LAAN-C-XX031 島津アプリケーションノート No.30(食品) Intensity % 100 0 100 200 300 400 m/z Food 50 GC/MSによる不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 岡村 嘉之 Y.OKAMURA 芝本繁明 S.SHIBAMOTO 1.はじめに 脂肪酸は鎖状炭化水素の末端にカルボキシル基 肪酸の総炭素数および二重結合の数と位置の確認 を持つ化合物で,炭素数の多い脂肪酸は高級脂肪 は非常に重要で,これには GC/MS によるマススペ 酸と呼ばれています(高級脂肪酸の定義は炭素数 6 クトルの解析が有効です。 個以上や 12 個以上と諸説あります)。また,不飽和 脂肪酸の総炭素数と二重結合の数は,その脂肪 結合をもつ脂肪酸は不飽和脂肪酸と呼ばれます。 酸メチルエステルの GC/MS による分子イオンから 天然物の場合,不飽和結合の多くは二重結合であ 決定できます。脂肪酸メチルエステルの多くは NIST り,その位置や数の違いにより多くの異性体が存在 などのマススペクトルライブラリ集に登録されており します。それらは化粧品や工業製品などにも使用さ GC/MS によるシミラリティ検索によって定性可能で れています。 す。しかし,シミラリティ検索による定性で二重結合 不飽和脂肪酸は炭素数や二重結合の数と位置に 位置の情報を得ることはできません。 よって生体内での役割が異なることから,不飽和脂 分析計測事業部 応用技術部 GC/MSによる不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 1 Application Note No.30 GC/MS による二重結合位置の決定は,ピロリジド 1) 件や適用範囲を検討され,簡便で適用範囲の広い不 2) 飽和脂肪酸の二重結合位置決定方法を確立されま やピコリニルエステル などの各種誘導体化法が古 した くから知られています。これらの誘導体化法では, 4,5) 。 GC/MS により化合物の分子イオンが検出でき,さら 本アプリケーションノートでは,山本先生ご指導の に炭化水素鎖の C-C 結合が開裂して生じるフラグメ もと行った,GC/MS による二硫化ジメチル付加法を ントイオンが検出されます。このフラグメントイオンは 利用する不飽和脂肪酸の二重結合位置決定法を報 14u の差で検出されますが,二重結合部分でのフラ 告します。 グメントイオンの差は 12u となり,この部分を解析す 1) Andersson,B.A. and Holman,R.T. Lipids, 9, ることで,二重結合の位置を決定することができま 185-190 (1974). す。 3) 2) William W. Christie, Francis が発表した一価不飽和脂肪酸に二硫化 Susan B. Johnson ジメチルを付加させる方法は,得られるマススペクト Elizabeth Y. Brechany, and Ralph T. Holman, Lipids, 21, 657-661 (1986). ルが単純であり,二重結合位置を示すフラグメントイ オンの強度比も高いことから,容易に二重結合位置 3) G.W.Francis,Chem.Phys.Lipids,29,369(1981) の解析が可能です。 4) 芝原,山本ら, 油化学, 34, Vol. 8, 618, (1985) 5) 山本,芝原ら, 油化学, 40, Vol. 6, 497, (1991) 大阪府立大学 芝原 章先生,山本公平先生は, この解析方法に着目し,二硫化ジメチル付加反応条 2.実験 ガスクロマトグラフィーで脂肪酸を分析する場合,高 今回のアプリケーションノートでは,メチルエステル 級脂肪酸は誘導体化して分析することが一般的です。 誘導体化を行った後,二重結合位置決定のための誘 誘導体化することにより化合物の極性を下げて揮発性 導体化を行いました。 二重結合位置決定を容易に行うことができる二硫化 を高めることで,より高感度で安定した分析を行うこと が可能となります。 ジメチル付加法による結果と,古くから二重結合位置 誘導体化法としてはアルキル化が一般的で,メチル 決定法として用いられているピロリジン誘導体化法に エステルもしくはエチルエステル誘導体化が行われま よる結果を比較しました。 す。アルキル化は,GC/MS で分子イオンが明確に検 出される点においても有効な誘導体化法です。 2-1.測定成分と試料調製 今回の検討では,二重結合位置が判明している試 表 1 に測定成分を示しました。二重結合位置はカル 薬を購入し試料としました。炭素数 18 個で二重結合 ボキシル基の炭素から数えた表記としました。比較と の数が 1 個(モノエン)と 2 個(ジエン)の不飽和脂肪酸 して炭素数 18 の飽和脂肪酸であるステアリン酸につ について測定し,モノエンについては二重結合位置が いても測定しました。各単一成分試料と全種類混合 異なる2種類と,それらの cis 体,trans 体を測定しまし 試料をそれぞれ調製して測定を行いました。 た。 表 1 測定成分 成分名 二重結合数 二重結合位置 幾何異性 略式表記 ステアリン酸 0 - - 18:0 オレイン酸 1 9 cis 18:1(9)c エライジン酸 1 9 trans 18:1(9)t cis-バクセン酸 1 11 cis 18:1(11)c trans-バクセン酸 1 11 trans 18:1(11)t リノール酸 2 9,12 cis,cis 18:2(9,12)cc GC/MSによる不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 2 Application Note No.30 2.誘導体化と分析条件 表 1 に示したステアリン酸以外の各標準品をメタノー 今回の検討では標準試料を使用したため,誘導体 ルで溶解して 100g/L 溶液を,ステアリン酸は 10g/L を 化処理後の精製操作は行いませんでした。食品や生 調製して各標準原液としました。各種メチルエステル化 体試料などの実試料を対象とした場合は,目的に応じ 試料は,各標準原液 1mg をメチルエステル化して調製 た精製操作が必要と考えられます。食品関連試料を対 しました。 象とした二硫化ジメチル付加での精製工程の一例を含 ピロリジン誘導体化と二硫化ジメチル付加には,メチ んだ前処理フローを図 3-2 に示しました 1)。 ルエステル化試料 50µg を使用しました。図 1~3 に各 1) Akira Shibahara , Kouhei Yamamoto , Akemi Kinosita , 処理のフローを示しました。誘導体化の器具は,ネジ口 Barbara L. Anderson , J. Am. Oil Chem. Soc. , 85 , 93-94 試験管を使用しました。 (2008) ネジ口試験管に各標準原液1mgを採取 ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ ━━ 14%三フッ化ホウ素/メタノール溶液1.5mL 100℃,5分間加熱後冷却 飽和塩化ナトリウム水 8mL ヘキサン2mLで4回抽出 無水硫酸ナトリウムにて脱水 濃縮 ヘキサン1mLに定容 (1000mg/L) ネジ口試験管に脂肪酸メチルエステル試料50µg ━━ ピロリジン1mL,酢酸0.1mLに溶解 ━━ 100℃,1時間加熱後冷却 ━━ 過剰なピロリジンを窒素気流下,50℃にて ━━ ━━ ━━ ━━ ヘキサン1mLに定容 (50mg/L) 図2 ピロリジン誘導体化フロー 図1 脂肪酸メチルエステル誘導体化フロー ネジ口試験管に脂肪酸メチルエステル試料50µg ━━ ヨウ素/二硫化ジメチル(13g/L)0.1mL ━━ 35℃,30分間振とう ━━ チオ硫酸ナトリウム飽和水を ヨウ素の色が消えるまで添加 ━━ 10%エーテル/ヘキサンで抽出 (1mLで4回抽出を行い,計4mLを得ます) ━━ 無水硫酸ナトリウムにて脱水 ━━ 乾固 ヘキサン1mLに定容 (50mg/L) 図3-1 二硫化ジメチル付加法フロー 蒸発させる エーテル/ヘキサン(1:1)8mLに溶解 4mL蒸留水で3回洗浄 無水硫酸ナトリウムにて脱水 乾固 ネジ口試験管に脂肪酸メチルエステル試料50µg ━ ヨウ素/二硫化ジメチル(13g/L)0.1mL ━ 35℃,30分間振とう ━ Extrelut®NT ※充填カラム ━ ━ ━ ━ (チオ硫酸ナトリウム飽和水を添加しておく) ※ Extrelut®NTはMerck Chemical社の製品です 試料を負荷 10%エーテル/ヘキサンで抽出 (1mLで4回抽出を行い,計4mLを得ます) 無水硫酸ナトリウムにて脱水 乾固 ヘキサン1mLに定容 (50mg/L) 図3-2 二硫化ジメチル付加法フロー(精製工程あり) 各処理とも最終溶液は,1mL に定容しました。 エステル化試料では最終溶液中の各脂肪酸濃度が ピロリジン誘導体化と二硫化ジメチル付加では最終 1000mg/L となるため,ヘキサンで 50mg/L に希釈して 溶液中の各脂肪酸濃度は 50mg/L となります。メチル 測定しました。GC/MS 分析条件を表 2 に示しました。 表2 分析条件 ガスクロマトグラフ質量分析計 : GCMS-QP2010 Plus 装置 : EI イオン化法 : Rtx-5MS (内径0.25 mm,長さ30 m,膜厚0.25 μm) カラム : 100℃-7℃/分-300℃(10分) カラム温度 気化室温度 : 250℃ キャリアガス : He (線速度一定モード 45cm/秒) 注入モード スプリット比 インターフェース温度 イオン源温度 スキャンモード : スプリット : 20:1 : 280℃ : 250℃ : m/z 45~450 GC/MSによる不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 3 Application Note No.30 3.メチルエステル試料測定結果 図 4 に各種メチルエステル化試料(混合試料と各単 ライジン酸メチルは溶出位置が近く,分離が不十分で 一成分)のTIC クロマトグラムと,目的成分付近の部分 あるため,混合試料の TIC クロマトグラムでは単一ピ クロマトグラムを示しました。cis-バクセン酸メチルとエ ークとなっています。 (x10,000,000) TIC cis-バクセン酸メチル 1.50 エライジン酸メチル trans-バクセン酸メチル ステアリン酸メチル 1.25 1.00 (x10,000,000) オレイン酸メチル リノール酸メチル TIC 0.75 0.50 1.0 0.25 0.00 17.0 17.5 脂肪酸メチルエステル(混合試料と単一成分)のTIC部分クロマトグラム 混合試料メチルエステル 0.5 リノール酸メチルエステル オレイン酸メチルエステル エライジン酸メチルエステル cis-バクセン酸メチルエステル trans-バクセン酸メチルエステル ステアリン酸メチルエステル 0.0 15.0 17.5 20.0 22.5 25.0 27.5 図4 脂肪酸メチルエステル(混合試料と単一成分)のTICクロマトグラム 各単一成分の標準試料で検出されたピークのマス クトルを示しています。その他の成分のマススペクトル スペクトルを図 5 に示しました。各成分とも分子イオン は類似していますが,リノール酸メチルは二重結合の が検出され,飽和脂肪酸メチルエステルであるステア 数が 2 個であるため分子イオンが異なります。 リン酸メチルは他の成分とは異なる特徴的なマススペ Intensity % 74 100 Intensity % 67 81 100 ステアリン酸メチル 55 87 50 50 55 143 0 50 100 150 リノール酸メチル 95 109 199 200 255 250 298 300 350 400 m/z 450 0 50 220 100 150 200 262 294 250 300 350 400 450 m/z 図5 脂肪酸メチルエステルのマススペクトル GC/MSによる不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 4 Application Note No.30 同一炭素数のモノエンであるオレイン酸メチルとエ ペクトルから二重結合位置の情報を得ることは困難で ライジン酸メチル,cis-バクセン酸メチルと trans-バク した。 セン酸メチルは,マススペクトルはほぼ同じで,マスス Intensity % 55 100 Intensity % 55 100 オレイン酸メチル 97 50 222 264 0 100 97 50 111 50 150 200 250 Intensity % 55 100 111 296 300 350 400 m/z 450 50 150 200 250 Intensity % 55 100 cis-バクセン酸メチル 296 300 350 400 m/z 450 trans-バクセン酸メチル 69 50 97 111 222 0 50 100 264 222 0 69 50 エライジン酸メチル 69 69 100 150 200 264 250 97 111 296 300 350 400 m/z 450 50 100 264 222 0 150 200 250 296 300 350 400 m/z 450 図5 脂肪酸メチルエステルのマススペクトル(づづき) 図 6 に混合試料の各分子イオンの m/z でのクロマト は,別種のカラムによる分離が必須となります。 一般的に脂肪酸メチルエステルの異性体分離には グラムを示しました。 cis- バクセン酸メチルとエライジン酸メチルは,二重 強極性カラムが有効ですが,今回の測定ではピロリジ 結合位置と cis 体,trans 体という違いがあるものの,こ ン誘導体化と二硫化ジメチル付加による分子量増加に の測定で使用したカラムではピーク分離できませんで 伴って,高温分析が必要となるため 5%フェニル系の微 した。これらは分子量が同一でマススペクトルもほぼ同 極性カラムを使用しており,本分析条件での分離は困 じであるため,マススペクトルを用いたピーク分離も行 難となっています。 なうことはできません。これらを個別に同定するために (x10,000,000) cis-バクセン酸メチル 1.25 trans-バクセン酸メチル エライジン酸メチル ステアリン酸メチル 1.00 (x10,000,000) 0.75 1.00 0.50 0.75 0.25 オレイン酸メチル リノール酸メチル 0.00 0.50 17.0 17.5 脂肪酸メチルエステル(混合試料)の部分クロマトグラム TICクロマトグラム 0.25 m/z 294 クロマトグラム (100倍) m/z 296 クロマトグラム (100倍) m/z 298 クロマトグラム (20倍) 0.00 15.0 16.0 17.0 18.0 19.0 20.0 21.0 22.0 23.0 24.0 25.0 26.0 27.0 28.0 図6 脂肪酸メチルエステル(混合試料)のクロマトグラム GC/MSによる不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 5 Application Note No.30 4.ピロリジン誘導体化による不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 不飽和脂肪酸二重結合位置の決定方法として古く 成分のピークは近接しており,混合試料では幾つかの から用いられてきたピロリジン誘導体化を行い,図 7 に 成分は不完全分離となっています。単一成分の測定結 混合試料と単一成分のピロリジン誘導体に共通して検 果により保持時間を確認し,各成分のマススペクトル 出される m/z 113 でのクロマトグラムを示しました。各 から二重結合位置を決定しました。 (x1,000,000) 3.0 trans-バクセン酸ピロリジド ステアリン酸ピロリジド cis-バクセン酸ピロリジド 2.5 エライジン酸ピロリジド 2.0 オレイン酸ピロリジド 1.5 リノール酸 ピロリジド (x1,000,000) m/z 113 1.0 2.0 0.5 1.5 0.0 24.5 1.0 25.0 脂肪酸ピロリジド(混合試料と単一成分)の部分クロマトグラム 25.5 混合試料ピロリジド リノール酸ピロリジド オレイン酸ピロリジド エライジン酸ピロリジド cis-バクセン酸ピロリジド trans-バクセン酸ピロリジド ステアリン酸ピロリジド 0.5 0.0 15.0 17.5 20.0 22.5 25.0 27.5 図7 脂肪酸ピロリジド(混合試料と単一成分)のクロマトグラム ステアリン酸ピロリジドに二重結合はありませんが, フラグメントイオンは,分子式に示した位置での開裂に 比較として図 8 に解析結果を示しました。左側に全体マ よるものです。二重結合が存在すると m/z の差が 12u ススペクトル,右側に解析使用範囲の部分マススペクト となる箇所が出現することになり,二重結合位置が決 ルを示しました。部分マススペクトルの 14u ずつ異なる 定できます。 Intensity % 100 113 Intensity % 200 14 マススペクトル(m/z 45~450) 部分マススペクトル(m/z 135~350) ( 238 266 294 200 322 17 18 337 300 294 15 16 266 308 12 280 238 11 13 14 0 400 m/z 10 252 224 182 150 210 196 196 210 224 238 252 266 280 294 308 250 5 1 3 2 4 168 300 337 322 m/z 350 O 154 6 8 14 14 14 14 14 14 14 14 14 200 182 7 9 14 ( ( ( ( ( ( ( ( ( 154 5570 98 126 140 168 100 168 ( 0 14 14 ( ( 100 50 140 N 140 図8 ステアリン酸ピロリジド GC/MSによる不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 6 Application Note No.30 オレイン酸ピロリジドとエライジン酸ピロリジドの二重結合位置決定 オレイン酸ピロリジドの解析結果を図 9 に,エライジ 中に,赤字で示した m/z の差が 12u となっている箇所 ン酸ピロリジドの解析結果を図 10 に示しました。オレイ がありました。ピロリジンが結合した炭素から数えて 9 ン酸,エライジン酸は共にカルボン酸炭素から数えて 9 番目と 10 番目となるこの箇所は,二重結合がなければ 番目に二重結合があるモノエンで,オレイン酸は cis 体, エライジン酸は trans 体の異性体です。ピロリジン誘導 m/z 210 が検出されるはずですが,この位置に二重結 合があるため m/z 208 となっています。この結果から 体はカルボン酸とピロリジンが酸アミド結合した化合物 C18:1(9)と二重結合位置を確認することができました。 です。 図 9,図 10 に示したスペクトルはほぼ同じパターンで 図 9,10 のマススペクトルから分子イオンは m/z 335 あり,マススペクトルから cis 体と trans 体を判別するこ であり,同一炭素数の飽和脂肪酸であるステアリン酸 とはできませんが,試料に含まれる成分が 18:1(9)だけ ピロリジドの分子イオンが m/z 337 であることから炭素 であれば,cis 体と trans 体がクロマトグラム上で分離し 数 18 で二重結合数が 1 個の不飽和脂肪酸であること ているため同定可能です。 がわかります。部分スペクトルではフラグメントイオンの Intensity % 100 113 Intensity % 200 14 マススペクトル(m/z 45~450) 300 292 264 236 16 14 12 10 17 11 250 13 278 15 306 196 150 208 320 18 0 400 m/z 5 222 196 168 4 14 14 14 14 264 278 292 306 320 335 300 m/z 350 O 1 3 6 236 250 250 154 7 8 208 222 200 182 9 14 14 14 ( ( ( ( 200 12 14 ( ( ( 100 154 335 236 264 292 182 ( ( 182 14 168 98 140 0 140 ( 55 72 100 ( ( ( 126 50 部分マススペクトル(m/z 135~350) 14 14 2 N 140 図9 オレイン酸ピロリジド Intensity % 100 113 Intensity % 200 マススペクトル(m/z 45~450) 200 300 320 17 18 292 306 14 264 278 0 400 m/z 236 11 13 15 16 154 335 236 264 292 12 182 250 10 222 8 200 182 7 196 250 168 1 3 4 335 300 m/z 350 O 154 5 6 14 14 14 14 14 14 14 236 250 222 264 208 196 278 292 306 320 150 208 9 12 14 ( ( ( ( 100 182 168 ( ( ( 140 14 14 ( ( 98 14 ( 100 140 ( ( 0 55 72 ( 126 50 部分マススペクトル(m/z 135~350) 14 140 2 N 図10 エライジン酸ピロリジド GC/MSによる不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 7 Application Note No.30 cis-バクセン酸ピロリジドとtrans-バクセン酸ピロリジドの二重結合位置決定 cis- バクセン酸ピロリジド解析結果を図 11 に, trans-バクセン酸ピロリジド解析結果を図 12 に示しま ピロリジンが結合した炭素から数えて 11 番目が二重 した。バクセン酸はカルボン酸炭素から数えて 11 番 C18:1(11)と確認することができました。 結合位置であ ることがわかります。この結果から 目に二重結合があるモノエンです。 同一炭素数で二重結合位置が異なる化合物ですが m/z 335 であり,炭素数が 18 個で二重結合数が 1 マススペクトルの解析によって二重結合位置を確認 個の不飽和脂肪酸であることがわかります。部分マ できました。同様の解析を行うことにより,二重結合 ススペクトルには赤字で示した m/z 差が 12u となって 位置が不明な脂肪酸の二重結合位置を決定するこ いる箇所があり,m/z 236 が検出されていることから, とが可能です。 Intensity % 100 113 Intensity % 200 マススペクトル(m/z 45~450) 72 98 0 100 140 168 278 306 335 210 100 200 320 292 264 16 14 12 18 17 236 11 200 182 9 250 150 210 10 13 278 15 306 0 400 m/z 300 14 14 14 335 14 14 14 14 14 14 14 14 12 14 140 168 264 278 182 196 210 292 154 306 320 224 236 250 7 168 1 3 4 300 m/z 350 O 5 196 250 154 6 8 224 ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( 126 55 部分マススペクトル(m/z 135~350) ( ( ( 50 バクセン酸は,前出のオレイン酸,エライジン酸と 図 11,12 のマススペクトルから分子イ オンは N 2 140 図11 cis-バクセン酸ピロリジド Intensity % 100 113 Intensity % 200 マススペクトル(m/z 45~450) 部分マススペクトル(m/z 135~350) 14 ( ( ( 140 168 100 278 306 335 210 200 300 0 400 m/z 150 200 ( ( 72 98 14 14 335 14 14 14 14 14 14 12 14 14 14 140 168 264 278 182 196 210 292 306 154 224 236 250 320 ( ( ( ( ( 55 100 ( ( 0 126 ( 50 250 300 m/z 350 O 320 17 18 292 15 16 264 306 12 278 210 9 10 250 224 182 7 11 13 14 236 154 5 6 8 196 168 1 3 2 4 N 140 図12 trans-バクセン酸ピロリジド GC/MSによる不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 8 Application Note No.30 リノール酸ピロリジドの二重結合位置決定 箇所あり,m/z 208 が検出されていることからピロリジ リノール酸ピロリジド解析結果を図 13 に示しました。 リノール酸はカルボン酸炭素から数えて 9 番目と 12 ンが結合した炭素から数えて 9 番目と,m/z 248 が検 番目に二重結合があり,両二重結合とも cis 体のジエ 出されていることから 12 番目に二重結合があることが ン酸です。 わかりました。この結果から C18:1(9,12)と確認するこ 図 13 のマススペクトルから分子イオンは m/z 333 とができました。 であり,炭素数が 18 個で二重結合数が 2 個の不飽和 二重結合の数が 2 個の不飽和脂肪酸においても, 脂肪酸であることがわかります。部分マススペクトル 同様の解析で二重結合位置の決定が可能です。 には,赤字で示した m/z の差が 12u である箇所が二 Intensity % 100 113 126 部分マススペクトル(m/z 135~350) 14 14 14 14 14 14 333 12 100 140 14 14 14 14 14 168 182 12 222 154 236 196 208 248 262 276 290 304 318 0 150 200 250 300 m/z 350 ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( ( 98 ( 0 マススペクトル(m/z 45~450) ( 50 55 72 Intensity % 200 140 168 100 222 200 17 333 300 318 18 262 290 290 262 13 15 16 400 m/z 12 14 304 236 276 208 10 11 248 182 9 7 222 5 6 8 196 O 154 168 1 3 2 4 N 140 図13 リノール酸ピロリジド ピロリジン誘導体混合試料 ここまで単一成分のピロリジン誘導体化物分析結果 位置情報が得られた m/z 208,236,248 のクロマトグ を用いて二重結合位置決定を行いました。一般的に ラムを示しました。各成分ピークは完全分離せず重複 食品や生体など実試料の場合には,複数の脂肪酸成 していることから,近接した成分で二重結合位置決定 分が含まれています。ここでは複数成分が同時に検 可能なマススペクトルを得ることは困難です。 出された場合の解析について示します。 図 14 に混合試料のクロマトグラムを示し,ピロリジド ピロリジン誘導体化法では,目的成分を完全に分離 可能な分析条件の設定が必要となります。 固有の m/z 113 以外に,各単一成分解析で二重結合 3.0 (x1,000,000) trans-バクセン酸ピロリジド ステアリン酸ピロリジド cis-バクセン酸ピロリジド 2.5 エライジン酸ピロリジド 2.0 オレイン酸ピロリジド 1.5 リノール酸 ピロリジド m/z 113クロマトグラム 1.0 m/z 208クロマトグラム (30倍) m/z 236クロマトグラム (20倍) 0.5 m/z 248クロマトグラム (50倍) 0.0 24.5 25.0 25.5 図14 脂肪酸ピロリジド混合試料拡大クロマトグラム GC/MSによる不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 9 Application Note No.30 5.二硫化ジメチル付加による不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 脂肪酸の二重結合位置を容易に決定可能な方法とし TIC クロマトグラムを示しました。混合試料はステアリン て,二硫化ジメチル付加法があります。二硫化ジメチル 酸を含んでおり,ステアリン酸メチルエステルのほか未 は二重結合部分に付加するため,飽和脂肪酸であるス 反応の脂肪酸メチルエステルが検出されます。飽和脂 テアリン酸メチルは,溶出時間,マススペクトルに変化は 肪酸を多く含む試料中の,微量不飽和脂肪酸を分析対 ありません。 象とする場合に有効な誘導体化法といえます。 図 15 に混合試料とステアリン酸以外の各単一成分の (x1,000,000) TIC 9.0 cis-バクセン酸メチル二硫化ジメチル付加物 エライジン酸メチル二硫化ジメチル付加物 8.0 trans-バクセン酸メチル二硫化ジメチル付加物 7.0 オレイン酸メチル二硫化ジメチル付加物 6.0 リノール酸メチル二硫化ジメチル付加物 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 23.5 8.0 24.0 24.5 25.0 25.5 脂肪酸メチル二硫化ジメチル付加物(混合試料と単一成分)の部分クロマトグラム 26.0 (x1,000,000) TIC 未反応脂肪酸メチルエステル 7.0 6.0 5.0 4.0 脂肪酸メチル二硫化ジメチル付加物(混合資料) 3.0 リノール酸メチル二硫化ジメチル付加物 オレイン酸メチル二硫化ジメチル付加物 2.0 エライジン酸メチル二硫化ジメチル付加物 1.0 cis-バクセン酸メチル二硫化ジメチル付加物 trans-バクセン酸メチル二硫化ジメチル付加物 0.0 15.0 17.5 20.0 22.5 25.0 27.5 図15 脂肪酸メチル二硫化ジメチル付加物(混合試料と単一成分)のクロマトグラム GC/MSによる不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 10 Application Note No.30 二硫化ジメチル付加物によるオレイン酸とエライジン酸の二重結合位置決定 オレイン酸メチル二硫化ジメチル付加物の解析結 れたイオンで他よりも強く検出されています。この分析 果を図 16 に示し,エライジン酸メチル二硫化ジメチル 結果から 18:1(9)と決定できました。また,m/z 185 は 付加物の解析結果を図 17 に示しました。炭素数 18 個 m/z 217 のフラグメントイオンから CH3OH が脱離して のモノエンメチルエステルに二硫化ジメチルが付加し 32 減少したイオンです。 た化合物の分子イオン m/z 390 が検出されています。 二硫化ジメチル付加物のマススペクトルには,開裂 この反応では,メチルチオ基は二重結合の存在す したカルボン酸メチル側のフラグメントイオンから 32u る炭素に付加していて,この炭素間で開裂したイオン 減少した m/z も特異的に検出されることから,二重結 が検出されます。m/z 217 と m/z 173 は,カルボン酸 合位置の決定にはこれら 3 種の m/z 値を解析に用い 炭素から数えて 9 番目と 10 番目の炭素にそれぞれメ ます。 チルチオ基が付加し,この位置での開裂により検出さ Intensity % 55 100 217 173 87 137 50 185 109 390 0 100 200 300 173 (換算表A) H3CS 18 16 17 14 15 12 13 10 400 217 (換算表B) O SCH3 9 11 7 5 8 m/z 6 3 4 1 2 O 図16 二硫化ジメチル付加物によるオレイン酸二重結合位置決定 Intensity % 55 100 173 87 217 137 50 185 109 390 0 100 200 300 217 (換算表B) SCH3 173 (換算表A) 17 18 15 16 13 14 11 400 10 9 12 7 8 O 5 6 m/z 3 4 1 2 O SCH3 図17 二硫化ジメチル付加物によるエライジン酸二重結合位置決定 GC/MSによる不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 11 Application Note No.30 モノエン酸換算表 二硫化ジメチル付加による二重結合位置決定の解 A,B,C の m/z が検出された場合の二重結合位置を 析には 3 種の m/z を用いて行いますが,その相対強度 表の両端に示しました。Δはカルボン酸メチル側のカ が高いことから解析も容易です。炭素数 18 個のモノエ ルボン酸 C=O 結合を持つ炭素から数えた場合の二重 ン酸に関しては,表 3 に示した換算表を利用することで, 結合位置,ωは炭化水素末端側の炭素から数えた場 二重結合位置決定はさらに容易となります。 合の二重結合位置を示しました。本アプリケーションノ 開裂した C-C 結合から炭化水素側のフラグメントイ オン m/z を A,カルボン酸メチル側のフラグメントイオン m/z を B とし,C は B から CH3OH が脱離して 32u 減少 したフラグメントイオン m/z を示しました。 ートでの表記 C18:1(9)における括弧内に示した二重結 合位置はΔの値となっています。 参考として表 4 に炭素数 16 個のモノエン酸換算表, 表 5 に炭素数 20 個のモノエン酸換算表を示しました。 表3 C18モノエン酸二重結合位置決定換算表 M.W. 390 m/z Δ ω A B C(B-32u) 4 243 147 115 14 5 229 161 129 13 6 215 175 143 12 7 201 189 157 11 8 187 203 171 10 9 173 217 185 9 10 159 231 199 8 11 145 245 213 7 12 131 259 227 6 13 117 273 241 5 14 103 287 255 4 15 89 301 269 3 16 75 315 283 2 表4 C16モノエン酸二重結合位置決定換算表 M.W. 362 m/z Δ ω A B C(B-32u) 215 147 115 4 12 201 161 129 5 11 187 175 143 6 10 173 189 157 7 9 159 203 171 8 8 145 217 185 9 7 131 231 199 10 6 117 245 213 11 5 103 259 227 12 4 89 273 241 13 3 75 287 255 14 2 表5 C20モノエン酸二重結合位置決定換算表 M.W. 418 m/z Δ ω A B C(B-32u) 271 147 115 4 16 257 161 129 5 15 243 175 143 6 14 229 189 157 7 13 215 203 171 8 12 201 217 185 9 11 187 231 199 10 10 173 245 213 11 9 159 259 227 12 8 145 273 241 13 7 131 287 255 14 6 117 301 269 15 5 103 315 283 16 4 17 18 89 75 329 343 297 311 3 2 GC/MSによる不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 12 Application Note No.30 二硫化ジメチル付加物によるcis-,trans-バクセン酸の二重結合位置決定 cis-,trans-バクセン酸メチル二硫化ジメチル付加物 チルエステルの二硫化ジメチル付加物であることがわ の解析結果を図 18,図 19 に示しました。分子イオン かります。m/z 145,245,213 が検出されており,表 3 m/z 390 が検出されているので,C18 モノエン脂肪酸メ から C18:1(11)と決定することができました。 Intensity % 55 100 69 50 145 245 97 213 390 0 100 200 145 (換算表A) H3CS 18 16 17 m/z 400 O SCH3 14 15 300 245 (換算表B) 12 11 13 9 10 7 8 5 6 3 4 1 O 2 図18 二硫化ジメチル付加物によるcis-バクセン酸二重結合位置決定 Intensity % 55 100 69 50 145 245 97 213 390 0 100 200 18 15 16 13 400 245 (換算表B) SCH3 145 (換算表A) 17 300 12 11 14 9 10 O 7 8 m/z 5 6 3 4 1 2 O SCH3 図19 二硫化ジメチル付加物によるtrans-バクセン酸二重結合位置決定 GC/MSによる不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 13 Application Note No.30 二硫化ジメチル付加物によるリノール酸の二重結合位置決定 リノール酸メチル二硫化ジメチル付加物の解析結果 裂したフラグメントイオンです。炭素数 18 のモノエンで を図 20 に示しました。リノール酸メチルへの二硫化ジメ あれば,検出されるのは m/z 173 と m/z 217 であり, チルの付加は,2 箇所の二重結合に同時には付加せ m/z 171 の炭化水素末端側にもう一つの二重結合が ず,一方の二重結合のみに付加します。二重結合が1 あることがわかります。 個残存するため分子イオンは C18:1 脂肪酸メチル二硫 図 20-2 に示したマススペクトルで検出された m/z 化ジメチル付加物の分子イオン m/z 390 より 2u 少な 131 と m/z 257 は,カルボン酸メチル側から数えて 12 い m/z 388 となり,図 20 では m/z 388 が検出されて 番目と 13 番目にメチルチオ基が付加し,この位置で開 います。 裂したフラグメントイオンです。同様に m/z 257 のカル 図 20-1 に示したマススペクトルで検出された m/z ボン酸メチル側に二重結合があることがわかります。 171 と m/z 217 は,カルボン酸メチル側から数えて 9 以 上 の こ と か ら , 二 重 結 合 位 置 が 9,12 で あ る 番目と 10 番目にメチルチオ基が付加し,この位置で開 18:2(9,12)と決定することができました。 Intensity % 67 100 55 95 50 109 137 293 171 185 217 325 340 0 100 200 300 15 13 16 12 10 14 m/z O SCH3 H3CS 17 400 217 171 18 388 9 11 7 8 5 6 3 4 1 2 O 図20-1 二硫化ジメチル付加物によるリノール酸二重結合位置決定(Δ9) Intensity % 61 100 131 293 83 50 340 177 123 159 217 325 257 388 0 100 200 15 16 13 14 m/z O SCH3 H3CS 17 400 257 131 18 300 12 10 11 9 7 8 5 6 3 4 1 2 O 図20-2 二硫化ジメチル付加物によるリノール酸二重結合位置決定(Δ12) GC/MSによる不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 14 Application Note No.30 リノール酸メチル二硫化ジメチル付加物では,2 成分 ジエン酸の解析では,検出される m/z がモノエン酸ほ のマススペクトルから解析を行いましたが,今回の分析 ど明確ではありません。ジエン酸,トリエン酸などの高度 条件で得られる TIC クロマトグラムで 2 成分は単一ピー 不飽和脂肪酸の二重結合位置を決定する場合には,そ クになっています。図 21 に解析に用いた 4 種のフラグメ れらが混合物の場合は,TLC や Ag イオン固相抽出管 6) ントイオンによるクロマトグラムを示しました。 を用いて分画し,部分還元によりモノエン酸を得ます 5)。 二重結合位置の違いによるピークトップ位置の違い 得られたモノエン酸の二重結合位置を決定して,元の多 が確認できたため,スペクトル減算を用いて互いのピー 価不飽和脂肪酸の二重結合位置を決定します。この方 クによる影響を軽減し,図 20-1,図 20-2 の各成分のマス 法を併用することで多価不飽和脂肪酸の二重結合位置 スペクトルを解析しました。図 21 に両成分の中間となる の決定結果を確実にすることができます。 TICクロマトグラムのピークトップでのマススペクトルを示 6) SUPELCO Technical Report, Discovery Ag-Ion SPE しました。 このマススペクトルで m/z 131,257,171,217,185 for FAME Fractionation and Cis/Trans Separation, が検出されていることから,18:2(9,12)と決定することが http://www.sigmaaldrich.com/etc/medialib/docs/Supel できます。 co/Bulletin/t406062.Par.0001.File.tmp/t406062.pdf Intensity % 100 109 75 2.5 137 131 149 (x1,000,000) 217 50 171185 25 0 100 2.0 1.5 293 150 200 340 257 261 250 325 300 350 m/z 400 図20-2 図20-1 1.0 TICクロマトグラム m/z 257クロマトグラム (200倍) 0.5 m/z 131クロマトグラム(30倍) m/z 217クロマトグラム (70倍) 0.0 24.3 m/z 171クロマトグラム (70倍) 24.4 24.5 24.6 24.7 図21 リノール酸メチル二硫化ジメチル付加物のクロマトグラムとマススペクトル GC/MSによる不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 15 Application Note No.30 二硫化ジメチル付加物混合試料 ピロリジン誘導体化法は,分離不十分な混合試料 な 2 成分が 1 本のピークとなっている部分もありますが において各成分の定性は困難ですが,二硫化ジメチル 表 3 に示した各成分の特徴的な m/z を用いたクロマト 付加法は,分離不十分な混合試料においても二重結 グラムを描くことで,他成分の影響を受けずに個々の 合位置の決定が可能です。 成分を検出できます。cis 体,trans 体も分離できることか 図 22 は二硫化ジメチル付加法による混合試料のク ら,二重結合位置決定だけでなく,異性体の同定も可 ロマトグラムです。TIC クロマトグラムでは分離不十分 能です。 7,000,000 TICクロマトグラム cis-バクセン酸メチル二硫化ジメチル付加物 エライジン酸メチル二硫化ジメチル付加物 trans-バクセン酸メチル二硫化ジメチル付加物 オレイン酸メチル二硫化ジメチル付加物 リノール酸メチル二硫化ジメチル付加物 5,000 m/z 257 m/z 257クロマトグラム リノール酸メチル二硫化ジメチル付加物 140,000 m/z 217クロマトグラム エライジン酸メチル二硫化ジメチル付加物 オレイン酸メチル二硫化ジメチル付加物 リノール酸メチル二硫化ジメチル付加物 240,000 m/z 245クロマトグラム cis-バクセン酸メチル二硫化ジメチル付加物 trans-バクセン酸メチル二硫化ジメチル付加物 23.50 23.75 24.00 24.25 24.50 24.75 25.00 25.25 25.50 25.75 26.00 図22 脂肪酸メチル二硫化ジメチル付加物(混合試料)クロマトグラム 6.まとめ GC/MS による不飽和脂肪酸の二重結合位置決定 とができます。また,混合試料でクロマトグラムによる分 方法として,ピロリジン誘導体化法と二硫化ジメチル付 離が不十分であっても各成分のピークが検出でき, cis 加法を示しました。二硫化ジメチル付加物による二重結 体,trans 体の異性体同定にも有効な方法です。 合位置決定法は,マススペクトルの開裂が単純で二重 結合位置の決定に用いる m/z が見つけ易く,さらに換 これらの特徴から脂肪酸の組成比や個々の脂肪酸 の定量値も高い精度で得ることができます。 算表を用いることで,簡単に二重結合位置を決定するこ 初版発行 2012年3月 *本資料は発行時の情報に基づいて作成されており,予告なく改訂することがあります。 分析計測事業部 応用技術部 島津コールセンター 会員制情報サービス「Shim-Solutions Club」にご登録下さい。 https://solutions.shimadzu.co.jp/ 会員制Web (Solution Navigator) の閲覧など,いろいろな情報サービスが受けられます。 ● 0120-131691(携帯電話不可) ● 携帯電話専用番号(075)813-1691 洗浄バリデーションをトータルサポートする 高機能性緑茶飲料を支える計測技術 島津の分析機器のご紹介 16
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