Japan Airlines Captain Association 2007. 1. 31 No.21-107 日本航空機長組合 TEL FAX 03-5756-3909(HND) 03-5756-0226(HND) JCAWebSite http://www.jalcrew.jp/jca mail [email protected] 客室乗務員のみなさまへ 再び客室乗務員の死傷事故を起こさないために 706 便事故裁判 機長無罪判決確定にあたって ―機長組合からのメッセージ― 706 便事故の教訓を活かし、二度と客室乗務員の死傷事故を起こさないために 客室乗務員に向け以下のメッセージを発信しますー機長組合掲示板・ホームページ掲載 2007 年 1 月 9 日、名古屋高等裁判所にて 706 便事故の機長に無罪判決が言い渡されまし たが、検察の上告断念により 2007 年 1 月 23 日にこれが確定しました。 706 便事故とは 1997 年 6 月 8 日、日本航空 706 便香港発名古屋行は三重県紀伊半島上空にて急激な揺れに 遭遇し、乗客 1 名及び客室乗務員 3 名が重傷、乗客 4 名及び客室乗務員 4 名が軽傷を負い、 うち客室乗務員 1 名が約 1 年 8 カ月後に亡くなられた事故です。 この裁判は、事故の原因が機長の操縦操作であるとして、名古屋地検が当該機長を 2002 年 5 月業務上過失致死傷で起訴し、始まったものです。私たち機長組合は、同じ職場のプ ロとして機長の操縦操作には全く過失はなく無罪であると確信し、当該機長とともに組 合・会社双方が力を合せた弁護団を組んで裁判に望み、多くの航空労働者の支援も得なが ら足掛け 6 年 31 回にも及ぶ名古屋での公判傍聴を繰り返し、今日ここに機長の無罪を勝ち 取ったのです。 この判決確定にあたり、私たちはあらためて本件事故によって亡くなられた客室乗務員 谷口さんの冥福を祈るとともに、二度と客室乗務員の死傷事故を起こさないよう全力を尽 くすことを誓いたいと考えます。 航空機が運航する以上乱気流への遭遇は避けきれませんが、私たち機長は、気象情報の 入手・解析、航路の変更、雲の回避、高度の変更などにより出来る限り乱気流を避ける努 力を行い、やむを得ず遭遇する場合もその影響を最小限とするような操縦操作に努めてい ます。しかし、そうした努力を尽くす中でも、着席しなければならないような危険が迫っ ていると判断した場合には、OM に定められたように“座席ベルト着用サイン”を点灯し、 「即座に着席し、座席ベルトの着用すること」を指示します。 これまで乱気流による負傷事例を見ると、軽傷を除きすべて座席ベルト未着用の状態で 発生しており、座席ベルトの着用によって負傷を防ぐことができたと考えられます。これ は 1992 年 12 月 7 日の中華航空機事故(四国足摺岬上空 33,000 フィートで約 3 分以上にわ たって大きな揺れに遭遇,昇降舵の一部が損傷を受けるほどの揺れであったが,全員シー トベルトを着用していたために負傷者なし)の事例からも明らかです。 706 便事故においても、正しくシートベルトを装着していた乗客・客室乗務員には負傷 は発生しておらず、機長は幾度となく揺れの情報と座席ベルトサイン点灯を事前に客室乗 務員に伝えていた中で、負傷されたのはシートベルトを未着用か正しく着用していなかっ た乗客・客室乗務員でした。 706 便や他の負傷事故を踏まえて、乗客に対しては常時ベルト着用の案内が徹底されつ つあるなかで、客室乗務員の皆さんは、機内サービスなど席を立って業務を行わざるを得 ない難しい立場にありますが、私たち機長が求めることは、以下の 2 点です。 ・ 予告したベルトサイン点灯のタイミングには、事前に準備し、即刻着席すること ・ やむを得ず、予告なしにベルトサインが点灯した場合でも、最低限安全上必要なカ ート等の待避を行った上で可及的速やかに着席すること そこには客室乗務員が自ら揺れの程度やタイミングを判断したり、安全上必要のない客室 業務を続行する余地はなく、勿論、客室乗務員の責任者・上位者などの判断や指示が介入 することもあってはなりません。 どうか再び痛ましい死傷事故を起こさないために、今一度、座席ベルトサイン点灯時に は、「速やかに着席し、ベルトを着用すること」を徹底しましょう。もしその実行にあた り、サービスの混乱や旅客からのクレームなど二次的な問題が発生した場合、どうぞ機長 に報告してください。機長はあらゆる手段で最善の方策を提供します。また上司や社内の 対応等で困ったことがあっても、機長組合はあなたの行動を支持し、全機長の団結をもっ て解決にあたります。勿論、所属組合は関係なく。 "Fasten Seatbelt" is not an OPTION. これはあなたのコンプライアンスです。 (706 便事故当時の機内の状況) 107-2
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