Overseas Fishery Cooperation Foundation of Japan 評価報告書 ガボン共和国 ― ガボン共和国におけるナマズの生産システム開発プロジェクト ― (終了時評価-2012 年 4 月) プロジェクトの概要 国 名 プロジェクト名 実施期間 覚書署名省庁名 及び 事業実施機関 ガボン共和国 ガボン共和国におけるナマズの生産システム開発プロジェクト 2011 年 4 月 1 日~2011 年 7 月 31 日 覚書署名省庁 : 農業・牧畜・漁業・地方開発省(MAEPDR) 実 施 機 関 : 水産・養殖総局(DGPA) プロジェクト実施の経緯と背景 ガボン共和国(以下「ガボン」という。 )は、石 油、マンガン、木材といった天然資源に恵まれ、 中でも石油は、輸出額の 80%、国家予算の 50%を 占める重要産業となっている。 近年、ガボン政府は、こうした石油依存の体質 から脱却し、産業構造の多様化を図るため、種々 の経済政策を展開している。 その政策の一環に漁業・養殖業振興を掲げ、内 水面の主要食用魚種であるティラピア及びナマズ の養殖を重要視している。 このような状況の中、財団法人海外漁業協力財 団(以下「財団」という。 )は、2005 年から首都リ ーブルビルのペリエ養殖センターにおいて「ティ ラピアを対象とした養殖開発支援プロジェクト」 を実施し、2008 年 3 月、成功裏に終了した。 i 引き続きガボン政府は、ナマズ養殖の技術移転を通じ養殖業者の支援を行うため、財団に対 し、2007 年 8 月 24 日付の書簡で、 「ナマズの生産システム開発プロジェクト」の実施を要請 した。財団はこれを受け、プロジェクトを実施、所期の目的を達成し 2011 年 3 月に終了した。 終了に際し、ガボン政府は以下の項目について更なる支援を要請、財団はこれに応じ 2011 年 4 月から 2011 年 7 月までの間、本プロジェクトを実施した。 ・ へテロブランカスについての親魚確保及び種苗生産 ・ 種苗育成に関するデータ収集 目標・成果・活動内容等 上位目標 プロジェクト目標 期待される成果 活 動 ガボン共和国において内水面養殖が振興される。 民間のナマズ養殖技術が向上する。 (1)民間養殖業者への技術指導により種苗の育成に関するデータが収集される。 (2)養殖マニュアルが作成され、民間養殖業者のナマズ養殖事業が普及する。 (1)民間養殖業者への技術指導 (2)養殖マニュアルの作成 財団側 ・専門家 養殖:1 名 ・事業費 約 11 百万円 投 入 ・主な資機材 特になし 相手国側 ・カウンターパート DGPA 総括責任者: 1 名 実 務 担 当 者: 2 名 ・プロジェクト関連予算、土地、施設等 プロジェクト事務所の提供(ペリエ養殖センター内) ii 評 価 事 項 妥 当 性 1. プロジェクトの妥当性 本プロジェクトは、ガボン政府の貧困削減戦略に基づく漁業・養殖業の振興政策を支援 し、国内養殖業者のナマズ養殖の効率化、生産量の拡大によるたんぱく質自給率の向上な どを目的としており、対象地域のニーズにも合致している。 2. 環境に対する配慮はなされているか 本プロジェクトは、ペリエ養殖センターにおいて開発された半粗放的なナマズの生産シ ステムを民間に移転するものであり、環境に十分配慮して実施されている。 3. 水産資源に対する配慮はなされているか 本プロジェクトは、ナマズの生産システムを開発し、養殖技術を移転するものであり、 天然資源に悪影響を与えることはない。在来種を用いることで生態系に攪乱を起こさない よう配慮している。 効 率 性 1. 資機材、専門家の投入における効率性 2007 年 8 月から 2011 年 3 月まで実施した「ナマズの生産システム開発プロジェクト」 を引き続き実施したことから、専門家派遣も継続しており、プロジェクトを円滑に開始し、 期待された機能、能力は十分に発揮された。 2. 技術移転の効率性 カウンターパート(総括責任者及び実務担当者1 名)は、3 年前よりプロジェクトに参加しており、 運営手法、並びに技術は熟知していた。 もう 1 名のカウンターパートも、本邦において技 術研修を受けており、ナマズ養殖における技術の大 部分を習得していた。このことに鑑み、対象とした ナマズ 2 種(クラリス:Clarias gariepinus,ヘテ ロブランクス:Heterobranchus longifis)のうち、 ヘテ ロ ブ ラ ン ク ス iii 主にヘテロブランクスの種苗生産に関する技術を中心に指導し、カウンターパートは概ね 技術を習得することができた。 3. 状況の変化、教訓・提言等に応じた 実施計画や活動項目の見直し ガボン政府側との協議を通じ状況の変化に対応した活動を実施した。 特に、対象としたナマズ 2 種(前述)のうち、これまでは後者の親魚の採集が不十分であ ったが、今年度は、両種ともに種苗生産試験を実施することができ、プロジェクトを終了 することができた。 目標達成度 1. プロジェクト目標の達成度 本プロジェクトは、2011 年 3 月まで実施した 「ナマズの生産システム開発プロジェクト」の更 なる支援要請に対応して実施したもので、ヘテロ ブランクスの親魚を確保し、種苗生産手法を確立 し、稚魚育成に関するデータの更なる収集を行っ た。これらデータに基づいた養殖マニュアルも作 成し、プロジェクト目標は達成された。 ヘテ ロ ブ ラ ン ク スの親魚確保 2. プロジェクト活動項目及び期待された成果の達成度 (1) 普及活動への支援 ペリエ養殖場で開発したナマズの生産技術を民間業者に伝達し、飼育試験を実施した。 この過程で養殖池の管理、給餌方法について指導を行い、データの収集も行った。 この試験の結果、供与した 3.2g~15.3gの稚魚が 5 ヶ月間で市場サイズ 300gま で成長した。生残率も約 70%と高く、本プロジェクトで開発したシステムが十分民 間で活かされることが実証された。 (2) 養殖マニュアルの作成 上記飼育試験で得られたデータ等により民間養殖業者向けナマズの養殖に関する マニュアルが完成した。 iv インパクト 1. プロジェクト上位目標に対するインパクト 民間養殖業者へ提供した稚魚が出荷サイズになるまでの生残率は約 70% という高い飼 育環境の形成により、民間養殖業者にとっても十分に採算が取れることが実証された。 これにより、普及の促進が見込まれ、プロジェクト目標である 民間におけるナマズ養 殖技術の向上が期待される。 2. プロジェクトの実施効果によるその他のインパクト ガボンにおけるナマズの生産は、主に河川・湖沼で自然発生したものを漁獲対象とする ことが主体であったが、本プロジェクトによりナマズ 2 種(前述)の親魚の養成、人工種苗 の大量生産、稚魚・幼魚の給餌育成等に関する生産技術が確立し、民間業者に種苗を供給 するシステムが開発されたことから、今後、民間の零細ティラピア養殖業者がナマズ養殖 にも参入することで、地域産業の振興、住民食料の多様化、安定供給が期待される。 自立発展性 1. カウンターパート及び供与資機材における有効活用の見込み ペリエ養殖センターにおいてプロジェクト活動が継続され、供与資機材も本プロジェク トで建築した実験・飼育棟に保管されている。また、それらは、備品台帳・使用実績簿に より適正に管理されていることから、カウンターパート及び供与された資機材は有効に活 用されている。 2. プロジェクト効果の持続の見込み ペリエ養殖センターは、ガボンにおける国立の養殖場の本所として位置づけられ、整備 がなされてきたが、飼育水の確保に難がある。このため、近くに新たな養殖試験池の造成 が検討されているが、時期は未定である。それまでの間は、従来通り、核となる施設とし ての機能を果たすと思われる。また、実務担当のカウンターパートの一人は、プロジェク ト期間中に水産養殖総局の幹部に昇進したことから、本プロジェクト終了後も効果は持続 すると見込まれる。 以上 v
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