課題ゲームを中心にすすめるバレーボール授業

兵庫教育大学教職大学院
授業実践リーダーコース 授業実践アイディア集 2012
課題ゲームを中心にすすめるバレーボール授業
黒川正博・増澤康男
校種・学年: 中学校 1年生および3年生
教科: 保健体育
単元名: 球技「バレーボール」
あらまし
ねらいとなるプレーが頻出されるように仕組まれた課題ゲームを通し、1年生では「ラリーを通した
ゲームで基礎技能の向上を図る」、3年生では「セッターを中心とした攻撃の組み立てを工夫する」を
単元の目標とする授業を提案します。また、その際にわかりやすい表現として「落とす・落とさない・
組み立てる」というに言葉を用い、学習理解を促します。
手立てと活動
①学習内容(技能の目標)をゲーム
の中で大きく捉えさせるために、具
【授業展開例】 1年生
時
間
学 習 内 容
基礎練習(ドリル・チーム練習)
授業オリエンテーション・試しのゲーム
体的な技術ではなく、
「落とす」
「落
1
とさない」「組み立てる」と表現し
○アンダーハンドパス技術指導
2 ○手投げからのアンダーハンドパ
ス
ます。また課題ゲームについてもそ
バウンドありゲーム
〔落とさない〕
れらのどの内容を対象としている
のかを伝えて行います。
②授業の構成は前半をドリル練習
等による基礎練習、後半を課題ゲー
ムとします。ドリル練習は、基礎技
能の指導以外にゲームでのつまず
きや課題に合わせて実施し、ゲーム
課題ゲームのルール
課題ゲーム
○アンダーハンドサービス技術指
3 導
○2人1組でのパス練習
4 ○チームでの扇形パス
奥狙いゲーム
〔落 と す〕
○1人での直上パス
5 ○2人1組でのサーブレシーブ練
習
・バドミントンコート
・4人対4人
・アンダーハンドスロー
・ネットを高く設定(→パスの飛距離を
上げる)
・ワンバウンドでの返球可(3時間目
は、サーブレシーブのみノーバウンド)
・3球以内に返球する
・バドミントンコート
・4人対4人
・アンダーハンドサービス
・ダイレクト返球なし
・サービスラインより手前2m以内への
落球は3点とする
に直接活きる内容となるよう注意
します。
6
○1人での直上パス
○チームでの円陣パス
〔落 と す〕
〔落とさない〕
③1年生では、基礎となる技能を習
得しつつ、ラリーを通したゲームか
ミニゲーム
7
○1人での直上パス
○スパイク技術指導
8
○チーム(フルサイズメンバー)での円
陣パス
○フルサイズコートでのサービス
練習
・バドミントンコート
・4人対4人
・アンダーハンドサービス
・ローテーションを取り入れる。
らカバー等の集団技能へと学習を
すすめていきます。3年生では、ト
スに対して複数のアタッカーがス
パイクを打ちに動き、相手チームと
の駆け引きをプレーに取り入れて
いきます。※イラスト参照
フルサイズゲーム
〔落 と す〕
〔落とさない〕
9 ○チーム別課題練習
10
スキルテスト・単元末オリエンテーション
・バレーボールコート
・6人対6人
・アンダーハンドサービス
・ローテーションを取り入れる。
④ネットの高さは、平均身長の生徒
が腕を上げた状態からボール2個
分を目安とします。バドミントの支
3年生
1
2
○チーム内での円陣パス(チーム
内での技能の確認)
3
○チーム内での円陣パス(円の
中央に上げたボールを直上パス)
柱に塩ビパイプを接続して準備し
ます。また1年生では、痛さによる
恐怖心を取り除いたり、トスを上げ
やすくするために軽量ボール(EVA
素材 160g)を用いました。
期待される効果
ゲームを中心としているので常
に球技の本質である「攻防を楽しむ
こと」を感じながら授業がすすんで
いくことが期待できます。また学習
内容を「落とす」
「落とさない」
「組
み立てる」の3つで捉えることでチ
授業オリエンテーション・試しのゲーム
ミニゲーム
〔落 と す〕
〔落とさない〕
〔組み立てる〕
・バドミントンコート
・4人対4人
・アンダーハンドサービス
・ローテーションを取り入れる。
・バドミントンコート
○手投げのトスからのスパイク練 キャッチバレーゲーム
・4人対4人
習
・サービス限定なし
・1,2球目はキャッチ&スロー可
〔組み立てる〕
・ラストボールは弾く
・ブロックにビート板を使用する(4時間
5 ○直上トスからのスパイク練習
目のみ)
4
スペシャルゾーン
ゲーム
〔落 と す〕
〔落とさない〕
○クイックとオープンスパイクの組
7
〔組み立てる〕
み合わせ練習
6 ○スパイクとスパイクレシーブ
・バドミントンコート
・4人対4人
・サービス限定なし
・ネット付近の指定された場所のみドリ
ブルを可とする
・ラストボールは弾く
ーム内での目標や作戦が立てやす
くなります。さらに分かりやすい表
8 ○チーム内課題練習
現は、プレーの意識を高め、結果と
して集団技能に意識を向けること
につながります。
補
9
10
○2段トス(セッターへのパスミス
を想定)
フルサイズゲーム
〔落 と す〕
〔落とさない〕
〔組み立てる〕
・バレーボールコート
・6人対6人
・サービス限定なし
スキルテスト・単元末オリエンテーション
足
バレーボールは「ボールを弾いてプレーする」ことが難しく、なかなかゲーム内容が発展していきま
せん。そのうちに一部の技能の高い生徒に頼ったゲーム展開や、ラリーが長く継続されるだけで生徒自
身が満足してしまうことも少なくありません。そこで今回、3年生ではセッターを起点とした攻撃の組
み立てを段階的に取り入れる授業計画を提案しました。これによってバレーボールにおける「騙し」を
体感するとともにチーム全員がプレーに参加することが必要となってきます。作戦や役割分担等を通し
てバレーボールの学習の幅が広がるものと思います。
出典) 黒川正博(2012)
「落とす」
「落とさない」
「組み立てる」を意識させた中学校バレーボール授業
の実践-課題ゲームとの組み合わせを通して-,授業実践リーダーコース報告書(指導教員 増澤康男)