精度管理充実に向けた 追跡調査の取り組みと課題

精度管理充実に向けた
追跡調査の取り組みと課題
(子宮がん検診)
(財)世田谷区保健センター
清野 重男
はじめに
がん検診実施のための指針では、検診実施機関は
『精密検査実施施設との連絡を取り、精密検査の結
果の把握に努めなければならない』』とされ、われわれ
果の把握に努めなければならない
にとって精検結果の把握が重要な業務として位置付
けられた。
今回のテーマである 『精検結果把握の工夫
精検結果把握の工夫』』 につ
いて、当センターが行っている精検結果把握のため
の、追跡調査方法等について報告する。
世田谷区 子宮がん検診システム
[契約]
世田谷区
医師会 【検診実施機関】
(問診・視診・細胞採取・結果説明等)
世田谷区保健センター
(細胞診検体検査・追跡調査)
[ 検診方法 ]
*対象は、20歳以上の区内在住者で、区内の指定医療機関であれば
自由に選択し受診できる都市型検診である。
*検診自己負担金 (頸部がん検診 800円、体部がん検診 1,000円)
*検診実施機関で問診・視診・内診・細胞採取が行われ、塗抹固定さ
れた検体は当センターに郵送される。Pap染色後に鏡検診断を行い
検査結果を医療機関に返送する。
*受診者は検診実施機関で結果説明を受け、細胞診で異常が指摘さ
れた要精検者には精密検査をうけるよう指導している。
検診システム
受 診 者
検診案内・申込
委託契約
・検体検査
・データ報告など
結果報告
・問診
・内診
・細胞採取
など
検診実施機関
細胞診検査
世
田
谷
区
結果説明
受 診
委託契約
要精検者に
精密検査を
指導
保健センター
* 約60∼80施設
精密検査の実施と結果把握
要精検者
精検機関
精検・治療
紹介
検診実施機関 精検
精検依頼
検体検査依頼
保健センター 精検
治療機関
治療
精検・治療
機関への
追跡
過去15年間
53施設
469件
精検受診者の結果把握内訳
H5∼19年
100
(%)
80
60
40
センター精検
他機関追跡
20
0
15
26
37
48
59
610 711 812 913 10
14 11
15 12
16 13
17 14
18 15
19
年度
追跡調査等の方法(1)
*追跡調査は全て書面で行っている
〇検診実施機関あて (当センターの精検案内
と追跡)
1.精密検査の案内と検査依頼書
2.追跡調査ご協力のお願い
・検診実施機関での精検結果
・紹介先の医療機関名の回答
追跡帳票類 1
当センター精密検査の依頼書
検診実施機関での精検結果
及び紹介先報告書
追跡調査の方法(2)
〇精検・治療機関あての追跡調査書類
1.子宮がん検診要精検者の追跡依頼書
2.精検・治療結果の調査票
・細胞診結果
・病理組織結果
・手術結果 など
追跡帳票類 2
精検結果把握のポイント(1)

事務職との連携を図る
・追跡方法の取り決め
・役割分担
・追跡調査の問合せに対する対応

検診検査システムによるデータの一元管理
・検診データ
・要精検者管理データ
1.
2.
3.
センター精検データ
検診実施機関追跡データ
精検・治療機関の検査・治療データ
検診実施機関
精検・
治療機関
検診データ
要精検管理データ
精検結果把握のポイント(2)
○精検・治療機関に対しての追跡帳票類
精検・治療機関に対しての追跡帳票類

要精検者情報

紹介元(検診)医療機関名

検診細胞診結果などを記載
(医療機関からの問合せで気づく不具合に、
修正・変更を加えている)
精検結果把握のポイント(3)

追跡調査回数
〔検診実施機関〕
検診実施機関〕
初 回 : 細胞診結果に同封
(速達郵便、異常なしと区別)
再追跡 : 未回答に対して、3∼6ヶ月後に再追跡
〔精検・治療機関
精検・治療機関〕〕
初 回 : 紹介先確認後に追跡
再追跡 : 未回答に対しては後日再追跡
子宮がん検診実績
年 度
受診者数
要精検者数 (率)
平成5年∼19年
精検受診者数 (率)
がん発見数 (率)
陽性反応
適中度
5
14,879
153
1.03%
135
88.2%
29
0.19%
19.0%
6
15,055
128
0.85%
109
85.2%
20
0.13%
15.6%
7
14,351
142
0.99%
124
87.3%
30
0.21%
21.1%
8
14,902
105
0.70%
93
88.6%
18
0.12%
17.1%
9
15,131
151
1.00%
137
90.7%
33
0.22%
21.9%
10
14,166
175
1.24%
153
87.4%
23
0.16%
13.1%
11
14,436
135
0.94%
121
89.6%
25
0.17%
18.5%
12
15,520
197
1.27%
176
89.3%
33
0.21%
16.8%
13
16,152
219
1.36%
187
85.4%
21
0.13%
9.6%
14
17,144
279
1.63%
221
79.2%
20
0.12%
7.2%
15
18,969
293
1.54%
251
85.7%
28
0.15%
9.6%
16
17,395
289
1.66%
228
78.9%
15
0.09%
5.2%
17
12,593
247
1.96%
188
76.1%
15
0.12%
6.1%
18
11,986
239
1.99%
196
82.0%
11
0.09%
4.6%
19
14,462
216
1.49%
168
77.8%
14
0.10%
6.5%
計
227,141
1.31%
2,487
83.8%
335
0.15%
11.3%
2,968
検診実施機関からの追跡回答率
H5∼19年
100
(%)
90
80
70
60
50
40
回答無
回答有
30
20
10
0
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
年度
検診実施機関からの追跡回答状況
(検診機関 87施設)
平成5年∼19年
全て回答あり
42.5%
(37施設)
1つ以上回答がな い
5 7.5 %
(50施設)
1割以上回答無
24.1%
ほとんど回答有
75.9%
精検機関からの追跡回答率
H5∼19年
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
回答 無
回答 有
20%
10%
0%
51
62
73
84
95
10
6
11
7
12
8
13
9
14
10
15
11
16
12
17
13
18
14
19
15
年度
要精検 結果把握状況
100
(%)
90
80
70
60
精密検査の検査実施内訳
50
細胞診再検
40
(エストロゲンテスト含む)
20.2%
30
20
組織検査
79.8%
10
0
未把握
未受診
精検受診
51
62
73
84
95
10
6
11
7
12
8
13
9
14
10
15
11
16
12
17
13
18
14
19
15 (年度)
要精検者 指導方針割合と未回答の関係
H5∼19年
要精検 指導方針の内訳
2,968人
エストロゲン
テスト
5.8%
細胞診再検
17.3%
追跡未回答の指導方針内訳
255人
エストロゲン
テスト
7.1%
細胞診再検
20%
組織検査指導
76.9%
組織検査指導
72.9%
世田谷区内
検診機関
(平成15年∼19年に
検査依頼があった機関)
検診機関
組織生検による精密検査
を実施する検診機関
精検・治療機関への追跡
埼玉県
(H15∼19年)
世田谷区
神奈川県
その他
徳島県
栃木県
手術・治療機関
精検機関
過去の追跡機関
追跡調査における結果把握の課題

都市型検診での利点・欠点
・都市部では検診機関や精検機関が多く、選択肢が広がり
自由に受診できるのが利点である。反面、要精検者が複
数の医療機関を受診することもあり追跡が複雑である。
・紹介先の精検機関を未受診

追跡調査等にかかる経費負担
・システム変更や郵便費用など

自治体が求める検診集計報告の時期
ま と め

当センターで行っている追跡調査の取り組みを紹介した。

追跡作業の効率化や帳票類の修正・変更、追跡回数を
増やし、検診実施機関にもご協力をいただけた事で、高
い回答率を得る事ができている。しかし、個人情報保護
の影響もあるのか、未受診、未把握がやや増えた。

検体検査を実施する当センターでは、受診者と接する機
会がなく、精検結果の把握に限界がある。

精検結果の把握率を高めるためには、
*検診を受ける時点で精密検査の必要性や追跡調査
の目的を示しておくこと、
*検診実施機関での十分な説明や受診者ご本人に理
検診実施機関での十分な説明や受診者ご本人に理
解を求めていくことが重要であると考える。
謝辞
本シンポジウムにおきまして、発表の機会を
与えてくださいました 会長の青木 大輔先生、
座長の労をお取りくださいました 斎藤先生、
小野先生に深謝致します。