ワールドカップキャンプ招致を目指す 「ラグビーの街」長門

Focus
地域ニュース
長門市
ワールドカップキャンプ招致を目指す
「ラグビーの街」長門
2020年の東京五輪決定に沸く日本ですが、前
そして今年6月、民間と行政で構成する招致委
年の2019年にはラグビーワールドカップが行わ
員会(会長:大西倉雄市長)が発足しました。
れます。日本初開催のビッグイベントを控え、
現在は、キャンプ地のガイドラインが未公表
「ラグビーの街」長門市は参加チームのキャン
のため、様々なルートで情報を収集しています。
プ招致活動を始めました。本稿では、豊富な観
また、市民の機運醸成を図るべく、マスコット
光資源も活かした同市の取り組みを紹介します。
キャラクター「ナガミー」を制作したところです。
なお、招致活動の一環として、日本ラグビーの
●2019年、
ラグビーワールドカップが日本初開催
最高峰、トップリーグの公式戦が県内で初めて、
ラグビーワールドカップは、五輪やサッカー
9月28日に維新百年記念公園陸上競技場(山口
ワールドカップに次ぐ世界3大スポーツイベン
市)で行われ、3,000人超が熱戦を堪能しました。
トに数えられています。2011年のニュージーラ
ンド大会では約150万人が現地を訪れ、約40億
●戦後から今につながる「ラグビーの街」
の歴史
人がテレビで観戦したそうです。
長門市とラグビーとの関わりは戦後にさかの
日本大会(9∼ 10月の44日間を予定)では、
ぼります。大陸からの引き揚げ港となった仙崎
計48試合が10 ∼ 12か所で開催され、参加20チ
港で、受け入れ業務を担当していたニュージー
ームは国内でキャンプを行います。予選リーグ
ランド軍の中に、北浦地区のグラウンドでラグ
と決勝トーナメントで試合会場が異なるため、
ビーを楽しんだ軍人がいたと伝えられ、これが
キャンプ地も移動し、1か所あたりの滞在期間
その後の競技普及につながったようです。
は限られますが、マスコミやファンも含めた宿
高校チームの活躍も目覚ましいものがありま
泊・飲食等による一定の効果が期待されます。
す。大津緑洋高校の前身である旧水産高校と旧
2002年のサッカーワールドカップ日韓大会で
大津高校は共に、全国高校選手権の出場経験が
は、カメルーン代表のキャンプ地、旧中津江村
あり、旧大津高校は1983年度大会でベスト4に
(現:大分県日田市)が話題となりました。今
進みました。日本代表等の有力選手を輩出する
回のキャンプ招致には、ラグビー合宿のメッカ・
など、伝統は脈々と受け継がれています。
菅平高原がある長野県上田市など60か所近くが
さらに同市では、「タグラグビー」
(ラグビー
名乗りを上げた模様で、
「第2の中津江村」を
目指した招致合戦は既に始まっています。
●山口国体を機にキャンプ招致構想が浮上
長門市では、山口国体でラグビー少年男子の
競技を開催後、ワールドカップのキャンプ招致
で地元を盛り上げたいとの機運が高まりました。
12
やまぐち経済月報2013.10
▲マスコットキャラクター「ナガミー」
の簡易版)の大会が10年前から行われており、
全国有数の温泉があります。中でも、俵山温泉
トップリーグの選手等によるラグビー教室も盛
は最近、高濃度の水素等がもたらす効能が注目
んです。県が国体の成果継承のため各市町で実
されています。キャンプ地になれば、これらの
施している「我がまちスポーツ推進事業」では、
温泉が選手達の疲れを癒すでしょう。さらに同
同市の対象競技となるなど、当地ではラグビー
市は、多彩な魚介類が提供できるうえ、疲労回
が地域活性化の重要なツールとなっています。
復効果があるとされる鶏肉の産地でもあり、食
の面でも選手を満足させるに違いありません。
●キャンプの拠点となる「俵山多目的交流広場」
また、温泉を中心にゴルフやフィッシング、ス
では高校生等のラグビー合宿受け入れ
キューバダイビングなど選手が休暇を楽しむレ
キャンプ地に選ばれた場合の練習拠点は、
ジャー環境も整っています。
1996年度完成の「俵山多目的交流広場」です。
人工芝と天然芝のグラウンド各1面、多目的グ
●東京五輪でのキャンプ招致も視野に
ラウンド、管理棟で構成され、観客は1,500人
長門市は、東京五輪での7人制ラグビーのキ
程度収容可能です(固定スタンドと芝生席)。
ャンプ招致も視野に入れており、是非とも今回
同広場では、高校生を中心としたラグビー合
のワールドカップに係る活動を成功させたいと
宿が盛んに行われています。長門市も、スポ
意気込んでいます。キャンプ地決定は2015 ∼ 16
ーツ合宿奨励金(一定の条件を満たした場合
年の見込みですが、その成否にかかわらず、様々
に1人1泊1,000 ∼ 2,000円支給)を設けており、
な取り組みが当地の認知度を一層高め、合宿増
2012年度の本制度利用者は延べ1,780人に達し
加等の効果をもたらすでしょう。場合によって
ました(サッカーやバドミントンを含みます)。
は、情報を入手したワールドカップ参加予定国
が、早い段階で視察に訪れる可能性もあります。
●温泉や食などの観光資源もアピール
11月には、「オールブラックス」の愛称で知
ラグビーワールドカップのキャンプ地に求め
られるニュージーランド代表が来日し、日本代
られる条件は今のところ未定ですが、俵山多目
表と対戦します。6年後、こうした人気チーム
的交流広場に関しては、ナイター設備や管理棟
が長門市にやってくるかもしれません。官民
を整備すれば十分対応可能とのことです。
の「スクラム」による招致活動が実を結ぶよう、
何といっても長門市には、湯本と俵山という
大いに期待したいと思います。 (能野 昌剛)
▲タグラグビー大会
▲俵山多目的交流広場のラグビー場
やまぐち経済月報2013.10
13