Overseas Fishery Cooperation Foundation of Japan 評価報告書 ― セーシェル共和国 ― ― 漁 業 開 発 の た め の 施 設 改 善 (地 域 巡 回 )プ ロ ジ ェ ク ト ― (評価実施-2011 年 3 月:PJ 終了時) プロジェクトの概要 国 名 プロジェクト名 実施期間 覚書署名省庁 及び事業実施機関 セーシェル共和国 セーシェル共和国における漁業開発のための施設改善プロジェクト 2010 年 9 月~2011 年 3 月 覚書署名省庁: 投資・天然資源・産業省 実施機関: セーシェル漁業公社(以下「SFA」*という。 ) *Seychells Fishing Authority プロジェクト実施の経緯と背景 セーシェルの経済は主に観光業と水産業に依 存しているが、観光業は世界経済の変動の影響を 受けやすいこともあり、同国政府としては、水産 業の発展に力を入れ、持続的な資源利用のための 水産資源管理や水産インフラ施設の整備等に取 り組んでいる。 これに対し、財団法人海外漁業協力財団(以下 「財団」という。 )は、2004 年度及び 2005 年度 の拠点整備事業により、マヘ島のアンスロワイヤ ルやアンスラムーシュおよびプララン島の製氷 施設の修理修復及び技術移転を実施し、同国政府 の施策の支援を行ってきた。 一方同国においては漁獲物における鮮度保持 の需要が近年伸びており、2008 年度の水産無償 によりプロビデンスとベロームに新たな製氷施 設等が建設された。 同国政府としては、国内の国営製氷施設はアンスロワイヤル、アンスラムーシュ、プララン 1 島、プロビデンス、ベロームの合計 5 ヵ所を保有することとなり、これまで以上に日常のメン テナンスから修理修復が重要と認識されてきた。 このようなことから、セーシェル共和国政府は財団に対し、2010 年 5 月 31 日付書簡をもって 製氷施設の修理修復及び技術移転に関する支援を要請し、財団は、この要請に応え、技術指導 に重点を置いた拠点整備事業・地域巡回プロジェクトを 2010 年度に実施した。 目標・成果・活動内容等 上位目標 プロジェクト目標 期待される成果 セーシェル共和国の漁業開発・振興 セーシェル政府の製氷施設において、良質な氷が持続的かつ効率よく 生産されて漁民に供給される。 1. セーシェル政府の製氷施設の機能が改善される。 2. 製氷施設担当者の維持管理技術が向上する。 1. 対象施設(5箇所) マヘ島及びプララン島の製氷施設(アンスロワイヤル、アンスラ ムーシュ、プロビデンス、ベローム、プララン) 活 投 動 入 2. 活動項目 (1)ワークショップの整備支援(プロビデンス) (2)メンテナンス・トレーニング ① コンプレッサーのオーバーホール(アンスロワイヤル、アンス ラムーシュ、プララン) ② メンテナンス計画の作成指導(アンスロワイヤル、アンスラム ーシュ、プロビデンス、ベローム、プララン) (3) 小規模修理・修復(OJT) ① コンデンサー及びポンプの交換修理(アンスロワイヤル) ② ポンプの交換修理、水タンク及びコンクリート土台の修理修復 (アンスラムーシュ) ③ 貯氷庫床パネルの修理修復(プララン) (4)予備部品の補充 1.財団: ・専門家(員数・分野・期間); コーディネーター 1 名(60 日) 技術アドバイザー 1 名(10 日) 専門家(冷凍冷蔵) 2 名(50 日) ・事業費; 約 30 百万円 ・主な資機材; 修理修復用部品及び冷凍機予備部品(アンスロワイヤル、アンス ラムーシュ、プララン) 、整備用工具類(プロビデンス) 2.相手国側: ・カウンターパート(員数・所属先); SFA の各製氷施設担当者 3 名 ・プロジェクト関連予算、土地、施設等; 2 資機材の国内輸送 評 価 事 項 妥当性 1)プロジェクトの妥当性 セーシェル政府は、2007 年に「水産開発計画 2017」を策定し、持続的な資源利用のた めの水産資源管理のほか、水産インフラ施設の整備等を掲げている。 これまでアンスロワイヤル、アンスラムーシュ、プララン島に製氷施設を有していた が、新規水産無償によりプロビデンスとベロームにも製氷施設が設置された。今回のプ ロジェクトは、これら製氷施設の持続的な維持管理を支援するもので、同国の開発計画、 ニーズに合致している。 2)環境に対する配慮はなされていたか 今回の実施内容は、既存の施設敷地内における活動であることから、環境に対する配 慮は従前よりなされており、新たに施設周辺の環境に影響を及ぼすことはなかった。 3)水産資源に対する配慮はなされていたか 今回の実施内容は、セーシェル政府による水産関連施設(製氷施設)の持続的な運営・ 維持管理を支援するものであることから、水産資源に新たな負荷を掛ける等の影響はな かった。 効率性 1)資機材、専門家の投入とプロジェクト活動の効率性 必要資機材の納期を勘案し、本邦発送から現地到着後の受入体制を作り、専門家の現 地入りのタイミングなどを決定し、プロジェクトを効率よく進めるように活動を行った。 2)技術移転の効率性 3 形成調査時に技術移転の対象となるカウンターパートの技術水準の確認を行った後、 適合した水準での技術移転を効率よく実施した。 目標達成度 1)プロジェクト目標の達成度 今回のプロジェクトにより製氷施設の機能が改善され、維持管理技術も移転されたの で、プロジェクト目標とした良質な氷の持続的かつ効率的な生産、そして漁民への供給 は十分に達成された。 2)プロジェクト活動項目及び期待された成果の達成度 拠点整備事業・地域巡回プロジェクトでは、 水産関連施設・機器類の持続的な運営・維持管 理のための技術指導に重点を置き、ワークショ ップの整備支援、メンテナンス・トレーニング、 小規模修理・修復(OJT)及び予備部品の補充を 実施した。 これらの活動項目は、対象施設の機能回復及び 施設のメンテナンス技術の向上をもたらし、妥当 エンジンの整備訓練 であった。 インパクト 1)プロジェクト上位目標に対するインパクト 新規水産無償による製氷施設も加わり、同国マヘ島及びプララン島の漁民の活動拠点 に製氷施設が整備された。今回のプロジェクトではそれら製氷施設の持続的な運営維持 管理に係る指導を行ったので、同国における漁民の漁業活動の活性化を促し、同国の漁 業開発振興にインパクトを与えると見込まれる。 2)プロジェクトの実施効果によるその他のインパクト 4 プロジェクトの効果により政府所管の製氷施設・機器を適切に調整・メンテナンスし ていくことが期待され、これまで必要とされた施設維持政予算を削減することが可能に なった。 自立発展性 1)カウンターパート及び供与資機材の有効活用の見込み 技術移転の対象となったカウンターパートは、各製氷施設の担当者であるので、得ら れた知識と技術は今後とも施設の運営管理に役立てられる見込みである。 2) プロジェクト効果の持続の見込み 技術移転を受けたカウンターパートは、プロジェクト終了後も引き続き各製氷施設を 担当すること、供与された資機材及び予備部品はワークショップに保管されいつでも利 用できる状況となることから、プロジェクト終了後も効果は持続される。 以上 5
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