5.どのような商品を売るのか

5.どのような商品を売るのか
ソフトウエアーアドバイザー 山本 邦彦
(1)顧客によく知られた商品がよく売れている
いま、インターネット・ショップでよく売れている商品は、パソコン関連商品、書籍、C
Dなどである。これらの商品は、メーカー・型番・著者・タイトルなどによって注文商品を
特定できるものであり、実際の商品を見ることなく、画面に出た映像や商品説明だけで購買
決定できるものである。ナショナル・ブランド商品など、何らかの方法ですでに顧客によく
知られた、または知ることができる商品が売れている。これらの商品の購入を決める条件と
しては、価格と送料その他の付帯サービス条件となるが、なかでも価格が大きな条件となっ
ている。店舗や販売員の不要な仮想店舗は、販売管理コストを下げて販売することができる
ので、実店舗より価格革命が可能なメデイアとなる。いつの時代でも新しい低コストの販売
方法が流通革命を推進してきた。米国のインターネット書店であるアマゾン・ドット・コム
はその代表といえる。
(2)ナショナル・ブランド商品の価格競争は激しい
ナショナル・ブランド商品は、
顧客がよく知っている商品であるだけに、どこにでもあり、
誰でも扱える商品である。そのため価格競争は激しい。したがって、これらの商品は、価格
競争に加えて、品揃えや送料、支払方法などのサービス条件での差別化をはかることが大切
である。例えば、図書のインターネット通販は、参入企業が多く、競争が激化しているが、
再販価格制度で本の価格競争はできないので、在庫数、配送料、配送日数などのサービス条
件の競争となっている。
(3)ギフト商品もよく利用される
ギフト商品もインターネット・ショップでよく売れている。売れている商品の多くは、ナ
ショナル・ブランドで、「○○メーカーのビールセット5,000円」などが代表例である。顧
客は、忙しい時間を割いて混雑しているデパートのギフトコーナーに出かけなくても、夜中
に自分のパソコンから注文できる利便性が支持されている。これからは中元・歳暮だけでな
く、さまざまなライフステージで友人間、家族間でギフトの交換の場として、インターネッ
ト・ショップが利用されるであろう。個人ギフトには、価格面の競争はないが、商品には個
性的なものが求められる。サービス面での価値、店のブランド、包装、配達などのサービス
が、インターネット・ショップでの購買の決め手になる。
(4)特徴のある商品が売れる
インターネット・ショップの特徴は、時間と場所を超えるところにある。消費者にとって
は、パリやニュヨークが眼前にあることを実感できるメデイアが提供されている。世界が単
一な市場になったことをふまえつつ、差別化された特徴ある商品を販売することが成功のポ
イントになる。価格か、品質か、デザインか、品揃えか、サービスか、何か一つでも他社に
ない自店の特徴を創造することが大切である。
(5)繰り返し需要のある商品
家庭でも食料品など繰り返し需要のある商品はたくさんある。米などが代表的なものであ
るが、梅干し、煎餅、海苔、乾物類などは、家庭で使いなれた、味がよくわかっているなど
の特徴があり、ブランド的な意味合いがある。一定期間をおいて、繰り返し需要が見込まれ
る商品は、通販に向いている。自店で扱う商品の価格とブランド、顧客の嗜好にあう商品を
選択、開発し、固定した顧客開拓を狙うのが常道となっている。既知の商品で、安心して購
入できるものは、インターネット・ショップを利用した時間節約の合理的買物方法として、
顧客の支持を受け、普及していくであろう。これからの人口減少と高齢化の社会では、就業
者の増加が不可欠である。日常生活に必要な良く知られた商品の大部分は、インターネッ
ト・ショップに移行することが予想される。各地の商店街もインターネット・ショップの活
用を、真剣に検討すべき時期にきている。
(6)これから売れるものは何か
通産省、アンダーセンコンサルテイングの調査によると、日本の消費者向けネット取引の
市場規模は、98年の650億円から2003年に3兆1600億円に拡大する。98年の商品・セグメント
別では、パソコン関連製品が250億円と突出しており、以下、旅行が80億円、衣類・アクセ
サリーが73億円と続いている。今後5年間で50倍に成長する過程で、全家計支出に占めるイ
ンターネット・ショップ取引支出の割合は、10%近くにまで増加する。2003年の商品・セグ
メント別では、旅行が9,100億円と最大になり、以下自動車が4,900億円、パソコン関連製品
が3,700億円と続く。インターネット・ショップ市場を米国と比較すると、現状では日本は
金額で約35分の1、年数で約4∼5年程度遅れている。2003年では、この差はやや詰まり、金
額で約7分の1、年数で約3年遅れとなる。インターネット・ショップの成長期への移行は、
米国では1998年∼1999年、日本においては2001年以降となろう。
<プロフィール>
●山本邦彦(やまもと
くにひこ)氏(山本技術士事務所 代表)
・慶応義塾大学大学院工学研究科修了。
・中小企業診断士、技術士、特種情報処理技術者。
・丸善石油(株)
、
(株)東洋情報システムを経て、山本技術士事務所設立。産能大学非
常勤講師。
・情報通信コンサルタントとして、主として、インターネットビジネスに関連する講演、
著作、コンサルタント活動に従事。
・著書として、
「21世紀を勝ち抜く経営戦略」、
「ビジネスモデル特許の国際動向と今後
の展望」など多数。
・中小企業総合事業団、東京商工会議所登録アドバイザー。
・日本技術士会情報工学部会幹事。
・E-mail:[email protected]
●活躍する商店街
楽天市場(http://www.rakuten.co.jp/)
●インターネット・ショップの市場規模
国名
日本
米国
1998年 2003年
650億円 3.16兆円
2.25兆円 21.3兆円
セグメント別
旅行
自動車
パソコン関連
衣類・アクセサリー
その他
1998年
80億円
20億円
250億円
73億円
2003年
9,100億円
4,900億円
3,700億円
1,800億円