「ゴール型」のゲームの在り方

個人差に十分対応する豊かな内容の「ゴール型」のゲームの在り方
~タグラグビーの実践を通して~
大津市立瀬田東小学校
教 諭
小松 且弥
1.はじめに
新学習指導要領の改訂により、体育科を通してすべての子どもたちに最低限、教えるべき内容が
明確に示された。その内容から、子どもに身体能力を保障していくことがなお一層大切になってく
ることを強く感じた。また、ゲーム・ボール運動領域における、中・高学年の内容が、特定の種目
の学習から3つの型に類型されたことから、学習目標を明確にし、照らし合わせていく中で、どの
ようにカリキュラムとして体系づけていくのかということが問われていると感じた。そこで、ゲー
ム・ボール運動領域のカリキュラムを構築するためには、次の視点を元に考えることにした。
運動の面白さに十分に触れることができるように、子どもの興味・関心をとらえ、個人差に十分
対応する豊かな内容を運動の構造から考える。
そこで、ゴール型(ゲーム)の中から、運動局面が学習材として導きやすい「タグラグビー」を
取り上げ、その学習の在り方について考えていくことにした。ゲームを、「運ぶ」「組み立てる」
「シュートする」の3つの局面でとらえ、それぞれの局面に関わって学習課題が導かれ、その解
決に向けて、教材づくりや場づくりの工夫が必要となってくる。今回取り上げた「タグラグビー」
は、3つの局面の中の「運ぶ」局面においては、ボールを手で持って運ぶことができることから、
誰にでも活躍のチャンスがある。また、「シュートする」局面においてもゴール陣地に入る、も
しくは入ってボールを置くという方法であるため、難しい技能を用いなくても容易に得点をあげ
ることができる。このように2つの局面がやさしい課題であるので、戦術を考え、作戦を立てる
面白さを引き立てるような学びに魅力を持たせ、「組み立てる」局面に重点をおいた学習指導過
程を構想することがより展開しやすいものだと考える。
2.本単元の魅力・価値
・自分やチームに適した課題の解決に取り組みながら、戦術を考え、作戦を工夫して立てたり、自分
たちが考え出した作戦を成功に導かせたり、トライが取れることが魅力である。
・練習からゲーム、そして作戦タイムやふり返りタイムまでチームで助け合って、課題解決的に関
わっていくことで、チーム意識の高まりにもつながっていくところに価値があると考える。
3.本単元で子どもにつけたい力
・味方の動きに合わせて状況を判断し、ボールを持って運
んだり、必要に応じてパスを送ったりする力
・得点しやすい場所を見付け移動し、パスを受けてトライ
する力
・ルールを工夫したり、チームの戦術を生かして独自の作戦を立てたりする力
・仲間と助け合って成果や課題を話し合い、練習やゲームを課題解決的に進めていく力
4.成果と課題
「組み立てる」局面をどのように学ばせるとよいか
・今回実践してきたゴール型の「タグラグビー」は「運ぶ」
「シュートする」局面で、面白さを味わ
いながら、基本的な技能を最低限、身に付けることができた。だから、「組み立てる」局面に重点を
おいて、子どもたちは見る間に主体的にチーム戦術を考え、作戦を立て、教師が与えた作戦例を
まねるだけでなく、チーム独自のオリジナルの作戦をつくり出すなど課題解決的に学習に向かう
ことができた。さらに興味を持って多様な作戦を考え出そうとチームで学習時間以外にも「関わり」
を持つようになってきた。リーグ戦で使う作戦を学習時間以外の時間に、チームで自主的に集まっ
て確認する姿が見られた。また、タスクゲームⅢの中で「自分のチームに今必要な練習を考えて取
り組んでいこう。例えばボールを持たないときの動きがいまいちわからないという課題があれば、
ランニングパスに戻ってもう一度チームでパスを回す中で、確認していく練習をすけばいいし、チ
ームで使える時間を有効に使っていこう。そして練習試合やリーグ戦に作戦を成功させよう。
」と指
示を出していたこともあって必要に応じて習得段階の学習に戻って取り組んでいるチームもあった。
このように常に作戦を組み立てることを意識して、いろいろな作戦を成功させようと探求心を持ち
続ける子どもが多くいたことは成果であると言える。同時
に今後ゲーム・ボール運動領域の3つの局面の中の「組み
立てる」局面に重点をおいてタグラグビーやフラッグフッ
トボールを取り上げることは、非常に重要であると考える。
今後の課題
・子どもたちが「わかる・できる」ような道筋を教師自身が考え
ることで、見通しを描き、実際、「学習」と「指導」の関係を生み出し、そのプロセスを考えさせていく
必要性を感じた。学習の中で子どもたちが出会うであろう課題やつまずきを、いかに先取りしてお
くかに関しては今後の課題である。
実践を通して感じたこと
・タグラグビーで身に付けた「組み立てる」局面の戦術やパスを受けるための動きは、サッカーの
学習に生かしていくことができる。フラッグフットボールの学習で身に付けた「組み立てる」局面
の戦術やボールを持たないときの動きは、バスケットボールの学習に生かしていくことができる。
このようにゲーム・ボール運動領域において、種目固有の技能としてのとらえではなく、攻守の技
能(類似性・異質性)や型に共通する動きや技能を系統的に身に付けていく必要があると改めて感じた。