2.中世の都市デザイン(Urban Form) 都市デザイン史 2ー2.西洋の中世都市広場 No.2 主題科目(第2分野) 4.都市広場とそのデザインの事例 (1) 広場(ヴェネツィア、イタリア) ■建築・都市デザイン上の位置づけ 欧州の最も美しいモニュメンタルな広場 → 後世の広 と の計画・デザインに大きな影響 ■構 成 広場・・・東にサン・マルコ寺院(ビザンティン様式) 西・南・北に 建物 (16 〜 19 世紀初期 ) を配置 広場・・・東側と西側に図書館と 宮 南側に大運河( ) 写真1 ヴェニスの大運河 ■歴 史 9世紀 総督宮とサンマルコ寺院(総督の 礼拝堂) 10 世紀 鐘塔・・・ 灯台の転用 図2 湾から見たサンマルコ広場 12 世紀 の再建(運河の埋め立て整備)→ 現状に近い形へ 12 世紀以降 時代の改築 19 世紀初頭 ナポレオンによる改修 1902 年の倒壊後、復原 小広場側の景観。 2つの円柱モニュメントが広場の湾側 の入口を想定している。鐘塔は、町全 体のモニュメントでもある。 ■優れている点 (←「広場の造形」(カミロ・ジッテ)の視点より) ・大小2つの 形の広場で構成されている点 ・ が単なる単なる広場のモニュメントではなく、 ヴェネツィア のモニュメントである点 図1 ヴェニスの鳥瞰図 イタリア北東部、ヴェニツィア湾に臨む港湾都市。ラグーン(干潟)に浮かぶ島についくられた水都。商工業が盛んで、中世を通じて共和国として繁栄した。 写真2 サンマルコ広場の大広場 ルネッサンス様式の回廊で囲まれる。 ・優れたデザインの で周囲が囲まれている点 図6 カンピドリオ広 場の中央に置かれたマ ルクス・アウレリウス 帝の青銅騎馬像 サンマルコ寺院: 様式 回廊・図書館・提督宮: 様式 ・海に対して で柔らかく閉じている点 ・教会に向かって (透視図法)な効果がある点 (2)カンピドリオ広場(ローマ) ■建築・都市デザイン上の位置づけ 優雅で 的な小広場 の代表的広場 鐘塔 提督館 パースペクティブな効果を 的に与えるデザイン ■構 成 正面・・・3階建ての ・デイ・コンセルヴァトーリ 左 ・・・カピトリーノ 館 図書館 写真4 カンピドリオ広場の階段 階段が上がる方向に微妙に末広がる。 また、両脇の建物も正面の建物に向かっ て末広がるように配置されている。こ れによって、正面の建物が前に出てく るような印象を与える効果がある。 中央・・・古代ローマのマルクス・ 帝の青銅騎馬像 ■歴 史 ・古代ローマ時代:精神上そして行政上の中枢の一つ カピトーリウムの丘( ) → の諸建築 ・ の設計 (1546 年頃着工) 写真5, 6 カンピドリオ広場中央 古代 の丘としての再構築 ■特 徴 ・正面に向かって 配置計画(階段、両側の建物) → の建物が際立って見える ・ を用いた広場の路面デザイン → 豪華絢爛な印象 に目を集める ※カミロ・ジッテ Camillo Sitte オーストリアの建築家、都市計画家。ウィーンに生まれる。1901 年ベルリンで雑誌 『Der Staedtebau(都市計画)』を創刊。都市計画における実用性と芸術の問題について論 じた。当時、オースマンのパリ大改造の影響で、いわゆるバロック的都市計画が主流 を占める傾向がある中で、中世都市、特にその広場の持つヒューマンスケールを回復 しようと努力した。 出典: 1) 日本建築学会編、「西洋建築史圖集 三訂版」、彰国社、1996 2) 都市史図集編纂委員会編、「都市史図集」、彰国社、1999 3) カミロ・ジッテ、「広場の造形」、鹿島出版会、1991 楕円を用いるのは、バロック期の特徴 である。中央の騎馬像に視線を集める ような路面のデザインが施されている。 図3 サンマルコ広場 Piazza San Marco イタリアのヴェネツィアの中心広場。広場の歴 史は総督邸とその私的礼拝堂としてサンマルコ 寺院が建設された9世紀にさかのぼるが、現状 に近い形状となるのは鐘塔を再建し運河を埋め て整備を行った 12 世紀以降である。鐘塔は 10 世紀の監視灯台の転用であったが、現存のもの は 1902 年の倒壊後の復原。12 世紀以降にも ルネサンス時代の建造物の改築、19 世紀初頭 のナポレオンによる改修などを経て現在の姿と 写真3 鐘塔 現 在 の 鐘 塔 は なっている。この広場の優れた構成は、後世の 1902 年の倒壊後 広場と建築に大きな影響を与えた。 に 復 原 さ れ た も 湾に面したピアツェッタ(小広場)と主たる広 の で あ る。 大 広 場が L 字状に結びつく。 場 と 小 広 場 の ヘ その空間を構成する回廊、教会、塔などが相乗 ソの位置にあり、 効果を生み、複数の広場がそれぞれ独自の空間 サ ン マ ル コ 広 場 を主張しながら関係性を持つことによって、単 全 体 を 引 き 締 め 独の広場以上の美しさを創り出している。 ている。 図4、5 カンピドリオ広場(設計:ミケランジェロ) ローマ元老院の諸建築があったカンピドリオ丘の再構築として設計された。 楕円を用いたパースペクティブなデザインが施され、マニエリスム(バロック への移行期)の代表的な広場の設計である。
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