close

Enter

Log in using OpenID

一般口演・ポスター展示 - 神戸大学 医学研究科・医学部

embedDownload
一般口演
1
2
ハイリスク症例の足・下腿病変に対する下
肢神経ブロックを用いた治療経験
遠位茎腓腹皮弁による下腿再建の検討
杉田 直哉(すぎた なおや)1、赤松 順 1、
天野 信行 1、上田 晃一 2
久保 一人(くぼ かずひと)1、石井 暢明 1、
百束 比古 2、水野 博司 2
1 近森病院 形成外科
2 大阪医科大学 形成外科
1 会津中央病院 形成外科
2 日本医科大学付属病院 形成外科
【目的】足病変患者は多くの基礎疾患を有して
いることが多く、全身麻酔はリスクが高く、ま
た、糖尿病による易感染性や抗凝固療法のため
脊椎麻酔も選択できないなど、外科的治療を要
する際の麻酔に難渋することがある。高齢化に
伴い、今後、ハイリスク症例の足病変や下腿病
変を治療する機会は増加傾向にあると考えられ
る。当院では、全身麻酔や脊椎麻酔が困難な糖
尿病性足病変や慢性下腿潰瘍などの外科的治療
を行う際に、エコーガイド下の下肢神経ブロッ
ク麻酔を積極的に使用している。足から下腿ま
での範囲で手術を行う際は膝窩アプローチの坐
骨神経ブロックと大腿神経ブロックによる麻酔
を基本手技とし、必要に応じて外側大腿皮神経
ブロック麻酔を追加する。下肢神経ブロックが
治療に有用であった2症例を報告する。【症例
1】68歳、男性。足趾間白癬の感染悪化によ
り右足に糖尿病性足感染を発症した。基礎疾患
にコントロール不良の糖尿病と陳旧性心筋梗塞
があり、心不全のため全身麻酔は困難であった。
坐骨神経ブロックと大腿神経ブロックの併用に
より十分なデブリードマンを施行できた。【症
例2】83歳、男性。外傷後の皮下血腫感染が
原因で右下腿に皮膚壊死を発症した。既往歴に
陳旧性心筋梗塞があり、PCI 後のため抗凝固剤
を休薬できなかった。坐骨・大腿・外側大腿皮
神経ブロック麻酔下にデブリードマンと右大腿
からの分層植皮を行い、植皮は完全生着した。
【考察】下肢神経ブロック麻酔はエコーガイド
に行うことにより安全に施行でき、坐骨神経ブ
ロックを膝窩アプローチで行うことにより、皮
下の浅いレベルでブロックすることが可能であ
り、麻酔の際の穿刺による血腫や感染のリスク
も減少できるものと思われた。また、繰り返し
施行することが可能であり、術後の持続的な鎮
痛効果も期待できる。下肢神経ブロック麻酔は、
ハイリスク症例の足病変や下腿潰瘍に対する手
術に良い適応であると思われた。
【目的】下腿の外傷や難治性潰瘍、悪性腫瘍の
切除後に生じる組織欠損に対して腓腹神経を温
存した遠位茎腓腹皮弁は手技が比較的簡便であ
り血行動態も安定しており、皮弁採取部の犠牲
も少なく下腿再建に有用である。今回、当科に
て行った遠位茎腓腹皮弁による下腿再建の症例
を検討したので報告する。【方法】2005 年 1 月
から 2010 年 1 月までに当科にて遠位茎腓腹皮
弁による下腿再建を行った症例 7 例を対象とし
た。原因疾患は有棘細胞癌 2 例、熱傷潰瘍 2 例、
外傷 3 例であった。2 例は皮膚茎皮弁とし 5 例
は島状皮弁とした。【成績】術後数日間、皮弁
はうっ血傾向を認める事が多く、1 例は部分壊
死を起こし、6 例は完全生着した。すべての症
例において腓腹神経を温存しており腓腹神経領
域の知覚は温存された。【結論】下腿の広範囲
な欠損に対してはマイクロサージェリーを用い
た遊離皮弁が必要となる場合もあるが、手術時
間やドナー部の犠牲、手技に熟練を要するなど
制約も多い。当科では下腿から踵部にかけての
再建において腓腹神経を温存した遠位茎腓腹皮
弁は(1)血行動態が安定している、(2)皮
弁採取部の犠牲が少ない、
(3)1 回の手術、
(4)
手技が比較的簡便、とういう点において利用価
値の高い皮弁と考える。
64
3
4
閉塞性動脈硬化症を伴った下肢の難治性潰
瘍再建に遊離皮弁移植をおこなった症例の
検討
糖尿病性慢性潰瘍に対する植皮加工方法と
ドレッシング方法の Best Practice
吉田 周平(よしだ しゅうへい)
西堀 公治(にしほり こうじ)、横尾 和久
天心堂へつぎ病院 形成外科
愛知医科大学形成外科
【目的】下肢は閉塞性動脈硬化症の好発部位で
あり再建にあたっては足部血流の評価とともに
血流を損なわないような方法を検討しなければ
ならない。糖尿病性潰瘍にたいしては遊離皮弁
の積極的な報告があるが閉塞性動脈硬化症につ
いては血管の硬化・狭窄・閉塞性病変のため判
断に苦慮する。今回造影で閉塞性動脈硬化症が
指摘された患者の下肢に生じた難治性潰瘍を遊
離皮弁移植で再建した 3 症例を検討報告する。
【方法】症例 1 は 80 才男性で症例 2 は 77 才男
性いずれも踵部に難治性潰瘍を認めていた。後
頸骨動脈は拍動を認めていたがともに造影所見
で閉塞性動脈硬化症を指摘されていた。症例1
は同側の遊離前外側大腿皮弁で症例2は骨髄炎
となった踵骨をデブリードマンした後、深腸骨
回旋動静脈を血管柄にもつ遊離腸骨皮弁移植で
再建した。症例3は 90 歳女性で虚血性壊死に
より大腿部切断を施行されたが断端部が壊死と
なった。左股関節は人工骨頭で置換してあり短
縮での創閉鎖は股関節離断の適応であった。左
深下腹壁動静脈穿通枝皮弁に静脈移植を行い皮
弁の血管を延長させ被覆した。【成績】皮弁は
いずれも生着し治癒させることができた。【結
論】閉塞性動脈硬化症があるが血流は比較的安
定した下肢に生じた難治性潰瘍や組織欠損を遊
離皮弁で再建する際、動脈の拍動が触診あるい
は直視下に確かめられるような場所に遊離皮弁
の栄養血管を求めることは特に問題ないと思わ
れる。また今後病態の悪化の危険性があるため
主要動脈は当然であるが側副血行となりうる同
側の血管を犠牲にする皮弁採取も控えた方がい
いのではないかと思われる。再建部近辺に適当
な栄養血管が見いだせないときは血管移植など
を行う必要もある。今回下肢虚血は比較的軽度
であったため血行再建術は施行していないが今
後は血行再建術と組み合わせた再建術を施行し
ていきたい。
はじめに)手術部位感染(以下 SSI)において
皮膚表層と切開部深層、臓器/体腔の SSI に大
別される。慢性潰瘍に植皮術を行った場合のS
SIという定義付けはない。下腿潰瘍において
皮膚移植術を行った場合、時としてドレッシン
グ内で感染し植皮片が無駄になることがある。
今回我々は、糖尿病性潰瘍に対して有効な植皮
術方法を検討し、慢性潰瘍の術後SSIについ
て植皮生着数と細菌検査との関係を検討したの
で報告する。方法)1.皮膚移植における植皮
片の厚さは10/1000インチ程度2.メッ
シュ、パッチ、メッシュパッチにて加工法を区
別3.症例ごとに肉芽の定量培養を行う それ
ぞれの加工方法について生着数を検討した症
例)2008 年 7 月 2010 月までの糖尿病性壊疽
後の慢性潰瘍、皮膚移植症例15例結果)パッ
チグラフトとメッシュグラフトの生着の差は明
確ではなく良好であった。考察)慢性糖尿病性
潰瘍は細菌のコロナイゼーションのため植皮後
のドレッシング内で感染することが危惧される
が、血糖のコントロールと創部の抗菌剤の使用
で植皮の生着が向上すると考えられた。
65
5
6
陰圧閉鎖療法を用いた植皮固定の一法
植皮における陰圧閉鎖療法の併用
石崎 力久(いしざき よしひさ)
江花 梨沙(えばな りさ)1、長谷川 雅弘 1、
川手 浩史 1、松峯 元 1、藤原 修 1、
野 元 清 子 1、吉 永 裕 一 郎 1、森 岡 康 祐 1、
櫻井 裕之 2、野崎 幹弘 2
市立室蘭総合病院 形成外科
1 鹿児島市立病院形成外科
2 東京女子医科大学形成外科
【目的】陰圧閉鎖療法を用いた植皮固定の有用
性に関しては種々の報告がある。タイオーバー
ドレッシングなどと並び、最近は代表的な植皮
固定方法の一つとして定着しつつある。我々は
以前より瘻孔用ドレナージパウチ、喀痰吸引カ
テーテルを組み合わせた独自の方法により陰圧
閉鎖療法を行っている。この方法を植皮固定に
応用し、良好な結果を得たので報告する。
【方法】
瘻孔用ドレナージパウチ、喀痰吸引カテーテル、
サクションリザーバーを用いて陰圧閉鎖療法を
行う。ドレーンパウチのシリコンラバー製の
キャップ先端を切り取り、チューブを通すこと
で容易にエアタイトな接続が得られる。これを
植皮固定に用いた。【結果】仙骨部褥瘡 1 例、
外果部皮膚潰瘍 1 例、胸部皮膚潰瘍 1 例、手背
部化学損傷 1 例、前腕皮弁採取部 2 例に対し、
それぞれ植皮術を行い、前述の方法で固定した。
いずれも良好な生着を認めた。【考察】陰圧閉
鎖療法による植皮固定の報告は散見されるが、
チューブとドレープを用いる方法はエアリーク
の危険性があり、頻回の観察や、持続吸引を行
う必要がある。本法は瘻孔用ドレナージパウチ
を用いることで、複雑な形状の部位でもエア
リークの問題がほぼ解決される。さらに軽量な
サクションリザーバーを用いるため、術後の移
動もそれほど煩わしさはない。適応できる植皮
片の大きさに限りはあるが、,簡便かつ確実性
が高く,有用な方法と考えられた。
【目的】陰圧閉鎖療法(以下 NPWT)は難治性
潰瘍や褥瘡に対して有用な治療法である。当科
では分層植皮術にも NPWT を併用し、良好な結
果を得ている。今回、植皮における NPWT の併
用について若干の考察を加えて報告する。【対
象・方法】対象は男性 8 例、女性 2 例、年齢 0
∼ 93 歳(平均 63.9 歳)、症例は下肢難治性潰
瘍 5 例、下肢熱傷 1 例、坐骨部褥瘡 1 例、脳外
科手術後潰瘍 1 例、鎖骨骨髄炎 1 例、皮弁採取
創 1 例の計 10 例であった。基礎疾患として糖
尿病、心筋梗塞、悪性脳腫瘍、瘢痕癌、脊髄損傷、
脊髄髄膜瘤などを認めた。全例に分層植皮を行
い、植皮片の固定として NPWT を併用した。被
覆材として、ポリウレタンフォーム(ハイドロ
サイト ®)と、ポリウレタンフィルム(テガダー
ム ®)を使用し、陰圧は概ね 125 mmHg とし、
NPWT 施行期間は術後 1 週間とした。なお、10
例中 6 例に wound bed preparation として人工
真皮移植を行い、その際も NPWT を併用した。
【結果】植皮は , 全例において生着良好であった。
【考察】植皮における NPWT については Isago
らが報告しており、NPWT は植皮片の固定に有
用である。自験例は基礎疾患を有する症例が多
く、手術部位には末梢循環障害を伴う下肢、坐
骨部・鎖骨断端などの下床に骨突出のある部位、
頭蓋骨欠損部、新生児の脆弱な皮膚など、移植
床の圧迫を回避したい部位や、Tie-over 固定が
困難などの特徴を認めた。NPWT は植皮下の血
液・漿液貯留を予防し、植皮片を移植床表面に
密着させる。また従来の Tie-over 固定が困難な
場合でも優れた固定性が得られ、さらに圧迫に
よ る 移 植 床 の 血 流 障 害 な ど も 回 避 で き る。
NPWT は従来の Tie-over 固定が困難な症例のみ
ならず、末梢循環障害などの理由から、移植床
の圧迫を回避したい症例においても、その有用
性が発揮されることが示唆された。
66
7
8
ペースメーカー・リード潰瘍に対する当科
での取り組み
糖尿病性潰瘍に対する自作陰圧閉鎖療法と
V.A.C.® 療法の比較
中野 基(なかの もとい)
中山 玲伊子(なかやま れいこ)、黒川 正人、
佐藤 誠、中山 真紀、桂 良輔
佐世保市立総合病院 形成外科
宝塚市立病院 形成外科
陰圧閉鎖療法は wound bed preparation の概念
に基づいた創傷治癒環境を提供し、難治性糖尿
病性潰瘍の治療に効果的とされている。本邦で
は V.A.C.®ATS 治療システム(KCI 社製)が導入
される以前は、利用可能な設備、器具、材料を
各施設で工夫し、様々な陰圧閉鎖療法が試みら
れてきた。当院では主に創傷被覆材であるメピ
レックス ® ボーダー(メンリッケ・ヘルスケア
社製)を用いて陰圧閉鎖療法を行い、リークが
少なく、処置時間を短縮できる簡便な方法とし
て、非 常 に 良 好 な 結 果 を 得 て き た。し か し、
2010 年 4 月より V.A.C.®ATS 治療システムが本
邦で医療機器承認を受けたことを機に、当院で
も V.A.C.®ATS 治 療 シ ス テ ム を 導 入 し た。
V.A.C.®ATS 治療システムを使用した場合、良好
な肉芽形成を認めたものの、健常皮膚の浸軟、
皮膚炎、びらん形成などの問題が多々みられ、
工夫を余儀なくされた。今回、従来のメピレッ
クス ® ボーダーを用いた自作陰圧閉鎖療法と
V.A.C.®ATS 治療システムを用いた陰圧閉鎖療法
を比較、検討するとともに、V.A.C.®ATS 治療シ
ステムの問題点に対して当科で行っている工夫
を紹介する。
(目的)ペースメーカー・リード潰瘍は局所感
染を契機に異物肉芽腫となり難治性のため姑息
的な治療では再発を繰り返す。人工材料感染時
対応の原則に従い、いったん感染したものは除
去され、あらためて対側へ埋め込まれるのが一
般的である。しかし、リードが留置されて1年
以上経過したものは癒着のため簡単には除去で
きないことがあり明確な治療方針がないのが現
状である。最近扱った3症例でペースメーカー・
リードを除去せずに大胸筋下への埋め込みを試
みたので症例を供覧し若干の文献的考察を行
う。(対象と方法)ペースメーカー・リード潰
瘍3症例のうち初期の2症例は何度かの手術を
経て鎖骨下静脈から出たリードを直ちに大胸筋
下に導くルートにすることで一時的に落ち着い
たようにみえた。しかし2ヶ月程度で不良肉芽
形成した。1 例目は治療途中にくも膜下出血で
死亡。3例目はいったんレギュレーターとリー
ドの接続を外して正中に近い位置で大胸筋下に
リードを誘導した後に側胸部から作製した大胸
筋ポケット部でレギュレーターと再接続する手
法で再発なく経過良好である。2 例目は同様の
手法を行うも結局は2ヶ月程度で不良肉芽形成
した。(結果)3症例で重篤な術後合併症を生
じなかった。経過観察期間が半年前後と短いが
生存している2症例のうち1症例で創閉鎖が得
られた。(考察)レギュレーターはチタン製で
あり、リードはシリコンコーティングされてい
る。初期の2症例で繰り返す不良肉芽による潰
瘍はほぼリード由来であり、鎖骨下静脈から出
たリードを直ちに大胸筋下の奥まった位置に導
くルートにすることで異物反応が抑えられた。
大胸筋ポケットの下面は血行が良好とは言えな
いが、奥深い部位へ留置することでレギュレー
ターの固定性がよくなるために異物反応が抑え
られると考える。異物肉芽腫はほぼ無菌のため
ペースメーカーを洗浄して再留置することは細
菌負荷の観点からは大きな問題にならないと考
える。
67
9
10
感染創に対するアクアセル Ag の効果に関
する研究
内シャント設置術後のスチール症候群によ
り生じた手指潰瘍、壊疽に対する治療経験
大山 拓人(おおやま たくと)
、牧野 太郎、
高木 誠司、西平 智和、大慈弥 裕之
田村 亮介(たむら りょうすけ)、朝戸 裕貴、
梅川 浩平、野村 紘史、鈴木 康俊
福岡大学 医学部 形成外科
獨協医科大学 形成外科学
【はじめに】スチール症候群は、内シャント設
置術後にしばしば認められる合併症の一つであ
るが、今回スチール症候群が原因となり、手指
潰瘍、壊疽を生じた症例についての治療を経験
したので報告する。
【症例】症例 1 49 歳男性。右前腕肘部内シャ
ント設置術後、右示指、環指の黒色壊疽を認め、
スチール症候群の診断で、内シャント結紮術を
行った。その後、手指の皮膚潅流圧測定を行なっ
た上、断端形成術を施行した。他部位での内シャ
ント設置が困難であったため現在、長期留置型
カテーテルにより、透析を行なっている。
症例 2 74 歳女性。左前腕肘部内シャント設置
術後、徐々に右上肢の冷感、しびれが出現し、
示指、中指、環指に潰瘍形成を認め、スチール
症候群の診断となった。シャント閉鎖が必要と
考えられたが、その後シャント設置が困難なこ
とが予想されたため、シャント縮小術を行なっ
た。その後、手指の皮膚潅流圧の改善を認め、
潰瘍の縮小傾向を認めた。
【考察】スチール症候群を認めた場合、手指の
血流を改善するためにシャント流量のコント
ロールが必要となる。本症例では、シャント閉
鎖や縮小を行い、シャント流量をコントロール
して手指の血流の改善を行い、手指の皮膚潅流
圧測定の結果を参考にして、潰瘍、壊疽に対す
る治療を行ったことにより、良好な創傷治癒を
得た。また、慢性腎不全患者にとって、内シャ
ントは命綱ともいうべき重要なブラッドアクセ
スであり、スチール症候群を認めた場合のシャ
ント流量のコントロールの方法に関しては、慎
重な選択が必要である。その際に手指の皮膚潅
流圧測定は有用な指標になると考える。
【目的】多くの慢性創傷ではその創傷内に細菌が
存在し、その感染ステージは付着菌量の増加に
伴 い 汚 染 (Contamination)→菌 の 定 着 化
(Colonization)→臨 界 保 菌 状 態 (Critical
Colonization)→感染症 (Infection) と段階的に進行
する。今回われわれは各感染ステージの感染創
に対してアクアセル Ag を用いた治療を行いその
有効性を検討したので若干の文献的考察を加え
報告する。
【対象 / 方法】対象は当院で診察した
慢性創傷患者 11 症例である。内訳は男性 7 名、
女性 4 名で平均年齢は 58.7 歳、原因疾患は褥瘡
4名、
術後感染4名、
外傷3名であった。感染ステー
ジでは Infection:3 名、Critical Colonization:7 名、
Contamination:1 名であった。創処置は創洗浄後
にシート状のアクアセル Ag を使用した。評価は
肉眼的、組織学的 (HE 染色 ; グラム染色 ) に行い、
7 症例で細菌学的評価も行った。
【結果】肉眼的
評価では全症例で滲出液の減少と肉芽の色調の
改善を認めた。病理組織学的にもグラム染色で
細菌の減少を確認できた。細菌学的評価におい
ては細菌培養検査を行った 7 症例では当初
MRSA、Coagulase Negative Staphylococcus
(CNS)、Klebsiella Pneumoniae ESBL、緑膿菌など
様々な菌種が検出されたがほとんどの症例で
MRSA:2.7x105→6x103( 平 均 )、CNS:2x103→
1x102、Klebsiella Pneumoniae:1x103→negative、
緑膿菌 :5x10→negative と減少を認めた。感染ス
テ ー ジ も Critical Colonization:2 名、
Colonization:7 名、Contamination:2 名へと改善
した。
【考察】今回われわれは汚染、菌の定着化、
臨界保菌状態、感染症といった様々な段階の慢
性創傷にアクアセル Ag を応用し、黄色ブドウ球
菌 (MRSA)、緑膿菌等の様々な菌に対し広範囲な
抗菌スペクトルを示し、病理組織学的にもグラ
ム染色で細菌の減少を確認できた。アクアセル
Ag の持つ速やかな抗菌活性で創傷に対する負荷
を急速に低減させることが創傷治癒に大きく役
立つと考えられた。
68
11
12
若年性皮膚筋炎患者における多発性増殖性
石灰沈着症の治療経験
潰瘍化した necrobiosis lipoidica の1例
蕨 雄大(わらび たけひろ)、舟山 恵美、
斎藤 亮、山本 有平
桑原 広昌(くわはら ひろあき)1、北村 孝 2、
前田 拓 2、佐藤 英嗣 3、山尾 健 4、
安居 剛 4
北海道大学 医学部 形成外科
1 時計台記念病院 形成外科・創傷治療センター
2 帯広厚生病院 形成外科
3 帯広厚生病院 皮膚科
4 北海道大学 医学部 形成外科
【はじめに】若年性皮膚筋炎は皮膚筋炎の症状
が 16 歳以前に認められた場合に診断される,
発生率が 10 万人に 4 人といわれる稀な疾患で
ある。筋炎に関連する筋肉痛や関節痛の他に,
皮膚症状としてヘリオトロープ疹や日光過敏な
どを認め,皮下に石灰沈着の結節を形成し,潰
瘍や感染による膿瘍が出現する場合がある。わ
れわれは若年性皮膚筋炎患者の多発性増殖性石
灰沈着症に対し,全身麻酔下に複数回の減量術
を行い症状の改善を得たので,治療の経過を若
干の文献的考察を加えて報告する。
【症例】7 歳
女児。
【主訴】
左膝蓋部の石灰化を伴う潰瘍。
【出
生歴,発達歴】特記なし。
【現病歴】3 歳時に歩
行障害を主訴に当院小児科を受診した。運動障
害,皮膚症状,血液検査,そして筋生検の結果
により若年性皮膚筋炎と診断された。同科でプ
レドニン,メチルプレドニゾロン等による治療
で経過をみていたが,関節周囲を中心に徐々に
皮下の石灰沈着が出現し,増大傾向を認めた。
7 歳時には左膝蓋部皮下の石灰沈着が皮膚表面
に露出し,潰瘍を形成したため当科初診となっ
た。保存的治療により肉芽の増生と上皮化を
図ったところ,約 6 ヶ月後,潰瘍はほぼ上皮化
した。しかし約 2 ヶ月後,臀部に存在していた
別の皮下石灰沈着が増大し,感染により膿瘍を
形成したため,全身麻酔下に切開,排膿,及び
石灰沈着減量術を行い症状の改善を得ることが
出来た。
【考察】本症例では術後も同一部位及
び腋窩,腰部を中心とした全身で石灰沈着が新
たに多発し,増殖,潰瘍形成,感染を繰り返し
た為,当科において複数回に渡って可及的切開,
排膿及び減量術を繰り返すこととなった。現在,
若年性皮膚筋炎において皮下石灰沈着は 10 ∼
30%に認められる症状とされているが,根本的
な治療法は見つかっていない。また,個発例に
対しての外科的切除の報告はあるが,多発例に
対する手術例は渉猟した限りではごく少数で
あった。今後の治療方針を含めて検討を行った。
症例は42歳の女性で,糖尿病を合併してい
る。初診の8年前から,両下腿伸側に板状硬結
を呈する褐紅色局面が出現し,近医皮膚科で治
療を行うも拡大していった。その後,左下腿に
潰瘍が出現したため当院皮膚科に入院し,プロ
スタグランディンE1 製剤の全身投与やステロ
イドなどの外用剤での保存的治療を行ったが,
全く反応しないため当科に転科した。板状硬結
は 生 検 結 果 か ら necrobiosis lipoidica(NL)と
診断した。血糖管理を行った後,病変の切除と
植皮術を行った。
NL は 1929 年に Oppenheim が報告した疾患
で,糖尿病との関連が重視されている。本邦で
は,保存的治療に抵抗する広範囲の難治性潰瘍
を合併した NL の報告は稀なので報告する。
69
13
14
関節リウマチ患者の皮膚潰瘍治療に亜鉛投
与が有効であった症例の検討
近赤外線と青色領域可視光線との混合光を
用いた難治性皮膚潰瘍の治療経験
佐久間 深雪(さくま みゆき)、中島 英親
林原 伸治(はやしばら しんじ)
熊本機能病院 整形外科
林原医院
【目的】難治性皮膚潰瘍に対して近赤外線と青
色領域可視光線との混合光照射による治療効果
を検討した。【方法】熱傷潰瘍、術後潰瘍、糖
尿病性潰瘍に対して近赤外線と青色領域可視光
線 と の 混 合 光(dual wave length light 以 下
DWLL)を照射して治療を行った。1 回 10 分間
照射し、原則週に2回の通院で照射を行った。
照射後、照射間はアズレンを塗布後ガーゼで被
覆した。【成績】熱傷潰瘍では half side test を
行い、DWLL 照射側は非照射側に比較して短期
間で創閉鎖が認められた(照射側は 26 日で閉鎖、
非照射側は 42 日で閉鎖)。他の治療に難治性で
あった糖尿病性足趾潰瘍においても約90日で
創の閉鎖を認めた。また、術後潰瘍に照射した
例では早期に良好な肉芽形成を認め、治癒後に
形成された瘢痕は柔軟であり瘢痕拘縮は生じな
かった。【結論】DWLL の照射は難治性潰瘍の治
療に有効な手段と考えられた。形成された瘢痕
組織は柔軟性に富んでおり、瘢痕拘縮は発生し
なかった。
下肢に難治性皮膚潰瘍ができた関節リウマチ (
RA ) 症例に対して、経口亜鉛投与を行い治癒が
得られたので報告する。症例は女性2名。症例
1 は、年齢 53 歳、RA 罹病期間は 5 ヶ月で、潰
瘍形成時には MTX8mg、インフリキシマブで
加療していた。3ヶ月前の虫咬傷に、潰瘍を形
成。血清亜鉛値は 75.3 で、Zn/Cu 比は 64.4%
であった。潰瘍治療薬(プロマック)により亜
鉛補充を行い、3週間で痂皮の形成がみられ、
2ヶ月でほぼ治癒した。症例 2 は、年齢 73 歳、
RA 罹 病 期 間 は 9 年 で、潰 瘍 形 成 時 に は、
MTX6mg、PSL1mg で加療中していた。3ヶ月
前の術創(閉塞性動脈硬化症で、大腿動脈バイ
パス術施行)に潰瘍形成。血清亜鉛値は 62.1 で、
Zn/Cu 比は 43.0% であった。亜鉛補充ゼリーを
処方し、3 週間で創潰瘍が治癒した。関節リウ
マチ患者の難治性潰瘍に、亜鉛経口投与が有効
であった。
70
15
16
慢性静脈不全症における下腿筋脱酸素化ヘ
モグロビン動態の検討
生体外増幅培養方法による糖尿病患者血管
内前駆細胞の細胞生物学的活性の制御
八巻 隆(やまき たかし)、野崎 幹弘、
副島 一孝、河野 太郎、濱畑 淳盛、
櫻井 裕之
田 中 里 佳(た な か り か)1、増 田 治 史 2、
伊 藤 理 恵 2、小 堀 み ち る 2、浅 原 孝 之 2、
宮坂 宗男 1
東京女子医科大学 形成外科
1 東海大学 医学部 外科学系 形成外科
2 東海大学 医学部 基盤診療学系 再生医
療科
【目的】今回われわれは、近赤外分光装置(以
下 NIRS)を用い、慢性静脈不全症(以下 CVI)
における運動負荷時の下腿筋における脱酸素化
ヘモグロビン(以下 HHb)の変化と臨床的重
症度および静脈の逆流との相関を検討した結
果、興味ある知見が得られたので報告する。【方
法】CVI を有する 158 例 168 肢を対象とした。
臨床的重症度は CEAP 分類に従い、軽症 CVI
(C0-3,Ep,s,As,d,p,Pr,o)と 重 症 CVI
(C4-6,Ep,s,As,d,p,Pr,o)の 2 群に分類した。静
脈不全の部位診断はデュプレックス・スキャン
を用い、さらに逆流のパラ・メータとして静脈
の 直 径(cm)、逆 流 時 間(s)
、最 大 逆 流 速 度
(mL/s)
、平均逆流速度(mL/s)および逆流量
(mL)を算出した。NIRS による評価は、下腿筋
への静脈血充満(FI-HHb)、1 回爪先立ちにお
ける静脈血駆出(EI-HHb)および 10 回爪先立
ちにおける retention(RI-HHb)をパラ・メー
タとし、臨床的重症度および逆流のパラ・メー
タとの相関を検討した。
【成績】168 肢のうち、
106 肢は軽症 CVI、52 肢は重症 CVI であった。
FI および RI は重症群において有意に上昇して
いた(p=0.003 および 0.0001)。また、RI は表
在静脈単独症例よりも表在静脈不全および深部
静脈不全または穿通枝不全を有する症例におい
て有意に上昇していた(p=0.002)
。NIRS と逆
流のパラ・メータの相関を検討したところ、RI
が膝窩静脈の最大逆流速度ともっとも高い相関
を認めた(r=0.78, p<0.0001)
。ROC カーブか
ら求めた FI>0.2 および RI>2.9 最適カットオ
フ 値 と す る と、臨 床 的 重 症 度 の 予 測 は 感 度
94%、特異度 86% であった。
【結論】NIRS で測
定した FI および RI は、CVI の重症度を識別す
るパラ・メータとして重要であることが示唆さ
れた。さらに RI は深部静脈の最大逆流速度と
よく相関し、深部静脈不全のパラ・メータとし
ても有用である可能性が示唆された。
目的:近年、糖尿病 (DM) 患者の創傷治癒低下
の 原 因 と し て 血 管 内 皮 前 駆 細 胞(EPC:
Endothelial Progenitor Cell)の機能低下が報告
されている。そこで我々は、自ら開発した次世
代型の無血清条件下生体外増幅培養法 (ex vivo
expansion:EX 法 ) により DM マウスの EPC を
糖尿病環境から解放、再教育することにより、
細胞数が数百倍にも増幅され、さらにその血管
再生能が正常に戻ることを見出した。本研究は
糖尿病患者血管幹細胞も DM マウス EPC 同様
DM 環境から成体外への解放及び修飾すること
により、その機能異常の制御が可能かどうか検
討した。方法:健常人と DM 患者より末梢血を
採取し CD34 数を採取し、フローサイトメト
リー , EPC-Colony Forming Assay 法(EPC-CFA)
にて血管再生能力を検討した。その後 Ex 法に
て一週間培養を行い、培養前後の健常人、DM
患者 EPC の血管再生能力を比較検討した。結果:
健常人、DM 患者ともに約 2.5 の細胞数増幅を
認めた。DM 患者において EPC-CFA の結果は Ex
前では健常人に比べコロニー数が有意に低下し
て い た が(1.2±0.2 vs 3.5±0.6 p<0.001)、Ex
後は健常人と同等のコロニー数を認めた (8±1
vs 6.6±1.6)。EX 法により DM 患者 EPC 血管再
生能力を健常人同様に回復させたと考えられ
る。考察:今回の結果で Ex 法は末梢血糖尿病
患者 EPC の数を増やし、血管再生能も改善でき
ることを証明した。しかし、増幅細胞数はマウ
ス EPC に比べ 100 倍少なく今後生体外増幅糖尿
病患者 EPC 移植を臨床応用するには、増幅方法
を改良し細胞数増幅能を高める必要があると考
えられた。
71
17
18
治療経過中に院内死亡した難治性創傷症例
の検討
大腸癌術後化学療法の副作用が原因と考え
られるフルニエ壊疽治療経験
飯村 剛史(いいむら たけし)1、
水野 博司 1,3、百束 比古 1、宮本 正章 2,3
蕨 雄大(わらび たけひろ)1、舟山 恵美 1、
杉野 まり子 2、大芦 孝平 1、古川 洋志 1、
山本 有平 1
1 日本医科大学 形成外科
2 日本医科大学 第一内科
3 日本医科大学 再生医療科
1 北海道大学 医学部 形成外科
2 社会医療法人社団 カレス サッポロ
時計台記念病院 形成外科
【はじめに】末梢動脈疾患(Peripheral Arterial
Diseases、以下 PAD)や膠原病に起因する皮膚
難治性創傷の発生率は人口の高齢化とともに上
昇している。過去の文献が示すとおり、重症例
においては死亡率が非常に高いといわれてい
る。中には不幸にして難治性創傷治療経過中に
院内死亡する患者も少なからず存在する。今回
我々はこのような転機をとげた患者に対する検
討を行った。【方法】2002 年 9 月より 2010 年
3 月まで当施設において外科的治療を施行した
四肢難治性創傷患者のうち PAD、膠原病が原因
で Fontaine 分類 IV 度であった 87 名について
年齢、性別、原因疾患、合併症の有無、治療内
容について調査した。また、院内死亡した患者
の死因調査、それ以外の患者との比較検討を
行った。【結果】87 名中 10 名(11.5%)が治療
経過中に院内死亡していた。原疾患は、糖尿病
+閉塞性動脈硬化症の7例、糖尿病1例、進行
性全身性強皮症1例であった。合併症は、慢性
腎不全+慢性心不全 2 例、慢性腎不全+慢性心
不全+高血圧1例、慢性腎不全+高血圧1例、
陳旧性心筋梗塞1例、肺癌1例、肝細胞癌1例、
前立腺癌1例、腎移植後1例であり、合併症保
有率は 90%(非死亡群 41.3%)であった。こ
のうち透析患者は 5 名 54.5%(非死亡群 20.0%)
であった。また救肢出来ず大切断に至った例は
4 例 36.4%(非死亡群 14.7%)であった。死亡
原因は心不全 8 例、肺梗塞 1 例、敗血症 1 例、
腸間膜動脈血栓症 1 例であった。
【結語】合併
症の存在や透析症例において生命予後が悪いこ
とが自験例においても明らかとなった。今後さ
らに症例を重ね、生命予後規定因子を詳細に検
討する必要があると思われた。
【背景】フルニエ壊疽の発症は痔瘻,肛門周囲
膿瘍や泌尿器科疾患が原因となる場合が多い。
一方ベバシズマブ ( アバスチン ):BV は遺伝子
組換え型の血管内皮増殖因子に対するヒト化モ
ノクローナル抗体であり,抗癌剤との併用によ
り血管新生を抑制することで進行・再発大腸癌
に対して,抗腫瘍効果を発揮する。しかしこの
ベバシズマブは様々な副作用が報告されてお
り,特に消化管穿孔は致命的となりうる。我々
は抗癌剤化学療法中に、その副作用と考えられ
る直腸穿孔によるフルニエ壊疽を経験したので
報告する。
【症例】71 歳男性,直腸癌切除術後,肺・
肝転移に対し上記ベバシズマブを含む化学療法
(FOLFOX+BV) を施行していた。7 回目の化学療
法施行後約2週間より、陰嚢・鼡径から右大腿
部にかけて発赤が出現し熱発を呈した。当科紹
介受診し、CT にて直腸の穿孔、及び穿孔部から
右大腿部にかけて皮下のガス像が認められた為
フルニエ壊疽と診断した。直ちに全身麻酔下に
デブリードマンを施行し,抗生剤により感染が
消退した後に分層植皮を行い良好な結果を得た
【考察】ベバシズマブは 2007 年に本邦において
進行・再発大腸癌に対して認可された後,その
副作用として多くの消化管穿孔の報告がなされ
ている。しかしながら更にフルニエ壊疽を併発
した例は渉猟した限りではごく少数であった。
今回,新たなフルニエ壊疽の原因として注意を
喚起するとともに,治療方針について検討を行
う。
72
19
20
粟粒結核を併発し長期間の保存的治療を余
儀なくされた胸骨骨髄炎の 1 例
金属塗料による環指の高圧注入損傷の 1 例
岩嵜 大輔(いわさき だいすけ)1、
佐々木 了 1、長尾 宗朝 1、石山 誠一郎 2
石崎 力久(いしざき よしひさ)
1 KKR 札幌医療センター 斗南病院 形成
外科
2 北海道大学 医学部 形成外科
市立室蘭総合病院 形成外科
【はじめに】高圧注入損傷は高圧で噴出された
液状物質が注入されて生じる外傷であり,その
多くは手指にみられる。また,注入部位は小さ
く目立ちにくいが,神経血管束や屈筋腱腱鞘な
ど組織の疎な部分を通じて深部に到達するとい
われ,時に切断に至る事もある。そのため,可
及的早期のデブリードマンが推奨される。今回
我々は,左環指に金属塗料による高圧注入損傷
を受傷したが,早期に十分なデブリードマンを
行えたため,良好な経過をたどった症例を経験
したので報告する。【症例】症例は 26 才男性。
職業は塗装工。仕事中誤ってスプレーガンで塗
料を左環指に注入し,当院救急外来受診した。
受傷より約 4 時間後顕微鏡下にデブリードマン
を施行した。塗料は神経血管束周囲に侵入して
おり,組織にまとわりつくように存在した。単
純 X 線写真にて塗料の拡散範囲を確認すること
ができたため,術中イメージを使用した。また
異物は周囲組織と明らかに色調が異なり,同定
は容易であった。可能な限り塗料を摘出したの
ち十分に洗浄した。術後 5 ヶ月の現在,知覚障
害は極軽度であり,可動域制限もなく,原職に
復帰している。【考察】高圧注入損傷は,示指
および中指が高頻度であるが,環指の損傷は比
較的稀である。また,切断率の高い金属塗料に
よる損傷であったが,本症例は(1)血管内お
よび屈筋腱腱鞘内への異物の侵入はなく,(2)
異物の拡がりを確実に把握出来た。そのため顕
微鏡および術中イメージを使用することによ
り,神経,血管を損傷することなく十分なデブ
リードマンが可能であったため,良好な経過を
たどったと考えられる。
【はじめに】胸骨骨髄炎の治療中に粟粒結核を
発症し、長期間の保存的治療を余儀なくされた
後に大胸筋弁にて創閉鎖を得た症例を経験した
ので文献的考察を加えて報告する【症例】症例
は 67 歳、女性。平成 11 年より、関節リウマチ
にて免疫抑制薬であるメトトレキサートとプレ
ドニゾロンを投与されていた。平成 19 年頃よ
り前縦隔に生じた胸腺 MALT リンパ腫に対して
当院外科にて胸腺全摘術が施行された。数カ月
経過後、骨破壊を伴う胸骨骨髄炎と前縦隔膿瘍
を認め、デブリードマンと腐骨除去が施行され
た。術後、胸部中央に縦隔に達する開放創が生
じたため当科に紹介された。胸壁再建手術を行
う予定であったが、不明熱が持続したため精査
したところ粟粒結核を認めた。そのため胸壁再
建は中止とし抗結核薬による治療を開始し、胸
骨骨髄炎に対しては陰圧閉鎖療法などの保存的
治療を約 1 年 4 ヶ月継続した。その後、粟粒結
核の感染が沈静化したため大胸筋弁による胸壁
再建をおこなった。Follow-up 期間がまだ短い
が、胸骨骨髄炎と粟粒結核の再発はなく術後経
過は良好である。【考察】粟粒結核とは結核菌
が血行性に全身に播種し、多臓器に結核病変が
形成される重症の結核症であり、診断の遅れは
生命予後を不良とする。自験例では、粟粒結核
と診断され、排菌も認めたため、空気感染の恐
れがあり全身麻酔下での胸壁再建手術が延期さ
れた。そのため、陰圧閉鎖療法などの保存的創
傷治療と、抗結核薬による治療が行われ、粟粒
結核が沈静化するまで長期間を要した。排菌を
認めなくなり全身麻酔下での胸壁再建が可能な
状態となったことから、胸骨欠損部の死腔を充
填し感染を防ぐために、血行が豊富な大胸筋弁
による再建を行い良好な結果を得ることができ
た。
73
21
22
Symmetrical Peripheral Gangrene を 発 症
したアシナガバチ刺創症例の治療経験
Degloving Injury の一期的再建法の1アイ
デア
森田 尚樹(もりた なおき)、後藤 浩之、
中尾 沙良、藤原 英紀、西 真由子、
中田 元子、本田 隆司、仲沢 弘明
小浦場 祥夫(こうらば さちお)1、
安田 聖人 2、山本 有平 3
東京女子医科大学 東医療センター 形成外科
1 カレスサッポロ時計台記念病院
形成外科・創傷治療センター
2 福井大学 皮膚科 形成外科診療班
3 北海道大学 形成外科
Symmetrical Peripheral Gangrene( 以下 SPG) と
は敗血症や DIC に合併し、四肢末梢に虚血性変
化を生じる稀な病態である。今回、我々は、ア
シナガバチ刺創後にアナフィラキシーショッ
ク、DIC による SPG と、蜂毒による広範囲の頸
部皮膚壊死を発症し、治療に難渋した症例を経
験したので若干の文献的考察を加え報告する。
【症例】58 歳男性。仕事中に頸部をアシナガバ
チに刺され経過観察していた。約 10 時間後に
頸部痛にて前医を受診し処方を受け帰宅した
が、7 時間後(受傷 17 時間後)に血圧低下・
呼吸困難を発症し、当院救命救急センターへ紹
介搬送となった。救急医療科にて、アナフィラ
キシーショック・DIC・多臓器不全の診断で、
グロブリン製剤・抗生剤・塩酸ドーパミン・ス
テロイド・メシル酸ガベキサートを投与、さら
にエンドトキシン吸着療法 (PMX)、血漿交換、
持続血液濾過透析 (CHDF) が施行された。また、
入院時、四肢末梢と頸部に血流障害によると思
われる黒色変化を認めていた。ショック症状が
改善傾向を認めたため、第 16 病日に四肢末梢
の血流障害と頸部皮膚壊死の治療のため当科へ
転科となった。保存的治療を行ったが、四肢末
梢と、頸部皮膚は広範囲の壊死となった。第
37 病日に、頸部皮膚壊死に対し分層植皮術、
両手指壊死に対し断端形成術を行った。両足壊
死に対しては第 44 病日に左膝下切断術・右足
関節切断術を施行した。頸部および左足断端は
創部経過良好であったが、右足は創部断端の治
癒遷延を認めたために第 71 病日に追加で右膝
下切断術を施行した。創閉鎖を認めたため、第
105 病日にリハビリテーション目的に他院へ転
院 と な っ た。【考 察】Symmetrical Peripheral
Gangrene は 稀 な 病 態 で、1891 年 に
Hutchinson らが敗血症後に四肢末梢対称性壊
死を発症した症例を報告した。以後 100 年以上
経過したが、SPG に対する有効な予防、治療法
が無いのが現状である。
【背景】Degloving injury では血流不全を生じて
いる皮膚軟部組織をうまく判断できないため、
積極的な血行再建を行える場合を除いては二次
的な再建を行う場合が多くなる。最初から剥離
された皮弁をデブリードマンしてその皮膚を利
用して植皮を行い一期的に再建する方法もある
が、多くの場合 viable な組織に広範に手術侵襲
を 加 え る こ と と な っ て し ま う。【目 的】
Degloving injury の急性期において血流不全部
を簡便に判断し、かつ血流不全部を有効に利用
し、最小限で整容的にも配慮した一期的再建法
を確立する。【症例】18 歳男性、自動車事故で
受傷。右下腿の約 2/3 が全周性に剥離された
degloving injury を受傷。皮弁の近位は約 1/3 周、
遠位は約 1/2 周が切離され、剥離部は頸骨前面
のみが連続性を保った状態で、皮弁の約 1/4 は
ダメージの強い状態であったが残りの 1/3 は肉
眼的には全く異常のない皮膚として観察される
状態であった。【治療】ダメージの強い皮膚は
デブリードマンを施行し、これにより生じた皮
膚欠損創には植皮が必須である状態となった。
次に健常に見える皮弁部より分層皮膚の採取を
行い、この欠損部の植皮用とした。この際、分
層皮膚採取創からの出血を評価することで循環
不全を生じている部を推測することが可能で
あった。次に循環不全が疑われる皮弁部に対し
ては含皮下血管網全層植皮片作成の技術を用い
て defatting を行い、含皮下血管網全層皮膚弁
を作成した。循環状態が良好と判断した皮弁部
はそのままとし、下肢全体に圧迫包帯を巻いて
手術を終了した。植皮、含皮下血管網全層皮膚
弁、皮弁ともに全て生着し、一期的再建に成功
した。手技の詳細を紹介する。
74
23
24
銀含有ハイドロファイバー被覆材(アクア
セル Ag)による創傷の半開放療法
有毛部採皮創に対するビューゲル ® の有効
性
福田 憲翁(ふくだ のりお)1、高田 悟朗 1、
朝戸 裕貴 2、渡邉 未来子 2、外岡 真紀 2
野村 紘史(のむら ひろし)1、朝戸 裕貴 1、
鈴木 康俊 1、梅川 浩平 1、田村 亮介 1、
渡邉 未来子 1、水口 敬 2
1 足利赤十字病院 形成外科
2 獨協医科大学形成外科学
1 獨協医科大学 形成外科
2 北都病院 形成外科
銀含有ハイドロハイバー被覆剤(アクアセル
Ag)は快適性と抗菌性を融合した新しい創傷
被覆材として、近年褥瘡や熱傷潰瘍を初めとし
た創面へ広く用いられている。この製剤は水分
保持能力が高いという特徴を有する一方で、水
分蒸散・浸透にもすぐれるという性質も併せ持
つ。その性質がゆえに、その上にあてがるトッ
プドレッシング次第では乾燥して創面に固着す
ることもみられる。一旦固着した場合は、洗浄
してふやかしても容易に剥がれないことがしば
しば経験される。われわれはこれに着目し、創
部に固着することを利用し、浅い創や滲出液の
少ない創ではあえて剥がさずに固着した状態で
維持させている。症例によっては、固着したア
クアセル Ag のみで創部を開放状態とすること
も可能である。いわば人工の痂皮(かさぶた)
として管理することができる。疼痛も少なく創
面の保護にもなり、生活の質(QOL)の向上が
見込める治療法と考えている。上皮化が完了し
た部分は、アクアセル Ag が自然に浮き上がっ
てくるため、少しずつ切除してゆく。特に、浅
達性 2 度熱傷例や、採皮創、治癒過程後期の創
面には有用と思われる。使用例・使用法を提示
しながら報告する。
【目的】
有毛部、とくに毛髪部からの採皮においては、
時に術後の創処置に難渋することがある。ガー
ゼを用いた軟膏処置では、痂皮が固着してしま
う。また、通常の創傷被覆材を用いると、多量
の浸出液をコントロールできず、上皮化の遷延
をきたしやすい。ビューゲル ® を用いた採皮部
の術後処置は、固着および浸出液の貯留を防ぎ、
有効であったので報告する。
【方法】
毛髪部からの採皮術後創に、ビューゲル ® をス
テイプラーにて固定する。その周囲をガーゼで
被覆し、浸出液が多量な場合は、適宜ガーゼの
み交換する。
<症例1>
9 才男児。小耳症手術における頭皮からの採皮
部にビューゲル ® をステイプラーにて固定した。
術後1週間で初回包交をおこない、上皮化を確
認した。
<症例2>
36 才男性。臀部慢性膿皮症に対して、背部から
採皮し、分層網状植皮をおこなった。背部は多
毛であり、採皮創にビューゲル ® を固定し、術
後1週間で良好な上皮化を確認した。
【結果】
2009 年 2 月より、9 例に対して本処置法を施行
した。全例において、毛髪が被覆材に固着する
ことなく、浸出液は創外に良好に排出されて貯
留することはなかった。被覆材を交換すること
なく創部の状態を確認することができ、創部の
合併症なく良好に上皮化にいたった。
【結論】
ビューゲル ® を用いた採皮創に対する被覆は、
良好に浸出液を管理でき、創部の観察も容易で
あるため、有効な処置法である。
75
25
26
打撲による大腿部血腫を生じ、異なる経過
で手術に至った 3 例
当科における人工物露出症例の検討
見目 和崇(けんもく かずたか)1、
岩山 隆憲 1、小泉 郷士 1、柳沢 曜 2
木村 健作(きむら けんさく)1、芝岡 美枝 1、
大守 誠 1、水口 敬 2
1 三田市民病院 形成外科
2 兵庫県立加古川医療センター 形成外科
1 六甲アイランド病院 形成・美容外科
2 北都病院形成外科
【目的】打撲後に血腫を生じることは日常の診
療でもしばしば経験する。多くは安静にて自然
軽快するが、時に手術が必要となることもある。
今回我々は、打撲後の大腿部血腫において、そ
れぞれ異なる経過で手術が必要となった3例を
経験した。症例を供覧し報告する。
【症例】症例1:54 歳女性。転倒して尻もちを
ついた翌日に当院救急外来を受診。左大腿骨骨
折、右大腿・臀部、左腰部の血腫を認め、出血
性ショック状態で外科入院となった。骨折は軽
度で左側の血腫は改善するも右大腿部では拡大
を認めた。血管造影を行い血腫へ向かう動脈の
塞栓を行うも血腫拡大は続き、皮膚壊死もあり
当科へ紹介された。大腿内側皮下の広範な血腫
に対し皮膚を含むデブリードマンと止血を行
い、二期的な植皮で治癒した。既往にアルコー
ル性肝硬変があり、身長 153cm、体重 27kg と
極度のやせ体型であった。症例 2:32 歳女性。
自転車で転倒し受傷。右前腕骨骨折、右大腿部
血腫を認め当院整形外科に入院した。大腿部の
浸出液貯留が改善しないため当科へ紹介され
た。MRI で皮下脂肪内の広範な貯留物を認めた。
ドレーン留置による持続陰圧吸引を行うも改善
せず、切開、デブリードマンを行い、二期的な
植皮で治癒した。身長 163cm、体重 80kg と肥
満体型であった。症例 3:34 歳男性。右大腿へ
の落石で受傷。他院整形外科を受診し右大腿深
部の血腫を認め、コンパートメント症候群をき
たし減張切開を受けた。切開部の皮膚欠損に対
し当科紹介となり、植皮にて治癒した。身長
169cm、体重 70kg の筋肉質体型であった。
【考察】大腿部は筋膜による層が平面的に広が
る構造のため血腫が拡大しやすい部位といえ
る。その際、血腫を生じた層の違いにより異な
る病態を呈すると考えられる。どの層に血腫を
形成するかは多くの要素が関与すると思われる
が、今回の症例では体型差が際立っており、こ
れが大きく影響したものと推察された。
(はじめに)われわれ形成外科医の仕事の中の
重要な一部分として他科のトラブル症例に対す
る救済がある。現代の医療においては人工材料
が体内に埋め込まれてさまざまな用途で使用さ
れており、症例の増加に伴って人工物の露出に
対しての形成外科へのコンサルトは増加傾向に
あると思われる。今回の発表では当科開設以来
の 5 年間に経験した人工医療材料露出症例につ
き検討したので述べる。(対象)症例は 22 例。
内訳は抗がん剤動注用のAポート露出が 8 例、
ペースメーカー露出が 4 例、シャント作成もし
くは動脈バイパスに用いた人工血管露出が 5 例、
骨折固定用金属の露出が 5 例あった。(結果)
全例において手術による被覆処置を行った。保
存的治療で治癒せしめた症例はなかった。人工
物の除去を必要とせずに創治癒した症例が 15
例、人工物除去を行い創治癒した症例が 6 例、
経過中に創治癒に至らなかった症例が 1 例で
あった。金属露出症例では全例で除去を必要と
せずに創は治癒した。(考察)創傷治癒過程に
おいて異物としての人工物の存在は大きな創傷
治癒阻害因子となる。異物表面にはバクテリア
の繁殖が起きやすく、また血流が無いために抗
生剤などの化学療法が奏功しないことが原因の
一つと考えられている。人工物露出創を治癒せ
しめるためには十分な創の清浄化と血行の豊富
な組織での被覆が必要不可欠であるとされてい
る。今回の検討の結果、人工物の種類、留置手技、
また患者の全身状態により術後成績に大きな差
が生じることが分かった。
76
27
28
人工真皮による体液保持の比較検討
手指の長軸方向に切断面を持つ切断指再建
手術症例
久野 慎一郎(くの しんいちろう)、
成島 三長、光嶋 勲
日原 正勝(ひはら まさかつ)1、松島 貴志 2、
畔 熱行 3、楠本 健司 1
東京大学 医学部 形成外科
1 関西医科大学枚方病院 形成外科
2 松島クリニック
3 関西医科大学滝井病院 形成外科
はじめに)人工真皮は皮膚欠損部位に対して 肉芽組織を形成し創傷治癒において有用である
ことが知られている。しかし体液保持機能につ
いては、機能として指摘されてはいるが詳細な
検討に関する報告はない。
今回我々は、動物実験および臨床的に人工真
皮の体液保持機能について検討し、救命なしえ
た症例について報告する。
方法)
<症例> 23 歳男性2 km 車に引きずられ背部
皮膚欠損を認めた。来院時 preshock 状態であっ
た。ICU 管理となったが、最大 6000g /日の浸
出液を認め、肺水腫をきたした。
9 病日目にデブリードマン・人工真皮貼布を行
い浸出液量の劇的減少(1500g/ 日)にて全身
状態改善し、複数回の植皮にて救命しえた。
<実験>ラット(200g)15 匹をもちいてラッ
ト背部皮膚を切除(3×4cm)したのち 3 グルー
プに分け実験をおこなった。グループ A:ペル
ナック貼布群 グループ B:シリコンシートの
み貼布 グループ C:被覆材なし それぞれ 2
日に一回ガーゼ交換を行い浸出液量をチェック
10 日間おこなった。
<結果>グループ A では平均 2.38g/10 日グルー
プ B では平均 5.39g/10 日、グループ C 平均
23.74g/10 日であった。
<考察>人工真皮につ
いて、肉芽形成等の再生力について注目される
ことが多いが、今回浸出液を実験的には最大で
90%抑制し、臨床的にも最大 75%抑制した。
このことから、創傷治癒のみならず体液漏出抑
制においても有用あることが示唆された。
(目的)手指切断に対する再建手術の選択肢と
しては、受傷容態、重症度に依存することも多
いが再接着手術が中心となる。近年は多くの施
設で、より重症な挫滅指などに対しても積極的
に再接着手術を適応している。しかし、切断指
再接着手術における機能的予後は、切断状況に
依存することが多く、特に指の長軸方向に対し
垂直に切断面を持つ切断に比べ、長軸方向に対
し並行に切断面を持つ切断は、機能的予後不良
となる傾向にある。今回我々は、切断形態とし
て稀である手指長軸方向に切断面を持つ切断指
再建手術 7 症例 9 指に対し、機能的予後等の検
討を行ったので症例を供覧し、文献的考察も加
え報告する。(方法)術後 1 年以上追跡しえた
手指の長軸方向に対し並行な切断面を持つ切断
指再接着症例 7 例 9 指に対し、受傷機転、切断
容態、関節可動域等を検討した。(結果)再接
着術を施行した 9 指中 7 指で% TAM30 以下で
あり、その他の指も高度に委縮変形をきたして
いた。(結論)手指の長軸方向に対し並行な切
断面を持つ切断は、機能的予後不良となる傾向
にある。これは、たとえ鋭的切断であっても複
数の関節が破壊されていたり、腱の再建が不可
能であったりし、委縮変形やカリントウ状指変
形をきたすことなどに起因する。加えて、スラ
イス状に切断されることで創部接着面積が大き
くなり、炎症や瘢痕癒着が広範囲に引き起こさ
れることなども一因と考えられる。一方で近年、
創傷の上皮化に関して、瘢痕化を軽減しうる製
剤などがさまざまな臨床面で使用されており、
提示症例のような再接着指の瘢痕形成の抑制に
も応用が期待される。
77
29
30
移植床血管が確保できない前腕遠位骨軟部
組織欠損の肋骨付き有茎分割広背筋皮弁に
よる再建
遊離空腸移植術後 5 日目に動脈血栓形成を
きたすも救済しえた症例の興味深い知見
塩川 一郎(しおかわ いちろう)1、
三鍋 俊春 1、百澤 明 1、相原 徹 1、
笠井 昭吾 2
田中 顕太郎(たなか けんたろう)、
矢野 智之、岡崎 睦
1 埼玉医科大学 総合医療センター
形成外科
2 佐野厚生総合病院 形成外科
東京医科歯科大学 形成外科
【はじめに】遊離空腸移植術後 5 日目に吻合部
血栓を生じると救済することは難しい。我々は
こうした症例で周術期にいくつかの興味深い知
見を得たので報告する。【症例】57 歳女性、下
咽頭癌。化学放射線療法 60Gy 後の再発進行例。
咽喉食摘、両側頸部郭清、遊離空腸移植術を行っ
た。吻合血管は頸横動静脈を選択した。術中の
経過は順調であり移植腸管の虚血時間は 2 時間
20 分であった。血流モニタリングは頸部に露出
させたモニター空腸で行った。術後 5 日目の 18
時頃に病棟スタッフより異常所見を報告され
た。モニター空腸はやや萎縮し張りがなく色調
は薄かった。頸部開創にて移植腸全体の虚血を
確認したため緊急手術を行った。【結果】吻合
動脈は閉塞し静脈は開存していた。動脈吻合部
血栓を除去すると頸横動脈の血流は良好であ
り、同部位での動脈再吻合を行った。血流再開
後に空腸静脈断端からの良好な還流を確認し、
静脈も再吻合した。22 時 30 分頃に血流を再開
しており、異常所見に気付いてから血流再開す
るまでの時間は最低でも 5 時間以上と推察され
た。右内頸静脈が完全に閉塞して硬く触れ、吻
合動脈はそれを乗り越えるように走行していた
ので、これが動脈血栓の原因と思われた。術後
内視鏡にて移植腸の良好な色調を確認した。ま
た再手術後 16 日目に上部消化管透視検査で移
植腸の蠕動を確認し 17 日目より経口摂取を開
始した。モニター空腸は再手術後 7 日目に切離
したが、その病理学的検討では全層にわたる腺
管消失や筋層変化などの虚血傷害の所見がみら
れた。【考察】空腸は虚血に弱い組織であるが、
最低でも 5 時間を越える長時間の虚血後に救済
し、吻合部漏出をきたすことなく経口摂取がで
きた症例を経験した。術後の上部消化管内視鏡
や透視検査では良好な所見を得たが、モニター
空腸の病理学的検討では虚血による強い変性所
見を示した。これらの興味ある知見を報告する。
【目的】骨軟部組織欠損を伴う前腕の開放骨折
や不全切断では橈・尺骨動脈を合併損傷してお
り、残存手の血行維持のためには血管を犠牲に
する可能性のある遊離複合組織移植は困難であ
る。また、創感染が組織移植後に再燃すると遊
離遠隔組織移植ではとくに移植骨を避難させる
のが難しい。そこで、骨と皮膚軟部組織を供給
できる広背筋皮弁を有茎で二期的に移植する術
式を工夫したので 2 症例と共に報告する。【症
例と方法】2 症例ともローラー状の機械で左前
腕を挟まれた労災であった。救命救急センター
でデブリードマン・骨欠損部の暫定的固定がな
され、当科に骨軟部組織欠損修復を依頼された。
手は残存したが運動機能は乏しかった。MRSA
感染に対して、保存的治療と広範な皮膚剥奪層
への網状植皮術を行い raw surface を縮小させ
た。感染鎮静後に肋骨付き広背筋皮弁を有茎移
行した。患肢と側胸壁の位置関係から第 9、10
肋骨を橈骨欠損長より長く 5 ∼ 10cm 程度肋間
動静脈とともに付着し(肋間神経は温存)、また、
広背筋は軟部欠損を充填し胸背動脈―肋間動脈
血行を確保できる約 10cm 幅に筋外側を分割し
て皮弁を挙上した。肋骨断端からの出血を認め
た。肋骨を橈骨欠損間に固定し、筋体と皮弁を
トリミングしながら前腕に固定した。側背部と
は分割した筋肉茎で繋がる状態で、分割筋体の
延伸により自由度が増した。皮弁切り離しは
4-5 週目に皮弁血行トレーニングの後に施行し
た。【結果】2 例とも筋皮弁は生着し、患肢を
温存できた。X 線上では移植肋骨は生存してお
り、骨癒合が進行していると期待される。患肢
機能は不十分であるが、1 例で残存筋の機能回
復により指運動も可能になってきている。1 例
で局所感染を認め保存治療中である。
【結論】
遊離組織移植が困難な場合、上肢は下肢と異な
り cross-leg 法などができないが、体幹部の皮
弁を有茎で移行できる。本術式により患上肢温
存手術の可能性が広がると考えられた。
78
31
32
小耳症耳介再建術後のフレームワーク露出
に対するトラブルシューティング:
われわれのストラテジー
V.A.C. ATS ® 治療システムを用いた創傷の
治療
小山 明彦(おやま あきひこ)
、舟山 恵美、
林 利彦、大澤 昌之、山本 有平
川崎 雅人(かわさき まさと)1、藤井 美樹 1、
寺師 浩人 2
北海道大学 医学部 形成外科
1 小野市民病院 形成外科
2 神戸大学大学院医学研究科形成外科学
小耳症の治療において高い写実性を持った耳介
を再建するためには、三次元的に精巧・明瞭な
フレームワークの作成と、その広い表面積を被
覆するための薄く剥離された皮膚および十分な
大きさの皮弁の作成が重要である。しかし、同
時にこれらは、血行の障害をきたし、皮膚壊死
を招くリスクを高めることであり、よって、こ
の二律背反する要素を抱えているところに小耳
症治療の一つの難しさがあるといえる。
一度皮膚壊死が起こると、血行を持たない肋軟
骨フレームワークが露出することとなるため、
治癒は遷延し、軟骨の吸収や変形をきたす恐れ
があるばかりか、フレームワーク全体に感染が
波及し、摘出を余儀なくされる事態に陥ること
もある。したがって、潰瘍は速やかに、かつ再
建耳介の写実性を極力損なうことのないよう、
最良の手段を講じて対処しなければならない。
局所皮弁は質的に有利であり、被覆しうる範囲
であれば第一に適応を考えるべきである。しか
し、潰瘍が大きい場合や耳介中央部に位置する
場合など、局所皮弁では到達が難しかったり、
耳介の形態を損なう恐れがあれば、fascial flap
と分層植皮による被覆が選択される。その場合、
temporoparietal fascial flap (TPF) は 安 定 し
た血行と薄さから良い適応とされる。しかし、
わ れ わ れ は 耳 介 後 方 部 に 作 成 し た mastoid
fascial flap を hinge flap として用いる方法を、
TPF に 優 先 し て 使 用 し て い る。こ れ は、free
flap としても使用可能な極めて利用価値の高い
手段を将来の何らかの事態に備え温存すべきで
あるとの考えに基づくものである。
本発表では、フレームワーク露出を来たした症
例を供覧し、われわれのストラテジーを紹介す
る。
陰 圧 閉 鎖 療 法(negative pressure wound
therapy : NPWT)は、創傷治癒促進の有用性が
報 告 さ れ て い る。V.A.C. ATS ® 治 療 シ ス テ ム
Vacuum-assisted closure Advanced Therapy
System For Wound Healing(KCI 社 製)は、
2009 年秋に日本で初めて薬事認証を受けた陰
圧創傷治癒システムで、2010 年 4 月より保険
診療内での使用が可能となった。本システムを
用いることにより、局所血流の増加や、血管新
生の促進、また in vitro ではあるが、細胞の遊
走と増殖の促進といった作用の報告がある。専
用のフォーム(ポリウレタンフォームまたはポ
リビニルアルコール)および陰圧を組み合わせ
ることによって、創傷治癒を促進する環境を作
り出すとされている。すなわち、陰圧による吸
引力で、創面に微小変形が生じ、肉芽形成を促
進する作用が誘発され、創縁を引き寄せるとと
もに、過剰な浸出液や感染の原因となる物質を
除去し、ドレープで閉鎖環境を形成し、創の汚
染防止や保護に寄与している。これまで我々が
用いてきた従来の方法と比べ、本システムでは、
吸 引 圧 を 一 定 の 陰 圧 で か け る こ と が で き、
V.A.C. ドレープが張り易いため、エアリークな
く、患者は移動がしやすい。V.A.C. フォームに
より瘻孔やポケットなどの創傷が深いときにも
用いることができ、その独自の構造により創傷
治癒を促進する。また、コストを算定すること
ができる、などの利点が挙げられる。逆に欠点
としては、専用の機器が必要であり、2 ∼ 3 日
と交換時期が早く、浸出液が過剰な場合、皮膚
炎をおこすことがある事等が挙げられる。今回、
我々は本システムを用いた創傷の治療の有効性
について、自験例を提示し、報告する。
79
33
34
縫合創や皮弁等、皮膚欠損・潰瘍以外に対
する Negative Pressure Dressing の経験ー
陰圧閉鎖療法の新たな適応
塩基性線維芽細胞増殖因子徐放機能を持つ
コラーゲン/ゼラチンスポンジを用いた一
期的植皮術の検討
輪湖 雅彦(わこ まさひこ)1、鈴木 文子 1、
力久 直昭 2、吉本 信也 2、佐藤 兼重 2
神田 則和(かんだ のりかず)1、森本 尚樹 1、
武本 啓 2、アルチョム アイバジャンヌ 1、
河合 勝也 1、中村 陽子 1、坂元 悠紀 3、
平 嗣良 3、鈴木 茂彦 1
1 独立行政法人 国立病院機構 千葉医療セ
ンター 形成外科
2 千葉大学医学部 形成・美容外科 1 京都大学大学院医学研究科形成外科
2 松江市立病院 形成外科
3 グンゼ ( 株 ) 開発研究センター
当 科 で は、0 9 年 よ り Negative Pressure
Dressing(NPD)を縫合創や皮弁、さらに挫滅
創などの新鮮外傷の被覆に症例を選んで適用し
ており、有用と思われたので報告する。【材料
と方法】
09年5月から10年5月までの術
後創22例外傷創3例計25例に用いた。陰圧
源として SB-VAC(住友ベークライト)
、また
Hydrosite、Op-site(Smith&Nephew)を そ れ
ぞれ primary dressing、top dressing として用
いた。周辺からのエアリーク予防目的で Adapt
(Hollister)を全周性にシーラントとして用いた
(paste wall-around 法)
。症例によって術後 1
日から5日に最初のドレッシング交換を行っ
た。【結果】1. 新鮮外傷例も含めて、創部に感
染を生じた症例はなかった。2. 挫滅創や擦過傷
などでは早期の上皮化が得られた。3. 緊張の特
に強かった2症例2創で中央部の一部が虚血性
壊死に陥り、デブリドマンや再縫合を必要とし
たが、他の23例では問題なく創は癒合した。
4. paste wall-around 法により確実かつ容易に
7 日 ま で の 陰 圧 閉 鎖 状 態 が 維 持 で き た。5.
チ ュ ー ブ や Hydrosite の 辺 縁 部 な ど に
micro-tenting によると思われる水疱形成を認
めることがあった。【考察】 陰圧負荷が開放創
だけでなく線状縫合創の上皮化に対しても治癒
促進に働くのは、創縁浅層の microhematoma
の除去や強力な固定効果など、開放創に対して
とは異なる機序によると思われる。特に、吸引
固定効果は、創縁に対しての圧迫を伴わない。
そのため、創縁の緊張が強いにもかかわらず血
行の面から皮下縫合や真皮縫合を多数施行でき
ない虚血肢断端の縫合時の有用性が示唆され
た。医療経済的視点からも、感染のリスクを上
昇させること無く術後包交回数を減らすことが
でき、NPD は手術創一般、さらに従来あまり
用いられてこなかった新鮮外傷にも適用しうる
被覆法と考える。
【目的】全層皮膚欠損創の治療に二層性人工真
皮が用いられるようになってからすでに十年以
上が経過している。真皮様組織の形成には通常
人工真皮貼付後数週間必要で、二期的に植皮術
を行っている。我々は、既存人工真皮を改良し、
塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)徐放機能を
持つ新規人工真皮(コラーゲン / ゼラチンスポ
ンジ、CGS)を開発した。CGS と bFGF を併用
すれば、真皮様組織形成に要する時間が1/2
から1/3に短縮される。今回、マウス背部に
作成した全層皮膚欠損創に、CGS( 生理食塩水あ
るいは bFGF 含浸 ) と全層植皮を一期的に行い、
植皮片の生着を検討した。【方法】健常マウス
(C57BL/6J)背部に直径 15mm の全層皮膚欠損
創を作成した (n=12、各群 6 匹 )。生理食塩水
(NSS)お よ び bFGF(7μg/cm2)含 浸CG
S(直径 15mm、厚さ 3mm)を貼付し、CGS
上に、創作成時に切除した全層皮膚を移植した。
評価は移植後の植皮の生着率で行った。【結果】
移植後2週の植皮の生着率は、bFGF7µg/cm
2含浸群が生理食塩水群と比較して有意に高
かった。【考察】人工真皮と分層植皮を一期的
に行う方法として人工真皮を網状に加工すると
いう報告があるが生着率は高くない。また、人
工真皮を薄くする方法も報告されているが厚み
のある真皮層が得られない。CGS に bFGF を含
浸した群は NSS を含浸した群より高い生着率を
示した。CGS に bFGF を併用すれば、現在の人
工真皮と異なり一期的に植皮術を行うことも可
能であると考えられた。
80
35
36
リンパ管蛍光造影法を用いたリンパ漏の治
療
Complex Regional Pain Syndrome(CRPS)
type II に対する神経付き遊離皮弁移植術
湯浅 佳菜子(ゆあさ かなこ)1、
榊原 俊介 1,2、橋川 和信 1、小川 晴生 1、
寺師 浩人 1、田原 真也 1
松田 健(まつだ けん)、菊池 守、
細川 亙
1 神戸大学大学院医学研究科 形成外科学
2 神戸大学大学院医学研究科 美容医科学
大阪大学 医学部 形成外科
手の外傷後に複合性局所疼痛症候群(Complex
Regional Pain Syndrome、以下 CRPS)を発症し、
その治療に神経付き遊離皮弁移植術が有効で
あった症例を経験した。
【症例】45 歳、男性。
【現
病歴】作業中の事故で左示指、中指完全切断。
他医にて再接着施行されるも不成功。壊死した
指のデブリードマン、逆行性前腕皮弁にて断端
を被覆されるも皮弁が壊死。その後、断端部は
保存的に処置を続けられていた。創部は数ヶ月
をかけて瘢痕治癒したが、疼痛が非常に強く、
断端神経腫の診断で断端近辺の指神経の切除術
も施行された。その後も疼痛が軽快することは
なく、疼痛は左上肢全体にまで及んだ。CRPS
type II と診断され、各種内服薬(抗痙攣剤、抗
うつ剤等)、交感神経ブロック等を試みられる
もコントロール困難であり、受傷後 8 か月の時
点で外科的治療の適応について当科紹介され
た。
【治 療】MDCT、カ ラ ー ド ッ プ ラ ー 等 に て
recipient vessels の評価を行なった後に手術を
計画した。示指、中指周辺ならびに手背の瘢痕
を切除、拘縮を解除し、生じた欠損を、皮神経
を含む遊離前外側大腿皮弁により被覆した。逆
行性前腕皮弁の術後であるため、皮弁の動脈は
橈骨動脈の末梢側に吻合した。示指、中指の指
神経は断端を新鮮化した後に皮弁の皮神経に一
部端側神経縫合を用いて縫合した。【術後経過】
術後 1 か月頃より徐々に疼痛の改善を認め、抗
痙攣剤はその後約3ヶ月をかけて徐々に減量、
中止可能であった。その後も疼痛の改善は続き、
術 後 7 ヶ 月 で 職 場 に 復 帰 し た。【考 察】CRPS
type II に対して神経付き遊離皮弁移植が極めて
有用であった。瘢痕拘縮の解除、充分な厚みの
ある組織での断端部の被覆、指神経の断端新鮮
化、神経縫合のいずれがどのように効果的で
あったかは依然不明であるが、同様の症例に対
し神経付き遊離皮弁移植は治療の一法となりう
るものと考えられた。
【はじめに】リンパ漏の原因の一つとして、周術
期におけるリンパ管の損傷などがあげられる。外
傷性のリンパ漏では、創部からの多量なリンパ液
の持続的漏出による創傷治癒遅延や創部の感染を
引き起す可能性もある。既存のリンパ漏の治療と
しては、保存的加療としての患部全体の圧迫、
NPWT、また手術的加療として漏出部より末梢側
でのリンパ管静脈吻合術などが施行されてきた。
しかしいずれも実際の切断部位を特定するには至
らず、間接的な治療であるため、治療効果が不十
分であることも多い。患部への直接的な加療とし
て、パテントブルーを用いてリンパ液の漏出部位
を直視下に観察し、リンパ管断端を直接結紮する
などの方法もあるが、これは創が開放であること
が前提であり、侵襲性が大きいことが問題であっ
た。今回我々はインドシアニングリーン(ICG)
を皮下に注入する事でリンパ管を造影し、Photo
Dynamic Eye (PDE) によりリンパ液の漏出部位を
目視下で確認しリンパ管切断部位を特定し、外部
より局所的に圧迫することで、保存的にリンパ漏
を治癒に導いたため報告する。
【方法】CABG に用いる SVG 採取後に生じた波動
をふれる皮下の液貯留を呈する患者 2 例に対し、
患肢側足背第 I 趾間の皮下に ICG を注入し、PDE
を用いてリンパ管を造影した。リンパ管の断裂部
位を同定し、同部位をさばきガーゼ+粘着性弾力
包帯を用いて局所的に圧迫した。
【結果】液貯留部位は蛍光を呈しており、同部位
におけるリンパ管の途絶が認められた。いずれの
症例でも 3 日以内にリンパ液の漏出は減少し、
1週間後には認めなかった。
【考察】リンパ漏が疑われた患者に対し蛍光リン
パ管造影を用いることで早期にリンパ漏の診断を
確定することが出来た。また、リンパ管蛍光造影
法はリンパ管損傷部を特定することに有用であっ
た。さらにリンパ管損傷部に対し効率よく局所的
な圧迫を行う事ができ、低侵襲で保存的かつ直接
的な加療になると考えられた。
81
37
38
癌終末期に受傷した熱傷患者の治療経験
アナルプラグ・アナルパウチを用いて便汚
染を予防した肛門周囲創傷の治療経験
増本 和之(ますもと かずゆき)1,2、
石原 康裕 2、佐竹 義秦 2、苅部 大輔 2、
上村 哲司 2
小西 美由紀(こにし みゆき)、太田 勝哉、
林 菜穂子、黒沢 是之、齊藤 八十
1 熊本赤十字病院
2 佐賀大学 医学部 附属病院 形成外科
山形県立中央病院 形成外科
今回われわれは、年齢・受傷機転がそれぞれ異
なるものの、部位、熱傷面積、熱傷深達度が比
較的近似した癌終末期患者における熱傷 2 症例
を同時期に経験する機会を得た。両者共、死亡
退院したものの創傷治癒機転に差異が認められ
たため、比較検討するとともに、若干の文献的
考察を加え報告する。症例 1 は 78 歳女性で、
肺癌と COPD の合併があり、癌終末期の為、無
治療で経過観察となっていた。2010 年 2 月 2
日 一人で入浴していた際、熱湯にかかり受傷
した。熱傷面積は、背部・臀部に DDB 10%
肛 門 周 囲 に DB 5 % 左 踵 部 ∼ 足 底 に
SDB1%、
TBSA 16%(BI:10 PBI:88)であった。
肛門周囲の深達性熱傷創であり、感染必発であ
るため、受傷後 3 日目でデブリードマン・分層
植皮術を施行した。術後は気管挿管管理、腹臥
位および肛門チューブ管理にて植皮片の生着は
良好で創部縮小傾向にあったが、漏出性胸水貯
留と腎前性腎不全を併発し受傷後 41 日目に死
亡となった。症例 2 は 66 歳女性で、子宮頚癌
に対し放射線化学療法を行っていた。クリーニ
ング店を営んでいたが、2010 年 2 月 8 日、煙
草に火をつけた際に気化した溶剤に引火し火炎
熱傷を受傷した。熱傷面積は、右大腿部に全周
性 DB 8%、右 下 腿 前 面 DDB 4%、肛 門
周 囲 DB 3 %、そ の 他 SDB 1 %、TBSA 16%(BI:13 PBI:79)で あ っ た。大 腿 部 は
全周性 3 度熱傷であり、受傷当日、減張切開術
を施行した。入院後に異常行動や瞳孔不同を呈
した為頭部 CT 撮影を行ったところ、転移性脳
腫瘍を認めた。しかしながら手術加療は、受傷
後 4 日目でデブリードマン・分層植皮術を施行
した。植皮片はほぼ生着はしたが、植皮術後
13 日目(受傷後 17 日目)を境に全身状態の悪
化とともに植皮片の脱落と採皮創の感染増悪が
みられ、受傷後 24 日目に死亡となった。
臀部・会陰部の創傷管理において、便汚染は創
部感染の原因となり治癒を遅らせる原因となり
うる。今回我々は 3 例の肛門周囲の創傷に対し、
アナルプラグおよびアナルパウチを用いて創部
への便汚染を防ぎ治療を行った。1 例目は、臀
部慢性膿皮症に対し病変部切除とメッシュ植皮
術を施行した。術翌日に水様便による創汚染が
あったため、タンポン型のアナルプラグを用い
て排便コントロールをしながら創管理を行い良
好な植皮の生着を得ることができた。2 例目は、
臀部の熱傷に対しアナルプラグを用いて便汚染
を予防し、上皮化を図ることができた。3 例目
は臀部の熱傷であったため便汚染を予防する必
要があったが、大きな痔核を有していたためア
ナルプラグでは出血のリスクがあった。また創
傷の範囲が肛門から少し離れていたためアナル
パウチを用いて創管理を行った。いずれも便汚
染による創感染を防ぐことにより良好な治療結
果が得られたので、これらの治療経験をそれぞ
れの利点・欠点を含めて報告する。
82
39
40
ロープにより両側手掌に摩擦熱傷を来した
1例
インテグラ ® による治療を行った新鮮熱傷
4症例の治療経験
縄田 麻友(なわた まゆ)1、大西 清 1、
平田 晶子 1、山田 哲郎 1、上野 佐知 1、
酒井 敦子 2、神田 憲吾 3、丸山 優 4
東盛 貴光(ひがしもり たかみつ)1、
仲沢 弘明 2、副島 一孝 1、菊池 雄二 1、
櫻井 裕之 1
1 東邦大学医療センター大橋病院形成外科
2 東邦大学医療センター佐倉病院形成外科
3 東京臨海病院形成外科
4 東邦大学形成外科
1 東京女子医大病院 形成外科
2 東京女子医大病院 東医療センター 形成
外科
【目的】手部は露出部のため熱傷を受ける機会
が多いが、その受傷原因としては高温液体が最
も多く、摩擦熱によるものは希少である。今回
われわれは、ロープにより両側手掌に摩擦熱傷
を来した 1 例を経験したので報告する。【症例】
25 歳、男性。高層ビルの窓清掃をしていた際
に安全器具が外れ、ロープを掴んだまま 7 階か
ら 2 階まで転落し、両手掌に 2 ∼ 3 度の摩擦熱
傷を受傷した。手袋はしておらず、受傷部位は
示指から小指掌側、示指中指基部から尺側手関
節に斜走する手掌であった。初回手術でデブ
リードマン、人工真皮の貼付を行い、2 週間後
に足底土ふまずから採皮した植皮術を施行し
た。【結果】植皮片は良好に生着し、一部生じ
た肥厚性瘢痕に対する治療を約 1 年間継続し
た。現在、日常生活に支障はないが、両側示指
中指に軽度の瘢痕拘縮を認め瘢痕拘縮形成術を
予定している。【考察】ロープによる摩擦熱傷
という受傷機転は非常に稀で、われわれが渉猟
し得た限りでは、これまでに同様の報告はみら
れていない。本症例では、示指から小指掌側と、
示指中指基部から尺側手関節に斜走する手掌に
熱傷創を認め、母指球は両側とも無傷であった。
このように受傷部位はロープを握ったところに
一致しており、非常に特徴的であった。
【目的】広範囲重症熱傷に対するスキンバンク
からの同種皮膚による早期手術の有用性につい
てはほぼコンセンサスが得られ、昨年発表され
た本邦の熱傷治療ガイドラインでも推奨されて
いる。しかしながら、同種皮膚移植は、その使
用における種々の問題があり、それに変わるも
のとしての人工真皮の使用が挙げられる。欧米
では、すでに広範囲重症熱傷における真皮欠損
用グラフト(インテグラ ®)の有用性が報告さ
れているが、日本においては昨年に臨床使用が
可能となった。今回われわれは、新鮮熱傷 4 例
に対して本材を使用する経験を得たため、実際
の問題点について検討し若干の文献的考察を加
えて報告する。【対象および方法】2009 年 8 月
∼ 2010 年 3 月に当科熱傷ユニットで入院治療
を 行 っ た 14 例(Burn Index27±24、年 齢
43±26 歳:平均 ±SD、以下同様)中インテグ
ラを使用し治療を行った新鮮熱傷 4 例(Burn
Index40±30、年齢 46±22 歳)を対象とし、熱
傷面積、インテグラ使用面積、生着率、予後に
ついて検討した。【結果】3 例で TBSA30% 以上
の広範囲重傷熱傷であり、2 例で救命でき、2
例で死亡の転帰をとった。インテグラ使用面積
は 3 例の広範囲重症熱傷例で 1%、1 例の中等
度範囲熱傷で 4%であった。生着率は広範囲熱
傷 3 例で不良、小範囲熱傷 1 例で完全生着であっ
た。【まとめ】今回の症例では TBSA30%以上で
全 て 生 着 不 良 で あ っ た。イ ン テ グ ラ は
TBSA20% 以下での使用が安全であると報告が
あるが、2007 年 Ludwik らは小児広範囲熱傷に
おけるインテグラ使用の検討を行い、使用に際
して熟練すれば感染率や生着率は向上すること
を報告した。当科における使用でも種々の問題
点を有しており、手技の向上や経験によりその
治療成績は改善すると思われた。
83
41
42
熱傷におけるビタミン C 局所投与の有用性
∼抗菌作用の検討∼
新鮮 II 度熱傷に対する bFGF 製剤の検討ー
bFGF 製 剤 の 作 用 機 序 と 投 与 方 法 に つ い
てー
武川 力(たけかわ ちから)1、橋本 裕之 1、
佐藤 精一 1、竹内 善治 2
磯野 伸雄(いその のぶお)、栗原 幸司、
竹内 正樹
1 大分市医師会立アルメイダ病院 形成外科
2 大分市医師会立アルメイダ病院 皮膚科
日本大学 医学部 形成外科
【目的】近年、bFGF 製剤が II 度熱傷創に有用と
の報告があるが、その効果や投与法は様々であ
り、作用機序も明確でない。今回、深達性 II 度
熱傷の受傷早期からに bFGF 製剤を用い、作用
機序や投与法について検討した。【対象】受傷
後 48 時間以内の早期に、ビデオマイクロスコー
プを用いた熱傷深度判定 ( ハイスコープ分類)
を 行 っ た タ イ プ 3D、4 の 深 達 性 II 度 熱 傷
(DDB)9 例、12 部位を対象とした。ハイスコー
プ分類タイプ 3D が 7 部位、タイプ 4 が 5 部位
であった。平均年齢は 40.8 歳、平均熱傷面積は
3.5% で あ っ た。【方 法】受 傷 48 時 間 以 内 に
bFGF 製剤を 1 回/日の使用を開始し、創面の
血管や血流の状態また上皮化を経時的に、肉眼
とビデオマイクロスコープで観察した。【結果】
タイプ 3D の 7 部位は、受傷後 5 ∼ 6 日目より
血流の良好な細い血管が観察され、徐々に創面
の血流が改善し、平均 10.1 日で上皮化が得られ
た。タイプ 4 の 5 部位はタイプ 3D と同様な創
面の変化を呈し、平均 15.7 日で上皮化が得られ
た。タイプ 4 の 2 部位は、受傷 7 日目でも熱傷
創面に細い血管の出現を認めず、壊死層を形成
し、上皮化傾向がないため植皮術を行った。【考
察】上皮化した症例は、bFGF 製剤の血管新生
作用により、受傷後 5 ∼ 6 日目の創面に血管が
出現し、血流が改善することで、真皮が進行性
壊死に至らず、そして上皮化促進作用により、
あたかも SDB のように受傷2週間前後で上皮化
すると思われた。一方、上皮化が得られず手術
を行った症例は、受傷後 1 週間でも血管が出現
せず、真皮の血流は途絶し、壊死層を形成し、
上 皮 化 し な い と 思 わ れ た。以 上 の こ と か ら
bFGF 製剤を投与は、受傷早期(受傷 48 時間以内)
からの投与が望ましいと思われた。また受傷後
1 週間で新たな血管が出現しない症例は上皮化
が遅れるため、瘢痕拘縮が危惧される場合は手
術も考慮すべきと思われた。
【背景】熱傷において、全身に大量投与したビ
タミン C がフリーラジカルスカベンジャーとし
て働き、血管透過性抑制と脂質過酸化抑制効果
をもたらすことは以前より報告されている。ま
た、熱傷局所においても、焼痂にはフリーラジ
カルが多く存在するため、ビタミン C が集積す
ることが知られており、熱傷の修復機転にビタ
ミン C が重要な役割を果たすと考えられる。そ
こで、われわれは、以前より熱傷植皮後にビタ
ミン C 含有ジェルを植皮面に塗布し、良好な結
果を得ている。今回、ビタミン C の抗菌作用に
注目し検討を行ったので、実際の症例を供覧し
つつ報告する。【方法】ディスクの阻止円を用
いて菌別に検討した。菌の選択は、熱傷創に高
頻度で認められる黄色ブドウ球菌、緑膿菌、M
RSA,真菌とし、それぞれのディスクに、実
際に臨床で使用しているビタミンC含有ジェ
ル、PHを調整し中性にしたビタミン C 含有
ジェル、そしてコントロールとしてジェルのみ
の 3 種類を塗布した。さらに、濃度別にジェル:
ビタミンCを 5:1、10:1、15:1 の 3 種類に分け、
同様にディスクの阻止円を用いて検討を行っ
た。【結果】菌別では、真菌以外に対して抗菌
作用を認めた。濃度別では、5:1 では、同程
度の抗菌作用を認めたが、10:1 では黄色ブド
ウ球菌に対して抗菌作用が弱まり、15:1 では
抗菌作用を示さなかった。【考察】われわれは、
ビタミン C が熱傷局所において重要な役割を果
たすであろうと考え、以前より局所投与を行っ
ていたが、今回、新たにビタミンCが黄色ブド
ウ球菌、緑膿菌、MRSA に対して抗菌作用を
有することがわかった。また、PHを調整して
中性としたジェルを用いても効果が維持されて
おり、臨床において、滲出液などでビタミン C
の酸性が保てない状況であっても有効であると
考えられた。濃度に関しては、十分な抗菌作用
を得るためには、ジェル対ビタミンC=5:1
以上が必要であろうと思われた。
84
43
44
当院における胸骨骨髄炎について
人工関節置換術後の感染コントロールと軟
部組織の再建
大塚 守正(おおつか もりまさ)
、
田中 宏典
南村 愛(みなみむら あい)、櫻井 淳
社会保険 小倉記念病院 形成外科
東京都立大塚病院 形成外科
胸骨骨髄炎や前縦隔洞炎は非常に重篤な疾患で
あるが、以前は心臓手術が適応ではなかった高
齢者や合併症を持つ患者に対しても、心臓手術
が行われるようになってきたため避けて通れな
い疾患となっている。当院が心臓・血管系の疾
患を多く扱っている病院という特殊性から術後
合併症が無くなることはなく、このような疾患
については当科が協力して治療に当たってい
る。平成 17 年から平成 21 年の 5 年間に当院
心臓外科において胸骨正中切開にて手術を行っ
た症例は 2597 例であり、そのうち心拍動下バ
イパス手術 (OPCAB) の増加で冠動脈疾患の手
術が約 50%を占めている。心臓外科より当科
に紹介され実際に胸骨骨髄炎の手術を行った症
例は 41 例であったが、27 例が冠動脈疾患であっ
た。バイパス手術では両側内胸動脈を使用し、
さらに糖尿病等を合併している症例では胸骨骨
髄炎の発生率が高くなる傾向があり注意を要す
る。またこれらの疾患は治療だけでなく、予防
するための心臓外科との協力関係も必要と考え
られる。我々が治療に携わった症例について、
実際の症例を供覧し考察を加え報告する。
人工関節置換術後の合併症の一つに、ときに人
工関節の露出を伴う難治性潰瘍がある。われわ
れは慢性関節リウマチ患者の関節置換術後に、
難治性潰瘍を生じた 4 例を経験した。2 例は膝
部の人工関節が露出し、外側腓腹筋皮弁で潰瘍
部を再建した。1 例は肘部の人工関節が露出し、
逆行性外側前腕皮弁で閉鎖したが、外傷を契機
に再度人工関節が露出し、尺側手根屈筋皮弁に
よって閉鎖した。3 例とも術前に創の清浄化を
図った後皮弁により潰瘍部を閉鎖し、人工関節
を温存できた。いずれの症例も術後 3 年から 5
年の経過観察で、深部感染の再燃はない。1 例
は膝の人工関節置換術後の潰瘍形成で、人工関
節の露出はなかった。創の清浄化をはかり、創
培養が陰性化してから植皮術にて潰瘍を閉鎖し
たが、創部からの滲出が続き、最終的に人工関
節の抜去となった。
自験 4 例の経験から、外科的治療を奏効させる
ためには、術前の感染コントロールが最も重要
であり、閉鎖術までの期間を要しても創培養の
陰性化を確認することが必要と思われた。また、
人工関節の露出を伴う難治性潰瘍に対する再建
皮弁は、患者背景を考慮し、再発の可能性を含
めて選択する必要があると考える。さらに、人
工物が用いられた症例のなかには、数年後に深
部感染を認めるものもあり、長期の経過観察が
必要である。
85
45
46
開胸術後正中創感染・縦隔炎に対し間欠的
洗浄を併用した持続陰圧吸引療法が有効で
あった症例
胸骨骨髄炎後の組織欠損に対するわれわれ
の治療アルゴリズム
五来 克也(ごらい かつや)、権太 浩一、
山岡 尚世、加納 麻由子、天方 将人、
篠田 大介、福場 美千子、平林 慎一
渡邊 英孝(わたなべ ひでたか)1、
増本 和之 1、上村 哲司 2
帝京大学医学部形成・口腔顎顔面外科
1 熊本赤十字病院 形成外科
2 佐賀大学医学部附属病院 形成外科
<目的>心臓外科開胸術後に合併した正中創感
染・縦隔炎に対し、間欠的洗浄を併用した持続
陰圧吸引療法(NPWT)が有効であった症例 2
例を報告する。<方法>症例1は 69 歳女性で、
冠動脈バイパス術(CABG)後 15 日で発症した
正中創感染・縦隔炎で、皮下組織の壊死・感染
に加え、胸骨の動揺性・腐骨化、胸骨離開によ
る前縦隔との交通と膿の流出を認めた。切開排
膿後 2 週間洗浄を行なった後、全身麻酔下で腐
骨除去と腐骨部に近いワイヤー 2 本を抜去し
た。胸骨直下には移植血管があり縦隔内は洗浄
のみに留め、術後間欠的洗浄を併用した NPWT
を開始した。施行後 7 日目で創の収縮・清浄化
が得られ、35 日目で創は閉鎖した。症例2は
69 歳男性で、CABG 後 10 日で発症し、胸骨の
腐骨化は軽度であったが動揺性があり、前縦隔
との交通・膿の流出を認めた。切開排膿後 5 日
目より間欠的洗浄を併用した NPWT を開始し、
14 日目で縦隔との交通は閉鎖した。
<考察>胸
骨の動揺性・腐骨化を有し、前縦隔との交通と
膿 の 流 出 を 認 め る Pairolero 分 類 の Type 2
(Deep sternal infection)は、デ ブ リ ー ド マ ン
と皮弁による再建が主な治療法とされてきた
が、NPWT に間欠的洗浄を併用することで、縦
隔との交通を遮断し創閉鎖を得ることができ
た。Type2 の中でも、ワイヤーを全抜去し胸骨
縁を全てデブリードマンする必要のないケース
では、NPWT が有効であると思われる。また洗
浄を間欠的(1 日 3 回)に行い、日中のリハビ
リの際には NPWT も中断するなどの工夫で、患
者の ADL の妨げを最小限に治療を行なうこと
ができ有用であった。
【目的】心臓外科などでの胸部術後に胸骨骨髄
炎・縦隔炎が起きる頻度は 0.4% ∼ 5% と報告
されており、腐骨や異物の存在があれば、炎症
が沈静化しても難治である。また、縦隔や心嚢・
胸腔に感染が及べば生命にかかわる問題とな
る。通常、同部位にはしっかりとしたデブリー
ドマンにて感染をコントロールし、その後十分
なボリュームと血行を持つ組織で再建を行う必
要がある。欠損の再建には大胸筋皮弁や腹直筋
皮弁などの筋皮弁が選択される事が多いが、心
臓外科手術後の患者さんには手術侵襲が大きく
なるということや、筋皮弁採取後のドナーの犠
牲という問題もある。今回われわれは、胸骨骨
髄炎後の胸部正中部の組織欠損に対するわれわ
れの治療アルゴリズムついて報告する。【方法】
2000 年 4 月から 2010 年 3 月の期間に、佐賀大
学医学部附属病院および熊本赤十字病院にて、
開胸手術後に胸骨骨髄炎・縦隔炎を併発した 6
症例を対象に、現疾患、基礎疾患の有無、内胸
動脈残存の有無、デブリードマンの時期・回数、
再建方法を中心に、検討した。【結果】詳細な
結果は口演にて述べるが、治療法として、近年、
陰圧閉鎖療法を組み合わせた再建方法が増加し
た。【考察】開胸手術後の胸骨骨髄炎・縦隔炎
には、デブリードマン後、血流豊富な組織で再
建を行ってきた。近年、開心後の患者に、低侵
襲でかつドナーの犠牲の少ない陰圧閉鎖療法を
組み合わせた治療法が開発され、われわれ形成
外科が行なうべき再建方法も変化し、治療アル
ゴリズムのバリエーションが増えてきた。
86
47
48
有茎前外側大腿皮弁を用いた、フルニエ壊
疽初期治療後の陰嚢瘢痕拘縮に対する二期
再建の経験
下眼瞼瘢痕拘縮に対する耳介軟骨移植術の
検討
小平 聡(こだいら さとし)、田中 顕太郎、
岡崎 睦
大河内 裕美(おおこうち ひろみ)、
上田 和毅、梶川 明義、大河内 真之、
望月 靖史、廣瀬 太郎、浅井 笑子、
阪場 貴夫
東京医科歯科大学 形成外科
福島県立医科大学 医学部 形成外科
【はじめに】陰嚢部フルニエ壊疽は、皮膚欠損
が広範で精巣や精索の露出を伴うことも多く、
再建が困難な場合がある。我々は、大腿皮下ポ
ケット法で初期治療を行った後の重度の瘢痕拘
縮に対して、有茎前外側大腿皮弁による再建を
行い良好な結果が得られた症例を経験したので
報告する。【症例】45 歳男性。両側鼠径部から
陰嚢部のガス産生性フルニエ壊疽を発症、当院
救急部で 2 回のデブリードマンが行われた。感
染の沈静化を待って両側鼠径部は縫縮し、精巣
と精索が露出した陰嚢部に対しては大腿皮下ポ
ケット法が施行されたが、術後に精巣の圧迫感
や疼痛、陰茎基部の拘縮による勃起障害を訴え
たため、当科紹介となった。瘢痕拘縮を解除し
た後に 15×20cm の thinning した有茎前外側
大腿皮弁による再建を行った。【結果】皮弁は
完全に生着した。陰嚢部の形態は良好で、精巣
の圧迫感や疼痛、勃起障害は改善し、満足する
結果が得られた。【考察】陰嚢部は体の中でも
極めて特徴的な構造を持つ。比較的大きな皮膚
欠損でもその気になれば縫縮でき、縫縮できな
くても植皮を行えば簡単に再建可能である。精
巣や精索の露出を伴うような広範欠損に対して
も大腿皮下ポケット法などで急場を凌げるが、
術後に精巣の圧迫感や疼痛の原因となり、患者
の満足度は低い。これに対する二次再建を考え
た場合、拘縮を解除するのみならず、薄い皮膚
で表面積の広い凸面を再建する方法が理想的だ
が、すべてを満たすのは困難である。腹直筋皮
弁や薄筋皮弁による再建も報告されているが、
有茎前外側大腿皮弁は薄くて大きな皮弁が採取
でき、容易に外陰部に到達可能であることから、
より理想に近い再建法といえる。有茎前外側大
腿皮弁は陰嚢部フルニエ壊疽後の二次再建法と
して有用と考えられた。
外傷による下眼瞼の拘縮は治療に難渋すること
が多い。再建材料としては大腿筋膜や側頭筋膜
などの筋膜や耳介軟骨、肋軟骨や鼻中隔軟骨な
どの軟骨、suture anchor などが用いられてい
るが、筋膜や糸によるつり上げ術はしばしば瘢
痕にかなう強度が得られず、不十分な結果をも
たらす。一方、十分な強度を持つ軟骨の中でも
耳介軟骨は弾性軟骨であり、しなやかさを持っ
ている。また、耳介軟骨を用いた術式では吊り
上げではなく もちあげ 効果を期待する術式
がおこなわれることがある。このように耳介軟
骨は下眼瞼の再建に有用な素材であるが、これ
まで報告された採取部位や形状は一様ではな
く、まだ下眼瞼瘢痕拘縮に対するスタンダード
な術式というものは定まってはいない。 われ
われは以前、耳甲介全体から軟骨を採取し移植
に用いていたが、耳甲介軟骨の湾曲が強すぎた
ため、術後に下眼瞼の突出変形をきたし、長期
経過においても矯正されることはなかったた
め、最終的に修正術を余儀なくされることが多
かった。また、舟状窩から細長い軟骨を採取し、
それを吊り上げに用いる方法も行ったが、細長
い鎌状の軟骨の両端を固定したときにたわみを
生じたり、軟骨の下端が支持組織と接していな
いため、眼球が突出傾向にある標準的日本人に
対しては後方に下眼瞼を引くことはできるが、
頭側に下眼瞼を持ちあげることはできなかっ
た。最近われわれは耳甲介と舟状窩から二つの
軟骨を採取し、水平方向に舟状窩からの軟骨を、
垂直方向に耳甲介からの軟骨を用いて T 字型に
組み合わせる方法を考案した。移植した軟骨は
下眼瞼の変形を最小限にとどめ、十分な持ち上
げ強度を持つ支持組織となり、これにより形態
的、機能的に満足のゆく結果を得ることができ
た。また、耳甲介と舟状窩からの軟骨採取を同
側で行ったが、耳介の形態異常をきたすことは
なかった。われわれが行った耳介軟骨移植の臨
床例の提示とともに術式の詳細を紹介する。
87
49
50
熱傷瘢痕による水かき形成に対する指間形
成手術における皮弁の一工夫
頭部瘢痕に対するわれわれの治療法
幸島 究(こうじま きわむ)、奥村 慶之、
片山 泰博
清水 瑠加(しみず るか)、貴志 和生、
岡部 圭介
日本赤十字社和歌山医療センター 形成外科
慶應義塾大学 医学部 形成外科
【目的】熱傷瘢痕により生じる掌側指間の水か
き形成に対する手術において、術後の水かきの
再上昇がしばしば問題となる。その主な原因と
して拘縮の再発が挙げられ、これを予防するた
めには十分な拘縮の解除と血行・伸展性の良い
余裕のある組織での指間の再建が必要といえ
る。今回、指間形成において皮弁の作成及び血
行に関し検討・工夫を行い、新たな方法を考案
し良好な結果を得たため報告する。
【方法】手指・
手掌熱傷後の瘢痕拘縮・水かき形成の 3 例 4 指
間に対して、水かきを形成する指間を挟んで相
対する指側面に Swing flap 法に準じた皮弁を、
及び指間に伊東らの小三角弁法を併用したデザ
インで皮弁を作成した。皮弁血行についても検
討し、従来の方法より良い血流を確保するため
指動脈の基節中枢背側枝を確認しこれを含む 2
本の指動脈背側枝を栄養血管とする皮弁とし指
間形成を行った。
【成績】【結論】本法により血
行のより良い大きな皮弁が作成できるため余裕
のある指間が形成できるといえる。本法の利点
として、指側面は瘢痕拘縮により、また指間部
背側は水かきの上昇により牽引・伸展された組
織を有効利用する点 , 指基節部背側皮膚の主な
血行の担体である指動脈の基節中枢背側枝を皮
弁に含めることでより良い血行が得られる点 ,
前進・移動した皮弁が戻ろうとする力が水かき
の再上昇する力に拮抗する点などが挙げられ、
これにより水かきの再上昇が予防できると考え
られる。中等度以上の拘縮を伴う症例について
は植皮の併用を要するが、良好な指間形成がで
きる点で非常に優れた方法と考えられ報告す
る。
頭部の瘢痕はしばしば拡大し、瘢痕が目立つこ
とが多い。有毛部頭皮の瘢痕が目立つ原因とし
て、毛包の欠如、不充分な減張縫合が考えられ
る。われわれは、頭皮の瘢痕を軽減する目的で、
様々な方法を行い、最終的にはほとんど目立た
ない瘢痕にすることができたので報告する。縫
合の際に、教科書的には剥離を帽状腱膜下で行
うとされているが、帽状腱膜下で剥離を行って
も皮膚の進展効果が少ないことが多い。そこで
われわれは剥離は帽状腱膜下ではなく、帽状腱
膜上で行い、また、毛根を傷めないよう毛包と
平行に間隔を開けて真皮縫合を行っている。女
性の場合は、瘢痕周囲の頭髪をゴムで束ねるこ
とで、テーピングの代わりにしている。最終的
に 残 っ た 瘢 痕 に は、follicular unit
transplantation を行っている。これまでに、6
例の頭皮の瘢痕や皮膚切除の患者に、下記の方
法を用いて治療を行うことで瘢痕が目立たない
状態にすることができた。帽状腱膜上での剥離
で、帽状腱膜下の剥離に比べて、効果的に頭皮
を引き寄せることが可能であった。また間隔を
開けた真皮縫合で、点状の脱毛を生じることが
あるが、点状であるので整容的に問題はなかっ
た。頭頂部付近の瘢痕は、毛流や重力の関係で
線状の瘢痕が残存するが、このような例に対し
ては follicular unit transplantation が有用であっ
た。
88
51
52
初回術後瘢痕結果による次回術後瘢痕予測
は可能か?
ケロイド,高度肥厚性瘢痕に対する手術・
電子線照射併用療法例の検討
土佐 眞美子(とさ まみこ)1、村上 正洋 1、
朝倉 啓文 2、松島 隆 2、百束 比古 3
門平 充弘(かどひら みつひろ)、氷見 祐二、
島田 賢一、川上 重彦
1 日本医科大学武蔵小杉病院 形成外科
2 日本医科大学武蔵小杉病院 女性診療科
3 日本医科大学付属病院 形成外科・美容外
科
金沢医科大学 形成外科
ケロイド,高度肥厚性瘢痕に対して,手術・電
子線照射併用療法例を行った症例について検討
し た の で 報 告 す る。症 例:2001 年 1 月 か ら
2007 年 6 月までに当科でケロイド,高度肥厚
性瘢痕に対して全切除または部分切除手術を施
行し,術後電子線照射を行い,2 年以上経過観
察できた 32 例,35 部位を対象とした。32 例中,
男性は 16 例,女性は 16 例であり,年齢は 9 ∼
74 歳 ( 平均 37.0 歳 ) であった。部位は胸部が
17 部位,上肢 ( 肩,上腕 ) が 8 部位,腹部が 4 部位,
耳が 5 部位,その他が 1 部位であった。方法:
切除部に対して,部分切除の場合は残存ケロイ
ド,瘢痕を含めて,術後 7 日目から 4MeV の電
子線 5Gy を連続 5 日間,計 25Gy 照射した。結果:
治療の評価は大浦の判定を用いた。Good が 22
部位 ( 胸部 12 部位,上肢 3 部位,腹部 3 部位,
耳 4 部位 ),Fair が 9 部位 ( 胸部 4 部位,上肢 4
部位,腹部 1 部位 ),Poor が 4 部位 ( 胸部 1 部位,
上肢 1 部位,耳 1 部位,その他 1 部位 ) であった。
色素沈着は,照射直後は全例に認めたが,最終
観察時は 5 例のみで認めた。程度は軽度であっ
たため,本人が強く訴えた症例はなかった。経
過観察中に局所の発癌を認めた症例はなかっ
た。考察:ケロイドに対する電子線照射の併用
は非常に有用な治療法であるが,照射開始時期
や照射線量に関してはまだ確立されていない。
照射開始時期は,術後 2 週間まではさほど効果
は変わらないとする報告もあり,当科では電子
線が創の一次治癒を阻害する可能性を考慮し,
術後 7 日目を開始時期としている。照射線量に
関しては,20Gy 以上の照射では合併症が強い
とされているが,今回の症例では症状の軽快に
より患者の満足度は高く,一概に 25Gy が線量
過多とも言えないと思われる。まとめ:ケロイ
ド,高度肥厚性瘢痕に対する手術・電子線照射
併用療法例について,若干の文献的考察を加え,
われわれの結果を報告した。
【目的】同一患者が、同じ部位の手術を複数回
受けた場合、その瘢痕は、初回手術後の結果と
同様になるのか、あるいは異なるのかを明らか
にするために、以下の研究を計画した。
【対象と方法】当院で帝王切開術を受ける患者
のうち、産婦人科疾患の手術既往歴がある例を
対象とした。まず、帝王切開前に既存の下腹部
術後瘢痕を診察し、1) 成熟瘢痕 2) 肥厚性瘢痕
3) ケロイドのどれにあてはまるかを判定した。
同様に、帝王切開後の瘢痕を経時的に観察し、
術後 1 年目の瘢痕状態を判定し、初回手術後瘢
痕と比較検討した。
【結果】対象症例は 203 例であった。帝王切開
以前に受けた産婦人科手術の瘢痕が成熟瘢痕で
あった場合、帝王切開後の瘢痕も成熟瘢痕にな
る確率は高く、約 80% であった。一方、以前
に受けた産婦人科手術後瘢痕が肥厚性瘢痕およ
びケロイドであった場合、帝王切開後瘢痕が成
熟瘢痕に落ち着く割合は低かった。
【考察】初回産婦人科手術後瘢痕が、どのよう
な瘢痕であったかは、その後帝王切開を受ける
場合、瘢痕予測をする上で有効な情報になる可
能性が示唆された。
89
53
54
ケロイド/肥厚性瘢痕切除後の新しい後療
法 ーステロイド強化療法ー
scar scale による術後 2 年間のケロイド治
療成績評価
林 利彦(はやし としひこ)、村尾 尚規、
小山 明彦、舟山 恵美、山本 有平
山脇 聖子(やまわき さとこ)、石河 利広、
内藤 素子、鈴木 茂彦
北海道大学 医学部 形成外科
京都大学 医学研究科 形成外科
[目的]ケロイド / 肥厚性瘢痕を外科的に切除
した場合、再発の予防のため後療法が必要とさ
れることが多い。後療法として本邦では電子線
を照射することが一般的であるが、施設によっ
ては電子線の設備がない、あるいは放射線照射
に対する患者さんの不安などの課題もある。そ
こで、われわれは術後早期より定期的なステロ
イド局注と外用を併用することでケロイドの再
発を予防している。今回、早期ステロイド局注
療法のプロトコールとその結果を報告する。
[対
象と方法]2006 年 4 月より本法を患者 27 名、
30 部位に行った。内訳は男性 8 名、女性 19 名、
部位は下腹部 10 例、前胸部 6 例、耳垂 6 例、
その他の耳部 2 例、背部 2 例、その他 4 例であっ
た。方法は抜糸時より 2 週間隔で計 5 回、ケナ
コルトと 1%ロカイン 1:1 混合液を縫合創の両
側に皮内注射し、また、期間中はステロイド外
用を 1 日 2 回、3 ∼ 6 ヶ月間併用を基本プロト
コールとしている。再発傾向が認められた場合
は局注の 4 回までの追加や副作用が顕著な場合
は局注や外用の一時中止など適宜診断して行
う。[結果]術後平均観察期間 1.5 年で再発率
はケロイド約 14%、肥厚性瘢痕約 13% であっ
た。ただし、再発は瘢痕の一部にとどまってい
た。副作用として皮膚萎縮、ステロイド紫斑、
毛細血管拡張、ステロイドざ瘡などが認められ
た。[考察]本法はケロイド / 肥厚性瘢痕切除
後の早期からステロイドを定期的に局注および
外用することでケロイド線維芽細胞の発生を抑
制すると考える。これはステロイドの抗炎症作
用と線維芽細胞への直接的な影響が関与してい
ると推論する。今後は術後観察期間を延長し、
再発率や合併症などについてより詳細に検討し
たい。
【目的】ケロイドは比較的よく遭遇する疾患で
ありながらこれまで治療経過を評価する一般的
スケールはない。そこでわれわれは主観的因子
と客観的因子に着目した簡便な評価方法を考
案、利用し、前回の本学会でもその有用性を報
告した。今回はケロイド術後 2 年間の経過をわ
れわれの方法を用い評価を行ったので報告す
る。【方法】2007 年 1 月から 2008 年 3 月まで
の間にケロイドに対して切除と放射線治療を
行った 21 例のうち、2 年以上の経過観察が可能
であった 18 例、20 ケロイドとした。18 例につ
いて治療経過を 6 ヶ月、1 年、1 年 6 ヶ月、2
年の時点での治療経過を比較した。評価方法は
主観的因子として掻痒・疼痛を、客観的因子と
して赤み、隆起、硬結を用い、以下の表のごと
く点数化した。主観的因子 客観的因子 掻痒 あ
り 1 赤み 全体にあり 2 なし 0 部分的にあり 1
疼痛 あり 1 なし 0 なし 0 硬結 全体にあり 2
部分的にあり 1 なし 0 隆起 全体にあり 2 部分
的にあり 1 なし 0 さらに総合点数によって治療
成績を評価した。評価 score excellent 0 good 1
∼ 2 fair 3 poor 4 ∼ 8【成績】部位別内訳は耳垂
が 6 例、肩甲部が 4 例、腹部が 4 例、胸部が 2 例、
その他が 4 例であった。20 ケロイドのうち、9
ケロイドは術後 6 ヶ月の時点から 2 年まで主観
的因子、客観的因子とも 0 点のまま経過した。
術後 2 年の時点で poor となった症例はなかっ
た。また fair となったのが 2 例(胸部、頸部)、
good が 2 例(胸部、頸部)で残りの 16 ケロイ
ドは excellent であった。ほとんどの症例で点
数は漸減した。【結論】これまで術者が主観的
に捉えていた治療成績を具体化し、主観的因子
と客観的因子に分け、点数化する試みをこれま
で行ってきた。今回は半年毎の経過を点数化に
よって評価した。ほとんどの症例は点数が漸減
するという経過をたどることが確認でき、症状
の経過と点数が相関して推移していることが確
認できた。
90
55
56
広背筋弁による難治性肺瘻の治療戦略
上下顎癌切除後の皮弁壊死・瘻孔および放
射線潰瘍における血管柄付骨性再建の経験
渡部 功一(わたなべ こういち)1、
清川 兼輔 1、井野 康 2、西 由起子 3、
力丸 英明 1、井上 要二郎 1
関堂 充(せきどう みつる)、足立 孝二、
富樫 真二、遠藤 隆志
1 久留米大学 医学部 形成外科・顎顔面外
科
2 国立病院機構九州医療センター 形成外科
3 福岡県済生会福岡総合病院 形成外科
筑波大学 臨床医学系 形成外科
【目的】頭頸部癌切除前後には放射線療法、化
学療法が併用される。しかし、術後に放射線障
害・皮弁壊死などが生ずる場合も少なくない。
放射線骨壊死では腐骨切除、瘻孔の被覆などを
要するが前治療のための瘢痕などのため治療が
困難な場合も多い。演者が経験した上顎癌、下
顎癌術後放射線壊死、皮弁壊死および瘻孔に対
して血管付遊離組織にて硬性再建を行った症例
について検討した。【患者および方法】上顎癌・
下顎癌術後皮弁壊死、放射線壊死および瘻孔に
対し、血管柄付遊離骨性再建を行った患者年齢、
手術方法、照射量、再建方法、吻合血管、合併
症について検討した。【結果】患者年齢は 38-77
歳、男女比は 6 対 3、照射量は 40-65Gy であった。
対象症例は上顎 4 例 ( 皮弁壊死・瘻孔 3 例、放
射線壊死 1 例 )、下顎 5 例 ( 皮弁壊死・瘻孔 2 例、
放射線壊死 3 例 )。再建に使用された組織は上
顎が全例広背筋皮弁+肩甲骨、下顎は腓骨 2 例、
広背筋+肩甲骨 2 例、肩甲皮弁 + 肩甲骨 1 例で
あった。肩甲骨はすべて Angular br. を茎とし
て用いた。使用された吻合血管は上顎再建では
同側では顔面動静脈が最も使用されたが、同側
頚部の郭清後のため外頚動脈に端側吻合、対側
顔面静脈に静脈移植を介して吻合を行った症例
が存在した。下顎再建では全例で同側の郭清が
すでに行われており、動脈では同側頚横動脈ま
たは外頚動脈、対側では顔面動脈が使用された。
対側のうち 1 例は以前の郭清野の血管を使用し
た。静脈は同側では外頚静脈、対側では顔面静
脈を使用した。下顎再建において静脈移植を要
した症例は無かった。上顎再建にて 1 例皮弁壊
死をみたが他は生着し、瘻孔も生じなかった。
【まとめ】照射後の皮弁壊死・瘻孔および放射
線壊死後の上下顎骨性再建も、長い血管茎、血
管の選択により安全に行えることが示された。
【背景】肺瘻に対する一般的な治療としては、
薬剤などで瘻孔部を胸壁や周囲組織に癒着させ
る胸膜癒着術が行われる。しかし、感染を生じ
て膿胸となった場合、肺瘻部の周囲組織が炎症
により瘢痕化して死腔を生じる。このような場
合は、胸膜癒着術では肺瘻と周囲組織の癒着が
起こりにくい。このため、組織移植による死腔
の充填が必要となる。我々は、広背筋弁移植に
よる膿胸となった肺瘻の確実な治療法を工夫し
た。
【方法】手術は二期的に行う。先ず第一期手術で、
膿胸腔を可及的に広く開窓し、十分なドレナー
ジと膿胸腔内のデブリードマンを行う。術後は、
創部の洗浄処置を毎日行い、感染を鎮静化させ
良性肉芽の増殖(wound bed preparation)を
図る。その後に行う第二期手術では、十分な組
織量を有する広背筋弁の有茎または遊離移植を
行い、死腔の充填および瘻孔の閉鎖を行う。こ
の際、瘻孔部周辺に陰圧ドレーンを留置し、肺
瘻からの air leak を確実にドレナージし、広背
筋弁と肺瘻周囲組織を確実に癒着させることで
肺瘻を治癒させる。
【症例および結果】5 症例に対して本法による
治療を行い、全例合併症なく治癒し再発も認め
なかった。
【考察】膿胸となった肺瘻の治療では、1. 膿胸
腔の十分なドレナージおよび創洗浄による感染
コントロールと良性肉芽の増生(wound bed
preparation)2. 高い創傷治癒能力を有しかつ
十分な組織量を有する広背筋弁の充填 3. 筋弁
移植時に肺瘻からの air leak を陰圧ドレーンで
確実にドレナージすることで筋弁と肺瘻部周囲
組織の強固な癒着を図る事の 3 点が重要である
と考えられる。
91
57
58
開頭術後の瘻孔・プレート露出症例の再建
術に関する検討
肩甲下動静脈系遊離複合組織弁移植と
prefabrication の併用による顔面再建の工
夫
古川 洋志(ふるかわ ひろし)1、
池田 正起 1、大芦 孝平 1、齋藤 亮 1、
林 利彦 1、山本 有平 1、関堂 充 2
安嶋 康治(あじま やすはる)1、齋藤 喬 2、
櫻井 裕之 3
1 北海道大学 医学部 形成外科
2 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 臨
床医学系 形成外科
1 東京都立多摩総合医療センター 形成外科
2 埼玉県立がんセンター 形成外科
3 東京女子医科大学 形成外科
背景・目的:開頭手術後の合併症であるプレー
ト露出や瘻孔のうち、形成外科に再建を依頼さ
れる症例は、通常単純縫合による閉鎖が不可能
な症例である。開頭術後の瘻孔・プレート露出
における再建術式の選択について検討した。対
象・方法:2005 年1月から 2009 年 10 月まで
に開頭術後の瘻孔・プレート等の異物露出に対
して、皮弁・植皮・筋弁などの再建を行った症
例は8症例(女性5例男性3例、平均年齢 42.3
歳(1 歳 66 歳))であった。開頭術後の手術
瘢痕の形態と瘻孔・異物の位置、施行した再建
術式と、術後合併症について調査した。結果:
原疾患は、膠芽腫2例、髄膜種2例、くも膜下
出血1例、もやもや病1例、パーキンソン病1
例、水頭症1例であった。開頭術後の手術瘢痕
の形態は、線状(冠状)4例、三分岐型3例、
U 字型1例であった。再建対象は、プレート露
出 5 例、シ ャ ン ト 露 出 1 例、脳 深 部 刺 激
(DBS)用電極露出1例、頭蓋内と交通する瘻
孔 1 例 で あ っ た。術 式 は、局 所 皮 弁 5 例
(bipedicle flap3 例、transposition flap 2 例)
、
遊離皮弁2例(広背筋皮弁)、筋膜弁1例であっ
た。局所皮弁再建症例では、全例で皮弁採取部
位の分層植皮ないし人工真皮貼付が必要であっ
た。U 字型瘢痕内部に散在するプレート露出に
対し複数の局所皮弁を施行した1例で、瘻孔の
再発、複数回の再手術を必要とした。考察:線状・
冠状瘢痕上の瘻孔、または瘻孔が瘢痕から十分
離れている場合、異物との位置関係を考慮して
局所皮弁で閉鎖が可能であった。その際、複数
の異物が存在する場合は他の異物を避けた皮弁
のデザインが必要であった。U 字型瘢痕内部や
三分岐型瘢痕上の瘻孔や異物の露出は、異物の
除去やデブリードマンで組織の欠損が比較的多
く生じてしまうため、可能な限り遊離筋皮弁に
よる被覆が適切であると思われた。
【緒言】頭頚部悪性腫瘍に対する放射線療法施
行後の難治性潰瘍や顎骨壊死は、遊離組織移植
術の適応となる。再建術式は様々であるが、肩
甲下動静脈系遊離複合組織弁移植術は各種組織
移植による立体的構築が可能である点で有利で
ある。今回われわれは、肩甲下動静脈系遊離複
合組織弁移植時に prefabrication を併用し、整
容面での改善を得たので報告する。【対象及び
方法】頭頚部悪性腫瘍に対する手術療法および
放射線療法後、骨露出を伴う難治性潰瘍および
顎骨壊死を生じた 2 例(上顎癌 1 例、中咽頭癌
1 例)に対し、肩甲下動静脈系遊離複合組織弁
移植術を施行した。この際、前鋸筋弁を組織拡
張器と共に鎖骨部皮下に埋入し、血管束導入を
行った。組織拡張の後、prefabricated flap とし
て顔面へ移植した。【結果】2 例共に、複合組織
弁および prefabricated flap は完全生着し、瘻孔
形成などの合併症は認めなかった。【考察】肩
甲下動静脈系複合組織弁は、肩甲骨弁に加え、
広背筋(皮)弁、肩甲皮弁、前鋸筋弁など各種
の再建材料を同時移植することが可能である。
放射線療法後において、再建部位近傍での移植
床血管確保に難渋することが多く、このような
症例では、angular branch を用いた肩甲骨弁の
移植により十分な血管長が確保可能である。一
方、本複合組織弁は移植皮膚の color、texture
といった観点からは顔面再建組織として理想的
性質を備えていない。そこで、ことに比較的若
年の症例において積極的に鎖骨部への
prefabrication を併施し、初回手術時に移植し
た側背部皮膚を鎖骨部皮膚で置換することによ
り整容的改善を得た。本法は、二期的ではある
が、整容面を考慮した顔面再建として有用であ
ると考えられた。
92
59
60
胸部外科領域における致死性合併症回避の
ための創傷外科
supercharged VRAM flap に よ る 胸 骨 骨 髄
炎の治療経験
亀井 航(かめい わたる)、長谷川 祐基、
菊池 雄二、櫻井 裕之
梅川 浩平(うめかわ こうへい)1、
朝戸 裕貴 1、鈴木 康俊 1、沖 正直 2、
野村 紘史 1、藤澤 大輔 1、倉林 孝之 1、
尾野村 麻以 1
東京女子医科大学 形成外科
1 獨協医科大学 形成外科
2 中頭病院 形成外科
緒言)1882 年 Halsted の報告以来、定型的乳
房切除術は長年に亘り乳癌根治術の標準術式と
されてきた。また、1896 年 Grubbe らにより
放射線治療が乳癌に対しても導入されたが、い
ずれも胸壁に大きな障害を与えるものであっ
た。その後、両治療法は格段の進歩を遂げたが、
過去に行われた乳癌治療が、加齢に伴い生命予
後・機能予後に大きな影響を残す症例も散見さ
れる。今回われわれは、数十年前の乳癌治療に
起因する高齢者の胸壁難治性潰瘍 4 症例を経験
したので、若干の文献的考察を加え報告する。
対象及び方法)対象は、35 年以上前に乳癌に
対する定型的乳房切除術と放射線治療を受け乳
癌根治となった4症例で、胸壁に生じた晩発性
放射線障害に関して当科にコンサルトを受けた
症例である。年齢は 65 ∼ 87 歳で、定乳切後の
経過年数は、35 ∼ 40 年であった。内3例は、
加齢に伴い心疾患の合併を生じ、内2例に開心
術が必要となった。1例においては、重篤な心
疾患はなかったが、胸壁潰瘍から壊疽性の縦隔
炎を併発し、胸壁より大量出血を繰り返すよう
になったため、当科に紹介された。結果)4例
全例、当院循環器(胸部)外科、麻酔科と綿密
な術前検討会のうえ、関連各科協力体制の元で
手術を行った。術式は1例に遊離前外側大腿皮
弁、3例は有茎腹直筋皮弁を行い、全例創の一
次閉鎖が得られた。考察及び結語)放射線障害
を伴う定乳切後の患者は、胸壁の障害が著しく
開心術後の創治癒が遅延する。また、放射線晩
期障害により骨髄炎や縦隔炎を合併した症例に
おいては、感染憎悪により致死性出血や重症感
染症への移行も危惧される。創傷外科医として
は、このような remote history を持つ症例に対
しては、他科との seamless なコラボレーショ
ンにより、綿密な手術計画のもと最も効果的な
治療法の選択が必要であると思われた。
【目的】胸骨骨髄炎は、胸骨正中切開による開
心術後の数 % に起こるといわれ、その治療は保
存的な治療から、外科的治療まで様々な方法が
報告されている。今回、我々は supercharged
VRAM flap での再建を行い、良好な結果を得た
ので報告する。【方法】2006 年 4 月から 2010
年 3 月までの 4 年間に、手術治療を行った胸骨
骨髄炎 13 例の検討を行った。胸骨の下半分か
ら全体に及ぶ欠損の再建には、有茎腹直筋皮弁
での再建を第 1 選択とし、10 例に使用した。内
胸動脈が両側とも使用できなかった 2 例では、
有茎大網弁で再建した。骨髄炎が上半分に限局
した 1 例では大胸筋弁を使用した。腹直筋皮弁
の内、2 例において、深下腹壁動脈と頚横動脈
を吻合する supercharged VRAM flap での再建
を行った。【結果】大網弁、大胸筋弁を使用し
た症例は、問題なく治癒した。血管吻合無しの
腹直筋皮弁症例 8 例の内、1 例は術後 1 ヶ月以
内に原疾患の増悪で死亡し、1 例は皮弁部分壊
死により感染の制御ができなかったが、残り 6
例は胸骨骨髄炎の制御をできた。術後大部分の
症例で皮弁先端が壊死し、何らかの処置を必要
とした。合併症を認めずに治癒に至った症例は、
胸骨下半分の再建を行った 2 例のみであった。
血管吻合を行った 2 例は、術後合併症を全く認
めず、皮弁は先端まで完全に生着し、治癒に至っ
た。【考察】胸骨骨髄炎の多くは冠動脈再建の
症例である。内胸動脈は動脈硬化を来たしにく
いことが知られており、そのためグラフトとし
て良く使用される。しかし動脈硬化性疾患の患
者において、内胸動脈から上腹壁動脈を介して
の血行で腹直筋全長を栄養できないことが多い
と考えられる。骨髄炎の治療のため、血行の良
い筋体を充填するのが目的であり、動脈硬化の
強い症例では特に、supercharge をすることは
有用であると考えられた。
93
61
62
仙骨部放射線皮膚障害の治療経験と問題点
放射線照射部位に生じた壊死性筋膜炎後の
潰瘍に対する治療経験
奥田 良三(おくだ りょうぞう)
横川 秀樹(よこがわ ひでき)1、廣川 詠子 1、
佐藤 智也 2、中塚 貴志 1
京都第二赤十字病院 形成外科
1 埼玉医科大学国際医療センター 形成外科
2 埼玉医科大学病院
はじめに)皮膚放射線障害の治療について急性
期・亜急性期は基本的に保存的治療が一般的で
あるが、一度潰瘍が形成すれば難治となり外科
的治療の適応が多くなる。外科的治療に関して
は原則感染が落ち着けば出血のあるところまで
切除し良好な血流のある組織で被覆するが、壊
死組織の切除に関してその判断は難しく、変性
した組織をどれだけ切除するかの明らかな指標
はない。特に仙骨部は再建も考慮すると切除の
範囲に苦慮することもある。そこで切除に関し
て問題のある症例を供覧して若干の考察を含め
報告する。
症例)74 歳、女性で 28 年前に子宮頚癌手術後
の放射線療法。仙骨部に低温熱傷を受傷し外科
的治療となった。治療途中両側の仙腸関節が脱
臼し、体位変換時突然の出血で上臀動脈の仮性
動脈瘤の破裂と診断され、塞栓術で止血できた
が 1 カ月後多臓器不全にて死亡した。
75 歳、女性で 35 年前に外陰部癌術後の放射線
療法。感染を起こし、保存的治療で感染が落ち
着き色素沈着の強い範囲を切除し、大殿筋筋膜
皮弁を施行後一部で排膿があり、その部分を十
分切除し、大殿筋皮弁を追加施行し、良好な結
果となった。
考察)晩期の皮膚放射線障害の患者は 80 歳近
い高齢者で多くの既往症もあり、仙骨部の広範
囲の切除では再建手術を含めると侵襲が大きく
なる。特に壊死組織が 100% 切除されることは
難しく症例ごとに慎重な外科的対応が必要にな
る。
【目的】放射線照射部位の創傷は治癒が遅延する。
今回われわれは放射線照射を受けた右臀部から
大腿に壊死性筋膜炎を生じ、残存する難治性の
広範囲の欠損に対して、デブリードマン後に局
所陰圧療法および植皮術のみで創治癒を得た症
例を経験したため、報告する。
【症例】51 歳女性。2006 年に左乳癌 (T2N0M1)
に対して乳房温存円状部分切除術+センチネル
リンパ節生検術施行。術後、両大腿骨転移に対
して両骨盤骨・大腿骨に 40Gy の放射線照射を受
けた。その後抗癌剤を継続していたが、2009 年
1 月右大腿部に発赤、腫脹、疼痛出現。壊死性筋
膜炎の診断にて皮膚科で数回デブリードマン施
行、感染コントロールがついたため再建目的に
て当科紹介となった。潰瘍面は右坐骨から大腿
後面に存在、転子包に沿ってポケットが広がり、
深部は外側広筋の筋膜に沿って大腿前面中央部
まで広がっていた。ポケット内は壊死した筋膜
が残存し、
肉芽の形成はほとんど見られなかった。
い ず れ 皮 弁 に よ る 再 建 を 想 定 し、wound bed
preparation をはかるべく、不良肉芽や壊死した
筋膜のデブリードマンを施行した。
さらに、
ポケッ
トを深部から下層と縫合し、ほぼつぶすことが
できた。術後は残存する潰瘍面全体を創傷被覆
材にて被覆し、局所陰圧療法を施行、さらに縫
合したポケット内にもドレーンを留置して、陰
圧をかけた。術後経過は良好で、ポケットは下
層と癒着して消失、潰瘍面も肉芽が上昇し、植
皮術のみにて閉創できた。術後1年半経過したが、
潰瘍の再発無く、歩行も可能である。
【考察】放射線照射部位に壊死性筋膜炎を生じた
報告は渉猟しえた限りではごくわずかであった。
放射線照射部位の難治性の潰瘍に対して、通常
は皮弁による再建が選択されるが、今回の症例
では局所陰圧療法および植皮術で創治癒を得た。
まずデブリードマンを行い、局所陰圧療法を行っ
た後に 2 期的に再建する方法が有用であると考
えられる。
94
63
64
知覚神経解離による踵部難治性潰瘍の治療
経験
当科における前頭骨骨折の治療
岡部 圭介(おかべ けいすけ)
、貴志 和生、
清水 瑠加
矢野 浩規(やの ひろき)、林田 健二、
遠藤 淑恵、平野 明喜
慶應義塾大学 医学部 形成外科
長崎大学 医学部 形成外科
知覚運動解離の際に、しばしば踵に難治性の潰
瘍が生じ、また再発を繰り返すことが多い。わ
れわれは、知覚運動解離で踵骨に潰瘍を生じた
患者に対し、突出した踵骨の切除を行うことで
比較的良好な成績を得ることができた症例を経
験したので、報告する。症例1は、28 歳女性。
二分脊柱のための知覚運動解離で、踵部に難治
性の潰瘍を生じていた。X線検査の結果、踵骨
の一部が突出し、潰瘍底からも突出した骨を触
知できたため、踵骨の突出が難治性潰瘍の原因
と考え、全身麻酔下に突出した踵骨と、bursa
の除去を行った。皮膚は皮弁を行うことなく単
純縫合を行った。縫合創から、4 週間少量の浸
出が続いたが、その後浸出液は消失し、治癒し
た。術後6カ月で、再発はしていない。症例2
は 56 歳、女性。同様に踵部に難治性の潰瘍が
生じ、皮下膿瘍のため反応性に肥厚性瘢痕を生
じていた。潰瘍底から、やはり突出した踵骨を
職 知 し た。全 身 麻 酔 下 に 突 出 し た 踵 骨 と、
bursa、肥厚性瘢痕の除去を行った。皮膚は単
純縫縮を行った。縫合創から、5 週間少量の浸
出が続いたが、その後浸出液は消失し、治癒し
た。術後12カ月で、再発はしていない。われ
われの経験した 2 例は、知覚運動解離であった
が、ともに踵骨が突出していた。いずれの症例
も、縫合創から少量の浸出液が続いたものの、
突出した骨を平坦化することで、比較的良好な
結果を得ることができた。今後長期経過を観察
してゆきたい。
前頭骨は前額の土台でありその変形は目立つば
かりか、骨折においては頭蓋内合併損傷、他の
顔面骨骨折や前頭洞の障害を併発や続発する可
能性がある。我々は過去7年間で14例の前頭
骨骨折の手術を経験したので若干の文献的考察
を加え報告する。【症例と結果】症例は15歳
∼71歳平均 42.7 歳、男性12例女性2例、1
4例のうち新鮮例が8例で陳旧例が6例であっ
た。手術目的(重複あり)は変形が12例、髄
液漏5例、前頭洞炎2例で、陳旧例では全5例
とも予定手術、新鮮例は1例で硬膜損傷を伴っ
た開放骨折であったため緊急手術を残りは待機
的に手術をおこなっていた。9例に鼻篩骨骨折
や Le Fort 型などの顔面骨や頭蓋底の骨折合併
があり、新鮮例で髄液漏のあったものは鼻篩骨
部の整復の際、開頭術を併用して前頭筋骨膜弁
もしくは骨膜弁で再建した。前額の変形に対し
ては新鮮例では整復固定術をおこない、陳旧例
の3例で頭蓋骨移植(人工骨ペースト併用1
例)、人工骨ペースト1例、真皮脂肪移植1例
であった。【考察】前頭洞前壁陥没骨折を除い
て高エネルギー外傷が多く、頭蓋底や他の頭蓋
顔面骨ばかりでなく胸腹部脊椎四肢などに重篤
な合併損傷を伴うため、新鮮例においては生命
予後を左右する治療処置を優先し形態学的に満
足行く処置が出来ないことも多い。開放創と通
じた硬膜損傷があれば緊急手術で創の洗浄とと
もに硬膜修復と整復固定術(外減圧が必要な場
合は骨欠損)をおこない、その他の場合は創が
あっても局麻下で行える処置にとどめ、髄液漏
や他の頭蓋内病変および全身状態に注意しつつ
待機的に処置を計画する。前頭洞後壁を含めた
頭蓋底に骨折が及び髄液漏が保存的に治まらな
い場合や骨折整復で髄液漏の再燃が危惧される
場合は、前頭洞は頭蓋化し前頭筋骨膜弁などで
鼻腔との遮断を行う。髄液漏のない場合は前頭
鼻管の開存をはかり出来るだけ前頭洞を温存し
前額形態再建に努める事が重要と考える。
95
66
65
眼窩底骨折に対する生体吸収性プレート
(Lactosorb®)の治療経験 ―これまでの
経過と今後の課題―
関西医科大学枚方病院における眼窩底骨折
の検討
皐月 玲子(さつき れいこ)、八杉 悠、
牧口 貴哉
山本 純(やまもと じゅん)、日原 正勝、
竹本 剛司、楠本 健司
淀川キリスト教病院 形成外科
関西医科大学枚方病院 形成外科
【目的】近年顔面骨骨折の固定に生体吸収性プ
レートが盛んに使用され、多数報告されている。
また、2009 年 5 月、生体吸収性メッシュプレー
トが本邦で使用可能となり、眼窩底骨折に応用
されているが、その安全性や長期経過について
現時点ではまだ不明な点が多い。そこで我々は、
眼窩底骨折に対し生体吸収性メッシュプレート
を使用した経験をもとに、これまでの治療経過
と今後の課題につき報告、検討した。
【対象】2009 年 9 月から 2010 年 3 月までに眼
窩底骨折に対し生体吸収性メッシュプレート
(Lactosorb® メッシュ)を使用した 10 例につき
検討した。術前に自家腸骨移植と生体吸収性
メッシュプレートの両者につき説明し、後者を
希望した患者にのみ使用した。骨折部位は下壁
単独骨折 7 例、内壁単独骨折 2 例、下壁内壁合
併骨折 1 例であった。性別は男性 8 例、女性 2
例で、平均年齢は 26.7 歳であった。
【方法】下壁骨折は睫毛下切開、内壁骨折は内
眼角部切開から骨膜下に至り、骨折部の全周を
剥離し眼窩内容を整復した。テンプレートを用
いて Lactosorb® メッシュを成型し、骨折部に
onlay graft を行った。
【結果】全例において良好な整復が得られた。
現在までに、術後感染や眼球陥凹、眼球運動障
害、複視の悪化などの合併症は認めていない。
【考察】従来、眼窩底への移植は自家骨を用い
ることが主流であったが、採骨に伴う合併症や
その煩雑性などが問題であった。また、人工物
の挿入は、感染の危険性やその安全性について
疑問視されてきた。しかし、Lactosorb® メッシュ
は生体吸収性であり、感染の報告はほとんどな
く、成型も非常に簡便で、今後眼窩底骨折に最
適な再建材料となりうる。ただし、長期経過が
得られておらず、眼窩内での吸収過程や長期的
な合併症の有無などにつき、引き続き経過観察
を行い評価する必要があると考えられた。
関西医科大学枚方病院は 2006 年の開院より地
域の中核病院として年間約 100 件の顔面骨骨折
の治療を行っている。そのうち眼窩底骨折は、
顔面骨骨折の中でも比較的頻度の高い骨折であ
る。今回われわれは、2006 年の開院より 2010
年 6 月までに当科にて治療を行った眼窩底骨折
についてその治療内容、結果について検討を
行った。基礎データ(年齢、性別 受傷原因、等)、
受傷状態(部位、その他の骨折の有無、受診ま
での期間、等)、臨床症状、手術の有無、治療
結果について検討を行った。今後も引き続き、
症例数の増加に伴ってさらに検討を加え、当院
の眼窩底骨折における治療のプロトコール確立
を目指したいと考えている。
96
67
68
眼窩骨折に対する各種再建材料の検討
犬咬創による鼻欠損の治療経験
堀尾 修(ほりお おさむ)、南方 竜也、
鈴木 健司、畔 熱行
黒川 正人(くろかわ まさと)、佐藤 誠、
中山 真紀、中山 玲伊子、桂 良輔
関西医科大学附属滝井病院 形成外科
宝塚市立病院 形成外科
眼窩骨折に対する手術の際、再建材料として腸
骨、頭蓋骨、上顎骨、下顎骨などの自家骨、シ
リコン、チタン、吸収性プレートなどの人工材
料がある。その選択には、骨折の状態、患者の
希望、術者の好みなどによって決定されるとこ
ろであるが、それぞれに利点・欠点があると考
える。今回我々は、過去 4 年間に当院で手術に
至った眼窩骨折症例に対して検討を行った。当
院では再建材料として、腸骨内板、頭蓋骨外板、
上顎骨前壁、シリコンプレート、吸収性プレー
トを使用している。2006 年 1 月から 2009 年
12 月までの期間で、眼窩骨折と診断され観血
的手術に至った症例は 38 例であり、そのうち
34 例に骨再建材料を要した。内訳は、腸骨内
板が 6 例、頭蓋骨外板が 12 例、上顎骨前壁が
2 例、シリコンシートが 8 例、吸収性プレート
が 6 例であった。症例を振り返ることにより、
それぞれの再建材料について検討したので、若
干の考察とともに報告する。
犬には犬のマナーがあるために,そのマナー
をヒトが守らないと咬まれることがある。特に,
犬を抱き上げたりする場合にヒトが顔を近づけ
ると,鼻は突出部であるために咬創を受けやす
い部位である。今回,犬咬創による鼻欠損に対
するわれわれの治療方針を報告する。 【方法】
犬咬創でも欠損がなければ,充分に洗浄した後
に単純縫合することもある。しかし,欠損があ
る場合には,直ちに再建を行うと感染をきたす
こともあるために,二期的に再建する。5例に
対して二期的再建を行った。鼻尖部の欠損2例
では前額皮弁による再建を行った。鼻翼の欠損
1例では遊離耳介複合組織移植を行った。他の
2例は瘢痕拘縮形成術のみを行った。【結果】
鼻尖部に対する前額皮弁移植では皮弁は
trapdoor 変形をきたすために,皮弁の除脂肪と
瘢痕形成が必要であった。耳介複合組織移植は
鼻翼の形状に良く適合した。 【考察】受傷か
ら再建までの期間に関しては,感染をきたさな
いことが確認できれば早期でも良いと考えられ
る。しかし,炎症が消退して,瘢痕が成熟して
からの時期が再建は容易であった。鼻尖部欠損
では大鼻翼軟骨も一部欠損している場合があっ
たが,前額皮弁での再建では軟骨の再建を行わ
ずとも特に問題はなかった。この理由は,前額
皮弁は真皮が厚く比較的硬い皮弁であり,支持
物が一部欠損していても形態を保持し安いため
と 考 え ら れ る。一 方,皮 弁 が 厚 い た め に,
trapdoor 変形をきたしやすく,修正が必要とな
ることが欠点である。耳介複合組織移植では,
鼻孔周囲の形態と耳輪の形態が似ているために
良く適合した。また,組織採取部の耳介の変形
もほとんど目立たない。ただし,生着が不確実
なことが欠点である。
97
69
70
新鮮顔面外傷における顕微鏡下異物除去
後天性指趾変形に対する骨延長の経験
陶山 淑子(すやま よしこ)、中山 敏、
福岡 晃平
柏 克彦(かしわ かつひこ)、小林 誠一郎、
樋口 浩文、本多 孝之
鳥取大学 医学部 附属病院 形成外科
岩手医科大学 医学部 形成外科
【目的】新鮮創の初期治療として、洗浄とクレ
ンジングが重要なことは周知の事実である。特
に、土砂などが付着した擦過傷・挫滅創では、
洗浄、ブラッシングによる異物除去が、感染と
外傷性刺青への予防として重要である。しかし、
ブラッシング後の創部を手術用顕微鏡で観察し
た場合、異物の遺残を多数認め、ブラッシング
のみでは不十分であることがわかる。顔面外傷
では、特に外傷性刺青が問題となってくる。わ
れわれは、新鮮顔面外傷に対し、顕微鏡下異物
除去を行い、良好な結果を得ているため、報告
する。【対象と方法】2005 年 4 月から、2009
年 10 月までに、顔面の挫滅創と土砂などの異
物迷入を認めた 5 例。年齢は 2 ∼ 37 歳 ( 中央
値 7 歳 )、全例女性。受傷機転は、交通事故 3 例、
転落 2 例、受傷部位は口唇部 2 例、頤部 1 例、
頬部 1 例、下顎部 1 例であった。異物は砂利が
3 例、泥 1 例、アスファルトが 1 例であった。
全身麻酔下 (4 例 )、あるいは局所麻酔下 (1 例 )
に十分な生食洗浄を行い、ブラッシング後、表
皮、真皮、皮下組織内を中心に、洗浄しながら
顕微鏡下にマイクロ摂子で異物除去を行った。
【結果】手術時間は 30 ∼ 160 分 ( 中央値 60 分 )
であった。1 例は、顔面神経側頭枝断裂に対し、
自家神経移植を行った。全例とも創部感染およ
び外傷性刺青は認めず、創部経過良好であった。
【考察】われわれが行っている顕微鏡下異物除
去は、ブラッシングにて除去できない微細な異
物を除去できること、異物を除去するための過
度なブラッシングによる周囲の組織損傷を最小
限にすることができる。顕微鏡下異物除去につ
いて、捕捉し得た限り、報告はなかった。現在、
外傷性刺青の削皮術やレーザー治療の有効性が
報告されているが、治療に難渋することが多い。
外傷性刺青は、予防が重要であり、顕微鏡下異
物除去は、手間と手術時間がかかるが、初期治
療として試みる価値があると考えた。
【はじめに】骨延長法は、四肢、頭蓋顎顔面の
骨変形の治療手技として広く用いられている
が、1970 年の Matev の報告以来、手指骨や足
趾骨の修復にも応用されている。われわれは、
創傷治癒後の後天性指趾変形に対し本法を用い
ているので報告する。 【方法・結果】症例は 3
例で、手術時年齢 20 から 70 歳(平均 49.3 歳)、
何れも女性であった。外傷による母指末節部の
欠損が 1 例、小児期の骨髄炎後の母趾短縮 1 例、
外傷性小指指尖部欠損1例である。延長部位は
それぞれ、母指基節骨、母趾中足骨、小指末節
骨であった。延長器具は前 2 者では ORTHOFIX
(小林メディカル)を、後者では澤泉らの報告
に従い Ilizarov Minifixator (イトー医科機械)
を用いた。総延長量は 8 ∼ 30mm であった。
結果として、何れの症例でも比較的満足の行く
骨形成が認められ、機能的・整容的改善が認め
られた。【考案】創傷治療の問題点として、そ
の治療の過程で骨欠損や変形癒合、長期的には
吸収や成長障害による骨変形を生じる場合があ
る。手指、足趾においても、外傷や炎症疾患な
どに起因する骨変形は稀でなく、機能的、整容
的観点から改善が望まれる。これらの修復には
骨切り術や骨移植などの手技も用いられるが、
骨延長法は第 4 趾短縮症などの先天性指趾疾患
で用いられており、これら後天性指趾変形に対
しても有用な治療選択肢の一つと考えられる。
本法の問題点として、仮骨形成不全、感染、
延長器の脱落などが挙げられ、骨周囲組織の状
況が仮骨形成に影響するもの可能性がある。こ
のため、本法を前提に創傷に治療法を選択する
こともありうる。創傷治療後の本法手技の進め
方についての考えを述べる。
98
71
72
肺塞栓症により死亡した高齢者全身熱傷の
1例
採皮創に対する自家戻し植皮法についての
検討
大矢 浩史(おおや ひろし)、大山 拓人、
高木 誠司、大慈弥 裕之
塚本 博和(つかもと ひろかず)1、
長尾 佳子 1、沖田 英久 2、平野 由美 1、
北澤 義彦 1、片平 次郎 1
福岡大学 形成外科
1 災害医療センター 形成外科
2 川口市立医療センター 形成外科
【はじめに】肺塞栓症は欧米では以前より頻度
の高い疾患であるが、本邦でも近年注目されて
いる。一旦発症すれば、急激な経過をたどり死
に至る事も多い。特に周術期合併症として発症
する事が多いが、それ以外でも長期臥床や長時
間の座位、肥満、妊娠等でも発症する。今回熱
傷で入院加療中に肺塞栓症を発症、短時間で心
肺停止状態になり死亡した症例を経験した。
【症
例】88 歳、女性。自宅にて熱湯の入った浴槽
に転落し熱傷受傷、当院救命救急センターに搬
送された。搬送時、GCS:15 でバイタルサイン
は安定していた。熱傷は体幹・左上下肢・右足
に認め、全熱傷面積は 37%(2 度 s:10%, 2 度
d:27%)で、BI:18.5,PBI:106.5 であった。経過:
第1病日:Baxter 法に従い輸液療法を行い、尿
量 0.5ml/kg/h を維持した。創部には軟膏を塗
布し、汚染予防に直腸カテーテルを留置した。
第4病日:bFGF 製剤と創傷被覆材を用いた創
処置を開始し、ベッドサイドでのリハビリテー
ションも開始した。第 10 病日:全身状態は安定。
上皮化の進行が観察され、包交も隔日となった。
第 17 病日:尿道・直腸カテーテルを抜去し、徐々
に ADL を上げていく方針とした。第 19 病日:
特に誘因なく、突然に呼吸困難感を訴えショッ
ク状態に陥り、その後心肺停止、蘇生を試みた
が心肺機能の維持が困難で死亡の経過をたどっ
た。血液データおよび胸腹部造影 CT からは肺
塞栓症が強く疑われた。【まとめ】今回の症例
では両下肢に熱傷があった事やベッドサイドな
がらリハビリテーションを実施していた事も
あった為、弾性ストッキング装着や間欠的空気
圧迫法による DVT 予防策がおろそかになって
しまった。その反省を踏まえ、我々の考える今
後の対策などにつき報告する。
【背景】 分層植皮術において,採皮部の上皮化
の遅延,疼痛はしばしば認められる.近年,特
に高齢者における採皮創の治癒遅延に対して,
採取した自家分層皮膚を採皮部に移植する 戻
し植皮法 が為され,その有用性が報告されて
いる.今回,われわれは分層植皮術を行った患
者に対し,採皮部の全範囲に計画的に 戻し植
皮法 を行ない,良好な結果を得たため若干の
文献的考察を加え報告する.【方法】 植皮患者
8 名を対象とし, 戻し植皮法 を施行した.患
部に移植する為に必要な採皮面積(A)より,
採皮部の全範囲に 戻し移植法 が行える採皮
面積(B)を算出した(※患部に 3 倍メッシュ
とする場合:B=1.0×A,シートとする場合:
B=2.0×A).12/1000inch 厚の分層皮膚を 3
倍メッシュとし採皮部に移植し,tie-over 固定,
又は弾性包帯で圧迫固定した.原則として術後
7 日目に植皮の生着を確認し,術後 1 ヶ月目,
3 ヶ月目,6 ヶ月目に戻し植皮部の色調,質感
を評価した.【結果】 全ての症例において採皮
部のほぼ全範囲に 戻し植皮法 が行われ,植
皮 は 生 着 し た.上 皮 化 日 数 は 9-15 日(平 均
11.6 日)で あ っ た.【考 察】 1988 年 に
R.Peeters らは,12/1000inch 厚の分層皮膚を 3
倍メッシュにした際に,分層皮膚の面積は平均
で 1.5 倍に伸展すると報告している.これを踏
まえ,更に,分層皮膚の採取面積の算出法を簡
便化するため,3 倍メッシュが 2 倍に伸展する
と仮定し,必要な分層皮膚を採取した結果,採
皮部の全範囲に 戻し植皮法 を施行可能であっ
た.【結語】 戻し植皮法 を採皮部全範囲に計
画的に行うことができた.上皮化日数は短縮さ
れ,疼痛は緩和される傾向にあった.
99
73
74
爪下血腫における受傷後日数と、爪の脱落
及び爪の伸び
当院での術後ドレッシングの工夫(ジョー
ンズ包帯を用いて)
田中 直樹(たなか なおき)
岩山 隆憲(いわやま たかのり)、
見目 和祟
慧明会貞松病院
三田市民病院 形成外科
【目的】爪下血腫に関して、フォローアップ日数、
受傷から爪の脱落までの日数、受傷後、どれく
らい新しい爪が伸びたかを検討した。
【方法】
対象は、2005年1月∼2009年12月の
5年間の当院の爪下血腫141例で、受傷日と
初診日、指(趾)名、フォローアップ日数(初
診∼終診)を、爪の脱落の記載のある16例で、
受傷から爪の脱落までの日数および爪下血腫の
大きさを、爪の伸び方の記載のある15例で、
受傷後日数と新しい爪の全長に対する割合(%)
を調べた。【結果】フォローアップ日数は、最
短0日(初診日のみ)38 例 (27%)、1 日∼ 10
日 35 例 (25%)、11 ∼ 20 日 21 例 (15%)、21 ∼
30 日 9 例 (6%)、最長 207 日などで、平均 26 日。
ゆび別では、拇指 16、示指 24、中指 22、環指
13、小指 12、第1趾 43、第 2 趾 4、第 3 趾 5、
第 4 趾 2、第 5 趾 0 例。爪の脱落は、受傷から、
最短 11 日、最長 95 日、平均 45.9 日。脱落例
のうち、爪下血腫の大きさが図示されていたの
は 15 例で、爪郭裂創の 1 例と末節骨骨折のあ
る 1 例を除く 13 例で血腫は爪の面積の 1/2 以
上あった。爪の伸び方は、飛び離れた 1 例を除
く 14 例で、受傷後の日数を x、爪の全長に対
する割合 (%) を y として、回帰直線を求めると、
y=0.9×(x-81.21)+58.57 となり、爪が 50%伸び
るのに受傷後 72 日、100% 伸びるのに 128 日
要することになる。【まとめ】爪下血腫では痛
みや滲出液の停止後、フォローアップが短い。
後日、爪の脱落を主訴に来院する例があること
から、当初から、爪の脱落や爪の伸び方を予測
した一貫した治療が望ましい。爪下血腫症例に
対し、爪の脱落までの日数、伸び方を調べた。
100
【目的】一般的に、形成外科手術後は創の安静
を保つため適度な固定と圧迫が必要であり、そ
の方法や手技には熟練と経験を要する場合が多
い。当院では形成外科領域における術後ドレッ
シングとして整形外科の四肢手術術後や獣医領
域で術後ドレッシングに使用されているジョー
ンズ包帯を使用している。その術後経過及びド
レッシングの症例と工夫点を提示し、文献的考
察を含めて報告する。【方法】形成外科手術後
にガーゼの代わりにジョーンズ包帯を固定圧迫
用のドレッシング材として使用し従来のガーゼ
ドレッシングとの比較検討を行う。【考察】創
のドレッシングの際、我々はレイヤリング(層
構造)が重要と考えそれを意識して行っている。
機能の異なる素材を適切に重ねることで相乗効
果が期待できる。逆に不適切な使用では高機能
素材も本来の機能を発揮できなくなると考え
る。ま た、ド レ ッ シ ン グ を 3 つ の レ イ ヤ ー
(Base, Mid, Outer)に分けて、ジョーンズ包帯
を適切なレイヤーに使用することも必要であ
る。【ま と め】ジ ョ ー ン ズ 包 帯 は そ の 性 質 上、
固定圧迫に優れており、手技やドレッシング交
換の時間や不快感(蒸れ)等の点からガーゼド
レッシングの代用となる可能性が考えられた。
今後もさらにジョーンズ包帯を使用してドレッ
シングを行う症例を増やし検討が必要である。
75
76
Wound bed preparation と し て の 蜂 蜜 の
位置づけ
豚皮を用いた皮膚縫合スキルトレーニング
権東 容秀(ごんどう まさひで)、松村 一、
今井 龍太郎、小宮 貴子、小野 沙耶香、
柴田 大、渡辺 克益
三川 信之(みつかわ のぶゆき)
東京医科大学病院 形成外科
昭和大学 医学部 形成外科
今回我々は抗菌性を有するとされる蜂蜜を主に
critical colonization の 創 に 使 用 し wound bed
preparation に非常に有効であったので若干の
文献的考察を踏まえて報告する。[ 対象 ] 症例は
A: 頭部術後感染創、B: 背部術後感染創、C: 前胸
部熱傷術後感染創、D: 全身熱傷後術後感染創、
E: 両下肢熱傷術後感染創、F: 顔面新鮮熱傷の6
名
(30 歳∼ 76 歳:男性3名:女性3名)
であった。
治療期間は 24 ∼ 306 日で、創出現から蜂蜜治
療開始までの期間は 8 ∼ 55 日間(平均 28.2 日
間 1 例不明)蜂蜜使用期間は 7 ∼ 57 日間(平
均 20.0 日間)であった。蜂蜜開始時の創部培養
で MRSA 4 例、MRSE 1 例、S.aureus 1 例
であった。[ 結果 ]ABDE の 4 例はいずれも難治
性の糜爛または潰瘍を呈しており、BCE では貧
血性、浮腫性の不良肉芽を呈し滲出液が多かっ
た。これらは Critical colonization と診断した。
F は SDB ∼ DDB で一部壊死を伴った状態であっ
た。すべての症例で蜂蜜使用後に滲出の量が減
少、不良肉芽であった創は良好な肉芽となり、
biofilm の存在も消失した。A は遠方の外来患者
であった為、
閉鎖まで蜂蜜を使用した。B は縫縮、
CE は植皮で創を閉鎖した。D は転院、F は通常
の軟膏処置に変更となり閉鎖した。[ 考察 ] 蜂蜜
は a : 高浸透圧により組織から水分を吸収し細
菌 の 増 殖 を 抑 え る b : 蜂 蜜 自 体 が hydroxy
peroxide を含み殺菌作用を呈す c: PH が酸性
であり局所の微小血管を拡張させ肉芽形成に促
進的に働く d:体温で暖まると溶けやすく適度
な湿潤環境を作る等の作用により創治癒に有効
であるといわれている。今回の経験でも不良肉
芽を良性肉芽にかえ、滲出液をコントロールで
きた。しかしながらコントロール後の上皮化ま
では時間がかかった印象があり、転院例以外は
他の薬剤に変更もしくは外科的治療により創を
閉鎖した。このことより蜂蜜は biofilm を形成
するような critical colonization の創に対しての
wound bed preparation に有効であると考える。
101
【目的】2004 年より新臨床研修医制度が導入さ
れたが、外科系、特に形成外科を志す研修医に
とって、皮膚縫合のスキルアップは不可欠であ
る。今回われわれは、皮膚縫合のトレーニング
に豚皮を用いる試みを行い、比較的有用であっ
たので報告する。【対象および方法】トレーニ
ングの対象は外科系、特に形成外科を志す研修
医、さらには若い形成外科医である。使用する
豚皮は精肉業者から購入し、毛は除去しておく。
実際のトレーニングを行う前まで豚皮を冷蔵し
ておき、使用直前には水分を除き、消臭スプレー
で脱臭する。そして人体に用いるものと同様の
持針器、鑷子、針糸を好みで選択して使用し、
真皮縫合を含む皮膚縫合や局所皮弁作成の練
習、トレーニングを行う。豚皮は原則的に使い
捨てとする。【結果】形成外科をローテートし
た研修医数名に本トレーニング法を試みたが、
ほぼ全員が違和感なく練習に励み、豚皮はト
レーニングモデルとして有用であったと評価し
た。【考察】臨床におけるスキルトレーニング
方法は、実際に動物を使用する動物実験法と動
物の代わりのものを使う動物代替法、そして特
殊なものとして屍体の使用法に大別される。現
在、多くは代替法がとられており、皮膚縫合の
トレーニングに関しても、真皮層と脂肪層に分
かれ生体に近い感触を実現した縫合パッドを含
む縫合練習キットが市販されている。一方、豚
は、解剖・生理学的に人との類似性が高く、医
学の実験動物として古くから利用されてきた。
今回、屍体豚の皮を研修医の皮膚縫合のトレー
ニングに用いる試みを試行したが、形態学的に
人との類似性が高いため、より臨床に近く、ス
キルアップには非常に有効であった。練習前、
豚皮の脱毛や消臭などの処置と手間を要する欠
点はあるが、安価で易入手可能な豚皮は、研修
医や形成外科を志す若い外科医にとって、皮膚
縫合の有用なトレーニング材料であると思われ
た。
77
78
小切開による皮下良性腫瘍摘出術の工夫
当院の創傷管理における形成外科医の役割
舟山 恵美(ふなやま えみ)1、皆川 英彦 2、
小山 明彦 1、池田 正起 1、杉野 まり子 1、
山本 有平 1
石井 義輝(いしい よしてる)、多田 英行、
増田 大介
1 北海道大学 形成外科
2 北海道がんセンター
健和会 大手町病院 形成外科
皮下良性腫瘍(粉瘤、脂肪腫など)は日常診療
で最も遭遇する疾患であり、形成外科以外の診
療科においても治療が行われることが多い。良
性疾患であるからこそ、これらの治療において
は「きれいに縫合する」だけではなく、「傷を
なるべく残さない(傷をつけない)」治療法が
形成外科医には求められている。われわれは、
紛瘤については、パンチ切開より従来の摘出法
と 同 等 の 手 技 を 行 い 得 る modified punch
incision technique を行っている。手術瘢痕も ニ
キビ痕 程度の最小のものにとどまり、良好な
結 果 を 得 て い る。ま た、脂 肪 腫 に つ い て は
squeeze technique による摘出を主に行ってお
り、とくに前額部の脂肪腫については被髪部よ
りラスパトリーを用いて、骨膜上に approach
を行い、前額部皮膚に手術瘢痕を残さない工夫
をしている。上記の手術法の工夫などを報告す
る。
102
【目的】当院は人口 100 万人の北九州市の都心
部に位置し、1 次から 3 次までの救急医療を行
うと同時に慢性期病床も有するケア・ミックス
型施設である。当院における創傷管理について
紹介し、創傷を取り扱う形成外科医の役割につ
いて若干の考察を加えて報告する。【方法】急
性創傷管理:初療から形成外科医の診療を必要
とする場合は、オンコール医師呼び出しとして
いる。また、これ以外の場合も通院・入院を問
わず、形成外科対診を行うことを原則としてい
る。慢性創傷管理:褥瘡は、発生場所(院内発
生か持ち込みか)・重症度に関わりなく全例を
管理している。さらに、最近では病床構成を生
かして市内各施設の循環器科・血管外科からの
PADに伴う難治性創傷患者の受け入れを積極
的に進めている。教育・研修:研修医への講義
および実習は形成外科医が担当、実際の処置に
問題がある場合はフィードバックを行うように
している。また、2 ∼ 3 ヶ月間褥瘡回診に陪席
することで知識習得ができるようにしている。
【結果】現在、急性創傷患者 1000 人/年、褥瘡
患者 400 人/年程度を管理しているが、管理責
任が明確化されたことにより、治療成績向上と
トラブル減少につながった。また、治療法の整
理に伴って材料・薬剤コストの削減もできた。
さらに、初療の質向上を図ることができた。一
方で、管理件数増加に伴い形成外科の診療が圧
迫される、フォローの部分の教育が十分できて
いないといった問題が出ている。【考察】「創傷
管理」は急性期・慢性期に関わらず、医療の中
で一定のウエイトを占めているが、系統だった
管理がされている施設はまだ多くない。施設全
体で適切な管理を行うことにより、治療成績が
向上するばかりでなくコスト削減といった経営
上のメリットも出てくる。創傷管理の専門家で
ある形成外科医は、今後この領域に関して非常
に重要な役割を担うべく活動することが重要と
考えられた。
79
80
災害医療における形成外科の役割
当院における NPWT 使用症例の検討
樋口 慎一(ひぐち しんいち)
石原 康裕(いしはら やすひろ)、上村 哲司、
苅部 大輔、増本 和之、佐竹 義泰、
伊藤 奈央
東京西徳洲会病院 形成外科
佐賀大学 医学部 附属病院 形成外科
2010 年 1 月 12 日、ハイチを震度 7 の地震が襲っ
た。日本から数多くの公的、私的な災害医療支
援団体が組織されハイチへ派遣された。発表者
は徳州会医療救援隊(TMAT)の一員として 1
月 27 日から 30 日までハイチ地震災害の医療支
援に参加した。所属したチームは一般外科医 2
人、麻酔科医 1 人、形成外科医 1 人、看護士 2 人、
事務 2 人、栄養士 1 人から構成されており、
TMAT の第 3 陣として災害医療活動を行った。
先行する第 2 陣から業務を引き継ぎ 1 月 27 日
からハイチの首都であるポルトープランスにあ
るハイチコミュニティー病院で医療活動を開始
した。4 日間の活動で 250 人の外来患者を診察
した。外来患者の多くは体表の損傷を有し、処
置が必要であった。期間内に全身麻酔下に全層
植皮術 2 件、デブリードマン 2 件、皮膚縫合術
1 件を行った。多くの患者が植皮術を必要とし
ていたが、我々及び同じ院内で活動していた他
の医療チームもデルマトームを所有しておらず
手術を行うことができなかった。諸外国の医療
チームには形成外科医、麻酔科医が所属してい
なかったため形成外科手術、麻酔の依頼を受け
ることもあった。今回、現地入りした時点で震
災の発生より2週間が経過していたが、未治療
の患者もおり、中には植皮などの形成外科手術
が必要な患者も数多くいた。発災直後には生命
予後にかかわる緊急性の高い病態や、骨折患者
に対する治療が優先された。TMAT においても、
救急医や整形外科医が派遣され、これらの病態
に対する治療が行われたと考えられるが、熱傷
や、広範な皮膚軟部組織欠損の患者は適切な外
科的治療を受けることができないままであっ
た。災害医療現場では形成外科の需要が非常に
大きいと感じられた。形成外科医の派遣時期、
道具の整備、災害現場への形成外科チーム派遣
の組織作りなどをさらに検討することによっ
て、より貢献度の高い協力を行っていきたいと
考えている。
目的・背景:世界的に標準的な治療となってい
る 陰 圧 閉 鎖 療 法(Negative Pressure Wound
Therapy、以下 NPWT)は、わが国でも今年度
より保険収載され、今後さらに適応が広まって
いくと考えられる。現在、わが国での NPWT の
実際としては、それぞれの施設がホームメイド
で器具を作成して行っている。当院でも手術洗
浄用滅菌スポンジを多孔質とし、吸引チューブ
に加え間欠的洗浄のためのチューブを加えた洗
浄機能付加の陰圧閉鎖装置を作成、使用してき
たが、当院における NPWT 使用症例は年々増加
傾向にあり、2009 年 12 月までに 50 症例超と
なったため、検討を加え報告する。
対象と方法:2007 年4月∼ 2009 年 12 月期間
内に当院で創傷治療課程において NPWT を行っ
た約 50 症例について、対象疾患、部位、使用期間、
創治癒までの期間、要した再建方法などの項目
について検討した。
考察:初期には難治性潰瘍や虚血肢の創部など
の重傷例の使用に限られていた NPWT が、作成
するスタッフ、管理する病棟スタッフの習熟に
より、サイズの小さな病変、植皮部の固定など
適応症例、部位は近年、より多様化する傾向に
あり、創傷管理、入院期間の短縮の上で有用で
あった。NPWT に起因する明らかな有害事象は
認めなかった。
103
81
82
陰圧閉鎖療法を用いた糖尿病性壊疽・感染
に対する縮小手術の試み
骨や腱露出を伴う難治性潰瘍に対する創内
持続陰圧洗浄療法の有用性
小浦場 祥夫(こうらば さちお)、
杉野 まり子、内山 英祐、竹野 巨一、
本田 耕一
井野 康(いの こう)1、奥田 希和子 2、
力丸 英明 2、清川 兼輔 2
時計台記念病院 形成外科・創傷治療センター
1 国立病院機構九州医療センター形成外科
2 久留米大学形成外科・顎顔面外科
【背景】足の糖尿病性感染・壊疽ではしばしば
腱を介し感染拡大を生じ、深部軟部組織内に膿
瘍・壊疽を生じる。通常治療には切開排膿・デ
ブリードマンを行うが、切開の範囲・長さの設
定が不適切であったり、末梢循環不全症例では
手術侵襲による血流ネットワークの破壊により
壊疽の進行を誘発しうる。また、足底加重部の
手術創・瘢痕が、将来の足のトラブルの原因と
なることも少なくない。【目的】適切かつ最小
限の手術侵襲・感染制御により糖尿病性壊疽の
加療を行い、足の機能に与えるダメージを減少
させる。【方法】糖尿病性壊疽・潰瘍や骨髄炎
から腱を介して軟部組織内に感染が拡大した症
例を対象とした。術前に MRI などによる画像診
断で軟部組織・骨の炎症・感染を評価し、中足
部に広範な感染巣が存在する症例は除外した。
手術に際して皮切は壊疽・潰瘍部のデブリード
マンのみとし、そこから深部の壊疽・感染組織
のデブリードマン、感染した骨・腱の切除・抜
去を行った。傷は閉鎖せず、解放のままデブリー
ドマン部に J-VAC ドレーンを留置し、ポリウレ
タンフィルムにて創を密閉し、陰圧閉鎖療法を
行った。スポンジは創の状況に応じて使う場合
と 使 わ な い 場 合 と 分 け た。肉 芽 形 成 に よ り
dead space が埋まったところで陰圧閉鎖療法
を中止し、植皮・断端形成もしくは保存的加療
にて潰瘍をち治療し、必要に応じてフットウエ
アの調整を行った。また、PAD による末梢循環
不全が存在する症例ではタイミングを見計らっ
て血管内治療による血行再建を行った。
【成績】
手術手技がやや煩雑となるが、確実に壊死・感
染組織のデブリードマンが行え、陰圧閉鎖療法
による感染のコントロールが可能であれ足の糖
尿病性感染・壊疽の縮小手術は問題なく達成さ
れると思われた。足の機能・潰瘍再発予防に関
する効果は今後長期間の経過観察により判断す
る必要があると思われる。代表的な症例を供覧
する。
104
【目的】骨や腱露出を伴う難治性潰瘍に対して
は、通常 flap を用いた再建を要する。今回の目
的は、我々が開発した創内持続陰圧洗浄療法を
行うことで flap を用いずに治癒させることにあ
る。
【方法】創内を十分にデブリードマンした後、
骨露出部については皮質骨の削除と人工真皮の
貼付を行う。必要であれば、露出した腱の上に
も人工真皮を貼付する。次に、創の形に合わせ
てスポンジをトリミングし、創面に密着させる。
数カ所に側孔をあけたチューブ 2 本をスポンジ
内に挿入し、ポリエチレンフィルムでカバーし
て、創内を完全に密閉腔とする。一方のチュー
ブに生理食塩水のボトルを、もう一方のチュー
ブに持続吸引器を連結し、創内の持続陰圧洗浄
を行う。本法を数週間施行後、骨や腱露出部を
含めて創面全体が良性肉芽で覆われた段階で植
皮を行い創を閉鎖させる。【結果】5 例全例で創
面全体の感染の沈静化と良性肉芽の増生が得ら
れ、flap を用いず植皮のみで創閉鎖が得られた。
【考察】本法は、患者に対しては低侵襲で、医
療従事者に対しては手技が簡便である上労力と
コストの低い治療法であり、あらゆる施設での
治療が可能なことより極めて有用な治療法であ
ると考えられる。また、持続洗浄を同時に行う
ことで感染創内での人工物(人工真皮)の使用
を可能としたことは、従来の治療法の概念を大
きく変え得ると考えられる。
83
84
糖尿病性足病変症例における母趾切断後の
隣接趾変形についての検討
下肢難治性潰瘍患者における人格特性調査
森脇 綾(もりわき あや)1、梶田 智 1、
辻 依子 1、寺師 浩人 2、田原 真也 2、
北野 育郎 3
木下 幹雄(きのした みきお)、大浦 紀彦、
倉地 功、河内 司、多久嶋 亮彦、
波利井 清紀
1 新須磨病院 形成外科・創傷治療センター
2 神戸大学大学院医学研究科 形成外科学
3 新須磨病院 外科・創傷治療センター
杏林大学 形成外科
【目的】糖尿病性足病変は足底アーチの崩れか
ら母趾 MTP 関節底側の荷重部潰瘍を形成しや
すい。同部位は、皮下組織が薄く、深達性とな
りやすい。そのため容易に母趾 MTP 関節や中
足骨に感染が及び、骨髄炎を合併すると母趾切
断が必要となる例がある。母趾は歩行機能、足
部の筋・腱のバランスにおいて重要な役割を果
たす為、母趾を切断すると残存する隣接趾に
claw toe などの変形をきたすことが多い。変形
した隣接趾は潰瘍を形成しやすく、切断に至る
こともある。母趾切断後の隣接趾の変形・潰瘍
形成について検討し、報告する。【対象と方法】
当院で母趾切断を施行した 22 症例を対象とし
た。切断部位、隣接趾変形、潰瘍形成、フット
ケア等に関して検討を行った。
【結果】22 症例中、
15 例に隣接趾変形を認め
(claw toe 変形が 7 例、
hammer toe 変形が 4 例、趾列の内側偏位が 7
例)、内 6 例に隣接趾の潰瘍を形成した。15 例中、
MTP 関節を含めた切断部位は 10 例であった。
隣接趾に変形をきたさなかった 7 例に潰瘍形成
は認めず、内 6 例が MTP 関節を温存する切断
部位であった。全例に外来で定期的なフットケ
アと装具の調節を行った。【考察】母趾切断後
は残存する隣接趾変形から潰瘍形成する可能性
が高い。特に MTP 関節を含む母趾切断は足底
アーチの崩れから隣接趾変形をきたす可能性が
高いと考えられた。母趾切断後は長期的な経過
観察と隣接趾の変形予防に対するフットケア、
適したフットウェアの作製と調節が重要と考え
られた。
105
【目的】糖尿病性あるいは動脈硬化性潰瘍を有
する患者は、長期にわたる糖尿病治療や頻繁な
血液透析を受けていることが多く、強いストレ
ス環境に晒されている可能性が高い。また、長
期に存在する創傷への漠然とした健康不安は計
り知れない。このような心理状態の中で、医療
者が患者の協力を得られず診療上多大な困難を
経験することは少なくない。良好な医療者‐患
者関係を構築し、よりよい治療成果を達成する
ためには、患者の心理的背景を理解し、状況に
合わせた支援を行うことが重要である。我々は、
NEO-FFI を導入して患者の人格特性を評価し、
若干の見識を得たため報告する。【方法】2008
年 7 月∼ 2010 年 3 月に当科へ入院し治療を受
けた糖尿病性または動脈硬化性潰瘍患者 25 例
を対象とした。各患者に対し NEO-FFI による調
査を行い、患者の基礎疾患や創傷の状態を含め
て記録した。得られた性格特性のスコア平均値
を健常成人群と統計学的に比較検討した。【成
績】性 格 特 性 の 平 均 値 は 神 経 症 傾 向
(N)23.0±7.1、外 向 性 (E)25.7±6.9、開 放 性
(O)24.3±6.0、調 和 性 (A)31.4±3.5、誠 実 性
(C)26.6±6.7 であった。健常成人群との Z 検定
による比較では、下腿難治性潰瘍を有する患者
は開放性 (O) および誠実性 (C) のスコアが有意
に低下していた。【結論】NEO-FFI は人格を 5 因
子に分けて数値化することで人格傾向を解析す
る検査法である。下腿難治性潰瘍患者の人格傾
向は一般成人と比較して開放性 (O) および誠実
性 (C) が有意に低い傾向が認められた。開放性
(O) が低い人は行動が保守的であり感情的なサ
ポートを好む傾向がある。一方、誠実性 (C) が
低い人は忍耐力がなく、快楽主義的な傾向とな
る。下腿潰瘍患者を診療するにあたっては、新
奇な治療法は避け、常識的な指導を行うことが
必要である。同時に、患者が自分自身の問題を
直視し、継続的に治療に取り組めるよう粘り強
く励ますことが重要であると考えられた。
85
86
血行再建術後の感染拡大により大切断に
至った CLI 症例を振り返って ∼患者因子
の検討∼
足を救うために ∼創傷治療センターでの
試み∼
西尾 祐美(にしお ゆうみ)1、榊原 俊介 1,2、
寺師 浩人 1、橋川 和信 1、田原 真也 1
綾部 忍(あやべ しのぶ)、森本 訓行、
吉本 聖
1 神戸大学大学院 医学研究科 形成外科学
2 神戸大学大学院 医学研究科 美容医科学
八尾徳洲会総合病院 形成外科
【目 的】重 症 下 肢 虚 血(critical limb ischemia:
CLI)症例において血行再建後に感染が拡大し、
術前で計画した範囲よりも大きな範囲の切断を
余儀なくされる場合がある。過去の症例を振り
返り、大切断に至った要因について検討を行っ
た。
【方法と対象】2004 年から 2009 年までに当院
で治療を行った CLI 症例 13 例を対象とした。
年齢・性別,糖尿病の罹患,血糖コントロール
の方法,慢性腎不全,下肢切断歴,血行再建前
後と局所手術後早期の CRP 値,局所手術前の
栄養状態 Alb 値について検討を行った。
【結果】CLI 症例 13 例の内、血行再建術後感染
を引き起こし、大切断を余儀なくされた症例は
3 例(23.1%)であった。全例が糖尿病に罹患
しインスリン導入中であった。また 3 例とも慢
性腎不全の状態であり、3 例中 2 例が反対側の
下肢切断歴があった。さらに、血行再建後より
局所手術後の CRP 値が上昇傾向であり、術前
の Alb 値が低値であった。
【考察】血行再建後に感染が拡大し、大切断に
至るかどうかは患者因子として細小血管障害の
程度および血行再建前後の感染のコントロール
が鍵となる。今回我々が振り返った CLI 症例は
すべてインスリンを導入しなければならないほ
ど糖尿病が悪化した時期があった。また糖尿病
が進行し腎不全の状態を来しており、全身の細
小血管障害の進行が疑われる。そのため、創部
の血流が不安定であり局所の血流が悪く創傷遅
延を引き起こした可能性が考えられる。感染に
関しては血行再建後より術後早期の炎症反応が
高値である場合はデブリードマンが不十分であ
ることを示唆しており、さらに追加手術を検討
する必要があると考える。
106
【目 的】CLI(Critical Limb Ischemia:重 症 下 肢
虚 血)の 治 療 と し て は PTA(Percutaneous
Transluminal Angioplasty:経皮的血管形成術)
や bypass 術などで代表される血行再建術があ
るが、症例により意見が分かれる部分も多いの
が現状である。当院では平成 21 年 12 月より形
成外科が中心となり、創傷治療センターを開設
した。足を救うために、当センターでの試みに
ついて報告する。【方法】ABI や SPP など非侵襲
的な検査を行った後、循環器内科で血管造影を
行う。PTA 可能であればそのまま PTA を行う。
PTA 不 可 能 も し く は 不 成 功 に 終 わ っ た 場 合、
bypass 術につき検討する。膝上病変であれば心
臓血管外科で人工血管を用いた bypass 術を、
膝下病変であれば形成外科で自家静脈を使用し
た distal bypass 術を行う。bypass 術困難な場
合は LDL アフェレーシスなどの保存的治療もし
くは切断術などを検討する。【考察】TASC2 で
は動脈閉塞部位・範囲により血管内治療もしく
は bypass 術が選択されている。しかし近年では、
血管内治療の成績が向上してきており、一般的
には適応も拡大されているため、まずは血管内
治療の可否を判断している。血管内治療不適の
場合には、bypass 術の適応となる。循環器内科
医は血管内治療が不成功に終わった場合でも最
終的に bypass 術で救肢できる可能性があると
いう安心感から、以前より積極的な治療を行え
るようになった。bypass 術でも膝上病変では腋
窩 - 大腿動脈 bypass 術などの非解剖学的バイパ
ス術が適応となる場合があり、心臓血管外科で
治療を行うのが望ましいと考えられる。膝下病
変に対する distal bypass 術は創傷治療を担う形
成外科が angiosome を考慮して行うことによ
り良好な結果を得ることができると考えられ
る。
87
88
下肢救済を目的としたチーム医療による創
傷・フットケア外来
当院における下腿トラブルを主訴として受
診した患者の統計学的検討
堀内 勝己(ほりうち かつみ)、川嶋 邦裕、
七戸 龍司、藤田 宗純、吉田 哲憲
天方 將人(あまかた まさと)1、平林 慎一 2、
本多 芳英 3
市立札幌病院 形成外科
1 板橋中央総合病院 形成外科
2 帝京大学医学部付属病院 形成・口腔顎顔
面外科
3 板橋中央総合病院 皮膚科
【目的】当院では,以前より形成外科が中心と
なり糖尿病性足病変や重症下肢虚血肢の治療に
取り組んできた。そして,2008 年 2 月,下肢
救済を目的に皮膚・排泄ケア認定看護師,糖尿
病認定看護師,形成外科外来看護師,義肢装具
士とともに創傷・フットケア外来を始めた。外
来開設後の 1 年間に受診した患者の検討を行う
とともに,当外来での取り組みについて報告す
る。
【対 象 と 方 法】2008 年 2 月 の 開 設 以 降,
2009 年 2 月までに創傷・フットケア外来を受
診した患者数は 101 名で,足関係の患者は 82
名であった。この内,
潰瘍,
壊疽の患者は 52 名で,
これらの患者を,糖尿病を有し透析を行ってい
ない群(A 群)
,糖尿病を有し透析を行っている
群(B 群)
,糖尿病がなく透析を行っていない群
(C 群)
,
糖尿病がなく透析を行っている群(D 群)
の 4 群に分類した。
【結果】患者数は A 群 22 人,
B 群 19 人,C 群 6 人,D 群 5 人であった。切断
術を施行した症例は 23 例で,
A 群 12 例,
B 群 9 例,
C 群 1 例,D 群 1 例であった。切断症例の末梢
動脈疾患の合併頻度は,A 群 42%,B 群 89%,
C 群 100%,D 群 100% であった。また,大切
断となった症例は,
A 群 1 例,
B 群 5 例,
C 群 1 例,
D 群 0 例の 7 例で,いずれも末梢動脈疾患を有
する症例であった。
【考察】大切断回避のため
には,末梢動脈疾患のへの対策が必要である。
その対策としては,患者への教育を通しての予
防と早期発見に心がけることが重要である。ま
た,切断術を施行された患者は再切断となる可
能性が高い傾向にあり,その原因は,患者の疾
患に対する知識不足と外来通院を途中で止めて
しまうことにある。下肢救済のためには医師間
の連携はもちろんのこと,看護師,義肢装具士,
栄養士などとの連携も重要である。創傷・フッ
トケア外来においては医師の診察のみではな
く,看護師がそれぞれの専門性を活かし,時間
をかけて患者への指導や教育,フットケアを行
い,潰瘍の再発,予防に取り組んでいる。
107
<目的>高齢社会の到来や生活様式の変化、食
文化の欧米化などに伴い、いわゆる生活習慣病
患者の増加が大きな社会問題となっている。そ
れに伴い末梢動脈性疾患や糖尿病性足壊疽な
ど、下腿にトラブルを抱える患者も増加の一途
を辿っている。大学病院や特定機能病院にもこ
れらの患者が紹介されてくるが、より重症な
ケースである傾向がある。また、診療科も縦割
りのため、軽症例は皮膚科で治療され、手術が
必要な重症例のみ形成外科へコンサルトされる
場合も多くあり、足にトラブルをかかえる患者
の全体像を把握することは難しい。そこで今回
われわれは、より日常臨床的な統計を算出する
ため、地域の中核病院(病床数 579 床)である
板橋中央総合病院(以下、当院と略す)におけ
る下腿トラブルの統計学的検討を行ったので、
若干の文献的考察を加えて報告する。なお当院
では形成外科と皮膚科は常に協力して診療を
行っており、手術が必要な症例に関しては皮膚
科による診断から形成外科による手術まで一貫
した治療を行っている。<対象と方法>2009 年
4 月から 2010 年 3 月までの 1 年間に、下腿ト
ラブルを主訴に当院を受診した新規患者を対象
とし、診療録、臨床写真、臨床検査、画像所見
などから原疾患、既往歴、治療経過を分析した。
なお下腿の定義は、膝より末梢部位とした。<
結果>下腿トラブルの原因としては、胼胝や鶏
眼、陥入爪といった軽度なものから下腿・足趾
壊死に至るまで様々なものがあった。糖尿病や
末梢動脈性疾患などを基礎に持つ症例では、よ
り重症であるケースが多く、これまでの報告と
一致した。特に糖尿病により温痛覚が低下した
症例では、軽微な外傷から蜂窩織炎、骨髄炎へ
と進行し、足趾切断に至るケースを複数例経験
した。<結論>普段の生活に身近な中核病院に
おいても、日常診療における下腿トラブルの割
合は高く、時には診療科を越えた集学的な治療
が必要となる場合がある。
89
90
外傷後、膝関節部の MRSA 骨髄炎に至った
2 症例の検討
創内持続陰圧洗浄療法にて治癒し得た重症
骨盤骨折術後MRSA感染症例
中川 浩志(なかがわ ひろし)、小林 一夫、
徳永 和代、尾崎 絵美、前信 友梨、
石野 憲太郎
吉田 聖(よしだ せい)1、清川 兼輔 2、
力丸 英明 2、渡部 功一 2
愛媛県立中央病院 形成外科
1 独立法人国立病院機構九州がんセンター
形成外科
2 久留米大学病院 形成外科・顎顔面外科
【はじめに】膝関節周囲は外傷を受けやすい場
所で整形外科等、他科で治療されることが多い。
その際、骨露出が起こり MRSA 骨髄炎を併発し
当科に紹介されることもある。今回、われわれ
は膝関節周囲の外傷を他科で治療され MRSA 骨
髄炎に陥った後、当科に紹介となった 2 症例を
経験した。十分なデブリードマンと血行の良好
な皮弁で被覆することにより良好な結果を得た
ので報告する。
【症例1】76 歳、男性。焚き火
中に意識を失い転倒し、左膝に 3 度熱傷を受傷。
近医で局所療法を続けたが、悪化するため当院
皮 膚 科 に 入 院 と な っ た。し か し、遷 延 す る
MRSA 骨髄炎により膝関節切断を勧められた
が、山間過疎地での生活のため患肢温存を希望
し当科紹介となった。手術は関節固定、肉芽組
織のデブリードマンと遊離広背筋皮弁で被覆し
た。現在は自宅前の坂道を4点歩行器で歩行し、
自立した生活を送っている。
【症例2】39 歳、
男性。交通事故で脛骨近位端の開放骨折に対し
て、受傷 2 週間目に近医整形外科でプレート固
定を受けるも術後 2 ヶ月でプレートが露出し
た。その後プレートを除去するも MRSA 感染を
繰り返し、受傷後 1 年で当院紹介となった。手
術は脛骨近位端の腐骨切除と MRSA 抗菌性セメ
ントビーズの充填、腓腹筋弁による死腔の充填
と植皮術を施行した。現在では感染は制御され、
膝は伸展位であるが装具なしで歩行可能であ
る。
【考察】MRSA 骨髄炎が難治性である理由は、
抗菌剤が十分行きわたらず、食菌作用を示す非
特異的免疫機構が十分に作用しないためと考え
られている。治療として、血行のない腐骨や組
織のデブリードマン行う。死腔をなくし抗菌薬
濃度を高めると同時に血行のある組織を持ち込
み、非特異的免疫機構を改善することが重要で
あるとされている。膝関節部は外傷により骨露
出、膝関節に及ぶことも少なくないが、十分な
デブリードマンと血行の良好な皮弁で被覆する
ことが必要であると考える。
108
【目的】創内持続陰圧洗浄療法は、創内を 24 時
間持続的に洗浄することで感染を沈静化させる
持続洗浄療法と、創面に陰圧をかけることで創
面の活性化と創の収縮および創内に貯留する浸
出液の排泄を図る閉鎖吸引療法の 2 つの方法を
同時に行う治療法である。今回我々は骨盤骨折
術後、プレート留置部にMRSA感染症を生じ
た症例に対し、本法を施行し治癒しえた症例を
経験したので報告する。【症例】19歳女性で、
自転車運転中10tトラックに巻き込まれ不安
定型骨盤骨折及び会陰部裂傷を受傷したため、
当院救命センターに搬送された。当日創外固定
術を施行され、第3病日にスクリューによる両
側仙腸関節固定術およびプレートによる右腸骨
固定術が施行された。第10病日に右腸骨接合
部及び左鼡径部に膿の貯留認め、MRSA が検出
された為加療目的にて当科紹介となった。全身
麻酔下に右腸骨プレート部の創を広く開放しデ
ブリードマン後、プレートを温存したままで創
内陰圧持続洗浄療法を開始した。感染は徐々に
鎮静化し、骨癒合が認められた第 42 病日にプ
レートを抜去した。その後も本法を続け良性肉
芽により骨露出が消失した時点で分層植皮を行
い第 123 病日に完全上皮化した。治癒後半年以
上あけて 3 回の瘢痕修正術を施行した。また、
脚長の差が生じたため、右大腿骨延長術が当院
整形外科にて施行された。受傷後 3 年経過した
現在歩行や階段昇降など日常生活に支障なく、
また整容面にもほぼ満足する結果が得られてい
る。【考察】骨盤骨折プレート留置部にMRS
A感染が生じると、感染の制御が困難となり、
異物であるプレートの抜去を余儀なくされる。
その結果骨の癒合不全が生じ、著しい機能障害
を引き起こす。本症例では創内持続陰圧洗浄療
法により局所感染を制御しつつ骨の癒合が完了
するまでプレートを温存できた。さらに、プレー
ト抜去後も本法を継続することで創を治癒させ
ることができたと考えられる。
91
92
MRSA 定着創の周術期抗生剤の選択につい
て
当科で加療した壊死性軟部組織感染症1 6
症例の検討
草竹 兼司(くさたけ けんじ)
此枝 央人(このえだ ひさと)1、秦 まり子 1、
樋口 良平 1、櫻井 裕之 2
島根大学 医学部 皮膚科
1 東京都立多摩総合医療センター 形成外科
2 東京女子医科大学 形成外科
熱傷後潰瘍や褥瘡などの慢性潰瘍では、明らか
な炎症所見がみられなくても創部より MRSA が
同定される事が少なくない。このような MRSA
の定着を認める創の治療に際して、周術期に抗
MRSA 薬を使用せずに第 1 世代セフェムを予防
投与として用いて手術加療を行った。12 例中
1例で術後に MRSA による感染を認めたが、11
例は感染を認めることなく創閉鎖が可能であっ
た。このことより創部より MRSA を同定しても、
定着創であれば周術期の抗生剤に抗 MRSA 薬は
必要ないと考えた。
( はじめに ) 壊死性軟部組織感染症は稀な疾患で
あり、時に死にいたることもある。また治療に
際して広範囲の皮膚欠損を生じるため、治療に
難渋することが多い。今回われわれは当院で加
療した壊死性軟部組織感染症 16 症例を検討す
ることとした。( 対象と方法 ) 対象は 2005 年 1
月から 2010 年 1 月までの5年間に、当科で加
療を行った壊死性軟部組織感染症症例1 6 例と
した。検討項目は受傷時の年齢、性別、病変部位、
合 併 症、感 染 菌、病 理 組 織 学 的 検 査 所 見、
LRINEC score、画像所見、などとした。( 結果 )
患者は 44 ∼ 83 歳、平均年齢は 63.4 歳。性別
は男性 11 名、女性 5 名であった。病変部位は
上肢 2 例、胸背部 2 例、臀部 5 例、下肢 7 例であっ
た。治療法は全ての症例で外科的治療を行った。
死亡例は3例であった。感染菌として化膿性連
鎖球菌が検出されたのは8例であった。複合菌
感染は8例に認めた。LRINEC score は6点未満
が5例、6点以上は11例であった。死亡例は
ともに6点以上であった。画像検査は 9 例で
CT、1例で MRI を施行していた。検討結果を踏
まえ、今後の治療成績向上のためどのような検
査および加療が必要か文献的考察を踏まえ報告
する。
109
93
94
肘部褥瘡の 2 例
VAC ATS 治療システムによる褥瘡・難治性
潰瘍の治療経験
大 健夫(おおさき たけお)、野村 正、
石椛 寛芳
島田 賢一(しまだ けんいち)、田口 久雄、
杉下 和之、川上 重彦
国立病院機構 姫路医療センター 形成外科
金沢医科大学 形成外科
<はじめに>肘部は褥瘡の中では比較的稀な部
位であり、またその治療にはしばしば難渋する。
今回我々は肘部に生じた褥瘡を 2 例経験したの
で報告する。
<症例>症例1、75 歳、男性。多
発転移を伴う進行期の肺癌で、当院呼吸器内科
でフォローアップされていた。体動時に両肘部
に外的ストレスが加わることが多く、同部位に
褥瘡を形成し、2009 年 5 月当科紹介となった。
左肘部は保存的治療で治癒するも、右肘部は感
染を併発し、広範囲のポケットを形成した。そ
の後軟膏処置等施行するもポケットの縮小は認
めず、同年 9 月、可及的デブリードマンおよび
縫合処置施行した。創部は治癒し再発を認めて
いない。症例 2、77 歳、男性。2009 年 7 月交
通事故により硬膜下血腫を受傷し、意識障害を
伴い当院脳神経外科で加療されていた。同年 8
月、右肘部に発赤腫脹認め、当科紹介受診。褥
瘡に感染を併発し膿瘍形成したものと考えられ
たため切開排膿し洗浄処置を施行した。その後、
感染は軽快するも、同部位にポケット形成し、
創が難治化したため、同年 10 月、可及的デブ
リードマンおよび縫合処置施行した。創部は治
癒し再発を認めていない。<考察>肘部褥瘡は
脊髄損傷の患者等に多く、その発生頻度は褥瘡
全体の中の約 1% と報告されている。肘関節の
動きのためポケットを形成し、保存的治療には
し ば し ば 抵 抗 性 で あ る。外 科 的 治 療 と し て
Bursectomy および種々の皮弁による再建は多
数の報告があるが、患者の全身状態によりその
選択が困難なことも多い。我々は、肘部の褥瘡
に対し、保存的治療と最小限の外科的治療によ
り治癒する経験を得た。若干の文献的考察を含
めて報告する。
平成 21 年 11 月,VAC ATS 治療システムが薬事
承認され,平成 22 年4月より局所陰圧閉鎖処
置として保険収載された。平成 22 年4月1日
より本邦において初めて使用可能となった本シ
ステムを褥瘡症例に対して施行したのでその詳
細について報告する。【症例】褥瘡3例に本法
を施行した。症例1:73 歳,男性。脊髄損傷を
受傷後,車いす生活となった。両側の坐骨部に
褥瘡を生じ手術治療を受けるも,再発手術を繰
り返していた。左坐骨部の褥瘡に対して VAC
ATS 治 療 シ ス テ ム を 施 行 し た。施 行 前 の
DESING は D5E3S3i0G5n0P4=20 である。症例2:
70 歳,男性。頸髄損傷を受傷後寝たきり状態で
あった。体位交換など管理が不十分なため褥瘡
を生じた。仙骨部の褥瘡に対して,VAC ATS 治
療システムを施行した。施行前の DESING は
D4e2S4i0g2n1P4=17 で あ っ た。【考 察】 こ れ
まで本邦では,局所陰圧閉鎖療法(NPWT)は
創傷被覆剤のポリウレタンフォームと壁吸引等
を用いた,いわゆる簡易型陰圧閉鎖療法が施行
され,褥瘡を中心とした創傷治療法として一定
の評価を受けてきた。しかし,保険での算定は
できず,すべて医師の裁量権で行われてきた。
一方,欧米ではこの VAC ATS 治療システムがス
タンダードな創傷治療として認知され,慢性創
傷を含めたあらゆる創傷に適用され,これまで
約 300 万人に使用された実績がある。本年 4 月
から,ようやくこのシステムの使用が可能と
なったが,本邦においてはまだ本システムを用
いた褥瘡治療の経験はなく,今後症例の蓄積が
待たれる。今回,この VAC ATS 治療システムを
紹介し,褥瘡に用いた治療経験について報告す
る。
110
95
96
褥瘡の再建における穿通枝茎プロペラ皮弁
の有用性
坐骨部褥瘡には皮弁術が必須なのか ?
石井 暢明(いしい のぶあき)1、
大木 更一郎 1、百束 比古 1、久保 一人 2
粟澤 剛(あわざわ つよし)、峯 龍太郎
1 日本医科大学 付属病院 形成外科
2 会津中央病院 形成外科
豊見城中央病院 形成外科・顎顔面外科・美容
外科
褥瘡に対しては保存的治療を行うことが多い
が、DESIGN-R で D3 以上であれば早期治癒を
目指し外科的治療も考慮すべきである。褥瘡の
再建を行う際には植皮が適用できる場合もある
が、皮弁が必要な場合も多い。今回我々は仙骨
部においては多数存在する穿通枝を用いたプロ
ペラ皮弁、踵に対しては腓骨動脈の穿通枝を用
いたプロペラ皮弁を施行し良好な結果を得たた
め、症例を供覧して若干の考察を述べる。考察:
全身に 400 以上存在するといわれる穿通枝を用
いたプロペラ皮弁は、デザインの自由度も高く、
90 度から 180 度回転することによって、褥瘡
部より遠い健常皮膚が褥瘡部を覆うことにな
る。このことは術後の縫合部の離開のリスクを
減らし、再発のリスクも少なくしていると思わ
れる。また主要動脈そのものではなく、派生す
る穿通枝を用いることで侵襲は少なくなり、全
身状態に問題の多い褥瘡患者においては、とく
に有用な手技であるといえる。マイクロサー
ジャリ―を用いない、簡便な手技であることも、
手術時間が少なくすみ患者のみならず術者に
とっても有用である。結語:穿通枝茎プロペラ
皮弁による褥瘡再建の有用性について考察し
た。穿通枝茎プロペラ皮弁は褥瘡再建に非常に
適していると思われ、今後もさらに発展してい
くと考えられた。
褥瘡の手術治療については、坐骨部にとどまら
ず、「その手術適応や周術期管理方法について
未だ一定の確立された見解がないため、手術療
法が褥瘡の統合的治療の一部として活かされて
いない。現時点では手術療法の適応に一定基準
がなく、周術期管理方法も術者の経験に任せら
れているといっても過言ではない」とされ日本
褥 瘡 学 会 で は レ ジ ス ト リ ー 研 究 ( 坐 骨 部 ):
STANDARDS-I が開始された。そのプレ基準にお
いては筋膜皮弁が推奨されているが、皮弁術以
外の方法については述べられていない。我々は
これまで坐位時の荷重部である坐骨部には血行
がよく緩衝作用の期待できる厚みのある皮弁術
が必須と思い実施してきたが、デブリ・皮弁術
に問題ないと思われても創閉鎖がうまく行かな
い症例がある一方、皮下脂肪層がなくなってい
るにもかかわらず治癒状態を保つ症例や瘻孔を
有したまま長期間問題なく経過している症例が
あることも経験してきた。それらのうち示唆的
な症例を review し、考察を加え報告する。対
象は皮弁術後の坐骨部褥瘡患者 6 例で全例脊損
患者である。現在創傷がなく、薄い皮膚が坐骨
上にあるだけの状態でトラブルを起こしていな
いものが 4 例、日々洗浄を行なうことで瘻孔か
らの感染をおこすことなく創傷を有したまま長
期経過しているものが 2 例である。
111
97
98
ポケットを有する褥瘡の治療戦略
有限要素法解析から得られた縫合線とドッ
グイヤーの関係を基に考えた皮膚腫瘍の手
術方法
台蔵 晴久(だいぞう はるひさ)、宮永 亨
村上 正洋(むらかみ まさひろ)1、
秋元 正宇 2、百束 比古 3
黒部市民病院 形成外科
1 日本医科大学武蔵小杉病院 形成外科
2 日本医科大学千葉北総病院 形成外科
3 日本医科大学付属病院 形成外科・美容外
科
【目的】ポケットを有する深い褥瘡は難治であ
り,それに対する標準的な治療方法は,未だ確
立されていない。また,一般に全身状態が不良
な患者に多く合併するため,手術による創閉鎖
は,ほとんどの例で困難である。現在,我々が
行っている治療方法について説明し,その有効
性について報告する。
【方法】まず褥瘡内に壊死組織や不良肉芽が見
られる場合は,可及的に切除する。ポケットに
対しては,積極的に最深部まで 2 ∼ 3 箇所程度
切開して開放し,創底をしっかりと露出させる。
翌日以降に,出血がないことを確認後,陰圧閉
鎖 療 法(Negative Pressure Wound Therapy:
NPWT)を開始する。現時点で我々が使用して
いる NPWT は,諸家らの報告に準じた自家製の
システムである。週に 2 ∼ 3 回程度の頻度で交
換 し,交 換 の 際 に は bFGF 製 剤 を 併 用 し た。
NPWT は,創収縮が見られなくなった時点で終
了した。その後は,創傷被覆剤や軟膏による保
存的加療,ベッドサイドでの分層植皮術を行っ
た。
【成績】本法により,早期から著名な創収縮を
認め,ポケットの閉鎖,創治癒が得られた。ポ
ケットは切開部より速やかに閉鎖する傾向を認
めた。また,ポケット閉鎖後に NPWT を継続し
ても,創の大きさはあまり変わらなかった。治
療中に重篤な合併症は生じなかったが,チュー
ブの圧迫による褥瘡内褥瘡,フィルムによる接
触性皮膚炎を認めた。
【結 論】ポ ケ ッ ト を 有 す る 褥 瘡 に 対 し て は,
wound bed preparation に加えて,死腔への対
処と組織のずれへの対策が不可欠である。この
課題に対して,ポケット切開と NPWT を併用す
ることによって,良好な結果を得ることができ
た。また,NPWT には上皮化を促進する作用が
乏しいことが示唆された。今後は,正式に認可
された V.A.C.® システムを用いて,治療を行う
予定である。
112
瘢痕の整容的評価は良い方から、1.短く目立
たない、2.長くて目立たない、3.短くて目
立つ、4.長くて目立つ、の順である。この観
点から考えると、瘢痕形成術の代表である W 形
成術は、短いが目立つ瘢痕を長いが目立たない
瘢痕にすることで、整容的評価を一段階改善す
る方法といえる。皮膚腫瘍摘出術では、術後の
縫 合 線 を 短 く す れ ば ド ッ グ イ ヤ ー が 目 立 ち、
ドッグイヤーを目立たなくすれば縫合線が長く
なる。母斑の切除方法では、腫瘍直径の3∼4
倍の長軸をもつ紡錘形切除がよいとされ、粉瘤
では腫瘍直径の1∼1 .2倍の長軸を有する紡錘
形皮膚切除がよいとされている。これらが推奨
される根拠は、縫合線の長さとドッグイヤーの
高さがともに受け入れられる範囲であるという
経験からくる結果によるところが大きく、科学
的根拠は乏しいと言わざるを得ない。一方で、
それらの欠点を克服するため開発された術式と
して母斑の巾着法合法やくり抜き縫合法、粉瘤
のくり抜き法などがある。そこで今回われわれ
は、有限要素法を用いて、紡錘形の長軸の長さ
の違いによるドッグイヤーの形態変化、皮膚の
厚さによるドッグイヤーの形態変化、巾着縫合
法の縫合点数による皺壁の形態変化、くり抜き
縫合法の縫い寄せ具合によるドッグイヤーの形
態変化などの解析から得られた結果を基に、母
斑や粉瘤の手術方法について考察したので報告
する。
99
100
検証∼縫合糸に求められるものは何か∼
各創傷被覆材の菌保持力の比較検討
村尾 尚規(むらお なおき)、林 利彦、
舟山 恵美、小山 明彦、古川 洋志、
山本 有平
藤原 敏宏(ふじわら としひろ)1、
久保 盾貴 2、福田 健児 1、西本 聡 1、
垣淵 正男 1、細川 亙 3
北海道大学 医学部 形成外科
1 兵庫医科大学 医学部 形成外科
2 大阪労災病院 形成外科
3 大阪大学 医学部 形成外科
【目的】縫合糸に求められるものは何か。抗張
力の高さと結節の維持であることは論を待たな
い。よって、市販されている縫合糸は抗張力に
ついてある一定の基準を満たしており、また、
いくつかの縫合糸は抗張力の高さを強調する。
しかし、これらのデータはある一定の条件で得
られたものであり、必ずしも実際の臨床を反映
しきれていない可能性がある。一方で、縫合糸
に組織通過性の良さや操作性の良さを求めるの
も外科医の性である。これらについてはデータ
化しづらいものがある。そこで、我々は以前よ
り縫合糸を多角的に検証することを試み、縫合
糸を選択する際の参考としている。
【方法】我々の所属する施設や関連施設で頻用
される 3-0、4-0 の各縫合糸について、抗張力、
結節保持力、太さ、毛細管現象、コーティング
様式等の違いについていくつかの実験的検証を
行った。得られたデータについて考察し、また、
文献的データと比較した。データを供覧し報告
する。
【結果】いずれの縫合糸もある一定以上の抗張
力を有していた。しかし、条件の違いによって
抗張力に差が見られた。その他の項目について
も各縫合糸間で差が見られた。
【結論】高い抗張力のみでは縫合は成立しない。
その他の要因で結節が維持できない可能性があ
る。また、同一、同等とされる縫合糸どうしで
も特性に違いがある。すなわち、創傷の状態に
応じて、最も適した縫合糸を選択することが重
要である。
113
【目的】感染創の保存的治療においては多くの
場合が消毒、洗浄などの処置後に創表面を創傷
被覆材にて被覆する。創傷被覆材にはガーゼや
外用剤を塗布したガーゼ以外に、現在までに開
発された数多くの創傷被覆材が存在する。それ
らの創傷被覆材は異なる特性を持っており、創
部の状況に応じて使い分けられている。しかし、
同じ創部においても使用する創傷被覆材は医師
によって異なることはしばしば見受けられる。
そこで我々は創傷被覆材内部に菌体を吸収し、
保持し続ける効果に焦点を当てて、各創傷被覆
材を用いて菌保持力を比較検討した。 【方法】
各創傷被覆材(5 種類 (n=3))を1平方センチメー
トル大に細断する。対象菌として大腸菌を用い、
大腸菌の入った一定量の液体LB培地を細断し
た各創傷被覆材表面に滴下し完全に吸収させ
る。その後、大腸菌の入っていない液体LB培
地を投与し培養する。各反応時間後にLB培地
を回収し、細胞増殖試薬WST−1と反応させ
る。その吸光度を測定することで創傷被覆材か
ら漏れでた相対的な大腸菌の量が測定できる。
それにより各創傷被覆材の菌保持力を比較し
た。 【結果】アクアセル、ハイドロサイト、ティ
エールの順に強い菌保持力を示した。メタリン、
生食ガーゼはコントロールと変わらなかった。
【考察】 創傷被覆材の素材の違いにより創傷被
覆材内部への菌体の保持力にも違いがあること
が分かった。菌保持力は創傷被覆材に求められ
る要素の一つに過ぎないが、感染創の治療にお
いて使用する創傷被覆材を選択する時のひとつ
の指標になると思われた。今後、黄色ブドウ球
菌や緑膿菌、MRSAなど他の細菌でも同様な
調査が必要と思われた。
101
102
粘膜欠損に対する筋弁と大網弁の創傷治癒
創傷治癒における真皮浅層と深層由来の線
維芽細胞の部位特異性
菱田 雅之(ひしだ まさし)1、鳥山 和宏 2、
八木 俊路朗 2、佐藤 秀吉 2、山下 依子 3、
早川 あけみ 4、亀井 譲 2
上西 昭子(かみにし あきこ)1、栗田 昌和 1、
岡崎 睦 2、川口 留奈 1,2、多久嶋 亮彦 1、
波利井 清紀 1
1 春日井市民病院 形成外科
2 名古屋大学大学院 形成外科
3 名古屋大学大学院 生体反応病理学
4 山口東京理科大学 基礎工学部
1 杏林大学 医学部 形成外科
2 東京医科歯科大学 形成外科
(はじめに)皮膚欠損創に対する各種皮弁によ
る創傷治癒の研究は広く行われている。一方、
粘膜欠損創に対する各種皮弁の研究はあまり行
われていない。われわれは大網の粘膜欠損創の
創傷治癒について、ラットの胃粘膜に全層欠損
を作るモデルを利用して検討し報告してきた。
今回は、同モデルを用いて筋弁と大網弁比較検
討したので報告する。
(方法)雄性 S-D 系ラッ
ト8週齢、体重約 250g を用いた。胃体部中央
に生検トレパンにて直径 2.0mm の全層欠損を
作成し、その欠損部に右腹直筋弁および右胃大
網動静脈を茎とする大網弁をそれぞれ縫着し
た。術後経日的に胃を摘出し、ヘマトキシリン・
エオジン染色やマッソン・トリクローム染色お
よ び 抗 PCNA(Proliferation Cell Nuclear
Antigen) 抗体を用いて免疫組織染色を行い、両
者を比較した。
(結果)筋弁では術後 3 日目よ
り筋膜上で肉芽組織が新しく形成されて、欠損
部が肉芽組織で十分に充填された時点で上皮化
した。一方、大網弁では、術後 3 日目まで欠損
部直下で著明な炎症反応がみられ、術後 4 日目
から大網弁の炎症反応を起こした部分が急激に
肉芽組織に置換された。また、大網弁の肉芽組
織は、筋弁に比較して多くリンパ球などの炎症
性細胞がやや多い傾向がみられた。上皮化まで
の期間は筋弁・大網弁ともに術後 7 日目であっ
た。PCNA 染色では両者ともに欠損部両端の腺
上皮及び新生された肉芽組織で術後 3 日目より
多数の陽性細胞がみられた。(考察)筋弁でも、
大網弁と同様に、胃粘膜欠損部に線維芽細胞・
血管内皮細胞を中心とする肉芽組織が充填され
て、欠損部両端の粘膜上皮が増生して創閉鎖さ
れた。しかし、筋弁では、大網弁とは異なり、
筋膜上に新しく肉芽組織が新生される点が特徴
的であった。
114
【背景】線維芽細胞は、解剖学的な部位によっ
て異なった性質を呈することが知られている。
特に真皮線維芽細胞においては、真皮浅層と深
層で異なった性質を呈するとされる。今回、細
胞外基質の産生能および創傷の収縮能に関わる
因子について、真皮浅層由来の線維芽細胞(以
下 SDF)と真皮深層由来の線維芽細胞(以下
DDF)の違いを調べた。
【方法】患者の同意のもと、形成外科手術中に
不要となった皮膚検体から 5 組の SDF、DDF の
初 代 培 養 を 確 立 し た。12well plate に
10,000cells/ well の 細 胞 を 播 種 し、基 礎 培 地、
および b-FGF を加え、1, 2, 4, 7 日間培養した細
胞における I, III 型コラーゲン、フィブロネクチ
ン、コ ラ ゲ ナ ー ゼ、TGF-β1-3、connective
tissue growth factor (CTGF) の mRNA 発現量を
real-time PCR を用いて評価した。
【結果】播種 1,2,4,7 日目の検体それぞれにおい
て、I,III 型コラーゲンおよびフィブロネクチン、
TGF-β1、β3、CTGF は、SDF より DDF で常に
高発現であったのに対し TGF-β2 は DDF より
SDF で高発現であった。コラゲナーゼの発現量
には差を認めなかった。急性期創傷において創
部局所で増加する b-FGF を加えたところ I,III
型 コ ラ ー ゲ ン、フ ィ ブ ロ ネ ク チ ン、TGF-β2、
CTGF の発現は著明に減少したのに対し、コラ
ゲナーゼの発現は増加した。TGF-β1,3 の発現
量には大きな変化を認めなかった。いずれの因
子についても、SDF、DDF 間の大小関係は変わ
らなかった。
【考察】TGF-β、CTGF は細胞外基質の産生や、
創部の収縮を介して創傷治癒に促進的に働くこ
とが知られている。本研究では mRNA 発現解析
の結果より、DDF は SDF よりも創部収縮、細胞
外基質産生など、より創傷の治癒に促進的に働
くことが示唆された。
103
104
bFGF のケラチノサイト、線維芽細胞に対
する細胞増殖促進効果とフィブラストスプ
レー添付溶解液の細胞毒性
ミニブタモデルによる外科的処置と放射線
障害に対する bFGFの効果の検討
久保 美代子(くぼ みよこ)1、森口 隆彦 2、
稲川 喜一 1
木下 直志(きのした なおし)、津田 雅由、
Rodrigo Hamuy、平野 明喜、秋田 定伯
1 川崎医科大学 形成外科
2 川崎医療福祉大学 医療技術学部 感覚矯正
学科
長崎大学 医学部 形成外科
【目的】bFGF 原体(超純水で溶解)とフィブラ
ストスプレー(添付溶解液で溶解)とが、高濃
度(100-1000 ng/ml) でヒトケラチノサイト、ヒ
ト線維芽細胞の細胞増殖に対して、異なった効
果を示した原因を検索した。同時に、bFGF がI
型コラーゲン上で培養した両細胞種の細胞増殖
に与える効果を調べた。
【方法】5 日間の細胞増
殖アッセイにより、
3 種類の bFGF―bFGF 原体
(超
純水で溶解)とフィブラストスプレー 2 種(添
付溶解液、または超純水で溶解)―の効果を比
較した。bFGF 濃度は 1000 ng/ml まで調べた。
また、添付溶解液のみ、塩化ベンザルコニウム
のみの影響も調べた。
【結果】1)3 種類の bFGF
はいずれも両細胞種の細胞増殖を濃度依存性に
促進した。2) その効果は、両細胞種とも、bFGF
原体とフィブラストスプレー(どちらも超純水
で溶解)とでは同じであった。しかし、フィブ
ラストスプレー(添付溶解液で溶解)は、両細
胞種に対して、高濃度(1000 ng/ml)で、他 2
種の bFGF に比べて、細胞数の有意の減少を起
こした(ケラチノサイトでは 100 ng/ml でも)
。
添付溶解液のみ、また塩化ベンザルコニウムの
みを含む培地投与においても同様の所見があっ
た。3) bFGF 原体とフィブラストスプレー(ど
ちらも超純水で溶解)投与における濃度別の細
胞増殖促進パターンは、両細胞種間で異なって
いた。すなわち、ヒトケラチノサイトでは bFGF
濃度 1-10 ng/ml がピークである bell-shaped で
あ り、ヒ ト 線 維 芽 細 胞 で は bFGF 濃 度 1-10
ng/ml がピークである plateau-shaped であった。
【結論】フィブラストスプレー(添付溶解液で溶
解)は、高 濃 度(100-1000 ng/ml) で、他 2 種
の bFGF に比べて、両細胞種の細胞増殖を抑制
した。その原因は添付溶解液中の塩化ベンザル
コニウムの細胞毒性であった。加えて、bFGF の
濃度別の細胞増殖促進パターンは細胞種依存性
であった。本研究結果は、創傷部における bFGF
製剤使用の best practice について示唆を与えた。
115
【目的】外科処置後、放射線療法による潰瘍形
成が患者の術後ADLを低下させることがあ
り、その治療には難渋する。また、bFGFが
創傷治癒に関与し、外部からの投与により潰瘍
の治癒が促進される事は多く報告されている
が、放射線照射後の潰瘍に対する予防効果など
は論じられていない。外科処置および放射線照
射に対する、皮膚の影響、bFGFによる放射
線潰瘍の予防効果の可能性の検討を行う。
【方法】生後 4 週から 8 週のミニブタに対し、
(1)
5cc ラ ウ ン ド タ イ プ テ ッ シ ュ エ ク ス パ ン
ダーを双茎皮弁皮下に挿入(Ex)、(2)その後
10Gy放射線照射を行う (Rad)、(3)bFG
Fを直後、3,5,7,10,12 日目に皮下剥離部
に 20μg 注入した(bFGF)以上3つの操作を
行 う。(1)、(2)、(3)の 操 作 の 有 無 で、1,
コントロール(正常皮膚) 2, Ex+Rad+bFGF
3, Ex +Rad 4, Rad+bFGF 5, Rad 6, Ex+
bFGF 7, Ex の 7 群に分類した。
その
間の皮膚の性状を比較し、14 日目に皮膚を採取
した。各種組織染色を行い、光学顕微鏡で比較
した。
【結果】肉眼的には Ex +Rad 群は潰瘍形成など
が見られたが、Ex+Rad+bFGF 群は潰瘍形成が
見られなかった。表皮アポトーシスの出現率の
検討では Rad 群でアポトーシスの有意な上昇を
認めた。表皮増殖能は放射線照射群が有意に減
少した。コントロールに比較し Ex 群で細胞増
殖能が有意に減少するものが、さらに bFGF を
加えることで有意に改善した。真皮血管数では
Ex+ Rad 群がコントロールに比較し優位に減少
したものが、bFGF を用いるとより有意に増加
した。
【考察】外科処置、放射線照射後にbFGFを
加えることで、血管新生効果があり、皮膚潰瘍
予防などの保護効果があると思われた。
ポスター展示
P-01
P-02
人工真皮を用いた瘢痕性爪甲剥離症・爪短
縮症の治療
顕微鏡下低侵襲陥入爪手術
菅又 章(すがまた あきら)
矢部 哲司(やべ てつじ)
東京医科大学八王子医療センター 形成外科
石切生喜病院 形成外科
【はじめに】 われわれは、外傷性爪床欠損に対
し人工真皮の貼付により、良好な爪の再生を得
てきた。今回は、爪床の瘢痕化に起因した陳旧
性の爪甲剥離症・爪短縮症に対して、瘢痕部の
切除と人工真皮の貼付により、剥離の改善と爪
延長の効果を得たため手技を紹介する。
【手技】
爪床の瘢痕部を、周囲の正常爪床と指尖皮膚を
1 2mm 含んだ範囲で切除する。瘢痕下の結合
組織、骨膜は温存する。創面の止血を確認し、
人工真皮(テルダーミス ®or ペルナック ®)を
貼付、5-0 ナイロンで縫合する。貼付後 3 日目に、
縫合糸を残したまま人工真皮のシリコン膜のみ
を除去し、bFGF 製剤(フィブラストスプレー
®)の噴霧とワセリン基材の軟膏を塗布し、ポ
リエチレンフィルムによる閉鎖湿潤療法を行
う。縫合糸は 2 週間目に抜糸し、週 2 回の通院
で創面が閉鎖するまで同様な処置を継続する。
【結果】爪短縮症では爪の延長が、爪剥離症で
は剥離の改善が得られた。われわれの人工真皮
を 用 い た 方 法 の 利 点 は、手 技 が 簡 便 な こ と、
donor が必要ないこと、疼痛が少ないこと、創
面の骨露出にも対応できることなどであった。
116
はじめに:陥入爪にはいろいろな手術法がある
が、その目的は陥入している爪甲の発生源であ
る爪母を如何にして除去するかということに尽
きる。最善の方法は言うまでもなく、低侵襲で
確実に爪母を除去することである。我々は後爪
郭を切開せず、顕微鏡下に爪母を切除する方法
を行っており報告する。方法:趾ブロック麻酔
後、趾基部に太めのゴムを巻き止血する。陥入
している爪甲を幅 3 から 5mm 切除する。スキ
ンフックで側爪郭と後爪郭の間を牽引し、手術
用顕微鏡を用い、倍率 4 ∼ 5 倍、直視下に爪母、
側爪郭、後爪郭を確認する。マイクロメスで切
開を入れ、爪母を摂子で把持し、骨膜を残して
ハサミにて切除する。爪母は一塊として切除可
能であるが、万一取り残しがあるようなら鋭匙
鉗子にて除去し、取り残しのないことを確認す
る。バイポーラーにて止血後、ガーゼと包帯で
圧迫固定する。術翌日か翌々日に再診し、新鮮
な出血や感染がないことを確認した後、シャ
ワー浴可とし、自宅で一日一回包交をしてもら
う。約2週間で創は治癒する。結果:2006 年 4
月から 2010 年 3 月までに 96 症例、120 趾の陥
入爪に対して本法をおこなった。特に合併症は
認めていない。考察:陥入爪の手術時、後爪郭
に切開を加えると侵襲が大きくダウンタイムも
長くなる。後爪郭を切開せず爪母を切除すると、
手技に習熟するまでは爪母最深部に取り残しが
ないか不安が残る。手術用顕微鏡を用いると、
後爪郭を切開せずに爪母を最深部まで直視下に
確認切除可能である。爪母が途中で引き裂けた
場合は鋭匙鉗子で除去する。最近普及している
フェノール法は、手技が簡単で出血もほとんど
なく術後管理が容易であるが、爪母以外に後爪
郭や側爪郭まで焼灼するので、侵襲が大きく治
癒にも時間がかかる。また爪母が確実に焼灼さ
れているかどうか判断が困難で、再発が懸念さ
れる。フェノール法と比較し、本法の方が低侵
襲で確実に爪母を除去することが可能である。
P-03
P-04
動静脈シャント閉塞型遊離静脈皮弁にて再
建を行った示指皮膚有棘細胞癌の 1 例
北九州における下肢の末梢血管病変の治療
に関する地域連携について
清水 史明(しみず ふみあき)、松田 佳歩、
上原 幸、増田 大介、種子田 紘子、
加藤 愛子
多田 英行(ただ ひでゆき)、石井 義輝
大分大学 医学部 附属病院 形成外科
健和会大手町病院 形成外科
遊離静脈皮弁は薄くて、ドナーの犠牲が少ない
こ と な ど の 利 点 を 持 つ こ と か ら、1981 年 に
Nakayama らが報告して以来、主に手指の再建
に多く用いられている皮弁である。移植床の吻
合血管に動脈を選ぶのか静脈を選ぶのかによっ
て、A-A 型、V-V 型、A-V 型などがあるが、多
くは A-V 型が用いられている。本皮弁の欠点は
いずれの方法にせよ高い確率で移植後 2−3 週
間持続するうっ血が生じ、部分壊死する率が高
いことがあげられる。これは皮弁の皮膚への血
流量の不足に原因があるといわれており、これ
までもその欠点を克服する工夫の報告は多くな
さ れ て い る。2009 年 に 沖 縄 で 開 催 さ れ た
World Society of Reconstructive Microsurgery
にて Lin らは A-V 型の遊離静脈皮弁にて、皮弁
内 A-V シャントをあえて閉塞させることで皮弁
内皮膚の血流量をふやす方法を提唱し、十数例
にこれを行い、良好な結果を得たと報告した。
今回我々は本方法にて再建を行った示指有棘細
胞癌切除後皮膚欠損の症例を経験し、良好な結
果を得た。症例は 67 歳男性。左示指背側に生
じた皮膚有棘細胞癌に対して伸筋腱を含めた切
除術が施行された。生じた欠損に対して二期的
に前腕部からの長掌筋腱付きの動静脈シャント
閉塞型遊離静脈皮弁移植による再建術を行っ
た。皮弁内に 2 本の静脈を含めて挙上して、そ
れぞれ指動脈および指背皮静脈に端端吻合を
行った。その際、皮弁内の 2 本の静脈間交通枝
は結紮して A-V シャントを斜断した。術後皮弁
は欝血を呈することなく全生着した。有用な方
法と思われ、若干の考察を加えて報告する。
末梢血管のバイパス術の進歩や創傷管理の技術
の進歩により下肢の末梢血管病変に対する救肢
率はかつてに較べ大幅に向上している。しかし
すべての地域で満足できる治療が行われている
かは疑問である。
下肢の末梢血管病変に対する治療は血管外科
医、循環器内科医、糖尿病内科医、透析医、皮
膚科医、形成外科医などの各科の医師の連携は
もちろんのこと看護師、理学療法士、義肢装具
士など多職種の協力が必要で、なおかつ互いに
救肢に対する同様の問題意識を共有することが
必要である。しかし実際問題として同一の医療
機関で他科、他職種の連携をとることは非常に
難しい。また DPC 導入や在院日数のしばりの問
題もあり同一医療機関で治療を完結することが
非常に困難になっている。そこで我々は 2008
年より下肢の末梢血管病変の治療に対する地域
連携を行っている。その概要と問題点そして今
後の展望について報告する。
117
P-05
P-06
医原性リンパ漏の治療に関する最近のわれ
われの考え方
院内標準の創傷ケアマニュアル作成の試み
小川 晴生(おがわ はるお)1、橋川 和信 1、
湯浅 佳奈子 1、森脇 綾 2、田原 真也 1
加藤 友紀(かとう とものり)
1 神戸大学 大学院 医学研究科 形成外科
学
2 新須磨病院 創傷治療センター 形成外科
中部ろうさい病院 形成外科
【目的】術後リンパ漏に対しては圧迫療法が原
則とされてきた。圧迫が困難、無効である症例
では、穿刺吸引、硬化剤の注入、放射線照射、
リンパ管の結紮などが報告されているが、その
適応や優先順位については一定のコンセンサス
を得られていない。近年ではリンパ漏に対する
持続陰圧療法の有効性も報告されており、本来
の創傷治癒に基づく治療によりリンパ漏を治癒
させ得ることを示している。最近、われわれは
圧迫療法などが著効せず難治化したリンパ漏に
対して、創傷治癒学に基づき処置を行う方針と
している。この 1 年間でわれわれが経験した症
例を報告する。
【症例】症例1、55 歳女性、左
大腿部リンパ漏。整形外科での悪性腫瘍摘出術
後に皮膚潰瘍、リンパ漏を生じた。圧迫治療に
より改善しないため当科に紹介された。当科で
は創部の洗浄、感染コントロールを目的とする
創傷被覆材、軟膏処置を行い一定の効果が得ら
れた。しかし比較的広範な死腔が残存し保存的
治療では治癒に時間がかかること、悪性腫瘍の
治療のため早期に創部を治癒させる必要がある
ことから、縫工筋の充填術を行った。術後良好
に創部は治癒したが肺転移を生じ化学療法施行
中である。症例2、
72 歳男性、左鼠径部リンパ漏。
他医での脂肪腫摘出後の創部に潰瘍、リンパ漏
が出現した。圧迫療法を施行したが改善せず当
科に紹介された。創部瘢痕を切開し皮下死腔を
展開した後、創部洗浄などの処置を行い、創部
治癒を得ることができた。症例3、82 歳男性、
両鼠径部リンパ漏。血管外科での術後にリンパ
漏、皮下腫瘤を生じた。尋常性乾癬の既往があ
り圧迫療法を施行できず穿刺吸引により改善し
ないため当科に紹介された。瘢痕皮膚を切開し
創部洗浄、処置を行い創部治癒させることがで
きた。【結論】難治化したリンパ漏に対しても
創傷治癒学に基づく適切な処置を行い治癒させ
得る可能性が示された。今後の検討が必要であ
るが、われわれの症例および考察を報告する。
118
【はじめに】創傷治癒メカニズムが科学的に解
明されるに伴い、難治性の創傷も治癒に導くこ
とができるようになってきている。一方従来の
消毒を中心とする処置方法から脱却できずに、
医原性の難治性潰瘍に難渋している例も未だ多
く見受けられる。総合病院において各科や病棟
間で処置方法を標準化し、患者の不安を解消す
るとともに少しでも早期の創傷治癒に導けるよ
うに、創傷ケアマニュアルを作成し運用開始し
たので報告する。【方法】2008 年 4 月より当院
褥瘡対策委員会の下部組織として形成外科医が
主体となり外科系各科および関連部署の看護師
にて創傷ケアチームを発足させた。チーム発足
後 1 年間における病棟での創傷トラブルケース
を集計分析し、その結果に基づいて各病棟に割
振り、創傷ケアマニュアルの各論を作成した。
術後創については外科系各科にアンケート調査
を行った。
【結果】創傷トラブルは術後創の 20 例、
テープ 97 例、失禁に関与するもの 63 例、チュー
ブ留置 34 例、その他 246 例であった。これら
に基づき関連病棟にマニュアル作成を行った。
病院機能評価を受けるためのマニュアル作りに
準じた形式での作成を行った。運用にあたり各
種関連委員会などで内容につき検討を行い意見
交換した。【考察】創傷管理については科学的
な創傷治癒メカニズムに則って治療が可能に
なってきている一方で、臨床現場では古くから
の知識や迷信などに惑わされて患者側にも医療
者側にも様々な点で混乱が生じている。消毒薬
に関して、消毒肯定派と消毒否定派、消毒容認
派に分かれて対立している図式も一部で見受け
られる。本来患者本位の治療であるはずの医療
に関してこのような状況が続くことは望ましく
ないと考えられるため、指南役として当学会で
混乱の収拾を期待したい。今後は当学会の動向
を勘案しつつ、当院でのマニュアルも運用しな
がら改善していきたいと考えている。
P-07
P-08
坐骨部褥瘡術後における車いす移乗法の重
要性について ―ソルボセインを用いた移
乗補助板を作成して―
高圧酸素療法を併用した広範囲褥瘡治療の
経験
林 礼人(はやし あやと)、松村 崇、
古元 将和、堀口 雅敏、小室 裕造
樋口 浩文(ひぐち ひろぶみ)、野原 孝哉、
藤原 仁美
順天堂大学 医学部 形成外科
岩手医科大学 医学部 形成外科
【目的】対麻痺患者に生じた坐骨部の褥瘡は、
車いすでの生活を継続していく必要上、難治で
あったり再発を繰り返すことがしばしばであ
る。今回我々は、術後早期に坐骨部手術創の離
開を生じ難治となった対麻痺患者褥瘡に対し、
衝撃吸収剤であるソルボセインを用いた移乗補
助板を作成し、良好な結果を得ることが出来た
ので報告を行う。【症例】症例は 43 歳女性、18
年前に交通事故にて頸椎損傷を受傷し対麻痺と
なった。 6 年程前から左坐骨部に褥瘡を生じ、
保存的に加療を続けていたが、感染を生じ急速
に増悪した為、当院当科にて入院となった。後
大腿皮弁移植を行ない皮弁の生着は良好であっ
たが、以前からベッド移乗の際に下肢を伸ばし
て臀部で滑る様に移っていた為、車いす騎乗再
開後1週で、創部の僅かな離開を生じ、創閉鎖
を行っても再び離開を生じた。上肢の力不足で
充分なプッシュアップが難しかったことから、
30cm 四方のソルボセインと 5mm 厚のアルミ
板を合わせた移乗補助板を作成し、車いすと
ベッドの間に置くことで、車いす移乗法の改善
を行った。アルミ板は車いすの形状に合わせて
加工し、補助板が不安定にならない様にした。
【結果】独自の移乗補助板を使用することで、
確実なプッシュアップを行いながら段階的に移
乗を行うことが可能になった。補助板は携帯も
容易で、日常生活の様々な場面で使用が可能で、
術後1年を経過しても再発なく良好な経過をた
どっている。 【考察】対麻痺患者の坐骨部褥
瘡は術後にもしばしば再発を繰り返すが、その
予防には、術後の適切な創管理が必要である。
特にプッシュアップも含めた車いすへの移乗方
法は、手術創への剪断応力を抑える意味でも非
常に重要なポイントとなる。今回我々は、ソル
ボセインを用い独自の補助板を作成し、車いす
移乗を再指導することで、術後再発を予防する
ことが可能であった。今後症例を重ね、さらに
検討を進めていきたいと考えている。
119
【はじめに】高圧酸素療法(HBO)の創傷治癒
に対する有効性はよく知られているが、今回
我々は仙骨から大転子にかけての広い褥瘡に対
して HBO を併用し、良好な結果を得たので、
症例を供覧して報告する。【症例および結果】
症例は 70 歳の男性。30 数年前に脊椎損傷を受
傷した。その後、仙骨部に褥瘡が出現したが、
保存的に加療されていた。数ヶ月前より褥瘡が
徐々に拡大し、発熱も見られたため、他医を受
診した。褥瘡からの壊死性筋膜炎および敗血症
の診断で、皮膚切開およびデブリードメントを
施行された。その後全身状態の改善が得られた
ため、再建を目的として当科へ転院となった。
初診時、仙骨部に骨露出を伴う広範な潰瘍を認
め滲出液からは MRSA が検出された。さらに左
大転子部の皮膚に発赤を認め、皮下で仙骨部の
潰瘍と連続していた。当科入院後、仙骨部から
大転子部までの皮下ポケットを開放し、あわせ
て HBO を開始し、週 2 回の割合で 2 ヶ月間行なっ
た。経過中に体位交換によると思われる大転子
部の褥瘡ポケットの拡大を認めたため、ポケッ
ト切開と潰瘍面の縮小を目的として埋込み植皮
を施行した。創面は良好な肉芽の形成と創縁の
収縮を示し、切開部は保存的に閉鎖した。その
後、残存する仙骨および大転子部の潰瘍に対し
て植皮を行なった。植皮はほぼ生着したが大腿
部に皮下ポケットが新たに発生し、現在も治療
を継続中である。【考察】高圧酸素療法は高い
環境気圧の装置内で高濃度酸素を吸入させる事
により治療効果を得る事を目的としており、浮
腫の軽減や創傷治癒の促進、感染のコントロー
ルなどに有効とされている。本例においては、
HBO 施行後早期より不良肉芽の浮腫が軽減し、
良好な肉芽の形成が認められた。また、経過中
に施行した埋込植皮の効果も加わり、比較的早
期に創縁の収縮が認められた。この様な症例に
おいては HBO を治療に加える事により良好な
結果が得られると考えられた。
P-09
P-10
褥瘡から発生した有棘細胞癌の一例
Calciphylaxis による多発性潰瘍の1例
廣川 詠子(ひろかわ えいこ)1、桑原 靖 2、
横川 秀樹 1、市岡 滋 2、中塚 貴志 1、
難波 純英 3、土田 哲也 3
佐藤 智也(さとう ともや)、市岡 滋、
桑原 靖、中塚 貴志
1 埼玉医科大学国際医療センター 形成外科
2 埼玉医科大学形成外科
3 埼玉医科大学皮膚科
埼玉医科大学 形成外科
【目的】脊損患者の仙骨部褥瘡より発生した有
棘細胞癌の術後再発に対し広範囲切除後、大殿
筋 V-Y advancement flap で再建した一例を経
験したので報告する。
【症例】症例は 57 歳男性。
23 歳時に外傷性頚髄損傷となった。仙骨部褥
瘡から発生した有棘細胞癌に対し 52 歳時に腫
瘍を切除し植皮術にて閉創した。切除断端陰性
で鼠径リンパ節に転移はなかった。その後、問
題なく経過していたが、術後 4 年の時点で植皮
部に潰瘍を生じた。保存的加療で治癒せず、拡
大傾向であったため、生検を施行したところ、
有棘細胞癌の局所再発疑われた。全身精査で遠
隔転移認めなかったため根治的切除後に大殿筋
V-Y advancement flap で 再 建 し た。 【結 果】
切除断端陰性で鼠径リンパ節にも転移はなかっ
た。皮弁は生着し、術後経過良好である。
【考察】
褥瘡から発生した有棘細胞癌の報告は散見され
ており、それらの文献的考察をふまえ検討した。
120
【はじめに】Calciphylaxis は皮下組織や中小血
管の異所性石灰化により皮膚の虚血性潰瘍を生
じるまれな病態である。われわれは慢性腎不全
患者に calciphylaxis による多発性潰瘍を生じた
症例を経験したので報告する。
【症例】58 歳女性。
20 歳で 2 型糖尿病、47 歳で糖尿病性腎症によ
り血液透析を導入されている。両下肢に有痛性
の腫脹が出現し、その後急速に黒色壊死を伴う
潰瘍となった。側腹部から背部に青紫色の斑状
病変、両側大腿背側、両側下腿に黒色壊死を伴
う潰瘍を認めた。鼻腔、硬口蓋粘膜にも潰瘍を
認めた。疼痛が強くコントロール不良であった。
全身麻酔下にデブリードマンを施行し、病理組
織診で calciphylaxis と診断した。潰瘍は治癒傾
向が見られず敗血症性ショックで死亡した。
【考
察】Calciphylaxis は主に慢性腎不全患者にみら
れ、血管や皮下組織に異所性石灰化を生じ、そ
の結果虚血性潰瘍を呈する病態である。カルシ
ウム・リン代謝、石灰化抑制因子の異常が発症
に関与するといわれている。90% が下肢に見ら
れるが、体幹、大腿、殿部、顔面などにも生じ
る点で peripheral artery disease(PAD) や糖尿病
性足病変と臨床像が異なる。初期には青紫色で
有痛性の硬結として発症し、その後硬い乾燥痂
皮から潰瘍に至る。病理組織診で小中動脈の内
膜、中膜の石灰化、閉塞を確認することで確定
診断される。死亡率 60-80% と予後不良であり、
発症から 6 ヶ月以内に死亡する例が多い。治療
は壊死組織のデブリードマンのほか、副甲状腺
摘除術、ビスホスホネート投与、高圧酸素療法
が有効であるとされているが確立された治療法
はない。【まとめ】Calciphylaxis による多発性
潰瘍の症例を経験した。慢性腎不全患者に有痛
性の難治性潰瘍を生じた場合は Calciphylaxis の
可能性を考慮に入れる必要がある。
P-11
P-12
カデックス軟膏が奏効した 30 年におよぶ
足潰瘍の 1 例
当科における糖尿病足感染起因菌の傾向及
び対策
武本 啓(たけもと さとる)
高須 啓之(たかす ひろゆき)、寺師 浩人、
橋川 和信、田原 真也
松江市立病院 形成外科
神戸大学医学部附属病院 形成外科
【はじめに】末梢動脈疾患による足潰瘍は、日
常診療において、しばしば遭遇する。今回、30
年におよぶ足潰瘍に対して、カデックス軟膏が
奏効した症例を経験したので、若干の文献的考
察とともに報告する。【症例】67 歳、男性。40
年前に両足背に創ができたが、一旦軽快した。
10 年後、両足背および足趾に潰瘍を生じ、バー
ジャー病と診断された。足趾潰瘍に対して断端
形成術が行われた。しかし、足背の潰瘍が治癒
しないため、当院血管・胸部・内分泌外科に紹
介された。トラフェルミン(フィブラスト ® ス
プレー)とブクラデシンナトリウム(アクトシ
ン ® 軟膏)の外用および抗血小板剤(アンプラー
グ ® 錠、プロサイリン ® 錠)の内服、さらに安
静時痛がある時にはアルプロスタジル ( パルク
ス ®)の点滴による加療が行われていたが、改
善しないため、当科紹介となった。初診時、両
足背には約 5×5cm の潰瘍を認め、右足は足趾
の内転・背屈を伴っていた。自宅でのシャワー
およびブロメライン(ブロメライン軟膏)での
加療を開始した。1 ヵ月後、著変なく、浸出液
も多かったため、軟膏をカデキソマー・ヨウ素
(カデックス ® 軟膏 0.9%)に変更したところ、
潰瘍の縮小を認めるようになり、著明に改善し
た。また、安静時痛もなくなった。
121
【目 的】糖 尿 病 性 足 病 変 の う ち、
spreading/systemic infection の病態となり抗生
剤投与を必要とする症例は数多い。特に重症例
においては細菌培養結果を待たずに empiric に
治療を開始しなければならず、起因菌の推定は
大変重要である。糖尿病性足病変感染では嫌気
性菌を含む複合感染が多いと報告されている
が、施設によって差を認める。今回我々は当科
において判明した起因菌の傾向を明らかにし、
その対策につき報告する。【方法】2008 年 3 月
から 2010 年 3 月までの 2 年間に当科で治療し
た糖尿病性足病変感染症例のうち、細菌検査を
提出し、さらに培養結果により起因菌が推定さ
れた症例を検討した。【結果】11 症例 21 検体
よりのべ 31 例の細菌培養結果を得た。グラム
陽 性 球 菌 が 21 例(MRSA 5、MSSA 4、
Streptococcus agalactiae 4、コアグラーゼ陰性
staphylococci 4{ う ち Staphylococcus
epidermidis 1}、Enterococcus faecalis 2、
Enterococcus faecium 1、α溶 血 Streptococci
1)、グ ラ ム 陰 性 桿 菌 が 10 例(Pseudomonas
aeruginosa 3、Escherichia coli 2、Citrobacter
freundii 2、Klebsiella pneumonia 1、Klebsiella
oxytoca 1、Flavobacterium 1)であった。治療
及び SSI 予防目的で使用した抗生剤は VCM 4 例、
SBT/ABPC 3 例、MEPM 2 例、PIPC、CTM、
FMOX、CLDM、DRPM が各 1 例であった。
【考察】
Staphylococcus aureus が 9 例 と 最 も 多 く、
empiric 治療を行う際には MRSA に感受性のあ
る抗生剤の選択は外せないと考える。また 21
検体中 9 検体で複数菌が培養されており、グラ
ム陰性桿菌の他、培養結果に表れない嫌気性菌
の複合感染も多いと考えられるため、これらも
広域にカバーする目的で他種抗生剤の併用も推
奨したい。
P-13
P-14
足部切断術後の創感染離開創に対して集学
的創傷管理が奏功した 1 例
Distal bypass と Free flap の同時手術 ∼
血管外科と形成外科のコラボレーションに
ついて∼
林 殿聡(はやし でんそう)、館 正弘
内山 英祐(うちやま えいすけ)
東北大学病院 形成外科
時計台記念病院 形成外科・創傷治療センター
症例は 49 歳男性。基礎疾患として糖原病 1 型、
末期腎不全で血液透析中であった。左足壊疽を
伴う下腿動脈三分岐以降が閉塞した重症下肢虚
血に対して他院で末梢血管インターベンション
を施行した。血行再建後、SPP Dorsal/plamtar
10/8→57/60mmHg と改善したため、リスフラ
ン関節切断術を施行したが、術後創感染により
創離開を来した。創感染離開創に対して持続陰
圧吸引療法と高圧酸素療法によって創傷管理を
行い、その後、植皮術により下腿の大切断を回
避した 1 例を経験したので、若干の文献的考察
を加えて報告する。
今回我々は、バイパス術後5年経過した後に吻
合部の閉塞を認め、再バイパス術を行ったが再
閉塞を来した症例を経験した。末梢の動脈硬化
が非常に高度で極めて out flow が悪く、再度バ
イパス術を施行しても再閉塞を来す可能性が高
いと判断し、out flow の確保と軟部組織欠損の
再建目的で distal bypass と free flap transfer を
同時に施行した。(症例)55 歳男性。2001 年よ
り糖尿病を指摘され、2002 年 10 月より糖尿病
性腎症による慢性腎不全にて維持透析導入と
なった。2004 年 11 月に左下肢の安静時疼痛に
対して、左膝窩動脈∼足背動脈バイパス術を施
行した。2009 年 10 月より再び左下肢の安静時
疼痛が出現し、エコー検査でバイパスグラフト
の閉塞が疑われたため入院となった。(考案)
バイパス術は血流量も多く非常に有効な血行再
建術であると思われるが、本症例のように末梢
の動脈硬化が高度で比較的早期にグラフト閉塞
を繰り返す症例では、out flow の確保を目的と
して free flap を併用することにより、バイパス
の長期開存を得られる可能性があると考える。
今後も長期間の経過観察が必要ではあるが、血
行再建と組織欠損の再建を分けて考えずに形成
外科医が積極的に血行再建に関わる事により、
治療の選択肢が広がると思われるので治療経過
について報告する。
122
P-15
P-16
弾性ストッキングの連日継続装用により足
部皮膚壊死を生じた1例
足 背 部 再 建 に Free anterolateral thigh
adipofascial flap を使用した1例
高木 誠司(たかぎ さとし)、春山 勝紀、
衛藤 明子、牧野 太郎、大慈弥 裕之
小泉 拓也(こいずみ たくや)、中川 雅裕、
永松 将吾、茅野 修史、桂木 容子、
松井 貴浩、山本 裕介、緒方 大
福岡大学 形成外科
静岡県立静岡がんセンター 形成外科
【はじめに】近年、静脈血栓塞栓症、その中で
もときに致命的となりうる肺血栓塞栓症への関
心が高まっている。そしてこの静脈血栓塞栓症
の発症予防処置として、今ではほとんどの施設
で術中・術後に弾性ストッキングを着用させて
いるのではないかと想像する。今回我々は、こ
の弾性ストッキングを自己判断のもとに在宅で
連日継続装用し、その結果として足部に皮膚壊
死を生じた1例を経験した。文献的考察ととも
に報告する。
【症例】60 歳の独居女性。約 30 年前、
両側変形性股関節症に対し人工骨頭置換術を受
け、以来両下肢のむくみを自覚していた。また
13 年前に 2 型糖尿病を指摘されたが治療を自
己中断し、5 年前から当院でインスリン療法を
開始するも HbA1c は 9-13%とコントロール不
良で、末梢性知覚障害が出現している。下肢の
むくみを友人に相談したところ市販の弾性ス
トッキングを贈られ、家族にこれを履かせても
らった。少し違和感を覚えながらも自己での着
脱が困難であり、次に家族が訪問するまで 2 日
間装用し続けた。その翌日、当科を紹介受診し
た時には右足背皮膚は壊死に陥っており、デブ
リドマン、持続陰圧閉鎖療法、植皮術を施行し
た。【考察・まとめ】弾性ストッキングの使用
頻度が増えるにつれ、これによる皮膚トラブル
の報告も増している。最近、南方らは弾性ストッ
キ ン グ を 装 用 し た 入 院 患 者 を 調 査 し、そ の
0.26% に褥創が発生したと報告している。また
弾性ストッキング使用時の圧測定を行い、特に
足関節部でのストッキング皺について注意を促
している。本症例は自己判断による装用、糖尿
病による末梢神経障害、身体の柔軟性低下によ
る自己着脱困難などが相関連してトラブルを生
じたが、装用中の異常なストッキング皺もあっ
たのかも知れない。弾性ストッキングの使用に
あたっては、適切なサイズの選択と定期的な観
察を医療従事者の管理のもとに為されるべきで
あると改めて感じさせられた。
123
<目的>足背部皮膚欠損には、靴を履くために
も脂肪織の少ない薄い皮弁による再建が求めら
れ、特に広範な欠損には、遊離皮弁移植が有用
である。今回われわれは、足背部の広範な皮膚
欠 損 に 対 し、Free anterolateral thigh
adipofascial flap を用いた再建を行ったため報告
する。
<方法>症例は 52 歳男性。21 歳頃、左足
背に腫瘍を認め、近医にて腫瘍切除術を施行す
るも再発を認め再手術を施行した。1年後に再々
発を認めたが放置していた。2009 年 1 月より急
速な腫瘍の増大を認めたため、近医を受診し、
精査加療目的に当院を紹介受診となる。整形外
科による腫瘍切除後、左足背に認める皮膚欠損
は 14×14cmであった。下伸筋支帯、前脛骨筋
は切除されており、長母趾伸筋腱と長趾伸筋腱
が露出していた。右大腿より皮弁を採取した。
皮膚は閉創可能な幅 7cm× 縦 20cmとし、腱
露出部を被覆するための adipofascial flap を幅
15cm× 長さ 20cmで挙上した。穿通枝は外側
広筋内穿通枝を2本含めて挙上した。動脈は左
足背動脈と外側大腿回旋動脈を端端吻合した。
静脈は、伴走静脈と大伏在静脈にそれぞれ端端
吻合した。ワイヤーを用いて、長母趾伸筋腱の
緊張を取り除くように背屈位固定とし、皮弁を
固定した。adiposal tissue 上には、皮弁生着後に
植皮術を予定することとして人工真皮を貼付し
た。初回手術後 16 日目に植皮術を行った。
<結
果>術後経過に問題なく、皮弁、植皮ともに完
全生着を認めた。
<考察>前外側大腿脂肪筋膜皮
弁は、薄くしなやかであり、滑動性に富む皮弁
である。利点として、
皮弁を同時挙上できること、
皮弁採取部の縫縮が可能であることなどがある。
術後は、皮弁が bulky にならないため靴を履く
こ と も 可 能 で あ っ た。足 背 再 建 に お い て は、
adipofascial flap が有用であり、側頭頭頂筋膜弁
や前鋸筋筋膜弁などの報告があるが、今回使用
し た、Free anterolateral thigh adipofascial flap
は有用な再建材料と考えられた。
P-17
P-18
上腕切断の 1 例
再接着術後2日目に嫌気性菌感染を生じた
左手不全切断の1例
伊藤 理(いとう おさむ)1、白井 隆之 1、
宮下 宏紀 2、鈴木 真澄 1、品田 春生 3
森田 礼時(もりた れいじ)、柳下 幹男、
門平 充弘、岸邊 美幸、島田 賢一、
川上 重彦
1 横浜市立みなと赤十字病院 形成外科
2 東京医科歯科大学 医学部 形成外科
3 横浜市立みなと赤十字病院 整形外科
金沢医科大学 形成外科
【目的】筋肉量の多い切断肢は、術後の全身管
理に難渋し、生着しても機能的な回復が困難で
ある。受傷者は長期入院を余儀なくされ、心理
的負担も大きい。症例の術後経過と心理的変化
について、
文献的考察を加えて報告する。
【症例】
71 歳男性。家族歴:特記事項なし。既往歴:
15 年前、左示・中指 DIP 切断。現病歴:空き
缶プレス機で作業中に誤って右上肢を挟まれ、
完全切断となる。当院に緊急搬送され、骨接合
後、動脈 1 本、静脈 2 本吻合、神経 2 本縫合し、
受傷 6 時間後に血行が再開した。
【結果】術後
3 日目に静脈血栓で再吻合、8 日目に胸水貯留
による呼吸不全となったが、切断肢は生着した。
【結論】切断肢再接着症例にとって患肢の生着
はスタートラインに過ぎず、機能が不完全な生
着肢と今後どう折り合いをつけて生活していく
かが最重要課題である。医療側も初期の治療結
果に満足するのみでなく、長期展望に基づいて
フォローする必要がある。
124
【症 例】43歳、男性【既往歴】特記事項なし【現
病歴】ショベルカーのキャタピラーに右手を巻
き込まれ、示指・中指・環指・小指の MP 関節
レベルでの不全切断を受傷した。【治療経過】 受傷同日、再接着術を施行した。十分な生食洗
浄の後に各指の粉砕骨折部を整復、動静脈の血
行再建を行い、手背皮膚欠損部を分層植皮にて
再建した。再接着術後2日目、示指・中指のうっ
血を認めたため、再手術を施行した。術中、腐
敗臭と、感染による壊死組織(掌側皮膚および
脂肪組織)を認めたため、可及的にデブリード
メンを行った。示指に対して動脈再吻合・静脈
移植を行い、中指は MP 関節レベルで切断し、
断端は開放創とした。創部の細菌培養から嫌気
性菌である Bacillus cereus が検出された。再手
術後、頻回の創洗浄と塩酸クリンダマイシンの
投与を行った結果、感染症状は消失し、示指・
環指・小指は生着した。 受傷から2ヵ月後、
軟部組織欠損および骨欠損に対し、遊離前外側
大腿皮弁および骨移植による再建術を施行し
た。【考 察】 切断肢指再接着術においては、
血行再建のための動静脈や関節などの温存を図
るために、創のデブリードメンが不十分となる
ことがある。また再接着術後の局所管理として、
疼痛による血管攣縮を予防する目的から、一般
的に頻回のガーゼ交換は行われないことが多
い。しかし、本症例の如く、屋外で受傷した土
壌汚染を伴う切断四肢症例に対しては、嫌気性
菌感染の可能性を念頭においたうえで、初期段
階での十分なデブリードメン、疼痛管理のうえ
での術後の頻回なガーゼ交換、術後早期からの
嫌気性菌を対象とした抗生物質の予防的投与な
どを考慮する必要があると考えられた。
P-19
P-20
人工物による豊胸術後胸部 3 度熱傷の治療
経験
熱傷分層植皮後の脱落部分に対するピンチ
グラフトの工夫
風戸 孝夫(かぜと たかお)、吉村 真理子
菅谷 文人(すがや ふみと)、相原 正記、
熊谷 憲夫
県立多治見病院 形成外科
聖マリアンナ医科大学 医学部 形成外科
[ はじめに ] 人工物を利用した豊胸手術患者に
おいて、胸部に熱傷などの外傷を受けた場合、
その後の創傷治癒において人工物の存在が問題
となる。今回我々は人工物による豊胸術後に、
胸部 3 度熱傷を受傷し植皮術を行った症例を経
験したので報告する。[ 症例 ]37 歳女性。平成
21 年 6 月、着衣に火をつけ胸部が燃えている
ところを近くの人に発見され当院に救急搬送さ
れた。来院時所見で左前胸部、腹部に DB2%、
DDB2% の熱傷を認め、ICU 入室となった。ま
た胸部視診にて人工物による豊胸術が疑われた
ため、CT 撮影を行ったところ、胸部乳腺下に
シリコンインプラントと思われる人工物が確認
された。全身状態の安定した受傷4日目に全身
麻酔下にデブリードマン及び分層植皮を施行。
左乳房下部は皮下脂肪層までのデブリとし、一
部は真皮を残した。術後植皮の一部に潰瘍の残
存が見られ、追加植皮を検討したが、保存的治
療により徐々に上皮化し、受傷後 60 日目に退
院となった。以後肥厚性瘢痕の形成は見られる
ものの、現在まで人工物の露出はなく経過して
いる。[ 考察 ] 人工物の存在する部位への外傷
における問題点としては露出と感染があげられ
る。本症例においても、熱傷に対するデブリー
ドマンによって被覆組織の脆弱化が生じ、軽微
な外力や人工物自体の張力で露出する危険性が
あった。また人工物を覆う組織が少なく血流不
全が生じれば感染リスクは高くなるが、これは
手術時や術後長期においても注意を要する点で
あった。今回は植皮と保存的療法によって治癒
したが、状況によっては植皮よりも皮弁、ある
いは人工物を除去すべきなどの術式選択が必要
となることがあり、今回のような場合、術前の
十分な検討を要すると考えられた。
熱傷に対する分層植皮を行った後、植皮が生着
せず、斑状、または比較的狭い範囲の未上皮化
部分を残す事がある。この場合、保存的な上皮
化を期待して、再手術の機会を逸し、上皮化ま
で非常に長い時間を要する事が稀ではない。今
回我々は、そのような分層植皮後の斑状に残っ
た未上皮化部分に対し、非常に簡便かつ、有効
なピンチグラフトを施行することによって、上
皮化までの時間を短縮できたため、その方法を
報告する。症例は 85 歳、男性。左下肢の9%
DDB−DB 熱傷に対し、メッシュ状植皮術を行っ
た。本人が植皮部を掻き毟った為、植皮が一部
分脱落し、1%ほどの未上皮化部分が大腿部に
残存した。包帯交換のたびに、他部位の生着し
たメッシュの一部で、比較的盛り上がっている
網目の部分を、無麻酔で切除し、3mm ほどの
切片に切り分けた。それらを未上皮化部分に置
き、シリコンガーゼとガーゼで創保護とした。
数回繰り返すと、島状に生着した皮膚から上皮
化がおき、短期間で上皮化が可能であった。元
来のピンチグラフトでは、採皮時に局所麻酔を
使用する必要があり、また、この方法は鑷子と
鋏さえあれば可能で、採皮もメッシュから非常
に簡便に、無痛で施行できるため、植皮術の工
夫の 1 つとして報告する。
125
P-21
P-22
医療被曝に起因する難治性放射線潰瘍の検
討と治難療方針
血友病患者の慢性血腫より発生した難治性
潰瘍の治療経験
藤岡 正樹(ふじおか まさき)、村上 千佳子、
増田 佳奈、土居 華子
福田 健児(ふくだ けんじ)、垣淵 正男、
西本 聡、藤原 敏宏、妻野 知子
国立病院機構 長崎医療センター 形成外科
兵庫医科大学形成外科
放射線は悪性腫瘍の治療に用いられるが、同時
に過量照射した場合、急性皮膚障害を生じるこ
とが知られている。とりわけ放射線障害に起因
する慢性皮膚潰瘍は深部臓器にまで至り , 骨髄
炎・異所性石灰化などを合併し難治である . こ
れらの潰瘍に対する保存的治療の可能性は甚だ
悲観的であるばかりでなく , 慢性炎症と照射と
の同時催癌作用による悪性変化は 10-28%に認
められるといわれている.したがって早期に潰
瘍に対する手術的治療を行うべきであるが , こ
れらの慢性放射線潰瘍は広範囲に及ぶためデブ
リードマン後の創の一期的縫縮閉鎖は不可能で
あり、何らかの皮弁を用いた再建が必要になる .
今回 2004 年から 2008 年までの間に当院で、
外科的に再建治療した放射線潰瘍 12 症例につ
いて検討する.このうち頸部悪性腫瘍切除後に
放射線療法を行ったものが 8 例と多く、全例瘻
孔を形成していた.これらの頭頸部瘻孔形成症
例は他の放射線潰瘍形成に比して放射線照射か
ら潰瘍発症までの期間が短かった.ついで卵巣
悪性腫瘍に対する放射線療法に因るものが 3
例、乳癌の術後放射線照射によるものが 1 例で
あった.これらの症例は筋皮弁による再―再建
手術(salvage surgery)を行うことで良好に治
癒した.
患者は48歳男性。幼少児より左前腕に血腫を
生じ慢性化していた。手関節の変形拘縮もきた
していた。2007年4月ごろより慢性血腫部
分に感染を伴い潰瘍化したため当科紹介受診。
患者は第 8 因子に対するインヒビターを生じて
おり、血液内科的にも長時間又は多数回の手術
侵襲による出血をコントロールするのは困難な
状態であった。第 8 因子大量投与のもと、全身
麻酔下で慢性血腫部分のデブリードマンを行っ
た。しかし、感染が持続したため2ヵ月後に2
回目のデブリードマンを行った。第8因子に対
するインヒビターの力価が上がっていたため、
2回目のデブリードマンの際はバイパス療法と
して第7因子の大量投与のもと行った。2回の
デブリードマンの結果、橈尺骨間の皮膚欠損、
骨間部分の組織欠損が生じ骨が露出した。通常
なら、遊離皮弁の適応だが、これ以上手術侵襲
に対する止血能維持は困難とのことで保存的に
診るしか選択枝がなかった。約6ヶ月洗浄と軟
膏処置で経過診たところ陥凹した形で上皮可し
外来フォロー可能な状態となった。整形外科領
域では血友病関節症は比較的有名な病態であ
る。経過の長い血友病症例ではこの症例のよう
に深部の慢性血腫に起因する難治性の皮膚潰瘍
も起こし形成外科を受診することが考えられ
る。文献的考察を交え報告する。
126
P-23
P-24
頸部食道癌術後の咽頭皮膚瘻に対して簡便
な局所皮弁を組み合わせて閉鎖しえた一例
敗血症性ショックに合併した Symmetrical
Peripheral Gangrene の経験
政岡 浩輔(まさおか こうすけ)1、
岩谷 博篤 1、永田 育子 1、吉田 智美 2、
渡邊 太志 3
新保 慶輔(しんぼ けいすけ)、野々村 秀明、
長谷川 泰子
1 新日鐵広畑病院 形成外科
2 新日鐵広畑病院 外科
3 新日鐵広畑病院 耳鼻咽喉科
高砂市民病院 形成外科
【はじめに】頸部食道癌術後の咽頭皮膚瘻の発
生は、経口摂取の遅延や入院期間の延長の原因
となり、また総頸動脈破裂を起こし得る危険な
病態である。我々は、基礎疾患が多彩な頸部食
道癌術後の咽頭皮膚瘻に対して、簡便な局所皮
弁を組みあわせることで閉鎖しえた症例を経験
したため、若干の文献的考察を含めて報告する。
【症例】58 歳女性。現症に慢性腎不全、二次性
甲状腺機能亢進症があり、血液透析を行ってい
る。頸部食道癌(T1bN0M0;StageI)に対して
当院外科で食道全抜去、咽喉頭摘出、胃管によ
る食道再建、両頸部郭清、永久気管孔作成術を
施行された。術後、吻合部閉鎖不全と診断され、
術後 8 日目に当院外科および耳鼻咽喉科で咽頭
皮膚瘻を作成された。咽頭皮膚瘻の閉鎖のため
に、術後 5 カ月目に当科紹介となった。【方法】
二期的手術を計画した。一期目の手術は、咽頭
皮膚瘻の両側に hinge flap を挙上し delay 操作
を行った。二期目の手術は、両側より hinge
flap を再挙上し、瘻孔閉鎖を行った。その際、
両側の hinge flap を S 字状に縫合することで、
皮弁に緊張がかからないように工夫した。その
後、頭側からの bipedicled flap により被覆した。
【結果】皮弁は血行障害を起こすことなく、咽
頭皮膚瘻は閉鎖しえた。現在、手術より半年経
過しているが、再発を認めず、経口摂取が可能
である。【考察】咽頭皮膚瘻は、瘻孔が小さい
場合には保存的加療で自然閉鎖することもある
が、瘻孔が大きい場合には自然閉鎖を見込めず、
有茎皮弁術または遊離皮弁術による各種の再建
法が報告されている。我々は、本症例に対して
基礎疾患および全身状態を考慮し、簡便で低侵
襲な再建法を考案した。我々が渉猟しえた限り
では、同様の方法は認められなかった。今後、
我が国では高齢化や透析患者の増加などに伴
い、同様の症例はますます増えると考えられ、
本法は簡便で低侵襲な術式として有用であると
考えられる。
127
【は じ め に】Symmetrical Peripheral Gangrene
(以下,SPG)は左右対称性に四肢末梢に壊死を
きたす非常に稀な病態である。今回われわれは,
肺炎球菌による敗血症性ショックにより生じた
SPG を経験したので文献的に考察を加えて報告
する。
【症例】58 歳女性。39℃台の発熱,血圧低下,
意識障害があり,当院内科に緊急入院となった。
感染源不明の肺炎球菌感染症が劇症化し,敗血
症性ショック,DIC に至ったと診断し,全身管
理が行われた。入院時より認めていた両手指・
足趾末端の左右対称性のチアノーゼは第 2 病日
で不可逆的な暗紫色変化となり,第 8 病日で黒
色変化となった。全身状態が改善した第 58 病
日で当科へ転科した。臨床所見上,明らかな炎
症反応やチアノーゼは認めず,画像及び生理検
査から末梢循環不全はないと判断した。断端形
成術をはじめとする手術的加療を行い,良好な
結果を得た。【考察】SPG は DIC,特に敗血症に
合併することがあり,DIC の発症から 24 ∼ 48
時間で左右対称性の四肢末梢壊死が完成する報
告されているが,発生頻度は少ない。敗血症に
多い理由として,血管収縮剤の使用やショック
によって小血管攣縮が生じ,同時に合併する
DIC により小血管の血栓閉塞が起こり,末梢循
環不全がさらに増悪するという機序が考えられ
る。SPG に対する有効な予防法は確立していな
いが,全身状態が改善し,末梢循環不全がない
ことが確認できれば早期の手術的加療は可能と
報告されている。末梢動脈性疾患や blue toe と
違い,SPG は原因となる DIC が改善すれば末梢
循環不全も改善するためと考えられる。本症例
でも手術的加療を行うことで,早期の社会復帰
や QOL の改善に役立ったと考える。
P-25
P-26
胸部皮下腫瘤を呈した肺外結核の一例
開口障害を主訴に当科を受診した破傷風の
一例
坂 いづみ(ばん いづみ)1、矢野 志津枝 1、
倉地 功 2、三鍋 俊春 2、波利井 清紀 3
篠田 大介(しのだ だいすけ)1、権太 浩一 1、
山岡 尚世 1、五来 克也 1、平林 慎一 1、
池田 弘人 2
1 豊岡第一病院 形成外科美容外科
2 埼玉医科大学総合医療センター形成外科・
美容外科
3 杏林大学形成外科・美容外科
1 帝京大学 医学部 形成・口腔顎顔面外科
学
2 帝京大学 医学部 救急科
【目的】 わが国では結核の新規登録患者は 3 万
人近く存在する。しかし結核性皮下膿瘍は日常
診療で接することが稀な疾患である。Chen ら
は皮膚結核の発症頻度は結核性病変の 1% 以下
であることを報告している。今回われわれは打
撲後の胸部皮下腫瘤が肺外結核であった一例を
経験したので報告する。【症例】 81 歳女性で
約 3 ヶ月前に右胸部の軽度打撲後、徐々に拡大
した 6×6cm2 有痛性弾性硬な皮下腫瘤を主訴
に来院。現病歴や、ワーファリン服用の既往か
ら慢性拡張性血腫と診断した。既往歴として
20 代で無菌性肺結核の為、右肺人工気胸が行
われ癒着を起こし無気肺となっている。心臓は
右側移動し腫瘤直下に存在する。41 歳時両側
乳房にシリコンバックを豊胸目的のため挿入術
施 行。77 歳 時 に 心 房 細 動 を 指 摘 さ れ
PT-INR1.45 前後でワーファリンを投与されてい
る。【方法】 打撲から 4 ヵ月後、7×10cm2 ま
で拡大した皮下腫瘤全摘出を行った。非炎症性
の嚢胞内部は黄白色膿で 100ml 流出し、周囲
大胸筋内に播種する黄色粒状膿様物質が存在し
た。膿は塗抹・培養同定に提出したがこの時点
では一般培養のみ提出したが陰性であった。
【結
果】 豊胸術を受けているためシリコンバック
上部に脂肪注入を行って脂肪変性を生じた可能
性も考えたが本人に否定された。術後 30 日で
一旦治癒した創が自壊した。再び膿を培養に出
すが塗抹培養同定でいずれも一般細菌陰性で
あったため、既往から抗酸菌も視野に入れ再検
査を行ったところ TaqPCR 法陽性、蛍光法陰性、
培養陰性で肺外結核を確認出来た。結核専門病
院 に 転 院 と な り RFP450、INH250、EB750、
PZA1000 開始した。【考察】 近年結核の患者
は減少しており、外来診察の上でまず皮膚結核
を念頭に置くことは少ない。原因不明の皮下膿
瘍を認めた場合、鑑別診断として肺外結核を考
えることも必要である。
128
( 目的 ) 顔面打撲傷後、開口障害を主訴に当科を
受診し破傷風疑いにより治療を行い、救命しえ
た症例を経験したので文献的考察を加え報告す
る。( 症例 ) 69 歳男性、飲酒後転倒し、前額
部に打撲傷を受傷した。病院は受診せず自宅で
様子を見ていたが受傷 5 日目、徐々に口が開き
づらく食事ができなくなった。受傷 7 日目、他
院脳神経外科を受診、前額部挫創 ( 約 5cm) の
処置および顎関節機能障害の精査目的で当科を
紹介された。中枢神経系疾患の除外目的で当院
脳外科、脳神経内科を併診させたが、画像上明
らかな異常所見はなかった。顔面骨 CT 上も、
開口障害となりうる脱臼、骨折はなかった。臨
床症状より、破傷風が疑われたため救急科を紹
介、入院加療とした。( 入院後経過 ) 同日、直ち
に気管挿管し鎮痛、鎮静薬投与による全身管理
を行った。治療は PCG の大量投与 (2400 万単位
/ 日 を 10 日 間 ) よ り 開 始 し 経 過 に 応 じ、
ABPC/CBT、CAZ を 投 与 し た。創 は
debridement を施行した。受傷 9 日目より、後
弓反張出現、歯牙の同様を来たすほどの咬筋の
著しい収縮を認めたため、筋弛緩薬の投与を開
始した。また創を debridement した組織のグラ
ム染色より Clostrigium tetani が検出され破傷
風と診断した。その結果受傷 30 日目、筋緊張
は軽快し、呼吸管理を離脱できた。受傷 51 日
目に軽快しリハビリ目的により紹介元へ転医と
した。( 考察 ) 破傷風は軽微な創でも発症し死亡
率 は 50% 前 後 と 高 い。し か し 創 か ら の
Clostrigium tetani の検出率は 30% 前後と以外
に低く、臨床診断により早急な全身管理のもと
治療を開始する必要がある。形成外科診療にお
いて、本症例にように顔面打撲傷後に開口障害
を主訴とする患者を診察する機会はまれではな
い。外傷後開口障害を来たした症例では破傷風
も念頭に置いた鑑別が必要と思われた。
Author
Document
Category
Uncategorized
Views
276
File Size
735 KB
Tags
1/--pages
Report inappropriate content