「キューバは変わる」

平成24年 4月10日号
「キューバは変わる」
駐キューバ大使
西林万寿夫 氏
(平成 24 年 3 月 19 日 於日本記者クラブ)
で引き続きサトウキビのモノカルチャー経済だけが
発展しました。政治的には、米国は島の東の端にあ
るグアンタナモ基地を 1902 年に租借していまだに
返していません。
米国の支配下にあったこの 60 年間に、
社会的な矛
盾が進みます。圧倒的に多い貧困層と一部の特権階
級の格差が拡がりました。ハバナは米国の金持ちの
歓楽街のような様相を示していました。当時カジノ
があり、麻薬が拡がり、売春もありという退廃的な
状況でした。
1926 年に生まれたフィデル・カストロ、キューバ
東部でサトウキビ農園を経営していたスペインから
の移住者の2世ですが、ハバナで高校、大学と勉強
するうち、
この社会的矛盾を解消しないといけない、
貧富の格差を何とかしないといけないとの思いを抱
き革命に立ち上がったわけです。
そして 1959 年1月
1日に革命政権が樹立しました。私が着任した 2009
年3月は革命 50 周年の直後に当たるのですが、
その
後いろんな 50 周年行事が続きました。例えば 2011
年の4月は、米国がキューバを引っくり返しにかか
って侵攻し、4日間で追い払われたピッグス湾事件
の 50 周年の年に当たって、
キューバでは大きな戦勝
記念行事がありました。
この革命の成果について特徴的なことは、医療、
教育が無料であること。識字率も7割ぐらいだった
のを数年で 100%近くに持っていった。お医者さん
もそれまでは数が足りなくて乳幼児死亡率が非常に
高かったのを、医療面で大変な力を入れ、今や医療
キューバは北朝鮮と並んで今も純粋に社会主義を
守っている国ですが、何かと気になる国でもありま
す。メディアの関心も中南米諸国の中でとりわけ高
い。今日ある本屋へ寄りましたら、20 冊中南米の本
が置いてありましたが、
そのうち 12 冊がキューバの
本でした。
今年の 10 月は世界を震撼させたキューバ
ミサイル危機からちょうど 50 年にあたります。
その
ころメディアを中心に 50 年前のレビューが盛んに
行われるのではないかと思います。
サトウキビとともに歩んだ国
歴史 最初キューバの歴史についてお話ししま
す。キューバはサトウキビとともに歩んできた国で
す。16 世紀にスペインが入ってきて、400 年近く植
民地支配を続けたのですが、キューバは亜熱帯に位
置しサトウキビの栽培に適した土地柄にあり、サト
ウキビとともに発展してきました。労働力はアフリ
カから 100 万人の奴隷を入れました。そのためにキ
ューバの人種構成は、正確な統計はありませんが、
スペイン系(白人系)が4分の1、アフリカ系が4分
の1、混血が 50%ぐらいのように思います。
これはブラジルとよく似ている。したがって音楽
とか絵画とかアフリカ文化の影響が相当あります。
また両国ともスポーツが得意。
ブラジルはサッカー、
キューバは野球です。
そして、19 世紀の終わりの独立運動を経て、米西
戦争の結果、1902 年に独立しました。独立後、革命
までの約 60 年間、
米国のもと半植民地化された状態
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