コーチング・プロセス - Marshall Goldsmith

Talent Management
コーチング・プロセス
マーシャル・ゴールドスミス
エグゼクティブ・レベルの才能開発に責任がある多くの⼈材リーダーは、ある時点で外部のエ
グゼクティブ・コーチを雇うべきかと質問する。私は⽣活のためにエグゼクティブ・コーチン
グを⾏っているので、この問題を客観的に回答するのは少し難しい。しかし、私はいつエグゼ
クティブ・コーチを採⽤するのか、どのようにしてエグゼクティブ・コーチを採⽤するのか、
そもそもエグゼクティブ・コーチを採⽤するべきかについて、いくつかのガイドラインを提⽰
できる。問題となっているエグゼクティブを CEO の後継者としよう。
最初に、潜在的な CEO のニーズについて⼤まかな分析をして下さい。このメモは⾏動コーチン
グ(私がよく知っていることだ)に焦点をあてるべきだ。もしあなたの後継者が様々な領域で
⽀援が必要だとしたら、彼らのニーズを記述せず、コーチになるべき⼈に彼らがこの種の課題
を扱う資格があるかを聞いて下さい。コーチに専⾨領域の記述の依頼から始めて下さい。例え
ば、私の専⾨領域はリーダーにポジティブで永続的なリーダーシップ⾏動の変化を実現させる
ことである。私は、戦略的、機能的、技術的な「どうやってスピーチをするか」とか「どうや
って組織をつくるか」といった類いのコーチングはしない。この種のコーチングは全く間違っ
ていない。それらは私がやっているものではない。
私はコーチングについて⾺⿅げたリクエストを受ける。ある製薬会社は私に将来有望な研究開
発部⾨⻑のコーチングを依頼した。私がその⼈の主要な課題を聞いた時、
「彼は医療技術を更新
していない」と⾔われた。私は「私もそうです。私は酷い科学者を良い科学者にすることや、
酷いエンジニアを良いエンジニアにすることはできません。もしお宅の潜在的な後継者がマー
ケティングや財務などのスキルを磨く必要があるなら、その分野で専⾨知識のあるコーチを⾒
つけて下さい」と答えた。
戦略は取組むのが特に難しい領域である。私が推薦できる戦略家は世界中でほんの数名しかい
ない。C.K.プラハード (C. K. Prahald) や、ビジャイ・ゴビンダラジャン (Vijay Govindarajan)
などの偉⼤なる思想家は、私よりも遥かに上⼿にやるだろう。あなたの後継者の戦略的なビジ
ョンは、会社の将来を決定するといってもよい。なので、この領域で誰にアドバイスを求める
かは慎重になるべきだ。あまりに多くの「専⾨家」が、彼らの経歴が戦略についてアドバイス
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する資格が全くない時でも戦略コーチングに関して知識豊富なふりをする。私は戦略の専⾨家
ではないが、私が専⾨家でないことを充分に知っている。
もしあなたの後継者が特定の領域でのコーチングが必要であれば、その領域に特化したコーチ
を雇いなさい。例えば、デビッド・アレン (David Allen) は⽣産性と組織化に関する真の専⾨
家である。アンドリュー・ソベル (Andrew Sobel) とデビッド・マイスター (David Maister)
は 専 ⾨ サ ー ビ ス に お け る 専 ⾨ 家 で あ る 。 ロ バ ー ド ・ デ ィ レ ン シ ュ ナ イ ダ ー (Robert
Dilenschneider) はエグゼクティブのプレゼンスに関する専⾨家だ。
CEO レベルでは、コーチングに対するリクエストは⾏動に関するもので、技術的、機能的、戦
略的なものではない。外部のエグゼクティブ⾏動コーチを持つことの最初の利点は、データ収
集の際の秘密性である。内部者が潜在的な CEO に関する根拠がしっかりした情報を集めるのは
難しい。外部者はこの種のデータ収集においてより信頼される傾向がある。
外部コーチの⼆番⽬の利点は、信頼性である。もしあなたの後継者がある領域での⽀援を必要
としているなら、シニア⼈材エグゼクティブとしての信頼性が持てるが、コーチや教師として
の信頼性は低い。
外部コーチの第三の利点は、時間である。私はこれまで全く忙しくない⼈材リーダーに会った
ことがない。どのくらいの時間をあなたはコーチング・プロセスに投⼊するつもりだろうか。
私は私がよく知る CEO から将来有望な後継者をコーチするよう依頼された時、私は「あなたは
なぜ私にこれをすることを望んでいるのですか。あなたは私のクラスに数回参加したことがあ
る。あなたは私同様に私のコーチング・プロセスを理解している。あなたがご⾃⾝でやってみ
てはいかがですか」と質問した。
彼は笑ってこう答えた。
「最初にあなたは私以上にコーチングの仕事を愛している。だから、あ
なたは私よりもよりモチベーションがあるのです。第⼆に、あなたは私があなたと同じくらい
にできると⾔うが、私はあなたが私以上にコーチとしての能⼒を持っていると思います。第三
に、私は多くのことにコミットしており、私⾃⾝でこのことをする時間がないのです。第四に、
あなたの報酬は⾼いが、あなたは私がやるよりも随分安上がりだ。だから、あなたを雇うこと
は会社に多⼤の⾦額を使わせないで済むことになる」
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私は後継者のコーチングを終了したが、CEO はプロセスに関与し続け、この成功における主要
なプレイヤーとなった。たいていの場合、私はエグゼクティブ・コーチを雇うことは後継プロ
セスの有⽤な部分になり得ると信じている。しかし⼈材リーダー、CEO、コーチングを始める
責任のある他の誰でも、全体のプロセスに責任を持たねばならない。彼らは外部のものよりも、
どうすれば組織の次のリーダーになるかそのコツを知っている。
マーシャル・ゴールドスミス博⼠は、世界で最も影響⼒のあるリーダーシップ思想家としてシ
ンカー50 のリーダーシップ部⾨の第⼀位に選ばれた
(ハーバード・ビジネス・レビュー誌後援)。
リーダーシップ部⾨の第⼀位に加えて、彼は世界のビジネス思想家の第七位にランク付けされ
た。著作の”What got You Here Wonʼt Get you There”はその年のビジネス書籍のベストセラ
ーのトップ 10 に⼊った。別の著書”MOJO”は 19 位であるが、⼆年連続でトップ 20 位内に⼊っ
ている。
和訳︓秋元祐次郎(株式会社秋元アソシエイツ、http://www.akimotoassociates.co.jp)
Translation by Yujiro Akimoto, Akimoto Associates, Inc., Tokyo, Japan
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