒲の原種です。湿地の減尐でなかなか里地で見られなくなっています。
・ヤマアワ:アワの穂に似ていますが、食べられません。湿地や河原等に生え、涼しげは穂を出します。
・ショウジョウトンボ:真っ赤なトンボですが、アキアカネのような赤とんぼの仲間ではありません。
・キイトトンボ:黄色のイトトンボです。
写真 湿生花園の草花や生き物を観察しました
写真 クサレダマやミソハギが咲きはじめています
写真 チダケサシ
写真 クサレダマ
写真 ミソハギ
写真 ヌマトラノオ
写真 トモエソウ
写真 ショウジョウトンボ
(2)展望野草園の野草
・カワラナデシコ:里地では野生のものはめったに見られなくなっています。花をよく見ると、雌しべしかない
花をつける株と、雄しべと雌しべの両方がある両性花をつける株があります。
・ヤマホタルブクロ:ガクの一部が反り返るかどうかでホタルブクロとヤマホタルブクロが見分けられます。
・カセンソウ:歌仙草と書きます。何で歌仙なのかよくわかっていません。花の黄色は独特の黄色です。
・クララ:マメ科の有毒植物で、食べるとクラクラすることが名の由来です。クマハチがよく訪花しています。
・コオニユリ:オニユリは中国原産でムカゴがありますが、コオニユリはムカゴが付きません。イノシシに 8 割
以上食べられて、激減しました。
・イブキボウフウ:セリ科の野草で高山にも生えます。一生に 1 回結実すると枯れてしまいます。キアゲハの芋
虫が丸裸にして花も食べてしまい、実をつけることなく一生を終えてしまうこともよくあります。
・キキョウ:里地では野生のものは殆ど見られなくなっています。雄しべが先に熟し、雌しべが熟すころには雄
しべは枯れて自家受粉を避けています。
・オミナエシ:里地では野生のものは殆ど見られなくなっています。
・トリアシショウマ:チダケサシ等と同じ、アスチルベの仲間です。よく似たアカショウマより花穂が大きく、
花期は 1 か月程遅く、日本海側に多く分布します。
写真 展望野草園の観察
写真 カワラナデシコ
写真 カセンソウとカワラナデシコ
写真 キキョウが咲きはじめていました
(3)オキナクサの種まき作業体験
前回オキナクサのタネを黒土と混ぜて、ダマにならないようにしました。今回はその黒土と混ぜたタネを、展望
野草園の草原に播種しました。播種の方法はボランティアさんが丁寧に指導しました。小雨の中の濡れながらの
作業でしたが、参加された方はとても熱心でうれしくなりました。
写真 ボランティアさんが蒔き方を指導します
写真 3 年後にはオキナグサの花野になるでしょう
写真 数週前に蒔いた場所ではすでに芽生えています
写真 尐々の雨でも楽しいのです
写真 播種したオキナグサのタネ
写真 本葉が 1 枚でています