建築学部開設記念 レクチャーシリーズ 第 2 回 グエナエル・ニコラ 「FUSION」 2011 年 5 月 27 日(金)18:00 ~ 場所:工学院大学新宿キャンパス 3F アーバンテックホール 東京に来た理由 術的にもできるところが海外と違う。 アイデアを持っている人は磁石のようなもの。その人のア UNIQLO MEGASTORE SHINJUKU では、オリエンテー イデアにエンジニアや技術者が集まる。もともと日本の伝統 ションで売り上げ目標 2 日間で5億円という条件が出され、 文化には興味がなかった。伝統文化がわからないし、わかり あとは自由にデザインを任された。銀座の街に見られるよう にくい。フランスからきたのは、東京に興味があったから。 な、ウィンドウショッピングの時代はもう終わっていて、多 東京で未来をつくりたかった。プロダクト、カメラ、車など くの人はインターネットで商品を見ている。新宿は視覚的に のデザインを通じて。 うるさい街なので、昼間は真っ白のファサードにして逆に目 BUTSUDAN は最初に請けた仕事。クリスチャンなので仏 立たせた。鏡を貼ってさらに広く見せる。結果的に、売り上 壇を見たことなかった。仏壇屋でサイズや価格を知りショッ げは予想の 1.5 倍になった。 クを受けた。形をつくるだけでなく、開く時のストーリーが UNIQLO MEGASTORE SHIBUYA は、中は小さいが外 生まれるよう、レイヤーを組み込んだ。 を大きく見せるデザインで、プレゼンの時にばかでかい模型 デザインを先に出して可能性を示す をつくって、オリエンテーションと違った提案を行なった。 DISNEY MOBILE は、プロダクト、パッケージ、店舗に UNIQLO GINZA STREET は銀座の新しい道がコンセプ またがるデザイン。ディズニー商品によくある派手な色づか ト。交差点のイメージなので、床に横断歩道のグラフィック いではなく、モダンな黒を使った。パッケージは楽しさを演 を描いた。ファサードにドアをつくらなかったので、人が入 出し、仏壇のときと同じ考え方で開ける時にストーリーを持 り過ぎた。 たせた。買った後で捨てられないようにしたかった。シーク NIKKEI SHINBUN MEDIA OBJECT で は、2 階 エ ス カ エンスやストーリーでどうコミュニケートできるかを考えて レーター奥のスペースについてデザインを依頼されたが、結 いる。携帯電話は基本的にスペックがすべて決まっているの 局そこは何もせずにロビー全体に、新聞が印刷されていくと で、デザインでやれることは少ないのだが、クオリティの高 きのイメージをオブジェ化したものを提案した。長さ 180m いものをつくりたかった。クライアントの初回インタビュー 高さ 2.5m のメディア・オブジェクト。技術者も面白いこと 時に、まだ要求されていないパッケージや店舗などのデザイ をやりたいと思っている。180m をシームレスでつくるとい ンをつくって持って行った。クライアントの期待より早めに う無茶な依頼を施工側に伝えたら、そのとおりにやってもら デザインを出すことが重要。止められるかもしれないが、意 えた。日本ではお願いしたらなんでもできる。ただし、面白 外と通ることも多い。デザイナーとはみんなが考えられない くないことはやってもらえない。 アイデアを出し、可能性を示さないといけない。学校の課題 見たことのない家具 のように、オリエンテーションの範囲内でデザインをまとめ CASSINA IXC./ BOOMERANG SERIES は家具のデザ るのは、何か物足りなくてつまらない。コンペは要項通りで イン。11cm の厚みでできたシンプルなソファをデザインし はなく、好きなことをやればよいと思っている。日本は、技 た。直線の空間にこのソファを置くことで、少し動きが出て #2-p1 くる。テーブルはソファとのバランスが悪くなりがちで難し い。ここではアクリルを使って透明で見えないテーブルをつ くった。意外と売れている。フランスの実家には 57 脚もの 椅子があったので、見たことがない家具をつくりたかった。 TOKYO FIBER ‘SENSE WARE’ は繊維会社とのコラボ レーションでベンチをデザインしたもの。人がいるときに光 るため、必要なところは見えて、必要ないところは見えない ようになっている。機械ではつくれないので、ファイバーの メッシュをハンドメイドで制作した。 新しい世界を体感する展示 LEXUS RX MUSEUM はイベント会場のデザイン。新し い世界を体感する展示をつくろうとした。エントランスはロ ■グエナエル・ニコラ(GWENAEL NICOLAS) 1966 年 フランス生まれ 代表作 ゴだけを浮かび上がらせて、ファイバーの中に車がある状態。 1988 年 E.S.A.G ( パリ ) インテリアデザイ ユニクロメガストア 日経メディアウォール、 車は小さく見えるようにしてほしいという依頼だった。すべ 1991 年 RCA ( ロンドン ) インダストリアル てを光のラインと車のラインとでコネクトしている。高級車 のイベントにしては、クレームもなくうまくいった。 ン学士号 デザイン修士号 カネボウセンサイスパ、MIXX バー & ラウン ジ、SWAROVSKI クリスタルパレス、LIGHTLIGHT、レクサス RX ミュージアム 来日後、フリーランス活動 1998 年 キュリオシティ設立 LIGHT-LIGHT MILAN/TOKYO はミラノと東京で行った イベント。ギャラリースペースのなかに 100 個のライトが 浮いている状態。写真を撮れない、写真だけでは経験できな いものをデザインしたかった。プログラムで光と風をコント 2004 年 E.S.A.G ( パリ ) 名誉修士号取得 建築インテリアからプロダクト、パッケージデ ザインまでシームレスに活動。アートとも呼べ る光をテーマとしたインスタレーションは各国 で話題を呼ぶ。 ロールした。 SWAROVSKI CRYSTAL PALACE 2010"SPARKS” で は部屋の中に長い 1 本のラインで、LED が発光しクリスタル が、これはデザインしてからそれに合う土地を探した。どん が光る。4000 個のクリスタルをステンレスパイプに取り付 な生活をしたいかを考え、ガラスボックス+スロープ(階段 けた。プログラミングによって光を変化、移動させる。2008 が嫌いなので)で構成した。床は 20mm の鉄板とフローリン 年にロンドンでプレゼンしたときには、技術がなく実現でき グだけで、スロープから内部が見える。トイレットペーパー なかったが、その後技術が発展し実現可能になった。好きな からトイレの水まわりをデザインしていった。キッチン、ト ことをやって、あとで技術が発達するのを待つというやり方 イレ、レンジフード、水洗などは、デザイナーではなく、企 もありだ。できそうになくても、いいアイデアがあれば出し 業の商品のカスタマーでもある。メーカーのプライドでファ た方がよい。 サードは一枚のガラスで実現できた。キッチンフードなどは INTERNI MUTANT ARCHITECTURE "SUSPENDED オリジナルでつくっている。 COLORS" はミラノでのインスタレーション。すごく古い建 DREAMTELIGNECE は夢のある、意味のあるデザイン。 物の中庭に、ファイバーでアーチを連続させたものをつくっ 周囲の木にワイヤーを張って吊った家の構想。900kg のアル た。高さ 7m。既存建物のアーチを意識している。風で動く ミでできている。アラップ社の金田充弘さんによって構造計 ほど軽い。頑丈なストラクチャーをつくりたくはなかった。 算は済んでいる。風でぐるぐる回り、風水、季節の木々、風 自然と一緒に動く建築を考えている。 景に合わせて方向を変えられる。このアイデアからさらに、 デザイナーではなくカスタマー 設備は?家具は?水は?構造は?といった問題が出てくる プレゼンとは、相手にプレゼントすること。ポートフォリ が、ひとつひとつ問題を解決していく。水まわりには新幹線 オをいろいろなところに送ったが、返事がまったく来なかっ の技術を使っている。 た。戦略を変え、 かっこいい小さなパッケージに種をいれ、 「一 対談 グエナエル・ニコラ × 飯島直樹 × 冨永祥子 緒に仕事をしたら、この種が大きくなります」というような プロダクトと建築の精度の違いにびっくりした。プロダク メッセージをつけて送ったら、30 人に送って 22 人から返事 トは考えたものがそのままでき、建築は設備・電気系統の問 がきた。そこからようやく話をすることができる。デザイン 題のため、模型や図面との違いが生じる。 を送ってアクションしなければならない。 技術的に日本だからできることが多い。インテリアという HOUSE 2003-2005 は自邸のプロジェクト。建築をつく 閉じられたジャンルに興味はない。いい建築にインテリアは るプロセスとして、普通はまず土地を探してから設計をする いらないとも思っている。 #2-p2
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