SENSE を利用した呼吸同期向上策の基礎的検討 北福島医療センター 画像センター ○藤田 いづみ 丹治 一 (Fujita Izumi) (Tanji Hajime) 八巻 智也 樋口 仁 (Yamaki Tomoya) (Higuchi Masashi) 【目的】 Parallel Imagingの手法の一つであるSensitivity encoding(以下SENSE)は収集プロファイルの削減と、それ による撮像時間の短縮が特徴である。SENSEを呼吸同期に用いた場合、繰り返される収集回数は減り、撮 像時間の短縮には繋がるが、一呼吸相内の収集時間(以下Duration time)は変化しないため、直接的な意 味では、呼吸同期精度には関与していないものと思われる。今回、SENSE phase reduction factorと高速SE におけるecho trainのtrade-offにより、Multi Shot法における呼吸同期撮像のTR-duration time短縮に還元・ 制御することで、呼吸動の抑制精度の向上を図るべく検討を行ったので報告する。 【方法】 自作ファントムを、人工呼吸器に連動させて体動をシミュレーションし、SENSEを用いたduration time制御 による画像の変化を検討した。また、実際にボランティア撮影を行い比較評価した。 使用材料 PVA溶液封入ファントム(通称“スライム”)および自作人工呼吸器 使用機器 Philips GyroScan NT Intera mastar R9 撮像パラメータ ・Multi Shot 高速 SE法 ・実効TR:3000ms(1500ms) ・TE:90ms ・Matrix : 256 ・ET:16・8(SENSE trade-off) ・Echo space:10.6ms固定 ・BW: 0.79pixels固定 なお、duration timeを制御するために、SENSE factorと、ETのTrade-offを行った。 その他、Echo spaceとBWは固定とした。 SENSEとEcho-TrainのTrade-off 状況(Table 1) Table 1 SENSE phase reduction factor Duration time Scan time 16 196.6msec 51sec 2.0 (*2SENSE) 16 196.6msec 26sec 2.0 (ET.Trade-off 2SENSE) 8 84.8msec 51sec 3.0 (ET. Trade-off 3SENSE) 5 53.0msec 51sec 0 (non-SENSE) Echo-train 体動シミュレーションの諸条件 1) 安定期収集 : 3秒周期でエアーポンプに運動 2) 不安定収集 : 1)の状態で、5秒おきに1秒間の同期遮断 3) 静止時間 : なし 4) Trigger delay : 0.3sec 5) 位置変動 : ± 30mm 【結果】 ・安定同期時 安定した動きのなかでは、時相毎の収集ポイントの“ずれ”は起らず、呼吸動を抑制したと時と同じ結果と なった。そのため、duration timeによる変化はあまり見られず、SENSE特有のcut-lineアーチファクトのみが 画像に反映された。結果、安定した呼吸が得られる場合のduration制御は効果が薄いと考えられる。 ・不安定同期時 (1)静止時と同期時(Conv.) 静止時はプロファイル変動が無いのに比べ、同期をかけたときは周期的に変動がある。そのため、同期 時における時相毎の収集ポイントのずれが発生するため、ゴーストの発生間隔RDpは大きくなる。 RDp=(Duration time・NEX)/PT RDp : 呼吸同期によるゴースト間の距離(ピクセル) PT:periodic motion:呼吸動 (2)2SENSEと同期時(Conv.) ほぼ同じ周期でプロファイルの変動 がおこるため、RDpは変化しなかった。 そのため、SENSEを使って撮影時間を 短縮してもduration timeが一定なため 画像上、呼吸同期改善には至らなか った。(Fig.1) signal(/256) 220 200 180 160 140 Conv.(同期) 2SENSE 120 100 1 26 51 76 101 126 phase Fig.1 2SENSE と同期時(Conv.) signal(/256) 220 200 180 160 140 2SENSE 120 trade-off 2SENSE 100 1 26 51 76 101 126 phase Fig.2 2SENSE と Trade-off2SENSE signal(/256) 220 (3) 2SENSEとTrade off2SENSE Duration-timeに変化がおこらない 2SENSEではプロファイルにあまり変化 はみられないのに対し、Trade-offによ り Duration-time が 1/2 に 短 縮 し た Trade-off SENSEでは、普通の2SENSE と比較して、プロファイルの変動が軽 減した。 結果、Trade offSENSEではRDpが小さ くなり、画像上ゴーストの発生も少なく なった。(Fig.2) (4) 2SENSEとTrade off3SENSE Trade off3倍SENSEでは静止時とほ ぼ同様なプロファイルにまで回復して い る の が わ か る 。 よ っ て 、 Trade-off3SENSEではduration timeを 更に短縮することでRDpが小さくなり、 画像上ゴーストが目立たなくなった。 結 果 と し て 大 き い SENSE phase reduction factorを用いることで、最終 的にはRDpがなくなり呼吸同期向上に 繋がる事が考えられる。(Fig.3) 200 180 160 140 2SENSE 120 trade-off 3SENSE 100 1 26 51 76 101 126 phase Fig.3 2SENSE と Trade-off3SENSE 実際のボランティア撮影においても、 擬似的な同期不良を一様の与えた場 合と同様にDuration-timeの短縮ととも に、体動アーチファクトの減少し、解剖 情報の明瞭化が画像から読み取れた。 臨床においては、均一な物質からなる フ ァ ン ト ム と は 異 な り 、 SENSEに よ る cut-lineアーチファクトの発生がある程 度抑制され、比較的大きなファクター も実用可能であった。 【考察】 MRIにおける体部検査は、近年の装置進歩による撮像時間の高速化によって、画像診断上、欠かせぬ 役割を果たしているが、CT検査と比較すると今もなお、患者固有の状態による情報の均一性に十分では なく、呼吸や体動の制御方法に苦慮する場合も少なくない。 今回、SENSEを呼吸同期の制御パラメータの一つとし利用することで、duration timeが短縮され、呼吸動 の抑制精度・再現性が向上し、より均一で体動アーチファクトの少ない画像を得ることが可能であった。 Parallel Imagingを利用したduration time controlは、高齢者や複雑な呼吸状況下における検査の情報の 均一性に貢献する有効な手段と考えられる。
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