ポイント 2・未来を表す日本語の現在形 ポイント 1・バランスとリズムを

ポイント 1・バランスとリズムを生かす
長文 1
ポイント 2・未来を表す日本語の現在形
次の英文を読んで、○訳例と模範訳例の語順を比べてみましょう。
まず次の英文を見て下さい。
Alex bought a bunch of flowers which he planned to present to his fianceé.
This is to be the name of our company from now onwards.
○訳例
アレックスは婚約者にプレゼントするための花束を買った。
△訳例
これがこの先、わが社の名前になる予定なのだ。
アレックスは花束を買ったが、その花は婚約者にプレゼントするものだ
○模範訳例
これがこの先、わが社の名前になるのだ。
○模範訳例
った。
○訳例、模範訳例とも原文の内容を正しく伝えていますが、模範訳例は英文の語順を
尊重することによって、文章展開(=書き手の意識の流れ)も忠実に再現しています。
次は、訳し上げると原文と文意が食い違ってしまう例です。
At the party, Judy was introduced to a handsome young man who happened to be interested in
the oriental history which was her major.
×訳例
○模範訳例
そのパーティーで、ジュディは彼女が専攻していた東洋史にたまたま関
未来形
一見、△訳例の方が英文 be to の内容を忠実に表しているようにも感じられますが、△
訳例の文末にはどこか違和感があります。それは、be to が確実性の高い未来を表すのに
対して、この文における「予定」という訳語にはどこか「不確実な未来」の響きがある
からです。
それでは「予定なのだ」の代わりに、同じく未来を表す言葉「
(なる)だろう」を使っ
て訳してみましょう。
「これがこの先、わが社の名前になるだろう」
これでもやはり「不確実な未来」の響きになってしまいます。一方、模範訳例では、
心のあったハンサムな青年に紹介されました。
現在形「なるのだ」を使ったことで、未来のことが十分に表現され、しかも△訳例より
そのパーティーで、ジュディはハンサムな青年に紹介されましたが、そ
座りの良い日本語になっています。
の青年はジュディが専攻していた東洋史にたまたま関心を持っていまし
た。
×訳例では、ジュディは「東洋史に興味がある人」ということで青年を紹介されたと
いう意味にも取れます。しかし、英文を見ると、青年を紹介され、話をするなどしてか
ら青年が東洋史に興味があることを知ったという流れであることがわかります。
さらに、次の例文を見てみましょう。
Antonio is going to play on our team in April.
○訳例
アントニオは 4 月から僕らのチームでプレイする予定です。
○模範訳例
アントニオは 4 月から僕らのチームでプレイします。
○訳例、模範訳例とも未来の事柄を表現できています。しかし、どちらかというと
このように、とりわけ関係詞節を含む長文は、原文の語順を尊重した方が文意のはっ
きりした訳に仕上がります。そのためには、関係詞の前で文を切って訳すのも 1 つの方
「プレイします」と現在形で言い切った模範訳例の方が、確実性の高さを感じさせます。
このように、日本語では現在形で確実性の高い未来が表現できるのです。従って、未来
法です。ただし、原文の語順にこだわるあまり、文意の損なわれた訳文にならないよう
を表す原文を、いつも「∼の予定です」
「∼でしょう」などと画一的に訳す必要はありま
に注意が必要です。最終的には日本語としてのバランスやリズムも考慮して判断します。
せん。現在形を使うか、「∼の予定」「∼でしょう」を使うかは、原文の確実性の高低を
考慮して決定します。
●基本的に長文は英文の語順を尊重して訳す。
●英文の語順を生かすために、関係詞の前で文を切って訳す方法がある。
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●日本語では、現在形で確実性の高い未来を表現できる。
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❀日本語セミナー 1
長文における主語と述語の位置
日本語の文章は「主語」+「目的語・補語」+「述語」の語順から成り立つので、長
文では「主語」と「述語」の間に長い修飾語を伴う「目的語・補語」を置きがちです。
しかし、
「主語」と「述語」が離れれば離れるほど、読み手にとっては文意がつかみにく
くなってしまいます。例えば下の文を見てみましょう。
s警察は本日未明、人命尊重の立場から、これまで極秘に捜査を進めてきた身代金誘
拐事件の人質救出と犯人の現行犯逮捕による事件の解決を発表した。
この文では、「主語」「述語」の間に長い修飾語を伴う目的語があるため、「主語」と
「述語」の関係がわかりにくくなっています。このような場合、「人命尊重の立場から、
これまで極秘に捜査を進めてきた身代金誘拐事件について、警察は本日未明、人質救出
と犯人の現行犯逮捕による事件の解決を発表した」のように、修飾関係を整理して「主
語」と「述語」を近づけたほうが文意がはっきりします。
一方、英文は「主語」+「述語」+「目的語・補語」の語順が基本ですから、後から
修飾語をつけ足す形で比較的自由に長文を構成できます。しかし、それをそのまま日本
語の語順にあてはめたのでは、あいまいさが生じてしまうのです。
❀日本語セミナー 2
時制と日本語
複文を和訳するときは、英語の時制に惑わされないで、日本語の流れを重視して訳す
ことが必要です。次の例を見てみましょう。
He said he had a cold.
×訳例
彼は風邪を引いていたと言った。
○模範訳例
彼は風邪を引いていると言った。
he had a cold の部分の過去形をそのまま「風邪を引いていた」としては誤訳になって
しまいます。この英文は He said,“I have a cold.”と言い換えられ、he had a cold の部分は
単に時制の一致によるものだからです。
では、もう 1 つの例を見てみましょう。
You can go out to play if you finish your homework.
△訳例
宿題が終わると遊びに行ってもいいですよ。
○模範訳例
宿題が終わったら遊びに行ってもいいですよ。
△訳例の「宿題が終わると」の部分には違和感があります。主節の「遊びに行く」は
従属節の「宿題が終わる」という事柄の後に起こることであり、このような場合、日本
語では 2 つの事柄の前後関係を反映して「宿題が終わったら∼」とするのが自然なので
す。
一般に、英語では時制の一致の原則が支配的であるのに対し、日本語は話の流れに沿
ってそのつど時間的な焦点が移動するところにその特徴があるといえるでしょう。
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