第2章 観 光 の 動 向 1. 我 が 国 の 観 光 動 向 国土交通省がまとめた「平成 18 年度 観光白書」によると、平成 17 年の訪日外国人旅 行者数は、上半期は対日感情の悪化等により伸びが鈍化したものの、訪日査証※の規制緩和 や世界から高い注目を集めた「愛・地球博」の開催、中部国際空港の開港、知床地域の世 界遺産登録などといった国内での動きなどがあり、訪日外国人旅行者が昨年によりも 59 万 人多い、過去最高の 673 万人に達しました。 我が国では、平成 15 年度から官民一体となった「ビジットジャパンキャンペーン」を開 始していますが、開始して以来、訪日外国人旅行者は、平成 15 年の前半にはイラク戦争や SARS※の影響を受けて減少したものの、その後は順調に推移しています。 「ビジットジャパンキャンペーン」を開始して以来の目標である、2010 年に 1,000 万 人という目標達成に向けた取り組みや、平成 17 年度から開始した観光ルネサンス事業※な どによる「国際競争力のある観光地づくり」を 2 つの柱として、観光立国の実現に向けた 取り組みが今後も展開されます。 訪 日 外 国 人 旅 行 者 数 の 推 移 (千人) 過去最高値を達成 8,000 初めて600万人を達成 2003年以前 の過去最高値 7,000 6,000 5,000 合計 4 , 7 7 0 千人 合計 5 , 2 4 0 千人 2003年度からビジット ジャパンキャンペーン 開始 合計 6 , 1 4 0 千人 合計 6 , 7 3 0 千人 前年比9.6%増 合計 5 , 2 1 0 千人 3,470 3,140 4,000 2,670 2,390 2,910 7∼12月 3,000 SA RSの影響 2,000 1,000 2,380 1∼ 6月 3,000 2,570 2,300 2002年 2003年 3,260 0 2001年 2004年 国土交通省 2005年 平成18年版 観光白書 より ※訪日査証・・・海外からの日本へ渡航する際のビザ(査証)のこと。 ※SARS・・・アジアを中心に流行している重症急性呼吸器症候群(SARS)のこと。 ※観光ルネサンス事業・・・観光産業の再生、地域の再生を図るとともに、訪日外国人旅行者の受け皿となる地域 の魅力の増進を図るため、地域の民間と行政が一体となった観光振興の取り組みを総 合的に支援する事業のこと。 23 外国人旅行者受け入れ数の国際ランキング(平成 16 年) 75,121 フランス 53,599 スペイン アメリカ 46,077 中国 41,761 37,071 イタリア 27,755 イギリス 21,811 香港 20,618 メキシコ 20,137 ドイツ 19,373 オーストリア 19,150 カナダ 16,826 トルコ 15,708 マレーシア 15,629 ウクライナ 14,290 ポーランド 13,969 ギリシャ 12,212 ハンガリー タイ 11,651 ポルトガル 11,617 9,646 オランダ 9,164 ロシア 8,580 サウジアラビア シンガポール 8,328 マカオ 8,324 クロアチア 7,912 6,982 アイルランド 南アフリカ 6,815 ベルギー 6,710 スイス 6,530 日本 6,138 チェコ 6,061 チュニジア 5,998 アラブ首長国連邦 5,900 韓国 5,818 エジプト 5,746 0 日本は世界で第30位 日本は世界で第30位 アジアで第7位 アジアで第7位 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 国土交通省 70,000 平成18年版 観光白書 80,000 (千人) (千人) より 観 光 消 費 の 我 が 国 へ の 貢 献(平成 16 年) 経済波及効果(平成16年) 直接効果 旅行消費額 24,5兆円 生産波及効果 55.4兆円 雇用創出効果 235万人 雇用創出効果 475万人 国土交通省 24 平成18年版 観光白書 より 2.鹿 児 島 県 の 観 光 動 向 平成 17 年の鹿児島県観光統計によると、県外・県内の宿泊観光客数は 958 万人という 統計結果が出ました。これは前年より 3.6%低い 23 万人の減少になります。 その要因として、平成 16 年3月の九州新幹線一部開業に伴う反動や、 「愛・地球博」期 間中の団体客等の減少が大きく影響したものと考えられます。 発地別県外宿泊観光客数の構成比をみると、北部九州地区、関東地区、南部九州地区、 関西地区の順になっており、この4地区で全体の9割弱を占めているという結果になって います。 一方、県外からの日帰り観光客数は前年と比較し 2.0%の減少。県内における日帰り観光 客数についても同様に 1.4%の減少。全体でみても 1.7%の減少となりました。 しかし、外国人観光客数においては 0.6%の増加となっており、これは4月∼5月にかけ ての日韓間の竹島領有権問題や中国各地での反日デモ※、香港∼福岡間の航空路線の運休等 の影響はあったものの、国や県などが展開する「ビジットジャパンキャンペーン」等の誘 客活動により、全体としては前年並みになったものと考えられます。 また、平成 18 年度から 5 年間は九州新幹線全線開業に積極的に取り組み、平成 19 年 度以降は「西郷隆盛生誕 180 年」、 「明治維新 140 年」、「島津斉彬生誕 200 年」など歴 史の節目が訪れ、「伝統的工芸品月間国民会議全国大会」や「薩摩焼パリ伝統美展の里帰り 展」、 「ねんりんピック※」などのイベントも開催されるため、今後は関係機関、団体、行政 が一体となって観光客誘致に積極的に取り組む必要があります。 県 内 ・ 県 外 宿 泊 観 光 客 数 の 推 移 (千人) 平成16年3月の九州新幹線一部開業 に伴う反動や愛知万博開催期間中の 県外団体客等の減少が大きく影響 11,000 10,000 9,851 千人 10,071 千人 9,800 千人 2,198 9,000 2,236 9,808 千人 2,172 2,014 7,628 7,794 9,578 千人 前年度より 230千人減少 2,064 8,000 7,000 7,615 7,873 7,514 6,000 県内 県外 5,000 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成17年度 鹿児島県観光統計 より ※デモ・・・デモンストレーションの略で、抗議や要求の主張を掲げて集会や行進を行い、団結の威力を示すこと。 ※ねんりんピック・・・高齢者を中心とするスポーツ、文化、健康と福祉の総合的な祭典のこと。 25 発 地 別 県 外 観 光 客 数 平 成 17 年 度 (千人) 0 500 北海道 34 東北 43 1,000 1,500 30 435 中部 1 ,3 9 7 関西 366 中国 四国 2,500 1 ,7 53 関東 北陸 2,000 北部九州、関東、南部九州、関西方面からの 4地区で 全体の9 割を占めている 86 1 ,9 34 北部九州 1 ,4 3 6 南部九州 平成17年度 鹿児島県観光統計 より 交 通 機 関 別 の 県 外 宿 泊 観 光 客 数 の 推 移 (千人) 3,500 3,000 2,500 2 ,7 6 5 2 ,9 2 2 2 ,8 8 1 2 ,9 0 1 2 ,8 3 6 2 ,6 7 9 2 ,8 2 9 2 ,7 0 2 2 ,5 6 0 2 ,4 0 7 2,000 1,500 1 ,1 7 1 1 ,3 6 6 1 ,1 7 2 1 ,1 2 6 596 597 1 ,3 7 1 鉄道 1,000 648 635 585 500 0 352 平成13年 354 14年 322 332 15年 16年 315 バス 航空機 船舶 自動車 17年 平成17年度 鹿児島県観光統計 より 26 県 内 ・ 県 外 日 帰 り 観 光 客 数 の 推 移 (千人) 20,000 県内日帰り観光客数 県外日帰り観光客数 1 9,59 4 19,500 1 9,32 1 1 9,11 3 19,000 18,500 18,000 1 7,53 6 17,500 17,1 94 17,0 37 17,000 3 7,13 0 16,500 3 6,5 15 36 ,150 16,000 15,500 平成15年 16年 17年 平成17年度 鹿児島県観光統計 より 外 国 人 観 光 客 数 の 推 移 (千人) 84,000 8 2,3 82 82 ,85 0 16年 17年 82,000 80,000 78 ,97 3 78,000 76,000 7 3,69 5 74,000 72 ,72 2 72,000 70,000 68,000 66,000 平成13年 14年 15年 平成17年度 鹿児島県観光統計 より 27 3.霧 島 市 の 観 光 動 向 本市は、合併による広域化にともない、11 のJR駅、5つの高速自動車道のインターチ ェンジ、乗降客国内第7位を誇る鹿児島空港などを有する地域となり、本県の中でも鹿児 島地区・指宿地区に並ぶ主要観光地として、県内外から年間約 716 万人(宿泊 1,305 千 人、日帰り 5,858 千人)もの観光客の入込み客の数を数えています。 また、「みやまコンセール」を中心に開催される「霧島国際音楽祭」は、霧島高原の夏の 一大イベントとして地元に定着するまでに大きく成長しました。さらに県の三大祭りのひ とつである「鹿児島神宮初午祭」や「霧島高原太鼓祭り」 、霧島神宮境内で開催される「神 楽まつり」等の伝統的文化的なイベントやスポーツイベントなど多種多様に展開されてい ます。 しかし、このような中においても観光客の伸びは経済の伸びの低迷等により、なかなか 好転の兆しが見出せない状況です。 実際に平成 17 年の鹿児島県観光統計を見ても、本市の宿泊観光客数、日帰り観光客数と もに前年を若干下回る状態にあります。しかし、外国人観光客来訪状況については、「霧島 地区」は前年と比べて 2,876 人も多い、23,883 人という結果になり、外国人の観光客か ら人気の観光地となりつつあります。 今後は、新市誕生により形成された広大な地域に著名な史跡や観光地、観光パンフレッ トにも掲載されていない多くの観光素材も点在しているため、それらの把握や調査分析を 行い、年次的に観光振興を図っていくことが急務と考えます。 地 区 別 の 県 外 宿 泊 観 光 客 数 の 推 移 (千人) 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 1 ,002 1 ,082 1 ,064 1 ,010 9 78 鹿児島・桜島 霧島 指宿・佐多 種子・屋久 奄美 その他 500 0 13年 14年 15年 16年 17年 平成17年度 鹿児島県観光統計 より 28 地 区 別 の 県 内 宿 泊 観 光 客 数 の 推 移 (千人) 1,000 800 600 400 253 241 232 鹿児島・桜島 霧島 指宿・佐多 種子・屋久 奄美 その他 200 0 15年 16年 17年 平成17年度 鹿児島県観光統計 より 地 区 別 の 日 帰 り 観 光 客 数(県内+県外)の 推 移 17年 5,4 94 16年 5,858 その他 奄美 種子・屋久 15年 5,7 42 指宿・佐多 霧島 鹿児島・桜島 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 (千人) 平成17年度 鹿児島県観光統計 より 29 地 区 別 外 国 人 観 光 客 数 の 推 移 (千人) 50,000 45,000 平成13年から1万人も増加。 40,000 3 5,0 06 35,000 対前年比 → 113.7% 30,000 2 3,8 83 25,000 20,000 15,000 1 2,4 91 1 1,4 70 10,000 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 5,000 0 鹿児島・桜島 霧島 指宿・佐多 その他 平成17年度 鹿児島県観光統計 より 今 後 、 予 定 さ れ て い る 主 な 記 念 行 事 邦 暦 西 暦 月 行 ※ 平成 19 年 2007 10 月 20 年 2008 21 年 2009 1月 8月 10 月 3月 7月 11 月 22 年 2010 23 年 24 年 25 年 26 年 2011 2012 2013 2014 事 霧島市で開催 全国空港フォーラム (鹿児島空港 35 周年記念) 大河ドラマ「篤姫」放映 北京オリンピック開催 ねんりんピック開催(霧島市で3種目) 静岡空港開港(鹿児島空港直行便予定) 霧島国際音楽祭 30 周年 霧島市誕生3周年 上海万国博覧会 沖縄高校総体開催(霧島市で登山開催) 太鼓祭り 25 回 九州新幹線全線開通 鹿児島空港 40 周年 大隅国 1300 年祭 国立公園 80 周年 ※フォーラム・・・公開討論会のこと。 30 日当山侏儒どんのむかし話 その2 ■からすときじ■ 山でりっぱなきじを一羽しとめた侏儒どんは、町へ出てひともうけして こようと考えた。 ある日、侏儒どんは田舎のおやじに身を変えるや、竹の端にきじを一羽 ぶらさげて町に出た。 「からしゃ(からす)いいもはんかー。からしゃよしごあんどかー。」 と大声をはりながら、通りを歩いている侏儒どんを見て、町の人々はあれ はちょっと頭がおかしかおやじじゃなかろうかいと笑った。 1人の欲深い男がそれを見て、きじもからすも分からんこの馬鹿おやじをだまして、安い値で買い取っ てやろうとほくそえんだ。 「こらこらおやじ。からしゃどしこん値じゃ?」 声をかけられた侏儒どんは喜んで答えた。 「からしゃ、十文でよかもんそ」 男はほくほくした。からすなら一文の値打ちもないが、きじの十文ならもうけものだ。 その男はさっそく腰の銭入れから十文を取り出して、侏儒どんに渡した。 「これはだんなさん、ありがとうございもす。」 銭を受け取った侏儒どんは、その銭をおしいただいて巾着におさめるや、竹につるしたきじを道ばたにそ っと置き、何やら着物の胸の中をゴソゴソとさぐり始めた。 「ほい、お約束のからす一羽。たしかにあげもんど」 というや、ふところにかくし持っていた真っ黒なからすを取り出して、男に手渡した。 欲深い男もさすがにこれには開いた口がふさがらず、文句も言えないままたちつくしておった。 侏儒どんはあっけにとられている男の前をにんまりしながらゆうゆうと歩き去った。 そして、「きじはいいもはんかー。きじはよしごあんどかーい。」と大きな声でふれながら、通りの角を曲 がって行ってしまったそうな。 鹿児島むかし話(下)より 世界中には、イソップ物語などの有名なとんち話が数多く残され、日本にも語り継がれてきたたくさんの とんち話があります。九州地方では、肥後(熊本)の「彦一とんち話」 、豊後(大分)の「きっちょむ物語」、 そして薩摩(鹿児島)には、「日当山侏儒どんのとんち話」があります。 侏儒どんの本名は徳田太兵衛といい、薩摩藩第 18 代藩主 島津家久公に仕え、日当山の地頭もつとめ、 地元では非常にとんちのきく人物で有名です。 侏儒どんは、生まれ落ちたとき体があまりにも小さすぎたため、大きく育って欲しいという願いのもとで 「太兵衛」とつけられたそうです。また成人しても三尺(1メートルぐらい)に足りぬほどの小男だったそ うです。ちなみに侏儒とは「一寸法師」という意味があるそうです。 侏儒どんは 1634 年1月16日、日向(現在の宮崎)の都城の北郷殿宅で年かさ(年の暮れに食べる餅の こと)の餅を喉に引っかけて 51 歳で亡くなったと伝えられています。 現在、隼人町日当山温泉公園を見下ろす位置に侏儒どんの像が、また公園の南入口に侏儒どんの碑があり ます。また、近くに架かる橋の名は「しゅじゅどん橋」 、町の通りの名は「しゅじゅどん通り」など、今なお侏 儒どんは人々に愛され、親しまれています。 31
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